(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<全体概要>
各実施形態では、電気通信設備の保守者が現場で簡便に推定できるように、可搬性を有するコンピュータ端末を用いて実現する。コンピュータ端末には、架空クロージャの劣化度を推定するための推定装置が実行可能にインストールされている。保守者は、デジタルノギス等を用いて架空クロージャのヒンジ部における現在のヒンジ厚を測定して推定装置に入力する。また、保守者は、当該架空クロージャの型番等を裏面の表示ラベル等より確認して推定装置に入力する。その後、推定装置は、当該架空クロージャの型番等よりヒンジ部における当初のヒンジ厚を特定し、入力された現在のヒンジ厚と予め導出されたヒンジ厚係数又はヒンジ減厚係数とを更に用いて、ヒンジ部が破損する厚さとなるまでの余命期間及び破損時期を算出する。これにより、架空クロージャにおける劣化度の推定を図る。以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る推定装置1の機能ブロックの構成例を示す図である。推定装置1は、プラスチック製の架空クロージャの老朽化による劣化を推定するための装置である。例えば、推定装置1は、架空クロージャを屋外に長年設置し、ヒンジ部を繰り返し開閉動作させたことに起因する劣化を推定する。
【0014】
推定装置1は、コンピュータ端末の内部で動作し、
図1に示すように、主として、当初ヒンジ厚データ受付部11と、当初ヒンジ厚特定部12と、現在ヒンジ厚データ受付部13と、破損時期推定部14と、破損時期表示部15と、架空クロージャ情報記憶部16と、ヒンジ厚係数情報記憶部17と、ヒンジ厚係数導出部18と、測定データ受付部19と、を備えて構成される。
【0015】
当初ヒンジ厚データ受付部11は、架空クロージャの型番、製造時期、設置時期等を入力するための入力画面をコンピュータ端末のモニタに表示し、保守者が入力した入力値を受け付ける機能を備える。なお、入力可能なデータとしては、製造時のヒンジ厚、設置時のヒンジ厚等も可能である。
【0016】
当初ヒンジ厚特定部12は、架空クロージャのヒンジ部における使用前のヒンジ厚を特定する機能を備える。例えば、当初ヒンジ厚特定部12は、架空クロージャの仕様情報を参照し、架空クロージャの型番又は製造時期より、製造時のヒンジ厚を特定する。その他、当初ヒンジ厚特定部12は、架空クロージャの設置時期を用いて、製造時のヒンジ厚に対して一定の逓減率を与えることにより、設置時のヒンジ厚を推定算出してもよい。なお、製造時のヒンジ厚又は設置時のヒンジ厚が入力された場合、当初ヒンジ厚特定部12は、その入力値をそのまま用いて特定する。
【0017】
現在ヒンジ厚データ受付部13は、架空クロージャのヒンジ部における使用中(屋外設置中)のヒンジ厚を入力するための入力画面をコンピュータ端末のモニタに表示し、保守者が入力した入力値を受け付ける機能を備える。
【0018】
破損時期推定部14は、使用前のヒンジ厚(=製造時のヒンジ厚又は設置時のヒンジ厚)と、使用中のヒンジ厚と、架空クロージャのヒンジ部における使用時間の経過に伴い低下するヒンジ厚のヒンジ厚係数とを用いて、当該ヒンジ部が破損する厚さとなるまでの余命期間を推定算出する機能を備える。また、破損時期推定部14は、当該推定算出時の日時情報を用いて、当該ヒンジ部が破損する厚さとなる破損時期を算出する機能を備える。
【0019】
破損時期表示部15は、架空クロージャにおけるヒンジ部の余命期間及び破損時期をコンピュータ端末のモニタに表示する機能を備える。
【0020】
架空クロージャ情報記憶部16は、架空クロージャの仕様情報を記憶しておく機能を備える。
【0021】
ヒンジ厚係数情報記憶部17は、架空クロージャにおけるヒンジ部の余命期間及び破損時期を推定するために用いるヒンジ厚係数に関するヒンジ厚係数情報を記憶しておく機能を備える。
【0022】
ヒンジ厚係数導出部18は、当該ヒンジ厚係数情報を算出する機能を備える。
【0023】
