(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正値算出部は、基準時刻から第一時間経過した第一時刻までの間に順次検出された複数の電圧検出値の移動平均である第一電圧移動平均値から、前記第一時刻から前記第一時間と同一時間経過した第二時刻までの間に順次検出された複数の電圧検出値の移動平均である第二電圧移動平均値を減算して、前記出力電圧変化量を算出し、
前記補正値算出部は、前記基準時刻から前記第一時刻までの間に順次検出された複数の電流検出値の移動平均である第一電流移動平均値から、前記第一時刻から前記第二時刻までの間に順次検出された複数の電流検出値の移動平均である第二電流移動平均値を減算して、前記出力電流変化量を算出する請求項2に記載の系統連系制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態の系統連系制御装置10を図面に基づいて説明する。なお、図面は、概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
【0011】
<系統連系制御装置10の構成>
図1に示すように、本実施形態の系統連系制御装置10は、燃料電池11、コンバータ12、コンデンサ13、インバータ14、検出器15および制御装置16を備えている。また、検出器15は、出力電圧検出器15a、出力電流検出器15b、直流電圧検出器15c、出力電力検出器15dおよび購入電力検出器15eを備えている。
【0012】
燃料電池11は、燃料と酸化剤ガスとによって発電する発電装置であり、種々の燃料電池(例えば、公知の固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)など)を用いることができる。燃料は、例えば、天然ガスなどの炭化水素系原料を改質した改質ガスを用いることができる。酸化剤ガスは、例えば、空気を用いることができる。また、燃料電池11は、出力端子11a,11bを備えている。出力端子11aは、燃料電池11の正極(+)に接続されており、出力端子11bは、燃料電池11の負極(−)に接続されている。
【0013】
コンバータ12は、燃料電池11から出力された直流電力を昇圧して、インバータ14に出力する。コンバータ12は、入力側端子12a,12bおよび出力側端子12c,12dを備えている。燃料電池11の出力端子11aと、コンバータ12の入力側端子12aとの間には、電路17aが形成されている。また、燃料電池11の出力端子11bと、コンバータ12の入力側端子12bとの間には、電路17bが形成されている。燃料電池11から出力された直流電力(出力電力PFc)は、電路17a,17bを介してコンバータ12に入力される。そして、コンバータ12によって昇圧された直流電力は、出力側端子12c,12dから出力される。電路17a,17bは、例えば、公知の電力用電線を用いることができる。このことは、後述する電路についても同様である。
【0014】
電路17aと電路17bとの間には、出力電圧検出器15aが設けられており、電路17aには、出力電流検出器15bが設けられている。出力電圧検出器15aは、燃料電池11の出力電圧VFcを検出する。具体的には、出力電圧検出器15aは、燃料電池11の出力端子11a,11b間の直流電圧を検出する。本明細書では、出力電圧検出器15aによって検出された検出値を電圧検出値VFc_dという。
【0015】
出力電圧検出器15aは、例えば、抵抗値が既知の複数の抵抗器によって電路17aと電路17bとの間の直流電圧を分圧して、分圧された電圧値に基づいて燃料電池11の出力端子11a,11b間の直流電圧を検出することができる。具体的には、上述した抵抗器によって分圧された直流電圧は、制御装置16に入力される。そして、制御装置16は、公知のA/D変換器(図示略)などによって分圧された直流電圧を知得し、燃料電池11の出力端子11a,11b間の直流電圧を検出することができる。
【0016】
出力電流検出器15bは、燃料電池11の出力電流IFcを検出する。具体的には、出力電流検出器15bは、燃料電池11の出力端子11aから出力される直流電流を検出する。本明細書では、出力電流検出器15bによって検出された検出値を電流検出値IFc_dという。出力電流検出器15bは、公知の電流検出器(例えば、カレントトランスを使用した電流検出器)を用いることができる。電流検出値IFc_dは、制御装置16に入力される。なお、制御装置16は、電圧検出値VFc_dと電流検出値IFc_dとを乗算して、燃料電池11の出力電力PFcを算出することができる。
【0017】
コンバータ12は、リアクトル12e、ダイオード12fおよびスイッチング素子12gを備えている。これらの素子は、公知の電力用デバイスを用いることができる。例えば、スイッチング素子12gは、公知の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などを用いることができる。
【0018】
