(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キナクリドン顔料が、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、及びC.I.ピグメントレッド202から選択される顔料である、請求項1に記載のマゼンタインク。
前記の樹脂を構成するモノマーのうち、メタクリル酸誘導体から選択されるモノマーが、2種類のアルキルメタクリレート及びメタクリル酸の3種類である請求項1又は4に記載のマゼンタインク。
マゼンタインク、シアンインク、イエローインク及びブラックインクを備えるインクジェット記録用インクセットであって、前記マゼンタインクが請求項1〜7のいずれか一項に記載のマゼンタインクであるインクセット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のインクについて詳細に説明する。
本明細書において、「C.I.」とは、カラーインデックスの略語である。
また、本明細書中、「%」及び「部」については、特に断りのない限り、実施例等も含めていずれも質量基準で記載する。
また、本明細書中、「C.I.ピグメントレッド」は、特に断りのない限り、以下「PR」という。「C.I.ピグメントバイオレット」は、特に断りのない限り、以下「PV」という。
【0012】
[着色剤]
前記インクは、キナクリドン顔料、及びアゾ顔料を着色剤として含有する。キナクリドン顔料、及びアゾ顔料としては、例えば、当業者であれば周知のColour Index Internationalのデータベースで検索できる顔料が挙げられる。
キナクリドン顔料としては、ジ置換キナクリドン顔料が好ましい。ジ置換キナクリドン顔料とは、無置換キナクリドンのベンゼン環上の任意の2つの水素原子が、水素原子以外の置換基により置換された化学構造を有するキナクリドン顔料を意味する。水素原子以外の置換基としては、例えば、メチル基、メトキシ基、塩素原子等が挙げられる。そのような顔料としてはPV及び/又はPRから選択される顔料が好ましい。それらの中ではPV19、PR122及びPR202から選択される顔料がより好ましく、PV19及びPR122から選択される顔料がさらに好ましく、発色性や色相を考慮するとPV19及びPR122の併用が特に好ましい。
キナクリドン顔料は1種類を使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0013】
アゾ顔料としては特に制限されないが、モノアゾ顔料が好ましい。モノアゾ顔料としては様々な構造式を有する顔料が知られており、PRから選択される顔料が好ましい。それらの中では色相、透明性、発色性、彩度、耐光性等の観点から、PR150が特に好ましい。
【0014】
前記インクが含有する着色剤の総含有量は通常0.5%〜10%、好ましくは0.5%〜8%、より好ましくは1%〜8%、さらに好ましくは2%〜7%である。0.5%以上では記録画像の発色性が良好になる傾向があり、10%以下では吐出性が良好になる傾向がある。
【0015】
前記インクが含有する着色剤であるキナクリドン顔料とPR150との含有比率は、通常95/5〜5/95、より好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは80/20〜20/80である。このような比率とすることにより、発色性、及び彩度のバランスが良好な記録画像が得られる。
【0016】
[樹脂]
前記の樹脂を構成するモノマーは、メタクリル酸誘導体及びアクリル酸誘導体のそれぞれから、少なくとも1種類ずつ選択されるモノマーが好ましい。
また、メタクリル酸誘導体から選択される3種類のモノマーと、アクリル酸誘導体から選択される1種類のモノマーがより好ましい。
前記の樹脂を構成するモノマーのうち、メタクリル酸から選択されるモノマーが、2種類のアルキルメタクリレート及びメタクリル酸の3種類であり、アクリル酸誘導体がアルキルアクリレートであるのがさらに好ましい。
【0017】
[メタクリル酸誘導体]
メタクリル酸誘導体としては、アルキルメタクリレート及びメタクリル酸が好ましい。
アルキルメタクリレートとしては、アルキル部分が通常C1−C18、好ましくはC1−C12、より好ましくはC1−C8であり、飽和又は不飽和のアルキルメタクリレートが挙げられる。
飽和アルキルメタクリレートの具体例としては、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート等の直鎖アルキルメタクリレート;イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等の分岐鎖アルキルメタクリレート;シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の環状アルキルメタクリレート;が挙げられる。
不飽和アルキルメタクリレートとしては、不飽和C1−C4アルキルメタクリレートがさらに好ましい。その具体例としては、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、プロペニルメタクリレート、ブテニルメタクリレート、ブタジエニルメタクリレート等が挙げられる。
【0018】
