特許第6667039号(P6667039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6667039
(24)【登録日】2020年2月26日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】コンベアローラのローラ軸支持構造
(51)【国際特許分類】
   B65G 39/12 20060101AFI20200309BHJP
   B65G 15/08 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   B65G39/12
   B65G15/08 A
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-158292(P2019-158292)
(22)【出願日】2019年8月30日
【審査請求日】2019年8月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517295883
【氏名又は名称】安藤 隆
(73)【特許権者】
【識別番号】519316542
【氏名又は名称】安藤 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】安藤 隆
【審査官】 板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−292140(JP,A)
【文献】 特開2019−038693(JP,A)
【文献】 特開昭52−029457(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3207465(JP,U)
【文献】 特開平08−067324(JP,A)
【文献】 特開2016−011175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 39/12
B65G 15/08
F16C 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ軸に軸受を介してローラ筒を回転自在に取り付け、上記ローラ軸の軸端に外周対向部分を削った一対の面取り部と該面取り部のない円周部とを上記ローラ軸の軸線方向にずらせた状態でそれぞれ設け、さらに上記ローラ軸の上記軸端をローラスタンドに設けたローラ軸支持部で支持して構成しているコンベアローラにおいて、
上記ローラスタンドの上記ローラ軸支持部は、上記ローラ軸の軸端に設けた面取り部の形成部分を嵌合させて上記ローラ軸を回転不能でかつ着脱自在に支持できる第1の嵌合支持部と、上記ローラ軸の軸端に設けた円周部を着脱自在に嵌合できかつ該円周部の下半部外面に当接して上記ローラ軸の軸端に加わる荷重を下方から支持できる第2の嵌合支持部とを有し、
上記第1の嵌合支持部と上記第2の嵌合支持部とは、上記ローラ軸の軸線方向にずらせた位置にそれぞれ設けているとともに、
上記第2の嵌合支持部には、上記ローラ軸の軸端を上記ローラ軸支持部に支持させた状態において上記円周部の下半部外面の左右2箇所にそれぞれ接触して上記円周部の下半部外面を左右両側から挟持し得る2つの接触部を設けている、
ことを特徴とするコンベアローラのローラ軸支持構造。
【請求項2】
上記第2の嵌合支持部の上記両接触部は、上記ローラ軸の軸端を上記ローラ軸支持部に支持させた状態において上記円周部の下半部外面における左右外端寄り位置であって上記ローラ軸の軸芯から該軸芯を通る軸径方向の水平線に対して下向き角度が5°〜15°の範囲の2箇所でそれぞれ接触させるようにしている、
ことを特徴とする上記請求項1に記載のコンベアローラのローラ軸支持構造。
【請求項3】
上記第2の嵌合支持部の上記両接触部は、上記ローラ軸の軸端の上記円周部の外面に対してそれぞれ接線状態で接触する直線状の傾斜面である、
ことを特徴とする上記請求項1又は2に記載のコンベアローラのローラ軸支持構造。
【請求項4】
上記第1の嵌合支持部として上記ローラスタンドに設けた上記面取り部の形成部分を回転不能状態で嵌合させ得る凹溝を採用し、
上記第2の嵌合支持部として上記ローラ軸の軸端の上記円周部を上方から嵌合できかつ該円周部の下半部外面を下方から支持できる空間部を有した軸端受部材を採用しているとともに、
上記軸端受部材を上記ローラスタンドにおける上記凹溝の形成部分の壁面に、上記空間部の幅中心線が上記凹溝の幅中心線とローラ軸の軸線方向に合致する状態で取り付けている、
ことを特徴とする上記請求項1から3のいずれか1項に記載のコンベアローラのローラ軸支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンベアローラのローラ軸をローラスタンドにより回転不能でかつ着脱自在に支持できるようにしたコンベアローラのローラ軸支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベアローラは、ベルトコンベアのベルト走行用として多用されている。そして、一般例のベルトコンベアとして図10に示すものがあるが、このベルトコンベアは、上側に位置するキャリア側コンベアローラ1と下側に位置するリターン側コンベアローラ1’とにエンドレスなコンベアベルト9を巻回し、コンベアプーリーの1つを駆動することにより、エンドレスに巻回したコンベアベルト9を循環走行させ得るようにしたものである。
【0003】
