(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の木材の接合面にそれぞれ穿設され、円形の断面をそれぞれ有し、互いに同軸に配置されて連通する一対のロッド埋設穴内に充填された硬化前の接着剤中に挿入され、前記一対の木材を連結する木材連結用補強ロッドにおいて、
略円形の断面を有し、軸方向に直線的に延びるロッド軸
部と、
前記接合面よりも一端側及び他端側の前記ロッド軸部の外周面からそれぞれ突出し、前記ロッド軸部を前記一対のロッド埋設穴の断面の略中央にそれぞれ配置するための第1バランス材及び第2バランス材と、を備え、
前記第1バランス材は、前記外周面上において前記軸方向に対し傾斜する方向に延び、
前記第2バランス材は、前記軸方向に対し平行に延びることを特徴とする木材連結用補強ロッド。
前記第2バランス材は、前記外周面から前記ロッド軸部の径方向に突き出し、前記軸方向に平行に伸びる板状体であることを特徴とする請求項2に記載の木材連結用補強ロッド。
前記第1バランス材は、前記外周面から前記ロッド軸部の径方向に突き出し、前記軸方向に対し傾斜する方向に延びる板状体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の木材連結用補強ロッド。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1〜4は、本発明の実施の形態1による木材連結構造の一構成例を示す説明図である。
図1には、一対の木材1A,1Bの連結前の外観の一例が示され、
図2には、一対の木材1A,1Bの連結後の外観の一例が示されている。また、
図3には、一対の木材1A,1Bの接合面10が示され、
図4には、
図2の連結木材1Cを軸方向に切断した切断面が示されている。
【0018】
図1の(a)及び(b)に示された一対の木材1A,1Bは、本実施の形態による木材連結構造により互いに連結される柱材である。例えば、第1木材1Aは寺社などの歴史的建造物の柱材であり、損傷部分の切除により長さが不足するに至った被補修材であり、第2木材1Bは、この不足分を補うために第1木材1Aに連結される補修材である。なお、本発明は、古い柱材の補修に好適であるが、本発明の適用対象は、補修目的の場合のみに限定されない。例えば、新しい柱材同士の連結にも適用することができ、また、柱材以外の木材の連結にも適用することができる。
【0019】
(1)第1木材1A
第1木材1Aは、円形の断面を有し、軸方向に直線的に延びる円柱状の柱材であり、軸方向に対し垂直な接合面10Aを有する。接合面10Aは、円形であり、凹部11A及びロッド埋設穴12Aが形成されている。例えば、1つの凹部11Aが接合面10Aの中央部に設けられ、2以上のロッド埋設穴12Aが接合面10Aの周辺部に設けられる。図中には、多数のロッド埋設穴12Aが1つの凹部11Aを取り囲むように配置されている様子が示されている。
【0020】
凹部11Aは、第2木材1Bの凸部11Bと嵌合する臍穴部であり、接合面10Aから軸方向へ後退する窪み部として形成される。図中には、凹部11Aが十字形の断面を有する場合が示されているが、その形状は任意であり、例えば矩形の断面を有するものであってもよい。
【0021】
ロッド埋設穴12Aは、補強ロッド2の一端を埋め込むための穴であり、接合面10A上に開口を有し、第1木材1A内を軸方向に延びる有底中空部である。ロッド埋設穴12Aは、円形の断面を有し、軸方向にわたって同一径からなる円柱形である。ただし、開口部付近はより広径に形成され、補強ロッド2の挿入に伴う接着剤の接合面10Aへのはみ出しを防止している。
【0022】
(2)第2木材1B
