特許第6665663号(P6665663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665663
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】ギヤ減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20200302BHJP
   F16H 55/24 20060101ALI20200302BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   F16H1/16 Z
   F16H55/24
   B62D5/04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-89707(P2016-89707)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-198290(P2017-198290A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岡部 祐貴
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−136028(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/16
B62D 5/04
F16H 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸芯を中心に回転するウォームシャフトの中央位置にウォーム歯部を備えたウォームと、
前記ウォーム歯部に噛合するホイール歯部を外周に備え、前記駆動軸芯と直交する姿勢の出力軸芯を中心に回転するホイールギヤとを備えると共に、
前記ウォームシャフトの両端の外端部に、先細り状で前記駆動軸芯を基準にして滑らかに外方に膨れ前記駆動軸芯を中心とする回転面となる支軸面が形成され、
前記ウォームの両端部を支持する軸受機構が、前記ウォームシャフトの前記外端部が挿入される開口部を有する軸受部で構成され、
前記開口部が、前記ホイール歯部から前記ウォーム歯部が離間する方向への変位を許容する方向に延びる形状で、且つ前記支軸面の外周に沿う内面形状となる軸受面を備えており、
一対の前記軸受部の少なくとも何れか一方に、前記開口部に挿入された前記外端部に当接して前記ウォーム歯部を前記ホイール歯部に噛合させる方向に付勢力を作用させる付勢機構を備えているギヤ減速装置。
【請求項2】
前記駆動軸芯に直交する方向視で前記支軸面の曲率が、前記駆動軸芯に直交する方向視で前記軸受面の曲率より大きく設定されている請求項1に記載のギヤ減速装置。
【請求項3】
一対の前記軸受部の何れか少なくとも一方の前記開口部のうち、前記軸受面が形成される部位における前記駆動軸芯と直交する断面が、前記ウォームを前記ホイールギヤに対して離間可能な方向に延びる長孔として形成されると共に、この開口部の内面の一部のうち、前記長孔の長手方向の端部位置に前記支軸面が形成されている請求項1又は2に記載のギヤ減速装置。
【請求項4】
一対の前記軸受部のうちの一方に前記駆動軸芯に沿う方向に貫通孔が形成され、
当該軸受部に挿入される前記ウォームシャフトの前記外端部と、前記ウォームを駆動回転するアクチュエータの駆動軸とを連結するバネ材が、前記貫通孔に挿通して配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のギヤ減速装置。
【請求項5】
前記付勢機構が、前記ウォームシャフトの前記外端部または前記支軸面に当接する球状の当接面を有する当接部材と、この当接部材を付勢するスプリングとを備えている請求項1〜4のいずれか一項に記載のギヤ減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォームとホイールギヤとを備えたギヤ減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動パワーステアリング装置を構成する機構の一部として、電動モータで駆動されるウォームと、これに咬合するホイールギヤとを備えたギヤ減速装置の技術が示されている。
【0003】
この特許文献1では、ウォームの一対の端部のうち、電動モータで駆動される側が第1軸受で位置固定状態で回転自在に支持されている。また、ウォームの他方の端部側が、ホイールギヤの方向に向かう第1の方向に変位自在に支持されると共に、第1の方向と直交する第2の方向への変位が規制され状態で支持されている。
【0004】
更に、特許文献1では、第1の方向に沿ってウォーム軸の歯部を、ホイールギヤの歯部に噛合させる付勢力を作用させるため圧縮コイルバネを有する付勢機構を備えている。
