(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突起部(16)の先端面(16a)の直径は、前記第2の面ファスナー部材(20)の中心部よりも半径方向外側の領域において隣り合う噛合素子(25)同士の最短距離よりも長いものであることを特徴とする請求項1に記載の面ファスナー。
【背景技術】
【0002】
面ファスナーは、連結および分離可能な一対の面ファスナー部材を備えるものである。面ファスナー部材は、通常、基板と、基板の厚み方向の一面から突出する多数の連結素子の集合である連結素子群とを備えるものである。また連結素子の一例として、キノコと類似する形状をしていることから、俗にキノコ型と称される連結素子が存在する。キノコ型の連結素子同士は、キノコ状の頭部が噛み合うようにして連結することから、以後、キノコ型の連結素子を「噛合素子」と称する。
【0003】
そして噛合素子を備える面ファスナーの一例として、一対の面ファスナー部材同士を位置決めして連結できるように、基板と噛合素子群の他に、位置決め手段を備えるものが存在する(特許文献1,2)。
【0004】
特許文献1の
図3に開示されている位置決め手段は、一方の面ファスナー部材には噛合素子群の中心部において基板の厚み方向の一面から突出する柱状突起を備え、他方の面ファスナー部材には噛合素子群の中心部であって基板の厚み方向の一面に柱状突起を抜き差し可能な孔を備えるものである。より詳しくは、柱状突起は、噛合素子群の中心部において噛合素子群よりも基板から突出するように形成されている。なお特許文献2の
図3に開示されている位置決め手段は、特許文献1の
図3に開示されている位置決め手段と比べて、少し形状が異なる程度であり、同じ構成要素を備えるものである。
【0005】
上記面ファスナー部材を用いて、一対の面ファスナー部材同士を連結するときには、1)まず孔の外周に配置された複数の噛合素子の内側に柱状突起を通過させ、2)次に柱状突起を孔に差し込むと共に、一対の面ファスナーの噛合素子同士を連結させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1の
図3に示された位置決め手段は、孔の直径に対して柱状突起の直径が非常に小さいので、孔の中心と柱状突起の中心とを一致させることは非常に困難であり、位置決め精度が悪い。
【0008】
また仮に位置決め手段が特許文献1の
図3とは違って、孔の直径と柱状突起の直径を殆ど同じに設定すると、噛合素子同士が連結し難くなる。それは以下の理由による。
特許文献1の
図3に示された面ファスナーでは、柱状突起の中心と孔の中心を一致させると、柱状突起の外周を最も近くで取り囲む複数の噛合素子(半径方向に関して最も内側に位置する複数の噛合素子)は、孔の外周を最も近くで取り囲む複数の噛合素子よりも半径方向内側に配置されている。つまり特許文献1の
図3に示された面ファスナーの技術的思想は、柱状突起の外周を最も近くで取り囲む複数の噛合素子における半径方向内側に、孔側の噛合素子を収容する思想が無いものである。
噛合素子同士が連結するときは、噛合素子が基板側を中心にして瞬間的に倒れ、噛合素子が復元力によって元に戻ったり、戻ろうとして倒れた状態を保ったりして、噛合素子が噛み合うものである。したがって噛合素子が倒れる空間が必要となる。
それにも関わらず、位置決め手段が孔の直径と柱状突起の直径を殆ど同じに設定したものであると、柱状突起の外周を最も近くで取り囲む複数の噛合素子と柱状突起との間が非常に狭くなる。そうすると柱状突起の外周を最も近くで取り囲む複数の噛合素子は、倒れる空間が狭くなり、相手の面ファスナー部材の噛合素子に連結し難くなる。
【0009】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は、位置決め精度を向上させると共に、一対の面ファスナー部材を連結し易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の面ファスナーは、連結および分離可能な第1、第2の面ファスナー部材を備える。
