特許第6665996号(P6665996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665996
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20200302BHJP
   H01C 13/00 20060101ALI20200302BHJP
   H01C 17/065 20060101ALI20200302BHJP
   H01C 17/24 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   H01C7/00 110
   H01C7/00 300
   H01C13/00 J
   H01C17/065 100
   H01C17/065 300
   H01C17/24
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-133420(P2017-133420)
(22)【出願日】2017年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-74137(P2018-74137A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2017年7月7日
【審判番号】不服2018-16907(P2018-16907/J1)
【審判請求日】2018年12月19日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0146575
(32)【優先日】2016年11月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユン、チャン ソク
(72)【発明者】
【氏名】パク、クァン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ベック、キョン ソン
【合議体】
【審判長】 五十嵐 努
【審判官】 井上 信一
【審判官】 山田 正文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−119692(JP,A)
【文献】 特開2005−353620(JP,A)
【文献】 特開2016−69724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
H01C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一面上に配置される第1及び第2電極と、
前記第1電極と第2電極とを電気的に連結するように配置され、銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金を含む抵抗体とを含み、
前記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金において、マンガン(Mn)の割合は11wt%以上、20wt%以下であり(ただし、マンガン(Mn)の割合が17wt%以下の場合を除く)、スズ(Sn)の割合は2wt%以上、8wt%以下であり、マンガン(Mn)とスズ(Sn)の総割合は19wt%超過、22.5wt%以下であり、
前記抵抗体の熱起電力(thermo electromotive force)の絶対値は、3μV/℃以下であり、前記抵抗体の抵抗温度係数(Temperature Coefficient of Resistivity、TCR)の絶対値は、100ppm/℃以下であり、
前記抵抗体は、ガラス(glass)をさらに含む
チップ抵抗器。
【請求項2】
前記抵抗体の抵抗値は、0Ω超え、100mΩ以下である請求項に記載のチップ抵抗器。
【請求項3】
前記抵抗体は、溝(groove)を有する請求項1または2に記載のチップ抵抗器。
【請求項4】
前記第1電極と第2電極とを電気的に連結するように配置され、銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金を含む第2抵抗体をさらに含み、
前記第2抵抗体に含まれる銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金におけるマンガン(Mn)の割合は、前記抵抗体に含まれる銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金におけるマンガン(Mn)の割合より高く、
前記第2抵抗体に含まれる銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金におけるスズ(Sn)の割合は、前記抵抗体に含まれる銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金におけるスズ(Sn)の割合より低い請求項1からのいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項5】
前記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金において、スズ(Sn)の割合は2wt%以上、6wt%以下であり、マンガン(Mn)とスズ(Sn)の総割合は0wt%以下である請求項1からのいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【請求項6】
基板と、
前記基板の一面上に配置される第1及び第2電極と、
前記第1電極と第2電極とを電気的に連結するように配置され、銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金を含む抵抗体とを含み、
前記抵抗体の熱起電力(thermo electromotive force)の絶対値は、3μV/℃以下であり、前記抵抗体の抵抗温度係数(Temperature Coefficient of Resistivity、TCR)の絶対値は、100ppm/℃以下であり、
