特許第6666862号(P6666862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6666862
(24)【登録日】2020年2月26日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】トルク検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20200309BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   G01L3/10 305
   B62D5/04
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-9709(P2017-9709)
(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公開番号】特開2018-119811(P2018-119811A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】西口 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
(72)【発明者】
【氏名】深谷 繁利
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】神野 智
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−194643(JP,A)
【文献】 特開2006−064577(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0005909(US,A1)
【文献】 特開平08−010397(JP,A)
【文献】 特開2006−138753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/10
B62D 5/04
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸(41)と第2軸(43)とを同軸上に連結する弾性部材(42)のねじれ変位に基づき、前記第1軸と前記第2軸との間のねじれトルクを検出するトルク検出装置(10)において、
前記第1軸に固定される磁石(11)と、
前記第2軸において、軸方向に互いに離間した状態で固定される一対の磁気ヨーク(12,121,122)と、
前記一対の磁気ヨークの間における磁束密度を検出する磁気センサ(13)と、を備え、
前記一対の磁気ヨークは、前記磁石に対向して配置され、前記弾性部材がねじれ変位した場合に前記磁石に対して周方向に変位する対向部(151,152)と、前記対向部よりも径方向外側に配置され、それぞれ一方の前記磁気ヨーク側から他方の前記磁気ヨーク側に延びるように設けられ、前記磁気センサを挟んで両側に対向配置される壁部(161,162)と、を備え、
前記一対の磁気ヨークにおける前記各壁部の先端は互いに対向し、その先端同士の間に、前記磁気センサが配置されており、
前記先端間の距離は、径方向内側の方が、径方向外側よりも短いトルク検出装置。
【請求項2】
前記一対の磁気ヨークにおける前記各壁部の先端には、それぞれ端面が設けられており、一方の先端における端面は、他方の先端における端面に対して傾斜している請求項1に記載のトルク検出装置。
【請求項3】
前記一対の磁気ヨークにおける前記各壁部の先端のうち、いずれか一方の前記先端における端面は、軸方向に対して直交している請求項2に記載のトルク検出装置。
【請求項4】
前記一対の磁気ヨークに設けられた前記壁部のうち、少なくとも一方の前記壁部は、その先端が前記壁部の基端に対して径方向外側に位置するように、軸方向に対して斜めに設けられている請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のトルク検出装置。
【請求項5】
前記磁気ヨークは、前記磁石の外周を囲む環状に形成され、前記対向部と前記壁部とが設けられる環状部(141,142)を備え、