【0005】
特許文献2は、特許文献1と同様に電動パワーステアリング装置を構成する機構の一部を構成するギヤ減速装置に関連する技術が示されている。具体的には、電動モータのモータ軸とウォーム軸との各々の対向する端部に凹面を形成し、これらの凹面に球体を嵌め込んだ構成の調芯手段を備え、モータ軸のトルクをウォーム軸に伝えるトルク伝動手段を備えている。
【0006】
この特許文献2では、電動モータのモータ軸をボールベアリングで支持しており、ウォーム軸のうち調芯手段と反対側の端部は、ボールベアリングにより位置固定状態で支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013‐87868号公報
【特許文献2】特開2000‐211537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電動モータ等でウォームを駆動し、このウォームに噛合するホイールギヤから減速動力を取り出すギヤ減速装置では、高い減速比を得ることが可能で、電動モータが停止した場合には、セルフロック状態に達しホイールギヤの回転が阻止される良好な面を有する。
【0009】
しかしながら、この構成のギヤ減速装置では、大きい負荷が作用した場合に、ウォームとホイールギヤとの間に大きい力が作用するため、ウォームとホイールギヤとの位置関係が、一時的に適正な位置から外れ、異常な噛み合い状態に陥り、異音を発生させることもあった。
【0010】
このような不都合に対し、特許文献1に示される技術では、大きい負荷が作用した場合に第2軸受において、ウォームの軸端がホイールギヤから離間する方向へ変位できるため、過剰な圧力の作用を抑制すると共に、異常な噛み合いを抑制できることも考えられる。
【0011】
しかしながら、特許文献1の技術は、本来、バックラッシュを除去することを目的としたものであるため、ウォームの変位量が小さく、充分な効果を期待できないものであった。
【0012】
また、特許文献2に示される技術でも、特許文献1と同様に、大きい負荷が作用した場合にはウォームの軸端がホイールギヤから離間する方向へ変位し、過剰な圧力の作用を抑制し、異常な噛み合いを抑制できることも考えられる。
【0013】
しかしながら、特許文献2の技術は、軸剛性を確保する目的からウォームの調芯を行うものであるため、ウォームの変位量が小さく、充分な効果を期待できないものであった。
【0014】
更に、異音の発生を抑制する技術として、ウォームの両端部分をボールベアリング等の軸受によって支持し、各々の軸受にバネ付勢力を作用させることで大きい負荷が作用した場合に、両端の軸受とともにホイールギヤから離間させるようにウォームを変位させる構成も考えられるが、この技術は大型化を招き易く、改善の余地がある。
【0015】
このような理由から、大きい負荷が作用しても異音を発生させることのない減速装置を小型に構成することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の特徴は、駆動軸芯を中心に回転するウォームシャフトの中央位置にウォーム歯部を備えたウォームと、
前記ウォーム歯部に噛合するホイール歯部を外周に備え、前記駆動軸芯と直交する姿勢の出力軸芯を中心に回転するホイールギヤとを備えると共に、
前記ウォームシャフトの両端の外端部に、先細り状で前記駆動軸芯を基準にして滑らかに外方に膨れ前記駆動軸芯を中心とする回転面となる支軸面が形成され、
前記ウォームの両端部を支持する軸受機構が、前記ウォームシャフトの前記外端部が挿入される開口部を有する軸受部で構成され、
前記開口部が、前記ホイール歯部から前記ウォーム歯部が離間する方向への変位を許容する方向に延びる形状で、且つ前記支軸面の外周に沿う内面形状となる軸受面を備えており、
一対の前記軸受部の少なくとも何れか一方に、前記開口部に挿入された前記外端部に当接して前記ウォーム歯部を前記ホイール歯部に噛合させる方向に付勢力を作用させる付勢機構を備えている点にある。
【0017】
これによると、ウォームシャフトの両端が軸受機構により支持される状況では、付勢機構の付勢力によりウォーム歯部がホイール歯部に噛合する状態が維持される。また、ウォームシャフトの支軸面が、先細り状で駆動軸芯を基準にして滑らかに外方に膨れる回転面として形成され、軸受部の軸受面が支軸面の外周に沿う形状であるため、支軸面が軸受面に当接することによりウォームシャフトは、両端部において調芯状態で支持される。
そして、ホイールギヤに大きい負荷が作用した場合には、軸受機構の開口部においてウォームシャフトの変位が許容されることにより、付勢機構の付勢力に抗してウォーム歯部がホイール歯部から離間する方向に変位が可能となり、この変位時にはウォーム歯部がホイール歯部の歯幅方向に変位しないため、異常な噛み合い状態に陥ることがない。特に、この構成ではボールベアリング等の軸受を必要としないため、装置の大型化を招くこともない。