前記抵抗体は、ガラス(glass)をさらに含み、
前記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金において、マンガン(Mn)の割合は、11wt%以上、20wt%以下であり(ただし、マンガン(Mn)の割合が17wt%以下の場合を除く)、マンガン(Mn)とスズ(Sn)の総割合は19wt%超過、22.5wt%以下であり、銅(Cu)の割合は、77.5wt%以上である
チップ抵抗器。
【請求項7】
前記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金においてスズ(Sn)の割合は、2wt%以上、8wt%以下である請求項に記載のチップ抵抗器。
【請求項8】
前記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金において、スズ(Sn)の割合は2wt%以上、6wt%以下であり、マンガン(Mn)とスズ(Sn)の総割合は0wt%以下である請求項6または7に記載のチップ抵抗器。
【請求項9】
基板と、
前記基板の一面上に配置される第1及び第2電極と、
前記第1電極と第2電極とを電気的に連結するように配置され、溝(groove)を有する、銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金を含む抵抗体とを含み、
前記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金において、マンガン(Mn)の割合は11wt%以上、20wt%以下であり(ただし、マンガン(Mn)の割合が17wt%以下の場合を除く)、マンガン(Mn)とスズ(Sn)の総割合は19wt%超過、20wt%以下であり、
前記抵抗体の熱起電力(thermo electromotive force)の絶対値は、3μV/℃以下であり、前記抵抗体の抵抗温度係数(Temperature Coefficient of Resistivity、TCR)の絶対値は、100ppm/℃以下であり、
前記抵抗体は、ガラス(glass)をさらに含む
チップ抵抗器。
【請求項10】
前記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金においてスズ(Sn)の割合は、2wt%以上、6wt%以下である請求項に記載のチップ抵抗器。
【請求項11】
前記抵抗体は、 前記抵抗体を覆う保護層を有する請求項9または10に記載のチップ抵抗器。
【請求項12】
前記抵抗体の抵抗値は、0Ω超え、100mΩ以下である請求項から11のいずれか一項に記載のチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子機器の小型化及び軽量化への要求がますます増大するにつれて、回路基板の配線密度を高めるために、チップ状の抵抗器が多く使用される。
【0003】
電子機器で要求電力が高くなり、回路内の過電流検出用のチップ抵抗器とバッテリー残量検知用のチップ抵抗器の需要が増加するにつれて、低い抵抗値を有しつつも高い精度を有するチップ抵抗器が求められている。しかし、通常、チップ抵抗器は、抵抗値が低くなるほど精度も低くなるという特性を有する。チップ抵抗器の抵抗値精度が低いことは、製品量産時に不良発生率を高めることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−119692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、小さい抵抗値で設計されても、製品量産時の不良発生率が減少可能なように、小さい熱起電力絶対値と小さい抵抗温度係数絶対値を有するチップ抵抗器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、基板と、上記基板の一面上に配置される第1及び第2電極と、上記第1電極と第2電極とを電気的に連結するように配置され、銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金を含む抵抗体とを含み、上記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金において、マンガン(Mn)の割合は11wt%以上、20wt%以下であり、スズ(Sn)の割合は2wt%以上、8wt%以下であり、マンガン−スズ(Mn−Sn)の割合は13.5wt%以上、22.5wt%以下であることができる。
【0007】
本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、基板と、上記基板の一面上に配置される第1及び第2電極と、上記第1電極と第2電極とを電気的に連結するように配置され、銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金を含む抵抗体とを含み、上記抵抗体の熱起電力(thermo electromotive force)の絶対値は、3μV/℃以下であり、上記抵抗体の抵抗温度係数(Temperature Coefficient of Resistivity、TCR)の絶対値は、100ppm/℃以下であることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、小さい抵抗値で設計されても、製品量産時の不良発生率が減少可能なように、小さい熱起電力絶対値と小さい抵抗温度係数絶対値を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態によるチップ抵抗器を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態によるチップ抵抗器を示す背面図である。
