特許第6665701号(P6665701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6665701波長変換部材及びその製造方法、並びに発光デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665701
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】波長変換部材及びその製造方法、並びに発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20200302BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   H01L33/50
   G02B5/20
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-120667(P2016-120667)
(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-224780(P2017-224780A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西宮 隆史
(72)【発明者】
【氏名】浅野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 隆
【審査官】 大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/001687(WO,A1)
【文献】 特開2005−183897(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/132236(WO,A1)
【文献】 特開2005−116817(JP,A)
【文献】 特開2014−052606(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/190242(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/084472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
G02B 5/20
H05B 33/00 − 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された励起光の波長を変換するための波長変換部材であって、
底板及び枠状の側壁を有する、容器と、
前記容器内に配置されており、樹脂及び蛍光体を含む、蛍光体層と、
前記容器の側壁の上方に配置されており、前記容器内を封止するためのカバー部材と、
前記容器の側壁と前記カバー部材との間に配置されている、封着材料層と、
を備え、
前記底板が、透明な材料により構成されており、
前記蛍光体層及び前記カバー部材が密着しており、
前記容器の側壁の上方において、前記蛍光体層、前記カバー部材及び前記封着材料層で囲まれた空隙が設けられている、波長変換部材。
【請求項2】
前記蛍光体層が、
樹脂及び蛍光体を含む、第1の層と、
前記第1の層上に設けられており、樹脂を含む、第2の層と、
を有し、
前記第2の層が、前記カバー部材に密着している、請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記第1の層及び前記第2の層の屈折率の差の絶対値が、0.1以下である、請求項2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記第2の層が、蛍光体を含んでいない、請求項2又は3に記載の波長変換部材。
【請求項5】
前記第2の層が、蛍光体をさらに含む、請求項2又は3に記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記第1の層及び前記第2の層が、同じ材料により構成されている、請求項5に記載の波長変換部材。
【請求項7】
請求項〜6のいずれか1項に記載の波長変換部材の製造方法であって、
前記容器内に第1の硬化性樹脂及び蛍光体を充填し、前記第1の硬化性樹脂を硬化させ、上面に凹部を有する第1の層を形成する工程と、
前記第1の層の凹部に、第2の層となる第2の硬化性樹脂を充填する工程と、
前記第2の硬化性樹脂と密着させるように、前記カバー部材を配置する工程と、
前記第2の硬化性樹脂を硬化させ、前記第2の層を形成する工程と、
前記容器の側壁の上部に封着材料を載置した状態で、レーザーを照射することにより前記封着材料を軟化させ、前記容器の側壁及び前記カバー部材を接合させる工程と、
を備える、波長変換部材の製造方法。
【請求項8】
励起光を出射する光源と、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の波長変換部材と、
を備える、発光デバイス。
【請求項9】
前記光源が、前記波長変換部材における前記底板の前記蛍光体層とは反対側の主面上に設けられている、請求項8に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材及びその製造方法、並びに発光デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、蛍光ランプや白熱灯に代わる次世代の光源として、LEDやLD等の励起光源を用いた発光デバイスが注目を集めている。そのような次世代光源の一例として、青色光を出射するLEDと、LEDからの光の一部を吸収して黄色光に変換する波長変換部材とを組み合わせた発光デバイスが広く知られている。この発光デバイスは、LEDから出射された青色光と、波長変換部材から出射された黄色光との合成光である白色光を発する。
