特許第6666946号(P6666946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6666946
(24)【登録日】2020年2月26日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】土壌環境改善手法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/32 20060101AFI20200309BHJP
   C09K 17/50 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   C09K17/32 K
   C09K17/50 K
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-83435(P2018-83435)
(22)【出願日】2018年4月24日
(65)【公開番号】特開2019-189742(P2019-189742A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年3月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000170646
【氏名又は名称】国土防災技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 康浩
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 裕太
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢治
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−023347(JP,A)
【文献】 特開2004−216786(JP,A)
【文献】 特開2007−154113(JP,A)
【文献】 特開2018−004386(JP,A)
【文献】 特開2018−090824(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1912006(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K17/00−17/52
C09K101/00−201/10
C04B38/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルボ酸又はフミン酸を木材廃棄物からなる木材チップの爆砕処理の過程で加えることで製造された木質粗繊維を含む土壌改良資材を、塩類が過剰に蓄積した土壌中に混合し、自然降雨で養生することで過剰な塩類を排出することを特徴とする土壌環境改善手法。
【請求項2】
記土壌改良資材を土壌中に混合することによって、土壌の透水性を改善し、前記フルボ酸又はフミン酸の土壌中の塩類をキレート化する効果を促進することを特徴とする請求項1に記載の土壌環境改善手法。
【請求項3】
記土壌改良資材を土壌中に混合することによって、土壌の透水性を改善し、前記フルボ酸又はフミン酸によりキレート化された土壌中の塩類を自然降雨によって析出して除塩することを特徴とする請求項1に記載の土壌環境改善手法。
【請求項4】
記土壌改良資材を土壌中に混合することによって、土壌の透水性を改善し、前記フルボ酸又はフミン酸のpHを調整する機能である化学的緩衝能力によって土壌のpHを中性に近づけることを特徴とする請求項1に記載の土壌環境改善手法。
【請求項5】
記土壌改良資材を土壌中に混合することによって、土壌環境を改善した後に、更に土壌環境を改善する時にフルボ酸又はフミン酸を追加散布することを特徴とする請求項1に記載の土壌環境改善手法。
【請求項6】
記土壌改良資材を土壌中に混合する場合、前記木質粗繊維に混合していないフルボ酸又はフミン酸、硫黄、脱硫石膏、及び転炉スラグの群から選ばれる少なくとも1種を追加することを特徴とする請求項1に記載の土壌環境改善手法。
【請求項7】
前記フルボ酸又はフミン酸として、木、又は草、又は野菜屑、又は落葉落枝の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される極強酸性の有機酸である木酢液又は竹酢液に適量漬け込み、長期間養生することで製造されるフルボ酸又はフミン酸を用いたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の土壌環境改善手法。
【請求項8】