第1、第2の面ファスナー部材は、柱状の柱部、柱部の先端から柱部の延長方向に対して交差する方向および前記延長方向に突出する頭部を備える噛合素子を同心円状に配列してある噛合素子群と、平板状をなすと共にその厚み方向の一面から噛合素子群の各柱部が突出する基板とをそれぞれ備える。
第1の面ファスナー部材は、噛合素子群の半径方向内側であって基板の前記一面の噛合素子群が配列する同心円の中心部から噛合素子群よりも突出する突起部と、噛合素子群のうち半径方向に関して最も内側に位置する複数の噛合素子と突起部とによって、それらの半径方向の間に形成される収容凹部とを備える。
第2の面ファスナー部材は、基板の前記一面の噛合素子群が配列する同心円の中心部において突起部の先部を収容する穴部を備え、噛合素子群のうち半径方向に関して最も内側に位置する複数の噛合素子を、突起部を穴部へ向かって移動可能に案内すると共に、収容凹部に収容される案内部として兼用する。
【0011】
突起部が穴部に収容されるものであれば、穴部の直径と突起部の直径との関係は問わず、たとえば穴部の直径は突起部の直径と同じであったり、突起部の直径よりも僅かに長かったりしても良い。しかし穴部に突起部を差し込みやすくし、しかも突起部の中心と穴部の中心をできるだけ一致させ、第1の面ファスナー部材と第2の面ファスナー部材との位置決め精度を向上させるには、それには次の1)、2)のようにすることが望ましい。
【0012】
1)穴部の直径は突起部の直径よりも長くすることである。また仮想の円であって第1の面ファスナー部材の噛合素子群のうち半径方向に関して最も内側に位置する複数の噛合素子における中心を通過する仮想の円の直径は、第2の面ファスナー部材の案内部における外接円の直径よりも大きいものとすることである。そのうえで穴部の直径と突起部の直径との差は、仮想の円の半径と案内部の外接円の半径との差よりも小さくすることである。
【0013】
2)穴部の直径は突起部の直径よりも長くすることである。そのうえで穴部の直径と突起部の直径との差は、第1又は第2の面ファスナー部材の柱部の直径よりも小さくすることである。
【0014】
案内部が突起部を案内するものであれば、案内部の直径と突起部の直径との関係は問わず、たとえば穴部の直径は突起部の直径と同じであったり、突起部の直径よりも僅かに長かったりしても良い。しかし案内部に突起部を差し込みやすくし、しかも突起部の中心と穴部の中心をできるだけ一致させ、第1の面ファスナー部材と第2の面ファスナー部材との位置決め精度を向上させるには、次のようにすることが望ましい。
案内部の内接円の直径は、突起部の直径よりも長くすることである。そのうえで案内部の内接円の直径と突起部の直径との差は、第1、第2の面ファスナー部材の柱部の直径よりも小さくすることである。
【0015】
突起部の先端面が第2の面ファスナー部材における噛合素子群の中に入らないようにするためには次のようにすることが望ましい。
すなわち、突起部の先端面の直径は、第2の面ファスナー部材の中心部よりも半径方向外側の領域において隣り合う噛合素子同士の最短距離よりも長くすることである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の面ファスナーによれば、第2の面ファスナー部材の噛合素子群のうち半径方向に関して最も内側に位置する複数の噛合素子が案内部として機能し、その案内部が突起部を穴部へ向かって移動可能に案内するので、突起部を第2の面ファスナー部材の穴部に挿入し易くなる。しかも第1の面ファスナー部材の噛合素子群のうち半径方向に関して最も内側の複数の噛合素子がその半径方向内側には収容凹部を介して突起部を備えるので、たとえば収容凹部のない従来のようなものに比べれば、半径方向内側に倒れることも可能となり、噛合素子同士が連結し易くなる。さらに案内部が収容凹部に収容されることによって、第1、第2の面ファスナー部材の位置決め精度が向上する。
