(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一面が測定流体に接するダイアフラムが形成された感圧部と、前記ダイアフラムの他面における中心部に配置された第1歪ゲージ及び外縁部に配置された第2歪ゲージとを備え、前記第1歪ゲージ及び前記第2歪ゲージによって形成されるブリッジ回路の検出結果に基づいて前記ダイアフラムに印加される圧力を測定する圧力センサにおいて、
前記第1歪ゲージに対応して前記ダイアフラムの他面における中心部に配置された第1温度センサと、
前記ダイアフラムの撓みによる応力の影響を受けない位置に配置された第2温度センサと、
前記第1温度センサの検出結果と前記第2温度センサの検出結果とを用いて、前記ブリッジ回路の検出結果に基づいて測定された圧力を補正する補正部と、
を備える圧力センサ。
前記第2温度センサは、前記中心部と前記外縁部との間の位置であって、前記ダイアフラムの撓みが生じた場合に圧縮応力及び引張応力の双方が作用しない位置に配置される、請求項1記載の圧力センサ。
前記第2温度センサは、前記外縁部よりも外側における位置であって、前記ダイアフラムの撓みが生じた場合に圧縮応力及び引張応力の双方が作用しない位置に配置される、請求項1記載の圧力センサ。
前記補正部は、前記第1温度センサの検出結果と前記第2温度センサの検出結果との差に基づいて、前記ブリッジ回路の検出結果に基づいて測定された圧力を補正する、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の圧力センサ。
【背景技術】
【0002】
圧力センサの一種に、歪ゲージ式の圧力センサがある。この圧力センサは、ダイアフラムが形成された感圧部と、ダイアフラムに形成された歪ゲージとを備えており、測定流体に接するダイアフラムが圧力を受けて撓んだ際に生ずる歪ゲージの抵抗変化を検出して圧力を測定するものである。このような圧力センサでは、歪ゲージの抵抗変化の検出感度を高めるために、歪ゲージは、ダイアフラムの中心部(撓みが生じた場合に引張応力を受ける部位)とダイアフラムの外縁部(撓みが生じた場合に圧縮応力を受ける部位)とに配置され、ブリッジ回路が構成されるように結線(例えば、4ゲージ法による結線)されることが多い。
【0003】
また、圧力センサは、種々の測定流体の圧力を安定して測定可能にするために、例えばシリコンオイル等の封入液が封入されたものが多い。しかしながら、封入液が封入された圧力センサは、接液部が損傷した場合に、内部の封入液が外部に漏れる可能性がある。このため、異物の混入を避ける必要がある分野(例えば、食品製造等の分野)においては、封入液の無い圧力センサが用いられる(例えば、以下の特許文献1参照)。このような圧力センサでは、ダイアフラムの他面(測定流体に接するダイアフラムの一面とは反対の面)側に基準圧力を印加する基準圧力室が設けられている。
【0004】
また、圧力センサで用いられる歪ゲージの抵抗値は温度に応じて変化する。このため、圧力の測定精度を向上させるには、圧力センサの温度を検出し、その検出結果に基づいて圧力の測定結果を補正(温度補正)する必要がある。ここで、上述した封入液の無い圧力センサでは、封入液が封入されていないことから、測定流体の温度変化の影響を大きく受ける。このため、このような圧力センサでは、測温抵抗体等の温度センサが近接して設けられ、この温度センサの検出結果に基づいて圧力センサの測定結果が補正されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ダイアフラムの中心部とダイアフラムの外縁部とに歪ゲージが配置されている圧力センサでは、測定流体の急激な温度変化が生ずると、実際には測定流体の圧力変化が生じていないにも拘わらず、圧力変化が生じたものとして測定されてしまう(測定誤差が生ずる)という問題がある。
図7は、測定流体の急激な温度変化によって生ずる圧力の測定誤差を説明するための図である。
図7(a)に示す通り、測定流体の圧力はP1のままであるが、測定流体の温度が温度T1から温度T2に急激に上昇した状況を考える。このような状況において、上述した圧力センサで測定される圧力は、