前記壁部は、前記環状部の径方向外側における端部に設けられている請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のトルク検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじれトルクを検出するトルク検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動パワーステアリング装置等において、ねじれトルク(軸トルク)を検出するトルク検出装置(トルクセンサ)が用いられることが知られている。例えば、特許文献1に記載のトルクセンサでは、入力軸と出力軸とを連結するトーションバーがねじれた場合、一組のヨークが、多極磁石に対して周方向に相対的に変位する。このとき、ヨークの間における磁束密度を磁気センサが検出し、磁束密度の変化に基づき、ねじれトルクを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−101038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁力線は、磁性体の形状に沿って透磁率が高い場所を通過する性質があり、また、磁性体の中では、直進する性質がある。このため、磁性体を折り曲げると、磁性体の形状に沿って磁力線が通過することとなるが、その直進性により、内側と外側で、磁束密度が異なる。より詳しくは、折り曲げた磁性体を磁力線が通過する場合、その直進性により、内側よりも外側に磁力線が集まりやすくなる。これにより、折り曲げた先に磁気センサを配置させ、折り曲げ先の磁束密度を検出する場合、磁束密度は外側の方が高くなりやすい。したがって、折り曲げた先に磁気センサを配置する場合、磁気センサの位置が、磁性体に対して外側又は内側にずれると、磁気センサが検出する磁束密度が異なるといった問題があった。このため、磁束密度の検出精度を向上させるため、磁気センサが精度よく同じ位置となるようにトルク検出装置を組み立てる必要があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、磁気センサの配置を容易とするトルク検出装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のようにした。
【0007】
第1軸と第2軸とを同軸上に連結する弾性部材のねじれ変位に基づき、前記第1軸と前記第2軸との間のねじれトルクを検出するトルク検出装置において、前記第1軸に固定される磁石と、前記第2軸において、軸方向に互いに離間した状態で固定される一対の磁気ヨークと、前記一対の磁気ヨークの間における磁束密度を検出する磁気センサと、を備え、前記一対の磁気ヨークは、前記磁石に対向して配置され、前記弾性部材がねじれ変位した場合に前記磁石に対して周方向に変位する対向部と、前記対向部よりも径方向外側に配置され、それぞれ一方の前記磁気ヨーク側から他方の前記磁気ヨーク側に延びるように設けられ、前記磁気センサを挟んで両側に対向配置される壁部と、を備え、前記一対の磁気ヨークにおける前記各壁部の先端は互いに対向し、その先端同士の間に、前記磁気センサが配置されており、前記先端間の距離は、径方向内側の方が、径方向外側よりも短い。
【0008】
磁力線は、磁気ヨークの形状に沿って透磁率が高い場所を通過する性質があり、また、磁気ヨークの中では、直進する性質がある。このため、対向部から径方向外側に位置し、他方の磁気ヨーク側に軸方向に延びるように設けられた壁部の場合、径方向外側よりも内側の方が、磁束密度が小さくなりやすい。つまり、磁力線は、対向部から直進して壁部の径方向外側に集まりやすいため、他方の磁気ヨーク側に延びるように設けられた壁部の先端間の磁束密度を検出する場合、径方向外側よりも内側の方が、磁束密度が小さくなりやすい。
【0009】
そこで、径方向内側における先端間の距離を、径方向外側の距離よりも短くして、検出される磁束密度が平均化されるようした。すなわち、先端間の距離が短くなれば、磁束密度が大きくなりやすくなる一方、距離が長くなれば小さくなりやすくなるため、検出される磁束密度が均されることとなる。これにより、径方向において磁気センサの位置ずれが生じても、検出される磁束密度が同様になるようにした。したがって、磁気センサが径方向に位置ずれが生じても、同じように磁束密度を検出できるため、磁気センサの配置が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ステアリングシステムの概略構成図。
図2】トルク検出装置の分解斜視図。
図3】(a)〜(c)は、トルク検出装置の平面図。
図4】トルク検出装置の切断部端面図。
図5】磁力線を示す模式図。
図6】別例のトルク検出装置の切断部端面図。
図7】別例のトルク検出装置の切断部端面図。
図8】別例のトルク検出装置の切断部端面図。
図9】別例のトルク検出装置の切断部端面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0012】
実施形態にかかるトルク検出装置10について、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、トルク検出装置10は、例えば、車両のステアリング操作を補助するための電動パワーステアリング装置20を備えたステアリングシステム100に用いられる。
【0013】
