【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は、請求項1に記載の内燃エンジンシステムと、請求項18、22および28に記載の内燃エンジンシステム制御方法と、請求項32に記載の車両により解決される。
【0017】
発明の第1の態様によれば、課題は、複数の気筒、少なくとも空気を気筒ブロックに与えるためのガス吸入マニホルド、排ガスを前記気筒ブロックから排出するための排ガスマニホルドを有する気筒ブロックを備える内燃エンジンシステムによって解決される。排ガスマニホルドが少なくとも、主排ガス出口と、ウェイストゲート排ガス出口とを備え、主排ガス出口が、排ガスを主排ガス後処理システムに導くための主排ガス管に接続され、ウェイストゲート排ガス出口がウェイストゲート排ガス管に接続される。発明の特徴として、ウェイストゲート排ガス管は、前記主排ガス後処理システムの上流で前記主排ガス管に再接続され、ウェイストゲート排ガス管内を流れる排ガスに触媒処理を行うための少なくとも1つのウェイストゲート後処理部、好ましくはディーゼル酸化触媒などの酸化触媒を備える。主排ガス後処理システムが、酸化触媒と、微粒子フィルタと、および選択触媒反応器の少なくとも1つを備えればよい。
【0018】
ウェイストゲート排ガス後処理部、特にディーゼル酸化触媒(DOC)やその他の好適な排ガス後処理部は、排ガス流内のO
2(酸素)を用いて、CO(一酸化炭素)をCO
2(二酸化炭素)に、HC(炭化水素)をH
2O(水)とCO
2に変換する。この変換処理は発熱処理なので、排ガス全体の温度を上昇させるのに十分な熱が生成され、その結果、主排ガス管の再結合部の下方に配列された主排ガス後処理システムとウェイストゲート排ガス管の温度は、その動作温度、好ましくは250℃に保たれるかその動作温度にされる。また、その温度は、ウェイストゲート排ガス管内を流れる排ガス量によって制御してもよく、この排ガス量はウェイストゲート排ガス出口弁および/またはウェイストゲート排ガス管の直径で制御するようにしてもよい。
【0019】
ウェイストゲート排ガス後処理部はさらに、主酸化触媒で発熱触媒反応を開始するのに十分な熱を伴う排ガスを生成するよう適合される。ウェイストゲート酸化触媒および/または主酸化触媒で発熱触媒反応を開始するために、ある量の炭化水素源を与える不燃燃料が必要である。
【0020】
さらに別の好ましい実施形態によれば、ウェイストゲート酸化触媒および主酸化触媒が、同一部であるように構成してもよい、好ましくは、一体化した酸化触媒が、ウェイストゲート排ガス管に接続する第1の入口と、主排ガス管に接続する第2の入口とを備える。これによって、第1の入口が第2の入口の上流に配置されるのが好ましい。
【0021】
さらに別の好ましい実施形態によれば、不燃燃料は、ウェイストゲート排ガス管内またはウェイストゲート排ガス管に配置される燃料噴射器によって与えられるのがよい。
【0022】
上記に加えてあるいは上記に代わるものとして、不燃燃料をいわゆる後で行われる後噴射によって与えればよく、この噴射では、燃料が着火しないように燃焼ストロークの終わりに、燃料が気筒ブロックの少なくとも1つの気筒内に噴射される。かなり後のタイミングでの噴射を行うという方策は、オイル希釈問題を生むことが知られているので、慎重に運用しなければならない。しかし、ウェイストゲート後処理部を開始するためにこの方法を用いるのには時間がかからず、オイル希釈問題は生じない。詳細は後述するが、PPC燃焼中、PPC燃料の高揮発性により、この問題は生じない。PPCでは、オイル希釈を理由としてかなり後のタイミングで後噴射を利用することに制限を設ける必要がない。
【0023】
