特許第6665900号(P6665900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6665900酸化ジルコニウム粒子の水分散液と有機溶媒分散液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665900
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】酸化ジルコニウム粒子の水分散液と有機溶媒分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/02 20060101AFI20200302BHJP
【FI】
   C01G25/02
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-157966(P2018-157966)
(22)【出願日】2018年8月27日
(65)【公開番号】特開2020-33194(P2020-33194A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年11月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079120
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 考則
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/035689(WO,A1)
【文献】 特開2004−010449(JP,A)
【文献】 特開2006−143535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシ塩化ジルコニウムを水中にて塩基性物質と反応させて、酸化ジルコニウム粒子を含むpH8.6〜9.6の範囲である第1の水スラリーを得る第1工程、
上記第1の水スラリーを濾過し、水洗した後、水にリパルプして、酸化ジルコニウム粒子を含む第2の水スラリーを得、上記第2の水スラリーにジルコニウム1モル部に対して有機酸1モル部以上を加えて、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が5000〜20000ppmの範囲である第3の水スラリーを得る第2工程、
上記第3の水スラリーを水熱処理して、酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を得る第3工程、及び
上記酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を限外濾過によって洗浄して、酸化ジルコニウムの重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppmの範囲である酸化ジルコニウム粒子水分散液を得る第4工程
を含む、酸化ジルコニウム粒子水分散液の製造方法。
【請求項2】
オキシ塩化ジルコニウムとアルミニウム、マグネシウム、チタン及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種の安定化元素の塩を水中にて塩基性物質と反応させて、ジルコニウムと上記安定化元素の共沈物の粒子を含むpH8.6〜9.6の範囲である第1の水スラリーを得る第1工程、
上記第1の水スラリーを濾過し、水洗した後、水にリパルプして、ジルコニウムと上記安定化元素の共沈物の粒子を含む第2の水スラリー得、上記第2の水スラリーにジルコニウムと上記安定化元素の合計量の1モル部に対して有機酸1モル部以上を加えて、ジルコニウムと上記安定化元素の酸化物換算の合計重量に対する塩素イオン含有率が5000〜20000ppmの範囲である第3の水スラリーを得る第2工程、
上記第3の水スラリーを水熱処理して、上記安定化元素を含む固溶体である安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を得る第3工程、及び
上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を限外濾過によって洗浄して、上記安定化酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppmの範囲である上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液を得る第4工程
を含む、安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法によって得られた前記酸化ジルコニウム粒子水分散液の分散媒である水を有機溶媒と置換して、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppmの範囲である、分散媒が上記有機溶媒である酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液を得る酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法によって得られた前記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液の分散媒である水を有機溶媒と置換して、上記安定化酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppmの範囲である、分散媒が上記有機溶媒である安定化酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液を得る安定化酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化ジルコニウム粒子の水分散液と有機溶媒分散液のそれぞれの製造方法に関し、詳しくは、微細な酸化ジルコニウム粒子を高濃度で含みながら、低粘度と高透明性を有し、しかも、長期保存安定性にすぐれる酸化ジルコニウム粒子の水分散液と有機溶媒分散液のそれぞれの製造方法に関する。本発明の方法によって得られる酸化ジルコニウム粒子分散液は光学分野における種々の用途、特に、LED封止樹脂や反射防止膜等の光学用の複合樹脂の材料として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化スズ、ジルコニア、チタニア等の無機酸化物粒子分散液は、種々の産業分野において用いられており、特に、光学分野においては屈折率を調節するために用いられている。なかでも、酸化ジルコニウムは、屈折率が高いので、近年、透明な樹脂やフィルムと複合化し、その屈折率を向上させてなる高機能性樹脂やフィルムとして利用することが種々、提案されている。
【0003】
例えば、LEDを覆う封止樹脂に屈折率の高い酸化ジルコニウムを加えることによって、封止樹脂の屈折率が高められて、発光体の放つ光をより効率的に取り出すことが可能となり、LEDの輝度が向上することが知られている。
【0004】
同様に、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の表示面の反射防止膜にも、酸化ジルコニウムが用いられている。この反射防止膜は低屈折率層と高屈折率層を積層してなる積層膜であり、この高屈折率層に酸化ジルコニウムを分散させた複合樹脂材料が用いられている。
【0005】
上述した用途においては、酸化ジルコニウムの一次粒子径と樹脂中での二次凝集粒子径が可視光線の波長(380〜800nm)よりも十分に小さくないときは、酸化ジルコニウム粒子による散乱の影響によって、封止樹脂や反射防止膜が白濁するので、必要とされる透明性が得られない。従って、酸化ジルコニウム粒子を樹脂に微粒子として分散させた透明性の高い酸化ジルコニウム分散液の開発が強く要望されている。
【0006】
このような要望に応えるべく、近年、酸化ジルコニウムの微粒子やその分散液を得る方法が種々、提案されている。酸化ジルコニウム分散液を得るための代表的な方法は、ジルコニウム塩のアルカリ中和によって生成する水酸化ジルコニウムを利用するものであって、例えば、水酸化ジルコニウムのスラリーに塩酸を所定の濃度で加え、煮沸温度で加熱して、酸化ジルコニウム分散液を得る方法が知られている(特許文献1参照)。しかし、この方法によれば、得られる酸化ジルコニウムの平均粒子径が50nm以上であるので、分散液は、十分な透明性をもち難い。
【0007】
60℃以上に加熱したアルカリ金属の水酸化物水溶液にジルコニウム塩を含む水溶液を加え、中和した後、即ち、逆中和した後、濾過、洗浄し、水を加えて、攪拌した後、酸を加え、80〜100℃の温度で加熱攪拌して、ジルコニア分散液を得る方法も知られている(特許文献2参照)。
【0008】
