特許第6666080号(P6666080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コーセーの特許一覧

特許6666080シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法
<>
  • 特許6666080-シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法 図000002
  • 特許6666080-シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法 図000003
  • 特許6666080-シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法 図000004
  • 特許6666080-シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法 図000005
  • 特許6666080-シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法 図000006
  • 特許6666080-シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法 図000007
  • 特許6666080-シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法 図000008
  • 特許6666080-シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法 図000009
  • 特許6666080-シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法 図000010
  • 特許6666080-シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6666080
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】シワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20200302BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20200302BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20200302BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   A61K8/67
   A61Q19/08
   A61K31/355
   A61P17/00
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-114725(P2015-114725)
(22)【出願日】2015年6月5日
(65)【公開番号】特開2016-11296(P2016-11296A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2018年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-118195(P2014-118195)
(32)【優先日】2014年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】山口 寛子
【審査官】 塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−055188(JP,A)
【文献】 特開2005−104920(JP,A)
【文献】 特開2008−179632(JP,A)
【文献】 特開2004−323431(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/060407(WO,A1)
【文献】 特表2013−527155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 31/33−33/44
A61K 40/00
A61P 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長600〜700nmの赤色LED光のみを皮膚に照射する光照射工程と、
トコトリエノールを皮膚に塗布する塗布工程と、
を少なくとも行うシワ改善方法。
【請求項2】
前記光照射工程は、1〜3週間毎に3〜6回行われる、請求項1記載のシワ改善方法。
【請求項3】
前記塗布工程は、2週間以上連続して行われる、請求項1又は2に記載のシワ改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シワ改善方法に関する。より詳しくは、従来の技術に比べて優れたシワ改善効果を発揮するシワ改善方法、シワ改善機能向上方法、シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料、及びその使用、並びにシワ改善用化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康で美しい肌を保つことは、特に女性にとって非常に関心の高い問題である。しかし、肌の状態は湿度、紫外線、化粧品、加齢、疾病、ストレス、食習慣等の因子に常に影響され、その結果として、肌の諸機能の減退、肌の老化など、様々な肌のトラブルが発生する。