第2木材1Bは、円形の断面を有し、軸方向に直線的に延びる円柱状の柱材であり、軸方向に対し垂直な接合面10Bを有する。接合面10Bは、円形であり、凸部11B及びロッド埋設穴12Bが形成されている。例えば、1つの凸部11Bが接合面10Bの中央部に設けられ、2以上のロッド埋設穴12Bが接合面10Bの周辺部に設けられる。図中には、多数のロッド埋設穴12Bが1つの凸部11Bを取り囲むように配置されている様子が示されている。
【0023】
凸部11Bは、第1木材1Aの凹部11Aと嵌合する臍部であり、接合面10Bから軸方向へ突き出す突出部として形成される。図中では、凸部11Bが十字形断面を有する場合が示されているが、凸部11Bは、凹部11Aと対応する形状であればよく、その形状は任意であり、例えば矩形断面を有するものであってもよい。
【0024】
ロッド埋設穴12Bは、補強ロッド2の他端を埋め込むための穴であり、接合面10B上に開口を有し、軸方向にわたって同一径からなる円柱形である。ただし、開口部付近はより広径に形成され、補強ロッド2の挿入に伴う接着剤の接合面10Bへのはみ出しを防止している。
【0025】
(3)連結木材1C
図2には、連結木材1Cが示されている。第1及び第2木材1A,1Bは、各接合面10A,10Bを対向させて互いに連結することにより、連結木材1Cになる。第1及び第2木材1A,1Bは、それぞれの軸が一致するように連結される。また、接合面10A,10Bの径は同一であり、連結状態において外縁が一致している。図中の接合面10は、密着して接合された木材1A,1Bの接合面10A,10Bに相当する。
【0026】
図3には、
図2の連結木材1Cの接合面10が示されている。凹部11A及び凸部11Bは、接合面10上において互いに一致する位置に配置されている。また、各ロッド埋設穴12Aとロッド埋設穴12Bも、接合面10上において互いに一致する位置に配置され、互いに対向している。また、ロッド埋設穴12A,12B内には、接着剤3が充填され、さらに当該接着剤中に補強ロッド2が埋設されている。
【0027】
図4には、A−A切断線による連結木材1Cの切断面が示されている。凸部11Bは、凹部11A内に挿入され、互いに嵌合する。ロッド埋設穴12A,12Bは、軸、広径及び狭径のいずれもが互いに一致するように配置されているため、対向するロッド埋設穴12A,12Bは、接合面10を挟んで連通する。補強ロッド2は、接合面10を横切るように配置され、接合面10の一端側が、ロッド埋設穴12A内に埋設され、接合面10の他端側が、ロッド埋設穴12B内に埋設されている。補強ロッド2とロッド埋設穴12A,12Bの内壁面との間には、接着剤3が充填されている。
【0028】
このような木材連結構造を採用することにより、第1及び第2木材1A,2Bは、凹部11A及び凸部11Bの嵌合により連結される。また、第1及び第2木材1A,2Bは、補強ロッド2を介して連結される。さらに、第1及び第2木材1A,2Bは、接合面10上においてロッド埋込穴12A,12B内の接着剤3により連結される。
【0029】
(4)補強ロッド2
図5は、補強ロッド2の一構成例を示した図である。補強ロッド2は、ロッド軸部20と複数のバランス材21により構成され、バランス材21は、第1バランス材21A及び第2バランス材21Bにより構成される。第1バランス材21Aは、接合面10よりも一端側に配置され、第1木材1Aのロッド埋設穴12A内に埋設される。第2バランス材21Bは、接合面10よりも他端側に配置され、第2木材1Bのロッド埋設穴12B内に埋設される。
【0030】
a)ロッド軸部20
ロッド軸部20は、略円形の断面を有し、軸方向に直線的に延びる形状からなる。ロッド軸部20として、アラミド繊維を棒状に加工したアラミド繊維ロッドを用いることができる。アラミド繊維は、防錆性を有し、引張強度が高く、軽量であることから、鉄筋よりも補強ロッド2の材料として適している。例えば、アラミド繊維を組紐状に加工し、エポキシ系樹脂で硬化させ棒状に成形したアラミド繊維ロッドがロッド軸部20として用いられる。
