(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハロゲン化ヒートボディオイル、ハロゲン化吹込油、ハロゲン化水素化ヒートボディオイル、ハロゲン化水素化吹込油、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化ポリマー油を含み、前記ポリマー油が、少なくとも1種の再生可能資源由来油または脂肪を含む、重合マクロ開始剤。
前記ポリマー油が、藻類油、動物油、牛脂、ボルネオ獣脂、バター脂、カメリナ油、銀鱈油、キャノーラ油、ひまし油、カカオ脂、カカオ脂代替物、やし油、タラ肝油、ナタネ油、コリアンダー油、とうもろこし油、綿実油、アマナズナ油、フラックスシードオイル、廃水処理施設からの浮遊グリース、ヘーゼルナッツ油、麻実油、にしん油、イリッペ脂、ジャトロファ油、コクムバター、ラノリン、ラード、亜麻仁油、マンゴ核油、魚油、メドウホーム油、メンハーデン油、微生物油、乳脂肪、モーラ脂肪、カラシ油、羊脂、牛脚油、オイチシカ油、オリーブ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、パームオレイン、パームステアリン、ピーナッツ油、フルワラバター、パイルハードオイル、植物油、豚肉ラード、ラディッシュ油、ニガー油、菜種油、米ぬか油、サフラワー油、サル油、アッケシソウ油、イワシ油、サザンカ油、ゴマ油、シア脂肪、シアバター、単細胞油、大豆油、ひまわり種子油、トール油、獣脂、タイガーナッツ油、つばき油、きり油、トリアシルグリセロール、トリオレイン、使用済み食用油、植物油、クルミ油、鯨油、ホワイトグリース、イエローグリース、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される再生可能資源由来の脂肪または油から製造される、請求項1に記載の重合マクロ開始剤。
前記ポリマー油が、共役リノール酸、ルーメン酸(9−cis、11−trans−オクタデカジエン酸)、10−trans、12−trans−オクタデカジエン酸、10−trans、12−cis−オクタデカジエン酸、共役リノレン酸、α−エレオステアリン酸(9−cis、11−trans、13−transオクタデカトリエン酸)、β−エレオステアリン酸(9−trans、11−trans、13−transオクタデカトリエン酸)、ルメレン酸(9−cis、11−trans、15−cis−オクタデカトリエン酸)、プニカ酸(9−cis、11−trans、13−cis−オクタデカトリエン酸)、カタルプ酸(9−trans、11−trans、13−cis−オクタデカトリエン酸)、α−カレンジン酸(8−trans、10−trans、12−cisオクタデカトリエン酸)、β−カレンジン酸(8−trans、10−trans、12−transオクタデカトリエン酸)、ジャカル酸(8−cis、10−trans、12−cisオクタデカトリエン酸)、テトラエン酸、α−パリナリン酸(9−trans、11−cis、13−cis、15−trans−オクタデカテトラエン酸)、β−パリナリン酸(9−trans、11−trans、13−trans、15−trans−オクタデカテトラエン酸)、リソビウム細菌からの2−trans、4−trans、6−trans、11−cisオクタデカテトラエン酸、ペンタエン酸、ボセオペンタエン酸(5−cis、8−cis、10−trans、12−trans、14−cis−ペンタエン酸)、ヘキサエン酸、海藻からの4−cis、7−cis、9−trans、13−cis、16−cis、19−cisドコサヘキサエン酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種または複数の共役脂肪酸を含む、再生可能資源由来の脂肪または油から製造される、請求項1に記載の重合マクロ開始剤。
前記ポリマーが、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニル基、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ジビニルベンゼン、アクリル酸メチル、C1−C6(メタ)アクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート)、アクリロニトリル、アジポニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、ビニル芳香族モノマー、ポリスチレンホモポリマー、ジオレフィン、ニトリル、ジニトリル、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるモノマーから製造される少なくとも1つのAブロックを含む、請求項4に記載のポリマー。
前記ポリマーに、加硫、架橋、相溶化、1種または複数の他の材料との配合、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される方法をさらに行う、請求項4に記載の組成物ポリマー。
成形プラスチック、押出プラスチック、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ハロゲン化ポリビニル製品、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンアロイ、塩素化ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるポリマーに組み込まれた請求項6に記載のポリマーの使用。
【背景技術】
【0002】
[0001] 公共政策立案者や民間企業は、従来の石油化学的原料をその環境および経済的影響のために置き換えることに注目したため、植物油製ポリマーに対する関心が高まっている。近年、再生可能資源由来モノマーのコストは、競争力が高まった(多くの場合、石油化学的原料よりも経済的である)。例えば、大豆油を適切に改質すると(トリグリセリドの抱合や、重合に特に適した大豆油種の開発など)、大豆油系ポリマーの化学的特性、熱的特性、微細構造および形態、ならびに機械的/レオロジー的挙動を微調整して、これらのバイオポリマーをプラスチック産業で有用性の高いものにすることができる。
【0003】
[0002] 今日までに、植物油に従来のカチオンおよびフリーラジカル重合の方法を適用して、熱硬化性プラスチックを生成することにある程度成功した。参照により本明細書にその全体が組み込まれている、Pfister & Larock, Bioresource Technology 101:6200(2010)は、植物油、主にSBOのカチオン共重合を使用して、ソフトラバーから硬質で丈夫なプラスチックに至る種々のポリマーを研究して、開始剤としてボロントリフルオリドジエチルエーテラート(BFE)を用い、熱硬化性プラスチックを生成した。Luらは、ポリマーのポリオール官能基およびハードセグメント含量を変えることにより、エラストマー性ポリマーから硬質プラスチックまでの範囲の様々な特性を有する大豆油系水性ポリウレタンフィルムを合成した(Luら、Polymer 46:71(2005);Luら、Progress in Organic Coatings 71:336(2011)、参照により本明細書にその全体を組み込む)。Bunkerらは、シート成形用複合材、エラストマー、コーティング、発泡体などの様々なバイオ系製品を合成するための大豆油の使用について報告した。例えば、Bunkerらは、アクリル化オレイン酸メチル、大豆油に由来するモノグリセリドのミニエマルジョン重合を使用して感圧接着剤を合成することができた(Bunkerら、International Journal of Adhesion and Adhesives 23:29(2003);BunkerおよびWool, Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry 40:451(2002)、参照により本明細書にその全体を組み込む)。製造されるポリマーは、その石油同等物に匹敵した。
【0004】
[0003] Zhuらは、架橋剤としてエチレングリコールを使用するバルク重合を通して、アクリル化オレイン酸メチルエステルに基づく弾性網状構造を生成することができた(ZhuおよびWool、Polymer 47:8106(2006)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。Luらは、シート成形用化合物用途で使用することができる、大豆油から合成される熱硬化性樹脂を作り出すこともできた。これらの樹脂は、大豆に酸性官能基を導入することにより合成された。酸基は、2価の金属酸化物または水酸化物と反応してシートを形成し、一方、炭素−炭素基は、フリーラジカル重合を受ける(Luら、Polymer 46:71(2005)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。Bonnaillieらは、アクリル化エポキシ化大豆油(AESO)の加圧二酸化炭素発泡法を使用して、熱硬化性発泡体系を作り出すことができた(BonnaillieおよびWool、Journal of Applied Polymer Science 105:1042(2007)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。Woolらは、植物油に由来するトリグリセリドを使用して、高弾性熱硬化性ポリマーおよび複合材に硬化させることができる液状の成形用樹脂を合成することができた。(Woolらによる米国特許第6,121,398号、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。
【0005】
[0004] ブロックコポリマーは、ゴムまたはエラストマーとして;強化エンジニアリング熱可塑性樹脂として;アスファルト改質剤として;樹脂改質剤として;エンジニアリング樹脂として;革およびセメント改質剤として;ゴム靴ヒール、ゴム靴底などの履き物で;タイヤ、ホース、パワーベルト、コンベヤベルト、印刷用ロール、ゴム絞り手、自動車用フロアマット、トラック用泥よけ、ボールミル裏張り、および隙間塞ぎなどの自動車で;感圧接着剤などの接着剤として;航空宇宙装置で;粘度指数向上剤として;洗剤として;診断薬剤およびその担体として;分散剤として;乳化剤として;潤滑剤および/または界面活性剤として;紙添加剤およびコーティング剤として;および食品および飲料包装用材料などの包装で、を含めて、広範囲の用途を有する熱硬化性または熱可塑性であっても良い。
【0006】
[0005] Kraton Performance Polymers, Inc.からKraton(商標)印で販売されている型のスチレン−ブタジエン型ポリマー(例えば、スチレン−ブタジエンジブロック、SB;スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック、SBS)などのスチレン系ブロックコポリマー(SBC)は、長年アスファルトおよび履き物業界で、また、包装、感圧接着剤、包装用材料、感圧接着剤、タイヤ、包装用材料、履き物の業界の市場で、および最大市場の1つであるビチューメン/アスファルトの改質剤として、歴史的に役立ってきた。