ハンドル30は、ステアリングシャフト40と接続される。図2に示すように、ステアリングシャフト40は、ハンドル30と接続される第1軸としての入力軸41と、入力軸41に連結されるトーションバー42と、トーションバー42を介して入力軸41と連結される第2軸としての出力軸43を有する。
【0014】
トーションバー42は、一端側が入力軸41に、他端側が出力軸43にそれぞれ固定ピン44により固定され、入力軸41と出力軸43とを同軸上に連結する。トーションバー42は、棒状の弾性部材であり、ステアリングシャフト40に加えられるねじれトルクに応じて、ねじれ変位し、弾性力を蓄える。図1に示すように、入力軸41と出力軸43との間には、トーションバー42(すなわち、ステアリングシャフト40)に加わるねじれトルクを検出するトルク検出装置10が設けられている。
【0015】
出力軸43の先端には、ピニオンギヤ50が設けられており、ピニオンギヤ50はラック軸51にかみ合わされている。ラック軸51の両端には、タイロッド等を介して、一対の車輪52が連結されている。これにより、ドライバがハンドル30を回転させると、ハンドル30に接続されたステアリングシャフト40が回転する。ステアリングシャフト40が回転すると、ピニオンギヤ50によってラック軸51が左右方向に直線運動する。そして、ラック軸51の変位量に応じて、一対の車輪52が操舵される。
【0016】
電動パワーステアリング装置20は、ドライバによるハンドル30の操舵を補助する補助トルクを出力するモータ21と、減速ギヤ22と、制御装置23等を備える。減速ギヤ22は、モータ21の回転を減速してステアリングシャフト40に伝達する。本実施形態では、コラムアシストタイプであるが、モータ21の回転をピニオンギヤ50に伝えるピニオンアシストタイプや、モータ21の回転をラック軸51に伝えるラックアシストタイプでもよい。制御装置23は、トルク検出装置10からねじれトルクを示す電圧信号を入力し、取得した電圧信号に応じてモータ21の駆動を制御する。
【0017】
なお、以下では、単に軸方向と示した場合には、ステアリングシャフト40(入力軸41、トーションバー42、及び出力軸43も含む。以下同様)の軸方向のことを意味する。また、単に径方向と示した場合には、ステアリングシャフト40の径方向のことを意味し、単に周方向と示した場合には、ステアリングシャフト40の周方向のことを意味する。また、図では、ステアリングシャフト40の軸方向を矢印Zで示し、径方向を矢印Xで示し、周方向を矢印Yで示す。
【0018】
図2に示すように、トルク検出装置10は、入力軸41に固定される磁石11と、出力軸43に固定される一対の磁気ヨーク12と、一対の磁気ヨーク12の間における磁束密度を検出する磁気センサ13等を備える。
【0019】
磁石11は、硬磁性体により円筒状に形成される。磁石11は、入力軸41に同軸上に固定される。磁石11は、N極とS極とが周方向に交互に着磁される。本実施形態では、N極及びS極の数は、8対、計16極である。磁石11の磁極数は、16極に限らず、偶数であればよい。
【0020】
一対の磁気ヨーク12は、軸方向において離間した状態で配置される。なお、一対の磁気ヨーク12を樹脂モールドすることによって、又はスペーサなどによって磁気ヨーク12間の配置が固定される。ここで、入力軸41側に配置される磁気ヨーク12を第1ヨーク121と示し、出力軸側に配置される磁気ヨーク12を第2ヨーク122と示す。第1ヨーク121及び第2ヨーク122は、共に軟磁性体により環状に形成され、磁石11の径方向外側において出力軸43に固定される。
【0021】
具体的には、第1ヨーク121は、円環状の環状部141と、軸方向に沿って延びるように設けられた対向部としての爪部151と、爪部151よりも径方向外側に配置される壁部161とを備える。第2ヨーク122も同様に、円環状の環状部142と、軸方向に沿って延びるように設けられた対向部としての爪部152と、爪部152よりも径方向外側に配置される壁部162とを備える。
【0022】
まず、環状部141,142について説明する。図3に示すように、環状部141,142の内径は、磁石11の外径よりも大きく形成されている。このため、環状部141,142は、磁石11と離間し、非接触となる。図4は、図3(b)のA−A線切断部端面図である。図4に示すように、第1ヨーク121の環状部141の外径は、第2ヨーク122の環状部142の外径と同じである。また、第1ヨーク121の環状部141の内径と、第2ヨーク122の環状部142の内径は同じである。
【0023】
図4に示すように、環状部141,142は、薄板状に形成され、軸方向に対して直交方向に延びるように設けられている。そして、軸方向において、第1ヨーク121の環状部141は、磁石11の入力軸41側における端部に揃えて配置される。一方、軸方向において、第2ヨーク122の環状部142は、磁石11の出力軸43側における端部に揃えて配置される。このため、軸方向において、第1ヨーク121の環状部141から第2ヨーク122の環状部142までの距離d1は、磁石11の高さと略同じとなる。なお、爪部151,152と磁石11とが対向するのであれば、環状部141,142間の距離d1は、磁石11の高さよりも長くてもよいし、短くてもよい。