コンバータ12の入力側端子12aと出力側端子12cとの間には、電路17cが形成されている。また、コンバータ12の入力側端子12bと出力側端子12dとの間には、電路17dが形成されている。電路17cには、入力側端子12a側から順に、リアクトル12e、ダイオード12fが設けられている。また、リアクトル12eとダイオード12fとの間の電路17cには、接続点12iが設けられており、接続点12iには、スイッチング素子12gのドレイン12g1が接続されている。スイッチング素子12gのソース12g2は、電路17dに設けられる接続点12jに接続されており、接続点12iと接続点12jとの間には、電路17eが形成されている。なお、スイッチング素子12gのゲート12g3は、駆動回路16eを介して、後述する制御装置16に接続されている。駆動回路16eは、公知のドライバ回路を用いることができる。コンバータ12は、燃料電池11から出力された出力電力PFcを昇圧することができれば良く、上述の構成に限定されるものではない。
【0019】
コンバータ12の出力側端子12cと、インバータ14の入力側端子14aとの間には、電路17fが形成されている。また、コンバータ12の出力側端子12dと、インバータ14の入力側端子14bとの間には、電路17gが形成されている。電路17fと電路17gとの間には、コンデンサ13および直流電圧検出器15cが設けられている。
【0020】
電路17fには、接続点13aが設けられており、接続点13aには、コンデンサ13の一端側(正極側)が接続されている。電路17gには、接続点13bが設けられており、接続点13bには、コンデンサ13の他端側(負極側)が接続されている。コンデンサ13は、公知の電解コンデンサを用いることができ、コンバータ12によって昇圧された直流電力のリップルを低減することができる。直流電圧検出器15cは、コンバータ12によって昇圧された直流電力の直流電圧Vdcを検出する。具体的には、直流電圧検出器15cは、インバータ14の入力側端子14a,14b間に印加される直流電圧を検出する。本明細書では、直流電圧検出器15cによって検出された検出値を直流電圧検出値Vdc_dという。
【0021】
直流電圧検出器15cは、例えば、抵抗値が既知の複数の抵抗器によって電路17fと電路17gとの間の直流電圧を分圧して、分圧された電圧値に基づいてインバータ14の入力側端子14a,14b間に印加される直流電圧を検出することができる。制御装置16は、出力電圧検出器15aと同様にして、インバータ14の入力側端子14a,14b間に印加される直流電圧を算出することができる。
【0022】
制御装置16は、出力電力の目標値に基づいて、コンバータ12を駆動させるスイッチング素子12gの制御信号であるパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)信号のデューティ比を決定する。制御装置16は、ドライバ回路である駆動回路16eを介して、当該デューティ比に基づくパルス信号をスイッチング素子12gのゲート12g3に付与する。例えば、スイッチング素子12gのゲート12g3に付与される電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)のときには、スイッチング素子12gのドレイン12g1とソース12g2との間が電気的に導通された閉状態になり、リアクトル12eに電磁エネルギーが蓄えられる。
【0023】
スイッチング素子12gのゲート12g3に付与される電圧がローレベル(所定電圧値以下の状態)のときには、スイッチング素子12gのドレイン12g1とソース12g2との間が電気的に遮断された開状態になり、リアクトル12eに蓄えられた電磁エネルギーがコンデンサ13に充電されて、コンバータ12の出力電力は増大する。このようにして、制御装置16は、コンバータ12の出力電力を所望の電力値(出力電力の目標値)に制御することができる。
【0024】
インバータ14は、コンバータ12によって昇圧された直流電力を交流電力に変換して系統電源20に接続されている負荷30に出力する。インバータ14は、入力側端子14a,14bおよび出力側端子14c,14dを備えている。インバータ14の出力側端子14cと、系統電源20の接続端子20aとの間には、電路21aが形成されている。また、インバータ14の出力側端子14dと、系統電源20の接続端子20bとの間には、電路21bが形成されている。インバータ14から出力された交流電力は、電路21a,21bを介して出力される。これにより、インバータ14から出力された交流電力は、負荷30に供給可能になっている。なお、系統電源20として、例えば、電力会社が保有する商用の配電線網から供給される交流電源が挙げられる。また、負荷30は、電力を駆動源とする負荷であり、例えば、家庭用電気機器(電化製品など)や産業用電気機器(ロボットなど)が挙げられる。
【0025】
インバータ14は、複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)を備えている。第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hは、コンバータ12のスイッチング素子12gと同様に、公知の電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などを用いることができる。
