(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665983
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】増力機構付き流体圧シリンダ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20200302BHJP
F16K 15/18 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
F15B15/14 A
F15B15/14 380B
F15B15/14 375
F16K15/18 D
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-146665(P2016-146665)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-17269(P2018-17269A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】工藤 政行
(72)【発明者】
【氏名】田邊 友一
(72)【発明者】
【氏名】宮里 英考
【審査官】
小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−085492(JP,A)
【文献】
特開2003−120609(JP,A)
【文献】
特開2002−235706(JP,A)
【文献】
特開平11−166506(JP,A)
【文献】
特開平09−254887(JP,A)
【文献】
特開平09−229014(JP,A)
【文献】
特開平06−300008(JP,A)
【文献】
特開平06−042507(JP,A)
【文献】
特開平05−164111(JP,A)
【文献】
特開2016−223473(JP,A)
【文献】
特公昭51−011271(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 3/00,15/14−15/17,15/22
F16K 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダボディの内部に、隔壁で隔てられた主シリンダ室と増力シリンダ室とが設けられ、
主シリンダ室には主ピストンが軸線方向に摺動自在に配設され、主ピストンによって主シリンダ室が第1主圧力室と第2主圧力室とに区画され、
増力シリンダ室には増力ピストンが軸線方向に摺動自在に配設され、増力ピストンによって増力シリンダ室が第1副圧力室と第2副圧力室とに区画され、
シリンダボディには、第1主圧力室に連通する第1ポートと、第2主圧力室及び第2副圧力室に連通する第2ポートとが設けられ、
主ピストンにはピストンロッドが連結され、ピストンロッドは、隔壁と増力ピストンと増力シリンダ室の端壁とを貫通して外部に延出しており、
主ピストン及びピストンロッドには、第1主圧力室に連通する連通路が設けられ、連通路の端部に、ピストンロッドが前進ストローク端の手前の増力開始位置に到達したとき増力ピストンに押されることにより開弁し、連通路を第1副圧力室に連通させるチェック弁が設けられ、
増力ピストンの内部に連結体収容室がピストンロッドを取り囲むように形成され、連結体収容室の内部に連結体がピストンロッドを取り囲むように配設され、
連結体収容室とピストンロッドの外周面とに、連通路を通じて第1副圧力室に供給される圧力流体の作用で増力ピストンが前進するとき連結体に係止する係止面と係止溝とが設けられている、
ことを特徴とする増力機構付き流体圧シリンダ。
【請求項2】
ピストンロッドは、主ピストンに連なる基端側から先端側に向けて順に、最も径が大きい第1カラー部と、第1カラー部より径が小さい第2カラー部と、第2カラー部より径が小さいロッド本体部とを有し、第1カラー部に連通路の一部とチェック弁とが設けられ、第2カラー部に係止溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【請求項3】
第1カラー部の先端部に、チェック弁の弁室が連通路に通じるように形成され、弁室内に、連通路を取り巻く環状弁座が形成されると共に、環状弁座に接離するポペット弁体が配設され、ポペット弁体は、弁室の外部に突出する押し棒を有し、押し棒が増力ピストンに押されることでポペット弁体が環状弁座から離間し、連通路が開放して第1副圧力室に連通するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の流体圧シリンダ。
【請求項4】