図7(b)に示す通り、最大でΔPの測定誤差が生じたものとなる。
【0007】
このような測定誤差は、測定流体の急激な温度変化によって、感圧部に過渡的な温度分布が生ずることが原因で生ずる。
図8は、感圧部に生ずる過渡的な温度分布を説明するための図である。
図8(a)において、符号TAを付した曲線は、ダイアフラムの中心部に配置された歪ゲージの温度変化の一例を示す図であり、符号TBを付した曲線は、ダイアフラムの外縁部に配置された歪ゲージの温度変化の一例を示す図である。
図8(a)に示す通り、ダイアフラムの外縁部に配置された歪ゲージの温度変化TBは、ダイアフラムの中心部に配置された歪ゲージの温度変化TAに比べて遅れる。このため、ダイアフラムの中心部に配置された歪ゲージとダイアフラムの外縁部に配置された歪ゲージとの間には、
図8(b)に示す温度差が生ずる。
【0008】
ここで、測定流体に接する感圧部の外縁は、不図示の支持部によって支持されていることから、測定流体の熱は感圧部に形成されたダイアフラムの外縁部から支持部に向かって伝達される。ダイアフラムの中心部は支持部から離れているため、ダイアフラムの中心部では熱伝達が制限される。このため、ダイアフラムの中心部に配置された歪ゲージの温度変化TAは、
図8(a)に示す通り、急激に上昇するものとなる。これに対し、ダイアフラムの外縁部は、ダイアフラムの中心部に比べて支持部の近くに位置する。このため、ダイアフラムの外縁部に配置された歪ゲージの温度変化TBは、
図8(a)に示す通り、ダイアフラムの中心部に配置された歪ゲージの温度変化TAに比べて遅れて変化するものとなる。このように、ダイアフラムの中心部と外縁部とでは熱伝達に差があるため、測定流体の急激な温度変化が生ずると、ダイアフラムには一時的に同心円状の温度分布が生じ、これにより上述した圧力の測定誤差が生ずる(
図7(b)参照)。
【0009】
前述した従来の方法による温度補正は、圧力センサの代表的な1箇所の温度を測定して補正を行う方法であるため、上述した過渡的な温度分布に起因する測定誤差を補正することはできない。ここで、抵抗式の温度センサ(温度に応じた抵抗変化を検出して温度を測定するセンサ)をダイアフラムに形成すれば、過渡的な温度分布を測定することができるため、過渡的な温度分布に起因する測定誤差を補正することができるとも考えられる。しかしながら、このような温度センサは、ダイアフラムが撓むことで生ずる応力の影響を受けてしまう(圧力の影響を受けてしまう)。このため、温度のみを精度良く測定することはできず、結局のところ、圧力の測定誤差を精度良く補正することができない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、測定流体の急激な温度変化によって感圧部に生ずる過渡的な温度分布に影響されることなく、高い精度で圧力を測定することが可能な圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の圧力センサは、一面(11a)が測定流体(FL)に接するダイアフラム(11)が形成された感圧部(10)と、前記ダイアフラムの他面(11b)における中心部に配置された第1歪ゲージ(G1、G2)及び外縁部に配置された第2歪ゲージ(G3、G4)とを備え、前記第1歪ゲージ及び前記第2歪ゲージによって形成されるブリッジ回路(BC)の検出結果に基づいて前記ダイアフラムに印加される圧力を測定する圧力センサ(1)において、前記第1歪ゲージに対応して前記ダイアフラムの他面における中心部に配置された第1温度センサ(S1)と、前記ダイアフラムの撓みによる応力の影響を受けない位置に配置された第2温度センサ(S2、S3)と、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサの検出結果を用いて、前記ブリッジ回路の検出結果に基づいて測定された圧力を補正する補正部(32)と、を備える。
また、本発明の圧力センサは、前記第2温度センサが、前記中心部と前記外縁部との間の位置であって、前記ダイアフラムの撓みが生じた場合に圧縮応力及び引張応力の双方が作用しない位置(X2)に配置される。
