(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6666437
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】石油から金属を除去する方法
(51)【国際特許分類】
C10G 31/08 20060101AFI20200302BHJP
C10G 31/06 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
C10G31/08
C10G31/06
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-519392(P2018-519392)
(86)(22)【出願日】2016年10月12日
(65)【公表番号】特表2018-534396(P2018-534396A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】US2016056571
(87)【国際公開番号】WO2017066269
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2018年6月5日
(31)【優先権主張番号】14/885,315
(32)【優先日】2015年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,キ−ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】シャフェイ,エマド,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】プネタ,アショク,ケー.
(72)【発明者】
【氏名】リー,チュ−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】アラブドゥラー,モハンマド,エー.
【審査官】
森 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−080750(JP,A)
【文献】
特開2007−084753(JP,A)
【文献】
特開2008−088383(JP,A)
【文献】
特表2011−504966(JP,A)
【文献】
特表2014−532780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プロセスにおいて使用するための石油供給原料から金属不純物を除去する方法であって、
前記金属不純物を含み、150℃の供給原料温度および水の臨界圧よりも高い供給原料圧力まで加熱された加熱供給原料と、水の臨界温度を上回る水温および水の臨界圧を上回る水圧まで加熱される加熱水流と、を混合装置内で混合して、混合流を生成するステップであって、
前記混合流が、アスファルテンと樹脂部分、炭化水素部分および超臨界水部分を含む、ステップと、
外部から供給された水素および外部から供給された酸化剤がない状態で、前記混合流を超臨界水反応器に導入して、精製石油部分およびある量の固体コークスを含む反応器流出物を生成するステップであって、脱金属反応により、前記金属不純物を、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物、またはこれらの組み合わせを含む変換金属に変換し、アップグレーディング、脱硫、脱窒、脱酸素、クラッキング、異性化、アルキル化、縮合、二量体化、加水分解、水和、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される変換反応により、前記超臨界水部分の存在下で前記炭化水素部分を精製して前記精製石油部分を生成するステップと、
前記反応器流出物を冷却装置内で冷却して冷却流を生成するステップと、
前記アスファルテンと樹脂部分および前記変換金属を含むスラッジ留分を前記冷却流から分離して、脱スラッジ流を生じるように構成された、リジェクタ温度を有するリジェクタに、前記冷却流を供給するステップと、
減圧装置内の前記脱スラッジ流の圧力を低下させて、減圧生成物を生成するステップと、
気液分離器内の前記減圧生成物を分離して、気相生成物および液体生成物を生成するステップと、
油水分離器内の前記液体生成物を分離して、ある液収率を有し、前記石油供給原料と比べてアスファルテン含有量が減少し、金属不純物の濃度が低下し、かつ硫黄が減少した石油生成物と、水生成物とを生成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記石油供給原料が、全範囲原油、抜頭原油、燃料油、製油所流、製油所流からの残油、原油精製所からの分解生成物流、常圧残油流、減圧残油流、石炭由来の炭化水素、液化石炭、ビチューメン、バイオマス由来の炭化水素および他の石油化学プロセスからの炭化水素流からなる群から選択される石油系炭化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属不純物が、バナジウム、ニッケル、鉄およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属不純物が金属ポルフィリンを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記リジェクタがリジェクタ吸着材を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リジェクタがリジェクタ溶剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記リジェクタが、サイクロン型容器、管状型容器、CSTRおよび遠心分離機からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応器流出物中の固体コークスの量が、石油供給原料の1.5重量%未満である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記石油生成物中の金属不純物の濃度が2重量ppm未満である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記石油生成物の前記液収率が96%よりも高い、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
発電プロセスにおいて使用するための石油供給原料から金属不純物を除去する方法であって、
前記金属不純物を含み、150℃の供給原料温度および水の臨界圧よりも高い供給原料圧力まで加熱された加熱供給原料と、水の臨界温度を上回る水温および水の臨界圧を上回る水圧まで加熱される加熱水流と、を混合装置内で混合して混合流を生成するステップであって、
前記混合流が、アスファルテンと樹脂部分、炭化水素部分および超臨界水部分を含む、ステップと、
外部から供給された水素および外部から供給された酸化剤がない状態で、前記混合流を超臨界水反応器に導入して、精製石油部分を含む反応器流出物を生成するステップであって、脱金属反応により、前記金属不純物を、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物、またはこれらの組み合わせを含む変換金属に変換し、アップグレーディング、脱硫、脱窒、脱酸素、クラッキング、異性化、アルキル化、縮合、二量体化、加水分解、水和、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される変換反応により、前記超臨界水部分の存在下で前記炭化水素部分を精製して前記精製石油部分を生成するステップと、
前記反応器流出物を冷却装置内で冷却して冷却流を生じるステップと、
減圧装置内の前記冷却流の圧力を低下させて、前記精製石油部分、アスファルテン留分、水留分および気相生成物留分を含む減圧流を生成するステップと、
気液分離器内の前記減圧流を分離して、気体生成物および液相流を生成するステップと、
油水分離器内の前記液相流を分離して、液相石油流および水相流を生成するステップと、
前記液相石油流を溶剤抽出器に供給するステップと、
前記石油供給原料と比べてアスファルテン含有量が減少し、金属不純物の濃度が低下し、かつ硫黄が減少した石油生成物を、前記溶剤抽出器内の前記液相石油流から抽出して、金属含有留分を残すステップと
を含む方法。
【請求項12】
