特許第6665706号(P6665706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665706
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】歯牙美白用組成物及び歯牙美白用セット
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/24 20060101AFI20200302BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20200302BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20200302BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20200302BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   A61K8/24
   A61K8/34
   A61K8/86
   A61Q11/00
   A61K8/39
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-126199(P2016-126199)
(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公開番号】特開2018-2594(P2018-2594A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 亜希
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−104101(JP,A)
【文献】 国際公開第03/030851(WO,A1)
【文献】 特表2008−533130(JP,A)
【文献】 特開2008−081424(JP,A)
【文献】 特開2005−187330(JP,A)
【文献】 特開2000−281548(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105343163(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1,3−ブチレングリコール及び平均分子量380〜630のポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の多価アルコールを70質量%以上、
(B)縮合リン酸塩、及び
(C)水を15質量%以下
含有し、(B)/(C)が質量比として0.18以下であることを特徴とする歯牙美白用組成物。
【請求項2】
(A)成分が歯牙白色化成分として配合され、前記多価アルコールの含有量が70〜95質量%である請求項1記載の歯牙美白用組成物。
【請求項3】
(C)水の含有量が1〜15質量%であり、(B)/(C)が質量比として0.01〜0.18である請求項1又は2記載の歯牙美白用組成物。
【請求項4】
(B)縮合リン酸塩の含有量が0.1〜3質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の歯牙美白用組成物。
【請求項5】
更に、増粘剤を0.2〜5質量%含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の歯牙美白用組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の歯牙美白用組成物と、この組成物を保持した状態で、歯に接触させて適用し、脱着可能に装着させる適用用具とを備えてなることを特徴とする歯牙美白用セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙白色化効果と歯の表面に蓄積した着色物を除去するステイン除去効果とが優れ、歯牙の美白に有効な歯牙美白用組成物及び歯牙美白用セットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯を白くしたいという生活者ニーズは高い。歯を自分本来の歯よりもさらに白くする技術としては、過酸化水素や過酸化尿素などの過酸化物を用いた漂白技術がある。しかしながら、それらは専門の知識、技術を持つ歯科医の管理の下で行うものであり、知覚過敏症の発現など、為害性のリスクも高い。また、歯のマニキュアによって白色化する技術もあるが、使用する塗布剤が、飲食などにより剥がれ落ちてしまう問題がある。
【0003】
そこで、出願人は、特別な専門知識や専門技術を持たなくても自分自身で簡便に、かつ安全に歯を白くする技術として、ポリエチレングリコールなどの液体をエナメル質表層下に浸透させ、光の屈折率を変えることにより歯を白く見せる技術を提案した(特許文献1、2)。また、ポリグリセリンと増粘剤を特定比率で含有することにより、歯を白く見せる技術を提案した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4471084号公報
