(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
他の訓練台は、保守作業に伴う状況を監視する業務の訓練を行う訓練者が位置する監視訓練台か、又は、保守作業に使用される保守用車の操作を訓練するための模擬保守用車が配置された保守用車訓練台である、請求項1〜4の何れか一項に記載のシミュレータ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本明細書で開示するシミュレータの好ましい一実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0015】
図1は、本明細書に開示するシミュレータの一実施形態の斜視図である。
図2は、本実施形態のシミュレータのブロック図である。
図3は、訓練台本体を示す図である。
図4は、軌条訓練台を示す図である。
図5は、保守用車訓練台を示す図である。
図6は、監視訓練台を示す図である。
【0016】
本実施形態のシミュレータ10は、鉄道が走行する軌道の保守作業の訓練を行うために使用される。シミュレータ10を用いて、例えば、軌道の点検、交換等の保守作業を行う保守作業員の訓練、保守作業に伴う状況を監視する監視員の訓練、又は指令員の業務の訓練を行うことができる。各訓練は単独で行うこともできるし、又は複数の訓練を組み合わせて行うこともできる。
【0017】
シミュレータ10は、模擬画像を表示する表示部30(
図1及び
図2参照)が配置される訓練台本体(
図3参照)と、軌条訓練台40(
図4参照)と、保守用車訓練台50(
図5参照)と、監視訓練台60(
図6参照)を有する。
【0018】
図1及び
図4に示すように、軌条訓練台40は、保守作業の訓練を行うための模擬軌条(模擬レール)41を有する。軌条訓練台40は、保守作業の訓練を行うための他の訓練台と組み合わせて使用することの可能である。
【0019】
シミュレータ10は、軌条訓練台40と組み合わせて使用される訓練台として、保守作業に使用される保守用車両の操作を訓練するための模擬保守用車51が配置された保守用車訓練台50と、保守作業に伴う状況を監視する業務の訓練を行う訓練者が位置する監視訓練台60を備える。
【0020】
図1及び
図5に示すように、保守用車訓練台50に配置される模擬保守用車51は、模擬操作部51aを有しており、訓練者は模擬操作部51aを操作して、保守用車の操作を訓練することができる。表示部30は、模擬保守用車51の前後に延びる軌道を表示して、模擬保守用車51が軌道上を走行しているように模擬視界が表示される。
図1に示す保守用車訓練台50上には、模擬保守用車51の操作の訓練を行う訓練者P1が示されている。
【0021】
図1及び
図6に示すように、監視訓練台60は、保守作業に伴う状況を監視する現場の足場の状況を模擬するための模擬軌条(模擬レール)61を有する。訓練者は、凹凸のある不安定な足場における監視業務の訓練を行うことができる。監視訓練台60上には、監視業務の訓練を行う訓練者P2が示されている。
【0022】
シミュレータ10では、
図3に示す訓練台本体16に対して、軌条訓練台40、保守用車訓練台50及び/又は監視訓練台60を組み合わせて、各種の訓練を単独又は組み合わせて行うことができる。
【0023】
訓練台本体16は、床面を形成する前方基底部17及び後方基底部18と、前方基底部17と後方基底部18との間に配置され、軌条訓練台40、保守用車訓練台50及び監視訓練台60を組み込むための訓練台組み込み部16aを有する。前方基底部17と、後方基底部18は、模擬軌道を含む保守作業現場の地表部分を模擬するようになされている。
【0024】
軌条訓練台40、保守用車訓練台50及び監視訓練台60は、訓練台組み込み部16a内にスライドして組み込み可能であり、単独又は複数の訓練台を組み合わせて、保守作業の訓練のために使用される。
【0025】
訓練台本体16には、前方基底部17、後方基底部18及び訓練台組み込み部16aに組み込まれた各訓練台40、50、60を囲むように、表示部30が模擬視界を表示することにより、各訓練台40、50、60の周囲には、実際の保守作業現場が模擬して表示される。
【0026】
図2に示すように、シミュレータ10は、シミュレータ10の動作を制御する指導員卓装置20と、模擬画像を表示する表示部30と、模擬音響を出力する音響出力部11と、画像取得部12と、音響取得部13と、携帯端末14と、作業員卓装置15を備える。
【0027】