前記石油供給原料が、全範囲原油、抜頭原油、燃料油、製油所流、製油所流からの残油、原油精製所からの分解生成物流、常圧残油流、減圧残油流、石炭由来の炭化水素、液化石炭、ビチューメン、バイオマス由来の炭化水素および他の石油化学プロセスからの炭化水素流からなる群から選択される石油系炭化水素である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記金属不純物が、バナジウム、ニッケル、鉄およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属不純物が金属ポルフィリンを含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶剤抽出器において溶剤脱れきプロセスが実施される、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応器流出物中の固体コークスの量が、石油供給原料の1.5重量%未満である、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記石油生成物中の金属不純物の濃度が2重量ppm未満である、請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油系炭化水素流から金属を除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油などの石油系炭化水素は、特定の溶剤に対する溶解度に基づいて、4つの留分(飽和化合物、芳香族化合物、樹脂およびアスファルテン)に分離することができる。アスファルテンは、n−アルカン、特に、n−ヘプタンに溶けない留分と定義される。他の留分はn−アルカンに溶け、マルテンと呼ばれる。
【0003】
例えば、金属、硫黄、水素、炭素を含む、石油系炭化水素中の多くの不純物、およびこれらの不純物を含む成分が存在する。金属は主として樹脂留分およびアスファルテン留分に濃縮され、残りの留分は少量の金属を含み得る。バナジウム、ニッケルおよび鉄が原油中で最も多く見られる金属である。一般に、アスファルテン留分は、樹脂留分よりもバナジウムの濃度が高い。
【0004】
石油系炭化水素中に見られる金属は、精製プロセスおよび石油化学生産プロセスなどの他の下流のプロセスにおいて重大な問題を引き起こす可能性がある。例えば、ガソリンおよびディーゼル油などの製品を精製するために、精製品の仕様を満たす目的で原油の処理を促進させるために一般に使用される精製触媒を金属化合物は毒する。炭化水素系液体燃料中の金属化合物、特にバナジウムは、炭化水素燃焼プロセス、例えば発電プロセスにおいて使用されるものにおいて腐食の問題を引き起こす可能性がある。ガスタービンを用いる炭化水素燃焼プロセスにおいて、ガスタービン向けの液体燃料中のバナジウム化合物は、ガスタービンの金属部品を激しく腐食させる恐れのある酸化バナジウムを生成する可能性がある。
【0005】
炭化水素関連石油流中の金属の存在に対処する現在の方法には、炭化水素関連石油流と共に注入される添加剤の使用と、発電プロセス内の流れを使用する前に金属を除去する処理ステップとが含まれる。1つの用途では、燃焼器内のバナジウム化合物を捕集するために添加剤が注入される。添加剤はバナジウム化合物の腐食効果を抑制する。添加剤は、ある程度有効であるが金属化合物を除去できないため、金属の存在による腐食を完全に防ぐことはできない。
【0006】
従来の処理ユニットにおいて、金属化合物は、原油自体、または残油流のような製油所流などの原油の派生物から除去される。従来の水素化処理システムにおいて、金属化合物の除去は、触媒の存在下で水素が供給される水素化処理ユニットによって実現される。金属化合物は、水素との反応を通じて分解し、次いで、触媒上に堆積する。実務ではほとんど、運転期間の後に使用済み触媒を処分することができる。触媒を必要とする従来の水素化処理システムの不利な点のうちの1つは、バナジウムおよびニッケルなどの金属が堆積した使用済み触媒を再生することがほぼ不可能だということである。従来の水素化処理は、相当量の金属を炭化水素流から除去することができるが、このプロセスは、膨大な量の水素および触媒を消費する。短い触媒寿命および膨大な水素消費量は、水素化処理システムの運転に関連するコストに大きく寄与する。運転コストと関連する水素化処理ユニットの建設に必要な多額の資本支出によって、このような複雑なプロセスを液体燃料の前処理ユニットとして発電プラントが採用することが困難になる。
【0007】
石油系炭化水素から金属を除去するために使用することができる別のプロセスは溶剤抽出プロセスである。このような溶剤抽出プロセスの1つは溶剤脱れき(SDA)プロセスである。SDAプロセスは、重質残油中に存在するアスファルテンのすべてまたは一部を排除して、脱れき油(DAO)を生成することができる。アスファルテンを排除することにより、DAOは、フィード重質残油よりも少ない量の金属を含む。高度な金属の除去は液収率が犠牲になる。例えば、SDAプロセスでは、原油からの常圧残油の金属含有量を129重量百万分率(重量ppm)から3重量ppmまで減少させることが可能である。しかし、脱金属流の液収率はわずか約75体積パーセント(vol%)である。
【0008】
金属は、水素に対する炭素の比が他の部分よりも高い石油生成物の特定の部分に濃縮され得る。例えば、コークスまたはコークスと同様の部分は、高濃度の金属を含むことが多い。具体的には、コークス化条件下、一般に高温の超臨界水で重油が処理されるとき、バナジウムがコークスに濃縮され得る。コークス生成は液相油生成物から金属を除去するのに有益であり得るが、プロセスラインがコークスで詰まり、コークスの量の増加と共に液収率が低下するという、コークスに起因する問題が存在する。
【0009】
超臨界水は、アップグレーディングおよび脱金属などの特定の反応の目的のために石油を処理するための反応媒体として適したものとなる特有の特性を有する。超臨界水は、水の臨界温度を上回り、水の臨界圧を上回る水である。水の臨界温度は摂氏373.946度(℃)である。水の臨界圧は22.06メガパスカル(MPa)である。希釈剤として働く超臨界水は、水素の外部供給がなくてもコークス生成を防ぐ。超臨界水が媒介する石油プロセスの基本的な反応機構はラジカル反応機構と同じである。熱エネルギーが、化学結合の切断によってラジカルを生じる。次いで、超臨界水が「かご効果」を生み出し、それによってラジカルは超臨界水に取り囲まれるため、互いに容易に反応できない。かご効果は、重質油熱分解装置などの従来の熱分解プロセスと比べて、超臨界水プロセスのコークス生成を減少させる。「コークス」は一般に、石油中に存在する、トルエンに不溶な材料と定義される。
【0010】
樹脂留分およびアスファルテン留分中に存在する金属の大部分は、ポルフィリン型の化合物として存在することが既知であり、金属は、配位共有結合によって窒素に結合される。金属化合物の他の形態はよく確認されていないが、少なくともいくつかの金属化合物がキレート型の化合物として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
石油系炭化水素から金属を除去する一方で、高い液収率を実現することができる方法が望まれている。金属を除去する一方で、コークス生成を減少させ、気相生成物の発生を最小限に抑え、液収率を向上させる方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、炭化水素系石油から金属を除去するための装置および方法に関する。さらに具体的には、本発明は、炭化水素中の金属化合物を、液相炭化水素生成物から除去することができる特定の金属化合物に変換するための装置および方法に関する。
【0013】
本発明の第1の態様において、発電プロセスにおいて使用するための石油供給原料から金属不純物を除去する方法が提供される。本方法は、金属不純物を含み、150℃の供給原料温度および水の臨界圧よりも高い供給原料圧力まで加熱された加熱供給原料と、水の臨界温度を上回る水温および水の臨界圧を上回る水圧まで加熱された加熱水流とを混合装置内で混合して、混合流を生じるステップであって、その混合流が、アスファルテンと樹脂部分、炭化水素部分および超臨界水部分を含むステップと、外部から供給された水素および外部から供給された酸化剤がない状態で、混合流を超臨界水反応器に導入して、精製石油部分およびある量の固体コークスを含む反応器流出物を生成するステップであって、脱金属反応が、金属不純物を変換金属に変換するように操作可能であり、1組の変換反応が、超臨界水部分の存在下で炭化水素部分を精製して精製石油部分を生成するように操作可能であるステップと、反応器流出物を冷却装置内で冷却して冷却流を生成するステップと、アスファルテンと樹脂部分および変換金属を含むスラッジ留分を冷却流から分離して、脱スラッジ流を生成するように構成された、リジェクタ温度を有するリジェクタに冷却流を供給するステップと、減圧装置内の脱スラッジ流の圧力を低下させて減圧生成物を生成するステップと、気液分離器内の減圧生成物を分離して、気相生成物および液体生成物を生成するステップと、油水分離器内の液体生成物を分離して、ある液収率を有し、石油供給原料と比べてアスファルテン含有量が減少し、金属不純物の濃度が低下し、かつ硫黄が減少した石油生成物と、水生成物とを生成するステップとを含む。