【0017】
また穴部の直径が突起部の直径よりも長く、仮想の円の直径が第2の面ファスナー部材の案内部における外接円の直径よりも大きく、且つ穴部の直径と突起部の直径との差が仮想の円の半径と案内部の外接円の半径との差よりも小さい面ファスナーであれば、穴部よりも突起部が僅かに小さいので、突起部が穴部に差し込みやすくなると共に、第1の面ファスナー部材と第2の面ファスナー部材との位置決め精度が向上する。
【0018】
また穴部の直径が突起部の直径よりも長く、穴部の直径と突起部の直径との差が第1又は第2の面ファスナー部材の柱部の直径よりも小さい面ファスナーであれば、穴部よりも突起部が僅かに小さいので、突起部が穴部に差し込みやすくなると共に、第1の面ファスナー部材と第2の面ファスナー部材との位置決め精度が向上する。
【0019】
また案内部の内接円の直径が突起部の直径よりも長く、案内部の内接円の直径と突起部の直径との差が第1、第2の面ファスナー部材の柱部の直径よりも小さい面ファスナーであれば、案内部の内接円よりも突起部が僅かに小さいので、突起部が案内部に差し込みやすくなり、第1の面ファスナー部材と第2の面ファスナー部材との位置決め精度が向上する。
【0020】
また突起部の先端面の直径が第2の面ファスナー部材の中心部よりも半径方向外側の領域において隣り合う噛合素子同士の最短距離よりも長い面ファスナーであれば、突起部の先端面が第2の面ファスナー部材における噛合素子群の中に入らなくなるので、第1、第2の面ファスナー部材を連結し易い。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第一実施形態の面ファスナー1は
図1に示すように、連結および分離可能な第1、第2の面ファスナー部材10,20を備えるものである。なお
図1では、第1、第2の面ファスナー部材10,20を視覚的に区別し易くするために、第1の面ファスナー部材10を部分断面図で表している。また
図1では、第1、第2の面ファスナー部材10,20の連結状態を視覚的に理解し易くするために、後述する噛合素子群14,24の位置を、少し不正確なものとしてある。噛合素子群14,24の正確な位置は、
図2〜6に示されている。
【0023】
第1の面ファスナー部材10は樹脂製で、
図3、4に示すように、基板12と、基板12の厚み方向の一面から突出する噛合素子群14とを備える。
第2の面ファスナー部材20も樹脂製で、
図5、6に示すように、基板22と、基板22の厚み方向の一面から突出する噛合素子群24とを備える。
【0024】
第1、第2の面ファスナー部材10,20が連結する場合、各基板12,22の厚み方向の二面のうち噛合素子群14,24が突出する面は、相手方の面ファスナー部材10,20に対向する面なので、以後、「対向面」と称する。
このように基板12,22と噛合素子群14,24は、第1、第2の面ファスナー部材10,20において共通の構成部分であるので、以下では、第1の面ファスナー部材10の基板12と噛合素子群14を中心に説明する。第2の面ファスナー部材20の基板22と噛合素子群24は、第1の面ファスナー部材10の基板22と噛合素子群24と同じ部分については、説明をできる限り省略し、相違する部分については、説明を詳細にする。
【0025】
第1の面ファスナー部材10の基板12は
図3、4に示すように、平板状をなすと共に円形である。また基板12は、噛合素子群14を配置するための基準点12cを説明の便宜上備えるもので、円形の中心が基準点12cである。
【0026】
第2の面ファスナー部材20の基板22も
図5、6に示すように、第1の面ファスナー部材10の基板12と同様に平板状をなすと共に外形が円形である。また基板22は、噛合素子群24を配置するための基準点22cを説明の便宜上備えるもので、円形の中心が基準点22cである。
なお
図1の例では、第2の面ファスナー部材20の基板22の直径は、第1の面ファスナー部材10の基板12の直径よりも大きくしてあるが、逆に第2の面ファスナー部材20の基板22の直径よりも小さくても良いし、
