特許第6665628号(P6665628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665628
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】回転電機用ステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20200302BHJP
   H02K 3/14 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   H02K3/04 Z
   H02K3/14
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-66613(P2016-66613)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-184394(P2017-184394A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】知念 真太郎
【審査官】 三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−147312(JP,A)
【文献】 特開2014−023171(JP,A)
【文献】 特開2010−041786(JP,A)
【文献】 特開2014−135240(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0047454(US,A1)
【文献】 特開2012−152028(JP,A)
【文献】 特開平8−9606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるスロットが周方向に複数形成されているステータコアと、前記ステータコアに複数ターン巻装されるコイルと、を備え、前記ステータコアがロータコアに対して径方向に対向配置される回転電機用ステータであって、
前記コイルは、前記スロット内に整列配置される複数のスロット収容部と、一対の前記スロット収容部を前記ステータコアに対して前記軸方向の外側で接続する渡り部と、を有し、
一部の単数又は複数のターンのそれぞれの前記スロット収容部を第一種スロット収容部とし、残りのターンのそれぞれの前記スロット収容部を第二種スロット収容部として、
前記第一種スロット収容部を構成する第一導体線の本数は、前記第二種スロット収容部を構成する第二導体線の本数よりも多く、
前記第一種スロット収容部を構成する前記第一導体線のそれぞれの断面積は、前記第二種スロット収容部を構成する前記第二導体線のそれぞれの断面積よりも小さく、
前記第一種スロット収容部が、前記第二種スロット収容部よりも前記径方向における前記ロータコア側に配置され
複数本の導体線が螺旋状に撚り合わさる構造を撚線構造として、
前記第一種スロット収容部と、一対の前記第一種スロット収容部を接続する前記渡り部との少なくとも一方において、複数本の前記第一導体線が前記撚線構造を形成し、
前記周方向に分散配置された複数の前記第一種スロット収容部が互いに直列に接続されて、対象ターンが形成され、
前記対象ターンを構成する複数の前記第一種スロット収容部が配置される前記スロットのそれぞれを対象スロットとして、
前記対象ターンを構成する複数本の前記第一導体線のそれぞれは、当該対象ターン内で互いに電気的に接続されることなく、且つ、前記周方向の一方側に向かって前記渡り部が前記ステータコアに対して前記軸方向の一方側と他方側とに交互に配置される波巻状に、複数の前記対象スロットに巻装され、
前記第一導体線における前記対象スロットに配置されている部分の、前記軸方向に直交する断面での当該対象スロット内での位置を対象配置位置として、前記対象ターンを構成する1本の前記第一導体線における前記対象配置位置の前記対象スロットの全てでの平均が、前記対象ターンを構成する別の前記第一導体線における前記対象配置位置の前記対象スロットの全てでの平均と一致している回転電機用ステータ。
【請求項2】
対の前記第一種スロット収容部を接続する前記渡り部において複数本の前記第一導体線が前記撚線構造を形成している請求項に記載の回転電機用ステータ。
【請求項3】
一対の前記第一種スロット収容部を前記ステータコアに対して前記軸方向の一方側で接続する前記渡り部を第一渡り部とし、一対の前記第一種スロット収容部を前記ステータコアに対して前記軸方向の他方側で接続する前記渡り部を第二渡り部として、
前記第一渡り部及び前記第二渡り部のうちの前記第一渡り部においてのみ、複数本の前記第一導体線が前記撚線構造を形成している請求項1又は2に記載の回転電機用ステータ。
【請求項4】
前記第一種スロット収容部を構成する複数本の前記第一導体線、前記周方向及び前記径方向に並ぶように配置されており、
前記対象ターンを構成する複数本の前記第一導体線の全てについて、前記対象配置位置の前記対象スロットの全てでの平均が一致している請求項1からのいずれか一項に記載の回転電機用ステータ。
【請求項5】
前記第一種スロット収容部を構成する複数本の前記第一導体線の断面積の総和が、前記第二種スロット収容部を構成する1本又は複数本の前記第二導体線の断面積の総和に等しい請求項1から4のいずれか一項に記載の回転電機用ステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向に延びるスロットが周方向に複数形成されているステータコアと、ステータコアに複数ターン巻装されるコイルと、を備え、ステータコアがロータコアに対して径方向に対向配置される回転電機用ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような回転電機用ステータ(以下、単に「ステータ」と称する場合がある。)として、特開2009−195008号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のステータでは、コイルを構成する導体線として、断面形状が矩形状であって周方向の幅がスロット幅に対応する平角線が用いられる。このような平角線を導体線として用いることで、占積率を向上させて回転電機の性能の向上を図ることが可能となる。