[アクリル酸誘導体]
アクリル酸誘導体としては、前記[メタクリル酸誘導体]における「メタクリル酸」を「アクリル酸」と読み替え、また「メタクリレート」を「アクリレート」に読み替えた化合物が挙げられる。
【0019】
前記の樹脂を構成する2種類のアルキルメタクリレートは、直鎖アルキルメタクリレート及び不飽和アルキルメタクリレートのそれぞれから選択されるモノマーが好ましい。
直鎖アルキルメタクリレートは、前記のうち直鎖C1−C3アルキルメタクリレートがより好ましく、メチルメタクリレートがさらに好ましい。
不飽和アルキルメタクリレートは、前記のうち不飽和C1−C4アルキルメタクリレートがより好ましく、アリルメタクリレートがさらに好ましい。
また、前記の樹脂を構成するアルキルアクリレートは、分岐鎖アルキルアクリレートが好ましく、分岐鎖C3−C8アルキルアクリレートがより好ましく、2−エチルヘキシルアクリレートがさらに好ましい。
前記の樹脂は、例えば国際公開2015/147192号ガゼットが開示する合成方法により得ることができる。また、前記の樹脂は、エマルジョンとして使用することもできる。
【0020】
前記の樹脂のモノマー構成を「通常」、「好ましい」、「より好ましい」構成として、下記表1にまとめた。下記表1の各モノマーの範囲で、モノマーの総量が100部となるように調製することができる。下記表1中の略号は、以下の意味を有する。
MA:メタクリル酸。
ScAM:直鎖アルキルメタクリレート。
BcAA:分岐鎖アルキルアクリレート。
UsAM:不飽和アルキルメタクリレート。
【0022】
前記の樹脂の平均粒径(D50)は通常10nm〜1μm、好ましくは30nm〜500nm程度;ガラス転移点(Tg)は通常−10℃〜20℃、好ましくは−5℃〜15℃;酸価は通常0〜25KOHmg/g、好ましくは5〜15KOHmg/g;テトラヒドロフランに対する不溶解度は通常80〜100%、好ましくは100%である。
【0023】
前記インクの総質量中における、樹脂の含有量は通常0.1%〜10%、好ましくは0.2%〜8%、さらに好ましくは0.3%〜8%である。インク中の含有量が0.1%以上のとき耐擦過性や耐湿潤擦過性が良好となり、10%以下のとき再分散性と吐出性が良好となる。
【0024】
[インクセット]
前記インクは、マゼンタインクとして使用するのが好ましい。前記インクは単独で使用してもよいし、フルカラーの記録画像を得る目的で、例えばシアンインク、イエローインク、及びブラックインクを備えるインクジェット記録用インクセットとして用いてもよい。このとき、シアン、イエロー及びブラックの各インクが含有する着色剤は、特に限定されるものではなく、公知の顔料を任意に使用できる。また、この4色のインクセット以外にも、より高精細な色相の記録画像を得る目的で、例えばバイオレット、オレンジ〜ブラウン、グリーン等の各インクを任意に加えた、4色以上のインクセットとしてもよい。
【0025】
以下に、フルカラーの記録画像を得る目的で、各色のインクが含有してもよい着色剤について記載する。
着色剤としては顔料が好ましく、顔料としては、主に無機顔料、有機顔料及び体質顔料等があり、いずれの顔料を用いてもよい。また、それらの顔料は、単独で使用してもよいし、併用してもよい。
顔料を併用する目的としては、色相の調整が挙げられる。色相の調整としては、記録画像の濃淡をつけること、及び色域を広げること、等が挙げられる。また、複数の顔料を併用すると、インク中での保存安定性が向上することもあり、これを目的とすることもある。
【0026】
前記シアン、イエロー、ブラック、バイオレット、オレンジ〜ブラウン、及びグリーンの各インクが含有する有機顔料の具体例としては、例えばC.I.Pigment Blue1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、25、60、66、80等のシアン(ブルー)色の顔料;C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、24、55、73、74、75、83、93、94、95、97、98、108、114、120、128、129、138、139、150、151、154、155、180、185、193、199、202、213等のイエロー色の顔料;C.I.PigmentBlack1等のブラック系の顔料;C.I.PigmentViolet19、23、29、37、38、50等のバイオレット色の顔料;C.I.PigmentOrange13、16、68、69、71、73等のオレンジ〜ブラウン色の顔料;C.I.PigmentGreen7、36、54等のグリーン色の顔料;等が挙げられる。これらのうち、イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 74、151、及び155よりなる群から選択される、少なくとも1種類が好ましい。また、シアン(ブルー)顔料としては、C.I.ピグメントブルー 15:3及び15:4から選択される、少なくとも1種類が好ましい。
【0027】