図2の例のように第2の面ファスナー部材20の基板22の直径と同じであっても良い。
【0027】
第1の面ファスナー部材10の噛合素子群14は
図3、4に示すように、多数の噛合素子15の集合であり、基板12の中心部よりも半径方向外側に多数の噛合素子15を同心円状に配列したものである。図示の例では、全ての噛合素子15は、中心を共有し、半径の異なる4つの仮想の円の円周上に配列されている。説明の便宜上、半径方向に関して最も内側の円の円周上に配列された噛合素子15の集まりを第1集団と称し、残りの各円の円周上に配列された噛合素子15の集まりを、第1集団に対して半径方向に近い方から順に、第2、第3、第4集団と称する。
【0028】
第1の面ファスナー部材10の全ての噛合素子15は同じ形態をしている。噛合素子15は、基板12の対向面からその厚み方向に突出する柱状(より詳しくは円柱状)の柱部15a、柱部15aの先端から柱部15aの延長方向に対して交差する方向および前記延長方向に突出する頭部15hを備えるものである。柱部15aの延長方向に対して交差する方向とは、本実施形態では、柱部15aが円柱状であるので、柱部15aの半径方向外側とも言える。噛合素子15は基板12側を中心にして倒れるように弾性変形可能なものである。また頭部15hは、図示の例では、半球状である。したがって図示の例では、頭部15hの直径D15hは、半球状の頂部側と基板12側とでは異なることになるが、ここでの頭部の直径D15hとは、最も長い直径のことであり、基板12側の部分(半球の底面の外周部分)の直径である。また頭部15hは、半球状の底面の中心部に柱部15aが配置されている。
また第1〜第4の各集団を構成する複数の噛合素子15は、円周方向に等間隔あけて配列されている。また隣り合う2つの集団の半径方向の間隔は、いずれも均等にしてある。なお隣り合う2つの集団の半径方向の間隔は、頭部15h,15h同士よりも柱部15a,15a同士の方が広くなっている。ちなみに
図3の例では、隣り合う2つの集団の半径方向の間隔のうち柱部15a,15a同士の間隔とは、半径方向内側の集団を構成する複数の噛合素子15の柱部15aの外接円C1と、半径方向外側の集団を構成する複数の噛合素子15の柱部15aの内接円C2との間隔W1であり、この間隔W1は、噛合素子15の柱部15aの直径D15aと同じ長さである。
【0029】
第2の面ファスナー部材20の噛合素子群24も
図5、6に示すように多数の噛合素子25の集合であり、噛合素子25の配列以外、第1の面ファスナー部材10の噛合素子群14と同じである。
第2の面ファスナー部材20の噛合素子群24は、基板22の中心部よりも半径方向外側に多数の噛合素子25を同心円状に配列した点では、第1の面ファスナー部材10の噛合素子群14と同じである。また図示の例では、全ての噛合素子25は、中心を共有し、半径の異なる4つの仮想の円の円周上に配列されている。したがって第2の面ファスナー部材20の噛合素子群24も4つの集団より構成される。そして説明の便宜上、半径方向に関して最も内側の円の円周上に配列された噛合素子15の集まりを第1集団と称し、残りの各円の円周上に配列された噛合素子15の集まりを、第1集団から半径方向に近い方から順に、第2、第3、第4集団と称する。
また第2の面ファスナー部材20の噛合素子群24を構成する4つの集団は、第1の面ファスナー部材10の噛合素子群14を構成する4つの集団と比べて、たがいの基準点22c、12cに対する配列(距離)の点では、相違している。つまり第2の面ファスナー部材20の噛合素子群24と第1の面ファスナー部材10の噛合素子群14とが、互いの基準点12c、22cを一致させた状態で連結された状態を想定すると、第2の面ファスナー部材20の半径方向に隣り合う集団の間に、第1の面ファスナー部材10の一つの集団が配置される。より詳しく言えば第1の面ファスナー部材10の第4集団と第3集団の間に、第2の面ファスナー部材10の第4集団が配置される。また第2の面ファスナー部材20の第1集団は、第1の面ファスナー部材10の第1集団よりも半径方向内側(当該第1集団と後述の突起部16との間)に配列される。
