(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6667044
(24)【登録日】2020年2月26日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】広告枠および広告枠の製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 15/00 20060101AFI20200309BHJP
G09F 7/00 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
G09F15/00 Z
G09F7/00 E
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-200932(P2019-200932)
(22)【出願日】2019年11月5日
【審査請求日】2019年11月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519395318
【氏名又は名称】青木 信介
(73)【特許権者】
【識別番号】592159988
【氏名又は名称】ユウキ産商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】青木 信介
【審査官】
藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3203168(JP,U)
【文献】
特開2012−45261(JP,A)
【文献】
特開2003−339497(JP,A)
【文献】
特開2002−291593(JP,A)
【文献】
特開平9−264096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 7/00− 7/22
G09F 15/00−15/02
A47G 1/06− 1/10
A47G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合されることにより枠状に形成された複数の枠部材を備え、
前記枠部材の各々は、前枠部と、後枠部と、前記前枠部および前記後枠部の外周側を接続する接続部と、を含み、
前記複数の枠部材が互いに接合される部分には、前記後枠部に設けられた開口と、前記開口を介して前記前枠部同士が前記後枠部側から溶接または固相接合により接合された第1接合部と、が設けられている、広告枠。
【請求項2】
前記後枠部の前記開口は、前後方向に見て、前記前枠部に覆われるように設けられている、請求項1に記載の広告枠。
【請求項3】
前記後枠部は、前後方向に見て、内側に向かう方向の大きさが前記前枠部よりも大きく形成されており、
前記複数の枠部材が互いに接合される部分には、前記後枠部の前記開口に隣接する位置において前記後枠部同士が後ろ側から溶接または固相接合により接合された第2接合部が設けられている、請求項1または2に記載の広告枠。
【請求項4】
前記枠部材の各々は、前後方向に見て、前記枠部材が延びる方向と傾斜する傾斜辺を含み、
前記複数の枠部材は、前記傾斜辺同士が互いに接合されており、
前記第1接合部および前記第2接合部は、前記傾斜辺に沿って直線状に配列されている、請求項3に記載の広告枠。
【請求項5】
前記第2接合部は、前記傾斜辺に沿った方向において、前記第1接合部よりも大きい長さを有している、請求項4に記載の広告枠。
【請求項6】
前記後枠部の前記開口は、前後方向に見て、前記第2接合部の面積よりも大きい開口面積を有している、請求項3〜5のいずれか1項に記載の広告枠。
【請求項7】
前記後枠部の前記開口は、互いに接続される前記枠部材の一方には、枠形状に沿った方向において第1長さを有するように形成され、互いに接続される前記枠部材の他方には、枠形状に沿った方向において前記第1長さよりも小さい第2長さを有するように形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の広告枠。
【請求項8】
前記後枠部の前記開口は、互いに接続される前記枠部材の一方には、枠形状に沿った方向における長さが第1長さの長孔形状を有するように設けられ、互いに接続される前記枠部材の他方には、枠形状に沿った方向における長さが第2長さの略三角形状を有するように設けられている、請求項7に記載の広告枠。
【請求項9】
前記複数の枠部材の少なくとも1つには、広告媒体を挿入するための挿入口が前記接続部に設けられており、
前記第1接合部は、前記広告媒体を挿入する方向に見て、前記挿入口の延びる方向における前記挿入口の範囲内に配置されているとともに、前記前枠部から前記後枠部側方向に突出しないように形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の広告枠。
【請求項10】