尚、図10に示す一般例のベルトコンベアは、例えば特開2016−130169号公報(特許文献1)に開示されているものとほぼ同構造のものであり、以下の説明では、図10のコンベアローラを従来例として説明する。
【0004】
図10(従来例)のベルトコンベアにおける各コンベアローラ1,1’は、ローラ軸11に軸受(ボールベアリング)13を介してローラ筒12を回転自在に取り付けて構成したローラ体10を使用し、該ローラ体10のローラ軸11の両軸端14,14をそれぞれローラスタンド2,2に回転不能状態で支持させたものである。
【0005】
尚、本願の説明において、ローラ軸の軸端14とは、ローラ筒12の長さ方向の端面から外側にはみ出した部分で、軸線方向に若干長さ(例えば15mm程度の長さ)を有する部分のことである。
【0006】
キャリヤ側コンベアローラ1は、コンベアベルト9のキャリヤ側を谷折り状(逆台形状)に曲げて走行させるために、3本の短尺ローラ体10,10,10を使用し、中間部のベースローラに対して両端部のサイドローラ2本をそれぞれ傾斜状態で連続させたものを採用している。尚、リターン側のコンベアローラ1’は、1本の長尺ローラ体10を採用している。
【0007】
又、キャリヤ側コンベアローラ1は、3本の短尺ローラ体10,10,10を連続させたものであるが、この各短尺ローラ体10は、それぞれローラ軸11に2つの軸受13,13を介してローラ筒12を回転自在に取り付けたものである。そして、3本の短尺ローラ体10,10,10を1組とするコンベアローラ1は、各短尺ローラ体10のローラ軸11の両軸端14,14をそれぞれローラスタンド2,2に支持させている。尚、以下の説明では、上記3本の短尺ローラ体10,10,10も単にローラ体と表現する。
【0008】
図10のベルトコンベア用のコンベアローラ1(各ローラ体10,10,10)は、ローラスタンド2に対して次のように組付けられている。尚、以下の説明では、コンベアローラとして、キャリア側コンベアローラ1で且つ中央に水平設置されたもので説明する。
【0009】
図11図10のXI部分の拡大断面図であり、図12図11のXII−XII矢視拡大図であり、図13はコンベアローラ1とローラスタンド2とを分離した状態の斜視図である。
【0010】
図10のコンベアローラ1には、図11図13に示すように、ローラ軸11の軸端14に外周対向部分を削った一対の面取り部(削肉部)15,15を形成している一方、ローラスタンド2の上部にローラ軸支持用の凹溝21Aを形成している。ローラスタンド2の凹溝21Aは、図12及び図13に示すように、左右の側面22,22と円弧状の底面23からなるU形溝となっている。尚、以下の説明では、ローラ軸11の軸端14を単にローラ軸端14ということがあり、又、上記各面取り部15,15を形成した部分を面取り形成部15Aということがある。
【0011】
このコンベアローラ1は、図11及び図12に示すように、ローラ軸端14の面取り形成部15Aをローラスタンド2の凹溝21A内に落とし込むことで、ローラ軸11をローラスタンド2に対して回転不能に支持している。
【0012】
ところで、コンベアローラ1は、何らかの故障(例えばローラ筒12の回転不良やローラ体10の損傷等)が発生したときにはローラ体10をローラスタンド2から取り外して修理又は交換する必要がある関係で、両方のローラ軸端14,14をそれぞれローラスタンド2の凹溝21Aに対して着脱させ得るようになっている。即ち、図12図13に示すように、ローラ軸端14付近に設けている各面取り部15,15のそれぞれの奥面15a,15a間の厚さM(通常、M=14mm)に対して、ローラスタンド2の凹溝21Aの溝幅Nを僅かに大きくして(例えば、N=14.5〜15mm)、各ローラ軸端14の面取り形成部15Aを各凹溝21Aに対して上から嵌合させたり上方に取り外したりできるようにしている。
【0013】
ローラスタンド2の凹溝21A内にローラ軸端14の面取り形成部15Aを嵌合させた状態では、図12に示すように、凹溝21Aの左右側面22,22と各面取り部15,15の各奥面15a,15aとの間に若干の隙間(両側合計で0.5〜1mmの隙間)ができている。又、ローラ軸端14は、面取り形成部15Aの下面15bが凹溝21Aの底面23に接触することで支持されているが、その両者(面取り形成部15Aの下面15bと凹溝21Aの底面23)の接触部分は、図12に示すように緩やかな円弧状で且つローラ軸端14の下面側の比較的小さい高さ範囲H(H=約3mm程度の高さ範囲)である。
【0014】
他方、コンベアローラ1のローラ体10は、図11に示すように、ローラ筒12がローラ軸11に対して軸受(ボールベアリング)13を介して回転自在となっているが、軸受13は軸受ホルダー13aに保持させた状態で該軸受ホルダー13aの外周縁をローラ筒12の内周面内に圧入させた後、該軸受ホルダー13aの外周縁をローラ筒12の内周面に溶接することで組付けられている。この場合、ローラ軸11の軸芯とローラ筒12の軸芯とが完全に同芯であることが好ましいが、ローラ筒12の真円度や各種構成部材の寸法誤差及び取付精度等により、ローラ軸11の軸芯とローラ筒12の軸芯とが僅かではあるがずれることがある。そして、ーラ軸11の軸芯とローラ筒12の軸芯とがずれていると、ローラ軸11(非回転)に対してローラ筒12が径方向に振れながら回転する(偏心回転する)ようになる。尚、ローラ軸11に対してローラ筒12が偏心回転する原因としては、上記のようにローラ軸11の軸芯とローラ筒12の軸芯との偏心のほかに、搬送量の変動やローラ筒12の外面への付着物やローラ筒12の不均一な減肉等が挙げられる。