指導員卓装置20は、制御部21と、記憶部22と、操作部23と、制御用表示部24と、通信部25を有する。指導員卓装置20は、シミュレータ10の制御を行うために使用される。また、指導員卓装置20は、列車の運行及び線路の閉鎖又は開通を管理する指令所の業務を行う指令員の訓練を行うためにも使用され得る。
【0028】
制御部21は、一つまたは複数のプロセッサと、周辺回路とを有する。制御部21は、記憶部22に予め記憶されている所定のプログラム22aに従い、指導員卓装置20の各ハードウェア構成要素の制御及び各種処理を行い、処理中に生じるデータを一時的に保存するために記憶部22を利用する。
【0029】
記憶部22は、所定のプログラム22aと、シナリオデータ22bと、画像データ22cと、音響データ22dを記憶する。
【0030】
シナリオデータ22bは、訓練に使用される保守作業シナリオを記録する。保守作業シナリオとしては、例えば、列車が走行する合間に保守作業を行う間合い作業、及び、所定の区間の線路を閉鎖して、列車の運行を停止して保守作業を行う線路閉鎖工事、及び、き電線の保守作業等が挙げられる。保守作業シナリオには、制御部21によって再生される模擬視界画像のデータが含まれる。
【0031】
画像データ22cは、画像取得部12が取得した保守作業の訓練者の訓練作業の画像情報を有する。また、音響データ22dは、音響取得部13が取得した保守作業の訓練者の訓練作業時に生じる音響情報を有する。
【0032】
記憶部22は、ランダムアクセスメモリ(RAM)若しくはリードオンリーメモリ(ROM)等の半導体メモリ、又は磁気ディスク若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを有していてもよい。また、記憶部22は、所定のプログラム22aを記憶する記憶媒体を読み出し可能なドライブを有していてもよい。
【0033】
操作部23は、シミュレータ10の管理者又は指令所の業務の訓練者等により操作されて、操作情報を入力可能である。操作部23としては、例えば、キーボード又はマウス等を用いることができる。
【0034】
制御用表示部24は、制御部21に制御されて、指導員卓装置20の操作に関する各種の情報を表示可能である。制御用表示部24としては、例えば、液晶ディスプレイを用いることができる。
【0035】
通信部25は、表示部30、音響出力部11、画像取得部12、音響取得部13、携帯端末14、作業員卓装置15、又は模擬保守用車51との間の通信を行う。また、通信部25は、インターネット等のネットワークと接続可能であってもよい。
【0036】
指導員卓装置20は、例えば、サーバ又はパーソナルコンピュータ等のコンピュータ、若しくはステートマシン等を用いて形成され得る。
【0037】
上述した制御部21は、画像生成部21aと、再生部21bと、判定部21cを有する。制御部21が有するこれらの各部は、例えば、制御部21が有するプロセッサ上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。
【0038】
画像生成部21aは、記憶部22に記憶されたシナリオデータ22bに基づいて、表示部30に表示する模擬視界の画像を生成する。模擬視界の画像が連続して表示部30に表示されることにより、映像が形成される。模擬視界の画像は、線路、走行して保守作業の現場に近づいて来る列車、周辺の景観、周辺で保守作業を行っている保守作業者等を含み得る。模擬視界の天候は、晴れ、雨、雪又は霧を選択することができる。また、模擬視界の時間帯は、昼又は夜を選択することができる。
【0039】
再生部21bは、記憶部22が記憶した画像データ22c及び音響データ22dを再生して、制御用表示部24又は表示部30に表示する。
【0040】
判定部21cは、記憶部22が記憶した画像データ及び音響データに基づいて、保守作業の訓練者又は監視業務の訓練者の動作を、所定の基準と比較して、訓練者の動作の良否を判定する。
【0041】
表示部30は、画像生成部21aが生成した模擬視界を表示する。表示部30は、前方表示部31と、後方表示部32と、側方表示部33と、下方表示部34を有する。
【0042】
前方表示部31、後方表示部32及び側方表示部33は、各訓練台40、50、60、前方基底部17及び後方基底部18を囲むように配置される。
【0043】
前方表示部31と後方表示部32とは、各訓練台40、50、60、前方基底部17及び後方基底部18を挟んで、対向して配置される。前方表示部31は、各訓練台40、50、60に位置する訓練者から見た前方の模擬視界を表示し、後方表示部32は後方の模擬視界を表示する。ここで、前方と後方という表現は、互いに対向する方向を示すために使用されており、どちらが前方であり、またどちら後方であってもよい。
【0044】