前記複数の枠部材は、アルミニウム材により形成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の広告枠。
【請求項11】
前枠部と、後枠部と、前記前枠部および前記後枠部の外周側を接続する接続部と、を含む枠部材を複数形成する工程と、
前記複数の枠部材を、前記後枠部に設けられた開口を介して前記前枠部同士を前記後枠部側から溶接または固相接合により互いに接合する工程と、を備える、広告枠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広告枠および広告枠の製造方法に関し、特に、複数の枠部材が互いに接合されている広告枠およびそのような広告枠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の枠部材が互いに接合されている広告枠が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数の枠部材を備え、複数の枠部材が互いに接合されることにより枠状に形成された額縁(広告枠)が開示されている。
【0004】
また、従来では、複数の枠部材を隙間なく接合するためにロウ付けにより複数の枠部材が接合された広告枠が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−061800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の広告枠では、複数の枠部材をロウ付けにより接合するため、ロウ付けを行うための高い技術(熟練者によるロウ付け作業)を要するとともに、高い技術が必要な分、接合不良が生じやすく歩留まりが低下するという不都合がある。また、ロウ付けは、熟練者によるロウ付け作業が必要であるため、自動化を行いにくいという不都合がある。その結果、複数の枠部材を容易に接合させるのが困難であるとともに、歩留まりを向上させて効率よく広告枠を製造することが困難であり、接合工程の自動化も図りにくいという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、複数の枠部材を容易に接合させることにより、歩留まりを向上させて効率よく広告枠を製造することが可能で、かつ、自動化も図りやすい広告枠および広告枠の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による広告枠は、互いに接合されることにより枠状に形成された複数の枠部材を備え、枠部材の各々は、前枠部と、後枠部と、前枠部および後枠部の外周側を接続する接続部と、を含み、複数の枠部材が互いに接合される部分には、後枠部に設けられた開口と、開口を介して前枠部同士が後枠部側から溶接または固相接合により接合された第1接合部と、が設けられている。
【0009】
上記第1の局面による広告枠では、上記のように、開口を介して前枠部同士が後枠部側から溶接または固相接合により接合された第1接合部を設ける。これにより、ロウ付けに比べて高い技術を必要としない溶接または固相接合により複数の枠部材を互いに接合することができるので、複数の枠部材を容易に接合させることにより、歩留まりを向上させて効率よく広告枠を製造することができ、かつ、自動化も図りやすくすることができる。また、前枠部を後側から開口を介して溶接または固相接合により接合することができるので、前側から接合する場合と異なり、接合部に変色や凹凸が生じたとしても、広告枠の前面に変色や凹凸が生じるのを抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面による広告枠において、好ましくは、後枠部の開口は、前後方向に見て、前枠部に覆われるように設けられている。このように構成すれば、後枠部に設けられた開口を前方に露出しないように前枠部により覆うことができる。
【0011】
上記第1の局面による広告枠において、好ましくは、後枠部は、前後方向に見て、内側に向かう方向の大きさが前枠部よりも大きく形成されており、複数の枠部材が互いに接合される部分には、後枠部の開口に隣接する位置において後枠部同士が後ろ側から溶接または固相接合により接合された第2接合部が設けられている。このように構成すれば、後枠部も前枠部と同様に後側から溶接または固相接合により接合することができるので、同じ後方向から接合作業を行うことができる。これにより、接合作業を容易かつ効率よく行うことができるとともに、自動化も図りやすくすることができる。また、後枠部を前側から接合する場合と異なり、接合部に変色や凹凸が生じたとしても、広告枠の前面に変色や凹凸が生じるのを抑制することができる。
【0012】