【0015】
ところで、この種のベルトコンベアでは、ローラ筒12の回転数が一般に毎分100〜800回転程度の比較的高速で運転されることが多いが、このようにローラ筒12が高速回転するものでは、上記のようにローラ軸11の軸芯とローラ筒12の軸芯とのずれ等に起因してローラ筒12が偏心回転するのに連れてローラ軸11が振動すると、ローラ軸端14が凹溝21Aの内面に対して衝突を繰り返すようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2016−130169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、図10図13に示す従来例のコンベアローラのローラ軸支持構造では、上記のように、ローラ軸端14の面取り形成部15Aをローラスタンド2の凹溝21A内に落とし込んでいるだけなので、凹溝21Aによるローラ軸端14の実質的な保持部分は、面取り形成部15Aの下面15bと凹溝21Aの底面23との接触部分(図12の高さ範囲Hでの緩やかな円弧状の接触面)だけであり、凹溝21Aの左右側面22,22は単に左右の面取り部15,15の奥面15a,15aを近接状態でガードしているだけである。このように、凹溝21Aのみによるローラ軸端14の保持状態では、凹溝21Aに対してローラ軸11の着脱容易性及び回転方向への阻止力はそれぞれ実現できるものの、ローラ軸端14に対する実質的な固定力(制振力)は小さいものとなる。
【0018】
そして、運転時に上記した何らかの原因で(例えばローラ軸11の軸芯とローラ筒12の軸芯とのずれに起因して)、ローラ軸11に対してローラ筒12が径方向に振れながら回転(偏心回転)すると、そのローラ筒12の偏心回転に連れてローラ軸11を振動させる作用が働くが、上記従来例のコンベアローラのローラ軸支持構造のように、凹溝21Aによるローラ軸端14の固定力(制振力)が小さいと、ローラ軸端14(面取り形成部15A)が凹溝21Aの内面(左右の側面22,22)に対して衝突を繰り返すことになる。
【0019】
このように、図10図13に示す従来例のコンベアローラのローラ軸支持構造では、上記のようにローラ筒12がローラ軸11に対して偏心回転すると、ローラ軸端14に対する凹溝21A部分での固定力(制振力)が小さいことで、ローラ軸端14(面取り形成部15A)が凹溝21Aの内面に対して衝突を繰り返すので、その衝突音による騒音が発生して作業環境が悪化するとともに、ローラ軸端14が凹溝21A部分に繰り返して衝突することで該ローラ軸端14や凹溝21A部分の損耗度が高くなる(耐用期間が短くなる)という問題があった。
【0020】
そこで、本願発明は、ローラ体のローラ軸端をローラスタンドに対して容易に着脱でき且つローラ軸を回転不能状態で支持した構成を確保しつつ、ローラ軸端に対するローラスタンド側での固定力(制振力)を大きくして、運転時にローラ筒が偏心回転してもローラ軸がローラスタンドに対して振動しにくくなるようにしたコンベアローラのローラ軸支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、コンベアローラのローラ軸支持構造を対象としているが、以下の説明では、本願各発明の「コンベアローラのローラ軸支持構造」を簡略化して単に「ローラ軸支持構造」と表現することがある。
【0022】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明のローラ軸支持構造を適用するコンベアローラは、ローラ軸に軸受を介してローラ筒を回転自在に取り付け、ローラ軸の軸端に外周対向部分を削った一対の面取り部と該面取り部のない円周部とをローラ軸の軸線方向にずらせた状態でそれぞれ設け、さらにローラ軸の軸端をローラスタンドに設けたローラ軸支持部で支持して構成したものである。
【0023】
そして、本願請求項1の発明のローラ軸支持構造は、上記コンベアローラにおいて、ローラスタンドのローラ軸支持部として、ローラ軸の軸端に設けた面取り部の形成部分を嵌合させてローラ軸を回転不能でかつ着脱自在に支持できる第1の嵌合支持部と、ローラ軸の軸端に設けた円周部を着脱自在に嵌合できかつ該円周部の下半部外面に当接してローラ軸の軸端に加わる荷重を下方から支持できる第2の嵌合支持部とを有し、第1の嵌合支持部と第2の嵌合支持部とはローラ軸の軸線方向にずらせた位置にそれぞれ設けているとともに、第2の嵌合支持部には、ローラ軸の軸端をローラ軸支持部に支持させた状態において上記円周部の下半部外面の左右2箇所にそれぞれ接触して該円周部の下半部外面を左右両側から挟持し得る2つの接触部を設けている、ことを特徴としている。
【0024】
尚、本願における以下の説明においても、「ローラ軸の軸端」を簡略して単に「ローラ軸端」ということがあり、又、ローラ軸の軸端付近の外周対向位置に設けた一対の面取り部の形成部分を単に「面取り形成部」ということがあり、さらに、ローラ軸に軸受を介してローラ筒を回転自在に取り付けたものを「ローラ体」ということがある。
【0025】
上記第1の嵌合支持部は、ローラ軸を回転不能に支持するだけのローラ軸回り止め専用のものであって、この第1の嵌合支持部にローラ軸端の面取り形成部を嵌合させただけでは、ローラ軸に対する下方からの支持力はない。
【0026】
上記第2の嵌合支持部は、ローラ軸端に加わる荷重を下方から支持する荷重支持専用のものであって、この第2の嵌合支持部にローラ軸端の円周部を嵌合させただけではローラ軸端に対する実質的な回転阻止力はない。