【0007】
[0006] 今後10年間の液状アスファルト需要が増加すると予想されるので、標準的なスチレン−ブタジエン型改質剤に代わるアスファルト改質剤として使用可能な、費用効率が高く、環境にやさしく、実行可能な新型ポリマーが特に強く求められている。Global Industry Analysts, Inc.による2011年1月の報告によれば、世界のアスファルト市場は、2015年までに11840万メートルトンに達すると予測されている。アスファルト舗装産業は、アスファルトの最大のエンドユーザー市場区分を占める。中国、インド、および東ヨーロッパの発展途上市場で成長が拡大しているので、今後10年間、道路インフラストラクチャー建設のためにアスファルトの必要性は高まるであろう。アスファルトの需要が高まり、アスファルト材料/舗装材料の性能改善が求められており、アスファルト改質剤に対する好機が生まれている。
【0008】
[0007] 背景としてこの点で、アスファルトの品位は、使用温度での舗装混合物の性能に影響を与える。十分なクラッキング抵抗性のために低温での弾性回復/延性を改善するには、ならびに、持続的荷重のために、および/または高温でのわだち掘れ抵抗性のためにせん断抵抗性を高めるには、多くの場合、ビチューメンの特性を変更する必要がある。アスファルト舗装混合物の性能を高める改良型アスファルト品位を生じるように、ビチューメンの物理的特性は、通常、SBSポリマーを付加して改質される。ポリマー改質型であるアスファルト混合物の内、約80%のポリマー改質型アスファルトは、SBS型ポリマーを使用している。
【0009】
[0008] アスファルトセメントは、一般に、ポリ(スチレン−ブロック−ブタジエン−ブロック−スチレン)(SBS)、熱可塑性エラストマー(TPE)を用い改質されている。ポリマー改質は、アスファルト舗装混合物の物理的および機械的特性を実質的に改善することが知られている。わだち掘れに対する抵抗性を改善する、貯蔵弾性率の増加および位相角の減少の結果、ポリマー改質は、高温でのアスファルト弾性を高める。ポリマー改質は、複素弾性率も高めるが、低温でのクリープ剛性を下げるので、クラッキングに対する抵抗性を改善する(IsacssonおよびLu、「Characterization of Bitumens Modified With SEBS, EVA and EBA Polymer」、Journal of Materials Science 4:737-745(1999)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。SBS型ポリマーは、さらなる性能が望まれる場合やライフサイクルコストを最適化することが保証される場合に、通常、アスファルト舗装材料に添加される。SBSにより、常温混合物、エマルジョンチップシール、および微細表面混合物を含めて、多くの特殊混合物の製造が可能になる。
【0010】
[0009] SBSTPEは、ゴム状ポリブタジエンマトリックス内に整った形態の円柱状ガラス質ポリスチレンブロック領域を作るスチレン−ブタジエン−スチレンポリマー鎖からなるブロックコポリマー(BCP)である(Bulatovicら、「Polymer Modified Bitumen」,Materials Research Innovations 16(1):1-6(2012)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。SBSポリマーは熱可塑性であり、このことは、SBSポリマーが、その直鎖の性質のため、ガラス転移温度より高い温度で、液体として容易に加工できることを意味する。冷却時に、硬質のポリスチレン末端ブロックは、ガラス状になり、また、引き伸ばされたときの回復力を提供することによって液状ゴム領域に対するアンカーの働きをする(FRrEn J.R.,Polymer Science and Technology(Prentice Hall, Upper Saddle River, N.J., 2 ed. 2008)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。
【0011】
[0010] SBSは、高温での混合およびせん断によりアスファルトに組み込まれて、ポリマーを均一に分散する。アスファルトバインダーと混合する場合、ポリマーは、アスファルトマルテン相内で膨張して、連続式三次元ポリマー網状構造を形成する(Lesueur、「The Colloidal Structure of Bitumen: Consequences on the Rheology and on the Mechanisms of Bitumen Modification」、Advances in Colloid and Interface Science 145:42-82(2009)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。高温では、ポリマー網状構造は、流動的になるが、それでもなお混合物の弾性率を高める補強効果を提供する。低温では、アスファルト内の架橋網状構造は、ポリブタジエンの弾性特性によって低温クラッキング性能に悪影響を及ぼさずに再構築される(Airey G. D.、「Styrene Butadiene Styrene Polymer Modification of Road Bitumens」、Journal of Materials Science 39:951-959(2004)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。得られる性能特性により、バインダー−ポリマー系の実用的な温度範囲は拡大する。
【0012】
[0011] SBSで使用されるブタジエンモノマーは、通常、石油化学的原料、エチレン製造の副産物から得られる。しかし、残念ながら、前記の液状アスファルト需要の拡大に関し、原油価格の上昇だけでなく、世界市場における需給シフトの影響で、ブタジエン価格が急騰してきた。シェールガスの供給が豊富になるので、分解反応塔は、エチレンおよびその副産物を製造するためにエタンなどのより軽量の石油化学原料を頻繁に使用している。しかし、より軽量の原料を使用することは、ブタジエンの製造量を減らし、したがって、その供給が厳しくなる(Foster、「Lighter Feeds in US Steam Crackers Brings New Attitude Toward On-purpose Butadiene, Propylene Prospects」、Platts Special Report: Petrochemicals 1-6(2011)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。
【0013】
[0012] 上記で簡単に要約したように、植物油は、20年間にわたり、概してプラスチック産業用のモノマー原料として考えられてきた。今日までに、植物油に従来のカチオンおよびフリーラジカル重合の方法を適用して熱硬化性プラスチック(すなわち、一旦合成すると永久にその形状を維持し、さらなる加工を受けないプラスチック)を生成することに、ある程度成功してきた。しかし、大部分の汎用ポリマーは加工性の高い熱可塑性材料であり、ブタジエンなどの従来のモノマーに対応する植物油系代替物の開発に関する研究は、大きく制限されている。
【0014】
[0013] しかし、最近発行されたCochranらによる米国特許出願第2013/0184383号、「Thermoplastic Elastomers Via Atom Transfer Radical Polymerization of Plant Oil」(以下に、「‘383 Cochranら」または「Cochranら」出願は、Cochranらにより参照により組み込まれている任意の刊行物と共に、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)は、新規な植物油モノマーからの熱可塑性エラストマー組成物、ならびにその製造方法および使用方法を記載している。特に、熱可塑性ブロックコポリマーは、‘383Cochranらの出願に記載されていて、ラジカル重合性モノマーのブロックおよび1種または複数のトリグリセリドモノマーを含む重合植物油のブロックを含む。
【0015】
[0014] Cochranらでは、問題のブロックコポリマーは、少なくとも1つのPAブロックおよび少なくとも1つのPBブロックを含むと要約される。PAブロックは、モノマーAの1つまたは複数の単位を含むポリマーブロックを表し、PBブロックは、モノマーBの1つまたは複数の単位を含むポリマーブロックを表す。モノマーAは、ビニル基、アクリル、ジオレフィン、ニトリル、ジニトリル、またはアクリロニトリルモノマーとして記載され、一方、モノマーBは、1種または複数のトリグリセリドを含むラジカル重合性植物油モノマーである。植物油トリグリセリドは、グリセロール骨格にエステル化した3つの脂肪酸鎖を含む個別のモノマーである。
【0016】
[0015] Cochranらは、熱可塑性ブロックコポリマーまたはポリマーブロックの調製方法も企図し、この場合、1種または複数のトリグリセリドモノマーを含むラジカル重合性植物油モノマーが最初に提供される。次いで、この植物油モノマーは、別の成分として添加された開始剤および遷移金属触媒系の存在下でラジカル重合して、熱可塑性ポリマーを形成する。この熱可塑性ポリマーは、それ自体、熱可塑性エラストマーとして使用することができ、または熱可塑性ポリマーブロックとして使用し、さらに他のモノマーと重合して、重合植物油系熱可塑性ブロックコポリマーを形成することができる。
【0017】
[0016] スチレンを重合トリグリセリドに付加すると、加工性を改善するのに役立ち、ポリマーの溶融状態特性(ガラス転移温度(Tg)、弾性率、など)の制御を手助けし(Woof, R. P. & Sun, X. S., Bio-based Polymers and composites (Academic Press, Burlington, Mass. 2005)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)、ポリスチレンのガラス転移温度(Tg)(100℃)未満で物理的架橋性部位として働くことができる。典型的なSBSエラストマーでは、球状または円柱状スチレン領域がブタジエンのマトリックス中に生じるように、スチレン組成物は約10−30質量%である。温度が、ポリスチレンのガラス転移温度(T=100℃)未満の場合、ポリブタジエンマトリックスは、液状であるが、ガラス質のポリスチレン球体間で結合しており、物理的架橋として働く。温度が、ポリスチレンのガラス転移温度より高い場合、全エラストマー系は、溶融し、容易に加工することができる。架橋ポリ(大豆油)は、−56℃まで低いT値を有すると報告されている(Yangら、Journal of Polymers and the Environment 19:189(2011)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。したがって、重合大豆油は、スチレン系ブロックコポリマーに基づく熱可塑性エラストマー中で液状成分として働く優れた候補であり、1種または複数のポリマー油を含むラジカル重合性の再生可能資源由来ポリマー油マクロ開始剤に基づくポリマーは、その架橋性質のため、大きな改善をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0022] 本発明が企図するマルチブロックコポリマーは、少なくとも1つのPAブロックおよび少なくとも1つのPBブロックを含む。PAブロックは、1つまたは複数の単位のモノマーAを含むポリマーブロックを表し、PBブロックは、ヒートボディオイル、吹込油、コポリマー油、水素化ヒートボディオイル、水素化吹込油、または水素化コポリマー油の少なくとも1つを含む重合植物油マルチブロックである。