かなり後の後噴射にはさらに次のような利点がある。かなり後の後噴射を適正なタイミングで行うことで、燃料は気筒内で前処理され、噴射燃料の炭化水素がこれによって、より軽い炭化水素、COおよびH2(水素)に変換される。酸化触媒において、軽い炭化水素は、噴射燃料の炭化水素より着火し易い。さらに、ウェイストゲート後処理部で、内燃エンジンが十分なCOを与えるよう制御されている場合、ウェイストゲート後処理部は約150℃になったら着火してもよい。最大限のCOを生成するために、空燃比ラムダを制御して、ウェイストゲート排ガス管内に対応する状態、好ましくはわずかに濃厚な状態を与えるようにしてもよい。
【0024】
ラムダ(λ)とは、所与の混合気について、実際の空燃比と化学量論的空燃比の比である。それゆえ、一般的な燃料の組成は季節毎に変化し、現代の多くの車両では様々な燃料が扱われるので、ラムダは燃料混合気の変動に左右されない。化学量論的混合気は利用可能な燃料を完全燃焼するのに十分な空気を含有しているだけである。ラムダ1.0とは、化学量論的混合気を表し、濃厚混合気は1.0未満、希薄混合気は1.0より大きい。
【0025】
ウェイストゲート酸化触媒が着火するとすぐに、そのかなり後の後噴射を終了して、濃厚状態で内燃エンジンを作動することができる。濃厚燃焼状態によって、主酸化触媒において動作を開始するために十分な熱と不燃燃料が与えられる。さらに、濃厚燃焼では、着火を容易にするために燃料を前処理してもよい。かなり後の後噴射同様、ラムダはHCに対するCOおよびH2の生成量を最大限にするのに適切である。少なくとも1つの主排ガス後処理部の着火を支援するために、ウェイストゲート後処理部が着火した直後であれば、この方策は適切である。主排ガス後処理部が着火すると、典型的には、ウェイストゲート排ガス管内の状態は、主排ガス後処理部を急速に加熱するために少なくともわずかに濃厚であればよい。内燃エンジンの冷温始動のための好ましいステップについては、あとで詳細に説明する。
【0026】
モータリングエンジン動作状態中、主排ガス後処理部で触媒反応を再び開始するのに十分な熱を瞬間的に与えることにより、空冷排ガス後処理システムに対するいわゆる「口火」としてウェイストゲート排ガス管およびウェイストゲート排ガス後処理部を用いてもよい。主排ガス後処理システムを再始動する場合にもまた、上記および以下でより詳細に説明する方法が使われることがある。
【0027】
別の実施形態によれば、ターボチャージャは主排ガス出口にまたはその近辺に配置される。その場合、本発明のウェイストゲート排ガス管がターボチャージャのバイパスとして機能する。ターボチャージャにバイパスを設けることにより、次のような効果が得られる。ターボチャージャにバイパスを設けることによって、主排ガス管での加熱が上昇する。ターボチャージャは熱慣性が大きいので、アイドルまたはモータリングエンジン動作モード中、排ガスを冷却してしまう、あるいは冷温始動から加熱するために排ガスからの大量の熱エネルギーを消費するためである。ターボチャージャにバイパスを設けることによって、主排ガス後処理システムに未冷却の排ガスが与えられる。低圧タービンは通常非常に大きく重いので、2段階ターボチャージャを用いることにより冷却現象が増加する。
【0028】
温度問題が発生するのはある臨界温度状態時だけなので、ウェイストゲート排ガス管がさらに、ウェイストゲート排ガス管内を流れる排ガス量を制御するように適合される弁を備えることが好ましい。その結果、中間負荷または高負荷エンジン動作モード中、ウェイストゲート排ガス管が閉止する。
【0029】
別の好ましい実施形態によれば、ウェイストゲート燃料噴射器を、ウェイストゲート排ガス管内の排ガス温度を上昇させるためのバーナー用に用いてもよい。ウェイストゲート排ガス管内の排ガス温度はこれによって十分高くなり、第1の排ガス管およびウェイストゲート排ガス管内を流れる排ガスの温度全体を上昇させることができる。