【0027】
ところで、第1の嵌合支持部に嵌合されるローラ軸端の面取り形成部と第2の嵌合支持部に嵌合されるローラ軸端の円周部とは、ローラ軸の軸線方向にずらせた状態で設けている関係で、第1の嵌合支持部と第2の嵌合支持部とはローラ軸の軸線方向にずらせた位置に設けられている。
【0028】
この請求項1の発明では、第2の嵌合支持部に設けた左右2箇所の接触部は、それぞれローラ軸端の円周部の外面に接するだけの単なる突起状のものであってもよい。
【0029】
そして、本願請求項1の発明のローラ軸支持構造では、上記第1の嵌合支持部によるローラ軸の回り止め機能と上記第2の嵌合支持部によるローラ体の荷重支持機能とをローラ軸の軸線方向にずらせた位置において個別に達成できるようにしたものである。
【0030】
本願請求項1の発明のローラ軸支持構造では、運転時にローラ軸の両軸端にローラ体自体の重量及び搬送物の重量による荷重が加わるが、その荷重はローラ軸端の円周部の下半部外面を第2の嵌合支持部の上記2つの接触部に圧接させる作用として働き、それによって該両接触部にローラ軸端の荷重による圧接力の反力が生じることになる。この両接触部に発生する反力は、ローラ軸端の円周部の下半部外面を左右両側から挟持する作用として働くものである。
【0031】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1のローラ軸支持構造において、上記第2の嵌合支持部の上記両接触部は、ローラ軸の軸端をローラ軸支持部に支持させた状態において上記円周部の下半部外面における左右外端寄り位置であってローラ軸の軸芯から該軸芯を通る軸径方向の水平線に対して下向き角度が5°〜15°の範囲の2箇所でそれぞれ接触させるようにしていることを特徴としている。
【0032】
ローラ軸端には、ローラ体自体の重量やコンベアベルト上を搬送される搬送物の重量等によって下向きの荷重が加わっているが、上記第2の嵌合支持部の両接触部がローラ軸端の円周部の下半部外面に接触する位置がそれぞれ左右外端に寄るほど、該各接触部によるローラ軸端に対する左右からの挟持力(位置保持力)が大きくなる(理由については後述の実施例での説明を参照)。
【0033】
そして、この請求項2の発明のように、ローラ軸の軸端をローラスタンドのローラ軸支持部に支持させた状態において第2の嵌合支持部の両接触部を円周部の下半部外面における左右外端寄り位置(上記ローラ軸の軸芯から該軸芯を通る軸径方向の水平線に対して下向き角度が5°〜15°の範囲)の2箇所でそれぞれ接触させるようにすると、両接触部によるローラ軸端の円周部に対する挟持力(位置保持力)を大きくすることができる。
【0034】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2のローラ軸支持構造において、上記第2の嵌合支持部の上記両接触部は、ローラ軸端の円周部の外面に対してそれぞれ接線状態で接触する直線状の傾斜面であることを特徴としている。
【0035】
上記両接触部となる両傾斜面は、間隔が下方に向けて漸減するように相互に内向きに近接する側に傾斜(クサビ形傾斜)させているが、この両傾斜面はそれぞれ鉛直面に対して比較的小角度(例えば角度5°〜15°)の範囲でクサビ形に傾斜させることが好ましい(理由については、後述の実施例の項で説明する)。
【0036】
[本願請求項4の発明]
本願請求項4の発明は、上記請求項1から3のいずれか1項に記載のローラ軸支持構造において、上記第1の嵌合支持部としてローラスタンドに設けた面取り部の形成部分を回転不能状態で嵌合させ得る凹溝を採用し、上記第2の嵌合支持部としてローラ軸端の上記円周部を上方から嵌合できかつ該円周部を下方から支持できる空間部を有した軸端受部材を採用し、該軸端受部材をローラスタンドにおける第1の嵌合支持部となる凹溝の形成部分の壁面に、上記空間部の幅中心線が上記凹溝の幅中心線とローラ軸の軸線方向に合致する状態で取り付けていることを特徴としている。
【0037】
ところで、本願請求項4における第1の嵌合支持部となる凹溝は、ローラスタンドに設けた既存のもの(図10図13に示す従来例では符号21Aの凹溝)をそのまま採用できるが、本願請求項4で使用する凹溝(実施例では符号21)と従来例の凹溝(符号21A)とは機能が異なる。つまり、図10図13に示す従来例の凹溝21Aは、ローラ軸端の面取り形成部を凹溝21A内に落とし込んだときに、ローラ軸の回り止め機能とローラ軸端の荷重支持機能の両方を有するものであるが、本願請求項4で使用する凹溝(符号21)は、ローラ軸の回り止め機能だけを有しローラ軸端の荷重支持機能は有しないものである(詳細は実施例の項で説明する)。
【0038】
他方、第2の嵌合支持部となる上記軸端受部材は、ローラスタンドとは別部材で形成したもので、ローラ軸端の円周部を上方から嵌合できかつ該円周部を下方から支持できる空間部を有したものである。
【0039】
そして、この請求項4の発明では、軸端受部材をローラスタンドの既存の凹溝形成部分に取り付けることで、ローラスタンドに第1の嵌合支持部と第2の嵌合支持部とを設けることができる。
【発明の効果】
【0040】
[本願請求項の発明の効果]