【0024】
[0023] ヒートボディオイル、吹込油、コポリマー油、水素化ヒートボディオイル、水素化吹込油、または水素化コポリマー油(集合的に「ポリマー油」と呼ばれる)は、それぞれハロゲン化ヒートボディオイル、ハロゲン化吹込油、ハロゲン化コポリマー油、ハロゲン化水素化ヒートボディオイル、ハロゲン化水素化吹込油、またはハロゲン化水素化コポリマー油(集合的に「ハロゲン化ポリマー油」と呼ばれる)を形成するためにハロゲン化されている。ハロゲン化ポリマー油は、次の原子移動ラジカル重合でマクロ開始剤およびBマルチブロックとして働き、個別の開始剤分子を添加する必要はない。
【0025】
[0024] マルチブロックコポリマーは、直鎖または分枝コポリマーとすることができ、2つ以上のブロックを含み得る。例示的なコポリマー構造は、これに限定されないが、(PA−PB)
n、(PA−PB)
n−PA、PB−(PA−PB)
n、および(Pa
n’−PB)
nを含み、この場合、nおよびn’は、0より大きい。例えば、nは、2〜50、または2〜10の範囲にあり、n’は、0.01〜200の範囲にある。
【0026】
[0025] PAブロックは、1種または複数のラジカル重合性モノマーを重合することにより製造され、約1〜約300kDa、または約10〜約30kDaの平均分子量を有する。PAブロックは、モノマーAの繰り返し単位を含み得る。例えば、PAブロックは、重合直鎖または分岐鎖のモノマーAまたはその基とすることができる。PBブロックは、1種または複数のポリマー油を含み、約2kDa〜約500kDa、または約6〜約100kDaの平均分子量を有する。PBブロックは、ポリマー油の繰り返し単位を含み得る。例えば、PBポリマー油ブロックは、重合直鎖もしくは分岐鎖ポリマー油または水素化ポリマー油、またはその基とすることができる。
【0027】
[0026] PA−PBマルチブロックコポリマーは、通常、約5質量%〜約95質量%の重合Aブロックおよび約95質量%〜約5質量%の重合再生可能資源由来ポリマー油Bマルチブロックを含む。マルチブロックは、PAブロック付加用の重合開始の部位を1つより多く有し、PBブロック当たり1つまたは複数のPAブロックを生じ得るB成分を意味する。
【0028】
[0027] ブロックコポリマーのPAブロックは、「ハード」ブロックとして考えることができ、高温での加工に必要な安定性を有し、さらに、軟化する温度以下で良好な強度を有するという熱可塑性物質の特徴的な特性を有する。PAブロックは、ビニル基、アクリル、ジオレフィン、ニトリル、ジニトリル、アクリロニトリルモノマーなどの種々のモノマーを含み得る1種または複数のラジカル重合性モノマーから重合される。ビニル芳香族モノマーは、ブロックコポリマーで使用することができる例示的なビニルモノマーであり、場合によっては芳香族部分に1つまたは複数の置換基を有する任意のビニル芳香族を含む。芳香族部分は、単環でも多環でもよい。例示的なPAブロック用モノマーには、スチレン、a−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ジビニルベンゼン、アジポニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、およびそれらの混合物が含まれる。さらに、2種以上の異なるモノマーは、PAブロックの形成で一緒に使用することができる。本明細書で使用される典型的なラジカル重合性モノマーAは、スチレンであり、得られるPAブロックは、スチレンホモポリマーである。
【0029】
[0028] ブロックコポリマーのPBブロックは、「ソフト」ブロックとして考えることができ、エラストマー性の特性を有し、このため、加えられた応力を吸収し、消散させ、次いでその形状を回復することができる。PBブロックは、1種または複数のトリグリセリドを含む1種または複数の再生可能資源由来ポリマー油および脂肪を含む。ブロックコポリマーで使用される再生可能資源由来ポリマー油および脂肪は、ラジカル重合性の任意の植物油、特に、1つまたは複数の型のトリグリセリドを含むもの、特に、乾性油とすることができる。
【0030】
[0029] 本開示の、ラジカル重合性マクロ開始剤を製造する方法、およびそれからブロックコポリマーを製造する方法は、重合油を用いて開始する。
【0031】
[0030] リンシード(フラックスシード)、菜種、サフラワー、大豆、トール、オイチシカ、トウゴマ、海洋生物、単細胞、および藻類は、重合油生成用の出発物質として使用される望ましいトリグリセリドモノマーの原料例である。任意の再生可能資源由来脂肪または油は、トリグリセリドモノマー出発物質に取り込み、ポリマー油に添加し、または本発明のマクロ開始剤に添加することができる。乾性油が好ましい。再生可能資源由来油モノマーは、汎用油トリグリセリドの誘導体を含む。植物油モノマーは、単一のトリグリセリド分子を意味する。本明細書で定義される「トリグリセリド」は、植物油、微生物油、または動物油、ならびに任意の非改質型トリグリセリド誘導体を含めて、再生可能資源由来油および脂肪に天然に存在する任意の非改質型トリグリセリドを表し得る。非改質型トリグリセリドは、3つの類似または異なる脂肪酸を有するグリセロールに由来する任意のエステルを含み得る。
【0032】
[0031] 前述のように、トリグリセリドは、グリセロール骨格にエステル化した3つの脂肪酸鎖を含む個別のモノマーである。典型的な市販の再生可能資源由来油モノマーには、リンシード(フラックスシード)、菜種、サフラワー、大豆、トール、オイチシカ、トウゴマ、海洋生物、単細胞、および藻類からの油が含まれ、これらは、二重結合を多く含み得る。他の再生可能資源由来油モノマーには、動物油、牛脂、ボルネオ獣脂、バター脂、カメリナ油、銀鱈油、キャノーラ油、ひまし油、カカオ脂、カカオ脂代替物、やし油、タラ肝油、ナタネ油、コリアンダー油、とうもろこし油、綿実油、アマナズナ油、亜麻油、廃水処理施設からの浮遊グリース、ヘーゼルナッツ油、麻実油、にしん油、イリッペ脂、ジャトロファ油、コクムバター、ラノリン、ラード、亜麻仁油、マンゴ核油、魚油、メドウホーム油、メンハーデン油、乳脂肪、モーラ脂肪、カラシ油、羊脂、牛脚油、オリーブ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、パームオレイン、パームステアリン、ピーナッツ油、フルワラバター、豚肉ラード、ラディッシュ油、ニガー油、菜種油、米ぬか油、サフラワー油、サル油、アッケシソウ油、イワシ油、サザンカ油、ゴマ油、シア脂肪(shea fat)、シアバター、大豆油、ひまわり種子油、トール油、獣脂、タイガーナッツ油、つばき油、きり油、トリアシルグリセロール、トリオレイン、使用済み食用油、植物油、クルミ油、鯨油、ホワイトグリース、イエローグリース、および誘導体、共役誘導体、遺伝子組換え誘導体、ならびにそれらの任意の混合物が含まれる。
【0033】
[0032] 共役トリグリセリドは、1種または複数の共役脂肪酸(少なくとも1つの対の共役二重結合を含む脂肪酸)を含むトリグリセリドとして定義される。例示的な共役脂肪酸は、共役リノール酸、例えば、ルーメン酸(9−cis、11−trans−オクタデカジエン酸);10−trans、12−trans−オクタデカジエン酸;10−trans、12−cis−オクタデカジエン酸;共役リノレン酸、例えば、α−エレオステアリン酸(9−cis、11−trans、13−transオクタデカトリエン酸);β−エレオステアリン酸(9−trans、11−trans、13−transオクタデカトリエン酸);ルメレン酸(9−cis、11−trans、15−cis−オクタデカトリエン酸);プニカ酸(9−cis、11−trans、13−cis−オクタデカトリエン酸);カタルプ酸(9−trans、11−trans、13−cis−オクタデカトリエン酸);α−カレンジン酸(8−trans、10−trans、12−cisオクタデカトリエン酸);β−カレンジン酸(8−trans、10−trans、12−transオクタデカトリエン酸);ジャカル酸(8−cis、10−trans、12−cisオクタデカトリエン酸);テトラエン酸、例えば、α−パリナリン酸(9−trans、11−cis、13−cis、15−trans−オクタデカテトラエン酸);β−パリナリン酸(9−trans、11−trans、13−trans、15−trans−オクタデカテトラエン酸);リソビウム細菌からの2−trans、4−trans、6−trans、11−cisオクタデカテトラエン酸;ペンタエン酸、例えば、ボセオペンタエン酸(5−cis、8−cis、10−trans、12−trans、14−cis−ペンタエン酸);ヘキサペンタエン酸、例えば、海藻からの4−cis、7−cis、9−trans、13−cis、16−cis、19−cisドコサヘキサエン酸である。トリグリセリド誘導体は、共役系(すなわち、トリグリセリド中の非局在電子を有する結合したp−軌道の系)を含む任意のトリグリセリドモノマーを含み得る。共役トリグリセリドモノマーは、トリグリセリドモノマー当たり単一の共役部位を含み得る。あるいは、トリグリセリドモノマーの2つまたは3つすべての脂肪酸鎖は、1つまたは複数の共役部位を含み得る。
【0034】
[0033] 不飽和の高い油(乾性油)の多官能性により、トリグリセリドモノマーの架橋が可能になり、ヒートボディオイル、吹込油、コポリマー油などの非可逆的に架橋した熱硬化性ポリマー油を形成する。例えば、大豆油は、重合油高分子を生成するために標準的な重合の化学で必要な二重結合を含む86%のモノおよびポリ不飽和脂肪酸分子で構成されている。
【0035】
[0034] 再生可能資源由来ポリ不飽和油から調製したポリマー油の例には、熱重合(ヒートボディ)油(スタンド油としても知られている)、吹込油、およびコポリマー油が含まれる(Fox, F., Oils for Organic Coatings, in Federation Series on Coating Technology, Unit Three, Federation of Societies for Paint Technology, Philadelphia, PA, 1965、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。これらのポリマー油は、商品として広く入手可能である。