【0003】
ところで、ロータの回転時には、磁束の変化によってコイルに渦電流が発生する。そして、コイルを構成する導体線として平角線を用いた場合、各導体線の断面積或いは表面積が大きくなることに応じて、コイルに発生する渦電流による損失(渦電流損)が大きくなりやすい。この点に関して、特許文献1の段落0086には、特許文献1に開示されるステータの構造について、導体は周方向に広く径方向に薄い形状となるので、漏れ磁束によるスロット内の導体に生じる渦電流が抑えられる構造であるとの記載がある。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、各導体線の幅がスロット幅に応じた比較的大きな幅となるので、渦電流損を効果的に低減することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−195008号公報(段落0086等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、占積率の向上を図りつつ渦電流損の低減を図ることが可能な回転電機用ステータの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた、軸方向に延びるスロットが周方向に複数形成されているステータコアと、前記ステータコアに複数ターン巻装されるコイルと、を備え、前記ステータコアがロータコアに対して径方向に対向配置される回転電機用ステータの特徴構成は、前記コイルは、前記スロット内に整列配置される複数のスロット収容部と、一対の前記スロット収容部を前記ステータコアに対して前記軸方向の外側で接続する渡り部と、を有し、一部の単数又は複数のターンのそれぞれの前記スロット収容部を第一種スロット収容部とし、残りのターンのそれぞれの前記スロット収容部を第二種スロット収容部として、前記第一種スロット収容部を構成する第一導体線の本数は、前記第二種スロット収容部を構成する第二導体線の本数よりも多く、前記第一種スロット収容部を構成する前記第一導体線のそれぞれの断面積は、前記第二種スロット収容部を構成する前記第二導体線のそれぞれの断面積よりも小さく、前記第一種スロット収容部が、前記第二種スロット収容部よりも前記径方向における前記ロータコア側に配置されている点にある。
【0007】
上記の特徴構成では、断面積の小さい第一導体線により構成される第一種スロット収容部が、断面積の大きい第二導体線により構成される第二種スロット収容部よりも径方向におけるロータコア側に配置される。すなわち、径方向におけるロータコアに近い位置(すなわち、磁束の変化の影響を大きく受ける位置)に、断面積の小さい第一導体線により構成される第一種スロット収容部が配置されるため、当該位置に第二種スロット収容部が配置される場合に比べて、スロット収容部に発生する渦電流損を低く抑えることができる。なお、第一種スロット収容部を構成する第一導体線の本数は、第二種スロット収容部を構成する第二導体線の本数よりも多いため、第一種スロット収容部の電気的抵抗の増大を抑制しつつ、第一種スロット収容部を断面積の小さい第一導体線により構成することができる。
一方、径方向におけるロータコアから離れた位置(すなわち、磁束の変化の影響の少ない位置)には、断面積の大きい第二導体線により構成される第二種スロット収容部が配置されるため、当該位置に第一種スロット収容部が配置される場合に比べて、スロット収容部の占積率を高く確保することができる。
以上のように、上記の特徴構成によれば、渦電流損の原因となる磁束の変化の影響の大きい位置には第一種スロット収容部を配置し、磁束の変化の影響の少ない位置には第二種スロット収容部を配置することで、占積率の向上を図りつつ渦電流損の低減を図ることができる。なお、渦電流損を低減できる分だけロータコアにより近い位置に第一種スロット収容部を配置することができるという利点もある。
【0008】
回転電機用ステータのさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の実施形態の説明によってより明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】回転電機の一例を示す図
図2】第一の実施形態に係るステータの一部の軸方向に直交する断面図
図3】第一の実施形態に係るコイルの構成図
図4】第一の実施形態に係るステータの一部の斜視図
図5】第二の実施形態に係る対象ターンのステータコアへの巻装態様を示す図
図6】第二の実施形態に係る対象ターンの回路構成図
図7】第二の実施形態に係る第一導体線のスロットへの配置構成を示す図
図8】渦電流損の低減効果を示すグラフ
図9】誘導電流のばらつきの低減効果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第一の実施形態
回転電機用ステータの第一の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、部材の形状に関して、「ある方向に延びる」とは、当該方向を基準方向として、部材の延在方向が当該基準方向に平行な形状に限らず、部材の延在方向が当該基準方向に交差する方向であっても、その交差角度が所定範囲内(例えば45度未満)である形状も含む概念として用いている。更に、本明細書では、寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念として用いている。以下の説明では、特に明記している場合を除き、「軸方向L」、「径方向R」、及び「周方向C」は、回転電機用ステータ(以下、「ステータ2」という。)のコアであるステータコア10の軸心A(仮想軸、図1図5参照)を基準として定義している。軸心Aは、ステータコア10の円筒状の内周面の軸心であり、また、ステータコア10の円筒状の外周面の軸心である。図1に示すように、ロータ3は軸心Aに合わせて配置され、ロータコア3a(ロータコア3aが固定されたロータ軸4)が軸心A回りに回転する。