本願請求項1の発明のローラ軸支持構造では、ローラスタンドのローラ軸支持部として、ローラ軸を回転不能に支持するローラ軸回り止め用の第1の嵌合支持部とローラ軸端に加わる荷重を下方から支持する荷重支持用の第2の嵌合支持部とを有し、さらに第1の嵌合支持部と第2の嵌合支持部とをローラ軸の軸線方向にずれた位置に設けているので、上記ローラ軸回り止め機能と上記荷重支持機能とを、第1の嵌合支持部と第2の嵌合支持部とで分担させてそれぞれ確実に達成できるという効果がある。
【0041】
又、この請求項1の発明では、第2の嵌合支持部にローラ軸端の円周部の下半部外面を左右両側から挟持し得る2つの接触部を設けているが、この2つの接触部は、ローラ軸端をローラスタンドのローラ軸支持部に支持させた状態において上記円周部の下半部外面を左右両側から挟持するので、ローラ軸端を左右から位置保持する機能を発生させ得るものである。このことは、ローラ体のローラ筒がローラ軸に対して偏心回転しても、ローラ軸がローラ筒の偏心回転に連れて振動するのを抑制できることを意味するものである。
【0042】
従って、本願請求項1の発明のローラ軸支持構造では、上記のようにローラ軸の振動を抑制できることで、運転中にローラ軸端が振動することに起因する騒音(ローラ軸端とローラスタンドのローラ軸支持部との衝突音)を抑制できるとともに、ローラ軸端がローラ軸支持部に強く衝突しないので、該ローラ軸端やローラ軸支持部が損傷しにくくなる(耐用期間が長くなる)という効果がある。
【0043】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、上記請求項1のローラ軸支持構造において、第2の嵌合支持部の両接触部を、ローラ軸の軸端をローラ軸支持部に支持させた状態においてローラ軸端の円周部の下半部外面における左右外端寄り位置であってローラ軸の軸芯から該軸芯を通る軸径方向の水平線に対して下向き角度が5°〜15°の範囲の2箇所でそれぞれ接触させるようにしているが、このように上記両接触部が円周部の下半部外面に対して接触する位置がそれぞれ左右外端に寄るほど、該各接触部によるローラ軸端に対する左右からの挟持力(位置保持力)が大きくなる。
【0044】
従って、この請求項2の発明のローラ軸支持構造では、上記両接触部によるローラ軸端の円周部に対する挟持力(位置保持力)を一層大きくすることができるので、運転中にローラ軸端が振動するのを一層抑制できるという効果がある。
【0045】
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2のローラ軸支持構造において、第2の嵌合支持部の上記両接触部を、ローラ軸端の円周部の外面に対してそれぞれ接線状態で接触する直線状の傾斜面としている。
【0046】
この請求項3の発明のように、第2の嵌合支持部の両接触部をそれぞれ直線状の傾斜面とすると、上記請求項1〜2の効果に加えて、各接触部の成形加工が簡単であり、かつローラ軸端に加わる荷重やローラ筒の偏心回転に起因するローラ軸端の振動作用等によって該接触部が損耗しても(例えば凹んでも)、ローラ軸端に対する挟持力(位置保持力)は低下することなく良好に維持できるという効果がある。
【0047】
[本願請求項4の発明の効果]
本願請求項4の発明は、上記請求項1から3のいずれか1項に記載のローラ軸支持構造において、ローラ軸の回り止め機能を担当する第1の嵌合支持部としてローラスタンドに設けた既存の凹溝を採用し、ローラ軸端に加わる荷重支持機能を担当する第2の嵌合支持部として別部材で形成した軸端受部材を採用し、該軸端受部材をローラスタンドにおける凹溝(第1の嵌合支持部)の形成部分に取り付けたものである。
【0048】
この請求項4の発明のローラ軸支持構造では、第2の嵌合支持部となる軸端受部材を別途製作し、その軸端受部材をローラスタンドの凹溝形成部分に取り付けることで、上記請求項1〜3の効果に加えて、既存のコンベアローラにもローラ軸の振動を抑制する機能を付与できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本願実施例のローラ軸支持構造を備えたコンベアローラの正面図である。
図2図1のII部分の拡大縦断面図である。
図3図2のIII−III矢視図である。
図4図3のIV部分の拡大図である。
図5図2のV−V矢視拡大断面図である。
図6図2のコンベアローラにおけるローラ体とローラスタンドを分離した状態の部分斜視図である。
図7図6の状態からローラ体をローラスタンドに組付けた状態の斜視図である。
図8図1のベルトコンベアにおけるリターン側コンベアローラ部分の拡大図である。
図9図8のIX−IX矢視拡大図である。
図10】従来のコンベアローラの正面図である。
図11図10のXI部分の拡大縦断面図である。
図12図11のXII−XII矢視拡大図である。
図13図11のコンベアローラにおけるローラ体とローラスタンドを分離した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[実施例]
以下、添付の図1図9を参照して本願実施例のコンベアローラのローラ軸支持構造を説明する。尚、以下の実施例の説明においても、本願の「コンベアローラのローラ軸支持構造」を単に「ローラ軸支持構造」という。
【0051】
本願実施例で対象としているコンベアローラ1は、図1に示すように、主としてベルトコンベアのベルト走行用に使用されるものである。図1に示すベルトコンベアは、上側に位置するキャリヤ側コンベアローラ1と下側に位置するリターン側コンベアローラ1’とにエンドレスなコンベアベルト9を巻回し、各コンベアローラの1つを駆動することにより、エンドレスに巻回したコンベアベルト9を循環走行させ得るようにしたものである。