【0014】
本発明の特定の態様において、石油供給原料は、全範囲原油、抜頭原油、燃料油、製油所流、製油所流からの残油、原油精製所からの分解生成物流、常圧残油流、減圧残油流、石炭由来の炭化水素、液化石炭、ビチューメン、バイオマス由来の炭化水素および他の石油化学プロセスからの炭化水素流からなる群から選択される石油系炭化水素である。本発明の特定の態様において、金属不純物は、バナジウム、ニッケル、鉄およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の特定の態様において、金属不純物は金属ポルフィリンを含む。本発明の特定の態様において、変換反応の組は、アップグレーディング、脱硫、脱窒素、脱酸素、クラッキング、異性化、アルキル化、縮合、二量体化、加水分解、水和およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の特定の態様において、リジェクタはリジェクタ吸着材を含む。本発明の特定の態様において、リジェクタはリジェクタ溶剤を含む。本発明の特定の態様において、リジェクタは、サイクロン型容器、管状型容器、CSTRおよび遠心分離機からなる群から選択される。本発明の特定の態様において、反応器流出物中の固体コークスの量は、石油供給原料の1.5重量パーセント(wt%)未満である。本発明の特定の態様において、石油生成物中の金属不純物の濃度は2重量ppm未満である。本発明の特定の態様において、石油生成物の液収率は96パーセント(%)よりも高い。
【0015】
本発明の第2の態様において、発電プロセスにおいて使用するための石油供給原料から金属不純物を除去する方法が提供される。本方法は、金属不純物を含み、150℃の供給原料温度および水の臨界圧よりも高い供給原料圧力まで加熱された加熱供給原料と、水の臨界温度を上回る水温および水の臨界圧を上回る水圧まで加熱された加熱水流と、を混合装置内で混合して、混合流を生じるステップであって、混合流が、アスファルテンと樹脂部分、炭化水素部分および超臨界水部分を含むステップと、外部から供給された水素および外部から供給された酸化剤がない状態で、混合流を超臨界水反応器に導入して、精製石油部分を含む反応器流出物を生成するステップであって、脱金属反応が、金属不純物を変換金属に変換するように操作可能であり、1組の変換反応が、超臨界水部分の存在下で炭化水素部分を精製して、精製石油部分を生成するように操作可能であるステップと、反応器流出物を冷却装置内で冷却して冷却流を生成するステップと、減圧装置内の冷却流の圧力を低下させて、精製石油部分、アスファルテン留分、水留分および気相生成物留分を含む減圧流を生成するステップと、気液分離器内の減圧流を分離して、気体生成物および液相流を生成するステップと、油水分離器内の液相流を分離して、液相石油流および水相流を生じるステップと、液相石油流を溶剤抽出器に供給するステップと、石油供給原料と比べてアスファルテン含有量が減少し、金属不純物の濃度が低下し、かつ硫黄が減少した石油生成物を、溶剤抽出器内の液相石油流から抽出して金属含有留分を残すステップとを含む。
【0016】
本発明の特定の態様において、石油供給原料は、全範囲原油、抜頭原油、燃料油、製油所流、製油所流からの残油、原油精製所からの分解生成物流、常圧残油流、減圧残油流、石炭由来の炭化水素、液化石炭、ビチューメン、バイオマス由来の炭化水素および他の石油化学プロセスからの炭化水素流からなる群から選択される石油系炭化水素である。本発明の特定の態様において、金属不純物は、バナジウム、ニッケル、鉄およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の特定の態様において、金属不純物は金属ポルフィリンを含む。本発明の特定の態様において、変換反応の組は、アップグレーディング、脱硫、脱窒素、脱酸素、クラッキング、異性化、アルキル化、縮合、二量体化、加水分解、水和およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の特定の態様において、溶剤抽出器は溶剤脱れきプロセスを含む。本発明の特定の態様において、反応器流出物中の固体コークスの量は、石油供給原料に基づいて1.5重量%未満である。本発明の特定の態様において、石油生成物中の金属不純物の濃度は2重量ppm未満である。
【0017】
これらおよび他の本発明の特徴、態様および利点は、以下の説明、特許請求の範囲および添付図面を参照することでよりよく理解されるであろう。しかし、図面は、本発明のいくつかの実施形態のみを示しており、したがって、本発明の範囲は、等しく効果的な他の実施形態が認められるため、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による炭化水素供給原料をアップグレードする方法の一実施形態のプロセス図である。
【
図2】先行技術による混合ユニットのある実施形態のブロック図である。
【
図3】本発明による連続ミキサーのある実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な説明は、例示の目的のために多くの特定の詳細を含むが、以下の詳細の多くの例、変形および改変が本発明の範囲内および趣旨内であることを当業者なら理解するであろうことが理解される。したがって、本明細書に記述され、添付図面に記載される本発明の例示的な実施形態は、特許請求の範囲に記載の発明に関して、一般性を失うことなく、制限を加えることなく記載される。
【0020】
本発明は、水素を使用せずに、石油系炭化水素から除去することがより容易な金属化合物に金属不純物を変換する超臨界水を使用して、石油系炭化水素流から金属不純物を除去する方法に関する。「脱金属」は、油相から触媒表面(水素化脱金属プロセス中)および水(超臨界水プロセス中)を含む非油相に金属化合物を除去するプロセスならびにスラッジプロセスを指すが、本明細書において用いられる脱金属は、スラッジを生成する濃縮プロセスを任意選択で含む超臨界水プロセスを指す。
【0021】
本発明は、石油から金属を除去する方法を提供する。脱金属流は、コーカーユニット内などの発電プロセス内で、または水素化分解装置および流動接触分解装置などの従来の精製プロセス内で使用することができる。発電プロセスは、ガスタービンを含むものを含む。ガスタービンは、気体燃料または液体燃料のいずれかを用いて使用することができる。したがって、脱金属流は、ガスタービン用の液体燃料にすることができる。本発明は、石油系炭化水素流から金属化合物を除去する一方、同時に石油系炭化水素流をアップグレードして、密度がより低く、硫黄含有量がより低く、アスファルテン含有量がより低く、かつAPI比重が増加した石油生成物流を生じる方法を提供する。本明細書において用いられるとき、「金属化合物」、「金属」または「金属不純物」は、有機金属化合物を指し、無機金属化合物を対象に含まない。無機金属化合物は、酸化鉄および酸化銅、ならびに銅金属粉末のような金属粉末を含む。無機金属化合物は典型的には、物理的なフィルタによって除去することができる。無機金属化合物はノズルを詰まらせる可能性があるため、プロセス内のノズルを通じて注入される前に炭化水素系石油流から無機化合物を除去するために、このような物理的なフィルタを反応器の上流に設置することができる。有機金属化合物は、金属原子が化学結合によって有機分子内に含まれている金属化合物である。有機金属化合物は物理的なフィルタによって除去することができない。有機金属化合物は超臨界水中で分解することができる。例えば、バナジウムポルフィリンは、400℃を上回る温度でフリーラジカル反応により分解することが既知である。超臨界水中の分解反応の結果生成される金属化合物は、酸化物および水酸化物の形態を含む様々な化学構造を有することができる。本発明の特定の実施形態において、金属不純物の濃度が低下した得られる石油生成物は、発電プロセスにおいて、例えば、ガスタービン向けの液体石油燃料として使用することができる。特定の実施形態において、本発明は、外部から供給された酸化剤がなく、かつ外部から供給された水素がない状態で超臨界水を利用して、石油系液体燃料中に含まれる金属炭化水素を変換する方法を開示する。金属炭化水素は、超臨界水の存在下で金属化合物に分解または変換され、この変換は、金属化合物の除去を容易にして、より少ない金属を含む油生成物を生成する。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、変換金属を除去する方法は、変換金属化合物(金属生成物)が油生成物相から分離される分離ステップを用いる。分離ステップは、抽出、吸着、遠心処理、濾過およびこれらの組み合わせを用いて実施される。本発明の特定の実施形態において、金属を除去する方法は、脱金属された油生成物に水素を付加する接触水素化ステップを含み、これは、製品燃料の熱量を増加させることができる。本発明の特定の実施形態において、金属を除去する方法は、炭化水素から水素を生成する超臨界水ガス化を含むことができる。