【0026】
図1に示すように、インバータ14の入力側端子14aと、第一スイッチング素子14eのドレイン14e1と、第三スイッチング素子14gのドレイン14g1との間には、電路17hが形成されている。また、インバータ14の入力側端子14bと、第二スイッチング素子14fのソース14f2と、第四スイッチング素子14hのソース14h2との間には、電路17iが形成されている。
【0027】
第一スイッチング素子14eおよび第二スイッチング素子14fは、電路17hと電路17iとの間において直列接続されており、第一スイッチング素子14eのソース14e2と、第二スイッチング素子14fのドレイン14f1との間には、電路17jが形成されている。また、第三スイッチング素子14gおよび第四スイッチング素子14hは、電路17hと電路17iとの間において直列接続されており、第三スイッチング素子14gのソース14g2と、第四スイッチング素子14hのドレイン14h1との間には、電路17kが形成されている。つまり、直列接続された第一スイッチング素子14eおよび第二スイッチング素子14fと、直列接続された第三スイッチング素子14gおよび第四スイッチング素子14hとは、電路17hと電路17iとの間において並列接続されている。
【0028】
電路17jには、接続点14iが設けられており、接続点14iと、インバータ14の出力側端子14cとの間には、電路17lが形成されている。また、電路17kには、接続点14jが設けられており、接続点14jとインバータ14の出力側端子14dとの間には、電路17mが形成されている。以上のようにして、第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hは、フルブリッジ接続されている。
【0029】
第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの各ゲート14e3〜14h3は、駆動回路16fを介して、制御装置16に接続されている。駆動回路16fは、公知のドライバ回路を用いることができる。第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hは、制御装置16から出力される駆動信号(開閉信号)に基づいて駆動制御される。
【0030】
例えば、第一スイッチング素子14eのゲート14e3に付与される電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)のときには、第一スイッチング素子14eのドレイン14e1とソース14e2との間が電気的に導通された閉状態になる。一方、第一スイッチング素子14eのゲート14e3に付与される電圧がローレベル(所定電圧値以下の状態)のときには、第一スイッチング素子14eのドレイン14e1とソース14e2との間が電気的に遮断された開状態になる。以上のことは、第二スイッチング素子14f〜第四スイッチング素子14hについても同様である。制御装置16は、例えば、パルス幅変調(PWM)によりデューティ比を可変して、当該デューティ比に基づいて第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hを開閉制御することができる。
【0031】
インバータ14は、第一スイッチング素子14eおよび第四スイッチング素子14hの両方が閉状態であり、かつ、第二スイッチング素子14fおよび第三スイッチング素子14gの両方が開状態である第一状態と、第一スイッチング素子14eおよび第四スイッチング素子14hの両方が開状態であり、かつ、第二スイッチング素子14fおよび第三スイッチング素子14gの両方が閉状態である第二状態とを交互に繰り返すことによって、インバータ14の入力側端子14a,14bから入力された直流電力を交流電力に変換することができる。
【0032】
なお、インバータ14と負荷30との間には、公知のフィルタ回路を設けることができる。フィルタ回路は、例えば、公知のLC回路を用いることができる。これにより、インバータ14の出力側端子14c,14dから出力されるインバータ14の出力電流Ioutに含まれる高調波成分が低減され、インバータ14の出力電流Ioutが正弦波状に整形される。
【0033】
出力電力検出器15dは、インバータ14の出力側端子14c,14dから出力される出力電力Poutを検出する。本明細書では、出力電力検出器15dによって検出された検出値を出力電力検出値Pout_dという。出力電力検出器15dは、公知の電力検出器を用いることができる。また、出力電力検出器15dは、系統電源20の系統電圧(系統電源20の接続端子20aと接続端子20bとの間の電圧)と、インバータ14の出力電流Ioutとに基づいて、インバータ14の出力電力Poutを算出して、算出値を出力電力検出値Pout_dとすることもできる。
【0034】
