特許第6666976号(P6666976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6666976トンネル支保工の建て込み方法および建て込みシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6666976
(24)【登録日】2020年2月26日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】トンネル支保工の建て込み方法および建て込みシステム
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20200309BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20200309BHJP
   E21D 11/18 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   E21D11/40 A
   E21D11/10 D
   E21D11/18
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-192745(P2018-192745)
(22)【出願日】2018年10月11日
(62)【分割の表示】特願2015-252392(P2015-252392)の分割
【原出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2019-2277(P2019-2277A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2018年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 和彦
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3381606(JP,B2)
【文献】 特開2000−045695(JP,A)
【文献】 特開2012−197559(JP,A)
【文献】 特開2007−138427(JP,A)
【文献】 特開平08−151711(JP,A)
【文献】 特開平09−268898(JP,A)
【文献】 特開昭54−090831(JP,A)
【文献】 米国特許第04685839(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
E21D 1/00−9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状に分割された一対の分割支保工を上端部で相互に連結してなるアーチ状の支保工を切羽に建て込むトンネル支保工の建て込み方法において、
前記一対の分割支保工のうち一方の上端部には、他方の上端部に形成された凸型連結部と係合可能な凹型連結部が設けられており、
前記一対の分割支保工を着脱可能に把持する一対のハンドを有するエレクタ装置を前記切羽に配置し、前記一対の分割支保工を把持した状態の前記一対のハンドを相対移動させて前記凹型連結部に前記凸型連結部を係合させることで前記一対の分割支保工をアーチ状に連結する支保工連結工程を有し
支保工連結工程において、前記一対の分割支保工にそれぞれ取り付けたターゲットの位置を座標既知地点に設置した測量機によって順次自動測量することで得られた測量データに基づいて、前記凹型連結部に前記凸型連結部を係合させるために必要な前記一対のハンドの移動量を設定し、当該設定した前記一対のハンドの移動量を前記エレクタ装置に設置されたモニタにリアルタイムで表示させながら前記一対のハンドを相対移動させることにより前記凹型連結部に前記凸型連結部を係合させる、
トンネル支保工の建て込み方法。
【請求項2】
前記エレクタ装置は、前記切羽にコンクリートを吹付ける吹付け装置を備える作業車に搭載されており、
前記建て込み方法は、
前記一対の分割支保工をアーチ状に連結後、所定の建て込み位置に前記アーチ状の支保工を配置する工程と、
前記建て込み位置に配置した前記アーチ状の支保工を前記ハンドに把持した状態で、前記吹付け装置によりコンクリートを吹付けて前記アーチ状の支保工を仮固定した後、前記ハンドによる前記アーチ状の支保工の把持を解除する工程と、
を更に有する、
請求項に記載のトンネル支保工の建て込み方法。
【請求項3】
円弧状に分割された一対の分割支保工を上端部で相互に連結してなるアーチ状の支保工を切羽に建て込むトンネル支保工の建て込みシステムにおいて、
前記一対の分割支保工を着脱可能に保持する一対のハンドを有するエレクタ装置と、
前記一対の分割支保工にそれぞれ取り付けられたターゲットと、
前記ターゲットの位置を座標既知地点から測量する測量機と、
を含み、
前記一対の分割支保工のうち一方の上端部には、他方の上端部に形成された凸型連結部と係合可能な凹型連結部が設けられており、
前記エレクタ装置は、前記切羽に配置された状態において、前記一対の分割支保工を把持した状態の前記一対のハンドを相対移動させて前記凹型連結部に前記凸型連結部を係合させることで前記一対の分割支保工をアーチ状に連結する際、前記一対の分割支保工にそれぞれ取り付けたターゲットの位置を前記測量機によって順次自動測量することで得られた測量データに基づいて、前記凹型連結部に前記凸型連結部を係合させるために必要な前記一対のハンドの移動量を設定し、当該設定した前記一対のハンドの移動量を前記エレクタ装置に設置されたモニタにリアルタイムで表示させながら前記一対のハンドを相対移動させることにより前記凹型連結部に前記凸型連結部を係合させる、