上記複数の枠部材が互いに接合される部分に第2接合部が設けられている構成において、好ましくは、枠部材の各々は、前後方向に見て、枠部材が延びる方向と傾斜する傾斜辺を含み、複数の枠部材は、傾斜辺同士が互いに接合されており、第1接合部および第2接合部は、傾斜辺に沿って直線状に配列されている。このように構成すれば、傾斜辺に沿って直線状に配置された第1接合部および第2接合部の接合により、複数の枠部材を隙間なく確実に接続することができる。また、接合作業の作業効率を向上させることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、第2接合部は、傾斜辺に沿った方向において、第1接合部よりも大きい長さを有している。このように構成すれば、第1接合部よりも大きい幅を有する第2接合部により、前枠部よりも長い後枠部を確実に接合することができる。
【0014】
上記複数の枠部材が互いに接合される部分に第2接合部が設けられている構成において、好ましくは、後枠部の開口は、前後方向に見て、第2接合部の面積よりも大きい開口面積を有している。このように構成すれば、開口面積を比較的大きくすることができるので、前枠部を接合する第1接合部に対する作業を開口を介して容易に行うことができる。
【0015】
上記第1の局面による広告枠において、好ましくは、後枠部の開口は、互いに接続される枠部材の一方には、枠形状に沿った方向において第1長さを有するように形成され、互いに接続される枠部材の他方には、枠形状に沿った方向において第1長さよりも小さい第2長さを有するように形成されている。このように構成すれば、比較的大きい第1長さを有する開口の方向から接合作業のためのツール(たとえば、溶接を行うための溶接棒)を差し入れることができるので、接合作業を容易に行うことができる。
【0016】
この場合、好ましくは、後枠部の開口は、互いに接続される枠部材の一方には、枠形状に沿った方向における長さが第1長さの長孔形状を有するように設けられ、互いに接続される枠部材の他方には、枠形状に沿った方向における長さが第2長さの略三角形状を有するように設けられている。このように構成すれば、開口の大きさを過度に大きくすることなく、接合作業を容易に行うことができる。
【0017】
上記第1の局面による広告枠において、好ましくは、複数の枠部材の少なくとも1つには、広告媒体を挿入するための挿入口が接続部に設けられており、第1接合部は、広告媒体を挿入する方向に見て、挿入口の延びる方向における挿入口の範囲内に配置されているとともに、前枠部から後枠部側方向に突出しないように形成されている。このように構成すれば、挿入口から挿入された広告媒体が第1接合部に干渉するのを抑制することができるので、広告媒体を挿入口から容易に出し入れすることができる。
【0018】
上記第1の局面による広告枠において、好ましくは、複数の枠部材は、アルミニウム材により形成されている。このように構成すれば、接合部に変色や凹凸が生じやすいアルミニウム材により枠部材を形成したとしても、枠部材同士が後側から接合されるので、広告枠の前面に変色や凹凸が生じるのを抑制することができる。
【0019】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による広告枠の製造方法は、前枠部と、後枠部と、前枠部および後枠部の外周側を接続する接続部と、を含む枠部材を複数形成する工程と、複数の枠部材を、後枠部に設けられた開口を介して前枠部同士を後枠部側から溶接または固相接合により互いに接合する工程と、を備える。
【0020】
上記第2の局面による広告枠の製造方法では、上記のように、複数の枠部材を、後枠部に設けられた開口を介して前枠部同士を後枠部側から溶接または固相接合により互いに接合する工程を設ける。これにより、ロウ付けに比べて高い技術を必要としない溶接または固相接合により複数の枠部材を互いに接合することができるので、複数の枠部材を容易に接合させることにより、歩留まりを向上させて効率よく広告枠を製造することができ、かつ、自動化も図りやすくすることが可能な広告枠の製造方法を提供することができる。また、前枠部を後側から開口を介して溶接または固相接合により接合することができるので、前側から接合する場合と異なり、接合部に変色や凹凸が生じたとしても、広告枠の前面に変色や凹凸が生じるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、複数の枠部材を容易に接合させることにより、歩留まりを向上させて効率よく広告枠を製造することが可能で、かつ、自動化も図りやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による広告枠を前方から見た図である。
【
図2】本発明の一実施形態による広告枠を後方から見た図である。
【
図3】
図1のIII−III線に沿った断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による広告枠の第1接合部および第2接合部を示した図である。
【
図6】本発明の一実施形態による広告枠の開口および第1接合部を示した斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態による広告枠を上方から見た図である。