購入電力検出器15eは、系統電源20から負荷30に供給される購入電力Pgridを検出する。本明細書では、購入電力検出器15eによって検出された検出値を購入電力検出値Pgrid_dという。購入電力検出器15eは、公知の電力検出器を用いることができる。なお、
図1では、系統電源20から負荷30に供給される電流を系統電流Igridで示している。また、検出器15は、既述した検出器に限定されるものではなく、系統連系制御装置に用いられる種々の検出器を備えることができる。
【0035】
制御装置16には、検出器15の各検出値が入力される。本実施形態では、各検出値には、出力電圧検出器15aによって検出された電圧検出値VFc_dと、出力電流検出器15bによって検出された電流検出値IFc_dと、直流電圧検出器15cによって検出された直流電圧検出値Vdc_dと、出力電力検出器15dによって検出された出力電力検出値Pout_dと、購入電力検出器15eによって検出された購入電力検出値Pgrid_dとが含まれる。
【0036】
インバータ14の出力電力Poutと負荷30の購入電力Pgridとを加算した加算電力は、負荷30の負荷電力PLと一致する。そのため、制御装置16は、入力された各検出値に基づいて、インバータ14の出力電力Poutが負荷30の負荷電力PLに追従するように燃料電池11の出力電力PFcに関する目標値である燃料電池出力目標値PFc_refを設定する。そして、制御装置16は、燃料電池出力目標値PFc_refに基づいて、コンバータ12の1つまたは複数(本実施形態では、1つ)のスイッチング素子12gを駆動制御し、インバータ14の複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)を駆動制御する。
【0037】
図2に示すように、制御装置16は、公知の中央演算装置16a、記憶装置16bおよび入出力インターフェース16cを備えており、これらは、バス16dを介して電気的に接続されている。制御装置16は、これらを用いて、種々の演算処理を行うことができ、外部機器との間で、入出力信号(駆動信号を含む)の授受を行うことができる。
【0038】
中央演算装置16aは、CPU:Central Processing Unitであり、種々の演算処理を行うことができる。記憶装置16bは、第一記憶装置16b1および第二記憶装置16b2を備えている。第一記憶装置16b1は、読み出しおよび書き込み可能な揮発性の記憶装置(RAM:Random Access Memory)であり、第二記憶装置16b2は、読み出し専用の不揮発性の記憶装置(ROM:Read Only Memory)である。入出力インターフェース16cは、外部機器との間で、入出力信号(駆動信号を含む)の授受を行う。
【0039】
例えば、中央演算装置16aは、第二記憶装置16b2に記憶されているインバータ14の駆動制御プログラムを第一記憶装置16b1に読み出して、当該駆動制御プログラムを実行する。中央演算装置16aは、当該駆動制御プログラムに基づいて、インバータ14の駆動信号(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの開閉信号)を生成する。生成された駆動信号は、入出力インターフェース16cおよび駆動回路16fを介して、インバータ14の第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの各ゲート14e3〜14h3に付与される。このようにして、インバータ14は、制御装置16によって駆動制御される。以上のことは、コンバータ12についても同様であり、コンバータ12は、制御装置16によって駆動制御される。
【0040】
<系統連系制御装置10による制御>
系統連系制御においては、負荷電力PLに追従するようにインバータ14の出力電力Pout(系統連系制御装置10の出力電力)を制御する必要がある。特に、出力電力Poutが負荷電力PLを超えてしまう逆潮流を抑制する必要があり、逆潮流が見込まれるときには、インバータ14の出力電力Poutを速やかに低下させる必要がある。インバータ14の出力電力Poutを低下させるためには、燃料電池11の出力電力PFcを低下させる必要がある。
【0041】
図1に示すように、燃料電池11の出力電圧VFcは、発電によって生じる内部電圧E0から、内部インピーダンスZ0による電圧降下分を減じて得られる。電圧降下分は、内部インピーダンスZ0と、燃料電池11の出力電流IFcとを乗じて得られる。つまり、燃料電池11の出力電圧VFcは、下記数1で示される。また、燃料電池11の出力電力PFcは、下記数2で示される。
(数1)
VFc=E0−Z0×IFc
(数2)
PFc=VFc×IFc=(E0−Z0×IFc)×IFc
【0042】
燃料電池11の発電状態が同じ場合、内部電圧E0および内部インピーダンスZ0は、概ね一定である。そのため、燃料電池11の出力電力PFcを低下させるためには、数2に示すように、燃料電池11の出力電流IFcを低下させる必要がある。換言すれば、燃料電池11の出力電力PFcを低下させるためには、数1に示すように、燃料電池11の出力電圧VFcを上昇させる必要がある。