【0052】
ところで、本願実施例(図1図9)のコンベアローラ1において、上記図10図13に示す従来例(一般例)のコンベアローラ1と同じ符号を付している部材(又は部分)は同従来例のものと同じものである。そして、本願実施例で使用するコンベアローラ1において、この実施例の項で説明していない部分については、上記「背景技術」の項での説明を援用する。
【0053】
本願実施例で使用するコンベアローラ1でも、ローラ軸11をローラスタンド2に対して回転不能に支持する一方で、ローラ体10を修理したり交換するのにローラ軸11をローラスタンド2に対して着脱自在に取り付けておく必要がある。
【0054】
そして、この実施例のローラ軸支持構造では、ローラ軸11をローラスタンド2に対して回転不能に支持する手段としてローラスタンド2に直接加工した凹溝(U形溝)21を採用し、ローラ軸11をローラスタンド2に対して着脱自在に支持する手段としてローラスタンド2に取り付けた軸端受部材3を採用している。
【0055】
図1図9の実施例では、ローラスタンド2に直接加工した上記凹溝21が特許請求の範囲中の第1の嵌合支持部に相当するものであり、ローラスタンド2に取り付けた上記軸端受部材3が特許請求の範囲中の第2の嵌合支持部に相当するものである。そして、この実施例の説明では、特許請求の範囲中の第1の嵌合支持部を凹溝21といい、特許請求の範囲中の第2の嵌合支持部を軸端受部材3という。
【0056】
この実施例のコンベアローラ1にも、図2図7に示すようにローラ軸11の軸端14の外周対向位置に一対の面取り部(削肉部)15,15が形成されている一方、ローラスタンド2の上部にローラ軸回り止め用の凹溝21が形成されている。
【0057】
このコンベアローラ1は、図2図5及び図7に示すように、ローラ軸端14の面取り形成部15Aをローラスタンド2の凹溝21内に落とし込むことで、ローラ軸11をローラスタンド2に対して回転不能に支持している一方、ローラ軸端14の面取り形成部15Aをローラスタンド2の凹溝21に対して上から落とし込んだり上方に取り外したりできるようにしている。
【0058】
この実施例で使用されるコンベアローラ1においても、ローラ軸端14における面取り形成部15Aより外側部分は面取り部のない円周部16となっている。従って、面取り形成部15Aと円周部16とはローラ軸11の軸線方向にずれた位置にある。
【0059】
ところで、図1図9に示す本願実施例で採用しているローラスタンド2の凹溝21は、図10図13に示す従来例で採用しているローラスタンド2の凹溝21Aと形状及び大きさの面で同じものを使用しているが、機能の面では異なるものである。
【0060】
即ち、図10図13に示す従来例では、ローラ軸端14の面取り形成部15Aを凹溝21A内に落とし込んだときに、該面取り形成部15Aが凹溝21Aの左右側面22,22でガードされてローラ軸11が回転不能に支持されていると同時に、面取り形成部15Aの下面15bが凹溝21Aの底部23に接触してローラ軸端14に加わる荷重を凹溝21Aの底部23で支持するようになっているが、図1図9に示す本願実施例では、後述するようにローラスタンド2の凹溝21はローラ軸11の回り止め機能のみでローラ軸端14に加わる荷重は支持していない(ローラ軸端14に加わる荷重は後述する軸端受部材3で支持している)。
【0061】
ローラ軸11に対してローラ筒12を円滑に回転させるには、ローラ軸11の軸芯とローラ筒12の軸芯とが完全に同芯であることが好ましいが、ローラ筒12の真円度や各種構成部材の寸法誤差及び取付精度等により、ローラ軸11の軸芯とローラ筒12の軸芯とが僅かではあるがずれることがある。そして、ローラ軸11の軸芯とローラ筒12の軸芯とがずれていると、ローラ軸11(非回転)に対してローラ筒12の外面が径方向に振れながら回転する(偏心回転する)、という背景がある。
【0062】
他方、この実施例のコンベアローラ1では、面取り形成部15Aの厚さM(図3図5)は14mm、ローラスタンド2の凹溝21の溝幅Nは14.5〜15mmに設定している。そして、ローラスタンド2の凹溝21内にローラ軸端14の面取り形成部15Aを嵌合させた状態では、図4及び図5に拡大図示するように、凹溝21の左右側面22,22と各面取り部15,15の各奥面15a,15aとの間に若干の隙間(両側合計で0.5〜1mmの隙間)ができるので、運転時にローラ筒12が偏心回転すると、そのままでは(従来例のものでは)ローラ筒12の偏心回転に連れてローラ軸11も振動して、ローラ軸端14の面取り形成部15A(厚さM)が凹溝21の溝幅N内で振動する(衝突音が発生する)。
【0063】
そこで、本願実施例のローラ軸支持構造では、図3図7に示すように、ローラスタンド2における凹溝21の形成部分に、ローラ軸端14付近における面取り部15のない円周部16を上下方向に着脱自在に嵌合させ得るとともに、該円周部16を下方から支持できる軸端受部材3を取り付けている。
【0064】
この軸端受部材3には、ローラ軸11の軸線方向から見て上方が開放するコ型枠体30が採用されている。このコ型枠体30は、左右の両側辺部32,32の下端を底辺部33で連結したものである。
【0065】
このコ型枠体30の両側辺部32,32間には、ローラ軸端14の円周部16(面取り部15がない部分)を上下に出し入れし得る空間部31を有している。この空間部31を形成する両側辺部32,32の対向面は、上半部がそれぞれ鉛直面34,34でローラ軸端14の円周部16の外径より僅かに広く設定されている一方で、下半部がそれぞれ内向き(クサビ形)に傾斜する直線状の傾斜面35,35となっている。