隔壁の中央孔の内周にリング状のロッドパッキンが設けられ、ピストンロッドの第1カラー部は、ロッドパッキンの内部に気密に嵌入して摺動することができる外径を有し、ピストンロッドが増力開始位置に達したとき第1カラー部がロッドパッキンの内部に嵌入することによって第1副圧力室が第2主圧力室から遮断されるように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の流体圧シリンダ。
【請求項5】
増力ピストンに押圧部材が設けられ、押圧部材は、ピストンロッドが前進ストロークを行う際にチェック弁を押して開弁させる開弁手段と、増力ピストンが後退ストロークを行う際に連結体を押して増力ピストンとピストンロッドとの連結を解除する解除手段とを兼ねていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の流体圧シリンダ。
【請求項6】
連結体は複数の鋼球からなることを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【請求項7】
連結体は、直径が可変の弾性リングからなることを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増力機構によってピストンロッドの前進ストローク後半の推力を増大させるようにした増力機構付き流体圧シリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クランプ装置や圧縮装置あるいはスポット溶接装置等の作業機械においては、通常、作業工程の前半にあまり大きな駆動力を必要とせず、作業工程の後半に大きな駆動力を必要とする場合が多い。このため、これら作業機械に使用される流体圧シリンダは、特許文献1−3に開示されているように、各種構成の増力機構を付設することにより、ピストンロッドの作業ストローク(前進ストローク)の後半の推力を増大させるようにしている。
【0003】
特許文献1−3に開示された増力機構付きの流体圧シリンダは、ピストンロッドを駆動する主ピストンの他に増力ピストンを設け、ピストンロッドが前進ストローク端の手前の増力開始位置に到達したとき、増力ピストンに圧力流体を供給して増力ピストンを前進させることにより、増力ピストンの推力をピストンロッドに作用させるようにし、それにより、主ピストンの推力と増力ピストンの推力とを合算した大きな合成推力でピストンロッドを前進させるようにしている。このため、増力機構付きの流体圧シリンダにおいては、主ピストンに圧力流体を作用させるためのポートの他に、増力ピストンに圧力流体を作用させるためのポートが必要であり、それに伴って配管数も通常の流体圧シリンダより多くなる。
【0004】
ところが、このような増力機構付き流体圧シリンダを備えた作業機械においては、流体圧シリンダの回りの配管が周辺機器と接触して損傷するのを防止して安全性を高めたり、配管の接続作業や保守、管理作業を簡略化したりするため、配管数をできるだけ少なくすることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−42507号公報
【特許文献2】特開平6−300008号公報
【特許文献3】特開平11−166506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、増力ピストンに圧力流体を供給するための流路を合理的に配置することにより、従来の増力機構付き流体圧シリンダよりもポート数を少なくし、それにより、配管数を減らして安全性の向上と配管作業の簡略化とを図った増力機構付き流体圧シリンダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の増力機構付き流体圧シリンダは、シリンダボディの内部に、隔壁で隔てられた主シリンダ室と増力シリンダ室とが設けられ、主シリンダ室には主ピストンが軸線方向に摺動自在に配設され、主ピストンによって主シリンダ室が第1主圧力室と第2主圧力室とに区画され、増力シリンダ室には増力ピストンが軸線方向に摺動自在に配設され、増力ピストンによって増力シリンダ室が第1副圧力室と第2副圧力室とに区画され、シリンダボディには、第1主圧力室に連通する第1ポートと、第2主圧力室及び第2副圧力室に連通する第2ポートとが設けられ、主ピストンにはピストンロッドが連結され、ピストンロッドは、隔壁と増力ピストンと増力シリンダ室の端壁とを貫通して外部に延出しており、主ピストン及びピストンロッドには、第1主圧力室に連通する連通路が設けられ、連通路の端部に、ピストンロッドが前進ストローク端の手前の増力開始位置に到達したとき増力ピストンに押されることにより開弁し、連通路を第1副圧力室に連通させるチェック弁が設けられ、増力ピストンの内部に連結体収容室がピストンロッドを取り囲むように形成され、連結体収容室の内部に連結体がピストンロッドを取り囲むように配設され、連結体収容室とピストンロッドの外周面とに、連通路を通じて第1副圧力室に供給される圧力流体の作用で増力ピストンが前進するとき連結体に係止する係止面と係止溝とが設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、ピストンロッドは、主ピストンに連なる基端側から先端側に向けて順に、最も径が大きい第1カラー部と、第1カラー部より径が小さい第2カラー部と、第2カラー部より径が小さいロッド本体部とを有し、第1カラー部に連通路の一部とチェック弁とが設けられ、第2カラー部に係止溝が設けられている。