図3】本発明の一実施形態によるチップ抵抗器の抵抗体に形成された溝を例示する図面である。
図4】本発明の一実施形態によるチップ抵抗器の3電極形態を例示する図面である。
図5】本発明の一実施形態によるチップ抵抗器の抵抗体の並列連結を例示する図面である。
図6】本発明の一実施形態によるチップ抵抗器を示す側面図である。
図7】本発明の一実施形態によるチップ抵抗器の抵抗体の両面配置を示す側面図である。
図8】抵抗体の溝の形成位置による抵抗値変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する本発明に対する詳細な説明は、本発明が実施される特定の実施形態を例示として示す添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を十分に実施するように詳しく説明される。本発明の多様な実施形態は、互いに異なっても相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、ここで記載されている特定形状、構造及び特性は、一実施形態と関連して、本発明の精神及び範囲から逸脱せず他の実施形態として実現されることができる。また、それぞれ開示された実施形態内の個別構成要素の位置または配置は、本発明の精神及び範囲から逸脱せず変更可能なことが理解されるべきである。従って、後述する詳細な説明は、限定的な意味として取るものではなく、本発明の範囲は、その請求項が主張するものと均等な全ての範囲と共に、添付の請求項によってのみ限定される。図面で類似した参照符号は、様々な側面で同一または類似した機能を指す。
【0011】
以下では、本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者が本発明を容易に実施可能にするために、本発明の実施形態について添付の図面を参照して詳しく説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器を示す斜視図である。
【0013】
図2は、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器を示す背面図である。
【0014】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、基板110、第1電極121、第2電極122、及び抵抗体130を含むことができ、保護層140をさらに含むことができる。
【0015】
基板110は、電極と抵抗体を実装するための空間を提供することができる。例えば、上記基板110は、セラミック材料からなる絶縁性基板であることができる。上記セラミック材料は、アルミナ(Al)であることができるが、絶縁性、放熱性、抵抗体との密着性に優れた材料であれば、特に制限されない。
【0016】
第1電極121は、基板110の一面上に配置されることができる。
【0017】
第2電極122は、基板110の一面上で、第1電極121に対して離隔して配置されることができる。
【0018】
例えば、上記第1及び第2電極121、122は、銅、銅合金を利用して低い抵抗値で実現することができる。例えば、上記第1及び第2電極121、122は、基板110上にインク状のペースト(paste)などを塗ったり、噴射したり、印刷するスクリーン法によって形成されることができる。
【0019】
抵抗体130は、第1電極121と第2電極122との間を電気的に連結することができ、銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金を含むことができる。
【0020】
上記抵抗体130の抵抗値は、上記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金の銅(Cu)の割合が高いほど低くなることができる。
【0021】
上記抵抗体130の抵抗値は、上記抵抗体130に対するトリミング(trimming)作業によって微細調整されることができる。ここで、トリミング作業とは、抵抗体に対して溝(groove)を形成しながら、抵抗体の抵抗値を同時に測定して、上記抵抗値が目標抵抗値に近づいたところで溝の形成を中断することで、抵抗体の抵抗値を調整する作業を意味する。これにより、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、100mΩ以下の小さい抵抗値を有しつつも高い精度を有することができる。
【0022】
しかし、上記トリミング作業は、通常、溝を形成しながら熱を発散することができる。上記トリミング作業によって発生する熱は、上記抵抗体130に対する抵抗値を測定する過程で歪みを誘発し得て、熱の分布による起電力を発生させることもある。上記起電力は、上記抵抗体130に対する抵抗値を測定する過程でさらに大きい歪みを誘発し得る。このような歪みは、チップ抵抗器の量産過程で不良を誘発することがある。
【0023】
従って、上記抵抗体130は、小さい抵抗値を有しつつも高い精度を有するために、良い温度特性と良い温度分布特性を有する必要がある。
【0024】
上記抵抗体130の抵抗値は、上記抵抗体130の温度によって変わることができる。上記抵抗体130の温度特性は、温度変化による抵抗値の変化率である抵抗温度係数(Temperature Coefficient of Resistivity、TCR)で表現されることができる。上記抵抗体130の抵抗温度係数は、上記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金におけるマンガン(Mn)及び/又はスズ(Sn)の割合が高いほど低くなることができる。上記抵抗体130は、上記抵抗温度係数の絶対値が小さいほど温度変化に強い特性を有することができる。
【0025】