これらのトラブルのうち、シワは、加齢による肌の老化や太陽光線への露出による光老化などにより生じることが知られている。
【0003】
従来から、シワを改善するための種々の方法が検討されている。例えば、レチノイドやレチノイン酸などを用いて真皮組織を増殖させ、シワを改善する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。また、コラーゲンやヒアルロン酸を配合することにより、シワを改善する方法も知られている(例えば、特許文献3及び特許文献4)。
【0004】
その他、近年では、抗酸化物質を用いてシワ改善効果を発揮する化粧料も開発されている。例えば、特許文献5には、フルクトシルジペプチドと抗酸化物質とを配合した化粧料が、特許文献6には、アスタキサンチンとトコトリエノールを配合した化粧料が開示されている。
【0005】
化粧料を用いる方法以外の方法としては、例えば、特許文献7には、約630nmに最大強度を有する光を照射することにより、光若返り、しわ除去などを行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62‐185005号公報
【特許文献2】特開平2‐288822号公報
【特許文献3】特公昭33‐500号公報
【特許文献4】特公平4‐65047号公報
【特許文献5】特開2007‐8847号公報
【特許文献6】特開2003‐55188号公報
【特許文献7】特表2006‐519047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、従来からシワ改善方法が様々な方向から開発されつつあるが、従来の方法ではシワ改善効果が十分ではなく、更に効果的なシワ改善方法が望まれていた。
【0008】
そこで、本発明では、従来の技術に比べて優れたシワ改善効果を示すシワ改善技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、シワ改善効果を発揮させる方法、用いる化粧料などについて鋭意研究を行った結果、波長405〜904nmに少なくとも一つの発光ピークを有する光の照射及びトコトリエノールの皮膚塗布が、それぞれのシワ改善効果を予想以上に相乗的に向上させることを突き止め、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明では、まず、波長405〜904nmに少なくとも一つの発光ピークを有する光を皮膚に照射する光照射工程と、
トコトリエノールを皮膚に塗布する塗布工程と、
を少なくとも行うシワ改善方法を提供する。
また、トコトリエノールのシワ改善機能を向上させる方法であって、
波長405〜904nmに少なくとも一つの発光ピークを有する光を皮膚に照射する光照射工程と、
トコトリエノールを皮膚に塗布する塗布工程と、
を少なくとも行うトコトリエノールのシワ改善機能向上方法も提供する。
【0011】
また、本発明では、波長405〜904nmに少なくとも一つの発光ピークを有する光の照射前及び/又は照射後に塗布される、トコトリエノールを含有するシワ改善用化粧料も提供する。
更に、波長405〜904nmに少なくとも一つの発光ピークを有する光の照射によるシワ改善機能を向上させる化粧料であって、
トコトリエノールを含有するシワ改善機能向上用化粧料も提供する。
【0012】
また、前記シワ改善用化粧料又は前記シワ改善機能向上用化粧料を皮膚に塗布する方法であって、
少なくとも2週間以上連続して前記シワ改善用化粧料又は前記シワ改善機能向上用化粧料を皮膚に塗布する、塗布方法も提供する。
本発明に係る塗布方法では、少なくとも2週間以上連続して前記シワ改善用化粧料又は前記シワ改善機能向上用化粧料を皮膚に塗布すれば、本発明の効果を得ることが可能であるが、例えば、シワ改善のための波長405〜904nmに少なくとも一つの発光ピークを有する光の照射前及び/又は照射後に、前記シワ改善用化粧料又は前記シワ改善機能向上用化粧料を少なくとも2週間以上連続して皮膚に塗布することができる。
【0013】
更に、本発明では、シワ改善のための波長405〜904nmに少なくとも一つの発光ピークを有する光の照射前及び/又は照射後における、トコトリエノールの使用も提供する。
また、シワ改善のための波長405〜904nmに少なくとも一つの発光ピークを有する光の照射前及び/又は照射後における、前記シワ改善用化粧料の使用も提供する。
【0014】
加えて、本発明では、波長405〜904nmに少なくとも一つの発光ピークを有する光の照射前及び/又は照射後に塗布される、シワ改善用化粧料の製造方法であって、
少なくともトコトリエノールを添加する添加工程を行う、
シワ改善用化粧料の製造方法も提供する。
【0015】