【
図8】本発明の一実施形態による広告枠の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(広告枠の構成)
図1〜
図7を参照して、本実施形態による広告枠100の構成について説明する。
【0025】
広告枠100は、電車、バス、飛行機、船舶などの移動体や、駅、商業施設などの公共の場所に設置されて用いられる。たとえば、広告枠100は、電車内の扉の側方に設置される。また、広告枠100には、広告が印刷された媒体(たとえば、紙)が挿入されるように構成されている。
図1に示すように、広告枠100は、複数の枠部材1、2、3および4を備えている。複数の枠部材1〜4は、互いに接合されることにより枠状に形成されている。
【0026】
具体的には、
図1および
図2に示すように、枠部材1は、上方(Z1方向)側に配置されている。枠部材2は、前方(Y1方向)から見て、左方(X1方向)側に配置されている。枠部材3は、前方(Y1方向)から見て、右方(X2方向)側に配置されている。枠部材4は、下方(Z2方向)側に配置されている。枠部材1および2は、左上側の角において互いに接合されている。枠部材1および3は、右上側の角において互いに接合されている。枠部材4および2は、左下側の角において互いに接合されている。枠部材4および3は、右下側の角において互いに接合されている。広告枠100は、水平方向(X方向)の長さが上下方向(Z方向)の長さよりも大きい横長形状に形成されている。また、広告枠100は、矩形の枠形状に形成されている。
【0027】
図1〜
図3に示すように、枠部材1〜4の各々は、前枠部11と、後枠部12と、前枠部11および後枠部12の外周側を接続する接続部13と、を含んでいる。また、枠部材1〜4の各々には、貫通孔14が設けられている。貫通孔14は、壁などに広告枠100を固定する際に、締結部材(たとえば、ネジ)が挿入される。枠部材1および4の各々には、2つの貫通孔14が設けられている。枠部材2および3の各々には、1つの貫通孔14が設けられている。
【0028】
枠部材1〜4は、アルミニウム材により形成されている。枠部材1〜4は、
図3のような断面形状を有するように、押出成形により形成されている。
【0029】
図3に示すように、枠部材2および3の前枠部11は、X方向において、長さL1だけ内側に延びるように形成されている。また、枠部材2および3の後枠部12は、X方向において、長さL2だけ内側に延びるように形成されている。また、枠部材1および4の前枠部11は、Z方向において、長さL1だけ内側に延びるように形成されている。また、枠部材1および4の後枠部12は、Z方向において、長さL2だけ内側に延びるように形成されている。なお、L1<L2である。つまり、後枠部12は、前後方向(Y方向)に見て、内側に向かう方向の大きさが前枠部11よりも大きく形成されている。
【0030】
図3に示すように、枠部材1〜4の後枠部12には、前側(Y1方向側)に突出する凸部12aが設けられている。また、凸部12aの略中央には、後側(Y2方向側)に凹む溝部12bが設けられている。
【0031】
図8に示すように、枠部材1〜4の各々は、前後方向(Y方向)に見て、枠部材1〜4が延びる方向と傾斜する傾斜辺16を含んでいる。傾斜辺16は、枠部材1〜4が延びる方向に対して45度(135度)傾斜するように形成されている。また、複数の枠部材1〜4は、傾斜辺16同士が互いに接合されている。つまり、複数の枠部材1〜4は、接合されることにより、90度の角を有するように接合される。
【0032】
ここで、本実施形態では、
図2および
図4に示すように、複数の枠部材1〜4が互いに接合される部分には、後枠部12に設けられた開口15と、開口15を介して前枠部11同士が後枠部12側から溶接または固相接合により接合された第1接合部21と、が設けられている。また、複数の枠部材1〜4が互いに接合される部分には、後枠部12の開口15に隣接する位置において後枠部12同士が後ろ側(Y2方向側)から溶接または固相接合により接合された第2接合部22が設けられている。第1接合部21および第2接合部22は、互いに同じ接合方法(溶接、固相接合など)により接合されている。また、溶接により接合する場合、アーク溶接(ティグ溶接、ミグ溶接、マグ溶接、炭酸ガスアーク溶接)、ガス溶接、抵抗溶接、レーザ溶接などの各種溶接により接合される。また、固相接合により接合する場合、摩擦撹拌接合などの各種固相接合により接合される。
【0033】
図4および
図5に示すように、後枠部12の開口15は、前後方向(Y方向)に見て、前枠部11に覆われるように設けられている。また、