従って、大きい負荷が作用しても異音を発生させることのない減速装置が小型に構成された。
【0018】
本発明は、前記駆動軸芯に直交する方向視で前記支軸面の曲率が、前記駆動軸芯に直交する方向視で前記軸受面の曲率より大きく設定されても良い。
【0019】
これによると、軸受面に支軸面が当接する状態では、これらが比較的小さい面積の領域で当接し、この当接領域の外周位置の軸受面と支軸面との間に間隙が形成されるため、ウォームシャフトの姿勢の変化が可能となる。また、支軸面が駆動軸芯を中心とした回転面として形成されているため、調芯機能を維持しつつ、ウォームシャフトの姿勢を滑らかに変化させることも可能となる。
【0020】
本発明は、一対の前記軸受部の何れか少なくとも一方の前記開口部のうち、前記軸受面が形成される部位における前記駆動軸芯と直交する断面が、前記ウォームを前記ホイールギヤに対して離間可能な方向に延びる長孔として形成されると共に、この開口部の内面の一部のうち、前記長孔の長手方向の端部位置に前記支軸面が形成されても良い。
【0021】
これによると、ウォームがホイールギヤから離間する方向に変位する場合でも、ウォームシャフトの外端部が長孔の長手方向に沿って変位するため、ウォーム歯部が、ホイール歯部の歯幅方向に変位する不都合を招くことがなく、異常な噛み合い状態に陥ることもない。
【0022】
本発明は、一対の前記軸受部のうちの一方に前記駆動軸芯に沿う方向に貫通孔が形成され、
当該軸受部に挿入される前記ウォームシャフトの前記外端部と、前記ウォームを駆動回転するアクチュエータの駆動軸とを連結するバネ材が、前記貫通孔に挿通して配置されても良い。
【0023】
これによると、ウォームがホイールギヤから離間する方向に変位することにより、ウォームシャフトの外端部と、アクチュエータの駆動軸との相対的な位置関係が変化する場合でも、バネ材が弾性変形することによりアクチュエータの駆動軸の駆動力をウォームシャフトに伝えることが可能となる。
【0024】
本発明は、前記付勢機構が、前記ウォームシャフトの前記外端部または前記支軸面に当接する球状の当接面を有する当接部材と、この当接部材を付勢するスプリングとを備えても良い。
【0025】
これによると、スプリングで付勢された当接部材が当接することにより、付勢力によって支軸面を軸受面に当接させる状態を維持できる。また、ウォームシャフトが回転する場合には、ウォームシャフトの外端部または支軸面の外面に当接部材が当接するためウォームシャフトの円滑な回転を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ギヤ減速装置の断面図である。
図2】第1軸受機構と第2軸受機構との断面図である。
図3】負荷増大時の第1軸受機構と第2軸受機構との断面図である。
図4図3のIV−IV線断面図である。
図5図3のV−V線断面図である。
図6】別実施形態の第1軸受機構と第2軸受機構との断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、駆動軸芯Xを中心に回転自在なウォームAと、駆動軸芯Xに直交する出力軸芯Yを中心に回動自在なホイールギヤBとをハウジング1に収容してギヤ減速装置100が構成されている。
【0028】
ギヤ減速装置100は、例えば、自動車等の車両において、運転座席のシートバックの姿勢の設定や、パワースライドドアの作動、あるいは、サンルーフの開閉等の駆動源として用いられる。
【0029】
ウォームAは、金属材料や樹脂材料により形成されるものであり、駆動軸芯Xと同軸芯で配置されるウォームシャフト2の中央部に駆動軸芯Xを中心とする螺旋状のウォーム歯部3を備えている。このウォームシャフト2は、両端部が軸受機構Cによって回転自在にハウジング1に支持されている。
【0030】
ホイールギヤBは、出力軸芯Yを中心に円形となるディスク状部5の外周に複数のホイール歯部6を形成しており、ディスク状部5の中央には出力軸芯Yと同軸芯で出力シャフト7を備えている。また、ホイールギヤBは、ハウジング1に対してボールベアリング等の軸受によって回転自在に支持される。
【0031】
この構成から、アクチュエータとしての電動モータ9でウォームAを駆動回転することにより、ホイールギヤBが回転し、出力シャフト7から減速動力が出力される。
【0032】
特に、このギヤ減速装置100では、出力シャフト7に作用する負荷が増大し、ウォームAをホイールギヤBから離間させる方向に大きい力が作用した場合でも、この力の作用による異音の発生を抑制するようにウォームシャフト2の駆動軸芯Xの変位を許容するように軸受機構Cが構成されている。
【0033】
〔軸受機構〕