【0003】
下記の特許文献1,2には、容器とカバー部材とで囲まれた空間内に、蛍光体層が配置された波長変換部材が開示されている。特許文献1では、容器内が樹脂層及び蛍光体層で完全に充填されており、容器内に空隙が設けられていない。一方、特許文献2では、蛍光体層とカバー部材とが接しておらず、蛍光体層とカバー部材との間に空隙が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/123059号
【特許文献2】特開2015−220330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の波長変換部材のように、容器内が樹脂層や蛍光体層で完全に充填されている場合、発光による熱で蛍光体や樹脂が膨張し、波長変換部材が変形したり破損したりすることがあった。一方、特許文献2の波長変換部材のように、容器内に空隙が設けられている場合、蛍光体層と空間の界面や空間とカバー部材の界面で蛍光が屈折し、光の取り出し効率が十分でなかった。
【0006】
本発明の目的は、熱膨張による変形や破損が生じ難く、かつ光の取り出し効率に優れる、波長変換部材及び該波長変換部材の製造方法、並びに上記波長変換部材を備える、発光デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る波長変換部材は、光源から出射された励起光の波長を変換するための波長変換部材であって、枠状の側壁を有する、容器と、前記容器内に配置されており、樹脂及び蛍光体を含む、蛍光体層と、前記容器の側壁の上方に配置されており、前記容器内を封止するためのカバー部材と、前記容器の側壁と前記カバー部材との間に配置されている、封着材料層と、を備え、前記蛍光体層及び前記カバー部材が密着しており、前記容器の側壁の上方において、前記蛍光体層、前記カバー部材及び前記封着材料層で囲まれた空隙が設けられていることを特徴としている。
【0008】
本発明においては、前記蛍光体層が、樹脂及び蛍光体を含む、第1の層と、前記第1の層上に設けられており、樹脂を含む、第2の層と、を有し、前記第2の層が、前記カバー部材に密着していることが好ましい。
【0009】
本発明においては、前記第1の層及び前記第2の層の屈折率の差の絶対値が、0.1以下であることが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記第2の層が、蛍光体を含んでいなくてもよい。
【0011】
本発明においては、前記第2の層が、蛍光体をさらに含んでいてもよい。
【0012】
本発明においては、前記第1の層及び前記第2の層が、同じ材料により構成されていてもよい。
【0013】
本発明に係る波長変換部材の製造方法は、本発明に従って構成される波長変換部材の製造方法であって、前記容器内に第1の硬化性樹脂及び蛍光体を充填し、前記第1の硬化性樹脂を硬化させ、上面に凹部を有する第1の層を形成する工程と、前記第1の層の凹部に、第2の層となる第2の硬化性樹脂を充填する工程と、前記第2の硬化性樹脂と密着させるように、前記カバー部材を配置する工程と、前記第2の硬化性樹脂を硬化させ、前記第2の層を形成する工程と、前記容器の側壁の上部に封着材料を載置した状態で、レーザーを照射することにより前記封着材料を軟化させ、前記容器の側壁及び前記カバー部材を接合させる工程と、を備える。
【0014】
本発明に係る発光デバイスは、励起光を出射する光源と、本発明に従って構成される波長変換部材と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱膨張による変形や破損が生じ難く、かつ光の取り出し効率に優れる、波長変換部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る波長変換部材を示す模式的断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る波長変換部材における第1の層を拡大して示す模式的断面図である。
図3】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る波長変換部材の製造方法を示す模式的断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る波長変換部材を示す模式的断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る波長変換部材を示す模式的断面図である。
図6】本発明の第4の実施形態に係る発光デバイスを示す模式的断面図である。
図7】本発明の第5の実施形態に係る発光デバイスを示す模式的断面図である。
図8】比較例の波長変換部材を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0018】
[波長変換部材]
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る波長変換部材を示す模式的断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る波長変換部材における第1の層を拡大して示す模式的断面図である。図1に示すように、波長変換部材1は、容器2、蛍光体層6、カバー部材5及び封着材料層9を備える。
【0019】