測定データ受付部19は、当該ヒンジ厚係数情報を算出するために必要な測定データを入力するための入力画面をコンピュータ端末のモニタに表示し、保守者が入力した入力値を受け付ける機能を備える。
【0024】
なお、ヒンジ厚係数導出部18及び測定データ受付部19は、ヒンジ厚係数情報を導出することを目的とした機能部であり、推定装置1の目的である余命期間の推定とは目的が異なるので、推定装置1以外の装置に実装してもよい。これにより、推定装置1の処理量が軽減され、推定処理速度が向上できる。
【0025】
また、上記推定装置1は、インターネットを介して、有線又は無線で、架空クロージャ情報データベース3に接続可能である。架空クロージャ情報データベース3は、架空クロージャの製造業者等が管理している公開データベースであり、架空クロージャの仕様情報が格納されている。
【0026】
次に、
図2を用いて、ヒンジ厚係数情報の導出方法について説明する。
図2は、ヒンジ厚係数情報の導出処理フローを示す図である。
【0027】
ステップS101;
保守者は、屋外設置中の架空クロージャと同じ架空クロージャを用意し、所定の試験環境において、当該架空クロージャに対して、紫外線を継続して照射し、所定のタイミングでヒンジ部を所定回数の開閉する動作を行う。なお、時間短縮のため、紫外線照射(UV照射)の代わりに、超音波照射(SSW照射)を行う。
【0028】
そして、保守者は、所定のタイミングでヒンジ部のヒンジ厚を測定する。例えば、保守者は、3つの架空クロージャを用意し、それぞれに対して、(1)100時間毎に30回の開閉動作のみ、(2)紫外線照射のみ、(3)紫外線照射及び100時間毎に30回の開閉動作を行い、100時間毎にヒンジ厚をそれぞれ測定する。
【0029】
その後、推定装置1の測定データ受付部19は、それら測定値の入力を受け付け、ヒンジ厚係数導出部18は、その測定値を「照射時間−ヒンジ厚」のグラフG1にプロットし、最初二乗法等を用いて各測定値に近似する線形関数Faを導出する。
図3は、グラフG1の生成例を示す図であり、上記(1)〜(3)にそれぞれ対応する3つの線形関数Fa1〜Fa3が導出されている。この結果より、照射時間の増加に伴いヒンジ厚が次第に低下し、開閉動作を加えた方がより低下することが分かる。
【0030】
グラフG1の線形関数Faを用いることで、使用前のヒンジ厚及び使用中のヒンジ厚を適用することにより、架空クロージャにおける紫外線の照射時間を把握可能となる。
【0031】
ステップS102;
ヒンジ厚の低下は、時間経過に伴い、紫外線によりプラスチックであるポリプロピレン(PP)の組成が酸化して破壊され、ヒンジ部の表面に白化が生じ、開閉の外圧が加わることでヒンジ部の表面が剥離することに起因する。年単位の長期間に、PP組成の酸化→表面の白化→表面の剥離→PP組成の酸化→…、という現象が何度も繰り返されることにより、ヒンジ部に更なる肉薄化が生じ、最終的にヒンジ部に破損が生じる。
【0032】
そこで、ステップS102では、紫外線の増加に伴うヒンジ部の破損とヒンジ部への外圧との関係を把握する。本実施形態では、照射時間の指標として、カルボニルインデックス(CI)値を用いる。CI値は、紫外線や熱によりプラスチック表面が酸化して分子切断が生じると同時に発生するカルボニル基の発生度に応じた値であり、紫外線劣化の指標に用いられる値である。
【0033】
保守者は、屋外設置中の架空クロージャと同じ架空クロージャのヒンジ部に所定の荷重を負荷し、年30回の開閉動作を行い、破断した際のヒンジ部の伸びとCI値とを測定する。その後、推定装置1の測定データ受付部19は、それら測定値の入力を受け付け、ヒンジ厚係数導出部18は、その測定値を「CI−破断時のヒンジの伸び」のグラフG2にプロットし、最初二乗法等を用いて各測定値に近似する線形関数Fbを導出する。
図4は、グラフG2に生成された線形関数Fbの例を示す図である。ヒンジ部に対して重荷重2mm/minを負荷した場合において破断した際のヒンジ部の伸びの計測結果が示されている。線形関数Fb1は、開閉動作がない場合を示し、線形関数Fb2は、開閉動作がある場合を示す。