また、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等のカルボン酸の存在下、水中にてジルコニウム塩をアルカリで中和して、水酸化ジルコニウムゲルを得、これを一旦、洗浄した後、熟成し、超音波照射等によって十分に分散させた後、再度、上記カルボン酸の存在下に水熱処理することによって酸化ジルコニウム分散液を得る方法が知られている(特許文献3参照)。
【0009】
ジルコニウム塩を水中にてアルカリと反応させて、酸化ジルコニウム粒子のスラリーを得、次いで、このスラリーを濾過、洗浄し、リパルプして、得られたスラリーにこのスラリー中のジルコニウム1モル部に対して有機酸1モル部以上を加え、170℃以上の温度にて水熱処理した後、得られた酸化ジルコニウム粒子水分散液を洗浄して、高透明性の酸化ジルコニウム粒子水分散液を得る方法も提案されている(特許文献4参照)。
【0010】
酸化ジルコニウム粒子分散液の用途が拡大すると共に、その使用量も増えるにつれて、その長期保存安定性に対する要求が高まっているが、上述した従来の酸化ジルコニウム粒子分散液は、長期保存安定性については何も記載がなく、また、得られる水分散液によっては、実際、長期保存安定性に劣る場合もある。
【0011】
酸化ジルコニウム粒子水分散液に有機溶媒と共に、酢酸、β−ジケトン、サリチル酸のような安定化剤を加え、濾過して、水を有機溶媒に置換してなり、経時安定性にすぐれるとする有機溶媒分散液が提案されているが(特許文献5参照)、どの程度の経時安定性を有するかは明らかにされていない。
【0012】
特に、長期保存安定性に関連して、従来、知られている酸化ジルコニウムナノ粒子の分散液は長期保存安定性が十分でないことから、長期保存安定性を確保し、又は劣化を防止するために、通常、冷蔵温度乃至冷凍温度にて保管し、使用に際しては、常温に戻すことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−24844号公報
【特許文献2】特開2008−31023号公報
【特許文献3】特開2006−143535号公報
【特許文献4】特開2010−150066号公報
【特許文献5】特開2007−238422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来の酸化ジルコニウム粒子分散液における上述した問題を解決するためになされたものであって、微細な酸化ジルコニウム粒子を高濃度で含有していても、透明性にすぐれ、低粘度であるうえに、特に、長期間にわたる保存安定性にすぐれる酸化ジルコニウム粒子の水分散液と有機溶媒分散液のそれぞれの製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
特に、本発明は、温度に関わりなく、例えば、約10℃から約40℃にわたる温度制御のない環境においても、従って、常温の環境においても、長期保存安定性にすぐれる酸化ジルコニウムナノ粒子の水分散液と有機溶媒分散液のそれぞれの製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
本発明者は、オキシ塩化ジルコニウムをアルカリ性の水中にて塩基性物質と反応させて、酸化ジルコニウム粒子を含む第1の水スラリーを得る工程から出発して、これを水分散液と有機溶媒分散液に導く方法について詳細に研究した結果、上記第1の水スラリーから出発して、途中において得られる酸化ジルコニウム粒子の第2、第3等の水スラリーや、また、場合によっては、水分散液を与える前駆体における酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率を最適に制御しつつ、最終的に上記塩素イオン含有率を所定の範囲とすることによって、微細な酸化ジルコニウム粒子を高濃度で含有していても、透明性にすぐれ、低粘度であるうえに、特に、長期間にわたる保存安定性にすぐれる酸化ジルコニウム粒子の水分散液と有機溶媒分散液を得ることができることを見出して、本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、以下の酸化ジルコニウム粒子の水分散液と有機溶媒分散液のそれぞれ製造方法が提供される。更に、本発明によれば、同様にして、安定化元素を含む固溶体である安定化酸化ジルコニウム粒子の水分散液と有機溶媒分散液のそれぞれ製造方法が提供される。
【0018】
(1)酸化ジルコニウム粒子水分散液の製造方法
オキシ塩化ジルコニウムを水中にて塩基性物質と反応させて、酸化ジルコニウム粒子を含むpH8.6〜9.6の範囲である第1の水スラリーを得る第1工程、
上記第1の水スラリーを濾過し、水洗した後、水にリパルプして、酸化ジルコニウム粒子を含む第2の水スラリー得、上記第2の水スラリーにジルコニウム1モル部に対して有機酸1モル部以上を加えて、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が5000〜20000ppmの範囲である第3の水スラリーを得る第2工程、
上記第3の水スラリーを水熱処理して、酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を得る第3工程、及び
上記酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を限外濾過によって洗浄して、酸化ジルコニウムの重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppmの範囲である酸化ジルコニウム粒子水分散液を得る第4工程
を含む、酸化ジルコニウム粒子水分散液の製造方法。
【0019】
(2)安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液の製造方法
オキシ塩化ジルコニウムとアルミニウム、マグネシウム、チタン及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種の安定化元素の塩を水中にて塩基性物質と反応させて、ジルコニウムと上記安定化元素の共沈物の粒子を含むpH8.6〜9.6の範囲である第1の水スラリーを得る第1工程、
上記第1の水スラリーを濾過し、水洗した後、水にリパルプして、ジルコニウムと上記安定化元素の共沈物の粒子を含む第2の水スラリー得、上記第2の水スラリーにジルコニウムと上記安定化元素の合計量の1モル部に対して有機酸1モル部以上を加えて、ジルコニウムと上記安定化元素の酸化物の合計重量に対する塩素イオン含有率が5000〜20000ppmの範囲である第3の水スラリーを得る第2工程、
上記第3の水スラリーを水熱処理して、上記安定化元素を含む固溶体である安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を得る第3工程、及び
上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を限外濾過によって洗浄して、上記安定化酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppmの範囲である上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液を得る第4工程
を含む、上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液の製造方法。
【0020】
(3)酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液の製造方法
上述した(1)に記載の方法によって得られた上記酸化ジルコニウム粒子水分散液の分散媒である水を有機溶媒と置換して、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppmの範囲である、分散媒が上記有機溶媒である酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液を得る酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液の製造方法。
【0021】
(4)安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液の製造方法