【0030】
第2の面ファスナー部材20の全ての噛合素子25は、第1の面ファスナー部材10の噛合素子15と同じ形態である。したがって噛合素子25は、柱部25a、頭部25hを備え、基板12側を中心にして倒れるように弾性変形可能なものである。
【0031】
また第1、第2の面ファスナー部材10,20は、互いの基準点12c、22cを殆ど一致させた状態で連結するために、専用の構成部分をそれぞれ有する。
【0032】
第1の面ファスナー部材10は
図3、4に示すように、基板12と噛合素子群14の他に、噛合素子群14の内側であって基板12の対向面の中心部から噛合素子群14よりも突出する突起部16と、噛合素子群14のうち第1集団(半径方向に関して最も内側の円周上に位置する複数の噛合素子15)と突起部16によって、それらの半径方向の間に形成される収容凹部18とを備える。
【0033】
突起部16は、基板12の対向面の中心部に基準点12cに対して同心状に形成されると共に、円柱状である。また突起部16は、先部の外周部、つまり先端面16aと側面16bとが交差する角部16cを面取りした形状である。より詳しくは角部16cは、基板12側から先端へ向かうにつれて徐々に直径を狭めるようにしてあるもので、
図3の例では、その外面を円弧状に膨らむ曲面としてある。
突起部16の先端面16aは、基板12の対向面と平行な平面であって、円形状である。この突起部16の先端面16aは、第1、第2の面ファスナー部材10,20を連結するときに、第2の面ファスナー部材20の噛合素子群24の中に入らないようにするために、第2の面ファスナー部材20の中心部よりも半径方向外側の領域において隣り合う噛合素子25同士の最短距離よりも、長い円形状にしてある。より具体的には、第2の面ファスナー部材20の中心部よりも半径方向外側の領域において円周方向と半径方向に隣り合う3つまたは4つの噛合素子25で囲まれる間の領域よりも、大きな円形状にしてある。これにより第1、第2の面ファスナー部材を連結し易くなる。
なお突起部16の側面16bは、基準点12cに対して同心状の円筒面である。
【0034】
突起部16、噛合素子15、噛合素子群14は、基板12からの突出長さ(基板12の厚み方向に延長する長さであって、以下、「突出長さ」という。)を以下のようにしてある。
噛合素子15の突出長さL15は、
図3,4の例では基板12の厚み12tよりも僅かに長くしてある。柱部15aの突出長さL15aは、頭部15hの突出長さL15hよりも長くしてある。なお、噛合素子15の突出長さL15とは、基板12の対向面から噛合素子15の突出方向先端までの長さであり、柱部15aの突出長さL15aとは、基板12の対向面から柱部15aと頭部15hの境界までの長さであり、頭部15hの突出長さL15hとは、柱部15aと頭部15hの境界から噛合素子15の突出方向先端までの長さである。また噛合素子群14の突出長さとは、全ての噛合素子15の中で、最も長い突出長さのことであり、本実施形態では、全ての噛合素子15が同じ突出長さであるので、噛合素子15の突出長さと同一である。
突起部16の突出長さL16は、噛合素子群14の基板12からの突出長さよりも長い。また突起部16の突出長さL16は、基板12の厚み12tと噛合素子15の突出長さL15を合わせた合計値以下であって、噛合素子15の突出長さL15の二倍以上にしてある。突起部16の突出長さL16とは、基板12の対向面から突起部16の突出方向の先端までの長さである。図示の例では、突起部16の突出長さL16は、噛合素子15の突出長さL15の二倍よりも長い。また、
図7に示す通り、第1及び第2の面ファスナー部材の連結状態において、突起部16の先端面16aは、第2の面ファスナー部材の噛合素子25が突出する基板22の上面位置よりも下方に突出し、第2の面ファスナー部材の噛合素子25が突出する基板22の下面(基板22の上面とは反対側の面)の位置からは突出しない。