以上説明した本発明において、用いることができる波長405〜904nmに少なくとも一つの発光ピークを有する光としては、例えば、波長590〜750nmに少なくとも一つの発光ピークを有する赤色光を用いることができ、該赤色光は、例えば、赤色LEDを用いて照射することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来のシワ改善技術に比べ、飛躍的に高いシワ改善効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実験例1での試験方法を模式的に示す模式図である。
図2】実験例1において、総シワ平均深さ(μm)の測定結果を示す図面代用グラフである。
図3】実験例1において、最大シワ平均深さ(μm)の測定結果を示す図面代用グラフである。
図4】実験例1において、シワ体積(mm)の測定結果を示す図面代用グラフである。
図5】実験例1において、表面粗さ(μm)の測定結果を示す図面代用グラフである。
図6】実験例1において、効果感のアンケート結果を示す図面代用グラフである。
図7】実験例2において、総シワ平均深さの変化量(μm)を示す図面代用グラフである。
図8】実験例2において、最大シワ平均深さの変化量(μm)を示す図面代用グラフである。
図9】実験例2において、シワ体積の変化量(mm)を示す図面代用グラフである。
図10】実験例2において、表面粗さの変化量(μm)を示す図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0019】
1.シワ改善方法、シワ改善機能向上方法
本発明に係るシワ改善方法は、波長405〜904nmに少なくとも一つの発光ピークを有する光(以下、「波長405〜904nmの光」ともいう)を皮膚に照射する光照射工程と、トコトリエノールを皮膚に塗布する塗布工程と、を少なくとも行うことを特徴とする。本発明に係るシワ改善方法は、上述した2つの工程を併せて行うことで、両工程の相乗効果により、優れたシワ改善効果を得ることが可能である。なお、本発明においては、どちらの工程を先に行ってもよい。
【0020】
また、本発明に係るシワ改善機能向上方法は、トコトリエノールのシワ改善機能を向上させる方法であって、波長405〜904nmの光を皮膚に照射する光照射工程と、トコトリエノールを皮膚に塗布する塗布工程と、を少なくとも行うことを特徴とする。本発明に係るシワ改善機能向上方法は、上述した2つの工程を併せて行うことで、両工程の相乗効果により、優れたシワ改善効果が得られ、また、トコトリエノールのシワ改善機能を向上させることが可能である。なお、本発明においては、どちらの工程を先に行ってもよい。
【0021】
以下、本発明に係るシワ改善方法及びシワ改善機能向上方法の、各工程について詳細に説明する。
【0022】
(1)光照射工程
本発明において、光照射工程とは、波長405〜904nmの光を皮膚に照射する工程である。
【0023】
本発明の光照射工程で用いる光の種類は、波長405〜904nmの光であれば、光の色や可視性などは限定されず、公知の光源から発せられる光を自由に選択して用いることができる。例えば、可視光、不可視光、レーザー光、LED光などを挙げることができる。本発明では特に、波長590〜750nmに少なくとも一つの発光ピークを有する赤色光(以下、「波長590〜750nmの赤色光」ともいう)を用いることが好ましい。この場合、前記赤色光の照射は、前記波長の赤色光を発することが可能な公知の光源を自由に用いて行うことができるが、本発明では特に、赤色LEDを用いて前記赤色光の照射を行うことが好ましい。波長590〜750nmの赤色光を用いることで、より高いシワ改善機能を発揮することができる。また、LEDは、蛍光灯や白熱灯などの光源と異なり、不要な波長の光を含まずに所望の波長の光だけを含む光を簡単に得ることができるため、必要な波長のみを効率的に照射することが可能である。
【0024】
現在、LED(発光ダイオード)として、その波長の違いや混合手法により、青色、緑色、赤色、黄色、白色などの様々な色のものが知られているが、本発明では、赤色のLEDを用いることがより好ましい。LEDを構成する化合物が発する光の波長が、約660nm前後であると、赤色に発色する。赤色LEDは、一般的に、イルミネーションやインジケーター、自動車のテール・ランプ、信号機など赤色に表示する部分の光源などに使われている。
【0025】
本発明で用いることができる赤色LEDの具体的な波長は、赤色に発色される範囲である限り特に限定されず、目的や用いる装置等の仕様によって、自由に設定することができる。例えば、波長600〜700nmの赤色LEDを用いることができる。
【0026】
本発明に係るシワ改善方法及びシワ改善機能向上方法において、波長405〜904nmの光を照射する態様は特に限定されず、波長405〜904nmの光を備えた機器等を皮膚に直接、接触させるような態様で照射してもよいし、前記機器等を皮膚から離れた所に設置し、照射してもよい。また、皮膚に対する、LED光の照射時間、照射する光の強さなども特に限定されない。例えば、照射1回分の照射条件として、照射時間:1〜80分、好ましくは5〜60分、照度:0.01〜200mW/cm、好ましくは1〜110mW/cm、照射強度:0.01〜200J/cm、好ましくは1〜140J/cm、に設定することができる。更に、LED光の照射回数も特に限定されないが、本発明では特に、1〜10回が好ましく、2〜8回がより好ましく、3〜6回が更に好ましい。加えて、LED光の照射頻度も特に限定されないが、本発明では特に、1〜3週間毎に照射することが好ましい。