図4に示すように、後枠部12の開口15は、前後方向(Y方向)に見て、第2接合部22の面積よりも大きい開口面積を有している。また、後枠部12の開口15は、互いに接続される枠部材の一方(枠部材2および3)に設けられた開口15aと、互いに接続される枠部材の他方(枠部材1および4)に設けられた開口15bと、を含んでいる。
図2および
図4に示すように、枠部材1および4には、X方向における両端に開口15bが設けられている。枠部材2および3には、Z方向における両端に開口15aが設けられている。後枠部12の開口15は、枠部材2および3には、枠形状に沿った方向(Z方向)において第1長さL3を有するように形成されている。また、後枠部12の開口15は、枠部材1および4には、枠形状に沿った方向(X方向)において第1長さL3よりも小さい第2長さL4を有するように形成されている。
【0034】
具体的には、
図4に示すように、後枠部12の開口15は、枠部材2および3には、枠形状に沿った方向(Z方向)における長さが第1長さL3の長孔形状を有するように設けられている。また、後枠部12の開口15は、枠部材1および4には、枠形状に沿った方向(X方向)における長さが第2長さL4の略三角形状を有するように設けられている。つまり、枠部材2および3に設けられた開口15aと、枠部材1および4に設けられた開口15bとは、互いに異なる形状を有している。また、開口15は、枠部材1〜4の傾斜辺16に対して、非対称である。
【0035】
第1接合部21および第2接合部22は、傾斜辺16に沿って直線状に配列されている。第1接合部21は、傾斜辺16に沿った方向において、長さL5の大きさを有する。また、第2接合部22は、傾斜辺16に沿った方向において、長さL6の大きさを有する。ただし、L5<L6である。つまり、第2接合部22は、傾斜辺16に沿った方向において、第1接合部21よりも大きい長さを有している。
【0036】
図6に示すように、後枠部12の開口15は、上方から溶接トーチ31が挿入され、大きく開けられた開口15aから溶接棒32が挿入される。そして、開口15を介して第1接合部21が形成される。溶接トーチ31は、開口15aの延びる方向(Z方向)に沿って斜めから開口15aに挿入される。
【0037】
図7に示すように、上方(Z1方向側)に設けれた枠部材1には、広告媒体を挿入するための挿入口13aが接続部13に設けられている。挿入口13aは、枠に沿った方向(X方向)において、長さL7の大きさを有する。第1接合部21は、広告媒体を挿入する方向(Z方向)に見て、挿入口13aの延びる方向(X方向)における挿入口13aの範囲内に配置されている。また、第2接合部22は、広告媒体を挿入する方向(Z方向)に見て、挿入口13aの延びる方向(X方向)における挿入口13aの範囲内に配置されている。第1接合部21は、前枠部11から後枠部12側方向に突出しないように形成されている。
【0038】
具体的には、接合前の枠部材1〜4は、
図8に示すように、前枠部11の後側(Y2方向側)に、凹部21aが設けられ、後枠部12の後側(Y2方向側)に、凹部22aが設けられている。そして、第1接合部21は、凹部21aから後側に突出しないように設けられる。また、第2接合部22は、凹部22aから後側に突出しないように設けられる。
【0039】
(広告枠の製造方法)
次に、
図8を参照して、本実施形態による広告枠100の製造方法について説明する。
【0040】
広告枠100の製造方法は、前枠部11と、後枠部12と、前枠部11および後枠部12の外周側を接続する接続部13と、を含む枠部材1〜4を複数形成する工程と、複数の枠部材1〜4を、後枠部12に設けられた開口15を介して前枠部11同士を後枠部12側から溶接または固相接合により互いに接合する工程と、を備える。
【0041】
具体的には、広告枠100の製造方法は、複数の枠部材1〜4を形成する工程と、複数の枠部材1〜4を組み合わせて位置決めする工程と、複数の枠部材1〜4の前枠部11同士および後枠部12同士を接合する工程と、後処理工程とを備える。
【0042】
複数の枠部材1〜4を形成する工程では、アルミニウム材を押出成形により
図3のような断面形状を有するような細長形状の部材を形成する。そして、形成した細長形状の部材を所定の長さで斜めに切断して、傾斜辺16を有する枠部材1〜4を形成する。そして、枠部材1〜4に対して、貫通孔14を空けるとともに、凹部21aおよび22aを形成する。また、枠部材1および4に対して開口15bを形成し、枠部材2および3に対して開口15aを形成する。
【0043】
複数の枠部材1〜4を組み合わせて位置決めする工程では、枠部材1〜4を所定の治具により固定する。
【0044】
複数の枠部材1〜4の前枠部11同士および後枠部12同士を接合する工程では、複数の枠部材1〜4を、後側(Y2方向側)から前枠部11同士を接合するように、溶接または固相接合により第1接合部21を形成する。また、複数の枠部材1〜4を、後側(Y2方向側)から後枠部12同士を接合するように、溶接または固相接合により第2接合部22を形成する。溶接により第1接合部21および第2接合部22を形成した場合、後方(Y2方向)に突出するビードを含む接合部21bおよび22bが形成される。