【0035】
収容凹部18は、突起部16の突出方向に開口する円筒状の空間部であり、その内周側は突起部16の外周面によって区画され、その外周側は、第1集団を構成する複数の噛合素子15によって、円周方向を等間隔おきに区画されると共に、円周方向に隣り合う噛合素子15,15の間を半径方向外側に開口している。
【0036】
収容凹部18は、半径方向の間隔、つまり突起部16と第1集団の噛合素子15の間隔に関して、以下のようになっている。突起部16と噛合素子15の頭部15hとの間隔W18hは、最も狭い部分では、柱部15aの直径よりも広く、頭部15hの直径よりも狭くなっている。また突起部16と噛合素子15の柱部15aとの間隔W18aは、柱部15aの直径D15aよりも広く、頭部15hの直径D15hよりも狭くしてある。したがって収容凹部18の内周面を形成する突起部16と、収容凹部18の外周面を形成する噛合素子15の柱部15aとの間には、第2の面ファスナー部材20の噛合素子25の頭部25hは寸法上では嵌ることができず、円周方向に隣り合う2つの噛合素子15,15と突起部16との間に、通常嵌る。
【0037】
第2の面ファスナー部材20は
図5,6に示すように、基板22に突起部16の先部を収容する穴部28を備える。
穴部28は、基板22の対向面の中心部に基準点22cに対して同心状に形成されると共に、図示の例では基板22の厚み方向に貫通する穴である。穴部28の内面は、突起部16の形状に対応させた形状、より詳しくは突起部16のうち先部よりも基板12側の部分の形状に対応させた円筒面である。また穴部28は、その深さ方向のうち噛合素子群24側の端部、つまり基板22の対向面と穴部28の円筒面とが交差する角部28cを面取りした形状である。より詳しくは角部28cは、基板22の対向面側へ向かうにつれて徐々に直径を広げるようにしてあるもので、図示の例では、その内面を円弧状に膨らむ曲面としてある。
また穴部28の直径D28(角部28c以外の部分の直径)は
図2に示すように、突起部16の直径D16(角部16c以外の部分の直径)よりも僅かに長い。より詳しくは、穴部28の直径D28と突起部の直径D16との差は、第1、第2の面ファスナー部材10,20の前記柱部15a、25aの直径D15a、D25aよりも小さい。
【0038】
また第2の面ファスナー部材20の噛合素子群24は、第1の集団(半径方向に関して最も内側の円周上に位置する複数の噛合素子25)を、突起部16を穴部28へ向かって移動可能に案内すると共に収容凹部18に収容される案内部26として兼用する。
案内部26の内接円26aの半径R26は
図2に示すように、突起部16の半径R16よりも僅かに大きい。そして案内部26の内接円26aの半径R26と突起部16の半径R16との差ΔXは、たとえば柱部15a,25aの直径D15a,D25a、より望ましくは柱部15a,25aの半径よりも小さい。したがって案内部26の内接円26aの直径D26は、突起部16の直径D16よりも僅かに長いものであり、案内部26の内接円26aの直径D26と突起部16の直径D16との差は、第1、第2の面ファスナー部材10,20の前記柱部15a、25aの直径D15a、D25aよりも小さい。
ちなみに案内部26の内接円26aとは
図5に示すように、第1の集団を構成する全ての噛合素子25の頭部25hの半径方向内側に接する円である。いっぽう案内部26の外接円26bとは、第1の集団を構成する全ての噛合素子25の頭部25hの半径方向外側に接する円である。
また案内部26の外接円26bの直径は
図3に示すように、仮想の円C3の直径であって、第1の面ファスナー部材10の収容凹部18の外周を形成する複数の噛合素子15、つまり第1集団を形成する全ての噛合素子15の中心(柱部15aの半径方向の中心)を通過する仮想の円C3の直径よりも、小さい。そして案内部26の内接円26aの半径R26と突起部16の半径R16との差ΔXは