【0011】
図1に示すように、回転電機1は、ステータ2とロータ3とを備えている。図1に示す例では、回転電機1はケース5に収容されており、ステータ2はケース5の内面に固定され、ロータ3は、ケース5に対して回転可能に支持されている。具体的には、ロータ3は、軸受7を介してケース5に対して回転可能に支持されるロータ軸4を備えており、ロータ3のコアであるロータコア3aが、ロータ軸4と一体回転するように連結されている。回転電機1は回転界磁型の回転電機であり、ステータ2のコアであるステータコア10にはコイル6が巻装されている。そして、ステータ2から発生する磁界により、界磁としてのロータ3が回転する。本実施形態では、回転電機1はインナーロータ型の回転電機であり、ロータ3は、ステータ2に対して回転可能な状態で、ステータ2の径方向Rの内側に配置されている。
【0012】
ステータ2は、図2及び図4に示すように、軸方向Lに延びるスロット12が周方向Cに複数形成されているステータコア10と、ステータコア10に複数ターン巻装されるコイル6と、を備えている。ステータコア10は、ロータコア3aに対して径方向Rに対向配置される。本実施形態では、ステータコア10は、ロータコア3aに対して径方向Rの外側に配置されている。ステータコア10は、磁性材料を用いて形成される。例えば、複数枚の磁性体板(例えば、ケイ素鋼板等の電磁鋼板)を積層してステータコア10が形成され、或いは、磁性材料の粉体を加圧成形してなる圧粉材を主な構成要素としてステータコア10が形成される。ステータ2は、例えば、三相交流(多相交流の一例)で駆動される回転電機に用いられる。
【0013】
図2及び図4に示すように、スロット12は、軸方向Lの両側に開口部を有している。また、スロット12は、径方向Rに延びるように形成され、径方向Rにおけるロータコア3a側(本実施形態では、径方向Rの内側)に開口部を有している。複数のスロット12は、周方向Cに沿って一定間隔で配置されている。本実施形態では、スロット12は平行スロットであり、スロット12の周方向Cの両側の側面部は、互いに平行に形成されている。すなわち、スロット12の周方向Cの幅は、径方向Rに沿って均一に形成されている。周方向Cに隣接するスロット12の間にはティース14が形成される。複数のティース14のそれぞれの径方向Rの内側の端面によって、ステータコア10の内周面(軸心Aと同心の円筒面)が形成される。
【0014】
コイル6は、線状の導体である導体線40を用いて構成される。導体線40は、銅やアルミニウム等の導電性を有する材料により構成され、導体線40の表面には、樹脂等の電気的絶縁性を有する材料からなる絶縁皮膜が形成されている。本実施形態では、図2に示すように、導体線40として、延在方向に直交する断面の形状が矩形状の線状導体(平角線)を用いている。ここで、「矩形状」には、正方形状の矩形、角部が円弧状の矩形、内角の大きさと90度との差の絶対値が予め定められた角度(例えば、5度や10度等)未満の矩形等を含む。
【0015】
コイル6は、スロット12内に整列配置される複数のスロット収容部20と、一対のスロット収容部20をステータコア10に対して軸方向Lの外側で接続する渡り部30(図5参照)と、を有している。スロット収容部20のそれぞれは、スロット12内を軸方向Lに平行に延びるように配置される。1つのスロット12には、ターン数(コイル6のステータコア10への巻回数)と同数のスロット収容部20が配置される。図2に示すように、本実施形態では、ターン数は“6”であり、6つのスロット収容部20が1つのスロット12に整列配置されている。また、本実施形態では、1つのスロット12内に配置される複数のスロット収容部20は、一列に並んで径方向Rに沿って整列配置されている。以下では、1つのスロット12内に配置される複数のスロット収容部20のそれぞれが構成するターンについて、径方向Rにおけるロータコア3a側(本実施形態では、径方向Rの内側)に配置されたスロット収容部20から順に、「1ターン目」、「2ターン目」、・・・「6ターン目」とする。各スロット収容部20の断面形状は、1つのスロット12内に配置される複数のスロット収容部20の断面形状の集合が当該スロット12の断面形状に合うように形成されている。渡り部30についての詳細は省略するが、各ターンの渡り部30の集合によって、ステータコア10から軸方向Lに突出するコイル6の部分であるコイルエンド部が形成される(図1参照)。
【0016】
ここで、図2に示すように、一部の単数又は複数のターンのそれぞれのスロット収容部20を第一種スロット収容部21とし、残りのターンのそれぞれのスロット収容部20を第二種スロット収容部22とすると、第一種スロット収容部21は、第二種スロット収容部22よりも径方向Rにおけるロータコア3a側(本実施形態では、径方向Rの内側)に配置されている。すなわち、スロット12内におけるある径方向Rの位置を境界として、当該境界よりも径方向Rにおけるロータコア3a側に配置される単数または複数のスロット収容部20が第一種スロット収容部21であり、当該境界よりも径方向Rにおけるロータコア3aとは反対側に配置される単数または複数のスロット収容部20が第二種スロット収容部22である。少なくとも、スロット12内において径方向Rにおける最もロータコア3a側(本実施形態では、径方向Rの最内側)に配置されるスロット収容部20は、第一種スロット収容部21となる。本実施形態では、1ターン目のスロット収容部20が第一種スロット収容部21であり、残りの全てのターン(具体的には、2ターン目、3ターン目、4ターン目、5ターン目、及び6ターン目)のそれぞれのスロット収容部20が第二種スロット収容部22である。
【0017】