【0024】
次に、爪部151,152について説明する。図3に示すように、爪部151,152は、磁石11の極対数と同数(本実施形態では8)設けられている。爪部151,152は、環状部141,142の内縁に沿って等間隔に設けられる。つまり、爪部151,152は、磁石11の磁極ピッチに応じて複数設けられている。第1ヨーク121の爪部151と、第2ヨーク122の爪部152とは、周方向にずれて交互に配置されている。なお、爪部151,152の数は、磁石11の極対数と異なっていてもよい。
【0025】
爪部151,152は、磁石11の外周と対向するように配置されている。図3(b)に示すように、トーションバー42にねじれ変位が生じていない場合、すなわち、ステアリングシャフト40にねじれトルクが加わっていない場合、各爪部151,152の中心と、磁石11のN極とS極の境界とが一致するように配置されている。なお、磁石11と磁気ヨーク12は、非接触である。
【0026】
図2及び図4に示すように、第1ヨーク121の爪部151は、軸方向において、第1ヨーク121から第2ヨーク122側に向かって延びるように設けられている。第2ヨーク122の爪部152も同様に、軸方向において、第2ヨーク122から第1ヨーク121側に向かって延びるように設けられている。爪部151,152は、環状部141,142に対して直交するように立設しており、その先端側が根元部分よりも細くなるように形成されている。また、爪部151,152は、磁石11の外周から、距離を空けて配置されている。
【0027】
図3に示すように、第1ヨーク121の爪部151は、環状部141の内縁に沿って周方向において45度間隔で配置されている。第2ヨーク122の爪部152も同様である。第1ヨーク121は、第2ヨーク122に対して、爪部151,152が22.5度間隔で交互に配置されるように位置決めされる。周方向において、爪部151,152の間には、隣り合う爪部151,152と接触しないように隙間が存在する。また、爪部151,152は、他方の磁気ヨーク12と接触しないように距離を空けている。
【0028】
次に壁部161,162について説明する。図4に示すように、第1ヨーク121の壁部161の先端161aと、第2ヨーク122の壁部162の先端162aは、軸方向において離間している。そして、第1ヨーク121の壁部161の先端161aと、第2ヨーク122の壁部162の先端162aは、軸方向において、対向するように配置されている。
【0029】
具体的には、第1ヨーク121の壁部161は、第1ヨーク121の環状部141の外縁から、軸方向において第2ヨーク122側に向かって延びるように形成されている。第1ヨーク121の壁部161は、環状部141に対して直交するように設けられている。また、図3(b)の破線に示すように、第1ヨーク121の壁部161は、環状部141の全周に亘って設けられている。
【0030】
第2ヨーク122の壁部162も同様に構成されている。すなわち、第2ヨーク122の壁部162は、図4に示すように、第2ヨーク122の環状部142の外縁から、軸方向において第1ヨーク121側に向かって延びるように形成されている。ただし、第2ヨーク122の壁部162は、その先端162aが第1ヨーク121に接触しないように設けられている。第2ヨーク122の壁部162は、環状部142に対して直交するように設けられている。また、第2ヨーク122の壁部162は、環状部142の全周に亘って設けられている。
【0031】
軸方向において、第1ヨーク121の壁部161の長さと、第2ヨーク122の壁部162の長さは、同じ長さとなるように形成されている。本実施形態では、環状部141,142間の距離d1の半分よりも短く形成されている。また、環状部141,142の外径は同じに形成されており、かつ、同軸上に固定されている。このため、壁部161,162の先端161a,162aは、対向するように配置されることとなる。
【0032】
軸方向において、第1ヨーク121の壁部161と、第2ヨーク122の壁部162との間の距離d2,d3(径方向外側における距離d2と、径方向内側における距離d3)は、磁気ヨーク12間のいずれの距離よりも短くなっている。例えば、距離d2,d3は、径方向において、壁部161,162から爪部151,152までの距離d4よりも短い。また、距離d2,d3は、周方向において、隣り合う爪部151,152間の距離よりも短い。このため、磁石11に対して磁気ヨーク12との相対位置が周方向に変位した場合、第1ヨーク121の壁部161の先端161aと、第2ヨーク122の壁部162の先端162aとの間において、磁束密度が増加する。つまり、磁気ヨーク12の壁部161,162以外の部分から磁束が漏れることを抑えることができる。