この場合、第1カラー部の先端部には、チェック弁の弁室が連通路に通じるように形成され、弁室内に、連通路を取り巻く環状弁座が形成されると共に、環状弁座に接離するポペット弁体が配設され、ポペット弁体は、弁室の外部に突出する押し棒を有し、押し棒が増力ピストンに押されることでポペット弁体が環状弁座から離間し、連通路が開放して第1副圧力室に連通するように構成されていることが望ましい。
【0009】
本発明においては、隔壁の中央孔の内周にリング状のロッドパッキンが設けられ、ピストンロッドの第1カラー部は、ロッドパッキンの内部に気密に嵌入して摺動することができる外径を有し、ピストンロッドが増力開始位置に達したとき第1カラー部がロッドパッキンの内部に嵌入することによって第1副圧力室が第2主圧力室から遮断されるように構成されていても良い。
【0010】
また、本発明においては、増力ピストンに押圧部材が設けられ、押圧部材は、ピストンロッドが前進ストロークを行う際にチェック弁を押して開弁させる開弁手段と、増力ピストンが後退ストロークを行う際に連結体を押して増力ピストンとピストンロッドとの連結を解除する解除手段とを兼ねている。
本発明において、連結体は、複数の鋼球で形成することも、直径が可変の弾性リングで形成することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主ピストン及びピストンロッドに連通路を設けると共に、連通路の端部にチェック弁を設け、ピストンロッドが前進ストローク端の手前の増力開始位置に達したとき、チェック弁が開弁して第1主圧力室と第1副圧力室とが連通路を通じて連通するように構成したので、第1副圧力室に圧力流体を供給するための専用のポートが不要になり、その結果、従来の増力機構付き流体圧シリンダよりもポート数が少なくなり、配管数を減らして安全性の向上と配管作業の簡略化とを図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る増力機構付き流体圧シリンダの断面図で、ピストン及びピストンロッドが後退ストローク端である初期位置を占めている状態を示すものである。
【
図4】ピストン及びピストンロッドが
図1の初期位置から前進ストロークの途中位置まで移動した状態を示すものである。
【
図5】ピストン及びピストンロッドが増力開始位置まで前進した状態を示すものである。
【
図7】ピストン及びピストンロッドが前進ストローク端に到達した状態を示すものである。
【
図8】ピストン及びピストンロッドが後退ストロークの途中まで移動して、増力ピストンが初期位置に復帰した状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1−8には本発明に係る増力機構付き流体圧シリンダの一実施形態が示されている。この流体圧シリンダは、シリンダボディ1を有している。シリンダボディ1は、中央孔2aを有する隔壁2と、隔壁2の一側に連結された円筒状の第1ボディ3と、隔壁2の他側に連結された円筒状の第2ボディ4と、第1ボディ3の開口端を塞ぐ第1端壁5と、第2ボディ4の開口端を塞ぐ第2端壁6とを有し、第1端壁5と第2端壁6とに掛け渡されたタイロッド7をナット8で締め付けることにより、シリンダボディ1が組み立てられている。
【0014】
第1ボディ3の内部には主シリンダ室10が形成され、第2ボディ4の内部には増力シリンダ室11が形成されている。主シリンダ室10と増力シリンダ室11とは隔壁2で隔てられ、軸線Lに沿って同軸上に位置している。
【0015】
主シリンダ室10の内部には、主ピストン12がシール部材14を介して軸線L方向に摺動自在に配設され、主ピストン12によって主シリンダ室10が、主ピストン12と第1端壁5との間の第1主圧力室10aと、主ピストン12と隔壁2との間の第2主圧力室10bとに区画されている。
図中の符号15は、主ピストン12の外周に取り付けられたウエアリングを示し、同16は、主ピストン12の外周に取り付けられた位置検出用のマグネットを示しており、マグネット16の磁気を不図示の磁気センサで検出することにより、主ピストン12の動作位置を検出することができるようになっている。
【0016】