図2に示すように、第一種スロット収容部21を構成する導体線40(第一導体線41)の本数は、第二種スロット収容部22を構成する導体線40(第二導体線42)の本数よりも多い。本実施形態では、第一種スロット収容部21を構成する第一導体線41の本数は、9本であり、第二種スロット収容部22を構成する第二導体線42の本数は、1本である。そのため、本実施形態では、図3に示すように、互いに並列に接続された9本の第一導体線41によって1ターン目のコイル6が形成される。本実施形態では、図2に示すように、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41の一部又は全部が、周方向Cに並ぶように配置される。具体的には、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41の一部が、周方向Cに並ぶように配置され、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41の別の一部が、径方向Rに並ぶように配置されている。なお、本実施形態では、後述するように、第一種スロット収容部21において複数本の導体線40が撚線構造を形成しており、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41のスロット12内での配置パターンは、軸方向Lの位置に応じて変化する。図2は、9本の第一導体線41が周方向Cに3列に並んで径方向Rに沿って整列配置される軸方向Lの位置での断面を示している。なお、本実施形態では、コイル6は、同心巻(重ね巻)によりステータコア10に巻装されている。そのため、図3に示すように各ターンのコイルが直列に接続されて、1つの同心巻部(重ね巻部)が形成されている。
【0018】
図2に示すように、第一種スロット収容部21を構成する第一導体線41のそれぞれの断面積は、第二種スロット収容部22を構成する第二導体線42のそれぞれの断面積よりも小さい。本実施形態では、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41の断面積の総和が、第二種スロット収容部22を構成する1本又は複数本の第二導体線42(本例では1本の第二導体線42)の断面積の総和に等しい。これにより、互いに異なる本数の導体線40により構成される第一種スロット収容部21と第二種スロット収容部22とのそれぞれの電気的抵抗は、互いに同等となっている。
【0019】
以上のような構成とすることで、磁束の変化の影響を大きく受ける位置である径方向Rにおけるロータコア3aに近い位置に、断面積の小さい第一導体線41により構成される第一種スロット収容部21が配置される。これにより、この位置に断面積の大きい第二導体線42により構成される第二種スロット収容部22が配置される場合に比べて、スロット収容部20に発生する渦電流損を低く抑えることが可能となっている。一方、磁束の変化の影響の少ない位置である径方向Rにおけるロータコア3aから離れた位置には、断面積の大きい第二導体線42により構成される第二種スロット収容部22が配置される。これにより、この位置に第一種スロット収容部21が配置される場合に比べて、スロット収容部20の占積率を高く確保することができる。このように、渦電流損の原因となる磁束の変化の影響の大きい位置には第一種スロット収容部21を配置し、磁束の変化の影響の少ない位置には第二種スロット収容部22を配置することで、占積率の向上を図りつつ渦電流損の低減を図ることが可能となっている。
【0020】
図8は、本実施形態に係るコイル6における渦電流損の低減効果を示すシミュレーション結果である。図8の左側に示す比較例は、本実施形態とは異なり、1ターン目のスロット収容部20を第一種スロット収容部21に代えて第二種スロット収容部22とした場合の渦電流損を示している。図8の左右両側のグラフを比較すると明らかなように、1ターン目のスロット収容部20を第一種スロット収容部21とすることで、1ターン目における渦電流損が大きく低減され、結果、コイル6の全体の渦電流損も大きく低減されることがわかる。
【0021】
ところで、図3から明らかなように、複数本の第一導体線41の間で誘導電流にばらつきがある場合には、コイル6における1ターン目を形成する部分において循環電流が発生し損失が増大する。このような循環電流を低減するため、本実施形態では、複数本の導体線40が螺旋状に撚り合わさる構造を撚線構造として、図4に示すように、第一種スロット収容部21において、複数本の第一導体線41が撚線構造を形成する構成を採用している。これにより、第一種スロット収容部21において複数本の第一導体線41のそれぞれが、スロット12内の互いに異なる位置を軸方向Lに平行に延びるように配置される場合に比べて、1つのスロット12内における各第一導体線41の配置位置の平均の、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41の間でのばらつきを低減することができる。この結果、複数本の第一導体線41の間での誘導電流のばらつきを低減して、損失の増大につながる循環電流を低減することが可能となっている。なお、複数本の導体線40が螺旋状に撚り合わさる撚線構造は、複数本の導体線40の束を、当該束の延在方向に平行な軸回りにねじることで形成することができる。
【0022】
本実施形態では、撚線構造を形成する複数本の第一導体線41の各スロット12内でのねじり回数を整数(図4に示す例では、“1”)に設定している。このようにねじり回数を整数に設定することで、1つのスロット12内における各第一導体線41の配置位置の平均は、全て、第一種スロット収容部21の軸方向Lに直交する断面の中心位置と概ね一致する。すなわち、1つのスロット12内における各第一導体線41の配置位置の平均を、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41の間で均一化することができ、結果、循環電流を効果的に低減することができる。