【0023】
図1を参照すると、石油供給原料から金属不純物を除去するためのプロセスが記載されている。石油供給原料105は、石油ポンプ5を通じて石油予熱器10に移される。石油ポンプ5は石油供給原料105の圧力を高め、加圧供給原料110を生じる。石油供給原料105は、石油系液体燃料を含む、炭化水素変換反応の恩恵を受けるであろう石油系炭化水素の任意の源にすることができる。例示的な石油系炭化水素源には、全範囲原油、抜頭原油、燃料油、製油所流、製油所流からの残油、原油精製所からの分解生成物流、常圧残油流、減圧残油流、石炭由来の炭化水素、液化石炭、ビチューメン、バイオマス由来の炭化水素および他の石油化学プロセスからの炭化水素流が含まれる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、石油供給原料105は全範囲原油である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、石油供給原料105は燃料油である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、石油供給原料105は常圧残油流である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、石油供給原料105は減圧残油流である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、他の石油化学プロセスは、デカント油の炭化水素流を生じるプロセスを含む。
【0024】
加圧供給原料110は供給原料圧力を有する。加圧供給原料110の供給原料圧力は、水の臨界圧よりも高い圧力であり、あるいは23MPaよりも高く、あるいは約23MPaから約30MPaの間である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加圧供給原料110の圧力は25MPaである。
【0025】
石油予熱器10は加圧供給原料110の温度を高め、加熱供給原料135を生じる。石油予熱器10は、加圧供給原料110を供給原料温度まで加熱する。加熱供給原料135の供給原料温度は、300℃未満の温度であり、あるいは約30℃から300℃の間の温度まで、あるいは30℃から150℃の間、あるいは50℃から150℃の間の温度までである。350℃を上回る温度は、加熱供給原料135中で石油のコークス化の原因となる。加熱供給原料135の温度を350℃未満に保つと、反応器の上流の供給原料を加熱するステップにおいてコークスの生成が少なくなり、場合によってはなくなる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加熱供給原料135の供給原料温度を約150℃以下に保つと、加熱供給原料135においてコークスの生成がなくなる。さらに、石油系炭化水素流の350℃までの加熱は、可能ではあるが重い加熱装置を必要とする一方、150℃までの加熱は、熱交換器内で蒸気を使用して実現することができる。
【0026】
水流115が水ポンプ15に供給されて、加圧水流120を生じる。加圧水流120は、ある水圧を有する。加圧水流120の水圧は、水の臨界圧よりも高い圧力であり、あるいは約23MPaよりも高く、あるいは約23MPaから約30MPaの間である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加圧水流120は約25MPaである。加圧水流120が水予熱器20に供給されて、加熱水流130を生じる。
【0027】
水予熱器20は、加圧水流120をある水温まで加熱して、加熱水流130を生じる。加圧水流120の水温は、水の臨界温度を上回る温度、あるいは約374℃から約600℃の間、あるいは約374℃から約450℃の間であり、あるいは約450℃を上回る。水温の上限は、パイプ、フランジおよび他の接続部品などのプロセスの物理的態様の定格によって制約される。例えば、316ステンレス鋼については、高圧時の最高温度が649℃であることが推奨される。600℃未満の温度が、パイプラインの物理的制約内において実際的である。加熱水流130は、水の臨界温度および水の臨界圧を上回る条件では超臨界水である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、加熱供給原料135と加熱水流130の間の温度差は250℃よりも大きい。特定の理論によって制限されることなく、加熱供給原料135と加熱水流130の間の温度差が250℃よりも大きいと、加熱供給原料135中に存在する石油系炭化水素と、加熱水流130内の超臨界水との混合装置30内の混合が進むと考えられる。加熱水流130には酸化剤が存在しない。
【0028】
水流115および石油供給原料105は別々に加圧および加熱される。代替の実施形態では、水流115および石油供給原料105は周囲条件で混合することができて、次いで、混合流として加圧および加熱することができる。混合の程度に関わらず、石油供給原料105は、コークスの生成を避けるために、水流115と混合し終えるまで350℃を超えて加熱されない。
【0029】
加熱水流130および加熱供給原料135が混合装置30に供給されて、混合流140を生じる。混合流140の温度は、約400℃未満、あるいは約374℃未満、あるいは360℃未満である。約400℃を上回ると、混合流140中でラジカル反応が起こり得、これは脱金属反応につながり得る。本発明の少なくとも1つの実施形態において、反応器の外での脱金属反応を避けるために、混合流140の温度は400℃未満である。脱金属反応を避けると、流れ間のいかなる反応も避けることができ、したがって、相分離によるコークス生成を減少させられる可能性がある。特定の理論によって制限されることなく、脱金属はすぐには始まらないが、検出可能なレベルの脱金属が起こり得るまでには時間が必要であると考えられる。脱金属が1%に達する時間枠は約5秒である。標準環境温度および圧力(SATP)の超臨界水反応器40に入る水対石油供給原料の体積流量の比は、約1:10から約1:0.1の間、あるいは約1:1から約1:0.2の間である。少なくとも1つの実施形態において、石油供給原料の体積流量に対する水の体積流量の比は1〜5の範囲内である。石油を分散させるために、石油よりも水が多いほうが望ましい。混合流140中で油よりも水を多く使用すると、油に対する水の比が低い、または水よりも油が多い比のプロセスよりも液収率が高くなる。混合流140は、アスファルテンと樹脂部分、炭化水素部分および超臨界水部分を有する。不十分な混合は、オリゴマー化反応および重合反応などの反応を誘起または加速し、その結果、さらに大きな分子またはコークスが生成される。このような大きな分子内またはコークス内にバナジウムポルフィリンなどの金属化合物が取り込まれると、金属化合物を除去する方法はない。本方法は有利に、コークス中に金属を濃縮し、次いで、液体油生成物から金属を除去する方法よりも液収率が高くなる。液収率の低下に加えて、金属を濃縮するような方法は、プロセスラインの詰まりなど、連続運転において問題を生じる。したがって、十分混合された混合流40を有すると、本発明の方法にしたがって金属を除去する能力が高くなる。混合流140は超臨界水反応器40に導入される。