或いは、本発明の圧力センサは、前記第2温度センサが、前記外縁部よりも外側における位置であって、前記ダイアフラムの撓みが生じた場合に圧縮応力及び引張応力の双方が作用しない位置(X4)に配置される。
或いは、本発明の圧力センサは、前記感圧部の外縁を支持する支持部(20)を備えており、前記第2温度センサが、前記支持部に取り付けられている。
また、本発明の圧力センサは、前記補正部が、前記第1温度センサの検出結果と前記第2温度センサの検出結果との差に基づいて、前記ブリッジ回路の検出結果に基づいて測定された圧力を補正する。
また、本発明の圧力センサは、前記第1歪ゲージ及び前記第2歪ゲージはそれぞれ複数設けられており、前記ダイアフラムの中心に関して対称に配置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ダイアフラムの中心部に配置された第1歪ゲージに対応してダイアフラムの中心部に第1温度センサを配置するとともに、ダイアフラムの撓みによる応力の影響を受けない位置に第2温度センサを配置し、第1温度センサ及び第2温度センサの検出結果を用いて、第1歪ゲージ及び第2歪ゲージによって形成されるブリッジ回路の検出結果に基づいて測定された圧力を補正するようにしている。このため、測定流体の急激な温度変化によって感圧部に生ずる過渡的な温度分布に影響されることなく、高い精度で圧力を測定することが可能であるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による圧力センサについて詳細に説明する。尚、以下の説明においては、図中に設定したXYZ直交座標系(原点の位置は適宜変更する)を必要に応じて参照しつつ各部材の位置関係について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による圧力センサの要部構成を示す断面図である。
図1に示す通り、本実施形態の圧力センサ1は、感圧部10、支持部20、歪ゲージG1,G2(第1歪ゲージ)、歪ゲージG3,G4(第2歪ゲージ)、温度センサS1(第1温度センサS1)、及び温度センサS2(第2温度センサ)を備えており、測定流体FLの圧力を測定する。尚、
図1に示す圧力センサ1は、シリコンオイル等の封入液の無い圧力センサである。
【0016】
感圧部10は、測定流体FLに接して測定流体FLの圧力を感知する部位である。この感圧部10の中央部には、例えば平面視形状が円形形状であって(
図2参照)、一面11a(−Z側の面)が測定流体FLに接するダイアフラム11が形成されている。ダイアフラム11は、測定流体FLの圧力が作用する部位であり、作用した圧力に応じた撓みが生ずるよう構成されている。このダイアフラム11は、高腐食性又は高耐圧性を実現するために、例えばコバルト−ニッケル合金材、シリコンリッチオーステナイト−フェライト2層組織ステンレス材、ニッケル−モリブデン−クロム合金材、或いはニッケル−クロム合金材等によって形成される。
【0017】
歪ゲージG1〜G4は、外部からの応力を受けて歪みが生じた場合に、その歪みに応じた抵抗変化が生ずる素子である。歪ゲージG1,G2は、ダイアフラム11の他面11b(+Z側の面)における中心部に配置される。これに対し、歪ゲージG3,G4は、ダイアフラム11の他面11b(+Z側の面)における外縁部に配置される。
図2は、本発明の一実施形態による圧力センサの歪ゲージ等の配置を示す平面透視図である。
【0018】
図2に示す通り、歪ゲージG1〜G4は、ダイアフラム11の中心Cを通るX軸に平行な直線上に、ダイアフラム11の中心Cに関して対称に配置される。具体的に、ダイアフラム11の中心部において、歪ゲージG1と歪ゲージG2とがダイアフラム11の中心Cに関して対称に配置され、ダイアフラム11の外縁部において、歪ゲージG3と歪ゲージG4とがダイアフラム11の中心Cに関して対称に配置される。
【0019】