トンネル支保工の建て込みシステム。
【請求項4】
前記エレクタ装置は、前記切羽にコンクリートを吹付ける吹付け装置を備える作業車に搭載されており、
前記一対の分割支保工をアーチ状に連結後、所定の建て込み位置に前記アーチ状の支保工を配置し、前記建て込み位置に配置した前記アーチ状の支保工を前記ハンドに把持した状態で、前記吹付け装置によりコンクリートを吹付けて前記アーチ状の支保工を仮固定した後、前記ハンドによる前記アーチ状の支保工の把持を解除する、
請求項に記載のトンネル支保工の建て込みシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル支保工の建て込み方法および建て込みシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを構築する工法として、NATM工法(New Austrian Tunneling Method)が知
られている。NATM工法は、地山が有する支保能力、強度を有効に利用してトンネルの安定を保つという考え方のもとに、吹付けコンクリート、ロックボルト、鋼製支保工等の支保材を適宜に用いて、地山と一体化したトンネル構造物を建設する工法である。
【0003】
NATM工法においてトンネルを構築する際に、アーチ状のトンネル支保工を設置する場合、通常、以下に説明する手順により行われている。まず、切羽の近傍に吹付け機をセットして、切羽にコンクリートを一次吹き付けし、これが完了すると、吹付け機を退出させる。次いで、切羽の近傍に支保工を建て込むエレクタを備えた作業車をセットして、エレクタによりアーチ状のトンネル支保工を切羽に建て込み、これが完了すると作業車を退出させる。次に、切羽に吹付け機を再びセットし、建て込まれたトンネル支保工を埋め込むようにして、コンクリートの二次吹付けを行い、吹付け機を退出させる。
【0004】
NATM工法におけるトンネル支保工を正確に建て込むための技術として、作業車に一対のターゲットを設置し座標既知地点からレーザ測距機によりそれぞれ視準して、ターゲット座標値を求め、支保工の設置座標値に設置する設置方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、支保工の左、右および上中央の3箇所にターゲットを取り付け、トータルステーションによりターゲットを自動で追尾して、エレクタ装置により支保工を設計値に調整する建て込み方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3381606号公報
【特許文献2】特許第4559346号公報
【特許文献3】特許第5720041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、トンネル支保工の建て込みは、円弧状に分割された一対の支保工を切羽に設置した後、ボルト等を介して一対の支保工の上端部同士を相互に連結することでアーチ状に形成されるが、このボルトの締結作業は人手による作業となっているのが実情である。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、トンネル支保工を建て込む際に、切羽における人手作業を回避し、安全性および作業性を向上することができるトンネル支保工の建て込み方法および建て込みシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、円弧状に分割された一対の分割支保工を上端部で相互に連結してなるアーチ状の支保工を切羽に建て込むトンネル支保工の建て込み方法において、前記一対の分割支保工のうち一方の上端部には、他方の上端部に形成された凸型連結部と係合可能な凹型連
結部が設けられており、前記一対の分割支保工を着脱可能に把持する一対のハンドを有するエレクタ装置を前記切羽に配置し、前記一対の分割支保工を把持した状態の前記一対のハンドを相対移動させて前記凹型連結部に前記凸型連結部を係合させることで前記一対の分割支保工をアーチ状に連結する支保工連結工程を有することを特徴とする。
【0010】
上記構成を採用することで、切羽近傍においてボルトとナット等を用いて人手による締結作業を行うことなく、エレクタ装置のハンド操作によって凹型連結部に凸型連結部を係合させ、一対の分割支保工同士を相互に連結することができる。その結果、トンネル支保工を建て込む際の安全性および作業性を向上することができる。
【0011】
また、本発明は、前記支保工連結工程において、前記一対の分割支保工にそれぞれ取り付けたターゲットの位置を座標既知地点から測量することで得られた測量データに基づいて前記一対のハンドを相対移動させる構成としても良い。このようにハンドの相対移動量を設定することによって一対の分割支保工同士をより一層効率良くハンド操作によって連結することができる。
【0012】
また、本発明において、前記エレクタ装置は、前記切羽にコンクリートを吹付ける吹付け装置を備える作業車に搭載されており、前記一対の分割支保工をアーチ状に連結後、所定の建て込み位置に前記アーチ状の支保工を配置する工程と、前記建て込み位置に配置した前記アーチ状の支保工を前記ハンドに把持した状態で、前記吹付け装置によりコンクリートを吹付けて前記アーチ状の支保工を仮固定した後、前記ハンドによる前記支保工の把持を解除する工程を更に有する構成としても良い。これによれば、作業車の移動、セット、退出が一度で済み、重機の輻輳を回避することができる。また、掘削、一次吹付け、支保工建て込み、二次吹付けの一連の作業において、作業員が切羽に立ち入ることなく作業を進めることができるため、作業の安全性が顕著に向上する。