上述した(2)に記載の方法によって得られた上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液の分散媒である水を有機溶媒と置換して、安定化酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppmの範囲である、分散媒が上記有機溶媒である安定化酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液を得る安定化酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明による酸化ジルコニウム粒子水分散液の方法は、オキシ塩化ジルコニウムを水中にて塩基性物質と反応させて、酸化ジルコニウム粒子を含むpH8.6〜9.6の範囲である第1の水スラリーを得、濾過し、水洗した後、再度、水にリパルプして、酸化ジルコニウム粒子を含む第2の水スラリー得、上記第2の水スラリーに有機酸を加えて、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が5000〜20000ppmの範囲である第3の水スラリーを得、これを水熱処理した後、限外濾過によって洗浄して、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppmの範囲である酸化ジルコニウム粒子水分散液を得るものである。
【0023】
同様にして、安定化元素を含む固溶体である安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液も得ることができる。
【0024】
以下において、(安定化)酸化ジルコニウム粒子は酸化ジルコニウム粒子と安定化酸化ジルコニウム粒子を意味する。
【0025】
本発明に従って、このようにして得られる(安定化)酸化ジルコニウム粒子水分散液は、微細な酸化ジルコニウム粒子を高濃度にて含んでいても、高透明性と低粘度を有し、そのうえ、温度25℃にて24か月保管したときの粘度増加量が20mPa・s以下であるという長期保存安定性を有する。
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、40か月以上にわたって保管しても、その粘度が製造直後の粘度と実質的に変わらず、長期保存安定性に極めてすぐれる(安定化)酸化ジルコニウム粒子水分散液を得ることができる。
【0027】
更に、本発明に従ってこのようにして得られる(安定化)酸化ジルコニウム粒子水分散液の分散媒である水を有機溶媒に置換して得られる(安定化)酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液も、水分散液と同様に、微細な酸化ジルコニウム粒子を高濃度にて含んでいても、高透明性と低粘度を有すると共に、長期保存安定性にすぐれている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
先ず、本発明による酸化ジルコニウム粒子の水分散液の製造方法について述べる。
第1工程
本発明による酸化ジルコニウム粒子水分散液の製造においては、第1工程として、オキシ塩化ジルコニウムを水中にて塩基性物質と反応させて、酸化ジルコニウム粒子を含むpH8.6〜9.6の範囲である第1の水スラリーを得る。
【0029】
本発明において、オキシ塩化ジルコニウムを水中にて上記塩基性物質と反応させる際の温度は、特に限定されるものではないが、通常、10〜50℃の範囲であり、好ましくは、15〜40℃の範囲である。
【0030】
酸であるオキシ塩化ジルコニウムを水中にて塩基性物質で中和する中和反応において、酸に対する塩基性物質のモル過剰度、即ち、アルカリ中和時のモル過剰度は、通常、1〜1.15の範囲であることが好ましい。上記酸に対する塩基性物質のモル過剰度については後述する。
【0031】
本発明者によって、オキシ塩化ジルコニウムを水中にて塩基性物質で中和する中和反応において、例えば、同じ量の水酸化カリウム水溶液を用いた場合においても、厳密には、上記中和反応によって得られる第1の水スラリーのpHが異なり、その結果、塩素イオン濃度が異なることが見出された。換言すれば、オキシ塩化ジルコニウムを水中にて塩基性物質で中和して、酸化ジルコニウム粒子を含む第1の水スラリーを得る第1の工程においては、オキシ塩化ジルコニウムとその中和に用いる塩基性物質のモル比よりも、中和反応によって得られる第1の水スラリーのpHがより敏感に感応し、そのpHによって第1の水スラリー中の塩素イオン濃度が変化することが見出された。
【0032】
このように、第1の工程において得られる第1の水スラリーのpH、即ち、塩素イオン濃度は、後続する工程において得られる酸化ジルコニウム粒子の水スラリーや分散液の塩素イオン濃度に影響を与え、延いては、その長期保存安定性に影響を与える。
【0033】
この理由は、酸化ジルコニウム粒子を含む第1の水スラリーにおいて適量の塩素イオンが酸化ジルコニウムに吸着残存することで、後続する工程において得られる酸化ジルコニウム粒子の水スラリーや分散液の塩素イオン濃度に影響を与えていると推定される。
【0034】
本発明によれば、このように、第1工程から始まって、各工程において得られる水スラリーや、また、場合によっては、水分散液を与える前駆体における塩素イオン濃度、正確には、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率を最適に制御して、最終的に上記塩素イオン含有率を所定の範囲とすることによって、目的とする酸化ジルコニウム粒子分散液、特に、長期保存安定性にすぐれる酸化ジルコニウム粒子の水分散液と有機溶媒分散液を得ることができる。
【0035】
オキシ塩化ジルコニウムを水中にて上記塩基性物質と反応させる方法についても、例えば、オキシ塩化ジルコニウム水溶液に塩基性物質水溶液を添加する方法、塩基性物質水溶液にオキシ塩化ジルコニウム水溶液を添加する方法、オキシ塩化ジルコニウム水溶液と塩基性物質水溶液を、予め、沈殿反応器に入れた所謂張り込み液に同時に添加する方法等、いずれであってもよいが、なかでも、オキシ塩化ジルコニウム水溶液と塩基性物質を張り込み液に同時に添加する同時中和法が好ましい。
【0036】
上記塩基性物質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物やアンモニア等が好ましく用いられるが、これら例示に限定されるものではない。上記塩基性物質は、通常、水溶液として用いられる。
【0037】
上記オキシ塩化ジルコニウム水溶液は、その濃度は、2.4モル/L以下であることが好ましく、また、上記塩基性物質水溶液は、その濃度が10モル/L以下であることが好ましい。
【0038】
本発明によれば、このようにして、第1工程において、通常、酸化ジルコニウム粒子濃度1〜20重量%の第1の水スラリーを得る。この第1の水スラリー中の酸化ジルコニウム粒子濃度が20重量%を超えるときは、そのような第1の水スラリーは粘度が高く、攪拌が困難であり、その結果、第2工程において、洗浄が不十分となって、このような水スラリーを用いることによっては、目的とする高透明性と低粘度を有する酸化ジルコニウム粒子水分散液を得ることができない。特に、本発明によれば、上記第1の水スラリーの酸化ジルコニウム粒子濃度は1〜10重量%の範囲とすることが好ましい。
【0039】
第2工程
本発明によれば、第2工程として、上述したように、上記第1工程で得られた第1の水スラリーを濾過、水洗した後、水にリパルプして、酸化ジルコニウム粒子を含む第2の水スラリーを得、次いで、上記第2の水スラリーにこの第2の水スラリー中のジルコニウム1モル部に対して有機酸1モル部以上を加えて、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が5000〜20000ppm、好ましくは、6000〜12000ppmの範囲である第3の水スラリーを得る。
【0040】
前記第1工程において、オキシ塩化ジルコニウムと上記塩基性物質を水中で中和反応させて、酸化ジルコニウム粒子を含む第1の水スラリーを得るに際して、オキシ塩化ジルコニウムに対する上記塩基性物質の使用量が多く、上記反応の際のpHが9.6を越えたときは、第2工程において、上記第1の水スラリーを濾過、水洗し、これを水に再度、リパルプして、第2の水スラリーを得、この第2の水スラリーに所要量の有機酸を加えて、第3の水スラリーとしたときに、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が5000〜20000ppmの範囲である第3の水スラリーを得ることができない。
【0041】
酸化ジルコニウムの重量に対する塩素イオン含有率が5000〜20000ppmの範囲である第3の水スラリーを得ることができないときは、そのような第3の水スラリーを第3工程において水熱処理し、得られた酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を第4工程で限外濾過しても、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppm、好ましくは、2000〜4000ppmの範囲である酸化ジルコニウム粒子水分散液を得ることができない。
【0042】
従って、最終的に得られる酸化ジルコニウム粒子水分散液は、酸化ジルコニウム粒子に対する塩素含有率が低く、目的とする長期保存安定性に劣る。
【0043】