【特許文献2】特許第4462428号公報
【特許文献3】特許第4656324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術は、歯牙の白色化時間や白色化効果に未だ改善の余地があり、更なる改善によって歯牙を効果的に美白する技術の開発が望まれた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、歯牙白色化効果と歯の表面に蓄積した着色物を除去するステイン除去効果とが優れ、歯牙の美白に有効な歯牙美白用組成物及び歯牙美白用セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)1,3−ブチレングリコール及び平均分子量380〜630のポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の多価アルコールを特定量以上と、(B)縮合リン酸塩と、(C)水を特定量以下とを配合し、(B)/(C)の質量比を特定値以下にすることによって、歯牙白色化効果及び歯の表面に蓄積した着色汚れを除去するステイン除去効果が優れ、また、刺激が抑制され使用感も良好であり、歯牙の美白に有効な歯牙美白用組成物を得ることができることを知見し、本発明をなすに至った。
更に、本発明者らは、前記歯牙美白用組成物は、この組成物を保持した状態で、歯に接触させて適用し、かつ脱着可能に装着させる適用用具を備える歯牙美白用セットによって、前記歯牙白色化効果及びステイン除去効果をより効果的に付与できることも見出した。
【0008】
歯牙白色化作用がある多価アルコールを配合した歯牙美白用組成物に、ステイン除去作用がある縮合リン酸塩を配合し、前記多価アルコールによる歯牙白色化効果と縮合リン酸塩によるステイン除去効果とを同時かつ満足に発現させることは難しく、後述の比較例に示すように不適切な多価アルコールと縮合リン酸塩とを併用して配合すると白色化効果が低下し、また、水の添加量が適切でないと、白色化効果やステイン除去効果を十分に発現させることができなくなるという問題が生じるが、本発明では、(A)、(B)、(C)成分とを組み合わせると、(C)成分量が特定値以下、かつ(B)/(C)の質量比が特定値以下において、前記問題を発生させることなく優れた歯牙白色化効果及びステイン除去効果を両立し、特異的かつ格別な作用効果を付与できる。
本発明によれば、過酸化物を使用しなくても歯牙を白色化する優れた白色化効果及び高いステイン除去効果を同時に与え、両効果を兼ね備えることで歯牙美白効果の更なる向上、歯が白くなってきれいに美白されたという満足な効果実感の付与も期待でき、簡便かつ安全な歯牙の美白が可能となる。
【0009】
従って、本発明は、
(A)1,3−ブチレングリコール及び平均分子量380〜630のポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の多価アルコールを70質量%以上、
(B)縮合リン酸塩、及び
(C)水を15質量%以下
含有し、(B)/(C)が質量比として0.18以下であることを特徴とする歯牙美白用組成物、及び前記歯牙美白用組成物と、この組成物を保持した状態で、歯に適用し、かつ脱着可能に装着させる適用用具とを備えてなることを特徴とする歯牙美白用セットを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、歯牙白色化効果と歯の表面に蓄積した着色物を除去するステイン除去効果とが優れ、歯牙の美白に有効な歯牙美白用組成物及び歯牙美白用セットを提供できる。本発明では、特別な専門知識や専門技術を持たなくても、満足に、しかも、簡便かつ安全に歯牙の美白を行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳述すると、本発明の歯牙美白用組成物は、(A)歯牙白色化成分として1,3ブチレングリコール及び平均分子量380〜630のポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の多価アルコール、(B)ステイン除去成分として縮合リン酸塩、及び(C)水を含有する。本発明では、美白成分を含む組成物が液状、ペースト状、ゲル状等の形態に調製され、歯の表面に接触した状態で使用され、この場合、前記組成物を保持した状態で、歯に確実に適用して保持、固定し、歯に脱着可能に装着させる専用の適用用具と併せて、歯牙美白用セットとして使用することが好ましい。
【0012】
(A)成分は、歯牙白色化成分であり、1,3−ブチレングリコール及び平均分子量380〜630のポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の多価アルコールであり、好ましくは1,3−ブチレングリコールである。