【0034】
グラフG2の線形関数Fbを用いることで、ヒンジ部の破断時におけるCI値を把握可能となる。
【0035】
ステップS103;
続いて、紫外線の増加に伴うCI値の増加傾向を把握する。保守者は、屋外設置中の架空クロージャと同じ架空クロージャに紫外線を継続して照射し、所定のタイミングでヒンジ部のCI値を測定する。その後、推定装置1の測定データ受付部19は、それら測定値の入力を受け付け、ヒンジ厚係数導出部18は、その測定値を「照射時間−CI」のグラフG3にプロットし、所定の手法を用いて各測定値に近似する非線形関数Fcを導出する。
図5は、グラフG3に生成された非線形関数Fcの例を示す図である。
【0036】
グラフG3の非線形関数Fcを用いることで、紫外線の照射時間とCI値との関係を把握可能となる。
【0037】
ステップS104;
最後に、ヒンジ厚係数導出部18は、導出されたグラフG1〜G3、線形関数Fa、線形関数Fb、非線形関数Fcを、ヒンジ厚係数情報として、架空クロージャの種別IDに関連付けてヒンジ厚係数情報記憶部17に記憶する。なお、線形関数Faが、「使用時間の経過に伴い低下するヒンジ厚のヒンジ厚係数」に相当する。
【0038】
次に、
図6を用いて、架空クロージャの劣化を推定する推定方法について説明する。
図6は、架空クロージャの劣化推定処理フローを示す図である。
【0039】
ステップS201;
まず、当初ヒンジ厚データ受付部11は、推定対象である架空クロージャについて、その型番、製造時期、設置時期等を入力するための入力画面をモニタに表示し、保守者が入力した入力値を受け付ける。このとき、当初ヒンジ厚データ受付部11は、製造時のヒンジ厚、設置時のヒンジ厚等の入力欄も併せて表示し、それらの入力値を受け付けてもよい。
【0040】
ステップS202;
次に、当初ヒンジ厚特定部12は、架空クロージャ情報記憶部16又は架空クロージャ情報データベース3にアクセスし、推定対象の架空クロージャに対応する仕様情報を取得する。そして、当初ヒンジ厚特定部12は、当該仕様情報を参照し、入力された架空クロージャの型番又は製造時期より、製造時のヒンジ厚を特定する。このとき、当初ヒンジ厚特定部12は、架空クロージャの設置時期が入力されていた場合、製造時のヒンジ厚に対して設置時期までの一定の逓減率を与えることにより、設置時のヒンジ厚を推定算出してもよい。設置時のヒンジ厚と製造時のヒンジ厚とは一般に同一であるが、製造後から倉庫で保管されることもあるため、推定精度向上のため、正確な時期把握と設置時のヒンジ厚を用いた方が精度の高い推定結果が得られる。なお、製造時のヒンジ厚、設置時のヒンジ厚が入力されていた場合、当初ヒンジ厚特定部12は、それらの入力値をそのまま用いて特定する。
【0041】
ステップS203;
次に、保守者は、デジタルノギスを用いて推定対象の架空クロージャのヒンジ厚を測定する。そして、現在ヒンジ厚データ受付部13は、架空クロージャのヒンジ部における現在のヒンジ厚を入力するための入力画面をモニタに表示し、保守者が入力した入力値を受け付ける。なお、デジタルノギスについては、1/100ミリで検出可能な分解能を有するものが好ましい。
【0042】
ステップS204;
次に、破損時期推定部14は、ヒンジ厚係数情報記憶部17から推定対象の架空クロージャに係るヒンジ厚係数情報を取得する。そして、破損時期推定部14は、製造時のヒンジ厚又は設置時のヒンジ厚と、現在のヒンジ厚と、ヒンジ厚係数情報と、現在の日時情報とを用いて、当該ヒンジ部が破断等破損する厚さとなるまでの余命期間及び破損時期を推定算出する。以下、推定算出の具体例について説明する。
【0043】
ステップS204−1;
まず、破損時期推定部14は、
図3に示したグラフG1に含まれる3つの線形関数Fa1〜Fa3のうち、保守者の指定に基づきいずれかの線形関数Faを選択し、製造時のヒンジ厚又は設置時のヒンジ厚と現在のヒンジ厚とにそれぞれ対応する2つの照射時間を特定し、その差を求めることで、推定対象の架空クロージャにこれまで照射されていた紫外線の照射時間を算出する。例えば、線形関数Fa3が選択され、製造時のヒンジ厚又は設置時のヒンジ厚が0.52mm、現在のヒンジ厚が0.4mmの場合、紫外線の照射時間は約1300時間となる。