【0033】
第1ヨーク121の壁部161と、第2ヨーク122の壁部162との間には、少なくとも1つの磁気センサ13が配置されている。磁気センサ13は、検出した磁束密度に応じた電圧の電圧信号に出力する。磁気センサ13としては、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子などが使用される。
【0034】
磁気センサ13は、軸方向において、第1ヨーク121の壁部161の先端161aと、第2ヨーク122の壁部162の先端162aとの間に配置される。すなわち、第1ヨーク121の壁部161と、第2ヨーク122の壁部162は、磁気センサ13を挟んで両側に対向配置されている。本実施形態における磁気センサ13は、軸方向において、環状部141,142間の中心に配置される。この磁気センサ13は、軸方向における磁束密度を検出するように配置される。つまり、磁気センサ13は、第1ヨーク121の壁部161の先端161aと、第2ヨーク122の壁部162の先端162aとの間における軸方向の磁束密度を検出する。
【0035】
ここで、磁気センサ13によるねじれトルクの検出について説明する。
【0036】
まず、入力軸41と、出力軸43との間にねじれトルクが印加されていない場合、つまり、トーションバー42がねじれていない中立位置である場合について説明する。この場合、図3(b)に示すように、爪部151,152の中心がそれぞれ磁石11のN極とS極との境界に一致するように配置されている。このとき、爪部151,152には、磁石11のN極及びS極から同数の磁力線が出入りする。このため、第1ヨーク121と第2ヨーク122の内部で、それぞれ磁力線が閉じられている。したがって、第1ヨーク121と、第2ヨーク122との間に磁束が漏れることなく、磁気センサ13が検出する磁束密度は、ゼロとなる。
【0037】
入力軸41と、出力軸43との間にねじれトルクが印加されて、トーションバー42にねじれ変位が生じると、磁石11と一対の磁気ヨーク12との相対位置が周方向に変位する。これにより、図3(a)と図3(c)に示すように、磁気ヨーク12に設けられた爪部151,152の中心と、磁石11のN極とS極との境界が一致しなくなるため、磁気ヨーク12には、N極又はS極の極性を有する磁力線が増加する。
【0038】
この場合、第1ヨーク121と第2ヨーク122は、それぞれ逆の極性を有する磁力線が増加するので、第1ヨーク121と第2ヨーク122との間において、磁束密度が増加する。より詳しくは、磁石11に対して磁気ヨーク12との相対位置が周方向に変位した場合、第1ヨーク121の壁部161と、第2ヨーク122の壁部162との間には、軸方向において変位に応じて磁束密度が増加する。
【0039】
磁気センサ13により検出される磁束密度は、トーションバー42のねじれ変位量に略比例し、かつ、トーションバー42のねじれ方向に応じて極性が反転する。磁気センサ13は、この磁束密度を検出し、電圧信号として出力する。電圧信号の電圧は、磁束密度、すなわち、ねじれ変位量に略比例する。そして、ねじれトルクは、ねじれ変位量に比例するため、電圧信号の電圧も、ねじれトルクに比例することとなる。したがって、トルク検出装置10は、ねじれトルクに応じた電圧信号を出力することが可能となる。
【0040】
ところで、磁力線は、第1ヨーク121(又は第2ヨーク122)の形状に沿って透磁率が最大となるルートを通過する性質があり、また、第1ヨーク121(又は第2ヨーク122)の中では、磁力線が交わることなく、極力、直進する性質がある。このため、爪部151,152から径方向外側に位置し、他方の磁気ヨーク側に軸方向に延びるように設けられた壁部161,162の場合、径方向外側よりも内側の方が、磁束密度が小さくなりやすい。
【0041】
すなわち、図5に示すように、第1ヨーク121の爪部151からの磁力線H1は、径方向内側から外側に向かうように、環状部141を直進する。環状部141の端部(外縁)には、磁性体である壁部161が、環状部141に対して直交するように立設されているため、直進してきた各磁力線H1は、第1ヨーク121の形状に沿って磁気抵抗が最小となるように(透磁率が最大となるように)曲がることとなる。すなわち、壁部161に沿うように曲がることとなる。しかしながら、磁力線H1は直進性を有しているため、径方向外側に膨らむように曲がり、壁部161において、径方向外側に集まりやすくなる。つまり、磁力線H1は、径方向外側において、壁部161に沿って曲がる場合が多い。なお、磁力線H1の一部は、そのまま直進し、磁気ヨーク12の外部に漏れる場合もある。また、径方向内側を通る磁力線H1も存在するが、径方向外側と比較して、その数は少なくなる(磁束密度は小さくなる)。