【0030】
別の好ましい実施形態によれば、排ガスパルスのパルスエネルギーを捕獲するために、燃料噴射器および/または少なくとも1つの排ガス後処理部が、排ガスマニホルドに近接配置される。パルスエネルギーにより、排ガスと噴射燃料の混合が促進される。
【0031】
別の好ましい実施形態によれば、気筒ブロックの複数の気筒が、少なくとも、第1の気筒グループおよび第2の気筒グループ内に配置される。好ましくは、各気筒グループが吸気スロットルを備え、各吸気スロットルが分離可能に動作可能である。任意で、吸入マニホルドが、第1の気筒グループに割り当てられる第1の吸入マニホルド部と、第2の気筒グループに割り当てられる第2の吸入マニホルド部を備える。この配置によって、臨界温度動作状態中、第1の気筒グループに燃料を与えないことで不作動の気筒グループを構成し、第2の気筒グループに燃料を与えることで作動中の気筒グループを構成するように、内燃エンジンを制御することが可能となる。特に、不作動の気筒が送り出すガス容量が全体として減少することによって周囲温度の新鮮な空気の量も減少するために、主排ガス後処理システムの温度を動作温度範囲に維持するのに十分な高温排ガスを作動中の第2の気筒グループが生成する。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、排ガスマニホルドが、排ガスマニホルド内で、第1の気筒グループから好ましくは第1の排ガス出口までの第1の排ガス流と、第2の気筒グループから好ましくは第2の排ガス出口までの第2の排ガス流とを与えるように適合される。第1の気筒グループからの排ガスと第2の気筒グループからの排ガスは混合せず、それぞれの排ガス出口に導かれるので、作動中の第2の気筒グループからの高温排ガスだけがウェイストゲート排ガス管に向かうまで、ウェイストゲート排ガス管内の温度がさらに上昇する。特に低負荷エンジン動作モード中の作動中の気筒グループからの排ガス温度は、すべての気筒が与える動力がこの時点では作動中の気筒グループのみによる動力であるので、すべての気筒が低負荷で作動中の場合に比べてはるかに高くなる。このことは、作動中の気筒グループ内の負荷を低負荷から中間負荷または高負荷にまで増大させる必要があり、それによって作動中の気筒グループの温度が上昇する。
【0033】
別の好ましい実施形態によれば、排ガス流の分離を排ガスマニホルドに分離要素を設けることによって達成するようにしてもよい。したがって、排ガスマニホルドが、第1の排ガス出口に割り当てられる第1の排ガスマニホルド部と、第2の排ガス出口に割り当てられる第2の排ガスマニホルド部とを設けるように適合される。
【0034】
別の好ましい実施形態によれば、排ガスマニホルドはさらに、第3の排ガス管を通る第3の排ガス流を与えるように適合され、第3の排ガス管が、第2の排ガスマニホルド部に割り当てられる。さらに、第3の排ガス管が、少なくとも1つのターボチャージャ部に排ガスを与えるように適合される。好ましくは、第1と第3の排ガス管が、同一のターボチャージャ部に排ガスを与えるように適合され、好ましくは、ターボチャージャ部が2つの入口を有するタービンを備える。2つの入口を有するタービンを用いることにより、車両内部の全体の構成要素が削減され、これによって重量全体が減少し、燃料消費の削減および車両積載可能性の増加につながる。加えて、ターボチャージャの構成要素は通常小型であればあるほど効率が低くなるので、2つの入口を有するタービンはタービン効率を向上させる。
【0035】