図1図2に示すように、軸受機構Cは、駆動軸芯Xに沿う方向で電動モータ9から離間する位置(図1で左側)の第1軸受機構C1と、この反対側で電動モータ9に近接する位置(図1で右側)の第2軸受機構C2とで構成されている。各々の軸受機構Cには、ブロック状の軸受部11を備えており、これらの軸受部11はハウジング1に対して嵌め込む状態で支持されている。
【0034】
ウォームシャフト2の両端の外端部2aには、先細り状で滑らかに外方に膨れ、駆動軸芯Xを中心とする回転面となる支軸面2asが形成されている。尚、支軸面2asは調芯機能を有するものであればどのような形状でも良いが、本実施形態では、半球状に成形された支軸面2asを示している。
【0035】
各々の軸受部11は、ウォームシャフト2の外端部2aが挿入される開口部11aを、駆動軸芯Xに沿う方向での一方の端面に形成すると共に、他方の端面には開口部11aに連通する貫通孔11bを駆動軸芯Xに沿う方向に形成している。開口部11aには、支軸面2asの外周に沿う内面形状となる軸受面11asを備えている。
【0036】
特に、駆動軸芯Xに直交する方向視における支軸面2asの曲率が、駆動軸芯Xに直交する方向視における軸受面11asの曲率より少し大きく設定されている。この実施形態では、支軸面2asが半球状であるため、この支軸面2asの半径が、軸受面11asの半径より小さく設定される。
【0037】
図4図5に示すように、各々の軸受部11に形成される開口部11aのうち、軸受面11asが形成される部位において前記駆動軸芯Xと直交する姿勢の断面は、ウォームAをホイールギヤBから離間可能な方向に延びる長孔状に形成され、この開口部11aの内面のうち、長孔の長手方向の両端側(図では上下方向の端部)に前述した軸受面11asが形成される。
【0038】
つまり、開口部11aの長手方向をホイールギヤBのディスク状部5が形成される仮想平面に沿って延びる方向に設定している。これにより、ウォームシャフト2の外端部2aが、開口部11aに沿って変位する場合でも、ウォーム歯部3が、ホイール歯部6の歯幅方向に変位せず、偏った噛合を抑制するように構成されている。
【0039】
具体的な構成として、図4図5に示すように、開口部11aのうち長孔の長手方向の長さ寸法Lが、ウォームシャフト2の外端部2aの直径より充分に大きい値となり、開口部11aのうち長孔の長手方向に直交する幅寸法Wが、ウォームシャフト2の外端部2aの直径より僅かに大きい値に設定されている。
【0040】
尚、第1軸受機構C1と第2軸受機構C2とにおいて、ウォームシャフト2の一対の外端部2aに形成される支軸面2asは等しい形状で形成されている。また、各々の軸受部11の軸受面11asも等しい形状で形成されている。
【0041】
第1軸受機構C1の軸受部11には、ウォームAをホイールギヤBに接近させる付勢力を作用させる付勢機構15を備えている。
【0042】
付勢機構15は、ウォームシャフト2の外端部2aの外周面に当接可能な半球状の当接面を有し、軸受部11のガイド孔部11cにスライド移動自在に収容された当接部材15aと、この当接部材15aを突出付勢する圧縮コイル型のスプリング15bとを備えて構成されている。
【0043】
更に、第2軸受機構C2の軸受部11に支持されるウォームシャフト2の外端部2aと、電動モータ9の出力軸9aとがバネ材17よってトルク伝達自在に連結されている。このバネ材17は貫通孔11bに挿通する位置に配置される。
【0044】
バネ材17は、断面形状が角状で、曲げ方向に柔軟に弾性変形し得る材料が用いられている。そして、このバネ材17の一端側をウォームシャフト2の外端部2aの嵌合孔部に挿通し、他端側を電動モータ9の出力軸9aの嵌合孔に挿通している。尚、バネ材17の一方の端部を、嵌合孔に対してスライド移動自在に挿入しても良い。
【0045】
〔駆動形態〕
電動モータ9が停止する状況、又は、低負荷で駆動される状況では出力シャフト7に作用する負荷が低いため、第1軸受機構C1では、図2に示す如く付勢機構15の付勢力により、ウォームシャフト2の支軸面2asが、軸受部11の開口部11aのうち、ホイールギヤBに近い位置の軸受面11asに当接する状態が維持される。
【0046】
このように付勢機構15の付勢力でウォームシャフト2の姿勢が決まるため、第2軸受機構C2では、ウォームシャフト2の支軸面2asが、軸受部11の開口部11aのうち、ホイールギヤBから離間する位置の軸受面11asに当接する状態が維持される。
【0047】
また、付勢機構15の付勢力でウォームシャフト2の姿勢が決まる状態において、ウォーム歯部3と、ホイール歯部6とが最適な状態で噛合するように設計されている。更に、各々の軸受部11では、ウォームシャフト2の支軸面2asが軸受面11asに当接するため、各々の軸受部11においてウォームシャフト2の外端部2aが調芯状態に達し、ウォームシャフト2の姿勢(駆動軸芯Xの姿勢)が安定する。
【0048】