【0013】
なお、本発明は、トンネル支保工の建て込みシステムとして捉えることもできる。即ち、本発明は円弧状に分割された一対の分割支保工を上端部で相互に連結してなるアーチ状の支保工を切羽に建て込むトンネル支保工の建て込みシステムにおいて、前記一対の分割支保工を着脱可能に保持する一対のハンドを有するエレクタ装置を含み、前記一対の分割支保工のうち一方の上端部には、他方の上端部に形成された凸型連結部と係合可能な凹型連結部が設けられており、前記エレクタ装置は、前記切羽に配置された状態において、前記一対の分割支保工を把持した状態の前記一対のハンドを相対移動させて前記凹型連結部に前記凸型連結部を係合させることで前記一対の分割支保工をアーチ状に連結することを特徴とする。このような構成を採用することで、建て込み方法で述べたものと同様な効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トンネル支保工を建て込む際に、切羽における人手作業を回避し、安全性および作業性を向上することができるトンネル支保工の建て込み方法および建て込みシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係るトンネル支保工の建て込みシステムの概略構成図である。
図2図2は、実施形態に係る作業車の上面図である。
図3図3は、実施形態に係る作業車の側面図である。
図4図4は、実施形態に係る支保工へのターゲットの取付け位置について示す図である。
図5図5は、実施形態に係るターゲットを示す図である。
図6図6は、実施形態に係る左右の分割支保工の連結構造を説明する図である。
図7図7は、実施形態に係る左側分割支保工および右側分割支保工を連結する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
<実施形態>
図1は、実施形態に係るトンネル支保工の建て込みシステムSの概略構成図である。図中、符号1は支保工の建て込みを行うエレクタ装置、符号2はエレクタ装置1を搭載すると共に自走可能な作業車である。符号3はレーザ光による測距・測角儀(測量機)である自動追尾型トータルステーション、符号4はトータルステーション3を制御するトータルステーションコントローラ、符号5はトータルステーションコントローラ4と無線による送受信を可能とするトータルステーション側アンテナである。
【0018】
エレクタ装置1は、操縦席に搭載されたディスプレイ装置であるモニタ11、エレクタコントローラ12、エレクタ側アンテナ13、操作盤14、キーボード15、ポンティングデバイス16等を有する。また、図中の符号6は、アーチ状の鋼製支保工(以下、「アーチ状支保工」という)である。詳しくは後述するが、アーチ状支保工6は、円弧状に分割された一対の分割支保工6L,6Rを中央部で相互に連結することで形成されている。ここでいう「中央部」とはアーチ状支保工6の中央部を指しており、一対の分割支保工6L,6Rの各上端部同士が相互に連結される。
【0019】
トータルステーション3は、レーザ光を照射してプリズム等を含むターゲット7を自動追尾し、その測距・測角を行うことで、ターゲットの位置を測定(測量)する測量機であり、トンネル内において座標が既知の地点(座標既知地点)に設置される。本実施形態では、切羽に建て込む支保工にターゲット7を取り付け、分割支保工6L,6R(アーチ状支保工6)の移動に伴いターゲット7を自動追尾することから、そのようなターゲットの自動追尾、および視準に障害が無いところを選んで設置するとよい。例えば、トンネル床面に設置しても良いし、天井部に架台を架設して、トータルステーション3を架台上に設置しても良い。
【0020】
トータルステーションコントローラ4は、例えば携帯可能なコンピュータを含んで構成されている。トータルステーションコントローラ4は、コンピュータに組み込まれたソフトウェアによってトータルステーション3の各種の機構を自動制御すると共に、トータルステーション3の測量データを処理する。更に、トータルステーションコントローラ4は、エレクタコントローラ12側との無線通信によりデータの送受信が可能であり、且つ、エレクタコントローラ12側からの指令によりトータルステーション3の各種の機構を無線遠隔操作することが可能である。
【0021】
図2は、本実施形態に係る作業車2の上面図である。図3は、本実施形態に係る作業車2の側面図である。作業車2は、エレクタ装置1および吹付け装置10を備えている。エレクタ装置1は、同一構成の一対のブーム17L,17Rを備えている。一対のブーム17L,17Rは、これらに付設される駆動機構の作動によって伸縮動作、傾動動作、揺動動作、回動動作が自在である。また、各ブーム17L,17Rの先端には、同一構成の一対のハンド18L,18Rが連結されている。一対のハンド18L,18Rは、これらに付設される駆動機構の作動によって回転動作および揺動動作が自在であり、一対の分割支保工6L,6Rを着脱自在に挟圧把持(保持)することができる。
【0022】
以下では、符号17Lで示すブームを「左側ブーム」と呼び、符号17Rで示すブーム