【0042】
このため、先端161a,162a間の磁束密度を検出する場合、径方向外側よりも内側の方が、磁束密度が小さくなりやすい。そこで、径方向内側における先端161a,162a間の距離d3を、径方向外側の距離d2よりも短くして、検出される磁束密度が平均化されるようした。以下、具体的に説明する。
【0043】
図4に示すように、壁部161,162の先端161a,162aには、それぞれ端面が設けられており、一方の先端161aにおける端面は、他方の先端162aにおける端面に対して傾斜している。本実施形態では、壁部161,162の壁面161b,162bに対して斜めとなる端面が設けられている。すなわち、壁部161,162の先端161a,162aには、軸方向に対して斜めとなる端面が設けられている。
【0044】
この端面は、径方向において、壁部161,162の内側の壁面161b,162bとの角度(θ)が鋭角となるように設けられている。すなわち、先端161a,162aの端面は、径方向内側の方が、径方向外側よりも他方の磁気ヨーク側に近づくように設けられている。つまり、先端161aの端面は、径方向内側の方が、径方向外側よりも第2ヨーク122に近づくように(第2ヨーク122との距離が短くなるように)設けられている。先端162aの端面は、径方向内側の方が、径方向外側よりも第1ヨーク121に近づくように(第1ヨーク121との距離が短くなるように)設けられている。
【0045】
これにより、径方向内側における先端161a,162a間の距離d3を、径方向外側の距離d2よりも短くしている。先端161a,162a間の距離が短くなれば、磁気抵抗が小さくなり、検出される磁束密度が大きくなりやすくなる一方、距離が長くなれば磁気抵抗が大きくなり、磁束密度が小さくなりやすくなる。すなわち、先端161a,162a間の距離が短くなれば、磁束の漏れが少なくなり、検出される磁束密度が大きくなりやすくなる一方、距離が長くなれば磁束の漏れが多くなり、磁束密度が小さくなりやすくなる。
【0046】
このため、磁力線H1が、壁部161,162の内部において、径方向外側の方が内側よりも集まりやすくなる状況で、径方向外側における先端161a,162a間の距離d2を、内側の距離d3よりも長くすれば、先端161a,162a間で検出される磁束密度が均されることとなる。これにより、径方向において磁気センサ13の位置ずれが生じても、検出される磁束密度が同様になる。
【0047】
上記構成により、以下の効果を奏する。
【0048】
径方向内側における先端161a,162a間の距離d3を、径方向外側の距離d2よりも短くして、先端161a,162a間に配置された磁気センサ13により、検出される磁束密度が平均化されるようした。すなわち、先端161a,162a間の距離が短くなれば、磁気抵抗が小さくなり、検出される磁束密度が大きくなりやすくなる一方、距離が長くなれば、検出される磁束密度が小さくなりやすくなる。このため、磁力線H1が、壁部161,162の内部において、径方向外側の方が内側よりも集まりやすい場合であっても、磁気センサ13により検出される磁束密度が均されることとなる。これにより、径方向において磁気センサ13の位置ずれが生じても、検出される磁束密度が同様になるようにした。したがって、磁気センサ13が径方向に位置ずれが生じても、同じように磁束密度を検出できるため、磁気センサ13の配置が容易となる。
【0049】
また、同じように磁束密度を検出できるため、検出精度が良くなり、その結果、ねじれトルクの検出精度をよくすることができる。また、磁束密度を平均化する集磁リング等の部材を備えなくてよくなり、部品点数を少なくすることができる。
【0050】
壁部161,162の先端161a,162aは、それぞれ端面を有し、一方の先端161aにおける端面は、他方の先端162aにおける端面に対して傾斜している。このため、先端161a,162aに段差を設けて段階的に径方向内側の距離を短くする場合と比較して、より連続的に距離を短くすることができ、磁束密度を平均化しやすい。
【0051】
また、壁部161,162の壁面161b,162bに対して斜め方向に先端161a,162aを切れば、これらの端面が形成される。このため、径方向内側における先端161a,162a間の距離d3を、径方向外側の距離d2よりも短くすることが容易にできる。また、壁面161b,162bに対して斜めとなる端面を設けることにより、壁部161,162を軸方向に沿って設けることができ、壁部161,162を径方向外側に広がるように設ける場合と比較して、小型化することができる。
【0052】