図2に示すように、仮想の円C3の半径と案内部26の外接円26bの半径との差ΔYと同じにしてある。また仮想の円C3の半径と案内部26の外接円26bの半径との差ΔYは、穴部28の直径D28と突起部16の直径D16との差よりも大きい。
【0039】
案内部26の内接円26aの直径D26と突起部16の直径D16との差は、穴部28よりも半径方向外側において隣り合う噛合素子25,25の最短距離よりも小さい。図示の例では、隣り合う噛合素子25,25の最短距離とは、半径方向に隣り合う噛合素子25,25の頭部25h,25h同士の距離である。言い換えれば隣り合う集団のうち半径方向内側の集団における外接円と、半径方向外側の集団における内接円との半径方向の距離である。
【0040】
上記した第一実施形態の面ファスナー1は、以下の1)〜6)のようにして連結する。
1)第1、第2の面ファスナー部材10,20を互いの基板12,22の厚み方向に間隔をあけて対向させる。
2)第1の面ファスナー部材10の突起部16と第2の面ファスナー部材20の穴部28に差し込むことを目的として、第1、第2の面ファスナー部材10,20を相対的に接近させる。
3)相対的に接近させたときに、第1、第2の面ファスナー部材10,20の互いの中心である基準点12c、22cが少しずれていると、突起部16の先端面16aが第2の面ファスナー部材20の案内部26の半径方向内側に嵌らず、突起部16の先端面16aが第2の面ファスナー部材20の噛合素子群24の頭部25hの表面に接触した不安定な状態となる。そしてこの不安定な状態を解消するために、第1、第2の面ファスナー部材10,20同士を相対的に突起部16の突出方向に直交する方向に動かして、第1、第2の面ファスナー部材10,20の互いの基準点12c、22cがほぼ一致すると、突起部16の先端面16aが案内部26の半径方向内側に案内され、突起部16の先部が案内部26の半径方向内側に入っていく。このとき、突起部16の角部16cを面取りした形状にしてあるので、突起部16が案内部26の半径方向内側に入り易くなる。また、案内部26を兼用する噛合素子25は、その頭部25hが半球状であるため、突起部16が案内部26の半径方向内側に入り易くなる。
4)さらに第1、第2の面ファスナー部材10,20を相対的に接近させると、突起部16の側面16bが案内部26の半径方向内側に案内され、突起部16の先端面16aが穴部28に接近する。
5)さらに第1、第2の面ファスナー部材10,20を相対的に接近させると、突起部16の角部16cと穴部28の角部28cとが互いに面取りした形状であることから、突起部16が穴部28の中に滑らかに案内され、突起部16が穴部28に少し入った後に、第1、第2の面ファスナー部材10,20の噛合素子15,25が頭部15h、25h同士で接触する。
6)さらに第1、第2の面ファスナー部材10,20を相対的に接近させると、噛合素子15,25が基板12,22側を中心にして瞬間的に倒れるように弾性変形し、第1の面ファスナー部材10の噛合素子15の頭部15hが、第2の面ファスナー部材20の噛合素子25の頭部25hを相対的に乗り越えて、復元力によって噛合素子15,25が元の形状に戻ろうとして、噛合素子群14,24同士が頭部15h,25hにおいて噛合する。またそれとほぼ同時に、穴部28に突起部16が深く嵌る。このようにして第1、第2の面ファスナー部材10,20が連結し、面ファスナー1が連結した状態となる。
なお連結した面ファスナー1に対して、第1、第2の面ファスナー部材10,20を互いの基板12,22の厚み方向に相対的に離隔させれば、噛合素子群14,24同士の噛合が解除され、第1、第2の面ファスナー部材10,20が分離する。しかもこれら基板12,22は平板状であるため、撓み易い。従って第1、第2の面ファスナー部材10,20を互いの基板12,22の厚み方向に相対的に離隔させた際には、基板12,22同士が撓むことによって噛合素子群14,24同士の噛合が解除され易くなり、第1、第2の面ファスナー部材10,20が分離し易い。