を「右側ブーム」と呼ぶ。また、符号18Lで示すハンドを「左側ハンド」と呼び、符号18Rで示すハンドを「右側ハンド」と呼ぶ。更に、符号6Lで示す分割支保工を「左側分割支保工」と呼び、符号6Rで示す分割支保工を「右側分割支保工」と呼ぶ。エレクタ装置1は、左側ハンド18Lに左側分割支保工6Lを着脱自在に把持し、右側ハンド18Rに右側分割支保工6Rを着脱自在に把持することができる。本実施形態において、左右の分割支保工6L,6Rは、アーチ状のH型鋼が2分割された一対の支保工であり、切羽の近傍に誘導された後、これらを切羽で組み立ててアーチ状のアーチ状支保工6を形成する。左右の分割支保工6L,6Rは、それぞれの上端部で相互に連結されることで一体となる。
【0023】
図4は、実施形態に係る支保工へのターゲットの取付け位置について示す図である。図4に示すように、左右の分割支保工6L,6Rは左右対称な円弧状である。ここで、左側分割支保工6Lは、その上端部6Laと下端部6Lbにそれぞれ第1ターゲット7aと第2ターゲット7bが取り付けられる。また、右側分割支保工6Rは、その上端部6Raと下端部6Rbにそれぞれ第3ターゲット7cと第4ターゲット7dが取り付けられる。ここで、第1ターゲット7a〜第4ターゲット7dを「ターゲット7」と総称する。図5は、実施形態に係るターゲット7を示す図である。ターゲット7は、ホルダ71の基端部に設けられた磁石72と、ホルダ71の先端に設けられたプリズム73を有する。左右の分割支保工6L,6Rは鋼製であるため、ホルダ71の基端部に設けられた磁石72の磁力によって分割支保工6L,6Rに対してターゲット7を着脱自在に取り付けることができる。
【0024】
また、図4に示す例では、左右の分割支保工6L,6Rの内周面にターゲット7が取り付けられるようになっている。本実施形態では、左側分割支保工6Lにおける上端部6Laと下端部6Lbの内周面に、第1ターゲット7aと第2ターゲット7bを取り付ける際の目印が予めペンキ等で標示されている。同様に、右側分割支保工6Rにおける上端部6Raと下端部6Rbの内周面に、第3ターゲット7cと第4ターゲット7dを取り付ける際の目印が予めペンキ等で標示されている。また、各ターゲット7は、左右の分割支保工6L,6Rの内周面に取り付けた状態において、当該内周面からプリズム73中心までの高さHpは一定である。
【0025】
次に、図2および図3を参照して吹付け装置10について説明する。吹付け装置10は、左側ブーム17Lおよび右側ブーム17Rの間に配設されており、アーム101と、アーム101に支持される吹付けロボット102と、吹付けロボット102の先端側に設けられる吹付けノズル103等を備えている。アーム101は、伸縮動作、傾動動作等が可能である。また、吹付けロボット102は、吹付けノズル103の傾動動作、回動動作等が可能である。その他、吹付け装置10は、コンクリートポンプ、急結剤供給装置、コンプレッサ、高圧水ポンプ等を備えている。吹付けロボット102は、コンクリートポンプから供給された吹付け用コンクリート(以下、単に「コンクリート」という)を吹付けノズル103から吐出させることで、コンクリートを切羽に吹付けることができる。
【0026】
次に、本実施形態における支保工の建て込み方法について説明する。NATM工法は、(1)切羽を発破又は機械によって掘削→(2)ズリの搬出→(3)コンクリートの一次吹付け→(4)支保工の建て込み→(5)コンクリートの二次吹付け→(6)ロックボルトの打設を1サイクルとして繰り返すことで、トンネルを軸方向に延伸させてゆくものである。本実施形態では、(2)ズリの搬出工程が終了した後、作業車2を切羽近傍にセットする。その際、エレクタ装置1の各ハンド18L,18Rには、それぞれ左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rを、トンネル軸(トンネル延伸方向)に沿って把持した状態で作業車2を自走させ、切羽近傍にセットする。そして、これから左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rを建て込む切羽に、吹付け装置10を用いてコンクリートを
吹付ける一次吹付けを行う。なお、切羽の状態が良好な場合には、この一次吹付けを省略する場合もある。
【0027】
次に、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rの建て込みを行う。図6は、左右の分割支保工6L,6Rの連結(接続)構造を説明する図である。本実施形態において、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rのうち一方の上端部には、他方の上端部に形成された凸型連結部と連結可能な凹型連結部が設けられている。以下、図6を参照して分割支保工6L,6Rの連結構造の詳細について説明する。
【0028】
図6(a)は、分割支保工6L,6Rの上端部側の側面を示す図である。各分割支保工6L,6Rの上端部には、H型横断面に対して直交する平板状の接合用プレート61が設けられている。図6(a)は、分割支保工6L,6Rの接合用プレート61同士を対向させて互いに離れた状態を示している。また、図中の符号62は各分割支保工6L,6Rにおけるウェブであり、符号63a,63bは各分割支保工6L,6Rにおける一対のフランジである。符号63aで示すフランジを「上フランジ」と呼び、符号63bで示すフランジを「下フランジ」と呼ぶ。接合用プレート61は、ウェブ62および一対のフランジ63a,63bに対して直交するように設けられている。また、符号611は接合用プレート61の外面を示し、符号612は接合用プレート61の内面を示す。接合用プレート61は、内面612側に上フランジ63a、下フランジ63bおよびウェブ62からなるH型鋼が接続されている。
【0029】