ダイアフラム11の中心部に配置される歪ゲージG1,G2は、ダイアフラム11に撓みが生じた場合には引張応力を受け、ダイアフラム11の外縁部に配置される歪ゲージG3,G4は、ダイアフラム11に撓みが生じた場合には圧縮応力を受ける。歪ゲージG1〜G4をこのような配置にするのは、歪ゲージG1〜G4の抵抗変化の検出感度を高めるためである。このような歪ゲージG1〜G4としては、等方性導体である金属箔や細線等を用いた金属歪ゲージ、又は半導体のピエゾ抵抗効果を利用した半導体歪ゲージを用いることができる。
【0020】
温度センサS1は、歪ゲージG1,G2に対応してダイアフラム11の他面11b(+Z側の面)における中心部に配置され、ダイアフラム11の中心部における温度(歪ゲージG1,G2の温度)を検出するセンサである。温度センサS2は、歪ゲージG4に対応してダイアフラム11の他面11b(+Z側の面)における外縁部に配置され、ダイアフラム11の外縁部における温度(歪ゲージG4の温度)を検出するセンサである。
図1,
図2に示す通り、温度センサS1は、歪ゲージG2と歪ゲージG4との間において歪ゲージG2に近接した位置に配置され、温度センサS2は、歪ゲージG2と歪ゲージG4との間において歪ゲージG4に近接した位置に配置される。
【0021】
図3は、本発明の一実施形態による温度センサの具体的な配置を説明するための図である。測定流体FLの圧力によってダイアフラム11に撓みが生ずると、ダイアフラム11に設けられた歪ゲージG1〜G4及び温度センサS1,S2には、その位置に応じた応力が作用する。具体的には、
図3に示す通り、ダイアフラム11の中心部(位置X1)に配置された歪ゲージG2には引張応力が作用し、ダイアフラム11の外縁部(位置X3)に配置された歪ゲージG4には圧縮応力が作用する。温度センサS1は、歪ゲージG2と同様に、引張応力が作用する位置に配置される。
【0022】
ここで、歪ゲージG2が配置された位置X1と歪ゲージG4が配置された位置X3との間の位置X2においては、圧縮応力及び引張応力の双方が作用しない。温度センサS2は、この圧縮応力及び引張応力の双方が作用しない位置X2(或いは、圧縮応力及び引張応力の双方が殆ど作用しない位置X2の近傍)に配置される。このような位置に温度センサS2を配置するのは、ダイアフラム11が撓むことで生ずる応力の影響を極力受けないようにして、ダイアフラム11の外縁部における温度(歪ゲージG4の温度)を正確に検出するためである。そして、温度センサS2で検出される温度を基準温度として温度補正を行うことで、測定流体FLの急激な温度変化によって生ずる過渡的な温度分布(
図3参照)に影響されることなく、高い精度で圧力を測定するためである。
【0023】
測定流体FLの急激な温度変化が生ずると、例えば
図3に示す通り、ダイアフラム11の中心部(位置X1)が最も温度が高くなり、ダイアフラム11の外縁部(位置X3)に行くに従って徐々に温度が低くなる同心円状の温度分布が一時的に生ずる。尚、
図3中の位置X4は、ダイアフラム11の外縁部よりも外側の位置を示している。
【0024】
支持部20は、感圧部10の+Z側に取り付けられ、感圧部10の外縁を支持する部材である。この支持部20が感圧部10に取り付けられることで、支持部20と感圧部10との間には、基準圧力室Rが形成される。また、支持部20の中央部には、孔Hが形成されおり、この孔Hを介して外部からの基準圧力P0が基準圧力室Rに供給される。これにより、感圧部10に形成されたダイアフラム11の一面11aには測定流体FLの圧力が作用し、ダイアフラム11の他面11bには基準圧力P0が作用し、ダイアフラム11は、測定流体FLの圧力と基準圧力P0との差に応じて撓むこととなる。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態による圧力センサの電気的構成を示す図である。
図4に示す通り、圧力センサ1は、歪ゲージG1〜G4によって構成されるブリッジ回路BC、A/D(アナログ/ディジタル)変換器31、及び演算部32(補正部)を備える。ブリッジ回路BCは、歪ゲージG1〜G4が、4ゲージ法による結線がされることによって構成される回路である。このブリッジ回路BCは、歪ゲージG1,G3の一端が電源Vccに接続され、歪ゲージG2,G4の一端が接地され、又は電気回路の共通電位に接続され、歪ゲージG1,G4の他端が出力端Q1に接続され、歪ゲージG2,G3の他端が出力端Q2に接続された構成である。