また、増力シリンダ室11の内部には、増力ピストン13がシール部材17を介して軸線L方向に摺動自在に配設され、増力ピストン13によって増力シリンダ室11が、隔壁2と増力ピストン13との間の第1副圧力室11aと、増力ピストン13と第2端壁6との間の第2副圧力室11bとに区画されている。第2副圧力室11bの内部には、増力ピストン13と第2端壁6との間に、増力ピストン13を復帰方向即ち隔壁2の方向に向けて付勢する復帰ばね18が設けられている。図中の符号19は、増力ピストン13の外周に取り付けられたウエアリングを示している。
【0017】
シリンダボディ1の第1端壁5には第1ポート20が形成され、第2端壁6には第2ポート21が形成されている。第1ポート20は、第1端壁5に形成された第1連通孔22によって第1主圧力室10aに連通し、第2ポート21は、第2端壁6に形成された第2連通孔23によって第2副圧力室11bに連通すると共に、第2端壁6と隔壁2との間に掛け渡されたパイプ26内の第3連通孔24、及び隔壁2に形成された第4連通孔25を通じて、第2主圧力室10bにも連通している。
【0018】
主ピストン12には、軸線Lに沿って延びる円柱状をしたピストンロッド30の基端部が連結されている。ピストンロッド30と主ピストン12との連結は、ピストンロッド30の細径化された連結部30eを主ピストン12の中心の連結孔12a内に挿入し、連結部30eの端部をかしめて連結孔12aの端部に係止させることにより行っている。
【0019】
ピストンロッド30は、主ピストン12に連なる基端側から先端側に向けて順に、最も径が大きい第1カラー部30aと、第1カラー部30aより径が小さい第2カラー部30bと、第2カラー部30bより径が小さいロッド本体部30cとを有していて、隔壁2の中央孔2aと、増力ピストン13の中央孔13aと、第2端壁6の中央孔6aとを順次貫通し、先端がシリンダボディ1の外部に突出している。各中央孔2a,13a,6aのうち、増力ピストン13の中央孔13aと第2端壁6の中央孔6aとは、ピストンロッド30のロッド本体部30cがそれぞれシール部材31,32を介して気密に摺動できるような大きさに形成され、隔壁2の中央孔2aは、ピストンロッド30の前進ストロークの途中で第1カラー部30aが気密に嵌入して摺動できるような大きさに形成され、この中央孔の内周にロッドパッキン33が取り付けられている。
図中の符号34は、第2端壁6の内周に取り付けられた軸受を示している。
【0020】
第1カラー部30aは、主ピストン12と一体に形成された円筒状の部分であり、第2カラー部30bは、第1カラー部30a及びピストンロッド30とは別体に形成された円筒状の部材からなっている。しかし、第1カラー部30aは主ピストン12と別体に形成することもできる。
また、第1カラー部30aの軸線L方向の長さは、主ピストン12及びピストンロッド30が
図1の後退ストローク端にあるとき、第1カラー部30aの先端面30fが第2主圧力室10bの中に位置し、
図5に示すように、主ピストン12及びピストンロッド30が前進ストローク端の手前の増力開始位置に到達したとき、第1カラー部30aがロッドパッキン33内に嵌入すると共に、第1カラー部30aの先端面30fが増力ピストン13の押圧部材35に近接又は当接するような長さである。
【0021】
主ピストン12とピストンロッド30の第1カラー部30aとには、基端が第1主圧力室10aに通じる連通路38が軸線Lと平行に形成され、連通路38の先端は第1カラー部30aの先端面30fにまで達し、連通路38の先端部にチェック弁39が設けられている。
【0022】
図3に示すように、チェック弁39は、連通路38に通じる弁室40と、弁室40の開口端に連通路38を取り囲むように形成された環状弁座41と、弁室40の内部で環状弁座41に離接することにより連通路38を開閉するポペット弁体42と、ポペット弁体42を環状弁座41に当接する方向(閉弁方向)に付勢する弁ばね43とを有している。また、ポペット弁体42は、シール材42bが取り付けられた円板状の開閉部42aと、開閉部42aから延出する押し棒42cとを有していて、押し棒42cの先端は、環状弁座41の中心孔を貫通して弁室40の外側に突出している。
【0023】
増力ピストン13の内部には、連結体収容室46と、第2カラー部30bが嵌合する空間部47とが、ピストンロッド30を取り囲むように形成され、連結体収容室46の内部に、複数の鋼球48が、ピストンロッド30を取り囲むような配置で遊動状態に収容されている。複数の鋼球48は、あとで詳細に説明するように、圧力流体の作用で増力ピストン13が前進するときに、増力ピストン13とピストンロッド30との両方に係止して増力ピストン13とピストンロッド30とを相互に連結する連結体としての役目を果たすものである。
【0024】
連結体収容室46は、三角形の2辺で囲まれたような断面形状を有する空間からなっていて、隔壁2寄りの第1室壁46aとその反対寄りの第2室壁46bとを有している。このうち第1室壁46aは、増力ピストン13とピストンロッド30との連結時に鋼球48が係止する係止面をなす部分であって、隔壁2側に向けて次第に軸線Lに近づく方向に傾斜する円錐面となっており、第2室壁46bは、第1室壁46aとは逆方向に傾斜する円錐面をなしている。しかし、第1室壁46aは、凹状又は凸状に湾曲する曲面であっても良い。