【0031】
b)バランス材21
バランス材21は、ロッド軸部20をロッド埋設穴12A,12Bの略中央に配置するためのスペーサ部材である。バランス材21は、ロッド軸部20の外周面から外側に向かって突出する突出部として形成される。また、ロッド軸部20の中心軸からバランス材21の最外縁までの距離は、ロッド埋設穴12A,12Bの半径よりもやや小さくなっている。このため、ロッド軸部20の中心軸から見て、互いに異なる方向に3以上のバランス材21を配置することにより、ロッド軸部20をロッド埋設穴12A,12Bの断面の略中央に配置することができる。
【0032】
ロッド軸部20をロッド埋設穴12A,12Bの中央に埋設することにより、ロッド軸部20の外周面が、全方位にわたって十分な厚さの接着剤で覆われ、ロッド埋設穴12A,12Bの内周面に対し強固に固着される。このため、補強ロッド2がロッド埋設穴12A,12Bから抜けにくくなる。また、ロッド軸部20からバランス材21を突出させることにより、バランス材21がストッパーとなり、補強ロッド2がロッド埋設穴12A,12Bから更に抜けにくくなる。このため、補強ロッド2の引っ張り強度が増大し、木材1A,1Bを強固に連結することができる。
【0033】
図5に示したバランス材21は、板状体であり、アラミド繊維をシート状に加工したアラミド繊維シートを用いることができる。例えば、アラミド繊維を1方向又は2方向に配列させてシート状に加工し、エポキシ系樹脂を含浸させて硬化させたアラミド繊維シートがバランス材21として用いられる。また、バランス材21は、エポキシ系樹脂等の接着剤を用いて、ロッド軸部20の外周面に接着される。
【0034】
c)第1バランス材21A
図5のロッド軸部20には、接合面10よりも一端側に12枚の第1バランス材21Aが設けられている。各第1バランス材21Aは、ロッド軸部20の中心軸からみて、互いに直交する4つの方位に配置される板状体であり、互いに離間された軸方向の異なる3つの位置に4枚ずつ設けられている。軸方向の同じ位置に設けられる4枚の第1バランス材21Aは、バランス材モジュールM1として一体的に形成され、ロッド軸部20に取り付けられる。
【0035】
図6及び7は、バランス材モジュールM1の一構成例を示した図である。
図6(a)〜(c)には、バランス材モジュールM1の平面図、側面図及び底面図がそれぞれ示され、
図7には、バランス材モジュールM1の斜視図が示されている。
【0036】
図6及び7に示した通り、バランス材モジュールM1は、4枚の第1バランス材21Aと、これらを支持する支持部22Aとにより構成される。支持部22Aは、ロッド軸部20の外周面を取り囲む筒状体である。この支持部22Aの外周面上に4枚の第1バランス材21Aが連結されている。
【0037】
支持部22Aにもアラミド繊維シートを用いることができる。エポキシ系樹脂等の接着剤を用いて、4枚の第1バランス材21Aを支持部22Aの外周面に接着することにより、バランス材モジュールM1が得られる。このバランス材モジュールM1が、エポキシ系樹脂等の接着剤を用いて、ロッド軸部20の外周面に接着される。
【0038】
第1バランス材21Aは、ロッド軸部20の外周面から径方向に突出する略矩形の板状体、例えば平板であり、軸方向に対し傾斜する方向に延びる形状を有する。軸方向に対し、第1バランス材21Aを傾斜させることにより、補強ロッド2を接着剤3中に挿入する際、接着剤3をかき混ぜつつ、ロッド埋設穴12Aのさらに奥へ押し込むことができる。このため、ロッド軸部20の外周面と、ロッド埋設穴12Aの内周面との間に接着剤が満たされ、補強ロッド2が、ロッド埋設穴12A,12Bに対し更に強固に固着され、ロッド埋設穴12A,12Bから抜けにくくなる。なお、第1バランス材21Aの主面は、平面であってもよいし、穏やかな曲面であってもよい。