(A)成分の多価アルコールは、エナメル質表層下に浸透し、エナメル質結晶中の水分と置換して、光の屈折率を変えることで、見かけ上エナメル質が白濁して白く見えることで、歯を白く見せる白色化作用を奏し、これにより、本発明組成物は、過酸化水素等の過酸化物を含有しなくても歯を白色化でき、安全性が高いものである。また、白色化後は、数時間で唾液等によって、エナメル質内部に浸透していた白色化成分が再び水分に置換されることで元の歯の色に戻る、可逆的な白色化作用である。
【0013】
1,3−ブチレングリコールは、口腔内で使用可能な市販のものを使用できる。例えば(株)ダイセル製のものを使用できる。
また、平均分子量380〜630のポリエチレングリコールは、市販のものが使用できる。上記平均分子量は、医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量を示す(以下、同様。)。具体的には、ポリエチレングリコール400(平均分子量380〜420)、ポリエチレングリコール600(平均分子量570〜630)が例示できる。なお、商品によっては、例えばポリエチレングリコール#400等のように、ポリエチレングリコールと数値の間に#がつく場合がある。このようなポリエチレングリコールとしては、例えばライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製や第一工業製薬(株)製のものを使用できる。
【0014】
(A)成分の多価アルコールの含有量は、組成物全体の70%(質量%、以下同様。)以上であり、好ましくは70〜95%、より好ましくは75〜90%、更に好ましくは80〜90%である。含有量が70%に満たないと、十分な白色化効果が得られない。含有量が95%以下であることが、ステイン除去効果の維持、刺激の抑制には好適である。含有量が多すぎると、ステイン除去効果が劣ったり、刺激が強くなる場合がある。
【0015】
本発明においては、更に、(A)成分以外の多価アルコールとして、特に、平均分子量が380未満、特に320以下であるポリエチレングリコール、具体的にはポリエチレングリコール200(平均分子量190〜210)、ポリエチレングリコール300(平均分子量280〜320)は、本発明の効果を妨げない範囲で添加してもよいが、白色化効果を十分に維持するには添加しすぎないほうが好ましく、無添加であることがより好ましい。これらの添加量は、組成物全体に対して、好ましくは15%以下、特に0〜12%であり、より好ましくは無添加の0%である。
【0016】
(B)縮合リン酸塩は、ステイン除去成分であり、歯の表面に蓄積した着色汚れを除去することで、美白効果を向上する。特に、本発明において、(B)縮合リン酸塩のステイン除去効果は、ポリリン酸塩がステインを表層から溶解、研磨又は脱色する効果より、ポリリン酸塩がステイン層に浸透、透過して歯牙表層のエナメル質に到達し、ステインとエナメル質との結合を弱めステインを歯牙表層から剥離することで、化学的作用によって、高い除去効果を発揮する。
縮合リン酸塩としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等の直鎖状のポリリン酸のナトリウム塩、カリウム塩、トリメタリン酸、テトラメタリン酸等の環状のポリリン酸のナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用し得る。特に、直鎖状ポリリン酸塩が好ましく、中でもトリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが好適であり、トリポリリン酸ナトリウムが最も好ましい。
(B)成分の縮合リン酸塩は、市販のものが使用でき、例えば、太平化学産業(株)製等が挙げられる。
【0017】
(B)縮合リン酸塩の含有量は、組成物全体の0.1〜3%が好ましく、より好ましくは0.3〜2.5%、特に好ましくは0.5〜2%である。含有量が多いほどステイン除去効果は高まるが、多く含有しすぎないほうが刺激を抑え使用感を良好に維持できる。3%を超えると、口腔への刺激が高くなって使用感に劣る場合がある。
【0018】
(C)水は、市販のものが使用できる。(C)水の含有量は、組成物全体の15%以下であり、好ましくは1〜15%、より好ましくは3〜10%である。含有量が15%を超えると、白色化効果が得られない。1%以上であると、(B)成分のステイン除去効果が十分に得られ、刺激が十分に抑制される。
【0019】
また、本発明において、(B)成分と(C)成分との配合比率を示す(B)/(C)は、質量比として0.18以下であり、好ましくは0.01〜0.18、より好ましくは0.02〜0.15である。(B)/(C)が0.18を超えると、(B)成分のステイン除去効果が劣り、また、(B)成分の刺激が強く発現して使用時の刺激が強くなり、使用感が劣る。更に、(B)成分の割合が大きくなることで(B)成分が溶解し難くなり、製剤の外観や安定性に悪影響を与える可能性がある。(B)/(C)が0.01に満たないと、ステイン除去効果が満足に得られなくなる場合がある。