【0027】
(2)塗布工程
本発明において、塗布工程とは、トコトリエノールを皮膚に塗布する工程である。
本発明に係るシワ改善方法及びシワ改善機能向上方法において、トコトリエノールを皮膚に塗布する態様は特に限定されず、例えば、化粧料などに含有させて皮膚に塗布することができる。
【0028】
トコトリエノールとは、トコフェロール(ビタミンE)の異性体の総称であって、麦類、米糠、パーム油などに含まれる天然由来の成分である。また、トコトリエノールには、α‐トコトリエノール、β‐トコトリエノール、γ‐トコトリエノール、δ‐トコトリエノールなどが存在する。本発明において、これらは単独若しくは2種以上の混合物として使用することができる。本発明において用いられるトコトリエノールは特に限定されないが、原料の入手し易さ及び精製時の純度の高さ、生体に対する安全性などの観点から、上記4種類のトコトリエノールの混合物であることが好ましい。
【0029】
本発明において、トコトリエノールの皮膚への塗布期間は特に限定されず、目的の効果や、光の照射回数や照射頻度などに応じて、自由に設定することができる。本発明では特に、1週間以上連続して塗布することが好ましく、2週間以上連続して塗布することがより好ましい。この場合、「連続して塗布する」とは、少なくとも皮膚上及び/又は皮膚内にトコトリエノールが留まるように塗布することを意味し、1日に1回〜複数回塗布したり、1〜数日置きに塗布したりする方法も包含する。
【0030】
2.シワ改善用化粧料、シワ改善機能向上用化粧料
本発明に係るシワ改善用化粧料は、波長405〜904nmの光照射前及び/又は照射後に塗布され、かつ、トコトリエノールを含有することを特徴とする。本発明に係るシワ改善用化粧料を、波長405〜904nmの光照射前及び/又は照射後に塗布することにより、優れたシワ改善効果を得ることが可能となる。
【0031】
また、本発明に係るシワ改善機能向上用化粧料は、波長405〜904nmの光照射によるシワ改善機能を向上させる化粧料であって、トコトリエノールを含有することを特徴とする。本発明に係るシワ改善機能向上用化粧料を、波長405〜904nmの光照射前及び/又は照射後に塗布することにより、優れたシワ改善効果を得ることが可能となり、また、波長405〜904nmの光の照射によるシワ改善効果をより向上させることが可能となる。
【0032】
本発明に係るシワ改善用化粧料又はシワ改善機能向上用化粧料(以下、両者を併せて「本発明に係る化粧料」ともいう)は、あらゆる形態の化粧料に適用することができる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディクリーム、日焼け止め化粧料、洗顔料等のスキンケア化粧料や、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、化粧用下地化粧料、白粉、コンシーラー、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料などに適用することができる。
【0033】
本発明に係る化粧料には、トコトリエノール以外にも、通常化粧料に用いることができる成分を、1種又は2種以上自由に選択して配合することが可能である。例えば、基剤、保存剤、乳化剤、着色剤、防腐剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、紫外線吸収剤、香料、防腐防黴剤、体質顔料、着色顔料、アルコール、多価アルコール、水、油剤、増粘剤、粉体、キレート剤、酵素、pH調整剤などの、化粧料分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0034】
また、本発明に係る化粧料に含有されるトコトリエノールは、上述したように天然由来の成分であるため、他の有効成分との併用を注意する必要性が低い。そのため、本発明に係る化粧料には、トコトリエノールに加え、他の有効成分を必要に応じて自由に配合することができる。例えば、抗酸化剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、紫外線防止剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、美白剤、活性酵素除去剤など、あらゆる有効成分を配合することができる。
【0035】
抗酸化剤の一例としては、ビタミンC及びその誘導体、カロチノイド、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ルチン及びその誘導体、グルタチオン及びその誘導体、スーパーオキサイドディスムターゼ、マンニトール、ケイケットウ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、トルメンチラ抽出物、ブドウ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)などが挙げられる。
【0036】