無機顔料としては、例えばカーボンブラック、金属酸化物、水酸化物、硫化物、フェロシアン化物、及び金属塩化物等が挙げられる。特にブラックインクが含有する顔料としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、サーマルブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、ランプブラック、ガスブラック、及びチャンネルブラック;等が挙げられる。これらの中ではガスファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、及びチャンネルブラックが好ましい。
【0028】
前記カーボンブラックは、市販品として容易に入手が可能である。その具体例としては、例えばRaven760ULTRA、Raven780ULTRA、Raven790ULTRA、Raven1060ULTRA、Raven1080ULTRA、Raven1170、Raven1190ULTRAII、Raven1200、Raven1250、Raven1255、Raven1500、Raven2000、Raven2500ULTRA、Raven3500、Raven5000ULTRAII、Raven5250、Raven5750、Raven7000(コロンビア・カーボン社製);Monarch700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、Regal1330R、Regal1400R、Regal1660R、MogulL(キャボット社製);ColorBlackFW1、ColorBlackFW2、ColorBlackFW18、ColorBlackFW200、ColorBlackFW285、Printex35、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140V、SpecIalBlack4、SpecIalBlack4A、SpecIalBlack5、SpecialBlack6、Nerox305、Nerox505、Nerox510、Nerox605、Nerox600(オリオンエンジニアドカーボンズ社製);MA7、MA8、MA100、MA600、MCF−88、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300(三菱化学社製);等が挙げられる。
【0029】
有機顔料としては、例えば溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、不溶性ジアゾ顔料、縮合アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料及びキノフタロン顔料が挙げられる。
【0030】
体質顔料としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、ホワイトカーボンなどが挙げられる。これらの体質顔料は単独で使用されることはなく、通常、無機顔料又は有機顔料と併用して使用される。
【0031】
前記シアン、イエロー、及びブラック等の各インクの総質量中における顔料の総含有量は、通常0.5%〜10%、好ましくは0.5%〜8%、より好ましくは1%〜8%、さらに好ましくは2%〜7%である。
【0032】
前記の着色剤は、安全性や吐出性の観点から、例えば変異原性を有する合成原料、カルシウムなどの各種金属塩、その他の有機不純物、合成時に生成する副生物等を、できるだけ含まないものを用いることが好ましい。
【0033】
以下に、特に断りのない限り、前記インクセットを構成する各色のインクも含めた、前記全てのインクに共通する事項等を記載する。
【0034】
[分散剤]
前記インクは、着色剤がインク中に分散されている分散インクである。このため、後記するように着色剤の微細化と、分散安定性を良好にする目的から、インクが分散剤を含有するのが好ましい。
【0035】
分散剤としては、ノニオン分散剤、アニオン分散剤、及び高分子分散剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。分散剤は単独で使用してもよいし、併用してもよい。これらの中では、ノニオン分散剤、アニオン分散剤及び高分子分散剤よりなる群から選択される、少なくとも1種類が好ましい。
前記分散剤の使用量は、分散液を調製するときの固形分換算での質量比率として、着色剤の総質量に対して通常1〜100%、好ましくは、5〜90%、より好ましくは、10〜80%である。この使用量のとき、顔料の微細化が容易で、画像滲み、耐水性、及び耐擦過性等が良好となる。
【0036】
ノニオン分散剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン−β−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチルルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
アニオン性分散剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリール及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。
【0038】