図6(b)は、左側分割支保工6Lの接合用プレート61の正面図である。図6(c)は、右側分割支保工6Rの接合用プレート61の正面図である。以下では、左側分割支保工6Lの接合用プレート61を「第1接合用プレート61L」ともいい、右側分割支保工6Rの接合用プレート61を「第2接合用プレート61R」ともいう。図6(b)は、第1接合用プレート61Lを外面611側から眺めた状態を図示している。図6(c)は、第2接合用プレート61Rを外面611側から眺めた状態を図示している。
【0030】
図6(b)を参照すると、第1接合用プレート61Lには、当該第1接合用プレート61Lを厚さ方向に貫通する一対の貫通孔である凹型連結部8a,8bが設けられている。凹型連結部8a,8bは、同一構造の貫通孔であり、それぞれ挿抜孔部80と、この挿抜孔部80に連通する係止孔部81とを含む。凹型連結部8a,8bの挿抜孔部80は円形孔である。係止孔部81は、挿抜孔部80の直径よりも小さい幅を有する長孔であり、係止孔部81の長軸方向はウェブ62に平行に伸びている。第1接合用プレート61Lに穿設された一対の凹型連結部8a,8bは、ウェブ62を挟んで対称位置に配置されている。また、凹型連結部8a,8bの挿抜孔部80は、第1接合用プレート61Lの下フランジ63bよりも上フランジ63aに近い位置に設けられている。
【0031】
一方、図6(c)に示すように、右側分割支保工6Rの第2接合用プレート61Rには、一対の突起である凸型連結部9a,9bが突設されている。この凸型連結部9a,9bは、右側分割支保工6Rの第1接合用プレート61Lに設けられた一対の凹型連結部8a,8bと係合可能である。図6(c)に示す拡大図と、図6(a)を併せて参照すると、凸型連結部9a,9bは、接合用プレート61に立設する軸部90と、軸部90の先端に設けられる円錐形状の係止部91とを含む。軸部90は、円形横断面を有する棒状部材である。この軸部90の円形横断面における直径は、第1接合用プレート61Lに設けられている凹型連結部8a,8bの係止孔部81の幅よりも小さい寸法に設定されている。係止部91は、軸部90の軸方向に直交する円形の底面91aを有している。
【0032】
ここで、係止部91の底面91aの直径は、第1接合用プレート61Lに設けられている凹型連結部8a,8bにおける係止孔部81の幅よりも大きく、且つ、挿抜孔部80の
直径よりも小さい寸法に設定されている。また、第2接合用プレート61Rにおける一対の凸型連結部9a,9bは、ウェブ62を挟んで対称位置に配置されている。また、第2接合用プレート61Rの各凸型連結部9a,9bにおける軸部90の軸心とウェブ62の中心軸との離れ寸法は、第1接合用プレート61Lの各凹型連結部8a,8bにおける係止孔部81の長軸とウェブ62の中心軸との離れ寸法と等しい。また、凸型連結部9a,9bは、第2接合用プレート61Rの上フランジ63aよりも下フランジ63bに近い位置に設けられている。
【0033】
アーチ状支保工6の建て込みに際して、エレクタ装置1は、左側ブーム17Lおよび右側ブーム17Rを伸長および傾動させると共に、左側ハンド18Lおよび右側ハンド18Rを回転させることで、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rをトンネル軸と直交するように移動させる。なお、エレクタ装置1における各ブーム17L,17Rおよび各ハンド18L,18Rの駆動は、操作盤14の操作によって行うことができる。
【0034】
次に、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rを把持した状態の一対のハンド18L,18Rを相対移動させて、左側分割支保工6Lの第1接合用プレート61Lに設けられた凹型連結部8a,8bに、右側分割支保工6Rの第2接合用プレート61Rに設けられた凸型連結部9a,9bをそれぞれ係合させ、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rをアーチ状に連結することでアーチ状支保工6を形成する。その際、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rにそれぞれ取り付けたターゲット7の位置を座標既知地点から測量することで得られた測量データに基づいてハンド18L,18Rの相対移動量を設定し、駆動させる。本実施形態において、第1接合用プレート61Lに設けられた凹型連結部8a,8bと、第2接合用プレート61Rに設けられた凸型連結部9a,9bは、エレクタ装置1のハンド操作によってワンタッチで連結されるワンタッチ継手として機能する。
【0035】
例えば、エレクタコントローラ12は、トータルステーションコントローラ4を介してトータルステーション3を無線遠隔操作し、各ターゲット7(第1ターゲット7a〜第4ターゲット7d)を自動追尾して、各ターゲット7の座標を順次自動測量する。ここで、トータルステーション3は、座標既知地点(x0,y0,z0)に設置されている。このように座標既知地点に設置されたトータルステーション3からレーザ光を照射して各ターゲット7を視準して測距・測角を行うことで、第1ターゲット7a〜第4ターゲット7dの位置座標(x1,y1,z1)、(x2,y2,z2)、(x3,y3,z3)、(x4,y4,z4)を求めることができる。そして、各ターゲット7の位置座標を含む測量データは、トータルステーションコントローラ4側からエレクタコントローラ12へと順次無線送信される。エレクタコントローラ12は、トータルステーション3から取得した各ターゲット7の測量データに基づいて、ハンド18L,18Rを相対移動させるためのそれぞれの駆動量を設定し、図7(a)〜(c)に示す手順で左側分割支保工6Lの第1接合用プレート61Lと右側分割支保工6Rの第2接合用プレート61Rを相互に連結させる。