【0023】
図9は、本実施形態に係るコイル6における誘導電流のばらつきの低減効果を示すシミュレーション結果である。図9には、1ターン目のコイル6を構成する9本の第一導体線41のそれぞれに流れる誘導電流の大きさのシミュレーション結果を示している。白抜きの棒グラフで示す比較例は、本実施形態とは異なり、第一種スロット収容部21において複数本の第一導体線41のそれぞれをスロット12内の互いに異なる位置を軸方向Lに平行に延びるように配置した場合の誘導電流を示している。図9から明らかなように、比較例の場合には複数本の第一導体線41の間での誘導電流のばらつきが大きいのに対し、本実施形態に係るコイル6の場合には、複数本の第一導体線41の間での誘導電流のばらつきが大きく低減されることがわかる。
【0024】
なお、本実施形態では、図2に示すように、第一導体線41の断面の大きさが、第一種スロット収容部21の配置領域を、周方向C及び径方向Rに互いに同じ数(本例では“3”)で分割した分割領域に対応した大きさとされている。よって、第一導体線41の断面の大きさが、第一種スロット収容部21の配置領域を周方向C及び径方向Rに互いに異なる数で分割した分割領域に対応した大きさとなる場合や、第一導体線41の断面の大きさが、第一種スロット収容部21の配置領域を周方向C及び径方向Rのいずれか一方の方向のみに分割した分割領域に対応した大きさとなる場合に比べて、第一種スロット収容部21において、複数本の第一導体線41に撚線構造を形成させることが容易な構成となっている。
【0025】
2.第二の実施形態
回転電機用ステータの第二の実施形態について、図5図7を参照して説明する。本実施形態では、一対の第一種スロット収容部21を接続する渡り部30において複数本の第一導体線41が撚線構造を形成している点で、上記第一の実施形態とは異なる。以下では、上記第一の実施形態との相違点を中心に説明し、特に明記しない点については上記第一の実施形態と同様とする。
【0026】
本実施形態では、上記第一の実施形態とは異なり、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41は、スロット12内の互いに異なる位置を軸方向Lに平行に延びるように配置されている。よって、本実施形態では、スロット12内の軸方向Lの全域で、図2に示すように、9本の第一導体線41が周方向Cに3列に並んで径方向Rに沿って整列配置されている。
【0027】
本実施形態では、周方向Cに分散配置された複数の第一種スロット収容部21が互いに直列に接続されて、対象ターンが形成される。一部の単数又は複数のターンが対象ターンとされ、本実施形態では、1ターン目が対象ターンとされている。図5は、対象ターンのステータコア10への巻装態様を示す図であり、図6は、対象ターンの回路構成を示している。図5に示すように、対象ターンを構成する複数の第一種スロット収容部21が配置されるスロット12のそれぞれを対象スロット13とする。対象ターンを構成する複数本の第一導体線41のそれぞれは、当該対象ターン内で互いに電気的に接続されることなく、複数の対象スロット13に巻装されている。すなわち、図6に示すように、対象ターンを構成する複数本の第一導体線41のそれぞれは、対象ターンの両端部である第一端61と第二端62とのそれぞれにおいてのみ、互いに接続されている。本実施形態では、対象ターンを構成する複数本の第一導体線41のそれぞれは、波巻状にステータコア10に巻装されている。
【0028】
本実施形態では、図5及び図6に示すように、対象ターンを構成する複数本の第一導体線41のそれぞれは、8個の対象スロット13に巻装されている。そして、第一導体線41のそれぞれにより、第一コイル部51、第二コイル部52、第三コイル部53、及び第四コイル部54の4つのコイル部50が互いに直列に接続された直列コイル部が形成されている。コイル部50のそれぞれは、一対の対象スロット13(本例では、互いにスロットピッチの5倍だけ離れた一対のスロット12)にそれぞれ配置された一対の第一種スロット収容部21と、当該一対の第一種スロット収容部21を接続する渡り部30(以下、「第二渡り部30b」という。)とを備える。ここで、図5に示すように、1つのコイル部50が備える一対の第一種スロット収容部21のうちの周方向Cの一方側(周方向第一側C1)の第一種スロット収容部21を「第一側スロット収容部20a」とし、周方向Cの他方側(周方向第二側C2)の第一種スロット収容部21を「第二側スロット収容部20b」とする。周方向Cに隣接する2つのコイル部50は、ステータコア10に対して第二渡り部30bとは軸方向Lの反対側に配置される渡り部30(以下、「第一渡り部30a」という。)によって接続されている。具体的には、周方向第一側C1に配置されたコイル部50(例えば、第一コイル部51)の第二側スロット収容部20bと、周方向第二側C2に配置されたコイル部50(例えば、第二コイル部52)の第一側スロット収容部20aとが、第一渡り部30aにより接続されている。
【0029】
そして、本実施形態では、対象ターンを構成する1本の第一導体線41における対象スロット13の全てでの配置位置の平均が、対象ターンを構成する別の第一導体線41における対象スロット13の全てでの配置位置の平均と一致するように、一対の第一種スロット収容部21を接続する渡り部30において複数本の第一導体線41が撚線構造を形成している。本実施形態では、対象ターンを構成する全ての第一導体線41の間で、上記の配置位置の平均が一致している。これにより、対象スロット13の全てでの配置位置の平均を、対象ターンを構成する複数本の第一導体線41の間で均一化することができ、対象ターンを構成する複数本の第一導体線41の間での誘導電流のばらつきを効果的に低減することが可能となっている。
【0030】