【0039】
d)第2バランス材21B
図5のロッド軸部20には、接合面10よりも一端側に6枚の第2バランス材21Bが設けられている。各第2バランス材21Bは、ロッド軸部20の中心軸からみて、互いに直交する方位に配置された板状体であり、互いに離間された軸方向の異なる3つの位置に2枚ずつ設けられている。軸方向の同じ位置に設けられる2枚の第2バランス材21Bは、バランス材モジュールM2として一体的に形成され、ロッド軸部20に取り付けられる。
【0040】
図8〜10は、バランス材モジュールM2の一構成例を示した図である。
図8(a)〜(c)には、バランス材モジュールM2の平面図、側面図及び底面図がそれぞれ示され、
図9には、バランス材モジュールM2の斜視図が示されている。また、
図10には、接合面10から第2バランス材21B側を見た断面図が示されている。
【0041】
図8及び9に示した通り、バランス材モジュールM2は、2枚の第2バランス材21Bと、これらを支持する支持部22Bとにより構成される。支持部22Bは、ロッド軸部20の外周面に沿って周方向に延びる形状を有し、半周分の長さを有する。この支持部22Bの両端に2枚の第2バランス材21Bが連結されている。
【0042】
支持部22Bにもアラミド繊維シートを用いることができる。エポキシ系樹脂等の接着剤を用いて、2枚の第2バランス材21Bを支持部22Bの両端に接着することにより、バランス材モジュールM2が得られる。このバランス材モジュールM2が、エポキシ系樹脂等の接着剤を用いて、ロッド軸部20の外周面に接着される。
【0043】
図示した支持部22Bは、2つに分割され、軸方向の異なる位置に配列するが、分割されていなくてもよい。また、バランス材モジュールM2の利用は一例であり、例えば、各第2バランス材21Bをロッド軸部20に対し個別に取り付けることもできる。
【0044】
第2バランス材21Bは、ロッド軸部20の外周面から径方向に突出する矩形の板状体、例えば平板であり、軸方向に延びる形状を有する。また、補強ロッド2を接着剤3中に挿入する際の抵抗を低減するために、前記他端側の辺は、径方向の外側が内側よりも後退するように傾斜している。
【0045】
図10に示した通り、3つのバランス材モジュールM2は、相互に90°回転させて異なる方向からロッド軸部20に取り付けられている。このため、外周を4等分した各方向に第2バランス材21Bが突出するように配置される。このため、ロッド軸部20をロッド埋設穴12Bの略中央に配置することができる。
【0046】
(5)連結工程
図11は、一対の木材1A,1Bを連結するときの様子を示した図である。まず、木材1A,1Bのうち任意の一方に対し、補強ロッド2の長さの半分が埋め込まれ、補強ロッド2の残り半分が接合面から突出した状態になる。この突出部分が、木材1A,1Bの他方に埋め込まれる。このとき、補強ロッド2は、第1バランス材21A側が先に埋め込まれ、第2バランス材21B側が後から埋め込まれる。
【0047】
図11では、木材1Aのロッド埋設穴12Aに対し、補強ロッド2の第1バランス材21A側が埋め込まれた状態が示されている。まず、ロッド埋設穴12A内に接着剤3が充填される。このとき、ロッド埋設穴12A内に空気が残り、接着剤3中に空洞が形成される。このような空洞が形成されないように接着剤3を充填することが望ましいが、空洞形成を完全に防ぐことは難しい。その後、充填した接着剤3の硬化前に、補強ロッド2の第1バランス材21A側が接着剤3中に挿入される。
【0048】