【0020】
本発明では、例えば組成物の粘度を高めたり、ゲル化、ペースト化して歯への塗布性、歯への粘着性を向上させる目的で、増粘剤を使用することができる。増粘剤は、組成物を使用方法に合わせた粘度に調整でき、口腔用製剤に使用できるものであればよい。例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カーボポール、ビーガム、アルギン酸プロピレングリコール、寒天、ゼラチン、デンプン、グルコマンナン等の有機増粘剤、増粘性シリカ、ケイ酸アルミニウム等の無機増粘剤が挙げられ、これらは1種又は2種以上使用し得る。好ましい増粘剤は、ヒドロキシ基を有するセルロース誘導体であり、特にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、より好ましい。このような増粘剤を配合すると、白色化効果及びステイン除去効果がより向上する。増粘剤の添加量は、組成物全体の0〜5%が望ましく、添加する場合は0.2%以上であることが望ましい。
【0021】
本発明の歯牙美白用組成物には、上記成分に加えて、口腔用製剤に配合可能なその他の公知成分を本発明の効果を損なわない範囲で、使用目的、剤型等に応じて配合できる。例えば、清掃剤、界面活性剤、湿潤剤、甘味剤、防腐剤、pH調整剤、香料、薬効成分等が挙げられる。
【0022】
清掃剤としては、水不溶性の粉体又は顆粒が好ましい。
粉体としては、例えば、シリカゲル、沈降性シリカ、ジルコノシリケート等のシリカ系化合物、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム等のリン酸系化合物、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂化合物などが挙げられる。
【0023】
また、顆粒は、水不溶性粉体を顆粒状に形成させた顆粒、水不溶性粉体を水不溶性無機結合剤で造粒させた顆粒、水不溶性粉体を水不溶性有機結合剤で造粒させた顆粒を用いることができるが、特に水不溶性粉体を顆粒状に形成させた顆粒が好ましい。
具体的には、無水ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ酸チタニウム、ケイ酸ジルコニウムなどのシリカ系粒子や、ゼオライト、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの無機化合物やこれら成分の造粒物、寒天、ゼラチン、デンプン、グルコマンナンなどの天然高分子や、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニルなどの合成高分子からなる顆粒、またはこれらの成分を混合して得られた顆粒を用いることができる。
【0024】
シリカ顆粒としては、湿式法のゲル法シリカ、沈降法シリカが好適に用いられ、一次粒子径は3〜15nm程度、好ましくは4〜10nmが良好である。例えば、ゲル法で4〜10nm程度に一次粒子径を成長させたシリカゲルの塊を洗浄、乾燥させた後に粉砕して平均粒径が50〜400μmであるシリカ顆粒に分級する方法、シリカヒドロゾルを空気中に噴霧させゲル化させることで顆粒を調製する方法、また、沈降法で一次粒子の成長を抑えながら凝集させた後に一次粒子径を4〜10nm程度に成長させることで調製する方法などが知られており、これら方法でシリカ顆粒を調製できる。中でも、ゲル法で調製したシリカゲルの塊を粉砕する方法は製造上簡便であり、分級による平均粒径のコントロールが容易であることから、好適である。このような方法で調製することで、適切な平均崩壊強度を有する顆粒を得ることができる。
このような顆粒としては、市販品を使用でき、具体的にシリカ顆粒として、PQコーポレーション社のSORBOSIL BFG10、SORBOSIL BFG50、東ソーシリカ社のNIPGEL AY−001、BY−001、CY−001、HUBER社のZeodent 9175等の顆粒が挙げられるがこれらに制限されるものではない。
清掃剤は、1種又は2種以上を組み合わせて配合でき、その配合量は、組成物全体の0〜5%が好ましい。
【0025】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、を1種単独で又は2種以上を組み合わせて配合できる。
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム等のN−アシルタウリン酸塩、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸系界面活性剤、アシルサルコシンナトリウムなどが挙げられる。