【0044】
ステップS204−2;
次に、破損時期推定部14は、推定対象の架空クロージャに関する、破断したヒンジ部の伸び値の入力を受け付け、
図4に示したグラフG2に含まれる2つの線形関数Fb1,Fb2のうち、保守者の指定に基づきいずれかの線形関数Fbを選択し、破断したヒンジ部の伸び値に対応するCI値を特定する。破断したヒンジ部の伸び値とは、例えば、グラフG2のプロット群の平均値、保守者が予め決定していた値、過去に破断したヒンジ部の破断の伸びを測定した値又はその平均値等である。過去回収した回収品(架空クロージャ)より測定した破断したヒンジ部の破断の伸びは概ね1.0mmであったことから、線形関数Fb2が選択された場合、CI値は約0.423となる。それゆえ、CI値が0.423まで劣化するとヒンジ割れが発生するとみなす。なお、線形関数Fb1を用いた場合、CI値は約0.8となる。
【0045】
ステップS204−3;
次に、破損時期推定部14は、
図5に示したグラフG3より、推定対象の架空クロージャの寿命期間を推定計算する。具体的には、ステップS204−2で算出したCI値に対応する照射時間を特定し、推定対象の架空クロージャの寿命期間とする。例えば、上記例ではCI値=0.423なので、寿命期間は約1615時間となる。紫外線照射に換算(×1/118)すると、寿命期間は約13.7年となる。なお、開閉動作を行わないCI値=約0.8の場合、寿命期間は紫外線照射換算値で約80年となる。
【0046】
ステップS204−4;
最後に、破損時期推定部14は、ステップS204−3で算出した寿命期間から、ステップS204−1で算出した照射時間を減算することにより、推定対象の架空クロージャの余命期間(=残使用可能期間)を算出し、現在の日時情報を用いて破損時期(=現在日時+余命期間)を算出する。上記例の場合、315時間(=1615時間−1300時間)が余命期間となり、現在の日時+315時間後が破損時期となる。
【0047】
ステップS205;
最後に、破損時期表示部15は、ヒンジ部の余命期間及び破損時期をモニタに表示する。このとき、破損時期表示部15は、推定対象の架空クロージャの余命期間及び破損時期として表示する。これにより、保守者は、推定対象の架空クロージャにおける大凡の残使用可能期間及び使用可能時期を把握可能となる。その結果、架空クロージャの使用可能時期が到来するまでに架空クロージャを事前に交換する等の事前対策が可能となり、通信断等の抑制及び安定した通信を提供可能となる。
【0048】
なお、ステップS204−2及びステップS204−3については、本処理を開始する前に予め実行して寿命期間を事前に算出しておくようにしてもよい。この場合、ステップS204は、ステップS204−1及びステップS204−4のみを実行する。
【0049】
第1の実施形態によれば、推定対象である架空クロージャについて、当初ヒンジ厚特定部12が、当該架空クロージャの型番又は製造時期より製造時のヒンジ厚を特定し、現在ヒンジ厚データ受付部13が、当該架空クロージャの現在のヒンジ厚の入力を受け付けて、破損時期推定部14が、当該製造時のヒンジ厚と、当該現在のヒンジ厚と、当該架空クロージャに係るヒンジ厚係数情報と、現在の日時情報とを用いて、当該ヒンジ部が破断等破損する厚さとなるまでの余命期間及び破損時期を推定し、破損時期表示部15が、架空クロージャの余命期間及び破損時期として表示するので、架空クロージャの劣化を推定できる。すなわち、交換対象の架空クロージャを正確に判定可能となり、通信断等の可能性を大幅に低下させ、安定的な通信を提供可能となる。
【0050】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、ヒンジ部における使用時間の経過に伴い低下するヒンジ厚のヒンジ厚係数を用いた場合について説明した。第2の実施形態では、ヒンジ部における使用時間の経過に伴い増加するヒンジ減厚のヒンジ減厚係数を用いた場合について説明する。ヒンジ減厚とは、時間経過前のヒンジ厚と時間経過後のヒンジ厚との差である。