【0026】
A/D変換器31は、3つの入力端と1つの出力端とを有する3チャネルのA/D変換器であり、各々の入力端から入力されるアナログ信号を個別にディジタル信号に変換し、変換したディジタル信号を出力端から個別に出力する。A/D変換器31の1つの入力端には、ブリッジ回路BCの出力端Q1,Q2が接続されており、残りの2つの入力端には温度センサS1,S2がそれぞれ接続されている。
【0027】
演算部32は、A/D変換器31から出力されるディジタル信号に基づいて、測定流体FLの圧力を測定する。具体的には、A/D変換器31から出力されるブリッジ回路BCの検出信号(ディジタル信号)に基づいて、測定流体FLの圧力を求める。そして、A/D変換器31から出力される温度センサS1,S2の検出信号(ディジタル信号)を用いて、求めた測定流体FLの圧力を補正する。
【0028】
例えば、演算部32は、温度センサS1,S2の検出結果の差(
図8(b)に示す温度差参照)と圧力の測定誤差(
図7(b)に示す測定誤差ΔP参照)との関係を示すテーブル或いは関係式を予め記憶している。そして、温度センサS1,S2の検出信号の差に基づき、上記のテーブル或いは関係式を用いて、求めた測定流体FLの圧力を補正する。このような補正を行うのは、過渡的な温度分布に起因する圧力の測定誤差を補正し、高い精度で圧力を測定するためである。
【0029】
以上の構成を有する圧力センサ1において、測定流体FLの圧力がダイアフラム11に加わるとダイアフラム11に撓みが生ずる。すると、ダイアフラム11の中心部に配置された歪ゲージG1,G2には引張応力が作用し、ダイアフラム11の外縁部に配置された歪ゲージG3,G4には圧縮応力が作用する。これにより、歪ゲージG1〜G4の抵抗値が変化し、
図4に示すブリッジ回路BCの出力端Q1,Q2の間の電圧が変化する。
【0030】
ブリッジ回路BCの出力端Q1,Q2の間の電圧は、A/D変換器31でディジタル信号に変換されて、演算部32に入力される。そして、演算部32では、A/D変換器31からのディジタル信号に基づいて、測定流体FLの圧力(ダイアフラム11に加わる圧力)を求める演算が行われる。尚、測定流体FLの圧力が求められると、測定流体FLの圧力を示す信号が、演算部32から外部に出力される。
【0031】
上述した測定動作が行われている最中に、測定流体FLの急激な温度変化が生じたとする(
図7(a)参照)。このような急激な温度変化が生ずると、ダイアフラム11には一時的に同心円状の温度分布が生じ(
図3参照)、これにより圧力の測定誤差が生ずる(
図7(b)参照)。ダイアフラム11の中心部における温度(歪ゲージG1,G2の温度)が温度センサS1によって検出され、ダイアフラム11の外縁部における温度(歪ゲージG4の温度)が温度センサS2によって検出される。
【0032】
これら温度センサS1,S2の検出結果は、A/D変換器31でディジタル信号に変換されて、演算部32に入力される。そして、演算部32では、温度センサS1,S2の検出信号の差に基づき、温度センサS1,S2の検出結果の差と圧力の測定誤差との関係を示すテーブル或いは関係式を用いて、求めた測定流体FLの圧力を補正する。尚、測定流体FLの圧力が補正されると、補正された測定流体FLの圧力を示す信号が、演算部32から外部に出力される。
【0033】
以上の通り、本実施形態では、ダイアフラムの中心部に配置された第1歪ゲージに対応してダイアフラムの中心部に第1温度センサを配置するとともに、ダイアフラムの外縁部に配置された第2歪ゲージに対応してダイアフラムの外縁部に第2温度センサを配置し、第1温度センサ及び第2温度センサの検出結果を用いて、ブリッジ回路BCの検出結果に基づいて測定された圧力を補正するようにしている。これにより、測定流体FLの急激な温度変化によってダイアフラム11に過渡的な温度分布が生じたとしても、この過渡的な温度分布に起因する圧力誤差を補正することができるため、測定流体FLの圧力を高い精度で測定することができる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態による圧力センサについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、温度センサS2が、ダイアフラム11が撓むことで生ずる応力が作用しない位置X2(