【0036】
[0035] トリグリセリドモノマーを吹込油、ヒートボディオイル、またはコポリマー油に転化するプロセスでは、分子間結合が、再生可能資源由来トリグリセリドモノマー間に形成される。得られる生成物は、しばしば最初のトリグリセリドモノマーより粘度が高く、食用に適さない。ポリマー油の形成では、トリグリセリドは、ダイマー、トリマー、およびオリゴマーを形成し、絡み合いが増す(Paschke, R. F. およびWheeler, D. H.、 Inter- and Intramolecular Polymerization in Heat-Bodied Linseed Oil, J. Amer. Oil Chem. Soc. 31, pp. 208-211, 1954、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。さらに、分子内結合は、トリグリセリドモノマー内の脂肪酸間で形成され、ポリマー油の架橋性が高まり、その結果、臨界絡み合い点間分子量が増加する。
【0037】
[0036] ヒートボディングでは、使用する油に依存して、トリグリセリドモノマーは、重合を触媒するために加熱され高温(例示的な範囲は約288℃〜約316℃である)に保持される。加熱処置は、所望の粘度を有する生成物が得られるまで続けられる。反応時間を長くすると、しばしば二重結合を含む六員環の形成により、架橋の割合が高くなるため生成物の粘度が上昇する。環はしばしば分子間で生じ、2つのトリグリセリドモノマー分子を結合してダイマーを生成する。(Heat bodying of Drying Oils, J. Amer. Oil 27(11) 468-472, 1950)。ヒートボディオイルの粘度は、P〜Z
9の範囲値のスケールを使用して記述される。ヒートボディング(熱重合)反応の間、不飽和のトリアシルグリセロールモノマーは、反応して、ダイマーやトリマーなどのポリマーを形成する。重合が起こると、元のトリアシルグリセロールの二重結合により占有されていた部位にトリアシルグリセロール単位間の新しい炭素−炭素結合が形成されるため、油のヨウ素価は減少する。分子間と分子内結合の両方が形成される。トリグリセリドモノマーのグリセロールと脂肪酸の間のエステル結合は、概してそのままである。ヒートボディングによりトリグリセリドモノマーからポリマー油に変換されるという、亜麻仁油が受けた大きな変化は、要約されている(「Linseed oil. Changes in physical and chemical properties during heat-bodying」、Caldwell and Mattiello, Ind. Eng. Chem. 24(2) 158-162 1932、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。ヒートボディオイルは、食用に適さず、速乾性エナメル、油ワニス、プライマー、ラッカー、アンダーコート、つやなし塗料、マスチック、シーラント、目地仕上げ用ペースト、印刷用インク、木材防腐剤、さび止め剤、コアオイルなどのコーティングで使用される。OKO M25(商標)、OKO M37(商標)、Alinco Y(商標)およびAlinco Z2/Z3(商標)は、Archer Daniels Midland Company、ディケーター、イリノイ州、米国から入手可能のヒートボディオイルの例である。
【0038】
[0037] トリグリセリドモノマーを重合する別の方法は、金属石鹸、脂肪酸、または鉛、マンガン、およびコバルトの塩などの触媒(いわゆる「ドライヤー触媒(drier catalyst)」)を通常用い加熱しながら油内に空気の気泡を発生させて、多様な工業用途を有する「吹込油」を形成することによる。油は、重合され、一部は酸化され、遊離ヒドロキシル基が形成される。例えば、約110℃の温度で加熱しながらトリグリセリドモノマー内に空気の気泡を発生させることによる重合および部分的酸化により、吹込油が調製される。(2010年11月30日に発行されたBloomおよびHolzgraefeによる米国特許第7,842,746号、「Hydrogenated and Partially Hydrogenated Heat-Bodied Oils and Uses Thereof」;Fox, F., Federation Series on Coatings Technology, Unit Three(1965)25-26頁、参照により本明細書にその全体を組み込む)。吹込トリアシルグリセロール油は、トリアシルグリセロール単位間に炭素−炭素およびエーテル結合を有する。(Teng, G. ら、 Surface Coatings International, Part B: Coatings Transactions 86(B3): 221-229(2003)、要旨、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。吹込みによりトリグリセリドモノマーがポリマー油に転化される場合に起こる変化は、以下のように要約された。「…亜麻仁油に100〜200℃の範囲の温度で空気を吹込み、試料を時々分析した際に、以下の事実が明らかになった。粘度、けん化価、密度、酸価、ヒドロキシル価、およびエタノール耐性は、時間、温度、さらに熟成度が増すとともに増加し、乾燥時間は減少した…(189)」(Wexler, H. Polymerization of Drying Oils, Chemical Reviews 64(6) 591-611, 1964, citing Uber geblasene Leinole, Wilaborn and Morgner, Fette, Siefen, Anstrichmittel 57 178181(1955)、参照により本明細書にその全体を組み込む)。食用に適さない吹込油は、従来、革用のグリース処理などの用途で、およびエナメル革塗布、リソグラフィー、インク、可塑剤、アルキド樹脂、コーティング、ワニス、コーキング剤、パテ、マスチック、さび止め剤、セラミック解膠剤の用途で、ならびに、従来のトリグリセリドモノマー油が適さない、潤滑油として使用されてきた。Blown Soya J−L(商標)は、Werner G. Smith Company、クリーブランド、オハイオ州、米国から市販されている吹込大豆油である。
【0039】
[0038] トリグリセリドモノマーを重合する別の方法は、不飽和天然油をスチレン、ビニルトルエン、無水マレイン酸、またはジシクロペンタジエンなどの少なくとも1種の反応性コモノマーと共に加熱処理して、「コポリマー油」を形成することによる(Copolymerization, J. Amer. Oil Chem. Soc. 27(11)481-491 1950、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。トリグリセリドモノマーと反応性コモノマーの混合物は、例えば75−135℃に加熱され、20−50時間継続してもよい。高温では、ゲルを形成し得る(米国特許第2382213号、1945年8月14日発行、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。空気または酸素は、プロセスの間、油中を通過することができる。マレイン化およびジシクロペンタジエン油などの再生可能資源系コポリマー油は、速い乾燥時間および耐水性により評価される。そのようなコポリマー油を再生可能油モノマーまたは改質型油モノマーと混合すると、特徴的な特性を有し、より多様な化学的特性も提供する油混合種を生じる。Toplin X−Z(商標)は、Archer Daniels Midland Company、ディケーター、イリノイ州、米国から入手可能なコポリマー油である。
【0040】
[0039] ポリマー油、ポリマー油とモノマー油との組み合わせ、およびマクロ開始剤のそれぞれは、油中の二重結合の数を減らすために部分的にまたは完全に水素化されていてもよい。「水素化」という用語は、種々の度合いの部分的および完全な水素化を含む。部分的水素化を行うと、油は、いくつかの二重結合を保持して、誘導体化のために有用な部位を提供することができる。油の水素化の程度を制御することにより、部分的に水素化されたヒートボディオイル、吹込油、および/またはコポリマー油から製造されるポリマーの諸特性を選択または調整することができる。マクロ開始剤のハロゲン成分の置換を防ぐためにマクロ開始剤を水素化する場合は、触媒および条件を慎重に選択する必要がある。再生可能資源由来油および脂肪の水素化に適した方法の記載は、前に引用された米国特許第7,842,746号の開示で提供される。通常、ヨウ素価(「IV」)は、組成物中の二重結合を定量するために使用される。亜麻仁油トリグリセリドモノマーのIVは、約135〜約175の範囲にあり、ポリマー亜麻仁油(ヒートボディ亜麻仁油)のIVは、例えば、約115−150の範囲にある。組成物の物理的特性は、実験的に決定することができるが、油のヨウ素価は、本開示の任意の所与の実施形態で二重結合を定量するために使用することができる。トリグリセリドモノマー、ポリマー油、ポリマー油とモノマー油との組み合わせ、またはマクロ開始剤が水素化されている場合、組成物のIVは減少する。ポリマー油またはポリマー油とモノマー油との組み合わせは、それから製造されるブロックコポリマーの広範な物理的特性を提供するために、ハロゲン化の前に水素化されていてもよい。本出願の特許請求の範囲に記載するマクロ開始剤のIV値は、約110未満、別の実施形態では約70未満、さらに別の実施形態では約30未満となり得る。
【0041】
[0040] 再生可能資源由来トリグリセリドモノマーは、そのトリグリセリド構造を維持しながら、ある種の反応を受ける可能性がある。例えば、水素化は、広く実施され、二重結合を除去する。ポリマー油またはハロゲン化ポリマー油マクロ開始剤は、非改質型または改質型再生可能資源由来脂肪および油モノマーと混合することができる。さらに、油モノマーの1つまたは複数の脂肪酸(脂肪アシル)鎖の1つまたは複数の不飽和部位に酸素ヘテロ原子を結合させて、エポキシ化を実施することができる。そのような非改質型または改質型トリグリセリドモノマーを重合油またはハロゲン化重合油マクロ開始剤と混合すると、特徴的な特性を有し、より多様な化学的特性を提供する油ブレンドを生じる。
【0042】
[0041] 熱可塑性ブロックコポリマーを形成するためのモノマーAとBのラジカル重合は、活性ポリマー鎖末端としてフリーラジカルを用いるリビング/制御重合を含むリビングフリーラジカル重合を通して実施することができる。(Moadら、「The Chemistry of Radical Polymerization-Second Fully Revised Edition」、Elsevier Science Ltd.(2006)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。重合のこの形態は、付加重合の形態であり、この場合、成長ポリマー鎖が停止する能力は除去された。したがって、連鎖開始の速度は、連鎖成長反応の速度よりかなり大きい。ポリマー鎖は、従来の連鎖重合の場合に比べより一定の速度で成長し、その長さは非常に類似しているという結果が得られている。リビングフリーラジカル重合の一形態は、原子移動ラジカル重合である。