上記抵抗体130の抵抗値は、上記抵抗体130の温度分布によって変わることができる。もし上記抵抗体130の一端に隣接した第1電極121の温度と、上記抵抗体130の他端に隣接した第2電極122の温度とが互いに異なる場合、上記抵抗体130には起電力が発生し得る。上記抵抗体130の温度分布特性として、温度差による起電力変化率である熱起電力(thermo electromotive force)で表現することができる。上記抵抗体130の熱起電力は、上記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金におけるマンガン(Mn)の割合が高いほど高くなることができ、スズ(Sn)の割合が高いほど低くなることができる。上記抵抗体130は、上記熱起電力の絶対値が小さいほど上記トリミング作業による熱に強い特性を有することができる。
【0026】
チップ抵抗器を量産する際の上記トリミング作業による不良発生率について、上記抵抗体130の熱起電力の絶対値が3μV/℃以下の場合と、上記抵抗体130の抵抗温度係数の絶対値が100ppm/℃以下の場合、相当減少することができる。従って、上記抵抗体130に含まれる銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金は、抵抗体130の熱起電力(thermo electromotive force)の絶対値が3μV/℃以下であり、抵抗温度係数(Temperature Coefficient of Resistivity、TCR)の絶対値が約100ppm/℃以下となる割合を有することができる。
【0027】
上記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金の割合による単位面積当たり抵抗値(Rs)、抵抗温度係数(TCR)及び熱起電力(EMF)は、下記の表1でまとめられる。
【0028】
【表1】
【0029】
ここで、単位面積当たり抵抗値(Rs)の単位は、mΩであり、抵抗温度係数(TCR)の単位は、ppm/℃であり、熱起電力(EMF)の単位は、μV/℃である。
【0030】
表1を参照すると、抵抗温度係数(TCR)及び熱起電力(EMF)のそれぞれは、スズ(Sn)の割合が2.5wt%であり、マンガン(Mn)の割合が11wt%以上、20wt%以下である時、約100ppm/℃以下、及び3μV/℃以下であることができる。また、抵抗温度係数(TCR)は、マンガン(Mn)の割合が高いほど低くなることができ、熱起電力(EMF)は、マンガン(Mn)の割合が高いほど高くなることができる。
【0031】
表1を参照すると、抵抗温度係数(TCR)及び熱起電力(EMF)のそれぞれは、スズ(Sn)の割合が2wt%以上、8wt%以下であり、マンガン(Mn)の割合が14wt%である時、約100ppm/℃以下、及び3μV/℃以下であることができる。また、抵抗温度係数(TCR)は、スズ(Sn)の割合が高いほど低くなることができ、熱起電力(EMF)は、スズ(Sn)の割合が高いほど低くなることができる。
【0032】
抵抗体130が小さい抵抗温度係数(TCR)の絶対値を有するために、マンガン−スズ(Mn−Sn)の割合は、所定の範囲内に属する必要がある。また、抵抗体130が小さい熱起電力(EMF)の絶対値を有し、小さい抵抗値も有するために、マンガン(Mn)の割合とスズ(Sn)の割合は、それぞれ所定の範囲内に属する必要がある。ここで、小さい抵抗値は、約100mΩ以下であることができる。
【0033】
表1を参照すると、上記抵抗体130に含まれた銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金において、マンガン−スズ(Mn−Sn)の割合は、13.5wt%以上、22.5wt%以下で設計されることができ、マンガン(Mn)の割合は、11wt%以上、20wt%以下で設計されることができ、スズ(Sn)の割合は、2wt%以上、8wt%以下で設計されることができる。
【0034】
これにより、上記抵抗体130は、小さい抵抗温度係数(TCR)の絶対値と小さい熱起電力(EMF)の絶対値を有することができ、小さい抵抗値で設計されても、製品量産時の不良発生率を減少させることができる。
【0035】
一方、上記抵抗体130は、工程過程でペースト(paste)によって基板110に接着されることができる。上記ペースト(paste)は、基板110の接着力を向上させるために、エチルセルロース(EC)またはアクリル(Acryl)などの樹脂(resin)と溶剤(solvent)を含むことができる。上記抵抗体130の工程以前の上記銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金、樹脂及び溶剤において、樹脂の重量割合は1wt%以上、5wt%以下であり、溶剤の重量割合は5wt%以上、20wt%以下であることができる。上記樹脂及び溶剤は、上記抵抗体130の工程過程で除去されることができる。
【0036】
また、上記抵抗体130は、ガラス(glass)をさらに含んで熱起電力(EMF)と抵抗温度係数(TCR)に大きな影響を与えることなく、向上した接着力を有することができる。
【0037】
また、上記抵抗体130は、還元雰囲気で焼成されたペースト(paste)状を有することができる。即ち、上記抵抗体130は、焼成時にイオニック(ionic)拡散接合により合金化されて、基板110に結合することができる。この時、抵抗体130と第1又は第2電極121、122間の再結晶(recrystallization)が進行し、粒子成長(grain growth)が引き起こることができる。この時、抵抗体130と第1又は第2電極(121、122)間の電気伝導度は、向上することができる。これにより、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、100mΩ以下の低い抵抗値を有するように実現することができる。
【0038】