【0043】
しかしながら、内部インピーダンスZ0は、出力電圧VFc等と比べて変動幅は小さいものの、発電部位(燃料と酸化剤ガスとを反応させるセルスタック)の温度によって変動する。そのため、燃料電池11の出力電圧VFcおよび出力電流IFcは、内部インピーダンスZ0の影響を受ける。よって、逆潮流を適切に抑制するためには、内部インピーダンスZ0の変動に合わせて、燃料電池11の出力電圧VFcの目標値VFc_refを設定する必要がある。このことは、燃料電池11の出力電流IFcの目標値IFc_refについても同様に言える。
【0044】
出力電圧VFcの目標値VFc_refおよび出力電流IFcの目標値IFc_refは、燃料電池11の出力電力PFcに関する目標値であり、本明細書では、これらを燃料電池出力目標値PFc_refという。本実施形態では、燃料電池出力目標値PFc_refとして、出力電圧VFcの目標値VFc_refを例に説明する。後述するように、本発明は、出力電流IFcの目標値IFc_refについても適用することができる。
【0045】
図3に示すように、制御装置16は、制御ブロックとして捉えると、第一目標値算出部41と、逆潮流判定部42と、補正値算出部43と、燃料電池出力目標値設定部44と、電力変換器制御部45とを備えている。また、制御装置16は、
図4に示すフローチャートに従って制御プログラムを実行する。第一目標値算出部41は、ステップS11およびステップS12に示す処理を行う。逆潮流判定部42は、ステップS13に示す判断を行う。補正値算出部43は、ステップS14およびステップS15に示す処理を行う。燃料電池出力目標値設定部44は、ステップS16およびステップS17に示す処理を行う。電力変換器制御部45は、ステップS18に示す処理を行う。
【0046】
第一目標値算出部41は、燃料電池11の出力電圧VFcの目標値VFc_refの第一の目標値である第一目標値V1_refを算出する。
図3に示すように、第一目標値算出部41は、減算器41aと、PI制御部41bとを備えている。減算器41aには、出力電力検出器15dによって検出された出力電力検出値Pout_dと、負荷電力算出値PL_dとが入力される。負荷電力算出値PL_dは、出力電力検出器15dによって検出された出力電力検出値Pout_dおよび購入電力検出器15eによって検出された購入電力検出値Pgrid_dによって算出される。具体的には、負荷電力算出値PL_dは、出力電力検出値Pout_dと購入電力検出値Pgrid_dとを加算して算出する。インバータ14の出力電力目標値Pout_refは、インバータ14の負荷電力算出値PL_dに追従して設定される(
図4のステップS11)。
【0047】
図3に示すように、減算器41aは、インバータ14の出力電力検出値Pout_dから、インバータ14の出力電力目標値Pout_refを減じて偏差ΔPoutを算出する。減算器41aによって算出された偏差ΔPoutは、PI制御部41bに入力される。本実施形態では、PI制御部41bは、インバータ14の出力電力検出値Pout_dが、インバータ14の出力電力目標値Pout_refと一致するように、比例制御および積分制御を行う。PI制御部41bは、公知の比例演算器、積分演算器および加算器(いずれも図示略)を備えている。
【0048】
比例演算器は、偏差ΔPoutに比例ゲインK
Pを乗じた演算結果を出力する。積分演算器は、偏差ΔPoutを積分した積分値に積分ゲインK
Iを乗じた演算結果を出力する。加算器は、比例演算器の演算結果と、積分演算器の演算結果とを加算する。そして、PI制御部41bは、加算器の演算結果を第一目標値V1_refとして出力する。なお、PI制御部41bは、偏差ΔPoutを微分した微分値に微分ゲインK
Dを乗じた演算結果を出力する微分演算器を備えることもできる。つまり、PI制御部41bは、比例制御、積分制御および微分制御を行うPID制御部とすることができる。この場合、加算器は、比例演算器の演算結果と、積分演算器の演算結果と、微分演算器の演算結果とを加算する。
【0049】
このように、第一目標値算出部41は、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)および微分制御(D制御)のうちの少なくとも比例制御(P制御)および積分制御(I制御)によって、第一目標値V1_refを算出することができる(
図4のステップS12)。なお、伝達関数G(s)は、下記数3で表すことができる。但し、sは、ラプラス演算子を示している。比例ゲインK
Pおよび積分ゲインK
Iは、
図2に示す第二記憶装置16b2に記憶されている。これらの制御ゲインは、コンバータ12およびインバータ14の駆動制御プログラムとともに、起動時に第二記憶装置16b2から第一記憶装置16b1に読み出される。
(数3)
G(s)=K
P+K
I×1/s
【0050】
比例ゲインK
Pを大きくする程、偏差ΔPoutを短時間に小さくすることができる。また、積分ゲインK
Iを大きくする程、偏差ΔPoutによるオフセット(定常偏差)を短時間に0にすることができる。さらに、微分ゲインK