前記第1工程において、オキシ塩化ジルコニウムと上記塩基性物質を水中で中和反応させて、酸化ジルコニウム粒子を含む第1の水スラリーを得るに際して、オキシ塩化ジルコニウムに対する上記塩基性物質の使用量が少なく、上記pHが8.6よりも低いときは、最終的に得られる酸化ジルコニウム粒子水分散液は長期保存安定性にはすぐれるが、上記中和反応時の酸に対するアルカリのモル過剰度が1よりも小さい条件下での反応となるため、中和反応後に未反応のオキシ塩化ジルコニウムが反応混合物中に残存することとなる。オキシ塩化ジルコニウムは強酸性物質であり、金属腐食性が高いので、これが上記反応混合物中に残存するときは、関連する反応設備を腐食するおそれがある。
【0044】
また、上記pHが8.6よりも低いときは、最終的に得られる水分散液の塩素イオン濃度が高くなり、そのような水分散液を樹脂と複合化する際や、水分散液を樹脂と複合化して得られた樹脂組成物を用いる際に塗工装置を腐食させるおそれもある。
【0045】
本発明によれば、上記第1の水スラリーを第2工程において濾過、水洗した後、水にリパルプして、第2の水スラリーを得るに際して、この第2の水スラリーは500μS/cm以下の電気伝導度を有することが好ましい。
【0046】
オキシ塩化ジルコニウムを水中にて塩基性物質、例えば、水酸化カリウムで中和するとき、塩化カリウムが副生する。そこで、オキシ塩化ジルコニウムを水中にて水酸化カリウムと反応させて得られた第1の水スラリー中に含まれる上記副生塩、即ち、塩化カリウムが十分に除去されていないときは、そのような水スラリーに有機酸を加え、水熱処理しても、十分な分散効果が得難く、従って、この後に限外濾過処理しても、透明性の高い酸化ジルコニウム粒子水分散液を得ることができない。
【0047】
また、本発明においては、得られた第1の水スラリーを濾過、洗浄し、得られたケーキを水中にリパルプして、第2の水スラリーとする際に、上記ケーキを水中に投入し、攪拌機にて攪拌して、水スラリーとしてもよいが、必要に応じて、ビーズミル等の湿式メディア分散のほか、超音波照射、高圧ホモジナイザー等の手段を用いて、上記ケーキを水中にリパルプしてもよい。
【0048】
第2工程において上記第2の水スラリーに加える上記有機酸は解膠剤であって、得られる第3の水スラリー中の酸化ジルコニウム粒子を相互に電荷的に反発させることによって分散させる所謂酸解膠させるために用いられる。
【0049】
上記有機酸としては、好ましくは、カルボン酸やヒドロキシカルボン酸が用いられる。そのような有機酸の具体例としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸やより高次の多塩基酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸等の塩を挙げることができる。
【0050】
また、これらの有機酸は、上述したように、水熱処理する第3の水スラリー中のジルコニウム1モル部に対して、通常、1モル部以上の範囲で用いられるが、好ましくは、1〜5モル部の範囲で用いられ、最も好ましくは、1〜3モル部の範囲で用いられる。第3の水スラリー中のジルコニウム1モル部に対して有機酸の量が1モル部よりも少ないときは、得られる酸化ジルコニウム粒子水分散液がその透明性において不十分であるのみならず、粘度も高くなることがある。他方、第3の水スラリー中のジルコニウム1モル部に対して有機酸の量が5モル部を越えても、それに見合う効果も特になく、経済的でもない。
【0051】
第3工程
本発明によれば、第3工程として、上記有機酸を含む第3の水スラリーを170℃以上の温度にて水熱処理して、酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を得る。
【0052】
前述したように、上記有機酸は解膠剤であって、本発明によれば、第3の水スラリーを上記解膠剤の存在下に過酷な条件下に水熱処理するので、酸化ジルコニウム粒子はより効果的に解膠される。
【0053】
本発明によれば、水熱処理に供する第3の水スラリーについても、酸化ジルコニウム粒子濃度は、通常、1〜20重量%の範囲であり、好ましくは、1〜10重量%の範囲である。第3の水スラリーの酸化ジルコニウム粒子濃度が20重量%を超えるときは、水スラリーの粘度が高く、水熱処理に困難を生じる。特に、本発明によれば、第3の水スラリーの酸化ジルコニウム粒子濃度は、1〜10重量%の範囲とすることが好ましい。
【0054】
上記水熱処理の温度は、通常、170℃以上であり、好ましくは、170℃〜230℃の温度である。水熱処理の温度が170℃よりも低いときは、得られる酸化ジルコニウム粒子水分散液が十分な透明性をもたないのみならず、沈降性の粗大な凝集粒子を含み、また、高い粘度を有することがある。
【0055】
上記水熱処理の時間は、通常、1時間以上であり、好ましくは、3時間以上である。水熱処理の温度が1時間よりも短いときは、得られる酸化ジルコニウム粒子水分散液が十分な透明性をもたないのみならず、沈降性の粗大な凝集粒子が生成して、目的とする透明性の高い酸化ジルコニウム粒子水分散液を得ることができない。水熱処理の時間は幾ら長くしてもよいが、それに見合う効果も特に得られないので、通常、10時間以下で十分である。
【0056】
第4工程
次いで、本発明によれば、第4工程として、このようにして得られた酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を限外濾過によって洗浄して、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppm、好ましくは、2000〜4000ppmの範囲にあって、酸化ジルコニウム粒子濃度が、通常、1〜30重量%の範囲にある酸化ジルコニウム粒子水分散液を得る。酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン濃度が1500ppm未満の場合には、水分散液の保存安定性が悪くなる。一方、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン濃度が7000ppmを超える場合には、製造設備の腐食の虞がある。
【0057】
本発明によれば、必要に応じて、このようにして得られた酸化ジルコニウム粒子水分散液を濃縮することができる。この濃縮のためには、ロータリーエバポレーターによる蒸発濃縮、限外濾過膜を用いる限外濾過による濃縮等の手段によることができる。この濃縮手段は、特に限定されるものではないが、限外濾過膜を用いる限外濾過による濃縮が好ましい。
【0058】
従って、本発明によれば、上記水熱処理によって得られた酸化ジルコニウム粒子水分散液は、限外濾過膜を用いて濃縮すると同時に洗浄することができる。即ち、酸化ジルコニウム粒子水分散液を限外濾過して濃縮し、得られた濃縮液に水を加えて希釈、洗浄し、得られた水スラリーを再度、限外濾過し、このようにして、水分散液を限外濾過して、その濃縮と希釈を繰り返すことによって、水熱処理によって得られた酸化ジルコニウム粒子水分散液を濃縮しつつ、洗浄して、残存副生塩類を水と共に繰り返して除き、かくして、酸化ジルコニウム粒子水分散液を濃縮して、酸化ジルコニウム濃度を高めた水分散液を得ることができる。
【0059】
本発明によれば、このようにして、酸化ジルコニウム粒子濃度10〜50重量%であって、低粘度と高透明性を有し、しかも、長期保存安定性にすぐれる酸化ジルコニウム粒子水分散液を得ることができる。
【0060】
本発明によれば、酸化ジルコニウム粒子水分散液の酸化ジルコニウム粒子濃度の上限は、通常、50重量%であり、好ましくは、40重量%である。酸化ジルコニウム粒子濃度が50重量%を越える水分散液は粘度が高く、最終的には、流動性を失って、ゲル化するからである。
【0061】
本発明の方法によって得られる酸化ジルコニウム粒子水分散液は、酸化ジルコニウム粒子濃度が30重量%であるとき、全光線透過率が70%以上であり、動的光散乱法による粒度分布測定において、体積基準にて50体積%の粒子径であるD50が1〜20nmの範囲であり、好ましくは、1〜10nmの範囲であり、製造直後の温度25℃における粘度が20mPa・s以下であり、好ましくは、10mPa・s以下であり、製造直後の温度25℃における粘度に比べて、製造して24か月経過したときの温度25℃における粘度の増加量が20mPa・s以下であり、好ましくは、10mPa・s以下である。
【0062】
本発明の方法の好ましい態様によれば、常温環境下において、40か月以上の長期間にわたって保管した後も、その粘度は製造の直後と比べて、実質的に変わらない酸化ジルコニウム粒子水分散液を得ることができる。
【0063】
次に、本発明による安定化元素を含む固溶体である安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液の製造について述べる。
【0064】