【0030】
混合流140は超臨界水反応器40に導入されて、反応器流出物150を生成する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合流140は、別の加熱ステップなしで混合装置30から超臨界水反応器40へと進む。
【0031】
超臨界水反応器40は、水の臨界温度よりも高い温度、あるいは約374℃から約500℃の間、あるいは約380℃から約480℃の間、あるいは約400℃から約450℃の間の温度で運転される。好ましい実施形態において、超臨界水反応器40内の温度は400℃から約450℃の間である。超臨界水反応器40内の脱金属反応を含むアップグレーディング反応は400℃で開始することができるが、450℃を上回ると、コークス生成の増加が観察される。特定の理論によって制限されることなく、脱金属反応は、超臨界水反応器40内で起こる他のアップグレーディング反応と競争しないと考えられる。少なくとも1つの実施形態において、脱硫反応時の硫化水素の生成は、HSラジカルによってラジカルを増加させることによって脱金属を助ける。超臨界水反応器40は、水の臨界圧よりも高い圧力であり、あるいは約23MPaよりも高く、あるいは約23MPaから約30MPaの間である。超臨界水反応器40内の混合流140の滞留時間は約10秒より長く、あるいは約10秒から約5分の間、あるいは約10秒から10分の間、あるいは約1分から約6時間の間、あるいは約10分から2時間の間である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、触媒を超臨界水反応器40に加えて、変換反応に触媒作用を及ぼすことができる。触媒は、脱金属と他のアップグレーディング反応に同時に触媒作用を及ぼすことができる。特定の理論によって制限されることなく、触媒は、アップグレーディング反応を促進する活性水素を発生させる改質反応を開始することができると考えられる。大きな分子をより小さな分子に分割するアップグレーディング反応は、より多くのラジカルを脱金属反応に供給することによって脱金属反応を促進する。本発明における使用に適した触媒の例には、金属酸化物および金属硫化物が含まれる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合流中に存在するバナジウムは、触媒として作用することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、超臨界水反応器40には触媒が存在しない。超臨界水反応器40には外部から供給された水素が存在しない。超臨界水反応器40には外部から供給された酸化剤が存在しない。プロセスの制約は、水素または酸化剤を超臨界水反応器40に注入する能力を低下させる。本発明では酸化剤または酸化体が存在しないが、その理由は、水が、油中に存在する金属を金属酸化物または金属水酸化物に変換する酸素源になり得るからである。金属酸化物および金属水酸化物は水相中に残る。本発明の代替の実施形態において、金属はスラッジ中に濃縮され得るが、プロセス内で除去することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、超臨界水反応器の運転条件(温度、圧力および滞留時間)は、固体コークスの生成を減少させ、または最小限に抑える一方、アスファルテン留分中に変換金属を濃縮するよう設計される。
【0032】
本発明のプロセス内で使用される超臨界反応器の数は、プロセスの設計要求に基づいて変わる。1つの超臨界反応器を使用することができて、あるいは直列に配置された2つの超臨界反応器、あるいは直列に配置された3つの超臨界反応器、あるいは直列に配置された4つの超臨界反応器、あるいは直列に配置された4つを超える超臨界反応器を使用することができる。本発明のいくつかの実施形態において、単一の超臨界水反応器40を使用することができる。本発明の好ましい実施形態において、2つの超臨界水反応器40が直列に配置される。プロセス内に複数の反応器を有すると、プロセスの汎用性が高まる。1つの実施形態では、複数の反応器にわたって反応温度を徐々に上げることができるが、これは、単一の反応器では、広い温度勾配を得ることが困難であるため実施できない。複数の反応器を使用すると流路が増えて、混合を進める機会が与えられ、温度を徐々に上げる長い経路が与えられる。さらに、より長い流路はプロセスの安定性を高める。炭化水素が蒸発するとアスファルテンが析出してコークスが生成する可能性があるため、超臨界水反応器40では炭化水素の蒸発を避けるために、混合流140を急熱しない。したがって、複数の反応器は水と石油の混合を進め、コークス生成を減少させる。1つを超える直列の超臨界反応器を有する実施形態において、第1の超臨界反応器内の反応条件は、第2の超臨界反応器内の反応条件と同じであり得、あるいは第1の超臨界反応器内の反応条件は、第2の超臨界反応器内の反応条件とは異なり得る。本明細書において用いられるとき、反応条件は、温度、圧力および滞留時間を指す。
【0033】
混合流140は、水部分、炭化水素部分およびアスファルテンと樹脂部分を含む。金属不純物は、炭化水素部分およびアスファルテンと樹脂部分の中に存在し得る。存在する金属不純物の例には、金属ポルフィリンおよび非ポルフィリン型の金属が含まれる。金属ポルフィリンの例には、バナジウム、ニッケルおよび鉄が含まれる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合流140中に存在する金属の50〜80%が非ポルフィリン型の金属である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、金属不純物はバナジウムポルフィリンである。混合流140中に存在する金属不純物は、超臨界水反応器40の存在下で超臨界水反応器40内の脱金属反応を経る。脱金属反応は、炭化水素部分に存在する金属不純物が、変換金属に変換または分解される反応を指す。アスファルテンと樹脂部分の他の不純物は、硫化水素、アンモニア、水、およびメルカプタンなどの他の形態に変換され得る。本発明のいくつかの実施形態において、炭素との結合が切断されるとき、硫黄、窒素および酸素が放出され得る。例示的な変換金属には、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物およびこれらの組み合わせが含まれる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合流140中に存在するバナジウムポルフィリン金属不純物は、脱金属反応を経て、水酸化バナジウム変換金属になる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合流140中に存在するバナジウムポルフィリン金属不純物は、脱金属反応を経て、酸化バナジウム変換金属になる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、1組の変換反応が超臨界水反応器40内で起こり得る。変換反応の組は、アップグレーディング、脱硫、脱窒素、脱酸素、クラッキング、異性化、アルキル化、縮合、二量体化、加水分解および水和、ならびにこれらの組み合わせから選択される。変換反応の組は精製石油部分を生成する。
【0034】
超臨界水の存在下の超臨界水反応器40内の脱金属反応は、石油供給原料に基づいて1重量%未満、あるいは石油供給原料に基づいて1.5重量%未満、あるいは石油供給原料に基づいて0.8重量%未満、あるいは石油供給原料に基づいて0.6重量%未満、あるいは石油供給原料に基づいて0.5重量%未満の量の固体コークスを含む反応生成物である流出物150を生成する。石油供給原料に基づいて1重量%未満の量の固体コークスは、固体コークスがないと見なされる。特定の理論によって制限されることなく、固体コークスの生成(「コークス化」)は、超臨界水反応器内で以下の3つの条件を避けることによって避けられると考えられる:500℃を上回る温度などの高温(高温は、ラジカル間縮合を誘起するラジカルを生成するため。);相分離(石油供給原料の部分は分離相として存在し得るが、炭化水素と超臨界水を1つの相または実質的に1つの相に混合すると、コークス化が減少する。);長い滞留時間(コークス化は誘導期を必要とするため、アスファルテンなどのコークス前駆体の滞留時間を制限すると、コークス化を制限することができる)。超臨界水の存在下の脱金属反応は、合計で石油供給原料に基づいて約5重量%未満、あるいは石油供給原料に基づいて約6重量%未満、石油供給原料に基づいて5.5重量%、石油供給原料に基づいて4.5重量%、石油供給原料に基づいて4重量%、あるいは石油供給原料に基づいて3.5重量%の気相生成物を生成する反応生成物を生成することができる。石油供給原料に基づいて約5重量%未満の反応生成物中の気相生成物は、少量の気相生成物と見なされる。