接着剤3は所定の粘度を有する一方、第1バランス材21Aは軸方向に対し傾斜して設けられている。このため、補強ロッド2を挿入すると第1バランス材21Aが接着剤3から反力を受け、補強ロッド2は挿入にともなって自転する。このとき、接着剤3は、第1バランス材21Aによってロッド埋設穴12Aの奥側へ押し込まれ、空洞内の空気がロッド埋設穴12A内を開口側に向かって移動する。つまり、第1バランス材21Aが、接着剤3内に形成されていた空洞を減少させる。なお、補強ロッド2の挿入時には、外力により、上記自転方向と同じ方向へ補強ロッド2を回転させながら挿入することが望ましい。このときの回転速度は、補強ロッド2の挿入速度と、第1バランス材21Aの軸方向に対する角度から求められる自転速度よりも小さな値となるように制御する必要がある。
【0049】
ロッド埋設穴12A内の接着剤が十分に硬化した後、もう一方の木材1Bのロッド埋設穴12B内に接着剤3が充填される。その後、接着剤3の硬化前に、木材1Aから突出する補強ロッド2の第2バランス材21B側が、木材1Bのロッド埋設穴12B内に挿入され、木材1A,1Bの接合面10A,10Bが会合するように、木材1A,1Bが連結される。
【0050】
第2バランス材21Bは、軸方向と平行に設けられているため、補強ロッド2は、自転することなくロッド埋設穴12Bに挿入することができる。既に木材1Aに固定されている補強ロッド2を木材1Bのロッド埋設穴12Bに挿入する際、ロッドを自転させることはできないため、バランス材21A,21Bのうち、第1バランス材21Aのみが、軸方向に対し傾斜して設けられ、第2バランス材21Bは、軸方向に対し平行に設けられる。
【0051】
(6)連結構造の詳細
図12は、
図4の断面図の一部を拡大して示した一部拡大断面図である。接合面10付近におけるロッド埋設穴12A,12Bの様子が示されている。ロッド埋設穴12A,12Bは、その開口に隣接してオーバーフロー収容部12sを有する。また、ロッド埋設穴12A,12Bの内壁面には、プライマー層4が形成されている。
【0052】
a)オーバーフロー収容部12s
ロッド埋設穴12A,12Bは、同一径からなる有底円筒中空部12hからなるが、その開口近傍には、より広径のオーバーフロー収容部12sが形成されている。オーバーフロー収容部12sは、有底円筒中空部12hよりも広く、開口と一致する径を有する中空円筒部である。ロッド埋設穴12A,12Bは、オーバーフロー収容部12sを備えることにより、補強ロッド2の挿入にともなって、ロッド埋設穴12A,12B内に充填された接着剤3が接合面10A上に溢れ出すのを防止している。
【0053】
b)接着剤3、プライマー層4
ロッド埋設穴12A,12Bの内壁面には、プライマー層4が形成され、十分に定着した後、その内側に接着剤が充填される。プライマー層4は、ロッド埋設穴12A,12Bの内壁面に形成される薄い下地層であり、木材からなるロッド埋設穴12A,12Bの内壁面と、接着剤3とを強固に結合させるために設けられる。例えば、接着剤3として、エポキシ系樹脂を用いる場合、アラミド繊維からなる補強ロッド2とは強固に結合するが、木材であるロッド埋設穴12A,12Bの内壁面に対しては十分な結合強度を確保できない。このため、木材及び接着剤間に介在させて両者を強固に結合するためのプライマー層4がロッド埋設穴12A,12Bの内壁面に形成される。なお、ロッド軸部20の中心軸からバランス材21A,21Bの最外縁までの距離は、プライマー層4の内表面の半径よりもやや小さくなっている。
【0054】
(7)連結の効果
a) 本実施の形態によれば、一対の木材1A,1Bのロッド埋設穴12A,12Bに対し、先に接着剤3が充填され、硬化前の接着剤3中に補強ロッド2が挿入される。このため、先に補強ロッド2を挿入し、その後に接着剤3を充填する従来技術に比べ、ロッド埋設穴12A,12B内の接着剤3中に空洞が生じにくくなる。このため、木材1A,1Bに対し補強ロッド2をより強固に結合させ、抜けにくくすることができ、引っ張り強度を増大させることができる。