高分子分散剤としては、スチレン及びその誘導体;ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等;アクリル酸及びその誘導体;マレイン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;フマール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体;等よりなる群の単量体から選択される、少なくとも2つの単量体(好ましくは、このうち少なくとも1つが親水性の単量体)からなる共重合体、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、及び/又はそれらの塩等が挙げられる。また、前記各種の共重合体、及び/又はそれらの塩等は、併用してもよい。
分散剤の重量平均分子量としては、おおよそ1000〜60000、好ましくは2000〜50000、より好ましくは2500〜50000程度である。また、酸価としては、おおよそ10〜300、好ましくは10〜275、より好ましくは20〜250程度である。これら分散剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
分散剤は市販品として入手することも可能であり、その具体例としては、いずれもBASF社製の、ジョンクリル61J、67、68、450、55、555、586、678、680、682、683、690;及び、B−36;等が挙げられる。
【0039】
分散剤により、着色剤を水に分散させる方法としては、サンドミル(ビーズミルともいう)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いる公知の方法が挙げられる。これらの中ではサンドミル(ビーズミル)が好ましい。サンドミルを用いた分散液を調製は、径の小さいビーズ(0.01mm〜1mm径)を使用し、ビーズの充填率を大きくすること等により、分散効率を高めた条件で分散液を調製することが望ましい。
分散液の調製後に、ろ過及び/又は遠心分離等により、ビーズ等を除去するのと共に、目的とする平均粒径からの乖離が大きい粒子成分を除去することも好ましく行われる。
分散液の調製時に泡立ち等が生じるときは、これを抑える目的で、公知のシリコーン系、アセチレングリコール系等の消泡剤を極微量添加しても良い。但し、消泡剤の中には着色剤の分散や微粒子化を阻害するものがある。このため、分散や分散後の安定性に影響を及ぼさないものを適宜使用するのが好ましい。
【0040】
また、着色剤を微粒子化し、前記の高分子分散剤で着色剤の一部又は全てを覆う方法、すなわちマイクロカプセル化あるいはエマルジョン化等の、従来公知の全ての方法を用いることが可能である。従来公知の方法としては、例えば、酸析法、転相乳化法、in−situ重合法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法などが挙げられる。
【0041】
また、分散剤を使用する代わりに、着色剤の表面に分散性付与基を化学的に導入した、いわゆる表面処理顔料(自己分散顔料)を着色剤として用いることもできる。
【0042】
前記の分散液が含有する、着色剤等の粒子の平均粒径D50は通常300nm以下、好ましくは30〜280nm、より好ましくは40〜270nm、さらに好ましくは50〜250nmである。この範囲の粒径のとき、保存安定性、及び吐出性等が良好となる。
また、同様にD90は通常300nm以下、好ましくは280nm以下、より好ましくは270nm以下である。D90の下限は100nm以上が好ましい。D90がこの範囲のとき、製造が容易で、保存安定性が良好な分散液が得られる。
また、同様にD10は通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上である。D10の上限は100nm以下が好ましい。D10がこの範囲のとき、製造が容易で、印字濃度が良好な分散液が得られる。
【0043】
前記の分散液、及びインクの調製に用いる水は、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が好ましい。これらの水は、pHが6.5〜7.5であり、かつ各種の金属イオン等の不純物の含有量が少ない。
【0044】
前記インクは、例えば、水溶性有機溶剤、水溶性高分子化合物、界面活性剤、防黴剤、防腐剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤等のインク調製剤を、必要に応じて含有することができる。インク調製剤は、いずれも1種類を使用することも、2種類以上を併用することもできる。
これらのうち、インクの総質量に対して水溶性有機溶剤の総含有量は通常5%〜50%、好ましくは10%〜40%である。
また、インクの総質量に対して、水溶性有機溶剤以外のインク調製剤の総含有量は通常0.1%〜20%、好ましくは0.5%〜10%である。
【0045】
[水溶性有機溶剤]