一方、保護層140は、抵抗体130の一面の少なくとも一部をカバーすることができる。上記保護層140は、上記トリミング作業によって誘発し得る抵抗体130の変形を防止することができる。例えば、上記保護層140は、エポキシ(epoxy)、フェノール樹脂などのポリマー(polymer)とガラス(glass)の少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器の抵抗体に形成された溝を例示する図面である。
【0040】
図3を参照すると、抵抗体130は、上記トリミング作業によって形成された溝(groove)を有することができる。例えば、上記溝(groove)は、抵抗体130の縁部から中心に向かって形成されることができる。以後、抵抗体130の抵抗値が目標抵抗値に近づいた時、上記溝(groove)は、中心から第1電極121又は第2電極122に向かって形成されることができる。従って、上記溝(groove)は、L状を有することができる。一方、上記溝(groove)は、抵抗体130の形態によって11状またはi状を有してもよい。
【0041】
図4は、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器の3電極形態を例示する図面である。
【0042】
図4を参照すると、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、第1電極321、第2電極322、第3電極323、第1抵抗体331、第2抵抗体332、第1保護層341a、341b、及び第2保護層342a、342b、342cを含むことができる。ここで、基板、第1電極321、第2電極322、第1及び第2抵抗体331、332、第1保護層341a、341b、及び第2保護層342a、342b、342cは、前述した基板、第1電極、第2電極、抵抗体、保護層と実質的に同一であることができる。
【0043】
第3電極323は、外部から第1電極321に電気的に連結され、第1電極321に対する予備電極の役割を行うことができる。ここで、第1抵抗体331と第2抵抗体332は、互いに並列に連結されることができる。もし第1電極321が製造過程で発生した不良や使用過程で発生した衝撃によって外部から断絶される場合、上記第3電極323は、第1電極321の役割を代わりに行うことができる。
【0044】
一方、第1保護層341a、341bは、上記第1抵抗体331と第2抵抗体332で上記溝(groove)をカバーすることができ、第2保護層342a、342b、342cは、上記第1抵抗体331と第2抵抗体332で第1保護層341a、341bがカバーしない領域をカバーすることができる。上記第1保護層341a、341bと第2保護層342a、342b、342cは、熱の発散特性が互いに異なるように、異なる材料で実現することができる。
【0045】
図5は、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器の抵抗体の並列連結を例示する図面である。
【0046】
図5を参照すると、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、基板410、第1電極421、第2電極422、第1抵抗体431、及び第2抵抗体432を含むことができる。ここで、基板410、第1電極421、第2電極422、第1抵抗体431及び第2抵抗体432は、前述した基板、第1電極、第2電極、抵抗体と実質的に同一であることができる。
【0047】
第1抵抗体431と第2抵抗体432は、互いに並列に結することができる。例えば、上記第1抵抗体431と第2抵抗体432は、互いに異なる割合を有する銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金を含むことができる。
【0048】
例えば、上記第2抵抗体に含まれた銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金におけるマンガン(Mn)の割合は、上記抵抗体に含まれた銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金におけるマンガン(Mn)の割合より高く、上記第1抵抗体に含まれた銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金におけるスズ(Sn)の割合は、上記抵抗体に含まれた銅−マンガン−スズ(Cu−Mn−Sn)合金におけるスズ(Sn)の割合より低くてよい。
【0049】
これにより、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器の熱起電力、抵抗温度係数及び抵抗値は、さらに微細に調節されることができる。
【0050】
図6は、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器を示す側面図である。
【0051】
図6を参照すると、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、基板510、第1電極521、第2電極522、抵抗体530、第1上面電極541、第2上面電極542、保護層550、第1下面電極561、第2下面電極562、第1金属カバー571及び第2金属カバー572を含むことができる。
【0052】
第1及び第2上面電極541、542は、第1電極521、第2電極522、抵抗体530の少なくともいずれか一つの上面に配置されることができる。もし上記第1及び第2上面電極541、542がそれぞれ第1及び第2電極521、522上に配置される場合、上記第1及び第2上面電極541、542は、第1及び第2電極521、522の外部から電流を受けるか、外部に電流を与えるための配線の役割を行うことができる。もし第1及び第2上面電極541、542が抵抗体530上に配置される場合、上記第1及び第2上面電極541、542は、金属の特性である高い熱伝導度を利用して、抵抗体530で発生した熱を効率的に発散させることができる。