Dを大きくする程、偏差ΔPoutの振動を短時間に収束することができ、外乱に対して強くなる。これらの制御ゲインは、例えば、シミュレーション、実機による検証などによって予め取得しておくと良い。なお、第一目標値算出部41は、インバータ14の出力電力検出値Pout_dが、インバータ14の出力電力目標値Pout_refと一致するように制御して、第一目標値V1_refを算出することができれば良く、上述した制御に限定されない。第一目標値算出部41は、公知の種々のフィードバック制御、フィードフォワード制御などによって、第一目標値V1_refを算出することができる。
【0051】
逆潮流判定部42は、インバータ14の出力電力検出値Pout_dが、インバータ14の出力電力目標値Pout_refと比べて大きいか否かを判断する(
図4のステップS13)。
図3に示すように、逆潮流判定部42には、減算器41aによって算出された偏差ΔPoutが入力される。逆潮流判定部42は、偏差ΔPoutが正値のときには、インバータ14の出力電力検出値Pout_dが、インバータ14の出力電力目標値Pout_refと比べて大きいと判断する(
図4のステップS13でYesの場合であり、逆潮流が見込まれる)。一方、逆潮流判定部42は、偏差ΔPoutが0または負値のときには、インバータ14の出力電力検出値Pout_dが、インバータ14の出力電力目標値Pout_ref以下であると判断する(
図4のステップS13でNoの場合であり、逆潮流が見込まれない)。このようにして、逆潮流判定部42は、逆潮流が見込まれるか否かの判断を行うことができる。
【0052】
逆潮流判定部42は、逆潮流が見込まれるか否かの判断結果を、補正値算出部43および燃料電池出力目標値設定部44に対して出力する。また、逆潮流判定部42は、インバータ14の出力電力検出値Pout_dが、インバータ14の出力電力目標値Pout_refと比べて大きく、逆潮流が見込まれるとき(
図4のステップS13でYesの場合)には、補正値算出部43に対して、インピーダンス推定値Z_estの算出開始指令を出力する。
【0053】
補正値算出部43は、インバータ14の出力電力検出値Pout_dが、インバータ14の出力電力目標値Pout_refと比べて大きいときに、燃料電池11の内部インピーダンスZ0を推定して、第一目標値V1_refの補正値V2を算出する。
図3に示すように、補正値算出部43には、出力電圧検出器15aによって検出された電圧検出値VFc_dと、出力電流検出器15bによって検出された電流検出値IFc_dと、逆潮流判定部42から出力された逆潮流が見込まれるか否かの判断結果(インピーダンス推定値Z_estの算出開始指令を含む)とが入力される。
【0054】
補正値算出部43は、逆潮流判定部42からインピーダンス推定値Z_estの算出開始指令を受けると、インピーダンス推定値Z_estを算出する(
図4のステップS14)。燃料電池11の内部インピーダンスZ0を推定する方法は、限定されない。本実施形態では、補正値算出部43は、出力電圧変化量ΔVを出力電流変化量ΔIで除算して、インピーダンス推定値Z_estを算出すると好適である。出力電圧変化量ΔVは、出力電圧検出器15aによって順次検出された複数(本実施形態では、20個)の電圧検出値VFc_dの変化量をいう。出力電流変化量ΔIは、複数(20個)の電圧検出値VFc_dが検出された時間と同一時間に出力電流検出器15bによって順次検出された複数(本実施形態では、20個)の電流検出値IFc_dの変化量をいう。
【0055】
図5に示すように、補正値算出部43は、
図2に示す第一記憶装置16b1において、電圧検出値VFc_dを格納する複数(本実施形態では、20個)の連続する記憶領域(M1〜M20)を備えている。また、補正値算出部43は、
図2に示す第一記憶装置16b1において、電流検出値IFc_dを格納する複数(本実施形態では、20個)の連続する記憶領域(N1〜N20)を備えている。これらの記憶領域は、例えば、先入れ先出し(FIFO:First In First Out)方式で構成されている。
【0056】
具体的には、出力電圧検出器15aによって検出された電圧検出値VFc_dは、まず、記憶領域M1に格納される。次に、出力電圧検出器15aによって電圧検出値VFc_dが検出されると、記憶領域M1に格納されていた電圧検出値VFc_dは、記憶領域M2に移動される。そして、新しく検出された電圧検出値VFc_dは、記憶領域M1に格納される。次に、出力電圧検出器15aによって電圧検出値VFc_dが検出されると、記憶領域M2に格納されていた電圧検出値VFc_dは、記憶領域M3に移動され、記憶領域M1に格納されていた電圧検出値VFc_dは、記憶領域M2に移動される。そして、新しく検出された電圧検出値VFc_dは、記憶領域M1に格納される。これを電圧検出値VFc_dが検出される度に繰り返す。
【0057】