前記木質粗繊維は、該木質粗繊維の長さ方向に対して垂直な方向に形成されたスリットを有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の土壌環境改善手法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルボ酸又はフミン酸を木材廃棄物等からなる木材チップの爆砕処理の過程で加えることで製造される木質粗繊維を利用して土壌環境を改善する手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌の酸性、アルカリ性を問わずにナトリウム等の塩類が集積した土壌を改善することを目的として、塩類を洗い流す為に排水施設を設け、土壌に蓄積している過剰な塩類を洗い流す手法が一般的に行われている(例えば、特許文献1及び非特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、透水性が小さい浚渫土等の粘性土について効率的に除塩するため、前述の粘性土と透水性のある透水性改良材を混合し、有機質系材料からなる排水層を設置し、その排水層の上に、前述の透水性改良材が混合された粘性土により盛土層を構築し、降雨及び給水により盛土層を除塩処理する方法が開示されている。
【0004】
非特許文献1には、緑化植物の生育に支障を及ぼす高濃度の塩類を適正な電気伝導度(EC)に調整し、植栽基盤土として適応した状態に改善するための除塩の方法として、散水や中和剤等を用いて生育障害の要因となる塩類を溶脱させる手法であり、現地盤下層からの排水が可能な場合で土壌の透水性に問題がある場合は、粗耕起するという方法と、下層からの排水が不可能な場合は当該土壌を仮盛土とするという方法、が開示されており、排水は仮設水路等を作り、雨水又は散水により、脱塩し、定期的に電気伝導度(EC)を測定し、脱塩効果を確認するとしている。
【0005】
非特許文献2には、土壌中に残留する過剰な塩分は、十分な量の真水で流し出すことを除塩の基本とし、土壌内に十分な量の真水を湛水させ、その浸透水により土壌中の塩分を排除する方法と、土壌中の塩分を湛水中に拡散溶出させ、土壌の水尻から排出する方法と、を開示し、いずれの方法においても、土壌中の塩分濃度が目標値に達するまで、湛水から排水に至る工程を繰り返すとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−100074号公報
【非特許文献1】「植栽基盤整備技術マニュアル」平成21年4月1日改定第2版 一般財団法人 日本緑化センター
【非特許文献2】「農地の除塩マニュアル 農村振興局」平成23年6月 農林水産省
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1、非特許文献1、2にあっては、ナトリウムなどの塩類が集積した土壌を改善する除塩技術が開示されているが、次のような問題がある。
(1)排水設備、排水層や盛土層を設置する必要があり、除塩作業の前段階での工事が大規模になり、周辺環境への影響や、工事コストが大きくなる。
(2)排水設備、排水層の設置により、塩類集積した排水を局所的に排出することで、周辺土壌に更に塩類を集積させる。
(3)非特許文献1、非特許文献2に開示されている、真水による洗浄では大量の真水が必要となる。
(4)特許文献1で開示されている、降雨による除塩処理の方法では洗浄のための大量の真水は必要としないが、透水性を確保するために、改良材を1つもしくは2つ以上混合することを必要とし、さらに土壌の団粒化の促進には、高価な高分子ポリマーの使用が必要とされている。
(5)粘土鉱物の含有率の高い土壌の場合には、粘土鉱物に強固に吸着されている塩類を剥ぎ取ることが必要となることから、大量の水が必要となる。
【0008】
これらの問題は、塩類集積が進んだ土壌のみならず、津波堆積物でも同様である。
【0009】
従って、本発明は、大掛かりな排水施設を作る必要がなく、低コストで、大量の土壌の土壌環境を改善することができる土壌環境改善手法をもたらすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明では、フルボ酸又はフミン酸を木材廃棄物等からなる木材チップの爆砕処理の過程で加えることで製造された木質粗繊維を過剰に塩類が集積した土壌に混合し、自然降雨で養生することで過剰な塩類を排出し、土壌環境を改善するようにした。
【0011】
すなわち、本発明の第1は、前記フルボ酸又はフミン酸を木材廃棄物からなる木材チップの爆砕処理の過程で加えることで製造された前記木質粗繊維を含む土壌改良資材を、塩類が過剰に蓄積した土壌中に混合し、自然降雨で養生することで過剰な塩類を排出することを特徴とする土壌環境改善手法である。
【0012】
本発明の第2は、第1の発明において、前記土壌改良資材を土壌中に混合することによって、土壌の透水性を改善し、前記フルボ酸又はフミン酸の土壌中の塩類をキレート化する効果を促進するものである。