【0043】
[0042] 原子移動ラジカル重合(ATRP)は、成長ポリマー鎖と触媒との間の不安定なラジカル(例えば、ハロゲン化物ラジカル)の容易な移動を経て制御された重合を実現する、触媒使用の可逆的酸化還元プロセスである(Davisら、「Atom Transfer Radical Polymerization of tert-Butyl Acrylate and Preparation of Block Copolymers」、Macromolecules 33:4039-4047(2000);Matyjaszewskiら、「Atom Transfer Radical Polymerization」、Chemical Reviews 101:2921-2990(2001)、参照により本明細書にその全体を組み込む)。従来のATRPでは、連鎖停止および移動反応は、フリーラジカル濃度を低く保つことにより本質的に取り除かれる。ATRPが働くメカニズムは、簡潔に、次のように要約することができる。
【0045】
[0043] 平衡式(1)では、不安定なラジカルXは、ポリマーPの末端に結合したハロゲン(例えば、Br、Cl)であってもよい。触媒、Cu
IBr、は、可逆的にこのハロゲンを取り除き、ポリマーフリーラジカル(P・)を形成する。不活性ポリマーと活性ポリマーフリーラジカルの間で達成した平衡は、左側に強く傾く(K<<10
−8)。平衡式(2)は、長さiのポリマーとモノマーMの間の標準フリーラジカル成長反応である。平衡式(1)により確保される低いフリーラジカル濃度は、実質的に停止反応を除去し、ハロゲン官能基は、生成されるポリマー上に保持され、従来のフリーラジカル重合に適しているほぼ任意のモノマーからのマルチブロックコポリマーの製造が可能になる。
【0046】
[0044] ATRP重合反応は、開始反応と共に始まる。開始反応は、従来、フリーラジカル形成するために分解することができる薬剤を添加することにより行われる。開始剤が分解したフリーラジカルフラグメントは、モノマー−フリーラジカルを生じるモノマーを攻撃し、最終的に重合を成長させることができる中間体を生成する。これらの薬剤はしばしば「開始剤」と呼ばれる。開始反応は、通常、種々の遷移金属化合物と開始剤との間の酸化還元反応における成長ラジカルの可逆的形成に基づく。適切な開始剤は、使用されるモノマーの種類、触媒系の種類、溶媒系および反応条件を含めて、重合の詳細に大きく依存する。単純な有機ハロゲン化物は、通常、モデルハロゲン原子移動開始剤として使用される。本発明は、別の開始剤の添加を必用としない。
【0047】
[0045] 再生可能資源由来油または脂肪ポリマー油ブロックの重合では、ポリマー油マクロ開始剤の存在のため自己開始が起こり、別の開始剤は、不要である。さらに、スチレンなどのビニル芳香族ブロックでは、熱自己開始が、追加の開始剤を必要とせずに起こり得る。
【0048】
[0046] ATRPでは、反応媒体への触媒系の導入は、活性状態(ポリマー成長のための活性ポリマーフリーラジカル)とドーマント状態(形成された不活性ポリマー)との間の平衡を確立するために必要である。触媒は、通常、遷移金属化合物であり、開始剤およびドーマントポリマー鎖と共に酸化還元サイクルに加わることができる。従来のATRPで使用される遷移金属化合物は、遷移金属ハロゲン化物である。開始剤およびドーマントポリマー鎖と共に酸化還元サイクルに加わることができるが、ポリマー鎖と直接のC−金属結合を形成しない任意の遷移金属は、本発明で適している。例示的な遷移金属には、Cu
1+、Cu
2+、Fe
2+、Fe
3+、Ru
2+、Ru
3+、Ru
4+、Ru
5+、Ru
6+、Cr
+2、Cr
+3、Mo
0、Mo
1+、Mo
2+、Mo
3+、W
2+、W
3+、Mn
3+、Mn
4+、Rh
+、Rh
2+、Rh
3+、Rh
4+、Re
2+、Re
3+、Re
4+、Co
+、Co
2+、Co
3+、V
2+、V
3+、V
4+、V
5+、Zn
+、Zn
2+、Au
+、Au
2+、Au
3+、Hg
+、Hg
2+、Pd
0、Pd
+、Pd
2+、Pt
0、Pt
+、Pt
2+、Pt
3+、Pt
4+、Ir
0、Ir
+、Ir
2+、Ir
3+、Ir
4+、Os
2+、Os
3+、Os
4+、Nb
2+、Nb
3+、Nb
4+、Nb
5+、Ta
3+、Ta
4+、Ta
5+、Ni
0、Ni
+、Ni
2+、Ni
3+、Nd
0、Nd
+、Nd
2+、Nd
3+、Ag
+、およびAg
2+が含まれる。本明細書で使用される典型的な遷移金属触媒系は、ハロゲン化銅(I)である。配位子は、遷移金属と成長ポリマー基の間の直接結合が形成されず、形成されるコポリマー材料が単離されるように、遷移金属化合物に配位する働きをする。配位子は、σ結合を形成する遷移金属に配位する任意のN−、O−、P−もしくはS−含有化合物、π結合を形成する遷移金属に配位する任意のC−含有化合物、またはC−遷移金属σ結合を形成する遷移金属に配位するが、重合条件下でモノマーとC−C結合を形成しない任意のC−含有化合物とすることができる。本明細書で使用される典型的な配位子は、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)である。
【0049】
[0047] 最新式ATRPの見直しが行われた(Matyjaszewskiら)。ATRP反応のための開始剤、触媒/配位子系の選択の詳細は、Matyjaszewskiらによる米国特許第5,763,548号およびMatyjaszewskiらによる米国特許第6,538,091号に記載されており、参照により本明細書にその全体が組み込まれている。
【0050】
[0048] 熱可塑性エラストマーを調製するためのスチレンとポリマー油マクロ開始剤のATRPでは、重合は、120℃以下の温度で実施することができる。最適温度は、重合が妥当な時間、例えば、6−48時間で起こり得る最低値である。エラストマーを製造するためのポリマー油マクロ開始剤のATRPでは、高い分子量および低いガラス転移温度(T
g)のマクロ開始剤の利点、および末端ハロゲンの保持により、次のポリスチレンブロックの付加が可能になる。したがって、従来のラジカル重合の場合のような高い反応温度は、ポリマー油マクロ開始剤のATRPでは望ましくない。スチレンおよびBO、HBOまたはCPOマクロ開始剤油のATRP用の典型的な反応温度は、140℃以下である。
【0051】
[0049] ちなみに、臭化ベンジルまたは塩化ベンジルは、スチレンおよびポリマー油のATRPで開始剤として使用することができる。CuX(この場合、X=BrまたはCl)は、触媒系として使用することができ、PMDETAは、配位子として使用することができる。通常、Cu
IX:PXのモル比1:1は、得られるポリマーの活性状態とドーマント状態の間の平衡を確立するのに十分である。ポリマーフリーラジカル濃度をさらに低減するために、CuX
2をカウンター触媒(counter-catalyst)として使用することができる。通常、カウンター触媒:触媒のモル比0.1:1および配位子:(触媒およびカウンター触媒)のモル比1:1が、触媒の溶媒和を確保するために望ましい。5:1〜1000:1の範囲で変化し得る比により、得られるポリマーの分子量は、ある程度左右される。
【0052】
[0050] 本発明では、ポリマー油のハロゲン化の度合いは、マクロ開始剤部位の数を決定し、得られるマルチブロックコポリマーの分子量は、マクロ開始部位の数、モノマーAの重量、および重合反応の長さの調整により調節することができる。
【0053】
[0051] ATRP反応用の溶媒は、ポリマー油マクロ開始剤/ポリスチレン相互の溶解度および重合温度と両立する沸点の要件に基づき選択される。スチレンおよびポリマー油マクロ開始剤のATRPで使用される溶媒は、トルエン、THF、クロロホルム、シクロヘキサン、またはその混合物であってもよい。スチレンおよびポリマー油マクロ開始剤油のATRPで使用される典型的な溶媒は、トルエンである。反応のモノマーおよびマクロ開始剤の濃度は、モノマー、マクロ開始剤、およびポリマー生成物の溶解度、ならびに溶媒の蒸発温度に部分的に依存する。ATRP反応の溶媒中に溶解しているモノマーおよびマクロ開始剤の濃度は、5%〜100%(モノマーおよびマクロ開始剤の合計、重量比)の範囲を取り得る。通常、溶媒中のモノマーとマクロ開始剤の濃度の合計は、得られるポリマーの溶解性を保証し、さらに早期ゲル化を防ぐために、50質量%未満である。
【0054】
[0052] ATRPなどの制御されたラジカル重合は、開始部位の数を制限し、連鎖移動および停止の反応速度を大きく下げ、ブロックコポリマー(BCP)などの特注鎖構造を製造する能力も導入する。1種または複数のポリマー油を含むラジカル重合性の再生可能資源由来ポリマー油マクロ開始剤の重合にATRPを適用する利点は、他の成長鎖からの新しい鎖分岐の開始反応が妨害されることである。しかし、最終的にゲル化につながる鎖分岐は、それでも可能であり、重合速度やポリマー濃度が大きくなり過ぎると、急速に進行するであろう。遊離モノマー上とすでに鎖に組み込まれている繰り返し単位上の両方のすべての官能部位に対する成長鎖の反応性が同一の場合、ゲル化の前に、1種または複数のポリマー油を含むラジカル重合性の再生可能資源由来ポリマー油マクロ開始剤のポリマーが、有用な機械的特性が生じるのに十分な重合度をまだ達成しないように、ゲル化点は、非常に低い転化の時点で到達するであろうと一般に予想される。この一般的な予想は、従来のカチオンおよびフリーラジカル重合により製造される植物油製熱硬化性樹脂についての過去20年間の報告により支持される。
【0055】
[0053] 従来のATRPでは、反応媒体へのCu
IXの導入は、活性状態とドーマント状態の間の平衡を確立するために必要である。通常、Cu
IIX:PXのモル比1:1は、この平衡を確立するのに十分である(Matyjaszewskiら、2001)。ある従来系では、平衡は右側に行き過ぎであり、反応温度に独立の平衡を制御するためにカウンター触媒、Cu
IIX
2、を導入しなければ、重合は制御不能である。(Behlingら、「Influence of Graft Density on Kinetics of Surface-Initiated ATRP of Polystyrene from Montmorillonite」、Macromolecules 42:1867-1872(2009);Behlingら、「Hierarchically Ordered Montmorillonite Block Copolymer Brushes」、Macromolecules, 43(5): 2111-2114(2010)、参照により本明細書にその全体を組み込む)。
【0056】