水溶性有機溶剤は特に制限されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール又は第三ブタノール等のC1−C6アルカノール;N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン又はN−メチルピロリジン−2−オン等のラクタム;1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類;アセトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン、エチレンカーボネート等のケトン、ケトアルコール又はカーボネート;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは分子量400、800、1540又はそれ以上のもの)、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール又はジチオジグリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、トリメチロールプロパン等のC3−C9ポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル(好ましくはC3−C10のモノ、ジ若しくはトリエチレングリコールエーテル、及びC4−C13のモノ、ジ若しくはトリプロピレングリコールエーテルよりなる群から選択されるグリコールエーテル);1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等の、C5−C9アルカンジオール;γ−ブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等;等が挙げられる。
【0046】
[水溶性高分子化合物]
水溶性高分子化合物としては、水へ溶解する高分子であれば特に限定されない。分散安定性の観点からアニオン性高分子及びノニオン性高分子が好ましい。アニオン性高分子の具体例としては、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸等のアクリル酸誘導体及びポリスチレンスルホン酸塩等のポリスチレン誘導体が挙げられる。ノニオン性高分子の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等があげられる。
【0047】
[界面活性剤]
界面活性剤の例としては、例えばアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。これらの中では、アニオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤よりなる群から選択される、少なくとも1種類の界面活性剤が好ましい。
前記インクに含まれる界面活性剤の総含有量は、インクの総質量に対して通常0.1%〜3%、好ましくは0.2%〜2.5%である。
【0048】
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、N−アシルアミノ酸又はその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。また、市販品として入手できるものの具体例としては、例えば、ハイテノールLA−10、LA−12、LA−16、NE−05、NE−15、NF−13、NF−17、ネオハイテノールECL−30S、ECL−45(第一工業製薬株式会社製)、アデカコールEC−8600(株式会社ADEKA製)、ぺレックスOT−P(花王株式会社製)等が挙げられる。
【0049】
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体などが挙げられる。
【0050】
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体などが挙げられる。
【0051】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系(例えば、日本触媒株式会社製のソフタノールTMEP−5035、7085、9050や株式会社ADEKA製のプルロニックTML−31、L−34、L−44等);ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;ポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテル;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル;ポリオキシエチレントリベンジル化フェニルエーテル;いずれも日信化学株式会社製のサーフィノール104、104PG50、105PG50、82、420、440、465、485;オルフィンSTG;ポリグリコールエーテル系(例えばSIGMA−ALDRICH社製のTergItol 15−S−7等);等が挙げられる。
【0052】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。その具体例としては、例えば、いずれもビックケミー社製の、BYK−347(ポリエーテル変性シロキサン);BYK−345、BYK−348、BYK−349(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン);等が挙げられる。