以下、図7を参照して、対象ターンを構成する全ての第一導体線41の間で、対象スロット13の全てでの配置位置の平均が一致することについて説明する。なお、図7には、1つのコイル部50に備えられる一対の第一種スロット収容部21(第一側スロット収容部20a及び第二側スロット収容部20b)のそれぞれについての、軸方向Lに直交する断面での複数本の第一導体線41の配置パターン(相対的な配置関係)を、第一コイル部51、第二コイル部52、第三コイル部53、及び第四コイル部54の順に上側から示している。図7に示すように、1つのコイル部50に備えられる一対の第一種スロット収容部21の間では、複数本の第一導体線41の配置パターンが、スロット12の周方向Cの中央部を通る径方向Rに平行な直線を対称軸として線対称(鏡像対称)の関係となっている。なお、複数本の第一導体線41の束を、延在方向が軸方向Lの逆向きとなるように屈曲することで、複数本の第一導体線41の配置パターンを、上記対称軸に関して周方向Cに反転させることができる。すなわち、1つのコイル部50に備えられる一対の第一種スロット収容部21を接続する第二渡り部30bには撚線構造は不要であり、本実施形態では第二渡り部30bには撚線構造が形成されていない。なお、上記のような対称関係から第一側スロット収容部20aと第二側スロット収容部20bとの間での第一導体線41の対応関係は明らかであるため、図7では、9本の第一導体線41のうちの3つのみに符号“41a”,“41b”,“41c”を付している。
【0031】
一方、本実施形態では、互いに異なるコイル部50同士を接続する第一渡り部30a(本実施形態では、3つの第一渡り部30a)のそれぞれにおいて、複数本の第一導体線41が撚線構造を形成している。よって、図7に示すように、互いに異なるコイル部50に備えられる第一種スロット収容部21の間では、複数本の第一導体線41の配置パターンは鏡像対称の関係とはなっていない。具体的には、本実施形態では、1つの第一渡り部30aに形成される撚線構造における、複数本の第一導体線41のねじり量を、当該複数本の第一導体線41の束の延在方向回りに90度ねじる量に設定している。なお、第一渡り部30aにも、第二渡り部30bと同様、複数本の第一導体線41の束の延在方向を軸方向Lの逆向きとするための屈曲部が形成される。よって、図7に示す例では、第一渡り部30aにより接続される第二側スロット収容部20b及び第一側スロット収容部20a(例えば、第一コイル部51の第二側スロット収容部20b及び第二コイル部52の第一側スロット収容部20a)について、第一側スロット収容部20aにおける複数本の第一導体線41の配置パターンは、第二側スロット収容部20bにおける複数本の第一導体線41の配置パターンを、上記対称軸に関して周方向Cに反転(鏡映操作)し、更に、軸方向Lに平行な軸回りに90°回転させたパターンとなっている。なお、第二側スロット収容部20bにおける複数本の第一導体線41の配置パターンを、上記対称軸に関して周方向Cに反転(鏡映操作)したものは、当該第二側スロット収容部20bを備えるコイル部50に備えられる第一側スロット収容部20aの配置パターンと一致する。上記のような構成とすることで、本実施形態では、対象ターンを構成する全ての第一導体線41について、対象スロット13の全てでの配置位置の平均が、図7において符号“41c”で示す第一導体線41の位置と一致する。なお、図7に示す例において、1つのコイル部50に備えられる第一側スロット収容部20aと第二側スロット収容部20bとの間で、複数本の第一導体線41の配置パターンを入れ替えることも可能である。
【0032】
3.その他の実施形態
回転電機用ステータのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0033】
(1)上記第一の実施形態では、撚線構造を形成する複数本の第一導体線41の各スロット12内でのねじり回数が整数に設定される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、撚線構造を形成する複数本の第一導体線41の各スロット12内でのねじり回数を、小数部を有する数に設定することも可能である。
【0034】
(2)上記第二の実施形態では、対象ターンを構成する1本の第一導体線41における対象スロット13の全てでの配置位置の平均が、対象ターンを構成する別の第一導体線41における対象スロット13の全てでの配置位置の平均と一致するように、一対の第一種スロット収容部21を接続する渡り部30において複数本の第一導体線41が撚線構造を形成される構成において、対象ターンを構成する全ての第一導体線41の間で、上記の配置位置の平均が一致する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、対象ターンを構成する一部の第一導体線41の間でのみ、上記の配置位置の平均が一致する構成とすることもできる。また、渡り部30において複数本の第一導体線41が撚線構造を形成するものの、対象ターンを構成するいずれの第一導体線41の間でも、上記の配置位置の平均が一致しない構成とすることも可能である。
【0035】
(3)上記第一の実施形態では、第一種スロット収容部21において複数本の第一導体線41が撚線構造を形成する構成を例として説明し、上記第二の実施形態では、一対の第一種スロット収容部21を接続する渡り部30において複数本の第一導体線41が撚線構造を形成する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第一種スロット収容部21と、一対の第一種スロット収容部21を接続する渡り部30との双方において、複数本の第一導体線41が撚線構造を形成する構成とし、或いは、複数本の第一導体線41がいずれの部位においても撚線構造を形成しない構成とすることも可能である。
【0036】