別の好ましい実施形態によれば、内燃エンジンシステムはさらに、排ガスの少なくとも一部を内燃エンジンのガス吸入口側に再循環させるための排ガス再循環(EGR)システムを備え、好ましくは、排ガス管が、排ガスマニホルドから直接分岐する、または、ターボチャージャ部の下流および好ましくは主排ガス後処理システムの少なくとも1つの部の上流で、最も好ましくは主排ガス後処理システムの中の少なくとも1つの部の上流で、特に選択触媒反応器の上流であるが、好ましくはフィルタを通過した排ガスを再循環させるための微粒子フィルタ部の下流で、主排ガス管および/または第3の排ガス管から分岐する。
【0036】
EGRは、内燃エンジンの排ガス、特に排ガス内の酸化窒素量を減少させるという効果がある。好ましくは、排ガスの再循環後の伏流を冷却した後、EGRエンジンのガス吸入口側に送り、混合気をEGRエンジンの気筒内に導入する前に、ここで到来する空気と混合する。再高温排ガスを再循環することでEGRエンジンのガス吸入口側でのガス温度がEGRエンジンに損傷を与えるレベルまで上昇するので、循環排ガスの冷却はEGRエンジンにとって必須である。さらに、たとえばエンジン負荷およびEGRエンジンを通る全質量流のエンジン動作モードなどに応じた10%から90%の広範囲に渡る排ガス量の再循環は、十分なNOx低減を生み出すために必要である。
【0037】
別の好ましい実施形態によれば、内燃エンジンシステムはさらに、排ガス再循環ダクトを備え、排ガス再循環ダクトが、不作動の第1の気筒グループに割り当てられる主排ガスマニホルド部から分岐し、吸入マニホルドに、好ましくは作動中の第2の気筒グループに割り当てられる第2の吸入マニホルド部に排ガスを再循環するよう適合される。この配置により、不作動の気筒グループからの排ガス、これは考慮中の状況下ではおそらく空気であるが、この排ガスを不作動の気筒グループの排ガスマニホルドから強制的に作動中の気筒グループの吸入マニホルドに送り込み、エンジンの流れる空気の全体量を非常に減少させる。臨界温度エンジン動作モード中の空冷効果はこれによりさらに低下する。
【0038】
別の好ましい実施形態によれば、内燃エンジンシステムは、少ない着火しにくい燃料、特に38より低いセタン価などの低セタン価の燃料によって作動されるよう適合され、および/または、10:1から30:1までの範囲、好ましくは13:1から25:1までの範囲、最も好ましくは15:1から18:1までの範囲内にある圧縮比で燃料に着火するよう適合される。上述の通り、エンジンを着火しにくい燃料で作動させる、いわゆる部分予混合燃焼(PPC)もまた、特に低負荷またはアイドルエンジン動作モードにあるとき臨界温度運転状態を誘発する。内燃エンジンシステムの上記の発明性を有する特徴によれば、気筒内の温度および/または排ガスの上昇が可能となり、PPCエンジンについても利用できる。
【0039】
本発明の別の態様は、内燃エンジンシステムの制御方法に関し、内燃エンジンシステムを着火しにくい燃料で作動させる、ならびに/または低温始動状態、および/または低負荷エンジン動作モード、および/またはアイドルエンジン動作モード、および/またはモータリングエンジン動作モードなどの臨界温度動作状態中、内燃エンジンシステムの少なくとも一部内の温度を上昇させる。上述の通り、内燃エンジンシステムは、複数の気筒、少なくとも空気を第1と第2の気筒グループに与えるためのガス吸入マニホルド、排ガスを気筒ブロックから主排ガス後処理システムに排出するための排ガスマニホルドを有する気筒ブロックを備え、気筒ブロックの複数の気筒が、少なくとも、第1の気筒グループおよび第2の気筒グループ内に配置される。
【0040】
本発明の第1の態様によれば、方法の好ましい実施形態は、内燃エンジンシステムが臨界温度状態で作動しているかどうかを判定するステップと、内燃エンジンシステムが臨界温度状態で作動している場合、第1の気筒グループの気筒に燃料を与えないことで第1の気筒グループを不作動にするよう制御して、第2の気筒グループの気筒に燃料を与えることで第2の気筒グループを作動するように制御するステップとを含む。