容器2は、底板3及び側壁4を有する。本実施形態において、底板3の平面形状は、矩形板状である。もっとも、底板3の平面形状は、円状や、楕円状であってもよく、特に限定されない。底板3上に、枠状の側壁4が配置されている。底板3上に側壁4が配置されることにより、容器2の凹部2aが構成されている。
【0020】
側壁4の上面4a上に、カバー部材5が配置されている。カバー部材5は、容器2内を封止するための部材である。なお、側壁4と、カバー部材5との間には、封着材料層9が設けられている。封着材料層9によって、側壁4と、カバー部材5とが接合されている。
【0021】
容器2の凹部2a内に、蛍光体層6が配置されている。蛍光体層6は、第1の層7及び第2の層8を有する。第1の層7上に、第2の層8が設けられている。第2の層8は、カバー部材5と密着している。
【0022】
図2に示すように、第1の層7は、蛍光体14及び樹脂13により構成されている。蛍光体14は、樹脂13中に分散されている。図1に戻り、第2の層8は、樹脂により構成されている。本実施形態において、第2の層8は、蛍光体を含んでいない。もっとも、本発明においては、第2の層8が、蛍光体を含んでいてもよい。
【0023】
また、容器2の凹部2a内には、空隙10が設けられている。空隙10は、側壁4の上方に設けられている。空隙10は、蛍光体層6、カバー部材5及び封着材料層9で囲まれている。
【0024】
波長変換部材1は、光源から出射される励起光11の波長を変換する。より具体的には、波長変換部材1における底板3から励起光11が入射する。入射した励起光11は、底板3を通り、蛍光体層6に入射する。励起光11により蛍光体層6における蛍光体14が励起され、蛍光12が出射される。蛍光12もしくは蛍光12と励起光11との混合光は、カバー部材5を通って出射される。なお、本実施形態において、空隙10は、蛍光12もしくは蛍光12と励起光11との混合光の光路に設けられていない。上記光路においては、第2の層8がカバー部材5に接するように設けられている。上記光路とは、側壁4の内側面4bより内側の領域のことをいうものとする。
【0025】
上記のように、本実施形態では、側壁4の上方に空隙10が設けられているので、発光による熱で蛍光体14や樹脂13が膨張した場合においても、空隙10の体積が圧縮されるため、波長変換部材1の変形や、破損が生じ難い。また、波長変換部材1では、光路において、空隙10が設けられていないので、光の取り出し効率に優れている。これを、以下、比較例の波長変換部材を用いてより詳細に説明する。
【0026】
図8は、比較例の波長変換部材を示す模式的断面図である。図8に示すように、波長変換部材101においては、光路において、第2の層が設けられていない。より具体的には、光路において、第1の層7とカバー部材5との間に、空隙110が設けられている。従って、波長変換部材101では、光路において、第1の層7と空隙110との界面、すなわち第1の層7と空気との界面が形成される。第1の層7は、蛍光体14及び樹脂13により構成されているので、空気との屈折率差が大きい。そのため、第1の層7と空隙110との界面において、光の一部が反射され、光の取り出し効率が低下することとなる。
【0027】
一方、本実施形態では、光路において、第1の層7とカバー部材5との間に空隙が設けられていない。本実施形態では、光路において、第1の層7とカバー部材5との間に、第2の層8が設けられている。第2の層8は樹脂により構成されているため、第1の層7と第2の層8と屈折率の差の絶対値は、第1の層7と空気との屈折率の差の絶対値より小さくなる。よって、本実施形態の波長変換部材1では、第1の層7と第2の層8との界面で光が反射され難く、光の取り出し効率に優れている。
【0028】
光の取り出し効率をより一層高める観点から、第1の層7及び第2の層8の屈折率(nd)の差の絶対値は、0.1以下であることが好ましい。より好ましくは0.08以下であり、さらに好ましくは0.05以下であり、特に好ましくは0.03以下であり、最も好ましくは0.01以下である。
【0029】
さらに、光の取り出し効率をより一層高めるには、カバー部材5と第2の層8との界面で光が屈折したり、または反射することを抑制することが好ましく、カバー部材5及び第2の層8の屈折率(nd)の差を、0.20以下とすることが好ましい。より好ましくは0.12以下であり、さらに好ましくは0.08以下であり、特に好ましくは0.04以下であり、最も好ましくは0.01以下である。
【0030】
以下、図3(a)〜(d)を参照して、一例としての波長変換部材1の製造方法について説明する。
【0031】
製造方法;
まず、容器2を用意する。容器2は、底板3上に枠状の側壁4を載置した状態で、底板3と側壁4とを接合させることにより形成することができる。底板3と側壁4とを接合する方法としては、特に限定されず、ガラスフリットなどの封着材料を用いて接合してもよいし、接着剤を用いて接合してもよい。また、容器2としては、底板3及び側壁4が一体成形されたものを用意してもよい。
【0032】
次に、容器2の凹部2a内に、第1の硬化性樹脂及び蛍光体を充填する。この際、図3(a)に示すように、第1の硬化性樹脂及び蛍光体は、側壁4の上面4aと同じ高さまで充填することが好ましい。続いて、図3(b)に示すように、第1の硬化性樹脂を硬化させ、上面に凹部7aを有する第1の層7を形成する。
【0033】
次に、第1の層7の凹部7aに、第2の層8となる第2の硬化性樹脂8Aを充填する。この際、図3(c)に示すように、第2の硬化性樹脂8Aは、側壁4の上面4aより高くなるように充填することが好ましい。第2の硬化性樹脂8Aの量を調整することで、側壁4の上方における空隙10の大きさを制御することができる。