【0053】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。その具体例としては、例えば、Zonyl TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、CapstoneFS−30、FS−31(DuPont社製);PF−151N、PF−154N(オムノバ社製);等が挙げられる。
【0054】
[防黴剤]
防黴剤の具体例としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。
【0055】
[防腐剤]
防腐剤の例としては、例えば有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系又は無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。
ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤の具体例として、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム又は安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製、商品名プロクセルGXL(S)、プロクセルLV、プロクセルXL−2(S)等が挙げられる。
【0056】
[pH調整剤]
pH調整剤の具体例としては、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;及び、リン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0057】
[キレート試薬]
キレート試薬の具体例としては、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム又はウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0058】
[防錆剤]
防錆剤の具体例としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール又はジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0059】
[水溶性紫外線吸収剤]
水溶性紫外線吸収剤の例としては、例えばスルホ化したベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ−ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物又はトリアジン系化合物が挙げられる。
【0060】
[酸化防止剤]
酸化防止剤の例としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類又は複素環類等が挙げられる。
【0061】
[消泡剤]
消泡剤としては、例えば、シリコーン系、シリカ鉱物油系、オレフィン系、アセチレン系等が挙げられる。市販の消泡剤としては、例えば、いずれも信越化学工業株式会社製のサーフィノールDF37、DF58、DF110D、DF220、MD−20、オレフィンSK−14等が挙げられる。
【0062】
前記インクをインクジェット記録用のインクとして使用するときは、インク中の金属陽イオンの塩化物(例えば塩化ナトリウム)、及び硫酸塩(例えば硫酸ナトリウム)等の無機不純物の含有量は少ないものが好ましい。その含有量の目安は、着色剤の総質量に対して通常1%以下程度、下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0%とすることができる。
無機不純物は、市販品の着色剤が含有していることも多い。このため、必要に応じて着色剤を精製することができる。着色剤の精製方法としては、着色剤を含水の水溶性有機溶剤中で懸濁精製する方法が挙げられる。
また、分散液又はインクを調製した後の精製方法としては、例えば、逆浸透膜によりそれらを精製する方法;又は、それらにイオン交換樹脂を加えて無機不純物を交換吸着する方法;等の方法が挙げられる。
【0063】
前記インクのpHは、インクの保存安定性を向上させ、また、インクジェットプリンタの部材を腐食させない目的から通常pH7〜11、好ましくはpH8〜10である。
また、インクの表面張力としては、通常10〜50mN/m、20〜40mN/mが好ましい。さらに、インクの粘度としては、通常2mPa・s以上、30mPa・s以下、3mPa・s以上、20mPa・s以下が好ましい。
これらのインクの物性値は、前記インクの調製剤により適宜調整することができる。
【0064】
前記インクは、各種の記録用インクとして使用できる。例えば、筆記具、水性印刷、情報記録、捺染等の用途に好適であり、インクジェット記録に用いるのが特に好ましい。
【0065】
前記インクジェット記録方法は、前記インクの液滴を、記録信号に応じて吐出させて、記録メディアに付着させることにより記録を行う方法である。記録の際に使用するインクノズルや吐出方式等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
インクジェットの吐出方式としては、公知の方式が使用できる。例えば、電荷制御方式、ドロップオンデマンド(圧力パルス)方式;音響インクジェット方式;サーマルインクジェット方式等が挙げられる。