【0036】
なお、エレクタコントローラ12が設定したハンド18L,18Rの移動量は、モニタ11に表示される。本実施形態におけるトータルステーション3は各ターゲット7を自動追尾し、視準することができる。従って、ハンド18L,18Rの操作によって左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rの上端部同士を相互連結するために必要な各ハンド18L,18Rの移動量は、モニタ11にリアルタイムで表示することができ、作業員はモニタ11を見ながら操作盤14を順次操作することで左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rを容易に連結することができる。なお、ここでいうハンド18L,18Rの操作には、ハンド18L,18Rの駆動機構を作動させてハンド18L,18Rを直接的に操作することの他、ハンド18L,18Rが取り付けられているブーム17L,17R
を駆動することによってハンド18L,18Rを間接的に操作することも含まれる。
【0037】
図7は、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rを連結する手順を示す図である。図中、左側に分割支保工6L,6Rの上端部側の側面を示し、右側欄に第1接合用プレート61L側の凹型連結部8a,8bと第2接合用プレート61R側の凸型連結部9a,9bとの相対関係を示す。図7の右側に示す凹型連結部8a,8bと凸型連結部9a,9bとの相対関係は、第2接合用プレート61Rの内面612側から第2接合用プレート61Rを透視して第1接合用プレート61Lを眺めた場合を基準として凹型連結部8a,8bと凸型連結部9a,9bとの相対関係を示している。
【0038】
図7(a)に示す状態では、図示のように右側分割支保工6Rの第1接合用プレート61Lと左側分割支保工6Lの第2接合用プレート61Rが離反した状態で、且つ、右側分割支保工6Rが左側分割支保工6Lよりも若干高い位置に配置されている。具体的には、第2接合用プレート61Rに設けられた凸型連結部9a,9b(軸部90、係止部91)の高さが、第1接合用プレート61Lに設けられた凹型連結部8a,8bの挿抜孔部80の高さに一致するように双方の高さが位置合わせされている。更に、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rのトンネル軸方向における位置は、一致している。その結果、第1接合用プレート61Lに設けられた凹型連結部8a,8bの各挿抜孔部80と、第2接合用プレート61Rに設けられた凸型連結部9a,9bが、トンネル軸方向において互いに対応する位置に合わせられている。以下、図7(a)に示す状態を「連結部離間状態」という。
【0039】
次に、図7(a)に示す連結部離間状態から、一対のハンド18L,18Rのうち少なくとも一方を操作(駆動)することで一対の分割支保工6L,6Rを相対移動させ、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rの高さ方向とトンネル軸方向における相対位置関係を保持(固定)しつつ、左側分割支保工6L(第1接合用プレート61L)および右側分割支保工6R(第2接合用プレート61R)が相対的に接近させる。
【0040】
その際、左側分割支保工6Lの第1接合用プレート61Lに設けられた凹型連結部8a,8bの挿抜孔部80と、右側分割支保工6Rの第2接合用プレート61Rに設けられた凸型連結部9a,9bとが互いに位置合わせされているため、上記のように第1接合用プレート61Lおよび第2接合用プレート61Rを近づけていくことで、左側分割支保工6L側の凹型連結部8a,8bにおける各挿抜孔部80に対して、右側分割支保工6R側の凸型連結部9a,9bが挿入され、図7(b)に示す状態に移行する。
【0041】
図7(b)は、左側分割支保工6L側の凹型連結部8a,8bにおける各挿抜孔部80に対して、右側分割支保工6R側の凸型連結部9a,9bが挿入され、且つ、第1接合用プレート61Lおよび第2接合用プレート61Rの外面611同士が当接することで、挿抜孔部80に対する凸型連結部9a,9bの挿入が完了した状態を示す。以下、図7(b)に示す状態を「連結部挿入完了状態」と呼ぶ。
【0042】
一対の分割支保工6L,6Rを連結部離間状態から連結部挿入完了状態に遷移させた後は、一対のハンド18L,18Rのうち少なくとも一方を操作(駆動)し、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rの高さを一致させる。ここでは、左側分割支保工6Lを静止させた状態で、第1接合用プレート61Lに第2接合用プレート61Rを摺接させながら右側分割支保工6Rを鉛直下方にスライドさせる。
【0043】
ここで、図7(b)に示す連結部挿入完了状態においては、右側分割支保工6R(第2接合用プレート61)における凸型連結部9a,9bの軸部90が左側分割支保工6L(第1接合用プレート61L)における凹型連結部8a,8bの挿抜孔部80に対して挿通
している。この状態から右側分割支保工6Rを鉛直下方にスライドさせると、凹型連結部8a,8bの挿抜孔部80に挿通している凸型連結部9a,9bの軸部90が、挿抜孔部80から、これに連通する係止孔部81に移動する。なお、凸型連結部9a,9bにおける軸部90の直径は係止孔部81の幅よりも小さいため、凸型連結部9a,9bにおける軸部90を、ウェブ62と平行に延伸する長軸を有する係止孔部81に沿って円滑にスライドさせることができる。