[0054] 本発明は、ハロゲン化ポリマー油が合成可能であり、ATRPにおいてマクロ開始剤として有用であるとの発見を含む。本発明では、ポリマー油または水素化ポリマー油は、ハロゲン化されて、Bモノマーに組み込まれているハロゲン重合開始剤を有するポリマー油マクロ開始剤を形成する。ハロゲンは、ブロックコポリマーを製造するための重合用の開始部位として働く。ポリマー油上のマクロ開始剤部位に対するスチレンモノマーの比は、ポリスチレンブロックの分子量を決定し、それから製造されるブロックコポリマーの諸特性を制御するよう調節可能である。
【0057】
[0055] 再生可能油から製造されるポリマー油または水素化ポリマー油は、直接ハロゲン化され得る。ポリマー油または水素化ポリマー油がハロゲン化される場合、ポリマー油に結合するハロゲンは、マルチブロック共重合のための開始部位として働く。適切なマクロ開始剤の実施形態には、ハロゲン化ヒートボディオイル、ハロゲン化吹込油、ハロゲン化コポリマー油、ハロゲン化水素化ヒートボディオイル、ハロゲン化水素化吹込油、およびハロゲン化水素化コポリマー油が含まれる。ハロゲン開始剤部位に対するポリマー油の比は、ポリスチレンブロック形成用の開始点の数を決定する。
【0058】
[0056] 本発明のマクロ開始剤の開始剤部位の量は、マクロ開始剤から製造されるマルチブロックコポリマーの諸特性を調節して制御することができる。ポリマー油当たりのハロゲン開始部位を多く有するマクロ開始剤は、耐衝撃性改良剤として有用な硬質で、ガラス質のポリマーを製造することができる。ポリマー油当たりのハロゲン開始部位を少なく有するマクロ開始剤は、固体でゴム型の、場合によっては粘着性を有する熱可塑性材料を製造することができ、適切な条件下では熱硬化性とすることができる。ゴムのような特性を有するマルチブロックコポリマーを得るために、マクロ開始剤Bブロック上のマクロ開始部位の数は、少なくすることができ、またはポリマー油は、主要な相として存在することができる。ハロゲン化ポリマー油を質量の半分以上使用することにより、得られる高い臨界絡み合い点間分子量は、所望の特性を有するポリスチレン系ブロックコポリマーを提供する。
【0059】
[0057] ハロゲン化によるマクロ開始剤の形成は、ポリマー油の少なくとも3つの官能基のいずれかで起こり得る。第一の実施形態では、ポリマー形成後の脂肪酸二重結合の残りは、ハロゲン化されて、マクロ開始剤を形成する。第二の実施形態では、マクロ開始剤は、ポリマー油に存在するヒドロキシル基のハロゲン化により形成される。第三の実施形態では、ポリマー油の脂肪酸部分のα炭素は、ハロゲン化され得る。
【0060】
[0058] ポリマー分子量の1つの評価基準は「Mn」であり、試料中の全ポリマーの総重量を試料中のポリマーの総数で割ったものである。
【0061】
[0059] 典型的なSBSエラストマーでは、スチレン組成物は、球状または円柱状スチレン領域が、ブタジエンのマトリックス内で形成するように、約10−30質量%である。温度がポリスチレンのガラス転移温度(T
g=100℃)より低い場合、ポリブタジエンマトリックスは、液状(T
g<−90℃)であるが、ガラス質のポリスチレン球体間で結合し、物理的架橋として働く。温度が、ポリスチレンのガラス転移温度より高い場合、全エラストマー系は、溶融し、容易に加工することができる。架橋ポリ(大豆油)は、−56℃まで低いT
g値を有すると報告されている。(Yangら、「Conjugation of Soybean Oil and Its Free-Radical Copolymerization with Acrylonitrite」、Journal of Polymers and the Environment 1-7(2010)、参照により本明細書にその全体が組み込まれている)。
【0062】
[0060] 本発明の別の態様は、熱可塑性ブロックコポリマーの調製方法に関する。方法は、Aで表わされるラジカル重合性モノマー、またはモノマーAの1つまたは複数の単位を含むポリマーブロックPAを提供することを含む。再生可能資源由来油または脂肪ポリマー油マクロ開始剤に由来するラジカル重合性成分Bも提供される。次いで、モノマーAまたはポリマーブロックPAは、再生可能資源由来油または脂肪ポリマー油マクロ開始剤および遷移金属触媒系の存在下で成分Bとラジカル重合して、熱可塑性ブロックコポリマーを形成する。
【0063】
[0061] ラジカル重合後、重合再生可能資源由来油または脂肪系ブロックコポリマーは、さらに、触媒により水素化されて、再生可能資源由来ポリマー油ブロックを部分的にまたは完全に飽和にすることができる。このプロセスは、ゴム状成分から反応性不飽和を除去し、酸化的劣化に対する抵抗性を改善し、架橋性を減らし、化学的攻撃に対する抵抗性を高める。選択的条件下で行う場合、水素化は、マクロ開始剤からの任意の残りの遊離ハロゲンを除去し、化学的攻撃に対する抵抗性を高めることができる。
【0064】
[0062] ポリマー油マクロ開始剤を用い、ATRPにより、ポリ(ヒートボディオイル)(PHBO)、ポリ(吹込油)(PBO)およびポリ(コポリマー油)(PCPO)を合成するための例示的な手順は、以下の例に示される。
【0065】
[0063] ポリマー油Bマルチブロックの重合度は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定することができる。次いで、重合反応速度を評価することが可能であり、ポリマー油化合物に由来するBブロックが、最低の多分散および目標の分子量を伴い再現性良く製造できるようにパラメーターを微調整することができる。ちなみに、数平均分子質量に対する重量平均分子質量の比は、多分散指数、PDI、と呼ばれ、ポリマーの均一性の評価基準である。単分散ポリマーでは、PDIの値は1である。多分散ポリマーは、広範囲の分子量を有するので、PDIの値は1より大きい。示差走査熱量測定は、通常、ポリマーのガラス転移温度(T
g)を評価するために使用される。
【0066】
[0064] 本発明の別の態様は、1種または複数のトリグリセリドを含むラジカル重合性の再生可能資源由来ポリマー油または脂肪モノマーの1つまたは複数の単位を含む熱可塑性ポリマーに関する。PBブロックに対して記載された上記のすべての実施形態、例えば、組成物、構造、物理的および化学的特性(例えば、分子量、ガラス転移温度など)は、重合性の再生可能資源由来ポリマー油または脂肪系熱可塑性ポリマーに対しても同じく適している。
【0067】
[0065] 本発明の別の態様は、熱可塑性ポリマーまたはポリマーブロックの調製方法に関する。方法は、1種または複数のトリグリセリドを含むラジカル重合性の再生可能資源由来ポリマー油または脂肪マクロ開始剤を提供することを含む。この再生可能資源由来ポリマー油または脂肪マクロ開始剤は、次いで、熱可塑性ポリマーまたはポリマーブロックを形成するためにマクロ開始剤と共に触媒系を形成する遷移金属の存在下でラジカル重合される。この熱可塑性ポリマーは、それ自体、熱可塑性エラストマーとして使用することができる。あるいは、この熱可塑性ポリマーは、ポリマーブロックとして使用することができ、さらに、他のモノマーと重合して、重合再生可能資源由来ポリマー油または脂肪系熱可塑性ブロックコポリマーを形成することができる。反応工程および反応条件(例えば、反応試薬、触媒システム、マクロ開始剤、温度、溶媒、反応の開始および停止、など)を含めた、PBブロックの調製方法用に記載される上記のすべての実施形態は、重合性の再生可能資源由来ポリマー油または脂肪系熱可塑性ポリマーを製造するためにも適している。
【0068】
[0066] 本発明の他の態様は、様々な用途における重合再生可能資源由来ポリマー油または脂肪系マルチブロックコポリマーの使用に関する。以下に例示するように、本発明の方法は、所望の、硬質でガラス質のポリマー、熱硬化性(クラムラバー)エラストマー、または粘着性型エラストマーを製造するために制御することができる。本発明のブロックコポリマーの例示的な用途には、ゴムまたはエラストマーとして;強化エンジニアリング熱可塑性樹脂として;アスファルト改質剤として;樹脂改質剤として;エンジニアリング樹脂として;革およびセメント改質剤として;ゴム靴ヒール、ゴム靴底などの履き物で;タイヤ、ホース、パワーベルト、コンベヤベルト、印刷用ロール、ゴム絞り手、自動車用フロアマット、トラック用泥よけ、ボールミル裏張り、および隙間塞ぎなどの自動車で;感圧接着剤などの接着剤として;航空宇宙装置で;粘度指数向上剤として;洗剤として;診断用薬および担体として、したがって;分散剤として;乳化剤として;潤滑剤および/または界面活性剤として;紙添加剤および紙コーティング剤として;および食品および飲料包装用材料などの包装で、の用途が含まれる。
【0069】
[0067] クラムラバー用の使用には、床張りおよびゴムマット、道路建設および補修工事、レクリエーションエリア、自動車用バンパー、フロアマットおよび裏張り、人工競技場表面(artificial athletic surfaces)、応力吸収膜中間層(stress-absorbing membrane interlayers)、開粒度摩擦層、舗装面シール(paver placed surface seal)、ギャップ粒度混合物、ストーンマトリックスアスファルト、およびクラムラバー改質型アスファルト(CRMA)が含まれる。CRMAは、アスファルトに添加される場合、酸化、わだち掘れ、ラベリング、層間剥離およびクラッキングに対する抵抗性を改善することができる。
【0070】
[0068] 別の態様では、重合マクロ開始剤を含む組成物が提供され、この場合、重合マクロ開始剤は、ハロゲン化ヒートボディオイル、ハロゲン化吹込油、ハロゲン化コポリマー油、ハロゲン化水素化ヒートボディオイル、ハロゲン化水素化吹込油、ハロゲン化水素化コポリマー油、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン化ポリマー油を含み、この場合、ポリマー油は、少なくとも1種の再生可能資源由来油または脂肪を含む。
【0071】
[0069] 別の実施形態では、重合マクロ開始剤の製造方法が提供され、この場合、少なくとも1つの二重結合を有するポリマー油がハロゲン化される。ハロゲン化は、ハロゲンの酸を用い行い、ハロゲン化ポリマー油マクロ開始剤を形成することができる。油中のハロゲン化部位は、スチレンとの原子移動ラジカル重合(ATRP)で例示されるように、続く重合でマクロ開始剤として作用することができる。
【0072】
[0070] 代わりの実施形態では、重合マクロ開始剤の製造方法が提供され、油重合時に形成される重合油(ヒートボディオイル、吹込油、またはコポリマー形成油)の遊離ヒドロキシル基のハロゲン化は、ブロモアセチルクロリドまたはブロモアセチルブロミドにより例示される、ハロゲン化アシルハロゲンを用い行われる。遊離ヒドロキシル基は、脂肪酸アシル鎖中の二重結合から、またはグリセロールと脂肪酸アシル鎖の間のエステル結合の加水分解により油のグリセロール部分で形成され得る。
【0073】
[0071] さらに別の実施形態では、重合マクロ開始剤の製造方法は、成分脂肪酸部分のα炭素のハロゲン化により行われる。
【0074】