【0051】
第2の実施形態に係る推定装置1は、第1の実施形態で説明した機能と同様の機能を備える。ただし、第1の実施形態とは、破損時期推定部14、ヒンジ厚係数情報記憶部17、ヒンジ厚係数導出部18、測定データ受付部19の機能において相違する。
【0052】
破損時期推定部14は、架空クロージャのヒンジ部における使用時間の経過に伴い増加するヒンジ減厚のヒンジ減厚係数を用いて、当該ヒンジ部が破損する厚さとなるまでの余命期間及び破損時期を推定算出する機能を備える。
【0053】
ヒンジ厚係数情報記憶部17は、架空クロージャのヒンジ部の余命期間及び破損時期を推定するために用いるヒンジ減厚係数に関するヒンジ減厚係数情報を更に記憶しておく機能を備える。
【0054】
ヒンジ厚係数導出部18は、当該ヒンジ減厚係数情報を算出する機能を備える。
【0055】
測定データ受付部19は、当該ヒンジ減厚係数情報を算出するために必要な測定データを入力するための入力画面をコンピュータ端末のモニタに表示し、保守者が入力した入力値を受け付ける機能を備える。
【0056】
次に、
図7を用いて、ヒンジ減厚係数の導出方法について説明する。
図7は、ヒンジ減厚係数を含むヒンジ厚係数情報の導出処理フローを示す図である。
【0057】
ステップS301;
第1の実施形態では、ステップS102において、照射時間の指標として、CI値を用いた。一方、第2の実施形態では、CI値に代えて、ヒンジ減厚量を用いる。
【0058】
保守者は、屋外設置中の架空クロージャと同じ架空クロージャのヒンジ部に所定の荷重を負荷し、年30回の開閉動作を行い、破断した際のヒンジ部の伸びとヒンジ減厚量とを測定する。その後、推定装置1の測定データ受付部19は、それら測定値の入力を受け付け、ヒンジ厚係数導出部18は、その測定値を「ヒンジ減厚量−破断時のヒンジの伸び」のグラフG4にプロットし、最初二乗法等を用いて各測定値に近似する線形関数Fdを導出する。
図8は、グラフG4に生成された線形関数Fdの例を示す図である。
【0059】
グラフG4の線形関数Fdを用いることで、ヒンジ部の破断時におけるヒンジ減厚量を把握可能となる。
【0060】
ステップS302;
次に、紫外線の増加に伴うヒンジ減厚量の増加傾向を把握する。保守者は、屋外設置中の架空クロージャと同じ架空クロージャに紫外線を継続して照射し、所定のタイミングでヒンジ部のヒンジ減厚量を測定する。その後、推定装置1の測定データ受付部19は、それら測定値の入力を受け付け、ヒンジ厚係数導出部18は、その測定値を「照射時間−ヒンジ減厚量」のグラフG5にプロットし、所定の手法を用いて各測定値に近似する非線形関数Feを導出する。
図9は、グラフG5に生成された非線形関数Feの例を示す図である。
【0061】
グラフG5の非線形関数Feを用いることで、紫外線の照射時間とヒンジ減厚量との関係を把握可能となる。
【0062】
ステップS303;
最後に、ヒンジ厚係数導出部18は、導出されたグラフG4,G5、線形関数Fd、非線形関数Feを、ヒンジ減厚係数情報として、架空クロージャの種別IDに関連付けてヒンジ厚係数情報記憶部17に記憶する。なお、非線形関数Feが、「使用時間の経過に伴い増加するヒンジ減厚のヒンジ減厚係数」に相当する。
【0063】
次に、架空クロージャの劣化を推定する推定方法について説明する。第2の実施形態に係る推定方法は、
図6に示した第1の実施形態に係る推定方法と同様である。ここでは、第1の実施形態と相違するステップS204について、ステップS204’として説明する。
【0064】
ステップS204’;
次に、破損時期推定部14は、ヒンジ厚係数情報記憶部17から推定対象の架空クロージャに係るヒンジ減厚係数情報を取得する。そして、破損時期推定部14は、製造時のヒンジ厚又は設置時のヒンジ厚と、現在のヒンジ厚と、ヒンジ減厚係数情報と、現在の日時情報とを用いて、当該ヒンジ部が破断等破損する厚さとなるまでの余命期間及び破損時期を推定算出する。以下、推定算出の具体例について説明する。