両性界面活性剤としては、アミドプロピルベタイン型両性界面活性剤、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、アミンオキシド型両性界面活性剤などが挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル酸モノ又はジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、プルロニック等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
これら界面活性剤の配合量は、組成物全体の0〜1%が好ましい。
【0026】
湿潤剤としては、(A)成分以外の多価アルコールや糖アルコール、例えばソルビット、エリスリトール、還元でんぷん糖化物、グリセリン、プロピレングリコールが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて配合できる。配合量は、組成物全体の0〜5%が好適である。
【0027】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペルラルチン、グリチルリチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、アセスルファムK等が挙げられる。甘味剤の配合量は、組成物全体の0.01〜1%が好ましい。
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
pH調整剤としては、クエン酸、乳酸などの有機酸やその塩類、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の無機化合物が挙げられる。
【0028】
香料としては、公知の香料、例えばメントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、n−デシルアルコール、シトロネロール、α−テレピネオール、シトロネリルアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、桂葉油、シソ油、冬緑油、丁字油、ユーカリ油等が挙げられる。組成物中への香料の配合量は0.01〜1.5%とすることができる。
【0029】
薬効成分としては、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ等の酵素、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アズレン、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸塩、塩化ナトリウム、ビタミン類等の抗炎症剤、イソプロピルメチルフェノール、銅クロロフィル、グルコン酸銅、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、塩化リゾチーム等の殺菌剤やゼオライト等の歯石予防剤、ビタミンEなどの血行促進剤、グリシン、プロリンなどのアミノ酸類などを配合できる。なお、薬効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0030】
その他にも、任意成分として、ポリ酢酸ビニル、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ナイロン末、ポリエチレン末等の合成高分子化合物及びそれらの共重合体、カルナバワックス、ロジン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、パラフィンワックス等のワックス類、セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ウレタン、シリコン、天然ゴム等のラテックスゴムを架橋、重合、成形することにより得られたもの、あるいは、これらの原料を混合して得られたものやラメフィルムを用いることができる。
【0031】
本発明の組成物は、口腔用製剤と同様に常法を採用して調製することができる。例えば、(C)成分に(B)成分などの水溶性成分を溶解し、(A)成分を加え、必要に応じて、加熱しながら増粘剤を添加し膨潤させる方法が適している。
【0032】
本発明の歯牙美白用組成物は、歯の表面に接触した状態で使用し、この場合、歯への保持、固定用の適用用具を併用することが好ましい。適用用具は、歯牙美白用組成物の歯への確実な適用、固定を補助すると共に、使用中の組成物の歯肉、舌及び口腔粘膜への溶出を抑え、不快な使用感や唾液の誘発を防ぎ、更に唾液の侵入や咬合、咀嚼、その他物理的な刺激による組成物の希釈や歯からの離脱を防ぐ目的で使用される。
具体的な適用剤型としては、ペースト状組成物を支持体に展延した貼付シート(パック剤)、液体組成物を吸液性シートやスポンジに含浸させた含浸シートや含身体の他、歯科用トレー、マウストレー、マウスピース、歯列に成型した歯のカバー等が、好適に用いられる。