抗炎症剤の一例としては、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、イオウ及びその誘導体、アロエ抽出物、アシタバ抽出物、イラクサ抽出物、インチンコウ(カワラヨモギ)抽出物、ウコン抽出物、キハダ(オウバク)抽出物、オトギリソウ抽出物、カミツレ抽出物、コンフリー(ヒレハリソウ)抽出物、スイカズラ(キンギンカ)抽出物、クレソン抽出物、サルビア(セージ)抽出物、ワレモコウ(ジユ)抽出物、シソ抽出物、シラカバ抽出物、ニワトコ抽出物、ガマ(ホオウ)抽出物、ムクロジ抽出物、ユーカリ抽出物、ヨモギ抽出物、レンゲソウ抽出物、クマザサ抽出物、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0037】
細胞賦活剤の一例としては、カフェイン、鶏冠抽出物、貝殻抽出物、貝肉抽出物、ローヤルゼリー、シルクプロテイン及びその分解物又はそれらの誘導体、ラクトフェリン又はその分解物、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類又はそれらの塩、コラーゲン、酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、醗酵代謝抽出物、イチョウ抽出物、オオムギ抽出物、センブリ抽出物、タイソウ抽出物、ニンジン抽出物、グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸ビタミンA及びその誘導体、アスパラガス抽出物、ダイズ抽出物、ナツメ(タイソウ)抽出物、ニンニク抽出物、ブナノキ抽出物、微生物醗酵代謝産物、霊芝抽出物などが挙げられる。
【0038】
紫外線防止剤の一例としては、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸ナトリウム、4−t−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン、2−フェニ
ル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、酸化チタン、酸化亜鉛、オキシベンゾン及びその誘導体、微粒子酸化チタン及び微粒子酸化亜鉛などが挙げられる。酸化チタン、酸化亜鉛などの無機粉体は、微粒子のものを用いるとより高い効果が発揮される。
【0039】
保湿剤の一例としては、エラスチン、ケラチン等のタンパク質又はそれらの誘導体、加水分解物並びにそれらの塩、グリシン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、テアニン等のアミノ酸及びそれらの誘導体、ソルビトール、エリスリトール、トレハロース、イノシトール、グルコース、蔗糖及びその誘導体、デキストリン及びその誘導体、ハチミツ等の糖類、D−パンテノール及びその誘導体、尿素、リン脂質、セラミド、オウレン抽出物、ショウブ抽出物、ジオウ抽出物、センキュウ抽出物、ゼニアオイ抽出物、タチジャコウソウ抽出物、ドクダミ抽出物、ハマメリス抽出物、ボダイジュ抽出物、マロニエ抽出物、マルメロ抽出物などが挙げられる。
【0040】
血行促進剤の一例としては、ユズ抽出物、アルニカ抽出物、トウガラシチンキ、ショウブ抽出物、γ−オリザノールなどが挙げられる。
【0041】
抗菌剤の一例としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノールなどが挙げられる。
【0042】
美白剤の一例としては、アスコルビン酸又はその誘導体、アルブチン、エラグ酸、リノール酸、グリチルリチン酸及びその誘導体、トラネキサム酸、胎盤抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物、エイジツ抽出物、オウゴン抽出物、海藻抽出物、クジン抽出物、ケイケットウ抽出物、ゴカヒ抽出物、コメヌカ抽出物、小麦胚芽抽出物、サイシン抽出物、サンザシ抽出物、サンペンズ抽出物、シラユリ抽出物、シャクヤク抽出物、センプクカ抽出物、大豆抽出物、茶抽出物、糖蜜抽出物、ビャクレン抽出物、ブドウ抽出物、ホップ抽出物、マイカイカ抽出物、モッカ抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー抽出物などが挙げられる。
【0043】
活性酸素除去剤の一例としては、過酸化脂質生成抑制等の作用を有しているものであれば自由に選択して用いることができるが、例えば、スーパーオキサイドディスムターゼ、マンニトール、クエルセチン、カテキン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、ボタンピ抽出物、ヤシャジツ抽出物、メリッサ抽出物、羅漢果抽出物、レチノール及びその誘導体、カロチノイド等のビタミンA類、チアミン及びその誘導体、リボフラビン及びその誘導体、ピリドキシン及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体等のビタミンB類、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
【0044】
本発明に係る化粧料において、トコトリエノールの配合量は特に限定されず、適宜自由に設定することが可能であるが、0.01質量%以上10質量%以下含有させることが好ましく、0.05質量%以上1質量%以下含有させることがより好ましい。この範囲内であればシワ改善効果を十分に発揮することができる。
【0045】