【0041】
臨界温度動作モード中に、周囲温度の新鮮な空気をすべての気筒に送り込むことによって、動作温度より低い内燃エンジン全体を冷却するのではなく、気筒の一部にのみ新鮮な空気を送り込む。これにより、新鮮な空気の量が減少するという効果がある。また、気筒の残りの部分を燃料で作動させることにより高温排ガスが生じるが、これは過度に燃料消費を増大させない。気筒は等分するのが好ましいが、等分でなくてもよい。
【0042】
本発明にかかる方法の好ましい実施例によれば、内燃エンジンシステムの各気筒がさらに、吸入マニホルドに対応する気筒を開くための少なくとも1つの吸気弁と、排ガスマニホルドに対応する気筒を開くための少なくとも1つの排気弁とを備え、方法はさらに、少なくとも1つの気筒の排気弁を制御して、吸気弁が開くのと同時に排気弁を少なくとも部分的に開くようにすることで少なくとも1つの気筒内の温度を上昇させることにより、所定量の排ガスを気筒内にリブリージングするステップを含む。
【0043】
排ガスをリブリージングすることで、空気質量流を減少させ、排ガス系統の温度が上昇するという効果がある。また、燃料損失も低い。
【0044】
好ましくは、排ガスをリブリージングするステップは、すべての気筒上ではなく、不作動の第1の気筒グループ上で実行され、不作動の第1の気筒グループ内、従って排ガスの温度が上昇する。リブリージング機構は、たとえば、内燃エンジンが別個の排気カムを持つ場合であれば、追加のカムローブおよび/またはカム移相器によって得られる。
【0045】
別の好ましい実施形態によれば、内燃エンジンシステムの少なくとも1つの気筒または少なくとも1つの気筒グループはさらに、少なくとも1つの気筒または少なくとも1つの気筒グループ内への吸入ガス量を制御するための吸気スロットルを備え、方法はさらに、不作動の第1の気筒グループ内への吸入ガス量を、好ましくはほぼゼロまたはゼロに減少させるステップを含む。これによって、エンジンのスロットル調節を過度に行うことがなくなり、新鮮な空気の吸入量がかなり減少する。排ガスリブリージングを行うことなくエンジンのスロットル調節を過度に行うと圧力が低下して、汚水槽からオイルを気筒燃焼チャンバ内に吸入する。
【0046】
本発明の別の態様は、内燃エンジンシステムを着火しにくい燃料で作動させる、ならびに/または低温始動状態、および/または低負荷エンジン動作モード、および/またはアイドルエンジン動作モード、および/またはモータリングエンジン動作モードなどの臨界温度動作状態中、内燃エンジンシステム内の温度を上昇させる方法であって、内燃エンジンシステムが、複数の気筒、少なくとも空気を気筒ブロックに与えるためのガス吸入マニホルド、排ガスを気筒ブロックから排出するための排ガスマニホルドを有する気筒ブロックを備える方法に関する。排ガスマニホルドが少なくとも、主排ガス出口と、ウェイストゲート排ガス出口とを備え、主排ガス出口が、排ガスを主排ガス後処理システムに導くための主排ガス管に接続され、ウェイストゲート排ガス出口がウェイストゲート排ガス管に接続され、ウェイストゲート排ガス管は、主排ガス後処理システムの上流で主排ガス管に再接続され、ウェイストゲート排ガス管内を流れる排ガスに触媒処理を行うための少なくとも1つのウェイストゲート後処理部、好ましくはディーゼル酸化触媒などの酸化触媒を備える。発明的な特徴として、方法は内燃エンジンシステムが臨界温度状態で作動しているかどうかを判定するステップと、内燃エンジンシステムが臨界温度状態で作動している場合、ウェイストゲート排ガス管を開き、少なくとも1つのウェイストゲート後処理部を作動させるステップとを含む。
【0047】