前記貼付シートの支持体としては、不織布、織布、ニット、ガーゼ等の繊維シート、フィルム等が挙げられる。特に、組成物を展延しない面(外側)の材質を親水性、吸水性の高い素材、例えばレーヨン、パルプ、綿、絹、紙等を使った繊維シートで構成することにより、前記素材が口中で発生した唾液を吸収し保持するため、好ましい。更に、美白用組成物を展延する面(歯への適用側)には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の水不透過性フィルムを組み合わせることで、美白用組成物への唾液の進入をより防ぐことが可能であり、より好適である。前記支持体に本発明の美白組成物を展延した貼付シートは、組成物面を歯に貼付して、使用することができる。
前記含浸シートのシートとしては、不織布、織布、網布、ガーゼ等の吸液性を有するシートが挙げられ、液状組成物をこれらに含浸させて歯に当てて、使用することができる。
歯科用トレー、マウストレー、マウスピース、歯列に成型した歯のカバーは、ペースト状の組成物をマウスピースに入れて歯に接触するように適用することができる。
【0033】
本発明の美白組成物を歯に接触させる時間は、3〜15分間が好ましい。このように適用すると、白色化効果及びステイン除去効果がより優れる。歯に接触させる時間が3分間未満であると、十分なステイン除去効果及び白色化効果が得られない場合があり、15分間を超えると刺激を生じることがある。
使用後は、歯の表面から組成物を紙や布で拭い取ったり、歯ブラシなどを用いて歯をブラッシングしてもよい。また、適宜口腔内を水で漱ぐこともできるが、より高い効果を得るために使用後は、組成物を紙や布で拭い取った後、少量の水で一度口腔内を漱ぐことが好ましい。
【0034】
本発明の歯牙美白用組成物は、そのまま歯に塗布することができるが、歯牙美白用組成物を歯に確実に保持、固定できる適用用具と併用した歯牙美白用セットを用いて適用することもできる。また、歯に所定時間適用後は、組成物を清拭により除去してもよいが、より好ましくは組成物が歯に付着したまま歯ブラシ等でブラッシングすることで、物理的な除去力も加わり、歯に固着した着色物などの汚れを除去する能力が高まり、美白効果が向上する。
【0035】
なお、本発明の歯牙美白用セットは、予め歯牙美白用組成物を貼付、浸漬、付着、圧着、噴霧、塗布、埋没等の手段により用具に固定させ、そのまま歯に着用できるようにした方式、歯牙美白用組成物と用具を別途用意して、使用時に組成物を用具に固定させた後に歯に着用する方式、歯牙美白用組成物を歯に付着させた後に用具で被覆する方式のいずれにおいても、目的を達成することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例、処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0037】
[実施例、比較例]
表1、2に示す組成の歯牙美白用組成物を下記方法により調製し、評価した。結果を表に併記した。
【0038】
<歯牙美白用組成物サンプルの調製方法>
精製水をディスパー攪拌機(石山商店製)で攪拌しながら、トリポリリン酸ナトリウム又はピロリン酸ナトリウムを添加して溶解させた後、1,3−ブチレングリコール又はポリエチレングリコール400を添加、混合した。続いて、ヒドロキシプロピルセルロールを添加、分散後、ヒドロキシプロピルセルロースが膨潤するまで、加温しながら攪拌をつづけた。室温にて放置し、ゲル状の歯牙美白用組成物を得た。なお、比較例の組成物は上記方法に準じて調製した。
【0039】
<白色化効果の評価>
予め、歯表面の色差(L*値)を、分光式色差計(日本電色工業(株)製、型式:SE−2000)を用いて測定したヒト抜去歯を歯牙美白用組成物に浸漬し(37℃、10分間)、紙で歯表面に付着した歯牙美白用組成物を拭い取り、歯表面の色差(L*値)を測定した。白色化効果は、浸漬処置前後のL*値の差(ΔL*)について、下記判定基準にて評価し、歯牙の白色化効果を判定した。
判定基準
◎:ΔL*>4
○:4≧ΔL*>2
×:2≧ΔL*
【0040】
<ステイン除去効果の評価>
1.ステイン付着HAPの作製方法
ハイドロキシアパタイトペレット(HAP、HOYA(株)製、直径7mm×厚さ3.5mm)の表面をサンドブラストにて処理後、中性洗剤水溶液中、超音波洗浄機で洗浄した。次に、HAPに対し、0.5%アルブミン水溶液→タンニン抽出液→0.6%クエン酸鉄(III)アンモニウム水溶液で1時間ずつ繰り返し浸漬する操作を50回繰り返し、常温で1日間風乾した後、流水で洗浄し、再び風乾してステイン付着HAPを作製した。
なお、タンニン抽出液は、沸騰させたイオン交換水1,200mL中に、日本茶(銘柄:明石)50g、紅茶(ユニリーバ・ジャパン(株)製、ブリスク ティーバック)5袋、インスタントコーヒー(商品名:ネスカフェ、ネスレ日本(株)製)12gを入れ、一晩放置し、日本茶及び紅茶をろ過にて取り除き作製した。作製したステイン付着HAPの表面の色差(L*値)を、分光式色差計(日本電色工業(株)製、型式:SE−2000)を用いて測定し、これを処置前のL*値とした。