(4)上記の各実施形態では、1ターン目のスロット収容部20が第一種スロット収容部21であり、残りの全てのターンのそれぞれのスロット収容部20が第二種スロット収容部22である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、複数のスロット収容部20が第一種スロット収容部21となる構成とすることも可能である。例えば、1ターン目及び2ターン目のそれぞれのスロット収容部20が第一種スロット収容部21となる構成や、1ターン目、2ターン目、及び3ターン目のそれぞれのスロット収容部20が第一種スロット収容部21となる構成とすることができる。また、全体のターン数も、“6”に限定されるものではなく、“4”、“8”、“10”など、何ターンであってもよい。その場合において、全体の1/4、1/3、1/2等のスロット収容部20が第一種スロット収容部21となる構成とすることができる。
【0037】
(5)上記の各実施形態では、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41の一部が、周方向Cに並ぶように配置され、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41の別の一部が、径方向Rに並ぶように配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41の全部が、周方向Cに並ぶように配置される構成とし、或いは、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41の全部が、径方向Rに並ぶように配置される構成とすることも可能である。1つのスロット12に複数の第一種スロット収容部21が配置される場合、これら複数の第一種スロット収容部21の間で、複数本の第一導体線41の配置パターン(周方向Cの並び数、径方向Rの並び数)が互いに異なる構成としても良い。
【0038】
(6)上記の各実施形態では、第二種スロット収容部22を構成する第二導体線42の本数が1本である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第二種スロット収容部22を構成する第二導体線42の本数が複数本である構成としても良い。また、第二種スロット収容部22が構成する複数のターンの中で、各ターンを構成する導体線40の本数を、2段階或いはそれ以上の段階で互いに異ならせ、複数の第二種スロット収容部22の径方向Rの配置順を、より多くの導体線40により構成される第二種スロット収容部22が径方向Rのロータコア3a側に配置される構成とすることもできる。
【0039】
(7)上記の各実施形態では、第一種スロット収容部21を構成する複数本の第一導体線41の断面積の総和が、第二種スロット収容部22を構成する1本又は複数本の第二導体線42の断面積の総和に等しい構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、これらの総和が互いに異なる構成とすることも可能である。
【0040】
(8)上記の各実施形態では、回転電機1がインナーロータ型の回転電機である場合を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、回転電機1がアウタロータ型の回転電機であっても良い。この場合、ステータコア10は、ロータコア3aに対して径方向Rの内側に配置され、径方向Rにおけるロータコア3a側は、上記の各実施形態とは異なり、径方向Rの外側となる。
【0041】
(9)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎないと理解されるべきである。従って、当業者は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0042】
4.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した回転電機用ステータの概要について説明する。
【0043】
軸方向(L)に延びるスロット(12)が周方向(C)に複数形成されているステータコア(10)と、前記ステータコア(10)に複数ターン巻装されるコイル(6)と、を備え、前記ステータコア(10)がロータコア(3a)に対して径方向(R)に対向配置される回転電機用ステータ(2)であって、前記コイル(6)は、前記スロット(12)内に整列配置される複数のスロット収容部(20)と、一対の前記スロット収容部(20)を前記ステータコア(10)に対して前記軸方向(L)の外側で接続する渡り部(30)と、を有し、一部の単数又は複数のターンのそれぞれの前記スロット収容部(20)を第一種スロット収容部(21)とし、残りのターンのそれぞれの前記スロット収容部(20)を第二種スロット収容部(22)として、前記第一種スロット収容部(21)を構成する第一導体線(41)の本数は、前記第二種スロット収容部(22)を構成する第二導体線(42)の本数よりも多く、前記第一種スロット収容部(21)を構成する前記第一導体線(41)のそれぞれの断面積は、前記第二種スロット収容部(22)を構成する前記第二導体線(42)のそれぞれの断面積よりも小さく、前記第一種スロット収容部(21)が、前記第二種スロット収容部(22)よりも前記径方向(R)における前記ロータコア側に配置されている。
【0044】
上記の構成では、断面積の小さい第一導体線(41)により構成される第一種スロット収容部(21)が、断面積の大きい第二導体線(42)により構成される第二種スロット収容部(22)よりも径方向(R)におけるロータコア(3a)側に配置される。すなわち、径方向(R)におけるロータコア(3a)に近い位置(すなわち、磁束の変化の影響を大きく受ける位置)に、断面積の小さい第一導体線(41)により構成される第一種スロット収容部(21)が配置されるため、当該位置に第二種スロット収容部(22)が配置される場合に比べて、スロット収容部(20)に発生する渦電流損を低く抑えることができる。なお、第一種スロット収容部(21)を構成する第一導体線(41)の本数は、第二種スロット収容部(22)を構成する第二導体線(42)の本数よりも多いため、第一種スロット収容部(21)の電気的抵抗の増大を抑制しつつ、第一種スロット収容部(21)を断面積の小さい第一導体線(41)により構成することができる。