図3参照)に配置される例について説明した。しかしながら、このような温度センサS2に代えて、
図5に示す温度センサS3(第2温度センサ)を設けても良い。
【0035】
図5は、本発明の一実施形態による圧力センサの一変形例を示す図である。
図5に示す通り、本変形例では、測温抵抗体等の温度センサS3が、支持部20に取り付けられている。この温度センサS3が取り付けられた位置は、ダイアフラム11の撓みによる応力の影響を受けない位置である。尚、支持部20に対する温度センサS3の取り付け位置は任意である。本変形例において、
図4に示す演算部32は、ダイアフラム11上の温度センサS1の検出結果と、支持部20に取り付けられた温度センサS3の検出結果とを用いて、測定流体FLの圧力を補正することとなる。尚、本変形例では、温度センサS2は必要としない。
【0036】
本変形例では、温度センサS3は、ダイアフラム11上に配置された歪ゲージから離間した位置(支持部20)に配置されることになるが、ダイアフラム11の撓みによる応力の影響を受けない。また、支持部20に配置された温度センサS3で検出される温度は、上記実施形態の温度センサS2で検出される温度とはほぼ同じであり、極端に異なることはない。このため、安定して圧力センサ1の温度を測定することができる。そして、温度センサS3で検出される温度を基準温度とし、温度センサS1の検出結果も用いて温度補正を行うことで、測定流体FLの急激な温度変化によって生ずる過渡的な温度分布(
図3参照)に影響されることなく、高い精度で圧力を測定することができる。
【0037】
また、
図3を参照すると、ダイアフラム11が撓むことで生ずる応力が作用しない位置が、ダイアフラム11の外縁部よりも外側の位置(位置X4)に存在することが分かる。このため、
図3に示す温度センサS2を、位置X2に代えて位置X4に配置するようにしても良い。温度センサS2を位置X4に配置すれば、温度センサS2を
図5に示す温度センサS3よりも歪ゲージに近い位置に配置することができるため、より高い精度で圧力を測定することができる。
【0038】
図6は、本発明の一実施形態による圧力センサの他の変形例を示す図である。尚、
図6は、
図2と同様に、圧力センサの歪ゲージ等の配置を示す平面透視図である。
図2に示す例では、歪ゲージG1〜G4及び温度センサS1,S2は、ダイアフラム11の中心Cを通るX軸に平行な直線上に配置されていた。しかしながら、
図6に示す通り、歪ゲージG1〜G4を、ダイアフラム11の中心Cを通るX軸に平行な直線上に配置し、温度センサS1,S2を、ダイアフラム11の中心Cを通るY軸に平行な直線上に配置しても良い。但し、
図2,
図6に示す配置において、応力分布及び温度分布は各々同心円状であるので、ダイアフラム11の中心Cに対する温度センサS1の距離は同じであり、また、ダイアフラム11の中心Cに対する温度センサS2の距離は同じであればよい。
【0039】
また、上述した実施形態では、歪ゲージG1〜G4及び温度センサS1,S2の平面視形状は矩形形状であった。しかしながら、これら歪ゲージG1〜G4及び温度センサS1,S2の平面視形状は矩形形状に制限される訳ではなく、他の形状であっても良い。例えば、歪ゲージG1〜G4及び温度センサS1,S2は、ダイアフラム11の中心Cを中心として円弧状に形成されていても良い。
【0040】
また、上述した実施形態では、ダイアフラム11の中心部に2つの歪ゲージG1,G2が設けられ、ダイアフラム11の外縁部に2つの歪ゲージG3,G4が設けられる例について説明した。しかしながら、ダイアフラム11の中心部及び外縁部に設けられる歪ゲージの数は、各々1つであっても良く、各々3つ以上であっても良い。