【0035】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、脱金属反応は、超臨界水の存在下でコークスを生成せずに、変換金属を樹脂留分およびアスファルテン留分中に濃縮することが分かる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、変換金属に変換されない金属不純物の部分は、アスファルテン留分中に濃縮される。特定の理論によって制限されることなく、以下の濃縮がアスファルテン留分中で起こると考えられる。非金属性アスファルテン、すなわち金属が存在しないアスファルテンは、金属性アスファルテンよりも速く分解し、これは、非金属性アスファルテンが溶解するとき、非金属性アスファルテンがアスファルテン留分中に残ることを意味する。アスファルテン中の金属不純物が金属酸化物または金属水酸化物に変換されるとき、樹脂の高い極性によって金属酸化物および金属水酸化物は他の無機金属化合物と共に樹脂に引き寄せられ、樹脂に付着し得る。アスファルテン留分は、非局在π電子が金属酸化物および金属水酸化物を引き寄せ得る多くの芳香環を有する。その結果、反応器からのアスファルテン留分は、生成物中の全金属含有量がより低い場合でも、石油供給原料105中のアスファルテン留分と比べて金属の濃度が高い。変換金属を樹脂留分およびアスファルテン留分中に濃縮する結果、マルテン留分は、発電に必要な、より低い金属含有量を有することができる。
【0036】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、超臨界水反応器40には、固体または滓を超臨界水反応器40から直接除去するプロセスが存在しない。本発明の少なくとも1つの実施形態において、超臨界水反応器40には、固体または滓の流れのための別の出口流れが存在せず、したがって、本発明において、どのような固体または滓も反応器生成物流と共に除去される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、超臨界水反応器40には固形物沈降領域が存在しない。
【0037】
反応器流出物150は反応生成物を含む。反応器流出物150が冷却装置50に供給されて、冷却流160を生じる。冷却装置50は、反応器流出物150を冷却することができる任意の装置にすることができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、冷却装置50は熱交換器である。冷却流160は、水の臨界温度を下回る温度、あるいは300℃未満、あるいは150℃未満である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、冷却流160は50℃の温度である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、冷却装置50は、反応器流出物150の冷却から熱を回収するよう最適化することができて、回収熱は、本プロセスの別のユニット内または別のプロセス内で利用することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、冷却装置50からの回収熱は、溶剤抽出器92内で利用される。反応器流出物150は、十分混合された油と水のエマルジョンを含む。本発明の少なくとも1つの実施形態において、反応器流出物150は、均一相またはほぼ均一相である。冷却装置50内の温度を低下させると、冷却流160が別々の油相と水相を含むように相が分離する。特定の理論によって制限されることなく、相分離は、以下の経路にしたがって起こると考えられる。反応器流出物150の温度が水の臨界温度未満に下がると、アスファルテンおよび変換金属を含む重質留分は水から分離され、他の留分は溶解したままである。
【0038】
冷却流160がリジェクタ60に供給されて、スラッジ留分165を分離し、脱スラッジ流170を生成する。リジェクタ60は、炭化水素および水を含む液体流からスラッジを分離することができる任意のタイプのプロセス容器にすることができる。リジェクタ60としての使用に適した例示的なプロセス容器には、サイクロン型容器、管状型容器、CSTR型の容器および遠心分離機が含まれる。本明細書において用いられる「スラッジ」は、すべてまたは実質的にすべての変換金属ならびに水をエマルション中に含む蓄積したアスファルテン留分を指す。スラッジ留分165は、30重量%から70重量%の間の変換金属、あるいは40重量%から60重量%の間の変換金属、あるいは少なくとも50重量%の変換金属を含む。変換金属のパーセントは、石油供給原料105中に存在する全金属と比べたスラッジ留分中に存在する金属の留分の割合を指す。少なくとも1つの実施形態において、少なくとも30重量%の変換金属がスラッジ中の水に分散している。少なくとも1つの実施形態において、スラッジは、少なくとも30重量%のアスファルテンおよび少なくとも10重量%の水を含む。残りの変換金属および何らかの未変換の金属は脱スラッジ流170中に存在する。脱スラッジ流170中の未変換の金属は油相中に存在し得、変換金属は水相中に存在し得る。リジェクタ60は、リジェクタ温度で運転される。約200℃から約350℃の間、あるいは約225℃から約325℃の間、あるいは約250℃から約300℃の間の範囲内のリジェクタ温度。好ましい実施形態において、リジェクタ60は、約250℃から約300℃の間の温度に保たれる。冷却流160中に存在する他の炭化水素からアスファルテン留分が分離するように、リジェクタ60の温度は、相分離を起こす水の臨界温度よりも低い。臨界温度を上回る温度では、水がアスファルテンを溶解または分散させるため、臨界温度未満に温度を下げることにより、アスファルテン留分を凝集させることができる。リジェクタ60内の温度は、非アスファルテン留分が相分離する温度を上回る。言い換えれば、リジェクタの温度は、冷却流160からアスファルテン留分を分離させる範囲内に保たれるが、水と混合された非アスファルテン留分を冷却流160中に維持する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、冷却流160の温度は、リジェクタ60の所望の運転温度を得るように冷却装置60内で調節される。本発明の少なくとも1つの実施形態において、リジェクタ60は、温度を保つ外部加熱装置を有する。温度に関わらず液相中に水が保持されるようなリジェクタ60内の冷却流160の圧力損失になるようにリジェクタ60は設計される。リジェクタ内の圧力損失は、約0MPaから約5MPaの間、あるいは約0.1MPaから約4MPaの間、あるいは約0.1MPaから約3.0MPaの間、あるいは約0.1MPaから約2.0MPaの間、あるいは約0.1MPaから約1.0MPaの間の範囲内である。好ましい実施形態において、リジェクタ60内の圧力損失は、0.1MPaから1.0MPaの間の範囲内である。特定の実施形態において、リジェクタ吸着材をリジェクタ60に加えることができる。リジェクタ吸着材は、冷却流160中のスラッジをスラッジ留分165として分離することができるようにリジェクタ60内で選択的に蓄積させる任意の吸着材にすることができる。リジェクタ吸着材として使用するための例示的な吸着材には、金属酸化物および固体炭素が含まれる。本発明の特定の実施形態において、その表面反応性を不動態化するために、吸着材を焼鈍したり、または特定の化学薬品で処理したりすることができる。例えば、吸着材の触媒作用を防ぐ目的で、固体炭素の表面のカルボン酸型官能基などの表面活性種を除去するために、固体炭素を窒素下、800℃で熱的に処理することができる。リジェクタ60内の吸着材は、固定床、流動床またはトリクルベッド内に存在し得る。吸着材は、リジェクタ60の5vol%から95vol%の間で充填することができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、吸着材にはスラッジに対する触媒効果がない。本発明の少なくとも1つの実施形態において、リジェクタ吸着材は、活性炭素繊維などの固体炭素である。少なくとも1つの実施形態において、リジェクタ60にはリジェクタ吸着材が存在しない。