【0055】
b) ロッド軸部20の外周面上にバランス材21A,21Bを設け、ロッド埋設穴12A,12B内の接着剤3中に完全に埋没させることにより、バランス材21A,21Bがストッパーとして機能し、木材1A,1Bから補強ロッド2を抜けにくくすることができる。
【0056】
c) ロッド軸部20の外周面から外側に向かってバランス材21A,21Bを突出させ、スペーサ部材として機能させることにより、ロッド軸部20をロッド埋設穴12A,12Bの略中央に配置することができる。このため、ロッド軸部20の外周面は、全方位にわたって十分な量の接着剤3を介して支持され、バランス材を有しない従来技術に比べ、木材1A,1Bに対し補強ロッド2をより強固に結合させ、抜けにくくすることができる。
【0057】
d) 接合面10よりも一端側のロッド軸部20の外周面上に設けられる第1バランス材21Aが、当該外周面上において軸方向に対し傾斜する方向に延びている。このため、補強ロッド2の挿入時に、接着剤3は、第1バランス材21Aによってロッド埋設穴12Aの奥側へ押し込まれ、接着剤3中の空洞を減少させることができる。このとき、補強ロッド2を外力により回転させながら挿入することが望ましい。
【0058】
e) 接合面10よりも他端側のロッド軸部20の外周面上に設けられる第2バランス材21Bが、当該外周面上において軸方向と平行に延びる平板で構成されている。このため、補強ロッド2の第2バランス材21B側をロッド埋設穴12Bに挿入する際、自転させることなく挿入することができる。
【0059】
f) 木材1A,1Bの接合面10上には互いに嵌合する凹部11A又は凸部11Bが設けられ、十分な剪断強度が確保される。また、接合面10上には、互いに対向するロッド埋設穴12A,12Bが穿設され、ロッド埋設穴12A,12B内の接着剤中に両端が埋設される補強ロッド2が接合面10を横切って配置され、十分な引っ張り強度が確保される。従って、剪断強度及び引っ張り強度のいずれにも優れた木材連結構造を実現することができる。特に、凹部11Aを多数のロッド埋設穴12Aで取り囲み、凸部11Bを多数のロッド埋設穴12Bで取り囲むように配置することにより、強度を更に向上させることができる。
【0060】
g) ロッド連結穴12A,12Bは、その開口近傍には、より広径のオーバーフロー収容部12sが形成されている。このため、補強ロッド2の挿入にともなって、ロッド埋設穴12A,12B内に充填された接着剤3が接合面10A上に溢れ出すのを防止することができる。
【0061】
なお、上記実施の形態では、接合面10Aにおいて凹部11A又は凸部11Bが多数のロッド埋設穴12A,12Bにより取り囲まれる構成例について説明したが、本発明は、このような構成のみに限定されない。例えば、凹部11A及び凸部11Bを省略することもできる。また、接合面10A,10B上に形成されるロッド埋設穴12A,12Bは、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、凹部11Aを有する木材1Aに対し、補強ロッド2の第1バランス材21A側を埋め込む例を示したが、凸部11Bを有する木材1Bに対し、補強ロッド2の第1バランス材21A側を埋め込むこともできる。
【0063】
また、上記実施の形態では、一対の木材1A,1Bがともに円形の断面を有する柱材であり、これらを長手方向に連結する場合の例について説明したが、本発明の適用対象は、このような場合のみに限定されず、様々な木材同士の様々な結合構造に適用することができる。例えば、矩形の断面を有する柱材を連結する場合や、梁材と柱材を連結する場合にも、本発明を適用することができる。
【0064】
実施の形態2.