【0034】
次に、図3(d)に示すように、容器2の側壁4の上面4a上に、封着材料9Aを介して、カバー部材5を載置する。この際、カバー部材5は、第2の硬化性樹脂8Aと密着するように載置する。この状態で、第2の硬化性樹脂8Aを硬化させ、第2の層8を形成する。次に、側壁4の上面4a上に封着材料9Aを介してカバー部材5を配置した状態で、レーザー光源からレーザーを照射し、封着材料9Aを軟化させ、容器2の側壁4及びカバー部材5を接合させる。それによって、図1に示す、波長変換部材1を得る。なお、レーザーとしては、例えば、波長が、600nm〜1600nmのレーザーを用いることができる。
【0035】
本実施形態の製造方法で得られた波長変換部材1では、側壁4の上方に空隙10が設けられている。そのため、発光による熱で蛍光体14や樹脂13が膨張した場合においても、空隙10の体積が圧縮されるため、波長変換部材1の変形や、破損が生じ難い。また、波長変換部材1では、光路において、空隙10が設けられていないので、光の取り出し効率に優れている。また、波長変換部材1では、封着材料層9の近傍に空隙10が形成されており、封着材料層9の近傍に樹脂が存在していない。そのため、レーザー照射の際発生する熱によって、樹脂が揮発し難い。
【0036】
以下、波長変換部材1などの本発明の波長変換部材を構成する各材料の詳細を説明する。
【0037】
容器;
容器は、底板及び側壁を有する。側壁は、底板上に設けられている。
【0038】
底板は、透明な材料により構成することができる。底板を構成する材料としては、例えばガラスを用いることができる。ガラスとしては、例えば、SiO−B−RO(RはMg、Ca、SrまたはBa)系ガラス、SiO−B−R’O(R’はLi、NaまたはKa)系ガラス、SiO−B−RO−R’O(R’はLi、NaまたはKa)系ガラス、SnO−P系ガラス、TeO系ガラス又はBi系ガラスなどを用いることができる。
【0039】
側壁は、反射率の高いセラミックスにより構成されていることが好ましい。この場合、励起光や蛍光を反射させることができるので、光の利用効率をより一層高めることができる。反射率の高いセラミックスとしては、例えば、低温同時焼結セラミックス(LTCC)が挙げられる。LTCCとしては、例えば、アルミナ−ガラス系セラミックスを用いることができる。
【0040】
なお、容器は、底板及び側壁が一体成形されたものであってもよい。底板及び側壁が一体成形された容器とすることで、容器の凹部内に充填した樹脂を硬化させる際に、容器が変形するのをより一層抑えることができる。
【0041】
第1の層;
第1の層は、樹脂及び蛍光体を含む。蛍光体は、樹脂中に分散されていることが好ましい。
【0042】
第1の層に含まれる樹脂としては、例えば、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂が用いられる。具体的には、例えば、エポキシ系硬化樹脂、アクリル系紫外線硬化樹脂、シリコーン系硬化樹脂等を用いることができる。上記硬化性樹脂は、透光性樹脂であることが望ましい。
【0043】
蛍光体としては、例えば、量子ドットを用いることができる。量子ドットとしては、II−VI族化合物、及びIII−V族化合物が挙げられる。II−VI族化合物としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTeなどが挙げられる。III−V族化合物としては、InP、GaN、GaAs、GaP、AlN、AlP、AlSb、InN、InAs又はInSbなどが挙げられる。これらの化合物から選択される少なくとも1種、またはこれら2種以上の複合体を量子ドットとして用いることができる。複合体としては、コアシェル構造のものが挙げられ、例えばCdSe粒子表面がZnSによりコーティングされたコアシェル構造のものが挙げられる。
【0044】
蛍光体は、量子ドットに限定されるものではなく、例えば、酸化物蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、塩化物蛍光体、酸塩化物蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体、ハロゲン化物蛍光体、カルコゲン化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ハロリン酸塩化物蛍光体又はガーネット系化合物蛍光体などの無機蛍光体粒子などを用いてもよい。
【0045】
第2の層;
第2の層は、樹脂を含む。第2の層は、蛍光体を含んでいてもよいし、含んでいなくともよい。
【0046】
第2の層に含まれる樹脂としては、例えば、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂が用いられる。具体的には、例えば、エポキシ系硬化樹脂、アクリル系紫外線硬化樹脂、シリコーン系硬化樹脂等を用いることができる。上記硬化性樹脂は、透光性樹脂であることが望ましい。
【0047】
なお、第2の層に蛍光体が含まれる場合は、上述の第1の層で例示した適宜の蛍光体を用いることができる。
【0048】
封着材料層;
封着材料層は、例えば、ガラスフリットなどの封着材料により構成することができる。
ガラスフリットとしては、レーザーの照射により溶融するガラスフリットを用いることができる。
【0049】
レーザーの照射により溶融するガラスフリットとしては、例えば、SnO含有ガラス粉末を含有する無機粉末と、顔料とを含むガラスフリットが挙げられる。