なお、前記の方式には、インク中の着色剤の含有量が少ないインクを、小さい体積で多数射出する方式;実質的に同じ色相で、インク中の着色剤の濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式;及び無色透明のインクを用いることにより、着色剤の定着性を向上させる方式;等も含まれる。
【0066】
前記の記録メディアとしては、前記インクにより着色される物質であれば特に制限はない。記録メディアとしては、例えば、紙、フィルム、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられる。
これらの記録メディアは、インク受容層を有するものと、有しないものとに大別することができる。
【0067】
インク受容層を有する記録メディアとしては、例えば、紙、合成紙、フィルム等を基材とし、これにインク受容層を設けたものが挙げられる。インク受容層は、例えば前記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工する方法;又は多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等の無機微粒子を、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に、前記基材表面に塗工する方法;等により設けられる。
このような記録メディアは、通常インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙等と呼ばれる。その代表的な市販品の例としては、キヤノン株式会社製の商品名:プロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー、光沢ゴールド及びマットフォトペーパー;セイコーエプソン株式会社製の商品名:写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、フォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード株式会社製の商品名:アドバンスフォト用紙(光沢);富士フィルム株式会社製の商品名:画彩写真仕上げPro;等が挙げられる。
【0068】
インク受容層を有しない記録メディアとしては、グラビア印刷、オフセット印刷等の用途に用いられるコート紙、アート紙等の各種の用紙;ラベル印刷用途に用いられるキャストコート紙;等が挙げられる。
インク受容層を有しない記録メディアに記録を行うときは、インクの定着性等を向上させる目的で、記録メディアに対して表面改質処理をすることも好ましく行われる。
表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理及びフレーム処理から選択される、少なくとも1つの処理を施すことが好ましい。これらの処理は、公知の方法を用いて行うことができる。また、これらの処理の効果は、経時的に減弱することが一般的に知られている。このため、記録メディアに表面改質処理をしたときは、時間を置かずにインクジェット記録を行うことが好ましい。
前記表面改質処理は、所望の効果が得られるように処理の回数、時間、及び、印可する電圧等を適宜調整して行うことができる。
【0069】
前記インクジェット記録方法で記録メディアに記録を行うときは、前記インクをマゼンタインクして用い、これを含有する容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、前記の記録方法で記録メディアに記録することができる。
また、前記インクセットを用いてインクジェット記録を行うときは、各色のインクを含有する各容器をインクジェットプリンタの所定の位置にそれぞれ装填し、前記の記録方法で記録メディアに記録することができる。
本発明は、前記の記録方法等により前記インクが付着した記録メディアを含む。また、前記インクを含有する容器、及びこの容器を備えるインクジェットプリンタも、その範囲に含む。
【0070】
本発明のインクは再分散性、及び耐擦過性に優れ、発色性及び彩度のバランスが良好である。
各種の記録メディアに記録した時、インク受容層の有無に係らず、色相及び彩度が良好、且つモットリングを生じない高画質な記録画像を得ることが出来る。
また、得られた記録画像の耐光性、耐オゾン性等の耐久性も良好である。
また、本インクは保存安定性が優れ、良好な吐出性を有する。更に、インクジェットの目詰りを生じないことからメンテナンス性も良好である。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、分散液中の顔料固形分の含有量は、株式会社エイ・アンド・デイ社製、MS−70を用いて乾燥重量法により求めた。平均粒径の測定が必要なときは、マイクロトラック・ベル社製、Nanotrac Wave−EX150を用いた。
【0072】
[調製例1]:分散剤の水溶液1の調製。
ジョンクリル678(MW:8500)20部、及びトリエタノールアミン11.4部をイオン交換水68.6部に溶解し、一時間撹拌して溶液とすることにより、分散剤の水溶液1を調製した。
下記表2中の「ジョンクリル678」は、このジョンクリル678を20%含有する水溶液を意味する。