本発明の方法によって、安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液を得るには、上述した酸化ジルコニウム粒子水分散液を製造する方法において、オキシ塩化ジルコニウムの水溶液に代えて、オキシ塩化ジルコニウムと上記安定化元素の塩を含む水溶液を用いて同様に処理すればよい。上記安定化元素の塩の上記水溶液における濃度は、通常、0.5モル/L以下であることが好ましい。
【0065】
本発明において、上記安定化元素は、好ましくは、アルミニウム、マグネシウム、チタン及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種である。
【0066】
上記安定化元素の塩は、特に限定されないが、通常、塩化物や硝酸塩等の水溶性塩が好ましく用いられる。例えば、安定化元素がアルミニウムであるときは、塩化アルミニウムが好ましく用いられ、また、安定化元素がイットリウムであるときは、塩化イットリウムが好ましく用いられる。本発明において、上記安定化元素は、ジルコニウム元素に対して、通常、1〜20モル%の範囲で用いられる。
【0067】
本発明において、例えば、酸であるオキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムを塩基性物質で中和する際の中和反応において、酸に対する塩基性物質(アルカリ)のモル過剰度は、通常、1〜1.15の範囲であることが好ましい。上記酸に対する塩基性物質(アルカリ)のモル過剰度については後述する。
【0068】
本発明に従って、上記安定化元素を含む固溶体である酸化ジルコニウム粒子水分散液を得るには、第1工程として、オキシ塩化ジルコニウムと上記安定化元素の塩を水中にて塩基性物質と反応させて、ジルコニウムと上記安定化元素の共沈物の粒子を含むpH8.6〜9.6の範囲である第1の水スラリーを得、第2工程として、上記第1の水スラリーを濾過、水洗した後、水にリパルプして、第2の水スラリーを得、この第2の水スラリーにジルコニウムと上記安定化元素の合計量の1モル部に対して前記と同じ有機酸1モル部以上を加えて、ジルコニウムと上記安定化元素の酸化物換算による合計重量に対する塩素イオン含有率が5000〜20000ppm、好ましくは、6000〜12000ppmの範囲である第3の水スラリーを得、第3工程として、上記第3の水スラリーを水熱処理して、上記安定化元素を含む固溶体である安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を得、次いで、上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液前駆体を限外濾過によって洗浄して、上記安定化酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppm、好ましくは、2000〜4000ppmの範囲である上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液を得る。
【0069】
本発明の方法によって得られる安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液も、上述した酸化ジルコニウム粒子水分散液と同じ特性を有する。
【0070】
即ち、本発明の方法によって得られる安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液は、その安定化酸化ジルコニウム粒子濃度が30重量%であるとき、全光線透過率が70%以上であり、動的光散乱法による粒度分布測定において、体積基準にて50体積%の粒子径であるD50が1〜20nm、好ましくは、1〜10nmの範囲であり、製造直後の温度25℃における粘度が20mPa・s以下、好ましくは、10mPa・s以下であり、製造直後の温度25℃における粘度に比べて、製造して24か月経過したときの温度25℃における粘度の増加量が20mPa・s以下、好ましくは、10mPa・s以下である。
【0071】
本発明の方法の好ましい態様によれば、常温環境下において、40か月以上の長期間にわたって保管した後も、その粘度は製造の直後と比べて、実質的に変わらない安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液を得ることができる。
【0072】
本発明によれば、上述したようにして得られた酸化ジルコニウム粒子水分散液も安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液も、必要に応じて、更に、ビーズミル等の湿式メディア分散、超音波照射、高圧ホモジナイザー等による分散処理を行ってもよい。
【0073】
次に、本発明の方法による(安定化)酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液の製造について述べる。
【0074】
第5工程
本発明によれば、前述したようにして、第1工程から第4工程を経て、(安定化)酸化ジルコニウム粒子水分散液を得る。そこで、本発明によれば、上記第4工程に引き続いて、第5工程として、上記(安定化)酸化ジルコニウム粒子の水分散液の分散媒である水を有機溶媒と置換することによって、その有機溶媒を分散媒とし、上記(安定化)酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率が1500〜7000ppm、好ましくは、2000〜4000ppmの範囲である(安定化)酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液を得ることができる。
【0075】
本発明において、上記有機溶媒は、特に限定されるものではないが、好ましくは、水混和性有機溶媒である。このような水混和性有機溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の脂肪族アルコール類、酢酸エチル、ギ酸メチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類や、これらの2種以上の混合物であるが、特に、好ましくは、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はこれらの混合物である。
【0076】
本発明によれば、(安定化)酸化ジルコニウム粒子水分散液における分散媒である水を有機溶媒と置換するには、水分散液をロータリーエバポレーターで処理して、水を除いた後、新たに有機溶媒を加えたり、また、水分散液を限外濾過して分散媒である水を除去してスラリーを得、これに有機溶媒を加えて希釈し、再度、限外濾過し、このようにして、濾過と希釈を繰り返すことによって、当初の分散媒である水を有機溶媒に置換して、分散媒がその有機溶媒である(安定化)酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液を得ることができる。
【0077】
更には、例えば、(安定化)酸化ジルコニウム粒子水分散液における分散媒である水を水混和性有機溶媒と置換して、その水混和性有機溶媒を分散媒とする(安定化)酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液を得た後、その水混和性有機溶媒を更に別の有機溶媒と置換して、その別の有機溶媒を分散媒とする新たな(安定化)酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液を得ることもできる。
【0078】
本発明によれば、このようにして得られた(安定化)酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液は、必要に応じて、更に、ビーズミル等の湿式メディア分散、超音波照射、高圧ホモジナイザー等による分散処理を行ってもよい。
【0079】
本発明に従って得られるこのような(安定化)酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液も、前述した(安定化)酸化ジルコニウム粒子水分散液と同じ特性を有し、低粘度であって、高透明性を有し、しかも、長期保存安定性に極めてすぐれている。
【0080】
即ち、本発明の方法に従って得られる(安定化)酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液は、その(安定化)酸化ジルコニウム粒子の含有率が30重量%であるとき、全光線透過率が70%以上であり、動的光散乱法による粒度分布測定において、体積基準にて50体積%の粒子径であるD50が1〜20nm、好ましくは、1〜10nmの範囲であり、製造直後の温度25℃における粘度が20mPa・s以下、好ましくは、10mPa・s以下であり、製造して7日後の温度25℃における粘度も20mPa・s以下、好ましくは、10mPa・s以下であって、しかも、製造直後と殆ど同じである。