【0013】
本発明の第3は、第1の発明において、前記土壌改良資材を土壌中に混合することによって、土壌の透水性を改善し、前記フルボ酸又はフミン酸によりキレート化された土壌中の塩類を自然降雨によって析出して除塩するものである。
【0014】
本発明の第4は、第1の発明において、前記土壌改良資材を土壌中に混合することによって、土壌の透水性を改善し、前記フルボ酸又はフミン酸のpHを調整する機能である化学的緩衝能力によって土壌のpHを中性に近づけるものである。
【0015】
本発明の第5は、第1の発明において、前記土壌改良資材を土壌中に混合することによって、土壌環境を改善した後に、更に土壌環境を改善する時にフルボ酸を追加散布するものである。
【0016】
本発明の第6は、第1の発明において、前記土壌改良資材を土壌中に混合する場合、前記木質粗繊維に混合していないフルボ酸又はフミン酸、硫黄、脱硫石膏、及び転炉スラグの群から選ばれる少なくとも1種を追加するものである。
【0017】
本発明の第7は、第1〜第6の発明のいずれかにおいて、前記フルボ酸又はフミン酸として、木、又は草、又は野菜屑、又は落葉落枝の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される極強酸性の有機酸である木酢液又は竹酢液に適量漬け込み、長期間養生することで製造されるフルボ酸又はフミン酸を用いたものである。
【0018】
本発明の第8は、第1〜第7の発明のいずれかにおいて、前記木質粗繊維は、該木質粗繊維の長さ方向に対して垂直な方向に形成されたスリットを有するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記の構成であるから、次の効果がある。すなわち、フルボ酸又はフミン酸を木材廃棄物等からなる木材チップの爆砕処理の過程で加えることで製造される木質粗繊維を改善が必要となる土壌に混合することによって、土壌中の透水性を改善し、改善された透水性によってフルボ酸又はフミン酸のキレート効果を土壌中で均一に発現させることが可能となり、その効果によって酸性、アルカリ性の土壌における過剰な塩類を自然降雨によって効率的に排出することを可能としたものである。また、粘土鉱物の濃度の高い土壌においても、木質粗繊維によって透水性が改善された土壌中でフルボ酸又はフミン酸が均等に分散することから、土壌中でフルボ酸又はフミン酸のキレート効果によって粘土鉱物から塩類を効率的に剥ぎ取ることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態における土壌改良資材の製造工程を示す概略説明図である。
図2A】木材チップを蒸煮しリファイナーにより解繊処理した繊維のSEM像である。
図2B】連続式の爆砕装置により解繊処理した繊維のSEM像である。
図3】本発明の一実施形態に係る土壌環境改善手法の工程を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0022】
<土壌改良資材>
本実施形態における土壌改良資材は、フルボ酸又はフミン酸が混合された木質粗繊維を含む。以下、土壌改良資材の製造方法について説明する。
【0023】
本実施形態における土壌改良資材の製造工程は、図1に示すように、原料としての木材をチップ状に切断して木材チップを得るチップ化工程S1と、木材チップを爆砕処理して木質粗繊維を得る爆砕処理工程S2とを備えている。
【0024】
チップ化工程S1において用いる木材は林業で発生する間伐材や林地残材、建設業、木材・木製品製造業、家具の製造業、パルプ製造業、輸入木材の卸売業および物品賃貸業から生ずる木材片、おがくず等の産業廃棄物や、その他植木の剪定枝等の木材の一般廃棄物などの木材廃棄物である。樹種は制限されないが、例えばケヤキ、スギ、タモ、ナラ、ヒノキ、アカマツ等が挙げられる。なお、木材に含まれる樹皮分の含有量は80体積%未満とすることが望ましい。これは、爆砕処理工程S2において、樹皮分が80体積%以上となると、爆砕処理工程S2中に圧縮できないためである。
【0025】
また、木材の水分含有率は、ドライベース30質量%超であることが好ましい。木材の水分含有率が、ドライベースで30質量%以下となると、爆砕処理工程S2において水蒸気爆発が起こらない問題がある。ただし、木材の水分含有率がドライベースで30質量%以下の場合であっても木材とともに水を投入することにより爆砕処理可能となる。
【0026】
チップ化工程S1において、木材を、例えば木材チッパー等を用いて、チップ状の小片に切断し、木材チップを得る。木材チップの大きさは、爆砕処理工程S2における爆砕処理の効率化の観点から、好ましくは最大径100mm以下、より好ましくは最大径2mm以上70mm以下、特に好ましくは最大径5mm以上40mm以下である。