本発明に係る化粧料は、天然由来の成分であるトコトリエノールを主として含有する化粧料であるため、安全性が高く、長期間、連続的な使用も可能である。
【0046】
3.塗布方法
本発明に係る塗布方法は、本発明に係るシワ改善用化粧料又は本発明に係るシワ改善機能向上用化粧料を皮膚に塗布する方法であって、少なくとも2週間以上連続して塗布することを特徴とする。本発明に係る塗布方法を用いることにより、本発明に係る化粧料を使用した際に、より効果的にシワを改善することが可能となる。「2週間連続して塗布する」とは、少なくとも皮膚上及び/又は皮膚内にトコトリエノールが少なくとも2週間留まるように塗布することを意味し、1日に1回〜複数回塗布したり、1〜数日置きに塗布したりする方法も包含する。
【0047】
本発明に係る塗布方法は、本発明に係る化粧料を少なくとも2週間連続して塗布することが必要であるが、それ以上の期間、本発明に係る化粧料を連続して塗布することも可能である。本発明に係る化粧料は、上述したように、天然由来の成分であるトコトリエノールを主として含有する化粧料であるため、安全性が高く、長期間、連続的な使用にも優れている。
【0048】
本発明に係る塗布方法では、本発明に係る化粧料を少なくとも2週間以上連続して塗布すれば、波長405〜904nmの光照射との前後関係は特に限定されない。例えば、本発明に係る化粧料を2週間連続塗布している間に波長405〜904nmの光照射を必要回数行う方法、本発明に係る化粧料を2週間連続して塗布した後に波長405〜904nmの光照射を行う方法、波長405〜904nmの光照射を行った後に本発明に係る化粧料を2週間連続して塗布する方法、これらの方法を組み合わせて行う方法、など自由に設定することができる。
【0049】
4.トコトリエノールの使用、シワ改善用化粧料又はシワ改善機能向上用化粧料の使用
本発明に係るトコトリエノールの使用は、シワ改善のための波長405〜904nmの光照射前及び/又は照射後において、トコトリエノールを使用することを特徴とする。また、本発明に係る化粧料の使用は、シワ改善のための波長405〜904nmの光照射前及び/又は照射後において、本発明に係るシワ改善用化粧料又は本発明に係るシワ改善機能向上用化粧料を使用することを特徴とする。本発明に係るこれらの使用により、波長405〜904nmの光の照射とトコトリエノールの相乗効果による優れたシワ改善効果を得ることが可能となる。
【0050】
5.シワ改善用化粧料の製造方法
本発明に係る製造方法は、波長405〜904nmの光照射前及び/又は照射後に塗布される、シワ改善用化粧料の製造方法であって、少なくともトコトリエノールを添加する添加工程を行うことを特徴とする。
【0051】
本発明に係る製造方法において、添加工程を行う時点は特に限定されない。また、添加工程においては、トコトリエノールのみを添加してもよいし、上述したような通常化粧料に用いることができる成分或いは他の有効成分などを、1種又は2種以上自由に選択して適宜添加することも可能である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0053】
1.実験例1:シワ改善効果の検討
(1)試験方法
本実験では、波長405〜904nmの光の一例として、赤色LEDから発せられる赤色光を用いた。赤色LED光が照射可能な装置(装置名称:Omnilux Revive、波長:633nm)を用い、20分間で126J/cmの光の強さにて、図1に示すように、2週間おきに、計5回、18人の被験者の全顔に赤色LED光を照射した。なお、前記装置による赤色LED光の照射は、被験者の皮膚から3〜5cm程度離れた距離から行った。初回照射後より、下記の方法にて調製したトコトリエノール製剤を、被験者の半顔のみに朝晩2回、毎日塗布し、もう一方の半顔には何も塗布しなかった。さらに、赤色LED光5回照射後も、トコトリエノール製剤を2ヶ月間連続して塗布した。
【0054】
なお、トコトリエノール製剤は、下記の処方を用いて、下記の製造方法にて調製したものを用いた。
<処方>
(成分):(質量%)
1.水素添加大豆リン脂質:0.8
2.コレステロール:0.2
3.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン:1
4.グリセリン:10
5.1,3−ブチレングリコール:10
6.パラオキシ安息香酸メチル:0.1
7.流動パラフィン:5
8.ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル:3
9.ジメチルポリシロキサン(注1):0.5
10.セトステアリルアルコール:2
11.トコトリエノール(注2):0.3
12.カルボマー (注3):0.1
13.(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー (注4):0.1
14.水酸化ナトリウム:0.06
15.エタノール:10
16.精製水:残量
注1:KF−96A−100CS(信越化学工業社製)
注2:トリコット92(エーザイ社製、トコトリエノール純度:70%)
注3:CARBOPOL980(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
注4:CARBOPOL1382(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