【0045】
後処理工程では、ビードを含む接合部21bおよび22bからビードを削り、第1接合部21および第2接合部22が、それぞれ、凹部21aおよび22aからはみ出さないように加工される。また、枠部材1〜4が接合された広告枠100の表面処理が行わる。以上のようにして、広告枠100が製造される。
【0046】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態では、上記のように、開口15を介して前枠部11同士が後枠部12側から溶接または固相接合により接合された第1接合部21を設ける。これにより、ロウ付けに比べて高い技術を必要としない溶接または固相接合により複数の枠部材1〜4を互いに接合することができるので、複数の枠部材1〜4を容易に接合させることにより、歩留まりを向上させて効率よく広告枠100を製造することができ、かつ、自動化も図りやすくすることができる。また、前枠部11を後側(Y2方向側)から開口15を介して溶接または固相接合により接合することができるので、前側(Y1方向側)から接合する場合と異なり、接合部に変色や凹凸が生じたとしても、広告枠100の前面に変色や凹凸が生じるのを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、後枠部12の開口15を、前後方向(Y方向)に見て、前枠部11に覆われるように設ける。これにより、後枠部12に設けられた開口15を前方に露出しないように前枠部11により覆うことができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、複数の枠部材1〜4が互いに接合される部分に、後枠部12の開口15に隣接する位置において後枠部12同士が後ろ側(Y2方向側)から溶接または固相接合により接合された第2接合部22を設ける。これにより、後枠部12も前枠部11と同様に後側から溶接または固相接合により接合することができるので、同じ後方向から接合作業を行うことができる。これにより、接合作業を容易かつ効率よく行うことができるとともに、自動化も図りやすくすることができる。また、後枠部12を前側(Y1方向側)から接合する場合と異なり、接合部に変色や凹凸が生じたとしても、広告枠の前面に変色や凹凸が生じるのを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、第1接合部21および第2接合部22を、傾斜辺16に沿って直線状に配列する。これにより、傾斜辺16に沿って直線状に配置された第1接合部21および第2接合部22の接合により、複数の枠部材1〜4を隙間なく確実に接続することができる。また、接合作業の作業効率を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、第2接合部22は、傾斜辺16に沿った方向において、第1接合部21よりも大きい長さを有している。これにより、第1接合部21よりも長い第2接合部22により、前枠部11よりも大きい幅を有する後枠部12を確実に接合することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、後枠部12の開口15は、前後方向(Y方向)に見て、第2接合部22の面積よりも大きい開口面積を有している。これにより、開口面積を比較的大きくすることができるので、前枠部11を接合する第1接合部21に対する作業を開口15を介して容易に行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、後枠部12の開口15は、枠部材2および3には、枠形状に沿った方向(Y方向)において第1長さL3を有するように形成され、枠部材1および4には、枠形状に沿った方向(X方向)において第1長さL3よりも小さい第2長さL4を有するように形成されている。これにより、比較的大きい第1長さL3を有する開口15の方向から接合作業のためのツールを差し入れることができるので、接合作業を容易に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、後枠部12の開口15は、枠部材2および3には、枠形状に沿った方向(Y方向)における長さが第1長さL3の長孔形状を有するように設けられ、枠部材1および4には、枠形状に沿った方向(X方向)における長さが第2長さL4の略三角形状を有するように設けられている。これにより、開口15の大きさを過度に大きくすることなく、接合作業を容易に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、第1接合部21は、広告媒体を挿入する方向(Z方向)に見て、挿入口13aの延びる方向(X方向)における挿入口13aの範囲内に配置されているとともに、前枠部11から後枠部12側方向に突出しないように形成されている。これにより、挿入口13aから挿入された広告媒体が第1接合部21に干渉するのを抑制することができるので、広告媒体を挿入口13aから容易に出し入れすることができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、複数の枠部材1〜4を、アルミニウム材により形成する。これにより、接合部に変色や凹凸が生じやすいアルミニウム材により枠部材1〜4を形成したとしても、枠部材1〜4同士が後側(Y2方向側)から接合されるので、広告枠100の前面に変色や凹凸が生じるのを抑制することができる。