特定の実施形態において、リジェクタ溶剤をリジェクタ60に加えることができる。リジェクタ溶剤は、液体流からのスラッジの分離効率を高める任意の溶剤にすることができる。リジェクタ溶剤として使用することができる例示的な溶剤には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。リジェクタ溶剤の量は、約0.05vol%の冷却流から10vol%の冷却流の間、あるいは約0.1vol%から約1vol%の冷却流の間、あるいは約1vol%から約10vol%の冷却流の間の範囲内である。少なくとも1つの実施形態において、リジェクタ60にはリジェクタ溶剤が存在しない。特定の実施形態において、リジェクタ吸着材およびリジェクタ溶剤の両方をリジェクタ60に加えることができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、リジェクタ60には酸化剤が存在しない。本明細書において用いられるとき、「酸化剤」は、他の化合物と反応して、化合物を酸化物に変換することができる化学種を指す。本発明にはない例示的な酸化剤には、酸素、空気、過酸化水素、過酸化水素水、硝酸および硝酸塩が含まれる。スラッジ留分165は、処分することも、またはさらに処理するために送ることもできる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、スラッジ留分165が超臨界水反応器40に再循環されて戻ることはない。リジェクタ40は、超臨界水に溶けるが亜臨界水に溶けない冷却流160中の化合物を含む、亜臨界水に溶けない冷却流160の留分を分離する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、リジェクタ40は、超臨界水反応器から直接、流れを分離するプロセスよりも多くの変換金属を除去する。特定の理論によって制限されることなく、超臨界水は、亜臨界水よりも炭化水素に対する溶解度が高いことに留意されたい。逆に、超臨界水は、亜臨界水よりも炭化水素に対する溶解度が低い。スラッジ留分165が超臨界水と混合されることはない。スラッジ留分165は、少量のアップグレードされた炭化水素を含み得る。
【0039】
石油系炭化水素および水を含む脱スラッジ流170は減圧装置70を通過する。減圧装置70は、脱スラッジ流170の圧力を低下させて減圧生成物180を生成する。減圧装置70は、液体流の圧力を低下させることができる任意の装置にすることができる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、減圧装置70は制御弁である。減圧生成物180の圧力は、約5MPa未満、あるいは約4MPa未満、あるいは約3MPa未満、あるいは約2MPa未満、あるいは約1MPa未満、あるいは約0.5MPa未満である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、減圧生成物180の圧力は大気圧である。本発明の好ましい実施形態において、減圧生成物180の圧力は1MPa未満である。減圧生成物180は気液分離器80に導入される。
【0040】
気液分離器80は、減圧生成物180を気相生成物200と液体生成物190に分離する。気相生成物200は、大気に放出したり、さらに処理したり、または貯蔵のために回収したりすることができる。石油が超臨界水中で処理されるとき、気体が生成される。生成される気体の量は、超臨界水反応器内の温度、超臨界水反応器における滞留、ならびに石油供給物および水流が混合される程度に影響される。気相生成物200には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、硫化水素、他の軽い分子およびこれらの組み合わせが含まれる。液体生成物190には5個を超える炭素を有する炭化水素(C5+留分)が含まれ、これは、液体生成物190には5個以上の炭素を有する炭化水素が含まれることを意味する。気相生成物200には、どのような金属不純物または変換金属も存在しない。
【0041】
液体生成物190は、流れが石油生成物210と水生成物220に分離される油水分離器90に入る。石油生成物210は、精製された石油生成物を含む。石油生成物210の液収率は、95%よりも高く、あるいは96%よりも高く、あるいは97%よりも高く、あるいは98%よりも高く、あるいは99%よりも高く、あるいは99.5%よりも高い。石油生成物210中の金属不純物の濃度は、2重量ppm未満のバナジウム、あるいは1重量ppm未満のバナジウム、あるいは0.8重量ppm未満のバナジウム、あるいは0.5重量ppm未満のバナジウムである。本発明の少なくとも1つの実施形態において、金属不純物の濃度は0.5重量ppm未満のバナジウムである。あるいは、本発明の方法において変換される金属不純物の量は、99重量%を超え、あるいは99.25重量%を超え、あるいは99.5重量%を超え、あるいは99.75重量%を超える。本発明の少なくとも1つの実施形態において、水生成物220は、少なくとも30重量%の変換金属を含む。
【0042】
図2には、本発明の代替の実施形態が開示されている。
図1に記載のプロセスおよび方法を参照すると、冷却流160が減圧装置70に供給されて、減圧流172を生じる。減圧流172は、アスファルテン留分、水留分および気相生成物留分を含む石油生成物を含む。減圧流172の圧力は、約5MPa未満、あるいは約4MPa未満、あるいは約3MPa未満、あるいは約2MPa未満、あるいは約1MPa未満、あるいは約0.5MPa未満である。本発明の少なくとも1つの実施形態において、減圧流172の圧力は大気圧である。本発明の好ましい実施形態において、減圧流172の圧力は1MPa未満である。減圧流172は気液分離器80に導入される。
【0043】
気液分離器80は、減圧流172を気体生成物202と液相流192に分離する。特定の理論によって制限されることなく、気体は、リジェクタ60内でスラッジ留分165と共に除去することができるため、気体生成物202は、気相生成物202よりも多くの気体(より高い体積流量)を有することができると考えられる。例えば、二酸化炭素は亜臨界水に対する親和性が高く、したがって、スラッジ留分165の一部を形成する水を含む亜臨界水に溶解したままになる可能性がある。加えて、気体生成物202の組成は、気相生成物200の組成とは異なり得る。気体生成物202には、どのような金属不純物または変換金属も存在しない。
【0044】
液相流192は、流れが液相石油流212と水相流222に分離される油水分離器90に供給される。水相流222中の金属の含有量は、スラッジを分離しない水生成物220中よりも高い。液相石油流212は、アスファルテン留分および炭化水素留分を含む。液相石油流212は溶剤抽出器92に供給される。
【0045】
溶剤抽出器92は、液相石油流212を石油生成物210、低金属留分、および高金属留分である金属含有留分214に分離する。溶剤抽出器92は、溶剤に対する溶解度に基づいて金属含有留分を分離する任意のタイプの溶剤抽出プロセスを用いることができる。例の溶剤抽出プロセスには溶剤脱れきプロセスが含まれる。溶剤脱れきプロセスの一例は、残油超臨界抽出(Residuum Oil Supercritical Extraction、ROSE(登録商標))である。従来の溶剤脱れきプロセスは、プロパン、ブタンまたはペンタンなどの溶剤を使用するマルテンからのアスファルテンの分離を含む。溶剤脱れきプロセスは、流れから99重量%の金属を除去することができるが、液収率は低くなる。溶剤脱れきプロセスにおける低い液収率は、マルテン留分中でアスファルテン留分が広く分布するためであり、したがって、アスファルテン留分と共にマルテン留分の一部を除去する必要がある。本発明の少なくとも1つの実施形態において、アスファルテンの分布は、未処理の石油供給原料における分布よりも狭いため、液収率は従来の溶剤脱れきプロセスよりも高い。溶剤抽出器92は水の臨界点未満で運転する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、効率を高めるために複数の分離ステップが用いられる。少なくとも1つの実施形態において、金属含有留分214は、液相石油流212中に60重量%から90重量%の間の金属を含む。
【0046】
石油生成物210の特性および組成を
図1を参照して説明する。