【0044】
ここで、図7(c)に示す状態を「連結完了状態」と呼ぶ。この連結完了状態において、凸型連結部9a,9bの軸部90は、凹型連結部8a,8bにおける係止孔部81の係止端81aに位置決めされている。この係止端81aは、係止孔部81のうち挿抜孔部80と反対側に位置する方の端部である。本実施形態では、図7(c)に示す連結完了状態のときに、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rの上フランジ63a同士の高さ、下フランジ63b同士の高さがそれぞれ一致するように、係止孔部81の長軸方向の長さが規定されている。
【0045】
また、凸型連結部9a,9bにおける係止部91(底面91a)の直径は、凹型連結部8a,8bにおける係止孔部81の幅よりも大きな寸法に設定されている。そのため、凸型連結部9a,9bにおける軸部90の位置が、凹型連結部8a,8bの挿抜孔部80から係止孔部81に切り替えられた状態においては、凸型連結部9a,9bにおける係止部91が第1接合用プレート61Lの背面側に係止された状態となり、凹型連結部8a,8bからの凸型連結部9a,9bの引き抜きが抑制される。つまり、左側分割支保工6Lの第1接合用プレート61Lと右側分割支保工6Rの第2接合用プレート61Rが離反する方向への移動が制限される。つまり、図7(c)に示す連結完了状態では、第2接合用プレート61における凸型連結部9a,9b(係止部91)が第1接合用プレート61Lにおける凹型連結部8a,8bの係止孔部81と係合することで、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rの上端部同士が連結される。その結果、アーチ状支保工6をアーチ状に組み上げることができる。
【0046】
本実施形態では、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rをそれぞれ把持した状態の一対のハンド18L,18Rのうち、少なくとも一方を操作(駆動)することで、図7に示す各状態を遷移させ、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rを連結する。従って、図7に示す各状態に順次遷移させる際、一対のハンド18L,18Rの双方を駆動しても良いし、一対のハンド18L,18Rの一方を静止させつつ他方を駆動しても良い。
【0047】
アーチ状支保工6をアーチ状に組み上げた後、エレクタ装置1は、アーチ状支保工6を切羽における所定の建て込み位置に建て込む。例えば、エレクタコントローラ12は、トータルステーション3から取得した各ターゲット7(第1ターゲット7a〜第4ターゲット7d)の座標位置を含む測量データに基づいて、第1ターゲット7a〜第4ターゲット7dのそれぞれの位置をモニタ11に表示させても良い。また、モニタ11には、第1ターゲット7a〜第4ターゲット7dのそれぞれの位置に加えて、第1ターゲット7a〜第4ターゲット7dの目標位置を併せて表示させても良い。エレクタ装置1を操作する作業員は、モニタ11を見ながら、ブーム17L,17Rやハンド18L,18Rを駆動させることで、アーチ状支保工6を正規の建て込み位置に配置することができる。なお、アーチ状に組み上げあれたアーチ状支保工6を切羽における所定の建て込み位置に配置するまでの間、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rの相対位置が変化しないように左側ハンド18Lと右側ハンド18Rの相対位置を保持する。これにより、アーチ状支保工6を切羽における所定の建て込み位置に配置するまでの過程で、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rを連結している凸型連結部9a,9bと凹型連結部8a,8bとの係合状態が解除されてしまうことを抑制できる。
【0048】
アーチ状支保工6を切羽における所定の建て込み位置に配置した後、エレクタ装置1のハンド18L,18Rにアーチ状支保工6を把持(保持)した状態で、吹付け装置10を作動させ、吹付けノズル103からアーチ状支保工6および切羽にコンクリートを吹付け、アーチ状支保工6をコンクリート中に埋没させる二次吹付けを行う。そして、アーチ状支保工6をハンド18L,18Rに把持した状態でコンクリートをある程度硬化させ、アーチ状支保工6を正規の建て込み位置に仮固定する。そして、アーチ状支保工6の仮固定がなされた後、ハンド18L,18Rによるアーチ状支保工6の把持を解除する。そして、ハンド18L,18Rによる把持を解除すると、アーチ状支保工6のうちハンド18L,18Rによって把持されていた箇所を含め、二次吹付けコンクリートを設計位置まで吹付けし、アーチ状支保工6の1サイクル分の建て込みが完了する。
【0049】
以上のように構成されたトンネル支保工の建て込み方法および建て込みシステムによれば、左側分割支保工6Lの上端部に設けられた第1接合用プレート61Lに凹型連結部8a,8bを形成し、この左側分割支保工6Lに連結される右側分割支保工6Rの上端部に設けられた第2接合用プレート61Rに凹型連結部8a,8bと係合可能な凸型連結部9a,9bを形成するようにした。そして、アーチ状支保工6の建て込みに際しては、エレクタ装置1を切羽に配置し、一対の分割支保工6L,6Rを把持した状態の一対のハンド18L,18Rの少なくとも一方を操作してこれらの相対移動させることで、凹型連結部8a,8bに凸型連結部9a,9bを係合させ、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rをアーチ状に連結するようにした。