【0057】
(変形例)
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0058】
たとえば、上記実施形態では、広告枠は、4つの枠部材を含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、広告枠は、4つ以外の複数(2つ、3つ、5つ以上)の枠部材を含む構成でもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、広告枠は、矩形の枠形状に形成されている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、広告枠は、たとえば、丸形状、楕円形状、三角形状、5角以上の多角形形状に形成されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、広告枠は、水平方向(X方向)の長さが上下方向(Z方向)の長さよりも大きい横長形状に形成されている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、広告枠は、上下方向の長さが水平方向の長さよりも大きい縦長形状に形成されていてもよいし、上下方向の長さと水平方向の長さよりとが略等しい正方形形状に形成されていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、後枠部の開口を接合作業後に塞がない構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、後枠部の開口を接合作業後にシートなどにより塞いでもよい。この場合、開口を塞ぐ部材が後枠部から前枠部側に突出しないことが好ましい。
【0062】
また、上記実施形態では、広告枠は、アルミニウム材により形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、広告枠は、アルミニウム材以外の金属材料により形成されていてもよい。たとえば、広告枠は、ステンレス材により形成されていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、広告枠の上方の枠部材に広告媒体を挿入するための挿入口を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、広告枠の側方の枠部材に広告媒体を挿入するための挿入口を設けてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、1つの枠部材に広告媒体を挿入するための挿入口を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の枠部材に広告媒体を挿入するための挿入口を設けてもよい。たとえば、複数の枠部材に跨って挿入口が設けられていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、後枠部同士を接合する第2接合部を後側から接合して設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、後枠部同士を接合する第2接合部を前側から接合して設けてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、2、3、4 枠部材
11 前枠部
12 後枠部
13 接続部
13a 挿入口
15 開口
16 傾斜辺
21 第1接合部
22 第2接合部
100 広告枠
【要約】
【課題】複数の枠部材を容易に接合させることにより、歩留まりを向上させて効率よく広告枠を製造することが可能で、かつ、自動化も図りやすい広告枠を提供する。
【解決手段】この広告枠100は、互いに接合されることにより枠状に形成された複数の枠部材1、2、3および4を備える。枠部材1〜4の各々は、前枠部11と、後枠部12と、前枠部11および後枠部12の外周側を接続する接続部13と、を含む。複数の枠部材1〜4が互いに接合される部分には、後枠部12に設けられた開口15と、開口15を介して前枠部11同士が後枠部12側から溶接または固相接合により接合された第1接合部21と、が設けられている。
【選択図】
図3