【0081】
また、製造直後の温度25℃における粘度に比べて、製造して24か月後の温度25℃における粘度の増加量が20mPa・s以下、好ましくは、10mPa・s以下であるという長期保存安定性を有する。
【0082】
本発明の方法の好ましい態様によれば、常温環境下において、40か月以上の長期間にわたって保管した後も、その粘度は製造の直後と比べて、実質的に変わらない(安定化)酸化ジルコニウム粒子有機溶媒分散液を得ることができる。
【0083】
以上に説明したように、本発明によれば、温度に関わりなく、例えば、約10℃から約40℃にわたる温度制御のない環境においても、従って、常温の環境においても、長期保存安定性にすぐれる酸化ジルコニウムナノ粒子の水分散液と有機溶媒分散液のそれぞれの製造方法が提供される。
【0084】
勿論、本発明による酸化ジルコニウム粒子の水分散液及び有機溶媒分散液は、冷蔵温度で保管し、その後、使用の際に常温に戻しても、また、冷凍して保管し、その後、使用の際に解凍して常温に戻しても、その物性や安定性に変化や劣化はみられない。
【実施例】
【0085】
以下の実施例及び比較例において、第4工程における限外濾過は、旭化成ケミカルズ(株)製「マイクローザ」、型式ACV-3010D(分画分子量13000)を用いて行い、第5工程における限外濾過は、旭化成ケミカルズ(株)製「マイクローザ」、型式ACP-1010D(分画分子量13000)を用いて行った。
【0086】
また、以下の実施例及び比較例において、(安定化)酸化ジルコニウム粒子分散液の粒度分布、粘度及び全光線透過率、(安定化)酸化ジルコニウム粒子の水スラリー又は分散液の塩素イオン濃度は以下のようにして測定した。
粒度分布
動的光散乱式粒径・粒度分布測定装置(日機装(株)製UPA−UT)を用いて、D50、D90及びDmaxを測定した。尚、D50、D90及びDmaxは体積基準での数値である。
粘度
音叉型振動式SV型粘度計(エー・アンド・デイ(株)製SV−1A(測定粘度範囲0.3〜1000mPa・s)にて測定した。
全光線透過率
ヘーズメーター(日本電色工業(株))製NDH4000)を用いて、光路長10mmのセルにイオン交換水を充填して標準校正を行い、同様にセルに分散液を充填して光線透過率を測定した。尚、全光線透過率が50%以上の場合を分散液及び分散液前駆体が透明であるとした。
塩素イオン濃度
自動滴定装置(平沼産業(株)製TS−2000)を用いて、得られた水スラリー及び分散液に対して硝酸銀を添加し、沈殿滴定により塩素イオンを測定した。
分散液の長期保存安定性の評価
分散液を製造し、これを温度25℃にて24か月保管したときの粘度増加量が20mPa・s以下であるときを「○」(長期保存安定性にすぐれる)とし、分散液を製造し、これを温度25℃にて24か月保管したときの粘度増加量が20mPa・sを越えるとき、又は既にゲル化しているときを「×」(長期保存安定性に劣る)とした。
【0087】
実施例1
(安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−1)の製造)
第1工程
0.6モル/L濃度のオキシ塩化ジルコニウムと0.03モル/L濃度の塩化イットリウムの混合水溶液900Lと1.9モル/L濃度の水酸化カリウム水溶液680Lを調製した。予め、純水820Lを張った沈殿反応器に上記オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムの混合水溶液と水酸化カリウム水溶液とを同時に注ぎ、オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムを同時中和にて共沈させて、ジルコニウムとイットリウムの共沈物の粒子を含む第1の水スラリーを得た。得られた第1の水スラリーのpHは、9.3であった。
【0088】
第2工程
上記第1の水スラリーを濾過し、水洗濾液の電気伝導度が10μS/cm以下となるまで洗浄し、純水に再度、リパルプして、上記ジルコニウムとイットリウムの共沈物の粒子を含む第2の水スラリーを得た。上記第2の水スラリーに酢酸42kg(上記第2の水スラリー中のジルコニウムとイットリウムの合計量1モル部に対して1.3モル部)を加え、固形分含有率がジルコニウムとイットリウムの酸化物換算の合計重量にて7.5重量%である第3の水スラリー600Lを得た。
【0089】
上記第3の水スラリーの塩素イオン濃度は400ppmであった。上記第3の水スラリーにおいて、その塩素イオン濃度に基づいて算出したジルコニウムとイットリウムの酸化物換算の合計重量に対する塩素含有率は5330ppmであった。
【0090】
第3工程
上記第3の水スラリーを190℃で3時間、水熱処理して、イットリウムを含む固溶体である安定化酸化ジルコニウム粒子の透明な水分散液前駆体を得た。
【0091】
第4工程
上記安定化酸化ジルコニウム粒子の透明な水分散液前駆体を限外濾過膜にて洗浄、濃縮し、安定化酸化ジルコニウム粒子濃度30.0重量%、塩素イオン濃度560ppmである安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−1)を得た。この安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液において、その塩素イオン濃度に基づいて算出した安定化酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素含有率は1870ppmであった。
【0092】
(安定化酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液(II−1)の製造)
第5工程
上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−1)10kgを限外濾過膜を用いて濃縮し、このようにして得られた濃縮分散液に得られた濾液量と等量のメタノールを投入して、分散液の濃縮とメタノールによる希釈を連続的に且つ同時に並行して行うことによって、分散液中の安定化酸化ジルコニウム粒子濃度を30重量%に維持しつつ、分散液の分散媒を水からメタノールに置換して、安定化酸化ジルコニウム粒子濃度30.3重量%、塩素イオン濃度550ppmの安定化酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液(II−1)を得た。この際、希釈に用いたメタノール量は90Lであった。
【0093】
上記安定化酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液(II−1)において、その塩素イオン濃度に基づいて算出した安定化酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素含有率は1820ppmであった。
【0094】
実施例2〜6
実施例1の第1工程において、表1に示す濃度の水酸化カリウム水溶液を用いて、表1に示すpHを有する第1の水スラリーを得た以外は、実施例1と同様にして、安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−2)〜(I−6)を得、更に、それを用いて、安定化酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液(II−2)〜(II−6)を得た。
【0095】
実施例7
(酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−7)の製造)
第1工程
0.6モル/L濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液900Lと1.6モル/L濃度の水酸化カリウム水溶液680Lを調製した。予め、純水820Lを張った沈殿反応器に上記オキシ塩化ジルコニウム水溶液と水酸化カリウム水溶液とを同時に注ぎ、オキシ塩化ジルコニウムを同時中和にて沈殿させて、酸化ジルコニウム粒子を含む第1の水スラリーを得た。得られた第1の水スラリーのpHは、8.7であった。
【0096】
第2工程
上記第1の水スラリーを濾過し、水洗濾液の電気伝導度が10μS/cm以下となるまで洗浄した後、純水に再度、リパルプして、上記酸化ジルコニウム粒子を含む第2の水スラリーを得た。上記第2の水スラリーに酢酸42kg(上記第2の水スラリー中のジルコニウム1モル部に対して1.4モル部)を加え、固形分含有率が酸化ジルコニウム換算の重量にて7.5重量%である第3の水スラリー600Lを得た。
【0097】
上記第3の水スラリーの塩素イオン濃度は950ppmであった。従って、上記第3の水スラリーにおいて、その塩素イオン濃度に基づいて算出した酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素含有率は12670ppmであった。