【0066】
上記空間部31における上半部(鉛直面34形成部)には、ローラ軸端14の円周部16を上下に出し入れし得るようになっている。
【0067】
他方、空間部31における下半部の両傾斜面35,35はそれぞれ内向き(クサビ形)に傾斜していることで、両傾斜面35,35間の間隔が途中でローラ軸端14の円周部16の外径より狭くなっており、ローラ軸端14の円周部16を空間部31内に落とし込んだときに両傾斜面35,35で該円周部16の下半部外面の2箇所をそれぞれ支持し得るようになっている。このとき各傾斜面35,35にローラ軸端14の円周部16の下半部外面(左右2箇所)が接触する各位置(符号Q,Q部分)が特許請求の範囲中の接触部となり、該各接触部がローラ軸端14の円周部16を受ける支持位置Q,Q(図3図5参照)となる。尚、以下の説明では、ローラ軸端14の円周部16を受ける支持位置Qを単に円周部支持位置Qということがある。
【0068】
そして、この軸端受部材3は、図2図7に示すように、ローラスタンド2における凹溝21形成部分の壁面(図示例ではローラ体10から遠い側の壁面)に、空間部31の幅中心線が凹溝21の幅中心線とローラ軸11の軸線方向に合致する状態で、適宜の固定手段(図示例では溶接)により固定している。このとき、図3図5に示すように、ローラ軸端14の円周部16の下端16aがローラスタンド2の凹溝21の底面23より上部に位置する状態で、軸端受部材3をローラスタンド2に固定(溶接)する。尚、この軸端受部材3は、ローラ軸11の両軸端14,14をそれぞれ支持する各側のローラスタンド2,2に取り付けられている。
【0069】
このように、軸端受部材3をローラスタンド2における凹溝21形成部分の壁面に取り付けていると、第1の嵌合支持部となる凹溝21と第2の嵌合支持部となる軸端受部材3とがローラ軸11の軸線方向にずれた位置に設けられることになる。
【0070】
ところで、この実施例では、上記軸端受部材3をローラスタンド2におけるローラ体10から遠い側の壁面に固定しているが、ローラスタンド2とローラ筒12の端面との間に軸端受部材3を設置するスペースが確保されているときには、上記軸端受部材3をローラスタンド2におけるローラ体10側の壁面に固定してもよい。そのときには、ローラ軸端14における面取り形成部15Aとローラ筒12の端面との間にある円周部16を軸端受部材3の空間部31に嵌合させるようにする。
【0071】
軸端受部材3付きのローラスタンド2,2にローラ体10を装着した状態では、ローラ軸端14の面取り形成部15Aがローラスタンド2の凹溝21内に嵌合されている関係で、ローラ軸11はローラスタンド2,2に対して回転不能となっているが、両ローラ軸端14,14はローラスタンド2,2の凹溝21及び軸端受部材3に対して上方に取り外し可能となっているので、ローラ体10の修理又は交換時には該ローラ体10を容易に取り外すことができる。
【0072】
ところで、ローラ軸端14の円周部16の外面を支持する軸端受部材3の各傾斜面35,35は、上記円周部16の外面に対してそれぞれ接線状態で接触するが、該各傾斜面35.35が上記円周部16の下半部外面に対して接触する位置(上記円周部支持位置Q,Q)がそれぞれ左右外端に寄るほど、該各傾斜面35,35によるローラ軸端14に対する左右からの挟持力(位置保持力)が大きくなる。即ち、ローラ軸端14には、ローラ体10自体の重量やコンベアベルト9上を搬送される搬送物の重量等によって下向きの荷重が加わっているので、軸端受部材3における上記各円周部支持位置Q,Qに各傾斜面35,35をそれぞれ外側に押し広げるような付勢力が働くが、この付勢力に対する反力(位置保持力となる)は各傾斜面35,35が鉛直面に近づくほど強くなる(詳細な具体例は後述する)。
【0073】
そして、この実施例では、図3図5に示すように、軸端受部材3の各傾斜面35,35がローラ軸端14の円周部16の外面に接する各部分(各円周部支持位置Q,Q)を、ローラ軸11の軸芯Pから該軸芯Pを通る水平線Lに対してそれぞれ下向きに所定小角度a(図示例では、a=角度10°)の位置に設定しているが、このようにすると、左右の各傾斜面35,35が鉛直面に対してそれぞれ所定小角度(aと同じ角度10°)をもって下向き近接側(いわゆるクサビ形)に傾斜するようになる。
【0074】
このように、軸端受部材3の各傾斜面35,35を鉛直面に対してそれぞれ所定小角度aをもって下向き近接側に傾斜(クサビ形傾斜)させていると、両傾斜面35,35でローラ軸端14の下半部外面の左右2箇所を支持したときに、ローラ軸端14に加わる下向きの荷重に対して傾斜面接触部(上記各円周部支持位置Q,Q)での挟持力(位置保持力)の度合いを大きくできる。
【0075】
ところで、図4及び図5に示すように、上記各円周部支持位置Q,Qをローラ軸11の軸芯Pから該軸芯Pを通る軸径方向の水平線Lに対して下向き角度aが5°〜15°程度の小角度の範囲の位置になるように設定することが好ましい。このように、各円周部支持位置Q,Qをローラ軸11の軸芯Pから該軸芯Pを通る軸径方向の水平線Lに対して下向き角度aが5°〜15°の小角度の範囲の位置になるように設定すると、上記傾斜面35の下向き傾斜角度が鉛直面に対して5°〜15°の小角度の範囲になる。
【0076】