【0025】
第1室壁46aは、増力ピストン13に不図示のねじで固定されたリング状の連結体抑え49により形成され、第2室壁46bは、空間部47内に軸線L方向に変位自在なるように収容されたリング状の連結体受け50により形成され、連結体受け50は、空間部47の段部47aと連結体受け50との間に介設された圧縮ばね51によって連結体抑え49側に向けて常時付勢されている。
【0026】
また、第2カラー部30bの外周には、ピストンロッド30が前進して第2カラーが空間部47内に嵌合した際に鋼球48が乗り上げて係止する係止溝30dが形成され、第2カラー部30bの先端面30gは、鋼球48が乗り上げ易いように傾斜面をなしている。
【0027】
さらに、増力ピストン13の隔壁2側の端部には、中空の押圧部材35がピストンロッド30を取り囲むように配設されている。この押圧部材35は、増力ピストン13の端面と平行をなすフランジ部35aと、このフランジ部35aの内径部から増力ピストン13の内部に嵌入する方向に突出し、先端が連結体収容室46内に進入する円筒状の第1押圧部35bと、フランジ部35aから第1押圧部35bと逆方向に突出する円筒状の第2押圧部35cとを有している。第1押圧部35bの突出長は、図示した例では第2押圧部35cの突出長より大きいが、第2押圧部35cの突出長と同等か又はそれ以下に形成されることもある。また、押圧部材35は、フランジ部35aが増力ピストン13の端面に当接する
図1に示す位置と、フランジ部35aが増力ピストン13の端面から離間する
図7に示す位置との間で、変位自在である。この押圧部材35は、増力ピストン13の一部を構成するものである。
【0028】
なお、押圧部材35の第2押圧部35cは、
図6に示すように、この第2押圧部35cがポペット弁体42の押し棒42cを押し込んで第2弁室40の前面に当接しても、連通路38を完全に塞いでしまわないような寸法及び配置とされている。
【0029】
次に、増力機構付き流体圧シリンダの作用について説明するが、流体圧シリンダの細部の構成については、
図2及び
図3も参照するものとする。
図1は、第2ポート21が給気側に接続されると共に、第1ポート20が排気側に接続されることにより、第2主圧力室10b及び第2副圧力室11bに圧力流体が供給されると共に、第1主圧力室10aの圧力流体が排出された状態を示している。このとき、主ピストン12及びピストンロッド30は、第2主圧力室10b内の流体圧力によって後退ストローク端である初期位置を占め、増力ピストン13は、復帰ばね18の作用力で隔壁2に当接する復帰位置(初期位置)を占めている。また、第2主圧力室10bと第1副圧力室11aとは、隔壁2の中央孔2aを通じて相互に連通している。
【0030】
図1の状態から、
図4に示すように、第1ポート20が給気側に接続されると共に、第2ポート21が排気側に接続されると、第1主圧力室10aに圧力流体が供給されると共に、第2主圧力室10b及び第2副圧力室11bの圧力流体が排出されるため、主ピストン12及びピストンロッド30は図の左方向に前進を始める。しかし、増力ピストン13は、第1副圧力室11aが第2主圧力室10bを通じて外部に開放されていて、第1ポート20からの圧力流体の影響を受けないため、復帰ばね18の作用力で復帰位置に保持されたまま、前進しない。
図4に示すピストンロッド30の位置は、第2カラー部30bの先端部が、押圧部材35の中央孔35dを経て増力ピストン13の空間部47内に進入することにより、鋼球48が第2カラー部30bに乗り上げた状態のストローク途中の位置である。
【0031】
ピストンロッド30がさらに前進し、
図5に示す増力開始位置の直前の位置まで前進すると、第1カラー部30aの先端部分が隔壁2の中央孔2aのロッドパッキン33の内部に嵌入することにより、第1副圧力室11aが第2主圧力室10bから遮断され、その直後にピストンロッド30は、
図5の増力開始位置に到達する。
【0032】
ピストンロッド30が増力開始位置に到達すると、
図6からも明らかなように、第2カラー部30bが増圧ピストン13の空間部47内に完全に進入して、係止溝30dに鋼球48が嵌合し、また、第1カラー部30aの先端面30fから突出していたポペット弁体42の押し棒42cが、増力ピストン13の押圧部材35の第2押圧部35cに当接して押されることにより、ポペット弁体42が環状弁座41から離れて連通路38を開放する。これにより、第1主圧力室10a内の圧力流体が連通路38を通じて第1副圧力室11a内に供給され始めるため、増力ピストン13は、復帰ばね18を圧縮しながら前進を開始する。
【0033】
そして、