【0027】
爆砕処理工程S2において、木材チップを、例えば特開2006−239729号公報に開示されている2軸スクリュー押出機のような連続式の爆砕装置や、バッチ式の圧力釜装置等に投入し爆砕処理を施す。
【0028】
連続式の爆砕装置では、木材チップを爆砕装置の投入口に投入すると、木材チップは、回転するスクリュー等の間に挟み込まれて粉砕・擂り潰され、圧縮部を経て高圧縮部へ送り込まれることで十分に圧縮される。本実施形態では、この爆砕処理工程S2において、フルボ酸又はフミン酸を添加する。
【0029】
蒸煮爆砕装置としてバッチ式の圧力釜装置を用いる場合には、圧力釜に木材チップとフルボ酸又はフミン酸とを投入し、180℃以上250℃以下の水蒸気下、1MPa以上2MPa以下の力下で5〜10分間蒸煮・爆砕処理を行うことにより、本実施形態の木質粗繊維を得ることができる。
【0030】
爆砕処理工程S2において加えるフルボ酸又はフミン酸は、例えば、
(ア)木、草、野菜屑若しくは落葉落枝の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される極強酸性の有機酸である木酢液又は竹酢液に適量漬け込み、例えば600時間以上の長期間養生することで製造されたもの、
(イ)腐植土から抽出したもの、及び、
(ウ)水域の底部の堆積土から抽出したもの
の群から選ばれる少なくとも1種のフルボ酸又はフミン酸である。これらのフルボ酸又はフミン酸は単独で用いてもよいし、2種以上を混合させて用いてもよい。
【0031】
なお、(ア)のフルボ酸又はフミン酸について、例えば以下のような製造方法により製造される。
(1)自然由来の木酢液又は竹酢液とは、木、竹、草、残滓等の未分解の有機物を炭の製造過程で産出されるものである。
(2)有機物に対する酢液の割合は、例えば容量比で、木、又は草、又は野菜屑、又は落葉落枝の未分解の有機物に対して木酢液又は竹酢液が0.5以上の割合とすることができる。
(3)酢液が有機物に染み込むのに例えば5時間以上で、腐植含有量が5%以上になるのに、例えば600時間以上の長時間にわたって酢液に漬け込むものである。
【0032】
なお、爆砕処理工程S2において、フルボ酸又はフミン酸は、水により希釈された状態で添加される。このとき、フルボ酸又はフミン酸は、加水量に対して、好ましくは100倍希釈以上、より好ましくは300倍希釈以上、特に好ましくは500倍希釈以上となるように加える。
【0033】
フルボ酸又はフミン酸は化学的pH緩衝能力を有する。これにより、フルボ酸又はフミン酸を含む木質粗繊維のpHは弱酸性域で安定するため、pH調整材を混合して土壌改良資材のpH調整を行う必要がなくなる。また、フルボ酸又はフミン酸の凝集効果によって長期的に団粒化を促すことや透水性を高めることができる。そうして、土壌改良資材としての木質粗繊維の機能を飛躍的に高めることができる。
【0034】
そして、圧縮された木材チップは、放出口から放出されることによりフルボ酸又はフミン酸を含んだ水蒸気の爆発を起こし、爆砕処理されて、フルボ酸又はフミン酸が混入した木質粗繊維が得られる。
【0035】
なお、木材チップを蒸煮しリファイナーにより解繊処理を行った木質粗繊維の表面を、図2Aの電子顕微鏡(SEM)像に示す。また、本実施形態における爆砕処理工程S2で用いる連続式の爆砕装置により爆砕処理を行った場合の木質粗繊維の表面を、図2BのSEM像に示す。図2Aに比べ、図2Bでは、木質粗繊維の長さ方向に対して垂直な方向等に向かって、木質粗繊維の表面が毛羽立ったように細かく爆砕される。これにより、木質粗繊維が土壌中に混合されたときに、土壌の透水性が向上する。また、木質粗繊維の長さ方向に対して垂直な方向にスリットが形成され、毛細管現象によってフルボ酸又はフミン酸を含んだ水分が繊維内に取り込まれ、木質粗繊維の保水効果が向上する。このように、本実施形態における爆砕処理工程S2によれば、木質粗繊維の透水性・保水性能を効果的に向上させることができる。また、連続的な爆砕による大量生産可能、加熱不要の観点からは、連続式の爆砕装置を用いることが好ましい。
【0036】
上述のごとく得られたフルボ酸又はフミン酸が混入された木質粗繊維は、例えばそのまま土壌改良資材として使用することができる。また、フルボ酸又はフミン酸が混入された木質粗繊維を、例えば乾燥させたり、さらに添加物を添加したりすることにより、種々の土壌改良資材を得ることができる。
【0037】
<土壌環境改善手法>
本実施形態に係る土壌環境改善手法は、木質粗繊維とフルボ酸又はフミン酸とを用いた土壌環境改善手法であって、上述のごとく製造した土壌改良資材を塩類が過剰に蓄積した土壌中に混合し、自然降雨で養生することで過剰な塩類を排出することにより行われる。