壁部161,162は、環状部141,142の径方向外側における端部(外縁)に設けられている。磁力線H1は、先端に集まる性質がある。このため、環状部141,142を通過する磁力線H1を、壁部161,162の先端161a,162aに集めることができる。これにより、磁気センサ13が、磁束密度を検出しやすくすることができる。
【0053】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されず、例えば以下のように実施してもよい。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0054】
・壁部161,162において、両側の先端161a,162aに、軸方向に対して斜めとなる端面をそれぞれ設けたが、いずれか一方だけでもよい。例えば、図6に示すように先端161aに、軸方向に対して斜めとなる端面を設ける一方、先端162aには、軸方向に対して直交する端面を設けてもよい。このようにしても、径方向外側の距離d2を、内側の距離d3よりも長くすることができる。
【0055】
・壁部161,162の先端161a,162aには、平面上の同一面となる端面を設けたが、径方向外側の距離d2が内側の距離d3よりも長くなるのであれば、先端の構成を変更してもよい。例えば、段差をつけて段階的に距離を長くしてもよい。また、例えば、曲面であってもよい。
【0056】
・壁部161,162を環状部141,142に対して直交するように設けたが、直交しなくてもよい。より詳しくは、一対の磁気ヨーク12に設けられた壁部161,162のうち、少なくとも一方の壁部は、その先端が当該壁部の基端に対して径方向外側に位置するように、軸方向に対して斜めに設けられているようにしてもよい。
【0057】
例えば、図7に示すように、環状部141,142に対して、斜めとなるように、壁部161,162を設けてもよい。これらの壁部161,162は、その先端161a,162aが壁部161,162の基端(環状部141,142の接続部分)に対してそれぞれ径方向外側に位置するように、軸方向に対して斜めに設けられている。なお、先端161a,162aには、各壁部161,162の壁面161b,162bに対して直交する端面がそれぞれ設けられている。
【0058】
これによれば、径方向の内側における先端161a,162a間の距離d3を、径方向外側の距離d2よりも短くする場合、壁部161,162を環状部141,142に対して斜めに形成すればよく、壁部161,162の先端161a,162aに加工をしなくてもよくなる。また、壁部161,162の先端161a,162aは、基端に対して径方向外側に位置するように設けられている。このため、例えば、壁部161,162が径方向に直交(軸方向)に沿って設けられている場合と比較して、直進性を有する磁力線は、磁気ヨーク12の形状に沿って通過しやすくなり、磁束の漏れを少なくすることができる。つまり、壁部161,162を斜めに設けることにより、壁部161,162が径方向に直交(軸方向)に沿って設けられている場合と比較して、磁気抵抗を小さくすることができる。
【0059】
なお、例えば、図8に示すように、環状部141,142に対して、斜めとなるように壁部161,162を設け、かつ、その先端161a,162aに、各壁部161,162の壁面161b,162bに対して斜めとなる端面を設けてもよい。このようにすれば、径方向の内側における先端161a,162a間の距離d3を、距離d2に対してより短くすることができる。また、いずれか一方の壁部のみ、環状部141,142に対して、斜めに設けてもよい。
【0060】
・第1ヨーク121の外縁に壁部161を設けたが、外縁でなくてもよい。同様に、第2ヨーク122の外縁に壁部162を設けたが、外縁でなくてもよい。
【0061】
・環状部141,142は、軸方向に対して斜め方向に延びるように設けられていてもよい。
【0062】
・磁石11の着磁方向を変更してもよい。この場合、磁石11の着磁方向に合わせて、爪部151,152の形状を任意に変更してもよい。例えば、図9に示すように、軸方向に着磁した場合、爪部151,152を、内縁から軸心に延びるようにすればよい。この場合、第1ヨーク121の爪部151と、第2ヨーク122の爪部152は、周方向において同じ位置に配置される。
【0063】
・環状部141,142の全周に壁部161,162を設けたが、全周に設けなくてもよい。例えば、磁気センサ13を軸方向において挟むように、平面視円弧状の壁部161,162を設けてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…トルク検出装置、11…磁石、12…磁気ヨーク、13…磁気センサ、41…入力軸、42…トーションバー、43…出力軸、121…第1ヨーク、122…第2ヨーク、151,152…爪部、161,162…壁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9