上述の通り、ウェイストゲート排ガス後処理部、特にディーゼル酸化触媒(DOC)やその他の好適な排ガス後処理部は、排ガス流内のO
2(酸素)を用いて、CO(一酸化炭素)をCO
2(二酸化炭素)に、HC(炭化水素)をH
2O(水)とCO
2に変換する。この変換処理は発熱処理なので、排ガス全体の温度を上昇させるのに十分な熱が生成され、その結果、主排ガス管の再結合部の下方に配列された主排ガス後処理システムとウェイストゲート排ガス管の温度は、その動作温度、好ましくは250℃に保たれるかその動作温度にされる。
【0048】
また、上述の通り、ウェイストゲート排ガス管が、主排ガス管内に配置されるターボチャージャのタービンまたは少なくともターボチャージャ部のバイパスとなる。ウェイストゲート排ガス管を流れる排ガスは、ターボチャージャを加熱するのに用いられないので、排ガスの熱全体が増加する。また、燃料噴射器または、いわゆる大幅に後で行われる後噴射を、排ガス後処理部の炭化水素源として用いてもよい。
【0049】
好ましくは、主排ガス出口が、第1の気筒グループに割り当てられ、ウェイストゲート排ガス出口と任意の第3の排ガス出口とが第2の気筒グループに割り当てられ、主排ガス出口と任意の第3の排ガス出口が第1の排ガス管に接続され、ウェイストゲート排ガス出口がウェイストゲート排ガス管に接続される。
【0050】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態によれば、上記リブリージングの少なくとも1つのステップと、ウェイストゲート排ガス管によってターボチャージャにバイパスを設けることの少なくとも1つのステップが行われる。これによって、内燃エンジンシステムを流れる低温空気量が最小となり、したがって排ガス内の温度が上昇する。
【0051】
好ましくは、排ガスリブリージングは、不作動の気筒からなる第1の気筒グループ上で行われる。これにより、排ガスがウェイストゲート排ガス管に再び送り込まれるのが回避されるという効果がある。
【0052】
別の好ましい実施形態によれば、各気筒はさらに、少なくとも燃料を気筒内に噴射するための気筒用燃料噴射器を備え、少なくとも1つの気筒の、好ましくは第2の気筒グループの少なくとも1つの気筒の気筒用燃料噴射器が、燃料ストローク毎に少なくとも2回燃料を噴射するよう制御され、好ましくは、2回目の噴射が、1回目の噴射よりかなり後に、好ましくは1回目の噴射より少なくとも10クランク角度だけ後に、最も好ましくは前記1回目の噴射より少なくとも20クランク角度だけ後に行われる。
【0053】
このいわゆる大幅に後で行われる後噴射は、1回で全体量の燃料を噴射するのではなく、燃料量を少なくとも2回の噴射に分割して、2回目の噴射は1回目の噴射より非常に遅れて行われるので、排ガス温度を上昇させるという効果がある。しかし、2回目の噴射が遅すぎると、燃料が着火しないという結果になるので注意しなければならない。これは、空燃比調節のために必要であり、本明細書ではかなり後で行われる後噴射と読んでいる。上記を参照されたい。2回目の噴射を行うと、温度を急速かつ短時間に上昇させることで排ガスの温度が上昇するので、燃料損失が許容範囲になる。
【0054】
上記のかなり後で行われる後噴射を、COとH2を生成して、低温度、好ましくは約150℃で酸化触媒を着火させるために行ってもよい。
【0055】
好ましい実施形態によれば、本発明の低温始動処理(すなわち、長時間のアイドルエンジン動作モード後に実行される処理)は、以下のようなステップを含む。
1.後で行われる後噴射で第2の気筒グループを作動させること。
2.ウェイストゲート排ガス管内の排ガス温度またはウェイストゲート排ガス後処理部での温度が略150℃に達したとき、好ましくは排ガス内のCOおよびH2含有量を最大にするための好適な空燃比を用いてCOおよびH2を生成するために、かなり後で行われる後噴射で、第2の気筒グループを作動させること。