【0098】
第3工程
上記第3の水スラリーを190℃で3時間、水熱処理して、酸化ジルコニウム粒子の透明な水分散液前駆体を得た。
【0099】
第4工程
上記酸化ジルコニウム粒子の透明な水分散液前駆体を限外濾過膜にて洗浄、濃縮し、酸化ジルコニウム粒子濃度31.2重量%、塩素イオン濃度1320ppmの酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−7)を得た。
【0100】
上記酸化ジルコニウム粒子水分散液において、その塩素イオン濃度に基づいて算出した酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素含有率は4230ppmであった。
【0101】
(酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液(II−7)の製造)
第5工程
上記酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−7)10kgを限外濾過膜を用いて濃縮し、このようにして得られた濃縮分散液に得られた濾液量と等量のメタノールを投入して、分散液の濃縮とメタノールによる希釈を連続的に且つ同時に並行して行うことによって、分散液中の酸化ジルコニウム粒子濃度を30重量%に維持しつつ、分散液の分散媒を水からメタノールに置換して、酸化ジルコニウム粒子濃度30.9重量%、塩素イオン濃度1260ppmの酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液(II−7)を得た。この際、希釈に用いたメタノール量は90Lであった。
【0102】
上記酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液において、その塩素濃度に基づいて算出した酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素含有率は4080ppmであった。
【0103】
実施例8及び9
実施例1の第1工程において、表1に示す濃度の水酸化カリウム水溶液を用いて、表1に示すpHを有する第1の水スラリーを得た以外は、実施例1と同様にして、安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−8)〜(I−9)を得、更に、それを用いて安定化酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液(II−8)〜(II−9)を得た。
【0104】
このようにして得られた安定化酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液(II−8〜II−9)を温度25℃で28か月間保管したときの粘度はいずれも4mPa・sであった。
【0105】
実施例10
実施例7の第1工程において、表1に示す濃度の水酸化カリウム水溶液を用いて、表1に示すpHを有する第1の水スラリーを得た以外は、実施例7と同様にして、酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−10)を得た。
【0106】
このようにして得られた酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−10)を温度25℃にて密栓して、50か月にわたって保管したときの水分散液の粘度は温度25℃において7mPa・sであった。
【0107】
また、上記水分散液(I−10)を用いて、酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液(II−10)を得た。このメタノール分散液を温度25℃にて密栓して、44か月にわたって保管したときの粘度は温度25℃において2mPa・sであった。
【0108】
実施例11
(安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−11)の製造)
第1工程
0.6モル/L濃度のオキシ塩化ジルコニウムと0.03モル/L濃度の塩化イットリウムの混合水溶液900Lと1.9モル/L濃度の水酸化カリウム水溶液680Lを調製した。予め、純水820Lを張った沈殿反応器に上記オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムの混合水溶液と水酸化カリウム水溶液とを同時に注ぎ、オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムを同時中和にて共沈させて、ジルコニウムとイットリウムの共沈物の粒子を含む第1の水スラリーを得た。得られた第1の水スラリーのpHは、9.3であった。
【0109】
第2工程
上記第1の水スラリーを濾過し、水洗濾液の電気伝導度が10μS/cm以下となるまで洗浄して、純水にリパルプして、上記ジルコニウムとイットリウムの共沈物の粒子を含む第2の水スラリーを得た。上記第2の水スラリーに酢酸42kg(上記第2の水スラリー中のジルコニウムとイットリウムの合計量1モル部に対して1.3モル部)を加え、固形分含有率がジルコニウムとイットリウムの酸化物換算の合計重量にて7.5重量%である第3の水スラリー600Lを得た。
【0110】
上記第3の水スラリーの塩素イオン濃度は510ppmであった。上記第3の水スラリーにおいて、上記塩素イオン濃度に基づいて算出したジルコニウムとイットリウムの酸化物換算の合計重量に対する塩素イオン含有率は6800ppmであった。
【0111】
第3工程
上記第3の水スラリーを190℃で3時間、水熱処理して、イットリウムを含む固溶体である安定化酸化ジルコニウム粒子の透明な水分散液前駆体を得た。
【0112】
第4工程
上記安定化酸化ジルコニウム粒子の透明な水分散液前駆体を限外濾過膜にて洗浄、濃縮して、上記安定化酸化ジルコニウム粒子濃度30.5重量%、塩素イオン濃度710ppmの安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−11)を得た。この水分散液において、上記塩素イオン濃度に基づいて算出した安定化酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率は2330ppmであった。
【0113】
上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液を温度25℃で41か月間保管したときの粘度は8mPa・sであった。
【0114】
実施例12
(安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−12)の製造)
第1工程
0.6モル/L濃度のオキシ塩化ジルコニウムと0.03モル/L濃度の塩化イットリウムの混合水溶液900Lと1.9モル/L濃度の水酸化カリウム水溶液680Lを調製した。予め、純水820Lを張った沈殿反応器に上記オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムの混合水溶液と水酸化カリウム水溶液とを同時に注ぎ、オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムを同時中和にて共沈させて、ジルコニウムとイットリウムの共沈物の粒子を含む第1の水スラリーを得た。得られた第1の水スラリーのpHは、9.2であった。
【0115】
第2工程
上記第1の水スラリーを濾過し、水洗濾液の電気伝導度が10μS/cm以下となるまで洗浄して、純水に再度、リパルプして、上記ジルコニウムとイットリウムの共沈物の粒子を含む第2の水スラリーを得た。上記第2の水スラリーに酢酸42kg(上記第2の水スラリー中のジルコニウムとイットリウムの合計量1モル部に対して1.3モル部)を加え、固形分含有率がジルコニウムとイットリウムの酸化物換算の合計重量にて7.5重量%である第3の水スラリー600Lを得た。
【0116】
上記第3の水スラリーの塩素イオン濃度は660ppmであった。上記第3の水スラリーにおいて、上記塩素イオン濃度に基づいて算出した安定化酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率は8800ppmであった。
【0117】
第3工程
上記第3の水スラリーを190℃で3時間、水熱処理して、安定化酸化ジルコニウム粒子の透明な水分散液の前駆体を得た。
【0118】
第4工程
上記安定化酸化ジルコニウム粒子の透明な水分散液の前駆体を限外濾過膜にて洗浄、濃縮し、安定化酸化ジルコニウム粒子濃度30.0重量%、塩素イオン濃度920ppmの安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−12)を得た。この水分散液において、上記塩素イオン濃度に基づいて算出した安定化酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率は3070ppmであった。