【0073】
[調製例2〜5]:分散液1〜4の調製。
下記表2に記載した各成分を混合し、サンドグラインダーで1500rpmの条件下、15時間分散処理を行った。得られた液にイオン交換水100部を滴下した後、その液を濾過して分散用ビーズを濾過分離することにより、目的とする分散液1〜4を得た。
得られた各分散液について、顔料固形分の含有量と平均粒径を測定し、下記表2中に記載した。
【0074】
なお、下記表2及び表3中、成分の量を示す数値はいずれも「部」であり、「−」を記載したものは、その成分を含まないことを意味する。また、「水」はイオン交換水を使用した。また、「オルフィンSK−14」は消泡剤であり、濾過により除去される。
また、表2及び表3中の略号等は、以下の意味を表す。
PR122:C.I.Pigment Red 122、BASF社製のCinquasia Magenta D4550J。
PV19:C.I.Pigment Violet 19、BASF社製のCinquasia Magenta E05B。
PV19+PR122:クラリアント社製Inkjet Magenta E−02(C.I.Pigment Red 122とC.I.Pigment Violet 19の固溶体)。
PR150:C.I.Pigment Red 150、冨士色素社製FUJI FAST CARMINE 522−1D。
SK−14:オルフィンSK−14、日信化学工業株式会社製。
【0075】
【表2】
【0076】
[調製例6]樹脂1の調製。
国際公開第2015/147192号ガゼットの調製例4を追試することにより、酸価が6KOHmg/g、Tgが0℃、固形分が25%の樹脂エマルションを調製した。これを「樹脂1」とする。
【0077】
[実施例1〜3]:インクの調製。
下記表3に記載の各成分を混合して液を得た。得られた液を3μmのメンブランフィルターで濾別することにより、評価試験用の、実施例1〜3のインクをそれぞれ得た。
【0078】
[比較例1及び2]:比較用インクの調製。
下記表3に記載の各成分を用いる以外は実施例1〜3と同様にして、比較例1及び2の比較用インクを得た。
【0079】
表3中の略号等は、以下の意味を表す。
GLY:グリセリン。
DEG:ジエチレングリコール。
2−PY:2−ピロリドン。
SF465: サーフィノール465。
GXL(s):プロキセルGXL(s)。
【0080】
【表3】
【0081】
前記のようにして調製した各実施例、及び比較例のインクを用い、下記する評価試験を実施した。
【0082】
[再分散性試験]
各実施例、及び比較例のインク(各25μL)をガラスシャーレの上にのせ、60℃の恒温恒湿機で1時間乾燥させた。乾燥後の各インクに、室温で10mlのイオン交換水を滴下し、再分散するか否かを目視にて、下記評価基準で評価した。再分散するインクほど、乾燥後の目詰まりを洗浄により解消し易いため優れている。評価結果を下記表4に示す。
A:残渣がなく、全て再分散する。
B:残渣が少し残るが、ほとんどが再分散している。
C:残渣は多く残るが、一部は再分散している。
D:まったく再分散しない。
【0083】
[インクジェット記録]
各実施例及び比較例で得た各インクを、セイコーエプソン社製インクジェットプリンタ、商品名PX204のマゼンタカートリッジにそれぞれ充填し、王子製紙製コート紙「OKトップコート」に、インクジェット記録を行った。
インクジェット記録は、100%Dutyのベタ画像となるように行い、各実施例又は比較例のインクにより記録された記録画像を得た。これを試験片として用い、下記評価試験を行った。
なお、前記のようにして得た各試験片は、ベタ画像部分の反射濃度Dm値(OD値)を、X−rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色した。測色条件は、濃度基準にANSI A、視野角2°、光源D50である。測色は小数点以下2桁目まで行い、これを四捨五入して小数点以下1桁とした数値を下記表4に記載した。
評価試験を行う前の各試験片の測色結果を「発色性1」として、下記表4に示した。
【0084】
[耐擦過性試験]
各試験片の耐擦過性は、安田精機製作所製No.428学振形染色摩擦堅ろう度試験機を用いて評価した。すなわち、試験片のベタ画像部分に対して500gの荷重を掛けた状態で、新品のOKトップコートを10回擦り合わせ、耐擦過性試験を実施した。試験後の試験片のベタ画像を測色し、結果を「発色性2」として下記表4に示した。
【0085】
[耐湿潤擦過性試験]
新品のOKトップコートを水で湿潤させたポリエステル布に代え、さらに10回の擦り合わせを2回に代える以外は前記[耐擦過性試験]と同様にして、耐湿潤擦過性試験を実施した。試験後の試験片のベタ画像を測色し、結果を「発色性3」として下記表4に示した。試験に使用したポリエステル布は、ポリエステル100%の(AS ONE社製、アズピュアワイパー)である。
【0086】
【表4】
【0087】
表4の結果から、各実施例、及び比較例共に再分散性、発色性1、及び発色性2の評価結果は、いずれも良好だった。しかし、発色性3、すなわち耐湿潤擦過性試験では、各実施例が発色性2と同程度の良好な結果を示したのに対して、各比較例は極端に発色性3が悪化することが判明した。