[0072] 別の実施形態では、ポリマー油は、藻類油、動物油、牛脂、ボルネオ獣脂、バター脂、カメリナ油、銀鱈油、キャノーラ油、ひまし油、カカオ脂、カカオ脂代替物、やし油、タラ肝油、ナタネ油、コリアンダー油、とうもろこし油、綿実油、アマナズナ油、フラックスシードオイル、廃水処理施設からの浮遊グリース、ヘーゼルナッツ油、麻実油、にしん油、イリッペ脂、ジャトロファ油、コクムバター、ラノリン、ラード、亜麻仁油、マンゴ核油、魚油、メドウホーム油、メンハーデン油、微生物油、乳脂肪、モーラ脂肪、カラシ油、羊脂、牛脚油、オイチシカ油、オリーブ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、パームオレイン、パームステアリン、ピーナッツ油、フルワラバター、パイルハードオイル(pile herd oil)、植物油、豚肉ラード、ラディッシュ油、ニガー油、菜種油、米ぬか油、サフラワー油、サル油、アッケシソウ油、イワシ油、サザンカ油、ゴマ油、シア脂肪、シアバター、単細胞油、大豆油、ひまわり種子油、トール油、獣脂、タイガーナッツ油、つばき油、きり油、トリアシルグリセロール、トリオレイン、使用済み食用油、植物油、クルミ油、鯨油、ホワイトグリース、イエローグリース、および誘導体、共役誘導体、遺伝子組換え誘導体、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される再生可能資源由来脂肪または油から製造される。
【0075】
[0073] 別の実施形態では、ポリマー油は、共役リノール酸、ルーメン酸(9−cis、11−trans−オクタデカジエン酸)、10−trans、12−trans−オクタデカジエン酸、10−trans、12−cis−オクタデカジエン酸、共役リノレン酸、α−エレオステアリン酸(9−cis、11−trans、13−transオクタデカトリエン酸)、β−エレオステアリン酸(9−trans、11−trans、13−transオクタデカトリエン酸)、ルメレン酸(9−cis、11−trans、15−cis−オクタデカトリエン酸)、プニカ酸(9−cis、11−trans、13−cis−オクタデカトリエン酸)、カタルプ酸(9−trans、11−trans、13−cis−オクタデカトリエン酸)、α−カレンジン酸(8−trans、10−trans、12−cisオクタデカトリエン酸)、β−カレンジン酸(8−trans、10−trans、12−transオクタデカトリエン酸)、ジャカル酸(8−cis、10−trans、12−cisオクタデカトリエン酸)、テトラエン酸、α−パリナリン酸(9−trans、11−cis、13−cis、15−trans−オクタデカテトラエン酸)、β−パリナリン酸(9−trans、11−trans、13−trans、15−trans−オクタデカテトラエン酸)、リソビウム細菌からの2−trans、4−trans、6−trans、11−cisオクタデカテトラエン酸、ペンタエン酸、ボセオペンタエン酸(5−cis、8−cis、10−trans、12−trans、14−cis−ペンタエン酸)、ヘキサエン酸、海藻からの4−cis、7−cis、9−trans、13−cis、16−cis、19−cisドコサヘキサエン酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種または複数の共役脂肪酸を含む再生可能資源由来脂肪または油から製造される。
【0076】
[0074] 別の実施形態では、ハロゲン化再生可能資源由来ポリマー油を含む重合マクロ開始剤から製造したポリマーが教示され、この場合、マクロ開始剤は、ハロゲン化ヒートボディオイル、ハロゲン化吹込油、ハロゲン化コポリマー油、ハロゲン化水素化ヒートボディオイル、ハロゲン化水素化吹込油、ハロゲン化水素化コポリマー油、およびそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含む。一実施形態では、ポリマーは、硬質でガラス質のポリマーを含む。一実施形態では、硬質でガラス質のポリマーは、耐衝撃性改良剤を含む。別の実施形態では、耐衝撃性改良剤は、成形プラスチック、押出プラスチック、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ハロゲン化ポリビニル製品、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンアロイ、塩素化ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル、およびそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つに組み込まれ得る。別の実施形態では、ポリマーは、熱硬化性ポリマーを含む。別の実施形態では、熱硬化性ポリマーは、床張り、ゴムマット、道路建設、道路補修工事、レクリエーションエリア、自動車用バンパー、自動車用フロアマット、自動車用裏張り、タイヤ、ホース、パワーベルト、コンベヤベルト、人工競技場表面、応力吸収膜中間層、開粒度摩擦層、舗装面シール、ギャップ粒度混合物、ストーンマトリックスアスファルト、クラムラバー改質型アスファルト、強化エンジニアリング熱可塑性樹脂、アスファルト改質剤、樹脂改質剤、エンジニアリング樹脂、革およびセメント改質剤、履き物中、ゴム靴ヒール中、ゴム靴底、印刷用ロール中、ゴム絞り手、トラック用泥よけ、ボールミル裏張り、隙間塞ぎ、接着剤、感圧接着剤、航空宇宙装置中、粘度指数向上剤として、洗剤、診断用薬、分散剤、乳化剤、潤滑剤、界面活性剤、紙添加剤、コーティング剤、紙コーティング剤、食品包装、飲料包装、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される用途での使用に適している。さらに別の実施形態では、ポリマーは、熱可塑性エラストマーを含む。別の実施形態では、熱可塑性エラストマーは、バインダー、アスファルトバインダー、タッキファイヤー、床張り、ゴムマット、道路建設、道路補修工事、レクリエーションエリア、自動車用バンパー、自動車用フロアマット、自動車用裏張り、タイヤ、ホース、パワーベルト、コンベヤベルト、人工競技場表面、応力吸収膜中間層、開粒度摩擦層、舗装面シール、ギャップ粒度混合物、ストーンマトリックスアスファルト、クラムラバー改質型アスファルト、強化エンジニアリング熱可塑性樹脂、アスファルト改質剤、樹脂改質剤、エンジニアリング樹脂、革およびセメント改質剤、履き物中、ゴム靴ヒール中、ゴム靴底、印刷用ロール中、ゴム絞り手、トラック用泥よけ、ボールミル裏張り、隙間塞ぎ、接着剤、感圧接着剤、航空宇宙装置中、粘度指数向上剤として、洗剤、診断用薬、分散剤、乳化剤、潤滑剤、界面活性剤、紙添加剤、紙コーティング剤、食品包装、飲料包装、およびそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つに組み込まれ得る。さらに別の実施形態では、ポリマーは、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ジビニルベンゼン、アクリル酸メチル、C1−C6(メタ)アクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート)、アクリロニトリル、アジポニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、ビニル芳香族モノマー、ポリスチレンホモポリマー、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるモノマーから製造される少なくとも1つのAブロックを含み得る。さらに別の実施形態では、ポリマーは、加硫、架橋、相溶化、1種または複数の他の材料との配合、およびそれらの任意の組み合わせをさらに行い得る。
【0077】
[0075] 本発明の一実施形態では、熱可塑性およびエラストマー性ブロックコポリマーは、PA−PBマルチブロックポリマー構造を有し、この場合、PAブロックは、直鎖ポリスチレン(PS)であり、PBマルチブロックは、ポリマー油(PO)またはその基である。POは、吹込油(BO)、ヒートボディオイル(HBO)、コポリマー油(CPO)、水素化吹込油(BO)、水素化ヒートボディオイル(HBO)、または水素化コポリマー油(CPO)の少なくとも1つであり得る。したがって、PS−POジブロックコポリマーは、ポリマー油マクロ開始剤から製造されるBマルチブロックを含むエラストマー性ブロック、および、PO Bブロックの1つのマクロ開始部位に結合する1つのPSブロックを有する。ブロックコポリマーは、1kDa〜500kDa、例えば、約10kDa〜300kDa、約40〜約100kDa、または約80〜約100kDaの範囲の分子量(Mn)、および−15℃未満、例えば、約−60℃〜約−20℃の第一ガラス転移温度(T
g)を有する。
【0078】
[0076] 本発明の一実施形態では、熱可塑性およびエラストマー性ブロックコポリマーは、PA−PB−PAトリブロックポリマー構造を有し、この場合、PAブロックは、直鎖ポリスチレン(PS)であり、PBマルチブロックは、ポリマー油(PO)またはその基である。したがって、このポリマー油系スチレン系トリブロックコポリマー(PS-PO-PS)は、2つのマクロ開始部位に結合するPSブロックを有するポリマー油マクロ開始剤から製造されるBマルチブロックを含むエラストマー性内側ブロック、および内側ブロックPOの2つのマクロ開始部位に結合して形成される熱可塑性外側ブロックPSを有する。PS−PO−PSトリ−ブロックコポリマーは、7kDa〜1000kDa、例えば、約7kDa〜約500kDa、約15kDA〜約350kDa、約80kDa〜約120kDaまたは約100kDa〜約120kDaの範囲の分子量を有する。トリブロックコポリマーは、−15℃未満、例えば、約−60℃〜約−28℃の第一T
gを有し得る。
【0079】
[0077] 本発明の別の実施形態では、熱可塑性およびエラストマー性のブロックコポリマーは、直鎖ポリスチレン(PS)を含む3つ以上のPAブロックを含むマルチブロックポリマー構造を有し、PBマルチブロックは、少なくとも3つのマクロ開始部位を有するポリマー油(PO)またはその基である。したがって、このポリマー油系スチレン系マルチブロックコポリマーは、ポリマー油マクロ開始剤から製造されるBマルチブロックを含むエラストマー性内側ブロック、および内側マルチブロックPOに結合して形成される3つ以上の熱可塑性外側PSブロックを有する。
【0080】
[0078] 一実施形態では、ラジカル重合は、ポリマー油マクロ開始剤を用いた原子移動ラジカル重合により実施される。ポリマー油は、ハロゲン化吹込油(BO)、ハロゲン化ヒートボディオイル(HBO)、ハロゲン化コポリマー油(CPO)、ハロゲン化水素化吹込油(BO)、ハロゲン化水素化ヒートボディオイル(HBO)、およびハロゲン化水素化コポリマー油(CPO)の少なくとも1つから選択される。
【0081】
[0079] 本発明の代わりの実施形態では、再生可能資源由来脂肪または油から由来するブロックコポリマーは、成形プラスチック、押出プラスチック、PVC製品、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンアロイ、塩素化ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、およびアクリルで有用な耐衝撃性改良剤を含む。