【0038】
図3は、本実施形態に係る土壌環境改善手法の工程を示す概略説明図である。図3において、Gは地表面、1は土壌改良資材、2はフルボ酸又はフミン酸、3は添加剤(硫黄粉末、脱硫石膏、転炉スラグ)、41はショベルカー、42はジョウロである。
【0039】
図3に示すように、まず、ショベルカー41により、過剰な塩類が堆積した土壌を掘り起こし、土壌改良資材1を混合して土壌内に埋め込む。所望の範囲の土壌に土壌改良資材1を混合した後、自然降雨により養生して過剰な塩類が排出される。
【0040】
土壌改良資材1は、上述のごとく、フルボ酸又はフミン酸を木材廃棄物等からなる木材チップの爆砕処理の過程で加えることで製造された木質粗繊維を含んでいる。
【0041】
土壌中にフルボ酸又はフミン酸を含む木質粗繊維が単位体積当たり1〜30体積%の割合で混合されるように、土壌改良資材を土壌中に混合することで、土壌中の物理・化学性を改善し、フルボ酸又はフミン酸のキレート効果によって、余分に析出された塩類について、自然降雨によって排出して土壌の健全化を図ることができる。
【0042】
すなわち、土壌改良資材1を土壌中に混合することによって、土壌の透水性を改善することができる。また、フルボ酸又はフミン酸の土壌中の塩類をキレート化する効果を促進することができる。さらに、フルボ酸又はフミン酸によりキレート化された土壌中の塩類を自然降雨によって析出して除塩することができる。また、フルボ酸又はフミン酸のpHを調整する機能である化学的緩衝能力によって土壌のpHを中性に近づけることができる。
【0043】
また、図3に示すように、土壌改良資材1を土壌中に混合する場合、その混合前後又は混合と同時に、木質粗繊維に混合していないフルボ酸又はフミン酸2、添加剤3を追加して、土壌中に混合するようにしてもよい。添加剤3は、硫黄、脱硫石膏、及び転炉スラグの群から選ばれる少なくとも1種である。
【0044】
なお、土壌改良資材1を土壌に混合した後や、混合後所定期間経過してから、更に土壌環境の改善効果を高める為に、フルボ酸又はフミン酸2を例えばジョウロ等により追加散布することも可能である。フルボ酸又はフミン酸2としては、木質粗繊維に混合されたフルボ酸又はフミン酸と同様の方法により得られたものを用いることができる。
【0045】
本実施形態に係る土壌改良手法によれば、大掛かりな排水施設を作る必要がなく、自然降雨を利用できることから改善対象となる土壌環境を急激に変えることなく、過剰な塩類を排出して、低コストで、大量の土壌の土壌環境を改善することができる。
【実施例】
【0046】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0047】
[土壌改良資材]
土壌改良資材の調整は、スギ材を、チッパーを用いて5〜40mmの木材チップとした。
【0048】
そして、この木材チップとフルボ酸(国土防災技術株式会社製、フジミン)の500倍希釈液10L/mとを2軸スクリュー押出機(モリマシナリー株式会社製、MORI−LEHMANNエクストルーダ)の投入口に混合投入し爆砕した。
【0049】
爆砕後の木質粗繊維を大気下で2時間乾燥させて土壌改良資材を得た。
【0050】
[効果確認試験1]
国土防災技術株式会社松江試験場(島根県)において、土壌pHが11、土壌EC(電気伝導度)6dS/m、土壌透水係数10−5cm/Sの土壌に対して上述のごとく製造したフルボ酸を混合した木質粗繊維からなる土壌改良資材を5体積%混合して自然降雨に放置して観察した結果、降雨のあった一週間後には土壌の透水係数は、10−3cm/Sに改善し、土壌pH8、土壌EC0.7dS/mまで改善した。
【0051】
[効果確認試験2]
福島県南相馬の植生盛土において、長谷川式の透水試験で1時間当たり24mmの水位低下であった珪藻土の盛土面に、上述のごとく製造したフルボ酸を混合した木質粗繊維からなる土壌改良資材を3体積%混合することによって1時間当たり60mmの水位低下まで改善できている。社団法人日本造園学会の緑化事業における植栽基盤整備マニュアル(2000年)では、1時間当たりで30mm以上の透水があることが植栽基盤として可とすることが決められている。また、土壌のpHは3から5.5、土壌ECも0.8dS/mまで改善した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、大掛かりな排水施設を作る必要がなく、低コストで、大量の土壌の土壌環境を改善することができるので極めて有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 土壌改良資材
2 フルボ酸又はフミン酸
3 添加剤
41 ショベルカー
42 ジョウロ
S1… チップ化工程
S2… 爆砕処理工程
図1
図2A
図2B
図3