【0047】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、亜臨界温度および圧力(水の臨界点未満)で運転する分離装置内で、超臨界水反応器の下流の液体石油相および水相から変換金属を含むアスファルテン留分を分離することができる。セパレータ装置は、沈降室または排水装置を有することができる。特定の実施形態において、液体石油相および水相からのアスファルテン留分の分離を速めるために吸着材を加えることができて、吸着材は、水相の存在下、油水分離器の上流の処理ステップの順番で加えられる。吸着材は、流体流れが周囲温度および圧力に戻った後に水相中に留まる任意の吸着材にすることができる。これは、浄水ステップが吸着材を除去することができる場合、浄水ステップにおいて吸着材の除去を可能にする。少なくとも1つの実施形態において、吸着材はまた、硫黄化合物を捕集して、最終石油生成物の硫黄含有量を低下させることができる。
【0048】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、超臨界水反応器の下流で気液分離器の後に吸着プロセスを用いて、マルテン留分から金属含有アスファルテン留分を分離することができる。少なくとも1つの実施形態において、吸着プロセスは、吸着材で充填された容器を含む。吸着材は、固定床、沸騰床、流動床、または吸着材がマルテン留分から金属含有アスファルテン留分を分離できるようになるその他の任意の構成内に存在し得る。
【0049】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、石油生成物流を受け入れるプロセスに接触水素化ユニットを含めることができて、接触水素化ユニットは、石油生成物に水素を付加する。付加された水素は石油生成物の熱量を増加させ、液体燃料としての価値が高まる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、反応器流出物中の石油は、二重結合を有する炭化水素を含む。炭化水素の二重結合は、水素の外部供給の存在下で水素化触媒によって飽和させることができる。水素化プロセスは、穏やかな運転条件のために、限られた量の金属(5%以下)を除去する。例えば、水素化プロセスは、従来のコバルト−モリブデン/酸化アルミニウム(CoMo/Al
2O
3)触媒を用いて、5MPaおよび320℃で、炭化水素に対する水素の比は100Nm
3/m
3、時間あたりの液空間速度(LHSV)は2で実施することができる。水素化プロセスの主な目的は、オレフィン化合物を水素化することによって水素含有量を増加させ、それによって、水素化された炭化水素流の熱量を増加させることである。
【0050】
本発明に開示されている超臨界水プロセスは、(脱金属された炭化水素のみ生成する)独立したユニットとして設置したり、または発電プラントと組み合わせたりすることができる。この組み合わせは、超臨界水プロセスと発電プロセスとの間の用役(例えば、蒸気および電気)の接続を含む。
【0051】
本明細書に記載の石油供給原料から金属を除去する方法には、蒸留塔または蒸留ユニットを使用する蒸留ステップがない。
【0053】
[実施例1]
図2に示す構成による実験的規模のプラントにおいて、超臨界水の存在下で石油供給原料を脱金属するためのプロセスを実施した。石油供給原料105は、体積流量0.2リットル/時間(L/時間)の全範囲アラビア軽質原油であった。石油供給原料105の温度は21℃であった。圧力を石油ポンプ5内で圧力25MPaまで上げ、加圧供給原料110を生成した。加圧供給原料110の温度を石油予熱器10内で50℃まで上げ、圧力25MPaのまま加熱供給原料135を生成した。水流115は、温度17℃で体積流量0.6L/時間であった。これを水ポンプ15内で圧力25MPaまで上げ、加圧水120を生成した。加圧水120を水予熱器20内で温度480℃まで加熱し、加熱水流130を生成した。加熱水流130および加熱供給原料135を混合装置30に供給して、混合流140を生成した。次いで、直列の超臨界水反応器40および超臨界水反応器40Aを有する超臨界水ユニットに、混合流140を供給した。超臨界水反応器40の内容積は0.16リットル、流体の滞留時間は1.6分であった。超臨界水反応器40Aの内容積は1.0リットル、流体の滞留時間は9.9分であった。超臨界水反応器40および超臨界水反応器40Aのいずれも温度420℃および圧力25MPaに保持した。2つの反応器を使用すると、混合流140の混合が進んだ。超臨界水反応器40Aの直径に対する長さの比によって激しい乱流が生じ、超臨界水反応器40内を流れる流れの混合が促進された。反応器流出物150が超臨界水ユニットを出るときに温度420℃および25MPaになるように反応条件を保持した。反応器流出物150を冷却装置50に供給し、ここで温度を50℃に下げて、冷却流160を生じさせた。冷却流160を減圧装置70に供給し、ここで圧力を大気圧まで下げて、減圧流172を生じさせた。減圧流172を気液分離器80に供給して、減圧流172を気体生成物202と液相流192に分離した。気液分離器80は500mlの容器であった。次いで、液相流192をバッチ式遠心分離ユニットである油水分離器90に供給し、ここで液相流192を液相石油212と水生成物222に分離した。液相石油212は、液相石油および金属不純物の両方を含んでいた。抽出器92内で10:1のn−ペンタン対石油生成物体積比を用いて、液相石油212をn−ペンタンで抽出した。金属含有留分214を濾過して取り出した後、残った液体をロータリーエバポレーターにかけ、ここでn−ペンタンが除去されて石油生成物210が残った。金属含有留分214は0.9重量%の液相石油212であった。ここでn−ペンタンを含まない石油生成物210のバナジウム含有量は0.5重量ppmであった。石油生成物210中のバナジウム含有量は、残留バナジウムが金属含有留分214に濃縮されたことを示す。油水分離器90内の油/水分離ステップの間に生じた液体の損失を伴い、100%から金属含有留分214を差し引いた石油生成物210の液収率は99.5重量%と測定された。この実施例は、本発明のプロセスが、約75重量%の低い液収率を有する従来の溶剤脱れきプロセスよりも良い液収率を与えることを示す。石油供給原料105および液相石油212の特性を表1に示す。
【0055】
液相石油212のトルエン不溶性留分は生成物の0.1重量%未満であった。「トルエン不溶性留分」はコークスの量の尺度であり、わずか0.1重量%はコークスがないと見なすことができる。
【0056】
[実施例2]
実施例2は、
図3および実施例1を参照して説明した構成にしたがって実施した実験的規模のシミュレーションであった。実施例2では、活性炭対液体生成物重量比1:200で活性炭を液体生成物192に加えた(0.5重量%のカーボンブラックを液体生成物192に加えた)。超音波発生装置96内で混合物に超音波を15分間照射した。次に、混合物を50℃で撹拌した。撹拌した後、油水分離器90内で混合物を遠心分離して、水生成物222および石油212を生成した。試験は、活性炭が水生成物222中にあることを示した。液収率は99重量%であった。石油212のバナジウム含有量は0.4重量ppmであった。実施例2の結果は、リジェクタ(この実施例では、遠心分離機を使用して、遠心分離管の底にスラッジを濃縮した。)および吸着材が、石油供給原料から金属不純物を除去できることを示す。
【0057】
本発明を詳細に説明してきたが、本発明の原理および範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、置換および変形が行われ得るものと理解されるべきである。したがって、本発明の範囲は、以下の請求項およびそれらの適切な法的均等物によって決定されるべきである。
【0058】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそれ以外に明確に定めていなければ、複数の指示対象を含む。
【0059】
任意選択の(optional)または任意選択で(optionally)は、続いて記載される事象または状況が発生しても、発生しなくてもよいことを意味する。説明には、事象または状況が発生する場合の例、および事象または状況が発生しない場合の例が含まれる。
【0060】
範囲は、本明細書において、およそのある特定の値から、かつ/またはおよその別の特定の値までと表されることがある。このような範囲が表されるとき、別の実施形態は、前記範囲内のすべての組み合わせと共に、一方の特定の値から、かつ/または他方の特定の値までと理解されるべきである。