【0050】
SnO含有ガラスは、ガラス組成として、モル%で、SnO 35〜70%、P 10〜30%を含有することが好ましい。SnOは、ガラスを低融点化する成分である。また、Pは、ガラスの熱的安定性を高める成分である。
【0051】
さらに、SnO含有ガラスは、ZnO、B、Al、SiO、In、Ta、La、MoO、WO、LiO、NaO、KO、MgO、BaO又はFなどを含んでいてもよい。
【0052】
顔料は、無機顔料が好ましく、容易にレーザー光を吸収して発熱させるためFe、Mn及びCuなどから選ばれる少なくとも1種の金属または上記金属を含有する化合物を含んでいることがより好ましい。
【0053】
カバー部材;
カバー部材は、透明な材料により構成することができる。カバー部材を構成する材料としては、例えばガラスを用いることができる。ガラスとしては、例えば、SiO−B−RO(RはMg、Ca、SrまたはBa)系ガラス、SiO−B−R’O(R’はLi、NaまたはKa)系ガラス、SiO−B−RO−R’O系ガラス(R’はLi、NaまたはKa)、SnO−P系ガラス、TeO系ガラス又はBi系ガラスなどを用いることができる。
【0054】
底板やカバー部材がガラスにより構成されている場合、水分や酸素の透過をより一層抑制することができる。この場合、蛍光体層に含まれる蛍光体が劣化し難いため、信頼性の高い波長変換部材とすることができる。
【0055】
(第2及び第3の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る波長変換部材を示す模式的断面図である。波長変換部材21では、第2の層8が第1の層7と同じ材料によって構成されている。従って、第2の層8は、樹脂及び蛍光体により構成されており、樹脂中に蛍光体が分散されている。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0056】
また、図5は、本発明の第3の実施形態に係る波長変換部材を示す模式的断面図である。波長変換部材31では、蛍光体層6において、第1の層と第2の層とが一体化されている。なお、蛍光体層6は、波長変換部材1の第1の層7と同じ材料により構成されている。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
第2及び第3の実施形態においても、側壁4の上方に空隙10が設けられているので、発光による熱で蛍光体や樹脂が膨張した場合においても、波長変換部材21,31の変形や、破損が生じ難い。また、波長変換部材21,31では、光路において、空隙10が設けられていないので、光の取り出し効率に優れている。
【0058】
なお、第2の実施形態では、第1の層7及び第2の層8が同じ材料により構成されており、第1の層7及び第2の層8の屈折率の差の絶対値がより一層小さくされている。そのため、光の取り出し効率がより一層高められている。
【0059】
さらに、第3の実施形態では、第1の層及び第2の層が一体化されており、第1の層及び第2の層の界面が存在していない。よって、光の取り出し効率がさらに一層高められている。
【0060】
[発光デバイス]
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態に係る発光デバイスの模式的断面図である。図6に示すように、発光デバイス41は、光源チップ42と、波長変換部材1とを備える。光源チップ42は、波長変換部材1の底板3における主面3b上に設けられている。なお、主面3bは、底板3の蛍光体層6とは反対側の主面である。
【0061】
光源チップ42としては、例えば、青色光を発するLED光源やレーザー光源などの光源が用いられる。
【0062】
発光デバイス41においては、光源チップ42から出射された励起光11が、底板3を通って、蛍光体層6に入射する。波長変換部材1に入射した励起光11は波長変換され、蛍光12として外部に出射される。例えば、励起光11として、青色光を用いる場合、波長変換部材1で、青色光を、黄色光に変換し、蛍光12として、青色光と黄色光を合成してなる白色光を出射させることができる。
【0063】
(第5の実施形態)
図7は、本発明の第5の実施形態に係る発光デバイスの模式的断面図である。図7に示すように、発光デバイス51では、波長変換部材1における底板3の主面3a上に、光源チップ52が設けられている。なお、底板3の主面3aは、底板3の蛍光体層6側の主面である。
【0064】
発光デバイス51においては、光源チップ52から出射された励起光11が、直接蛍光体層6に入射する。その他の点は、第4の実施形態と同様である。
【0065】
第4及び第5の実施形態に係る発光デバイス41,51は、第1の実施形態に係る波長変換部材1を備えており、側壁4の上方に空隙10が設けられているので、発光による熱で蛍光体や樹脂が膨張した場合においても、発光デバイス41,51の変形や、破損が生じ難い。また、発光デバイス41,51では、光路において、空隙10が設けられていないので、光の取り出し効率に優れている。
【符号の説明】
【0066】
1,21,31…波長変換部材
2…容器
2a…凹部
3…底板
3a,3b…主面
4…側壁
4a…上面
4b…内側面
5…カバー部材
6…蛍光体層
7,8…第1,第2の層
7a…凹部
8A…第2の硬化性樹脂
9…封着材料層
9A…封着材料
10…空隙
11…励起光
12…蛍光
13…樹脂
14…蛍光体
41,51…発光デバイス
42,52…光源チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8