【0050】
上記方法を採用することで、切羽近傍においてボルトとナット等を用いて人手による締結作業を行うことなく、ハンド18L,18Rの操作によって係合するワンタッチの継手を介して左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rを連結することができる。その結果、トンネル支保工を建て込む際の安全性および作業性を向上することができる。なお、本実施形態では、分割支保工6L,6Rの各上端部にワンタッチ継手を設け、人手による作業ではなくエレクタ装置1のハンド操作によって分割支保工6L,6Rをアーチ状に連結することができれば、凹型連結部8a,8bと凸型連結部9a,9bのディテールは図6に示した構造に限られず、種々の改変を加えることができる。
【0051】
また、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rをアーチ状に連結する際、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rにそれぞれ取り付けた各ターゲット7の位置を座標既知地点に設置されたトータルステーション3を用いて測量することで得られた測量データに基づいてハンド18L,18Rの移動量を設定するようにし、設定した移動量に基づいてハンド18L,18Rを相対移動させるようにした。これにより、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rの連結を、精度良く行うことができる。更に、上記測量データに基づいて設定されたハンド18L,18Rの移動量をエレクタ装置1のモニタ11にリアルタイムで表示するようにした。これによれば、作業員は、モニタ11を眺めながら、ハンド18L,18Rの適正な操作を容易に行うことができ、左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rの連結作業をより一層効率良く行うことができる。
【0052】
また、本実施形態においては、正規の建て込み位置に配置したアーチ状支保工6をハンド18L,18Rに把持した状態で、吹付け装置10によりコンクリートを吹付けてアーチ状支保工6を仮固定した後、ハンド18L,18Rによるアーチ状支保工6の把持を解除するようにした。これによれば、作業車2の移動、セット、退出が一度で済み、重機の輻輳を回避することができる。また、切羽直前での左側分割支保工6Lおよび右側分割支保工6Rの設置位置の調整も不要となり、作業効率および安全性が向上する。
【0053】
そして、本実施形態においては、掘削、一次吹付け、支保工建て込み、二次吹付けの一
連の作業において、作業員が切羽に立ち入ることなく作業を進めることができるため、作業の安全性が顕著に向上する。
【0054】
なお、上述の実施形態には種々の変更、改良が可能である。例えば、本実施形態では、ターゲット7を、磁石72を内蔵するホルダ71と、その先端に設けられたプリズム73を有する構造としているが、これには限られない。例えば、分割支保工6L,6Rに貼り付けることができるシート状のシートプリズムによってターゲット7を構成しても良い。その場合、シートプリズムをマグネットシートによって作製することで、分割支保工6L,6Rに対してシートプリズムを容易に着脱することができ、作業性が良い。
【0055】
なお、本実施形態では、トータルステーション3等、レーザ光による測距・測角儀(測量機)を用いて分割支保工6L,6Rの位置を把握するようにしたが、これには限られない。例えば、GPS(Global Positioning System)で用いられる測位衛星からのGPS
信号を受信するGPS受信機を、ターゲット7に置き換えて分割支保工6L,6Rにそれぞれ取り付けても良い。この場合、エレクタコントローラ12は、各GPS受信機が受信したGPS信号を取得することで、当該GPS信号に基づいて分割支保工6L,6RにおいてGPS受信機を取り付けた部位の位置情報を取得することができる。また、本実施形態では、図4に示したように、左側分割支保工6Lの上端部6Laと下端部6Lbにターゲット7を取り付け、右側分割支保工6Rの上端部6Raと下端部6Rbにターゲット7を取り付けているが、これには限られず、ターゲット7を取り付ける位置や個数は適宜変更することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明に係るトンネル支保工の建て込み方法および建て込みシステムはこれらに限られず、可能な限りこれらを組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0057】
S・・・建て込みシステム
1・・・エレクタ装置
2・・・作業車
3・・・トータルステーション
4・・・トータルステーションコントローラ
5・・・トータルステーション側アンテナ
6・・・アーチ状の鋼製支保工
6L,6R・・・分割支保工
7・・・ターゲット
8a,8b・・・凹型連結部
9a,9b・・・凸型連結部
10・・・吹付け装置
103・・・吹付けノズル
11・・・モニタ
17L,17R・・・ブーム
18L,18R・・・ハンド
61L,61R・・・接合用プレート
62・・・ウェブ
63・・・フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7