側方表示部33は、前方表示部31と後方表示部32との間に配置されており、各訓練台40、50、60に位置する訓練者から見て、前後方向と交差する方向の模擬視界を表示する。
【0045】
下方表示部34は、軌条訓練台40上に配置されて、枕木、バラスト等の軌条が配置される道床を表示する。下方表示部34は、模擬軌条41の下に配置される。
【0046】
シミュレータ10は、複数の下方表示部34を有していてもよい。本実施形態では、他の下方表示部34は、保守用車訓練台50と、監視訓練台60と、前方基底部17と、後方基底部18にも配置される。保守用車訓練台50では、下方表示部34は、模擬保守用車51の下に配置される。監視訓練台60では、下方表示部34は、模擬軌条61の下に配置される。前方基底部17及び後方基底部18では、下方表示部34は、上面に露出するように配置される。
【0047】
下方表示部34は、軌道の構成要素の一部又は全てを表示してもよい。また、下方表示部34は、保守作業で使用される工具を表示してもよい。例えば、下方表示部34に工具を表示させることにより、保守作業において使用した工具を軌道上に置き忘れないようにする訓練を行うことができる。軌道上に置き忘れられた工具は、走行する列車と接触して事故を起こすそれがあるが、夜間の作業では工具の置き忘れが起きうるのも事実である。そこで、シミュレータ10では、地面に置いた工具を確認する訓練を行えるようになされている。
【0048】
音響出力部11は、保守作業シナリオに基づいて、表示部30が表示する模擬視界と連動した音響を出力する。音響出力部11は、例えば、保守作業の現場の近くを走行する列車の走行音、保守作業に伴って発生する作業音、保守作業者の会話等の模擬音響を出力し得る。音響出力部11は、動作連動式の指向性を有していてもよい。例えば、音響出力部11は、監視業務の訓練者に対して、保守作業員が作業時に生じる音、歩く音、話し声等の模擬音響を、音響の発生源の移動に伴って移動して聞こえるように出力することができる。
【0049】
画像取得部12は、保守作業の訓練者の訓練の画像を取得する。本実施形態では、画像取得部12は、訓練者の訓練を行っている映像を取得する。画像取得部12が取得した画像データ22cは、記憶部22に記憶される。
【0050】
音響取得部13は、保守作業の訓練者の訓練時に生じる音響を取得する。訓練者の訓練作業時に生じる音響には、例えば、保守作業に伴う状況を監視する監視員の訓練者が発する音声、軌道の保守作業を行う訓練者が発する音声又は作業音等が含まれる。音響取得部13が取得した音響データ22dは、記憶部22に記憶される。
【0051】
携帯端末14は、保守作業に伴う状況を監視する監視員の訓練者が、指導員卓装置20において指令所の業務を行う指令員の訓練者と、連絡を行う訓練のために使用される。
【0052】
作業員卓装置15は、保守作業の訓練を行う訓練者の指導を行う指導者が操作する端末である。作業員卓装置15は、指導員卓装置20と通信可能に接続されており、画像等を表示するディスプレイ及び操作部(図示せず)を有している。作業員卓装置15に位置する指導者は、例えば、監視員の訓練者が携帯端末14を操作して、指令員の訓練者と行う連絡内容について指導する。
【0053】
模擬保守用車51は、模擬操作部51aを有しており、保守作業の訓練者は、模擬操作部51aを操作して、保守用車の操作を訓練する。保守作業の訓練者は、模擬保守用車51を用いて、例えば、作業員、軌条又はバラスト等の保守用材の運搬、又は軌条の点検作業の訓練を行う。
【0054】
次に、上述したシミュレータ10を用いた保守作業の訓練として、間合い作業の訓練と、線路閉鎖工事の訓練と、き電停止作業の訓練について、以下に説明する。
【0055】
間合い作業は、線路を閉鎖せずに、列車の運行の合間に行う保守作業である。間合い作業の訓練では、軌道の保守作業の訓練者、監視員の訓練者、指令員の訓練者が訓練を行う。各訓練者は、単独又は複数で連携して訓練を行ってもよい。
【0056】
軌道の保守作業の訓練者は、軌条の点検、バラストの点検、枕木の点検、又はバラストの補給等の訓練を行うことができる。また、保守作業の訓練者は、緊急時に信号を赤信号に切り替えて列車を停止させるために軌条を短絡する作業の訓練を行うことができる。
【0057】
表示部30は、制御部21により制御されて、記憶部22に記憶されるシナリオデータ22bに基づいて、模擬視界として、軌道を走行して接近する列車、周辺の景観及び周囲で作業を行う作業員等を表示する。
【0058】