実施の形態1では、第1バランス材21Aが、ロッド軸部20の中心軸からみて、互いに直交する4つの方位に配置される板状体である場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、第1バランス材21Aが、ロッド軸部20の外周上に設けられた螺旋形の板状体である場合について説明する。
【0065】
図13は、実施の形態2による補強ロッド2の一構成例を示した図である。
図5(実施の形態1)と比較すれば、第1バランス材21Aの形状が異なっている。なお、ロッド軸部20及び第2バランス材21Bは同一であるため、重複する説明を省略する。
【0066】
図14は、
図13の第1バランス材21Aの一構成例を示した図である。
図14(a)〜(c)には、第1バランス材21Aの平面図、側面図及び底面図がそれぞれ示されている。第1バランス材21Aは、実施の形態1に記載したバランス材21の一形態であり、ロッド軸部20の外周面に沿って設けられた螺旋状の形状からなり、互いに離間された軸方向の異なる3つの位置にそれぞれ設けられている。
【0067】
第1バランス材21Aは、ロッド軸部20の外周面から径方向に突出する板状体であり、軸方向に対し傾斜する方向に延びつつ、ロッド軸部20の外周上を巻回する形状からなる。第1バランス材21Aの主面は、穏やかな曲面からなる。第1バランス材21Aは、エポキシ系樹脂等の接着剤を用いて、ロッド軸部20の外周面に接着される。図示した第1バランス材21Aは、外周上を約2周(中心角720°)する形状からなるが、その長さは任意に決定することができ、例えば1周(中心角360°)以上の長さとされる。
【0068】
軸方向に対し、第1バランス材21Aを傾斜させることにより、補強ロッド2を接着剤3中に挿入する際、接着剤3をかき混ぜつつ、ロッド埋設穴12Aのさらに奥へ押し込むことができる。このため、ロッド軸部20の外周面と、ロッド埋設穴12Aの内周面との間に接着剤3が満たされ、補強ロッド2が、ロッド埋設穴12A,12Bに対し更に強固に固着され、ロッド埋設穴12A,12Bから抜けにくくなる。
【0069】
実施の形態3.
実施の形態2では、第1バランス材21Aが、ロッド軸部20の外周上に設けられた螺旋状の板状体である場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、第1バランス材21Aが、ロッド軸部20の外周上に設けられた螺旋形の紐状体である場合について説明する。
【0070】
図15は、実施の形態3による補強ロッド2の一構成例を示した図である。
図13(実施の形態2)と比較すれば、第1バランス材21Aの形状が異なっている。なお、ロッド軸部20及び第2バランス材21Bは同一であるため、重複する説明を省略する。
【0071】
図16は、
図15の第1バランス材21Aの一構成例を示した図である。
図16(a)〜(c)には、第1バランス材21Aの平面図、側面図及び底面図がそれぞれ示されている。第1バランス材21Aは、実施の形態1に記載したバランス材21の一形態であり、ロッド軸部20の外周面に沿って設けられた螺旋状の形状からなり、互いに離間された軸方向の異なる3つの位置にそれぞれ設けられている。
【0072】
第1バランス材21Aは、ロッド軸部20の外周面から径方向に突出する紐状体であり、軸方向に対し傾斜する方向に延びつつ、ロッド軸部20の外周上を巻回する形状からなる。図示した第1バランス材21Aは、外周上を約2周(中心角720°)する形状からなるが、その長さは任意に決定することができ、例えば1周(中心角360°)以上の長さとされる。
【0073】
第1バランス材21Aは、アラミド繊維を紐状に加工したアラミド繊維を用いることができ、略円形の断面を有する。例えば、第1バランス材21Aとして、アラミド繊維を組紐状に加工したものが用いられ、エポキシ系樹脂等の接着剤を用いて、ロッド軸部20の外周面に接着される。
【0074】
軸方向に対し、第1バランス材21Aを傾斜させることにより、補強ロッド2を接着剤3中に挿入する際、接着剤3をかき混ぜつつ、ロッド埋設穴12Aのさらに奥へ押し込むことができる。このため、ロッド軸部20の外周面と、ロッド埋設穴12Aの内周面との間に接着剤3が満たされ、補強ロッド2が、ロッド埋設穴12A,12Bに対し更に強固に固着され、ロッド埋設穴12A,12Bから抜けにくくなる。
【解決手段】 一対の木材1A,1Bの接合面10にそれぞれ穿設され、円形の断面をそれぞれ有し、互いに同軸に配置されて連通する一対のロッド埋設穴12A,12B内に充填された接着剤3中に埋設され、一対の木材1A,1Bを連結する木材連結用補強ロッド2において、略円形の断面を有し、軸方向に直線的に延びるロッド軸部20と、前記接合面10よりも一端側のロッド軸部20の外周面から突出し、前記外周面上において軸方向に対し傾斜する方向に延びる第1バランス材21Aと、を備える。