図6に鎖線で示すように、増力ピストン13が僅かに前進して、連結体収容室46の第1室壁46a(係止面)が鋼球48に当接すると、この第1室壁46aが傾斜に沿って鋼球48を係止溝30dに強く押し付けるため、増力ピストン13とピストンロッド30とが鋼球48を介して相互に連結され、増力ピストン13の推力がピストンロッド30に作用するようになる。このため、ピストンロッド30には、主ピストン12による推力と増力ピストン13による推力とを合算した大きな合成推力が作用するようになり、この合成推力によりピストンロッド30は、
図7に示す前進ストローク端まで前進させられることになる。
【0034】
また、第1室壁46aが鋼球48に当接するとき、鋼球48は、連結体収容室46内を第1室壁46aの方向に相対的に変位することになるため、この鋼球48によって押圧部材35の第1押圧部35bが連結体収容室46の外側に向けて押し出され、その結果、押圧部材35は、フランジ部35aが増力ピストン13の端面から離れた位置に変位する。
【0035】
次に、
図7の状態から主ピストン12及びピストンロッド30を後退させるときは、第1ポート20を排気側に接続すると共に、第2ポート21を給気側に接続する。そうすると、主ピストン12と増力ピストン13とが、第2主圧力室10bに供給される圧力流体と第2副圧力室11bに供給される圧力流体とによって共に後退する。
【0036】
そして、
図8に示すように、増力ピストン13が隔壁2に当接する後退ストローク端である復帰位置に到達すると、押圧部材35のフランジ部35aが隔壁2に当接して増力ピストン13側に押されるため、押圧部材35は、フランジ部35aが増力ピストン13の端面に当接する初期位置に変位し、その変位によって第1押圧部35bが連結体収容室46内に進入して鋼球48を押し動かすことにより、鋼球48は第2カラー部30bの係止溝30dから外れ、増力ピストン13とピストンロッド30との連結が解除される。
また、押圧部材35の変位によって第2押圧部35cによる押し棒42cの押圧も解除されるため、ポペット弁体42が弁ばね43の付勢力により環状弁座41に当接して連通路38を閉鎖し、チェック弁39が閉弁する。このため、連通路38による第1主圧力室10aと第1副圧力室11aとの連通が断たれる。
【0037】
そのあと、主ピストン12とピストンロッド30とがさらに後退すると、第1カラー部30aが隔壁2のロッドパッキン33から抜け出すことにより、隔壁2の中央孔2aを通じて第2主圧力室10bと第1副圧力室11aとが連通し、その状態で主ピストン12とピストンロッド30とは、
図1に示す後退ストローク端(初期位置)まで移動する。
【0038】
このとき、第1副圧力室11aに第2主圧力室10bから圧力流体が流入し、この圧力流体によって増力ピストン13は図の左方向即ち前進方向の作用力を受けるが、第2副圧力室11bに供給されている圧力流体によって増力ピストン13は図の右方向の作用力を受けていて、両方向の作用力が打ち消し合うため、増力ピストン13は、復帰ばね18の付勢力によって初期位置を維持する。
【0039】
図9及び
図10は、鋼球48の代わりに増力ピストン13とピストンロッド30との連結に使用可能な連結体を示すもので、この連結体は、一部に切目52aを設けることで直径を可変とした弾性リング52により形成されている。弾性リング52の断面形状は円形である。また、弾性リング52の内径は、ピストンロッド30のロッド本体部30cの外径より僅かに大きいが、第2のカラー部30bの外径以下であることが望ましい。
【0040】
以上に詳述したように本発明の増力機構付き流体圧シリンダは、主ピストン12及びピストンロッド30に連通路38を設けると共に、連通路38の端部にチェック弁39を設け、ピストンロッド30が前進ストローク端の手前の増力開始位置に達したとき、チェック弁39が開弁して第1主圧力室10aと第1副圧力室11aとが連通路38を通じて連通するように構成されているので、第1副圧力室11aに圧力流体を供給するための専用のポートが不要になり、その結果、従来の増力機構付き流体圧シリンダよりもポート数が少なくなり、配管数を減らして安全性の向上と配管作業の簡略化とを図ることができるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 シリンダボディ
2 隔壁
6 端壁
6a 中央孔
10 主シリンダ室
10a 第1主圧力室
10b 第2主圧力室
11 増力シリンダ室
11a 第1副圧力室
11b 第2副圧力室
12 主ピストン
13 増力ピストン
20 第1ポート
21 第2ポート
30 ピストンロッド
30a 第1カラー部
30b 第2カラー部
30c ロッド本体部
30d 係止溝
30f 第1カラー部の先端面
33 ロッドパッキン
35 押圧部材
38 連通路
39 チェック弁
40 弁室
41 環状弁座
42 ポペット弁体
46 連結体収容室
48 鋼球
52 弾性リング
L 軸線