下方表示部34は、軌道又は道床を表示する。画像生成部21aは、静止した模擬視界の画像を生成して、下方表示部34に表示してもよい。この場合、保守作業の訓練者は、自分が軌道上を歩きながら作業している状態を模擬することができる。また、画像生成部21aは、保守作業の訓練者が移動している時に見える模擬視界の画像を生成して、下方表示部34に表示してもよい。この場合、保守作業の訓練者は、足踏みをして移動することなく、自分が移動しているとき見える模擬視界をみながら、広い範囲わたって移動する作業を訓練することができる。
【0059】
保守作業の訓練者は、下方表示部34に表示される軌道又は道床を見ながら、軌道の点検、作業終了後の工具等の忘れ物の点検等の訓練を行うことができる。
【0060】
音響出力部11は、制御部21により制御されて、記憶部22に記憶されるシナリオデータ22bに基づいて、列車の走行音を含む作業現場の環境音を模擬して出力する。
【0061】
間合い作業では、監視員は、列車見張り員とも呼ばれる。
【0062】
監視員の訓練者は、他の訓練者と共に、訓練を行ってもよいし、又は、
図7に示すように、単独で訓練を行ってもよい。
【0063】
監視員の訓練者は、模擬視界の列車の接近に伴って、警笛又は警告喚呼により、軌道で作業している保守作業の訓練者又は模擬視界の作業員を安全な場所に待避させる訓練を行うことができる。
【0064】
また、監視員の訓練者は、旗振り又は模擬信号炎管等を操作して、模擬視界の接近してくる列車を停止させる訓練を行うことができる。
【0065】
更に、監視員の訓練者は、携帯端末14を用いて、列車の運行状況(ダイヤ)を確認する訓練を行うことができる。また、監視員の訓練者は、携帯端末14を用いて、指令所と連絡しながら、保守作業の状況及び列車の運行等に関する連絡の訓練を行うことができる。
【0066】
監視員の訓練者は、模擬視界の画像を遠隔操作する遠隔操作装置(図示せず)を用いて、監視員の訓練者が移動している時に見える模擬視界の画像を生成させて、表示部30に表示してもよい。この場合、監視員の訓練者は、自分が移動しているとき見える模擬視界をみながら、広い範囲わたって移動しながら監視することを訓練することができる。
【0067】
指令員の訓練者は、指導員卓装置20に位置して、監視員の訓練者と連絡を取りながら、線路の管理業務の訓練を行う。
【0068】
また、間合いの作業の訓練のシナリオデータは、中継見張り員又は無線式列車接近警報装置が、列車の接近を警報して、保守作業の訓練者又は監視員の訓練者に対して、警告することを含んでもよい。
【0069】
以上が、間合い作業の訓練の説明である。
【0070】
次に、線路閉鎖工事の訓練について、以下に説明する。
【0071】
線路閉鎖工事は、所定の線路区間の列車の運行を停止し線路を閉鎖して、保守作業を行う工事である。線路閉鎖工事の訓練では、軌道の保守作業の訓練者、監視員の訓練者、指令員の訓練者が訓練を行う。各訓練者は、単独又は複数で連携して訓練を行ってもよい。
【0072】
軌道の保守作業の訓練者は、軌条の交換、枕木の交換、バラストの補給等の保守作業の訓練を行うことができる。また、閉鎖しているはずの線路に列車が進入してきた場合の対応として、保守作業の訓練者は、信号を赤信号に切り替えて列車を停止させるために軌条を短絡する作業の訓練を行うことができる。
【0073】
また、軌道の保守作業の訓練者は、模擬保守用車51を操作する訓練を行うことができる。実際の保守用車は、本線とは分離されている分離軌道上に保管されている。保守用車を使用する時には、まず、保管用の分離軌道と本線とを接続して、保守用車を本線に移動させる。この本線と分離軌道とを連結する装置を、横取り装置という。
【0074】
軌道の保守作業の訓練者は、模擬横取り装置(図示せず)を用いて、模擬軌条である本線及び分離軌道を連結して分岐開通方向を変更した後、模擬保守用車51を操作して、模擬保守用車51を模擬軌条である本線に移動させる訓練を行う。
【0075】
表示部30は、制御部21により制御されて、記憶部22に記憶されるシナリオデータ22bに基づいて、模擬視界として、軌道を走行して接近する列車、周辺の景観及び周囲で作業を行う作業員等を表示する。
【0076】
また、画像生成部21aは、保守作業の訓練者が模擬保守用車51を操作するのに伴って、模擬視界が変化する画像を生成することにより、模擬保守用車51が走行していることを模擬する。模擬保守用車51の操作データも、記憶部22に記憶される。
【0077】
音響出力部11は、制御部21により制御されて、記憶部22に記憶されるシナリオデータ22bに基づいて、列車の走行音を含む作業現場の環境音を模擬して出力する。
【0078】
線路閉鎖工事では、監視員は、線路閉鎖責任者とも呼ばれる。
【0079】
監視員の訓練者は、他の訓練者と共に、訓練を行ってもよいし、又は、