【0065】
ステップS204’−1;
まず、破損時期推定部14は、推定対象の架空クロージャに関する、破断したヒンジ部の伸び値の入力を受け付け、
図8に示したグラフG4に含まれる線形関数Fdより、破断したヒンジ部の伸び値に対応するヒンジ減厚量を特定する。第1の実施形態と同様に、過去回収した回収品より破断したヒンジ部の破断の伸びを決定し、ヒンジ減厚量を特定する。
【0066】
ステップS204’−2;
次に、破損時期推定部14は、
図9に示したグラフG5より、推定対象の架空クロージャの寿命期間を推定計算する。具体的には、ステップS204’−1で算出したヒンジ減厚量に対応する照射時間を特定し、推定対象の架空クロージャの寿命期間とする。
【0067】
ステップS204’−3;
次に、破損時期推定部14は、製造時のヒンジ厚又は設置時のヒンジ厚から現在のヒンジ厚を減算することで現在のヒンジ減厚量を算出し、
図9に示したグラフG5に適用することで、推定対象の架空クロージャにこれまで照射されていた紫外線の照射時間を算出する。
【0068】
ステップS204’−4;
最後に、破損時期推定部14は、ステップS204’−2で算出した寿命期間から、ステップS204’−3で算出した照射時間を減算することにより、推定対象の架空クロージャの余命期間(=残使用可能期間)を算出し、現在の日時情報を用いて破損時期(=現在日時+余命期間)を算出する。
【0069】
第2の実施形態によれば、推定対象である架空クロージャについて、当初ヒンジ厚特定部12が、当該架空クロージャの型番又は製造時期より製造時のヒンジ厚を特定し、現在ヒンジ厚データ受付部13が、当該架空クロージャの現在のヒンジ厚の入力を受け付けて、破損時期推定部14が、当該製造時のヒンジ厚と、当該現在のヒンジ厚と、当該架空クロージャに係るヒンジ減厚係数情報と、現在の日時情報とを用いて、当該ヒンジ部が破断等破損する厚さとなるまでの余命期間及び破損時期を推定し、破損時期表示部15が、架空クロージャの余命期間及び破損時期として表示するので、架空クロージャの劣化を推定できる。すなわち、交換対象の架空クロージャを正確に判定可能となり、通信断等の可能性を大幅に低下させ、安定的な通信を提供可能となる。
【0070】
<その他>
各実施形態では、架空クロージャを用いた場合を例に説明したが、架空クロージャに限らず、ヒンジ部を備えるプラスチック容器に適用可能である。
【0071】
また、各実施形態では、架空クロージャに対する紫外線照射、ヒンジ部の開閉動作により架空クロージャが劣化する場合を例に説明したが、時間経過に伴いヒンジ厚を低下させる又はヒンジ減厚を増加させる現象や作用(例えば、熱等)に適用可能である。
【0072】
また、各実施形態では、過去回収した回収品(架空クロージャ)より破断したヒンジ部の破断の伸びを決定したが、破断時のヒンジ部の破断の伸びは、保守者が任意に設定可能である。単純に破断時の厚みの低下量又は減厚の増加量を基準に用いてもよく、例えば破断する厚さを使用前の厚さから50%とする等、様々な推定方法が考えられる。
【0073】
また、各実施形態で説明した推定装置1は、CPU、メモリ、入出力インタフェース、通信インタフェース等を備えたコンピュータで実現可能である。推定装置1としてコンピュータを機能させるためのプログラム、そのプログラムの記憶媒体も作成可能である。
【解決手段】推定対象である架空クロージャについて、推定装置1は、当初ヒンジ厚特定部12が、当該架空クロージャの型番又は製造時期より製造時のヒンジ厚を特定し、現在ヒンジ厚データ受付部13が、当該架空クロージャの現在のヒンジ厚の入力を受け付けて、破損時期推定部14が、当該製造時のヒンジ厚と、当該現在のヒンジ厚と、当該架空クロージャに係るヒンジ厚係数情報と、現在の日時情報とを用いて、当該ヒンジ部が破断等破損する厚さとなるまでの余命期間及び破損時期を推定し、破損時期表示部15が、架空クロージャの余命期間及び破損時期として表示する。