【0053】
保護層550は、第1電極521、第2電極522、抵抗体530、第1上面電極541、及び第2上面電極542の少なくともいずれか一つの上面をカバーすることができる。例えば、上記保護層550は、エポキシ(epoxy)、フェノール樹脂、ガラス(glass)の材質などで実現することができ、チップ抵抗器を外部の物理的衝撃から保護することができる。
【0054】
第1及び第2下面電極561、562は、それぞれ第1及び第2電極521、522の配置を補助することができる。例えば、基板510の両側面にU状の第1及び第2金属カバー571、572が挟み込まれることができる。上記第1及び第2金属カバー571、572は、第1及び第2電極521、522を押して固定することができる。この時、上記第1及び第2下面電極561、562は、基板510の他面に予め形成されて、上記第1及び第2金属カバー571、572によって押されることができる。これにより、第1及び第2電極521、522は、安定して固定することができる。また、上記第1及び第2下面電極561、562と第1及び第2電極521、522の総面積が広くなることにより、第1及び第2電極521、522の抵抗値は、さらに低くなることができる。これにより、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器の総抵抗値は、さらに低くなることができる。
【0055】
図7は、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器の抵抗体の両面配置を示す側面図である。
【0056】
図7を参照すると、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、基板510、第1電極521、第2電極522、第1抵抗体531、第2抵抗体532、第1上面電極541、第2上面電極542、第1保護層551、第2保護層552、第1下面電極561及び第2下面電極562、第1金属カバー571及び第2金属カバー572を含むことができる。
【0057】
第1抵抗体531は、基板510の一面上に配置され、第1及び第2電極521、522に直接的に連結することができる。上記第1抵抗体531の一面には、第1保護層551が形成されることができる。
【0058】
第2抵抗体532は、基板510の他面上に配置され、第1及び第2下面電極561、562に直接的に連結することができる。上記第2抵抗体532の一面には、第2保護層552が形成されることができる。
【0059】
第1電極521と第1下面電極561は第1金属カバー571を通じて電気的に連結され、第2電極522と第2下面電極562は第2金属カバー572を通じて電気的に連結されることができる。これにより、基板510の一面上に配置される第1抵抗体531と、基板510の他面上に配置される第2抵抗体532とは、互いに並列関係であることができる。
【0060】
第1抵抗体531と第2抵抗体532が基板510の互いに異なる面に配置されることにより、基板510の幅が短くなることができる。また、互いに異なる成分を含む第1及び第2抵抗体531、532が形成される時、相互に与える影響は減少することができる。
【0061】
図8は、抵抗体の溝の形成位置による抵抗値の変化を示すグラフである。
【0062】
図8を参照すると、縦軸は、抵抗体の溝を形成した後の抵抗値(Rtr)の目標抵抗値(Rtarget)に対する相対的なサイズの百分率(Rtr/Rtarget*100)を表し、LEFT_1は、本発明の比較例である銅−ニッケル(Cu−Ni)を含む抵抗体で溝が左側に位置した場合を表し、CENTER_1は、本発明の比較例である銅−ニッケル(Cu−Ni)を含む抵抗体で溝が真ん中に位置した場合を表し、RIGHT_1は、本発明の比較例である銅−ニッケル(Cu−Ni)を含む抵抗体で溝が右側に位置した場合を表し、LEFT_2は、本発明の一実施形態である抵抗体で溝が左側に位置した場合を表し、CENTER_2は、本発明の一実施形態である抵抗体で溝が真ん中に位置した場合を表し、RIGHT_2は、本発明の一実施形態である抵抗体で溝が右側に位置した場合を表わす。
【0063】
本発明の比較例である銅−ニッケル(Cu−Ni)を含む抵抗体の抵抗値は、溝の形成位置の変動によって相対的に大きく変わることができる。反面、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、小さい熱起電力絶対値と小さい抵抗温度係数絶対値とを有するため、溝の形成位置の変動に強い抵抗値を有することができる。これにより、本発明の一実施形態によるチップ抵抗器は、小さい抵抗値で設計されても、製品量産時の不良発生率を減少させることができる。
【0064】
以上、本発明が具体的な構成要素などのような特定事項と限定された実施形態及び図面により説明されたが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されただけで、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者であれば、このような記載から多様な修正及び変形を図ることができる。
【符号の説明】
【0065】
110、410、510 基板
121、321、421、521 第1電極
122、322、422、522 第2電極
323 第3電極
130、530 抵抗体
331、431、531 第1抵抗体
332、432、532 第2抵抗体
140 保護層
341a、341b、551 第1保護層
342a、342b、342c、552 第2保護層
541 第1上面電極
542 第2上面電極
561 第1下面電極
562 第2下面電極
571 第1金属カバー
572 第2金属カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8