一方、径方向(R)におけるロータコア(3a)から離れた位置(すなわち、磁束の変化の影響の少ない位置)には、断面積の大きい第二導体線(42)により構成される第二種スロット収容部(22)が配置されるため、当該位置に第一種スロット収容部(21)が配置される場合に比べて、スロット収容部(20)の占積率を高く確保することができる。
以上のように、上記の構成によれば、渦電流損の原因となる磁束の変化の影響の大きい位置には第一種スロット収容部(21)を配置し、磁束の変化の影響の少ない位置には第二種スロット収容部(22)を配置することで、占積率の向上を図りつつ渦電流損の低減を図ることができる。なお、渦電流損を低減できる分だけロータコア(3a)により近い位置に第一種スロット収容部(21)を配置することができるという利点もある。
【0045】
ここで、複数本の導体線(40)が螺旋状に撚り合わさる構造を撚線構造として、前記第一種スロット収容部(21)と、一対の前記第一種スロット収容部(21)を接続する前記渡り部(30)との少なくとも一方において、複数本の前記第一導体線(41)が前記撚線構造を形成していると好適である。
【0046】
この構成によれば、第一種スロット収容部(21)において複数本の第一導体線(41)が撚線構造を形成する場合には、1つのスロット(12)内における各第一導体線(41)の配置位置の平均の、第一種スロット収容部(21)を構成する複数本の第一導体線(41)の間でのばらつきを低減することができる。また、一対の第一種スロット収容部(21)を接続する渡り部(30)において複数本の第一導体線(41)が撚線構造を形成する場合には、互いに直列に接続される複数の第一種スロット収容部(21)を構成する複数本の第一導体線(41)の間での、巻装対象のスロット(12)の全てでの配置位置の平均のばらつきを低減することができる。よって、いずれの場合でも、複数本の第一導体線(41)の間での誘導電流のばらつきを低減して、損失の増大につながる循環電流を低減することが可能となる。
【0047】
また、前記第一種スロット収容部(21)において複数本の前記第一導体線(41)が前記撚線構造を形成し、前記撚線構造を形成する複数本の前記第一導体線(41)の各スロット(12)内でのねじり回数が整数に設定されていると好適である。
【0048】
この構成によれば、1つのスロット(12)内における各第一導体線(41)の配置位置の平均を、第一種スロット収容部(21)を構成する複数本の第一導体線(41)の間で均一化することができる。よって、第一種スロット収容部(21)を構成する複数本の第一導体線(41)の間での誘導電流のばらつきを効果的に低減することができる。なお、この構成では、スロット(12)単位で、複数本の第一導体線(41)の間での誘導電流のばらつきを低減することができるため、コイル(6)の巻き方についての制約が少ないという利点もある。
【0049】
また、前記周方向に分散配置された複数の前記第一種スロット収容部(21)が互いに直列に接続されて、対象ターンが形成され、前記対象ターンを構成する複数の前記第一種スロット収容部(21)が配置される前記スロット(12)のそれぞれを対象スロット(13)として、前記対象ターンを構成する複数本の前記第一導体線(41)のそれぞれは、当該対象ターン内で互いに電気的に接続されることなく、複数の前記対象スロット(13)に巻装され、前記対象ターンを構成する1本の前記第一導体線(41)における前記対象スロット(13)の全てでの配置位置の平均が、前記対象ターンを構成する別の前記第一導体線(41)における前記対象スロット(13)の全てでの配置位置の平均と一致するように、一対の前記第一種スロット収容部(21)を接続する前記渡り部(30)において複数本の前記第一導体線(41)が前記撚線構造を形成していると好適である。
【0050】
この構成によれば、対象スロット(13)の全てでの配置位置の平均を、対象ターンを構成する複数本の第一導体線(41)の間で均一化することができる。よって、対象ターンを構成する複数本の第一導体線(41)の間での誘導電流のばらつきを効果的に低減することができる。なお、この構成では、第一種スロット収容部(21)において複数本の第一導体線(41)が撚線構造を形成する場合に比べて、占積率の向上を図りやすいという利点もある。
【0051】
また、前記第一種スロット収容部(21)を構成する複数本の前記第一導体線(41)の断面積の総和が、前記第二種スロット収容部(22)を構成する1本又は複数本の前記第二導体線(42)の断面積の総和に等しいと好適である。
【0052】
この構成によれば、第一種スロット収容部(21)の電気的抵抗を第二種スロット収容部(22)の電気的抵抗と同等のものとしつつ、第一種スロット収容部(21)を断面積の小さい第一導体線(41)により構成することができる。
【0053】
また、前記第一種スロット収容部(21)を構成する複数本の前記第一導体線(41)の一部又は全部が、前記周方向(C)に並ぶように配置されていると好適である。
【0054】
この構成によれば、磁束の方向が、ステータコア(10)におけるロータコア(3a)に近い径方向(R)の位置では径方向(R)に沿う方向となることを考慮して、第一種スロット収容部(21)を構成する複数本の第一導体線(41)を、渦電流損の低減効果が高まるように配置することができる。
【符号の説明】
【0055】
2:ステータ(回転電機用ステータ)
3a:ロータコア
6:コイル
10:ステータコア
12:スロット
13:対象スロット
20:スロット収容部
21:第一種スロット収容部
22:第二種スロット収容部
30:渡り部
40:導体線
41:第一導体線
42:第二導体線
C:周方向
L:軸方向
R:径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9