記憶領域(M1〜M20)の全てにおいて、電圧検出値VFc_dが格納された後に、出力電圧検出器15aによって電圧検出値VFc_dが検出されると、最も古い検出値である記憶領域M20に格納されていた電圧検出値VFc_dが破棄されて、次に古い検出値である記憶領域M19に格納されていた電圧検出値VFc_dが、記憶領域M20に移動される。以上のことは、燃料電池11の電流検出値IFc_dについても同様であり、電流検出値IFc_dは、電圧検出値VFc_dと同様にして、記憶領域(N1〜N20)に格納される。
【0058】
なお、複数(例えば、10個)の電圧検出値VFc_dを平均して平均値を算出してから、当該平均値を記憶領域M1に格納することもできる。次に、複数(10個)の電圧検出値VFc_dの平均値が算出されると、記憶領域M1に格納されていた複数(10個)の電圧検出値VFc_dの平均値は、記憶領域M2に移動される。そして、新しく算出された複数(10個)の電圧検出値VFc_dの平均値は、記憶領域M1に格納される。以降、上述した方法と同様にして、複数(10個)の電圧検出値VFc_dの平均値を、記憶領域(M1〜M20)に格納することができる。また、燃料電池11の電流検出値IFc_dについても同様であり、複数(10個)の電流検出値IFc_dの平均値を、複数(10個)の電圧検出値VFc_dの平均値と同様にして、記憶領域(N1〜N20)に格納することができる。
【0059】
出力電圧変化量ΔVおよび出力電流変化量ΔIの算出方法は、限定されない。本実施形態では、補正値算出部43は、第一電圧移動平均値Vave1から第二電圧移動平均値Vave2を減算して、出力電圧変化量ΔVを算出すると好適である。また、補正値算出部43は、第一電流移動平均値Iave1から第二電流移動平均値Iave2を減算して、出力電流変化量ΔIを算出すると好適である。
【0060】
第一電圧移動平均値Vave1は、基準時刻t0から第一時間T1経過した第一時刻t11までの間に順次検出された複数(本実施形態では、10個)の電圧検出値VFc_dの移動平均をいう。第二電圧移動平均値Vave2は、第一時刻t11から第一時間T1と同一時間経過した第二時刻t12までの間に順次検出された複数(本実施形態では、10個)の電圧検出値VFc_dの移動平均をいう。また、第一電流移動平均値Iave1は、基準時刻t0から第一時刻t11までの間に順次検出された複数(本実施形態では、10個)の電流検出値IFc_dの移動平均をいう。第二電流移動平均値Iave2は、第一時刻t11から第二時刻t12までの間に順次検出された複数(本実施形態では、10個)の電流検出値IFc_dの移動平均をいう。
【0061】
図5に示す例では、補正値算出部43は、記憶領域(M11〜M20)に格納されている複数(10個)の電圧検出値VFc_dの移動平均を算出して、算出結果を第一電圧移動平均値Vave1とする。補正値算出部43は、記憶領域(M1〜M10)に格納されている複数(10個)の電圧検出値VFc_dの移動平均を算出して、算出結果を第二電圧移動平均値Vave2とする。また、補正値算出部43は、記憶領域(N11〜N20)に格納されている複数(10個)の電流検出値IFc_dの移動平均を算出して、算出結果を第一電流移動平均値Iave1とする。補正値算出部43は、記憶領域(N1〜N10)に格納されている複数(10個)の電流検出値IFc_dの移動平均を算出して、算出結果を第二電流移動平均値Iave2とする。
【0062】
なお、上述した移動平均は、時系列データを平滑化することができれば良く、限定されない。例えば、移動平均は、個々のデータに重み付けを行わない単純移動平均であっても良く、個々のデータに重み付けを行う加重移動平均であっても良い。また、加重移動平均は、線形加重移動平均であっても良く、指数加重移動平均などであっても良い。線形加重移動平均は、最も新しいデータの重み付けが最も重く、古いデータになるほど順に重み付けを減らしていき最も古いデータの重み付けを0にする。指数加重移動平均は、線形加重移動平均の重み付けを指数関数的に減少させる。さらに、個々のデータの重み付けは、負荷電力PLの変動に合わせて選択することもできる。例えば、負荷電力PLの変動が大きい領域のデータの重み付けを重くし、負荷電力PLの変動が小さい領域のデータの重み付けを軽くすることもできる。
【0063】
このようにして、補正値算出部43は、出力電圧変化量ΔVを算出し、出力電流変化量ΔIを算出する。なお、出力電圧変化量ΔVおよび出力電流変化量ΔIの算出順序は、限定されない。そして、補正値算出部43は、出力電圧変化量ΔVを出力電流変化量ΔIで除算して、インピーダンス推定値Z_estを算出する。次に、補正値算出部43は、推定されたインピーダンス推定値Z_estと相関する第一目標値V1_refの補正値V2を算出する(
図4のステップS15)。
【0064】
図1に示すように、内部インピーダンスZ0が大きくなる程、内部インピーダンスZ0による電圧降下分が大きくなる。その結果、発電によって生じる内部電圧E0と、燃料電池11の出力電圧VFcとの差が大きくなる。このように、内部インピーダンスZ0と、燃料電池11の出力電圧VFcとの関係は、密接に関連しており、一方が変化すると他方も変化する相関関係になっている。
【0065】