【0082】
[0080] 本発明のいくつかの実施形態は、上述の工程による、ラジカル重合性モノマーの少なくとも1つのポリマーブロック、および1種または複数のトリグリセリドポリマー油を含むラジカル重合再生可能資源由来ポリマー油または脂肪のポリマーブロックを含む熱可塑性マルチブロックコポリマーの製造方法に関する。この方法で使用されるAブロックラジカル重合性モノマーには、これに限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニル基、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ジビニルベンゼン、アクリル酸メチル、C
1−C
6(メタ)アクリレート(すなわち、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、またはヘキシル(メタ)アクリレート)、アクリロニトリル、アジポニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、ビニル芳香族モノマー、ポリスチレンホモポリマー、ジオレフィン、ニトリル、ジニトリル、またはそれらの混合物が含まれる。一実施形態では、重合ビニルモノマーは、ビニル芳香族モノマー、例えば、ポリスチレンホモポリマーである。一実施形態では、ポリマー油マクロ開始剤は、吹込油から製造される。ポリマー油マクロ開始剤は、ポリマー油から製造される。
【0083】
[0081] あるいは、本発明の方法は、以下の工程a)、マルチブロックコポリマーを生じるために、PSおよびマクロ開始剤の相互溶解に適した溶媒中でポリマー油由来マクロ開始剤を使用する、スチレンホモポリマー(PS)のATRPを含み得る。一実施形態では、方法は、カウンター触媒なしで、溶媒の存在下で実施される。重合は、65〜120℃の範囲の温度で実施することができる。溶媒濃度は、マクロ開始剤Bに対する溶媒の質量比で5%〜90%の範囲を取り得る。
【0084】
[0082] いくつかの実施形態では、本発明の重合再生可能資源由来ポリマー油系マルチブロックコポリマーは、組成物の熱可塑性および弾性特性を改善するために、熱可塑性エラストマー組成物中の主成分として使用することができる。エラストマー性組成物を形成するため、マルチブロックコポリマーは、さらに、他のエラストマー、添加剤、改質剤および/またはフィラーなどの1種または複数の他の材料を用い、加硫、架橋、相溶化、および/または配合することができる。得られるエラストマーは、履き物、自動車、包装などの種々の産業においてゴム組成物として使用することができる。
【0085】
[0083] 上述の潜在的用途の1つの特定の一実施形態では、本発明の重合再生可能資源由来ポリマー油系マルチブロックコポリマーは、組成物の1〜5質量%のアスファルト添加剤、改質剤および/またはフィラーとしてアスファルト組成物で使用することができる。アスファルト組成物は、ビチューメン成分をさらに含み得る。
【0086】
[0084] 別の特定の実施形態では、重合再生可能資源由来ポリマー油系ブロックコポリマーは、強化エンジニアリング熱可塑性組成物で使用することができる。これらの強化エンジニアリング熱可塑性組成物は、通常、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)に類似した材料の靭性を高める(脆性を減らす)ために、大量のガラス質または半結晶性の成分と少量のゴム状またはエラストマー性の成分を含む。強化エンジニアリング熱可塑性組成物を形成するために、本発明のマルチブロックコポリマーは、再生可能資源由来ポリマー−油ブロックが少量の成分であり、普通なら固体マトリックスの破砕をもたらすことになるエネルギーを吸収する働きをするように配合され得る。強化エンジニアリング熱可塑性組成物内のブロックコポリマーは、さらに、従来のように、他のエンジニアリング熱可塑性樹脂、添加剤、改質剤、またはフィラーなどの他の材料を用い配合され得る。
【0087】
[0085] 重合再生可能資源由来ポリマー油または脂肪系熱可塑性ブロックコポリマーの用途のために記載される上記のすべての実施形態は、再生可能資源由来ポリマー油系熱可塑性ポリマーの用途にも適している。
【0088】
[0086] 本発明を、以下の非限定例でさらに示す。
【実施例】
【0089】
[0087] 実施例1
ヒートボディ亜麻仁油マクロ開始剤の合成。ヒートボディ亜麻仁油(20g)(OKO M25、ADM Red Wing MN)を、100mL丸底フラスコ中で酢酸(37mL)(Aldrich)およびトルエン(20mL)(Fisher)中の33%臭化水素酸と混合した。混合物を、磁気撹拌子および撹拌プレートを用いて室温、窒素雰囲気下で18時間撹拌して、ヒートボディ亜麻仁油をハロゲン化した。ハロゲン化後、混合物を水で3回洗浄し、トルエンをロータリーエバポレーターにより除去した。得られた臭素化油を1H−NMRにより評価した結果、トリグリセリド繰り返し単位当たり1.32個の臭素を含んでいた。
【0090】
[0088] 実施例2
硬質でガラス質のポリマーを形成するためにポリマー油マクロ開始剤を使用するスチレン/ポリマー油コポリマーの原子移動ラジカル重合合成。種々の比のハロゲン化ポリマー油(重合亜麻仁油)マクロ開始剤、スチレン、塩化銅(I)、金属銅、ペンタメチルジエチレントリアミンを100mLシュレンクフラスコ中でトルエン20mLと混合した(表2.1)。反応混合物にハロゲン開始剤は添加しなかった。反応混合物に凍結/ポンプ/解凍サイクルを3回行って、酸素を除去した(液体窒素で凍結し、133.322パスカル(1トール(torr))に減圧し、ストップコックで密封し、解凍させた)。次いで、フラスコに、バブラーを備えた窒素ラインを通して窒素を流した。各反応混合物を、撹拌プレート上で磁気撹拌子を用いて撹拌し、110°Cで16時間加熱して、原子移動ラジカル重合を行った。反応後、生成混合物を撹拌中のメタノールに注いで、得られるポリマーを析出させ、ポリマーをろ過により回収した。次いで、固体ポリマーを塩化メチレンに再溶解し、ろ過して銅を除去した。次いで、ろ液を撹拌中のメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過により回収し、真空下で乾燥した。
【0091】
[0089]
【表1】
【0092】
[0090] この実施例では、臭素などの開始剤を添加せずにハロゲン化ヒートボディ亜麻仁油の重合が起こった。ラン1−3から得られたポリマーは、周囲温度では硬質でガラス質のポリマーであり、PVC製品、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンアロイ、塩素化ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、およびアクリルにおける低温脆化を低減することにより、成形または押出プラスチックの耐久性を高めるため、耐衝撃性ポリマー(アクリロニトリルブタジエンスチレン、ABSなど)または耐衝撃性改良剤として潜在的に有用であった。
【0093】
[0091] 実施例3
マクロ開始剤の合成、および熱可塑性クラムラバーおよび熱硬化性ポリマーを形成するためにポリマー油マクロ開始剤を使用するスチレン/ポリマー油コポリマーの原子移動ラジカル重合合成。ヒートボディ亜麻仁油(OKO M37(商標)、20g)は、酢酸(37mL)および100mLトルエン中の33%臭化水素酸0.8mLを使用した以外は実質的に実施例1に記載の条件で臭素化した。混合物を窒素雰囲気下で2時間還流、撹拌し、次いで、水で3回洗浄し、トルエンをロータリーエバポレーターにより除去した。得られた臭素化油を、1H−NMRにより評価した結果、トリグリセリド繰り返し単位当たり0.35個の臭素を含んでいた(1H-NMRによる)。
【0094】
[0092] 重合。臭素化ヒートボディ植物油を、種々の比のハロゲン化重合亜麻仁油、スチレン、塩化銅(I)、金属銅、ペンタメチルジエチレントリアミンを用いて、実質的に実施例2に記した条件でATRPにより重合した(表3.1)。
【0095】
【表2】
【0096】
[0093] 臭素化ヒートボディ亜麻仁油マクロ開始剤とスチレンをこれらの条件下でATRPにより共重合して、クラムラバー用途に適した熱可塑性固体ゴム型材料を得た。質量の50%超は、臭素化ヒートボディ亜麻仁油由来であった。コポリマーは、ボディ亜麻仁油の乾燥特性を保持し、一晩空気に曝した後に架橋して、熱硬化性エラストマーを生じた。
【0097】
[0094] 実施例4
マクロ開始剤の合成、および粘着性熱可塑性エラストマーを形成するためにポリマー油マクロ開始剤を使用するスチレン/ポリマー油コポリマーの原子移動ラジカル重合合成。酢酸(37mL)および100mLトルエン中の33%臭化水素酸0.35mLを、磁気撹拌子および撹拌プレートを用いて窒素雰囲気下、250mL丸底フラスコ中で2時間還流した以外は、実質的に実施例1に記載の条件で、ヒートボディ亜麻仁油(OKO M37(商標)、20g)を臭素化した。次いで、混合物を水で3回洗浄し、トルエンをロータリーエバポレーターにより除去した。得られた臭素化油を1H−NMRで評価した結果、トリグリセリド繰り返し単位当たり0.1個の臭素を含んでいた。
【0098】
[0095] 重合。臭素化ヒートボディ植物油を、種々の比のハロゲン化重合亜麻仁油、スチレン、塩化銅(I)、金属銅、およびPMDETAを用いて、実質的に実施例2に記した条件で重合した。反応混合物を撹拌中のメタノールに注いで、得られるポリマーを析出させ、ろ過によりポリマーを回収した。次いで、固体ポリマーを種々の量のトルエンに再溶解し、100ppmの酸化防止剤(ブチル化ヒドロキシトルエン、BHT)を添加した(表4.1)。数平均分子量(Mn)および多分散指数(PDI)は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定した。ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定により決定した(表4.2)。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
[0096] この実施例に記載のポリマーでは、質量の50%超は、臭素化ヒートボディ亜麻仁油に由来した。これらの条件でのATRPにより臭素化ヒートボディ亜麻仁油マクロ開始剤とスチレンを共重合して、溶融法で完成品を得るのに適した粘着性熱可塑性エラストマーまたは固体ゴム型材料を得た。これらの特性は、再生可能資源由来ポリマー油マクロ開始剤に対するスチレンの比を調整することにより選択することができた。Bマルチブロックに対するモノマー(スチレン)の比を下げることにより、広範囲の潜在的用途を有するタッキファイヤーを形成した。高いAモノマー/Bマクロ開始剤比で形成したポリマーでは、熱可塑性エラストマーを実施例3のように形成したが、熱硬化性エラストマーの架橋および生成は、酸化防止剤(BHT)の付加により阻止された。