そして、電動モータ9が駆動され出力シャフト7に作用する負荷が、予め設定された値を超えて上昇した場合には、ウォーム歯部3に対してホイール歯部6から離間させる力が作用する。これにより、第1軸受機構C1の軸受部11では、図3に示すように、付勢機構15のスプリング15bの付勢力に抗して変位する結果、ウォームシャフト2の支軸面2asが、軸受部11の開口部11aのうち、付勢機構15を備えた位置の軸受面11asに当接する状態に達する。
【0049】
このようにウォームシャフト2の姿勢が決まるため、第2軸受機構C2では図3に示す如く、ウォームシャフト2の支軸面2asが、軸受部11の開口部11aのうち、ホイールギヤBに近接する位置の軸受面11asに当接する状態が維持される。
【0050】
また、電動モータ9の出力軸9aの回転力をウォームシャフト2の外端部2aに対してバネ材17によって伝えるため、ウォームシャフト2の姿勢が変化した場合でもバネ材17が撓むように弾性変形した状態で駆動が行われる。
【0051】
このようにウォームシャフト2の姿勢が変化した場合にも、各々の軸受部11では、ウォームシャフト2の支軸面2asが軸受面11asに当接するため、各々の軸受部11においてウォームシャフト2の外端部2aが調芯状態に達し、ウォームシャフト2の姿勢(駆動軸芯Xの姿勢)が安定する。
【0052】
このような構成から、出力シャフト7に過大な負荷が作用した場合には、ウォームAが、ホイールギヤBから離間する方向に変位する。この変位は、長孔状に形成された開口部11aに沿って行われるため、ウォーム歯部3がホイール歯部6の歯幅方向で一方に偏る位置関係に陥ることはない。その結果、ウォーム歯部3とホイール歯部6とが異常な噛み合い状態に陥る不都合を抑制し、異音を発生させることもない。尚、ウォームAが変位することによりウォーム歯部3とホイール歯部6との破損も抑制される。
【0053】
特に、この構成では、ボールベアリング等の軸受を用いない構成でありながら、ウォームシャフト2の駆動軸芯Xの精度を高く維持することを可能にしており、軸受を必要としないため、装置の小型化を可能にし、コストの低減も実現している。
【0054】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0055】
(a)図6に示すように、ウォームシャフト2の両端の外端部2aに対し、先細り状で滑らかに外方に膨れ、駆動軸芯Xを中心とする回転面となる支軸面2asとして、半球と比較して駆動軸芯Xの方向に突出する形状に成形する。
【0056】
この別実施形態では、軸受部11の開口部11aが実施形態と同様に長孔状に形成されるものであり、支軸面2asの曲率が軸受面11asの曲率より大きく設定される。特に、軸受機構Cを構成する第1軸受機構C1に対し、実施形態と同様の構成の付勢機構15を備えるものの、付勢機構15の付勢力により支軸面2asが当接する位置(同図の下側)にだけ軸受面11asを形成している。
【0057】
また、軸受機構Cを構成する第2軸受機構C2では、実施形態と同様に長孔の長手方向(図6で上下方向)の両端側に対して、前述した軸受面11asが形成される。
【0058】
このような構成ものでも、出力シャフト7に作用する負荷が変動した場合には、第2軸受機構C2において調芯状態でウォームシャフト2の外端部2aを支持することが可能となる。
【0059】
(b)付勢機構15を、第1軸受機構C1と第2軸受機構C2との双方に備える。このように付勢機構15を備える場合に、低負荷でウォームシャフト2が実施形態と同様の姿勢に維持されるように、第1軸受機構C1では、実施形態と同じ方向に付勢力を作用させ、第2軸受機構C2では、これと反対側に付勢力を作用させるように構成できる。
【0060】
(c)電動モータ9の駆動力をウォームシャフト2に伝える伝動構造として、ウォームシャフト2の端部と、出力軸9aの端部との間に、トルク伝達自在に嵌合するスプライン構造や、ドッグクラッチと同様の構造を備えることにより、バネ材17を用いないように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ウォームと、これに噛合するホイールギヤとを備えたギヤ減速装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
2 ウォームシャフト
2a 外端部
2as 支軸面
3 ウォーム歯部
6 ホイール歯部
9 電動モータ(アクチュエータ)
11 軸受部
11a 開口部
11b 貫通孔
11as 軸受面
15 付勢機構
15a 当接部材
15b スプリング
17 バネ材
100 ギヤ減速装置
A ウォーム
B ホイールギヤ
C 軸受機構
X 駆動軸芯
Y 出力軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6