【0119】
上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液を温度25℃で51か月間保管したときの粘度は、9mPa・sであった。
【0120】
比較例1
(安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−A)の製造)
第1工程
0.6モル/L濃度のオキシ塩化ジルコニウムと0.03モル/L濃度の塩化イットリウムの混合水溶液900Lと1.9モル/L濃度の水酸化カリウム水溶液680Lを調製した。予め、純水820Lを張った沈殿反応器に上記オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムの混合水溶液と水酸化カリウム水溶液とを同時に注ぎ、オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムを同時中和にて共沈させて、ジルコニウムとイットリウムの共沈物の粒子を含む第1の水スラリーを得た。得られた第1の水スラリーのpHは、9.7であった。
【0121】
第2工程
上記第1の水スラリーを濾過し、水洗濾液の電気伝導度が10μS/cm以下となるまで洗浄して、純水に再度、リパルプして、上記ジルコニウムとイットリウムの共沈物の粒子を含む第2の水スラリーを得た。上記第2の水スラリーに酢酸42kg(上記第2の水スラリー中のジルコニウムとイットリウムの合計量1モル部に対して1.3モル部)を加え、固形分含有率がジルコニウムとイットリウムの酸化物換算の合計重量にて7.5重量%である第3の水スラリー600Lを得た。
【0122】
上記第3の水スラリーの塩素イオン濃度は140ppmであった。上記第3の水スラリーにおいて、その塩素濃度に基づいて算出したジルコニウムとイットリウムの酸化物換算の合計重量に対する塩素イオン含有率は1870ppmであった。
【0123】
第3工程
上記第3の水スラリーを190℃で3時間、水熱処理して、安定化酸化ジルコニウム粒子の透明な水分散液前駆体を得た。
【0124】
第4工程
上記安定化酸化ジルコニウム粒子の透明な水分散液前駆体を限外濾過膜にて洗浄、濃縮し、安定化酸化ジルコニウム粒子濃度30.4重量%、塩素イオン濃度190ppmである安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−A)を得た。この安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液において、その塩素イオン濃度に基づいて算出したジルコニウムとイットリウムの酸化物換算の合計重量に対する塩素含有率は630ppmであった。
【0125】
(酸化ジルコニウム微粒子のメタノール分散液(II−A)の製造)
第5工程
上記安定化酸化ジルコニウム粒子水分散液(I−A)10kgを限外濾過膜を用いて濃縮し、このようにして得られた濃縮分散液に得られた濾液量と等量のメタノールを投入して、分散液の濃縮とメタノールによる希釈を連続的に且つ同時に並行して行うことによって、分散液中の安定化酸化ジルコニウム粒子濃度を30重量%に維持しつつ、分散液の分散媒を水からメタノールに置換して、安定化酸化ジルコニウム粒子濃度30.4重量%、塩素濃度220ppmの安定化酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液(II−A)を得た。この際、希釈に用いたメタノール量は90Lであった。
【0126】
上記安定化酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液において、その塩素イオン濃度に基づいて算出した安定化酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率は720ppmであった。このようにして得られた安定化酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液は製造して7日後にはゲル化して、流動性を失った。
【0127】
上記実施例7及び10で得られた酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液からメタノールを除去、乾燥し、かくして、得られた酸化ジルコニウム微粒子粉末をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察したところ、酸化ジルコニウム粒子の平均一次粒子径は約5nmであった。
【0128】
上記実施例1〜6、8、9、11、12及び比較例1で得られたイットリウムを含む固溶体である安定化酸化ジルコニウム粒子メタノール分散液からメタノールを除去、乾燥し、かくして、得られた安定化酸化ジルコニウム粒子粉末をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察したところ、安定化酸化ジルコニウム粒子の平均一次粒子径は約3nmであった。
【0129】
上記実施例及び比較例において、オキシ塩化ジルコニウム(と塩化イットリウム)(酸)の(混合)水溶液を水酸化カリウム(アルカリ)で中和したときの酸に対するアルカリのモル過剰度を表1に示す。ここに、上記モル過剰度とは、上記中和反応において用いたアルカリのモル量/用いた酸のモル量の比によって表される。
【0130】
オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムの水酸化カリウムによる中和反応の化学式は次式のとおりである。
ZrOCl2 + 2KOH → ZrO(OH) 2 + 2KCl …(1)
YCl3 + 3KOH → Y(OH) 3 + 3KCl …(2)
従って、酸に対するアルカリのモル過剰度Eは、次式によって求めることができる。
E=K/(2Z+3Y)…(3)
ここに、Kは用いた水酸化カリウムのモル量、Zは用いたオキシ塩化ジルコニウムのモル量、Yは用いた塩化イットリウムのモル量を表す。
【0131】
上記実施例1〜12及び比較例1において、第1工程で用いた水酸化カリウム水溶液濃度、第1工程で得られた第1の水スラリーのpH、第2工程で得られた第2の水スラリーの塩素イオン濃度とその塩素イオン濃度に基づいて算出した塩素イオン含有率(Cl/ZrO2)を表1に示す。但し、実施例7及び10においては、酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率であり、実施例1〜6、8、9、11、12及び比較例1においては、ジルコニウムとイットリウムの酸化物換算の合計重量に対する塩素イオン含有率である。
【0132】
また、実施例1〜12及び比較例1において得られた(安定化)酸化ジルコニウム粒子水分散液の(安定化)酸化ジルコニウム粒子濃度、pH、電気伝導度、粒度分布、全光線透過率、塩素イオン濃度と共に、(安定化)酸化ジルコニウム粒子水分散液において、上記塩素イオン濃度に基づいて算出した(安定化)酸化ジルコニウム粒子の重量に対する塩素イオン含有率(Cl/ZrO2)、製造直後の水分散液の25℃における粘度及び水分散液の長期保存安定性の評価の結果を表2に示す。
【0133】
更に、実施例1〜10及び比較例1において得られた酸化ジルコニウム粒子のメタノール分散液の濃度、粒度分布、全光線透過率、塩素イオン濃度と共に、その塩素イオン濃度に基づいて算出した(安定化)酸化ジルコニウム粒子に対する塩素イオン含有率(Cl/ZrO2)、水分量、製造直後の25℃における粘度、製造して7日後の粘度及び長期保存安定性の評価の結果を表3に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
本発明の方法に従って得た(安定化)酸化ジルコニウム粒子水分散液は、実施例1〜12に示すように、微細な酸化ジルコニウム粒子を高濃度にて含んでいても、高透明性と低粘度を有し、そのうえ、温度25℃にて24か月保管したときの粘度増加量が20mPa・s以下であって、長期保存安定性に著しくすぐれている。特に、好ましい態様によれば、40か月以上保管しても、その25℃における粘度は、製造直後と実質的に変わらず、長期保存安定性に極めてすぐれている。
【0138】
更に、本発明の方法に従って得た(安定化)酸化ジルコニウム粒子水分散液の分散媒である水を有機溶媒に置換して得られる有機溶媒分散液も、実施例1〜10に示すように、水分散液と同様に、微細な酸化ジルコニウム粒子を高濃度で含んでいても、高透明性と低粘度を有し、そのうえ、温度25℃にて24か月保管したときの粘度増加量が20mPa・s以下であって、長期保存安定性に著しくすぐれている。特に、好ましい態様によれば、40か月以上保管しても、その25℃における粘度は、製造直後と実質的に変わらず、長期保存安定性に極めてすぐれている。