<製造方法>
A:成分1〜5を80℃で均一に混合した。
B:成分6〜11を80℃で均一に混合した。
C:AにBを添加し、均一に混合した。
D:Cに成分12〜16を添加し、均一に混合して、トコトリエノール製剤を得た。
【0055】
(2)評価
シワ改善効果の評価は、赤色LED光の照射と本発明に係るシワ改善用化粧料の相乗効果を検証するため、図1に示すように、初回照射前、3回目の照射前及び5回目の照射後2週間後に、また、シワ改善効果の持続性を比較するため、更にその後、1ヶ月後及び2ヶ月後に行った。
【0056】
具体的には、被験者を座位にて軽く眼を閉じた安静な状態にし、レプリカ剤(SILFLO(Flexico Developments製、英国))を用いて、目尻から眼下にかけてのレプリカを採取した。採取したレプリカについて、解析用測定機器(PRIMOS(GFMesstechnik社製)を用いて、総シワ平均深さ(μm)、最大シワ平均深さ(μm)、シワ体積(mm)及び表面粗さ(μm)の全4項目を測定した。
【0057】
また、3回目の照射前及び5回目の照射後2週間後、更にその後、1ヶ月後、及び2ヶ月後に、被験者へ効果感・満足度のアンケート調査を実施することで、主観的なシワ・毛穴に対する治療効果や効果の持続性を調査した。
【0058】
(3)結果
上記試験方法にて得られた測定結果(被験者18人の平均値)を図2〜5に示す。図2〜5は、それぞれ、総シワ平均深さ(μm)、最大シワ平均深さ(μm)、シワ体積(mm)及び表面粗さ(μm)の各項目について、赤色LED光照射のみを行った部位の測定結果(グラフ中「無」で示す)と、赤色LED光照射に加えてトコトリエノール製剤を塗布した部位の測定結果(グラフ中「有」で示す)とを比較したグラフである。また、被験者から得られた効果感の結果を図6に示す。
【0059】
(4)考察
トコトリエノール製剤を塗布した部位と塗布しなかった部位とを比較すると、トコトリエノール製剤を塗布した部位の方が、塗布しなかった部位と比較して、いずれの項目においても赤色LED光照射開始時点よりも、各値が減少傾向にあることが判明した。t検定を用いて解析した結果、特に、最大シワ平均深さ(μm)、シワ体積(mm)及び表面粗さ(μm)の項目について、有意な差が認められた。また、最大シワ平均深さ(μm)及びシワ体積(mm)については5回目の照射後2週間後から、表面粗さ(μm)については1ヶ月後から、有意な差が認められた。以上の結果から、赤色LED光の照射のみに比べ、トコトリエノールを塗布することにより、そのシワ改善効果が相乗的に高まることが明らかとなった。
【0060】
図6に示す通り、被験者の効果感アンケートでは、赤色LED光照射のみにおいても「わずかに目立たなくなった」という効果感は高く得られるものの、「やや目立たなくなった」という効果感は、赤色LED光照射のみに比べ、トコトリエノール製剤の塗布を併用した方が、明らかに多くの評価が得られた。また、トコトリエノール製剤の塗布を併用した方では、「あきらかに目立たなくなった」という効果感が得られた被験者もいたが、赤色LED光照射のみでは全く得られなかった。
【0061】
2.実験例2:相乗効果の検討
(1)試験方法
トコトリエノール製剤のみを4週間塗布した場合(トコトリエノール単独群)、赤色LED光の照射のみを4週間行った場合(赤色LED単独群)、トコトリエノール製剤の塗布及び赤色LED光の照射を4週間行った場合(併用群)について、その効果の差を検証した。具体的には、各群7人の被検者について、トコトリエノール製剤の塗布及び/又は赤色LED光の照射を行った。なお、トコトリエノール製剤の処方、赤色LED光照射の装置及び照射条件は、実験例1と同様である。
【0062】
(2)評価
各群について、試験開始前及び試験終了後(4週間後)において、実験例1と同様にレプリカを採取した。採取したレプリカについて、パターン投影式3次元測定器(商品名「PRIMOS PICO」GFMesstechnik社製)を用いて、総シワ平均深さ(μm)、最大シワ平均深さ(μm)、シワ体積(mm)及び表面粗さ(μm)の全4項目を測定した。
【0063】
(3)結果
上記試験方法にて得られた測定結果(被験者7人の平均値)について、試験開始前と試験終了後(4週間後)との変化量を算出した。各項目について算出した変化量を、図7〜10にそれぞれ示す。
【0064】
(4)考察
図7〜10に示す通り、トコトリエノール製剤の塗布及び赤色LED光の照射を行った併用群は、全ての項目において、トコトリエノール単独群及び赤色LED単独群の相加効果以上の効果、即ち、相乗効果を確認することができた。例えば、図9に示すように、シワ体積については、トコトリエノール単独群の変化量と赤色LED単独群の変化量を足したとしても、−0.25程度であるが、実際にトコトリエノール製剤の塗布及び赤色LED光の照射を行った併用群は、−0.36の変化量であった。
【0065】
以上の結果から、トコトリエノール製剤の塗布及び赤色LED光の照射を併用することにより、トコトリエノール製剤の単独塗布や、赤色LED光の単独照射から想定される効果以上のシワ改善効果が発揮されることが証明された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10