3.ウェイストゲート排ガス管の排ガス内におけるCOおよびH2の存在により、ウェイストゲート排ガス後処理部の動作(着火)を略150℃で開始すること。
4.かなり後で行われる後噴射を終了し、ウェイストゲート燃料噴射器の動作を開始すること。
5.これによって、COおよびH2の存在により略150℃で主排ガス後処理システムの動作を開始するために、ウェイストゲート排ガス管内の状態を化学量論的混合気に近い状態に維持すること。
6.主排ガス後処理システムの着火後、不燃燃料を主酸化触媒に与えるために、ウェイストゲート排ガス管を少なくとも僅かに濃厚な、好ましくは濃厚状態にするようウェイストゲート燃料噴射器での燃料量を増加させ、その結果、主排ガス後処理システムを急速に加熱すること。
7.任意で、必要に応じて十分な動力を与えるために第1の気筒グループを作動させること。
【0056】
さらなる好ましい実施形態によれば、第1の気筒グループが少なくとも1つの第1の吸気スロットルを備え、第2の気筒グループが少なくとも1つの第2の吸気スロットルを備え、各吸気スロットルが分離可能に動作可能であり、方法はさらに、臨界温度状態中、第1の気筒グループの第1の吸気スロットルおよび第2の気筒グループの第2の吸気スロットルを制御して、第2の気筒グループの第2の気筒より強く、第1の気筒グループの第1の気筒をスロットルで調節するステップを含む。
【0057】
空気取り入れ、特に不作動の気筒からなる第1の気筒グループへの空気取り入れをスロットルで調節することによって、気筒内に送り込まれる新鮮な空気の全体量を減少させる。排ガスリブリージング方法の少なくとも1つのステップを吸気スロットル調節のステップと組み合わせれば、流量制御を強力に行い、内燃エンジンシステム内の新鮮な空気量を大幅に減少するので、特に効果的である。排ガス温度はこれにより上昇する。
【0058】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の方法はさらに、排ガスの少なくとも一部を内燃エンジンのガス吸入口側に再循環させるステップを含み、内燃エンジンシステムはさらに、排ガスの少なくとも一部を内燃エンジンのガス吸入口側に再循環させるための排ガス再循環(EGR)システムを備え、好ましくは、排ガスが、ターボチャージャ部の下流および好ましくは主排ガス後処理システムの上流で、主排ガス管および/または第3の排ガス管から分岐する、または、排ガスマニホルドから直接分岐する。
【0059】
臨界温度状態中に、排ガスの少なくとも一部を再循環させることにより、新鮮な空気の取り入れが減少するので、排ガス温度が上昇する。温かい排ガスが気筒およびその結果として排ガス内にも流れ、内燃エンジンシステム、特に排ガス後処理システムが冷却することが回避される。
【0060】
さらなる態様によれば、本発明は、内燃エンジンシステムを着火しにくい燃料で作動させる、ならびに/または低温始動状態、および/または低負荷エンジン動作モード、および/またはアイドルエンジン動作モード、および/またはモータリングエンジン動作モードなどの臨界温度動作状態中、内燃エンジンシステム内の温度を上昇させる方法であって、内燃エンジンが、複数の気筒、少なくとも空気を第1の気筒グループに与えるために第1の気筒グループに割り当てられる第1のガス吸入マニホルド部、少なくとも空気を第2の気筒グループに与えるために第2の気筒グループに割り当てられる第2のガス吸入マニホルド部、排ガスを第1の気筒グループから排出するための第1の排ガスマニホルド部、排ガスを第2の気筒グループから排出するための第2の排ガスマニホルド部、内燃エンジンシステムの第1の排ガスマニホルド部と第2の排ガスマニホルド部とを接続する排ガス再循環ダクトを有する気筒ブロックを備え、気筒ブロックの複数の気筒が、少なくとも、第1の気筒グループおよび第2の気筒グループ内に配置されてなる方法に関する。方法は、内燃エンジンシステムが臨界温度状態で作動しているかどうかを判定するステップと、内燃エンジンシステムが臨界温度状態で作動している場合、第1の気筒グループから第2の気筒グループに排ガスを再循環させるステップとを含む。