そして、因みに、上記傾斜面35の下向き傾斜角度が鉛直面に対して5°(sin5°=0.087)の場合は上記円周部支持位置Qにおいてローラ軸端14に加わる荷重の約5.7倍(1/2×0.087)の位置保持力が得られ、上記傾斜面35の傾斜角度が10°(sin10°=0.173)の場合は上記円周部支持位置Qにおいてローラ軸端14に加わる荷重の約2.8倍(1/2×0.173)の位置保持力が得られ、上記傾斜面35の傾斜角度が15°(sin15°=0.258)の場合は上記円周部支持位置Qにおいてローラ軸端14に加わる荷重の約1.9倍(1/2×0.258)の位置保持力が得られる。
【0077】
このように、上記各円周部支持位置Q,Qにおいてローラ軸端14に加わる荷重より大きい挟持力(位置保持力)が得られると、運転中にローラ軸11に対してローラ筒12が振動しても、そのローラ筒12の偏心回転に連れてローラ軸11が振動するのを抑制でき、それによって各ローラ軸端14がローラスタンド2の凹溝21内で振動しにくくなる。
【0078】
従って、本願実施例のローラ軸支持構造では、上記のようにローラ軸11の振動を抑制できることで、運転中にローラ軸端14が振動することに起因する騒音(ローラ軸端14とローラスタンド2の凹溝21との衝突音)を抑制できるとともに、ローラ軸端14がローラスタンドの凹溝21部分に強く衝突しないので、該ローラ軸端14や凹溝21部分が損耗しにくくなる(耐用期間が長くなる)という効果がある。
【0079】
この実施例では、図8及び図9に拡大図示するように、リターン側コンベアローラ1’にも上記軸端受部材3によるローラ軸11の振動抑制構造を採用している。
【0080】
リターン側コンベアローラ1’のローラ体10は、そのローラ軸11の両軸端14,14をそれぞれ左右の支持部材27,27で上方から支持しているが、このリターン側コンベアローラ1’では、各支持部材27,27をコンベアローラの基台から取り外せば、各ローラ軸端14,14から各支持部材27,27を取り外すことができるようになっている。尚、リターン側コンベアローラ1’においては、各支持部材27,27がキャリア側コンベアローラ1におけるローラスタンド2,2に相当するものである。
【0081】
各側の支持部材27,27には、図8及び図9に示すように、ローラ軸端14付近に設けた面取り形成部15Aを回転不能に保持する凹溝21が形成されていて、該凹溝21内に面取り形成部15Aを嵌合させることでローラ軸11を回転不能に支持している。
【0082】
又、各支持部材27,27には、凹溝21の形成部分の壁面(外壁面)に軸端受部材3を取り付けているが、この軸端受部材3は、上記キャリア側コンベアローラ1に使用しているものと同じものを採用している。尚、軸端受部材3の詳細な構成、軸端受部材3とローラ軸端14との関係等についての説明は、上記キャリア側コンベアローラ1の場合とほぼ同じであるので、該キャリア側コンベアローラ1での説明を援用する。
【0083】
このリターン側コンベアローラ1’においても、ローラ体10が支持部材27,27に対して着脱自在であり、かつローラ軸11が支持部材27,27に対して回転不能となっている。又、ローラ軸端14は、その円周部16の下半部外端寄りの2位置が軸端受部材3の両傾斜面35,35(接触部である円周部支持位置Q,Q)で支持されていて、上記キャリア側コンベアローラ1の場合と同様に、運転時にローラ筒12が偏心回転してもそのローラ筒12の偏心回転に連れてローラ軸11が振動するのを抑制できる(各ローラ軸端14がローラスタンド2の凹溝21内で振動しにくくなる)。
【0084】
尚、図1図9の実施例では、特許請求の範囲中の接触部として軸端受部材3の空間部31の左右傾斜面35,35を利用しているが、他の実施例では、該接触部として、ローラ軸端14の円周部16の下半部外面(左右2箇所)に接触してローラ軸端14を下方から支持し得るものであれば単なる突起状のものであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1はコンベアローラ、2はローラスタンド、3は軸端受部材(第2の嵌合支持部の形成部材)、10はローラ体、11はローラ軸、12はローラ筒、13は軸受、14は軸端(ローラ軸端)、15はローラ軸端の面取り部、15aは面取り部の奥面、15Aは面取り形成部、16はローラ軸端の円周部、21は凹溝(第1の嵌合支持部)、22は凹溝の側縁、30はコ型枠体、31は空間部、32は側辺部、35は傾斜面、Pはローラ軸の軸芯、Lは軸芯Pを通る水平線、Qは円周部支持位置(接触部)である。
【要約】
【課題】従来では、コンベアローラのローラ軸端は、その面取り形成部を単にローラスタンドの凹溝に落とし込むだけで支持されているので、運転時にローラ筒が偏心回転するとそれに連れてローラ軸も振動し易くなる。
【解決手段】ローラスタンド2に設けたローラ軸支持部として、ローラ軸11を回転不能に支持できる第1の嵌合支持部(符号21が相当)と、ローラ軸の円周部16の下半部外面に当接してローラ軸の軸端14に加わる荷重を下方から支持できる第2の嵌合支持部(符号3が相当)とを有し、該第2の嵌合支持部3に、ローラ軸の軸端14をローラ軸支持部に支持させた状態において上記円周部16の下半部外面の左右2箇所にそれぞれ接触して該円周部16の下半部外面を左右両側から挟持し得る2つの接触部Q,Qを設けていることで、該両接触部Q,Qによりローラ軸端14の円周部16の下半部外面を左右2箇所から挟持できるようにしている。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13