図7に示すように、単独で訓練を行ってもよい。
【0080】
監視員の訓練者は、携帯端末14を用いて、指令所と連絡しながら、列車の運行、線路の閉鎖手続き又は線路の開通手続き等に関する連絡の訓練を行う。
【0081】
指令員の訓練者は、指導員卓装置20に位置して、監視員の訓練者と連絡を取りながら、線路区間の閉鎖及び開通等の管理業務の訓練を行う。
【0082】
以上が、線路閉鎖工事の訓練の説明である。
【0083】
次に、き電停止作業の訓練について、以下に説明する。
【0084】
き電停止作業も、線路を閉鎖して行う保守作業である。
【0085】
き電停止作業は、架線の点検又は交換等の保守作業を行う前に、き電線から架線への電力の供給を停止する作業である。また、架線の保守作業の終了後には、き電線から架線への電力の供給を開始する。
【0086】
保守作業の訓練者は、き電線から架線への電力の供給を停止した後、模擬架線の点検又は交換等の作業の訓練を行う。
【0087】
監視員及び指令員は、上述した線路閉鎖工事の訓練と同様に、他の訓練者と連携して、又は単独で訓練を行うことができる。
【0088】
上述した保守作業の訓練は、再生部21bが、記憶部22が記憶した画像データ22c及び音響データ22dを再生して、制御用表示部24又は表示部30に表示することにより、訓練の内容を確認することができる。
【0089】
訓練者は、再生部21bが再生する映像及び音響に基づいて、訓練の内容を更に改善することができる。
【0090】
判定部21cは、記憶部22が記憶した画像データ22c及び音響データ22dに基づいて、訓練の内容を判定する。
【0091】
例えば、判定部21cは、監視員の訓練者の旗振りのタイミング又は動作を、画像解析及び音声の音響解析を行って、基準となるタイミングと比較して判定するか、又は旗の見え方の変化に基づいて判定する。監視員の訓練者は、訓練内容に対して客観的な判定結果を受け取ることにより、訓練の内容を更に改善することができる。
【0092】
上述した本実施形態のシミュレータ10によれば、軌道の保守作業の訓練を行う訓練者が、他の訓練者等と連携して作業の訓練を行うことが可能である。例えば、軌道の保守作業の訓練者は、監視員又は/及び指令員の訓練者と共に連携した保守作業の訓練を行うことができる。このような連携した訓練を、実際の鉄道設備を用いること無く行うことができるので、実際の保守作業の精度を高めることができる。
【0093】
また、上述したシミュレータ10は、他のシミュレータと通信可能に接続して使用してもよい。
【0094】
図8は、2つのシミュレータの通信を説明する図である。
【0095】
上述したシミュレータである第1のシミュレータ10は、ネットワークNを介して、第2のシミュレータ80と通信可能に接続している。
【0096】
第2のシミュレータ80は、例えば、第1のシミュレータ10と同様の機能を有する保守作業訓練のためのシミュレータか、又は、列車の操作の訓練を行うシミュレータであり得る。
【0097】
第1のシミュレータ10は、画像取得部12が取得した画像に基づく画像情報又は音響取得部13が取得した音響に基づく音響情報を、第2のシミュレータ80に対して送信可能である。ここで、画像取得部12が取得した画像に基づく画像情報は、画像取得部12が取得した画像自体又は取得した画像に基づいて作成された画像情報(画像処理された画像等)を含む意味である。また、音響取得部13が取得した音響に基づく音響情報は、音響取得部13が取得した音響自体又は取得した音響に基づいて作成された音響情報(音響処理された音響等)を含む意味である。
【0098】
第2のシミュレータ80が、第1のシミュレータ10と同様の機能を有する保守作業訓練のためのシミュレータである場合には、2つの異なる場所において、保守作業の訓練を行うことができる。訓練は、同時に行ってもよいし、送信された画像情報又は音響情報を記憶しておいて、記憶された情報を再生して行ってもよい。
【0099】
例えば、第1のシミュレータ10の表示部30が第2のシミュレータ80における訓練の映像を表示し、第2のシミュレータ80の表示部が第1のシミュレータ10における訓練の映像を表示するようにしてもよい。
【0100】
このようにして、記憶部22に記憶された保守作業シナリオには基づかない保守作業の訓練を行うことができるので、作業ミス又は操作ミス等の予測不可能な事象が発生し得るため、実際の作業における予測不能な突発的な事態に対応する訓練を行うことができる。
【0101】
本発明では、上述した実施形態のシミュレータは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。