【0061】
好ましくは、内燃エンジンシステムが臨界温度状態で作動している場合、第1の気筒グループの気筒に燃料を与えないことで第1の気筒グループを不作動にするよう制御して、第2の気筒グループの気筒に燃料を与えることで第2の気筒グループを作動するように制御するステップをさらに含む。
【0062】
不作動の(第1の)気筒グループの排ガスマニホルドから作動中の(第2の)気筒グループのガス吸入マニホルドに排ガスを再循環させるので、不作動の第1のマニホルド部から作動中の第2のマニホルド部に空気が強制的に送られる。また、作動中のガス吸入マニホルド上流で空気取り入れをスロットルで調節するので、強制的に送り込まれる空気量が増加する。その結果、新鮮な空気がまず不作動の気筒グループに送られ、次に作動中の気筒グループに送られ、これによって内燃エンジンを2回通過する。したがって、内燃エンジン内を流れる空気の全体量が大幅に減少する。
【0063】
この方法は、排ガスリブリージングを、排ガス温度を上昇させるために行う必要がないという点で効果的である。また、再利用される空気が必ずしも再循環する排ガスと混合しないので、以下で述べるような好ましくない分布による振動をともなうEGRによって生じた煤が蓄積するという問題が回避される。
【0064】
さらに、上記のエンジン動作モード方法を用いることによって、前処理した燃料を与える別の方法が提供される。この場合、燃料は不作動の第1の気筒グループ内に後噴射され、噴射タイミングが適正であれば、前処理した燃料はその後着火特性を向上させた状態で作動中の気筒グループに入る。
【0065】
さらなる好ましい実施形態によれば、前処理された燃料を利用する上述の方法を、排ガスを作動中の気筒グループに再循環させる方法と組み合わせた排ガスリブリージングを用いることによって、達成しても良い。排ガスリブリージングが不作動の気筒グループで行われ、作動中の気筒グループでは行われず、いずれの気筒グループについても一般的な排ガスマニホルドと一般的なガス取り入れマニホルドが設けられていると仮定すれば、作動中の気筒グループからの排ガスが、排ガスマニホルドからの不作動の気筒グループによってリブリージングしてもよい。かなり後で行われる後噴射を適正なタイミングで行うことによって、前処理された燃料が与えられ、この燃料が着火性を向上させた燃料として作動中の気筒グループのガス取り入れマニホルドに与えられる。
【0066】
いうまでもなく、別の実施形態によれば、この方法を上記のバイパス方法および/またはリブリージング方法のステップと組み合わせてもよい。特に、バイパス方法と空気の再利用方法を組み合わせることによって、低温始動時の熱慣性を減少することになる。
【0067】
方法のステップおよび/またはシステムの特徴の考えうる組み合わせについて、上記ですべて詳細に言及しているわけではないが、発明性を逸脱しない範囲であらゆる好適な形で特徴とステップを組み合わせてもよいことは当業者には自明である。
【0068】
さらに別の好ましい実施形態と効果については、請求項、図面および発明の説明で定義する。
【0069】
以下の本発明にかかるシステムと方法の好ましい実施形態を添付の図面を参照して説明する。図面の説明は、本発明の原理を単純化したものとみなされ、請求項の範囲を制限する意図はない。