【0041】
上記した第一実施形態の面ファスナー1は上記した以外に、以下の効果を有する。
第2の面ファスナー部材20の噛合素子群24のうち第1の集団(半径方向に関して最も内側に位置する全ての噛合素子25)が案内部26として機能し、その案内部26が突起部16を穴部28へ向かって移動可能に案内するので、突起部を第2の面ファスナー部材の穴部に挿入し易くなる。
【0042】
また案内部26の内接円26aの直径D26と突起部16の直径D16との差2ΔXは、第1、第2の面ファスナー部材10,20の柱部15a、25aの直径D15a、D25aよりも小さい。このように案内部26の内接円26aの直径D26が突起部16の直径D16よりも僅かに長いので、第1、第2の面ファスナー部材10,20の基準点12c、22cである中心同士が殆ど一致したまま、突起部16が穴部28の半径方向内側に案内され、突起部16を穴部28に差し込み易くなる。
【0043】
しかも第1の面ファスナー部材10の噛合素子群14のうち第1の集団は、その半径方向内側には収容凹部18を介して突起部16を備えるので、たとえば収容凹部18のない従来のようなものに比べれば、半径方向内側に倒れることも可能となり、噛合素子15,25同士が連結し易くなる。さらに案内部26が収容凹部18に収容されることによって、第1、第2の面ファスナー部材10,10は、半径方向の位置が定まることになり、互いの位置決め精度が向上する。
【0044】
仮想の円C3の直径が第2の面ファスナー部材20の案内部26における外接円26bの直径よりも大きく、且つ穴部28の直径D28と突起部16の直径D16との差が仮想の円C3の半径と案内部26の外接円26bの半径との差よりも小さい。また穴部28の直径D28と突起部16の直径D16との差が第1、第2の面ファスナー部材10,20の柱部15a,25aの直径よりも小さい。このように穴部28の直径D28が突起部16の直径D16よりも僅かに大きいので、突起部16が穴部28に差し込みやすくなると共に、第1の面ファスナー部材10と第2の面ファスナー部材20との位置決め精度が向上する。
【0045】
上記した第一実施形態の面ファスナー1は、たとえば二枚の板を接合する用途に用いられる。これら二枚の板は、たとえば
図7に示すように、自動車のボディ側を形成する外板41と、外板41の内側に固定される内板42である。この場合、外板41と内板42を複数組の第一実施形態の面ファスナー1で固定する。そして外板41の内面には各組の面ファスナー1における第1、第2の面ファスナー部材10,20のうち一方(図示の例では第1の面ファスナー部材10)を接着あるいは溶着等して固定し、内板42の一面には第1、第2の面ファスナー部材10,20のうち他方(図では第2の面ファスナー部材20)を接着あるいは溶着等して固定する。なお第1、第2の面ファスナー部材10,20の固定位置は、外板41に対して内板42を固定する位置を想定して、設定する。
【0046】
外板41の内面側に内板42を配置すると、内板42の内面側からは各組の面ファスナー1が見えなくなるが、第1の面ファスナー部材10の突起部16が、噛合素子群14よりも突出しているので、作業者は感覚を頼りに、突起部16を案内部26に合わせることができる。そのうえで作業者は内板42を外板41に押し付けるようにすれば、突起部16を穴部28に嵌めて第1及び第2の面ファスナー部材10,20の中心を正確に位置決めし、第1、第2の面ファスナー部材10,20の噛合素子群14,24同士を噛合させることができる。
【0047】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば穴部28は上記実施形態では、貫通する穴であったが、本発明ではこれに限らず、貫通していなくても良い。また基板12,22の外形は、上記実施形態では、円形であったが、本発明ではこれに限らず、円形以外の形状であっても良い。