2.ステイン除去試験
上記方法で作製したステイン付着HAPを、試験サンプルの歯牙美白用組成物に10分間浸漬した後、紙でHAP表面に付着した歯牙美白用組成物を拭い取り、流水中で洗浄した後、HAP表面のL*値を測定し、これを処理後のL*値とした。ステイン除去効果は、処置前後のL*値の差(ΔL*)について下記判定基準にて評価し、歯のステイン除去効果を判定した。
判定基準
◎:ΔL*>10
○:10≧ΔL*>3
×:3≧ΔL*
【0041】
<使用感(刺激の無さ)の評価>
使用感の評価は、被験者5名により評価した。歯牙美白用組成物を上顎用マウストレー(バトラー社製)に適当量に入れ、上顎に10分間装着したときの刺激のなさについて、下記判定基準にて評価した。
判定基準
◎:刺激を感じなかった
○:刺激をそれほど感じなかった
△:刺激をやや感じた
×:刺激を感じた
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
表2に示すように、(A)成分を含有し、(B)成分を含有しない比較例1は、ステイン除去効果に劣り、また、(B)成分を含有し、(A)成分を含有しない比較例2、3は、ポリエチレングリコール200又はプロピレングリコールを含有していても、白色化効果が劣り(比較例2、3)、一方で、(A)成分と(B)成分とを含有する比較例4〜6において、水の含有量が多すぎる比較例4では白色化効果が悪くなり、水の含有量が適切であっても(B)/水の質量比が大きすぎる比較例5や、水を含有しない比較例6では、ステイン除去効果が劣り、刺激が感じられ使用感も劣った。これらに対して、表1、2の実施例に示すように、(A)成分と(B)成分と(C)成分とを含有し、(A)成分が特定量以上、(C)成分が特定量以下、かつ(B)/(C)の質量比が特定値以下である本発明組成物(実施例1〜14)は、歯表面に蓄積したステインを除去するステイン除去効果と短時間処理でも歯を白色化し得る白色化効果が共に優れ、また、使用感(刺激の無さ)も良好であった。
【0045】
なお、使用原料の詳細を下記に示す。
(A)1,3−ブチレングリコール:(株)ダイセル製、1,3ブチレングリコール
(A)ポリエチレングリコール400:
ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、PEG#400
(B)トリポリリン酸ナトリウム:太平化学産業(株)製、トリポリリン酸ナトリウム
(B)ピロリン酸ナトリウム:太平化学産業(株)製、無水ピロリン酸ナトリウム
ポリエチレングリコール200:
ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、PEG#200
プロピレングリコール:
(株)ADEKA製、プロピレングリコール
ヒドロキシプロピルセルロース:
日本曹達(株)製、ヒドロキシプロピルセルロースM
【0046】
次に、処方例を示す。下記に示す歯牙美白用組成物を、同様の原料を用いて同様に調製し、使用感の評価法と同様の方法で上顎に10分間装着して歯に適用した。その後、市販のティッシュペーパーで歯表面を拭った。その結果、白色化効果及びステイン除去効果が高く、使用後に歯が白くなった感じに優れ、かつ刺激の無さにも優れていることが確認された。
【0047】
[処方例1](含浸シート剤)
<調製方法>
ディスパー攪拌機で攪拌しながら精製水にトリポリリン酸ナトリウムを添加、溶解し、1,3−ブチレングリコールを添加した。続いて、ラウリル硫酸ナトリウムを添加、溶解した後、香料を添加、混合した。得られた液状の歯牙美白用組成物を市販のガーゼに含浸させ、含浸シート剤を調製した。
(A)1,3−ブチレングリコール 85.0%
(B)トリポリリン酸ナトリウム 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.3
香料* 1.0
(C)精製水 12.7
合計 100.0%
*香料;表3、4に示す組成の香料組成物(以下、同様。)。
【0048】
[処方例2]貼付シート剤(パック剤)
<調製方法>
ディスパー攪拌機で攪拌しながら精製水にトリポリリン酸ナトリウムを添加、溶解し、1,3−ブチレングリコールを添加した。続いて、ヒドロキシエチルセルロースを添加し、70℃で攪拌しながら膨潤させた。膨潤したゲル状の歯牙美白用組成物をニーダー(石山商店製)に入れ、減圧下、香料とラウリル硫酸ナトリウムを添加、混合した。
得られた組成物をレーヨン/ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの3層不織布に展延し、貼付シート剤を調製した。
(A)1,3−ブチレングリコール 85.0%
(B)トリポリリン酸ナトリウム 0.2
ラウリル硫酸ナトリウム 0.2
ヒドロキシエチルセルロース 6.0
香料* 1.0
(C)精製水 7.6
合計 100.0%
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】