図6に示すように、補正値算出部43は、インピーダンス推定値Z_estが大きくなる程、第一目標値V1_refの補正値V2を大きくすると好適である。
図6は、インピーダンス推定値Z_estと第一目標値V1_refの補正値V2との関係の一例を示す図である。横軸は、インピーダンス推定値Z_estの大きさを示し、縦軸は、補正値V2の大きさを示している。直線L1は、インピーダンス推定値Z_estと補正値V2との関係を示しており、この場合、インピーダンス推定値Z_estと補正値V2との関係は、一次関数で表すことができる。なお、同図では、インピーダンス推定値Z_estが0のときの補正値V2を補正値V20で示している。
【0066】
直線L1は、例えば、シミュレーション、実機による検証等によって、予め算出することができる。直線L1に示す関係は、マップ、数式等に変換されて、
図2に示す第二記憶装置16b2に記憶される。直線L1に示す関係(マップ、数式等)は、コンバータ12およびインバータ14の駆動制御プログラムとともに、起動時に第二記憶装置16b2から第一記憶装置16b1に読み出される。なお、インピーダンス推定値Z_estと補正値V2との関係は、直線L1で示す一次関数に限定されるものではない。インピーダンス推定値Z_estと補正値V2との関係は、シミュレーション、実機による検証等の結果に合わせて規定することができ、例えば、指数関数などで表すこともできる。
【0067】
図6に示すように、補正値算出部43は、例えば、インピーダンス推定値Z_estがインピーダンス推定値Z11のときには、第一目標値V1_refの補正値V2として、補正値V21を出力する。補正値算出部43は、インピーダンス推定値Z_estがインピーダンス推定値Z12のときには、第一目標値V1_refの補正値V2として、補正値V22を出力する。補正値算出部43は、インピーダンス推定値Z_estがインピーダンス推定値Z13のときには、第一目標値V1_refの補正値V2として、補正値V23を出力する。
【0068】
燃料電池出力目標値設定部44は、インバータ14の出力電力検出値Pout_dが出力電力目標値Pout_refと比べて大きいときに、第一目標値V1_refに補正値V2を加算して、燃料電池11の出力電圧VFcの目標値VFc_refを算出し設定する。
図3に示すように、燃料電池出力目標値設定部44は、補正値選択部44aと、加算器44bとを備えている。補正値選択部44aには、逆潮流判定部42によって判断された逆潮流が見込まれるか否かの判断結果と、補正値算出部43によって算出された第一目標値V1_refの補正値V2と、逆潮流が見込まれないときに適用される第一目標値V1_refの補正値V2(補正量0)とが入力される。
【0069】
補正値選択部44aは、上述した2つの第一目標値V1_refの補正値V2から一の補正値V2を選択し設定する。具体的には、補正値選択部44aは、逆潮流判定部42によって逆潮流が見込まれると判断されたとき(インバータ14の出力電力検出値Pout_dが出力電力目標値Pout_refと比べて大きいとき)には、第一目標値V1_refの補正値V2として、補正値算出部43によって算出された第一目標値V1_refの補正値V2を選択し設定する。一方、補正値選択部44aは、逆潮流判定部42によって逆潮流が見込まれないと判断されたとき(インバータ14の出力電力検出値Pout_dが出力電力目標値Pout_ref以下のとき)には、第一目標値V1_refの補正値V2として、補正量0を選択し設定する(
図4のステップS16)。
【0070】
図3に示すように、加算器44bには、第一目標値算出部41によって算出された第一目標値V1_refと、補正値選択部44aによって選択し設定された第一目標値V1_refの補正値V2とが入力される。加算器44bは、第一目標値V1_refに補正値V2を加算して、燃料電池11の出力電圧VFcの目標値VFc_refを算出する(
図4のステップS17)。
【0071】
このように、燃料電池出力目標値設定部44は、逆潮流が見込まれるとき(インバータ14の出力電力検出値Pout_dが出力電力目標値Pout_refと比べて大きいとき)に、第一目標値V1_refに、インピーダンス推定値Z_estと相関する補正値V2を加算して、燃料電池11の出力電圧VFcの目標値VFc_refを算出し設定する。換言すれば、燃料電池出力目標値設定部44は、逆潮流が見込まれるときに、燃料電池11の出力電力PFcの目標値を、インピーダンス推定値Z_estに応じて適切に低下させることができる。
【0072】
電力変換器制御部45は、燃料電池11の出力電力PFcが、燃料電池11の出力電力PFcの目標値と一致するように、コンバータ12およびインバータ14を制御する(
図4のステップS18)。具体的には、電力変換器制御部45は、燃料電池11の出力電力PFcの目標値に基づいて、コンバータ12およびインバータ14の出力目標値を設定する。そして、電力変換器制御部45は、コンバータ12の出力目標値に合わせて、コンバータ12の駆動信号(スイッチング素子12gの開閉信号)を生成する。また、電力変換器制御部45は、インバータ14の出力目標値に合わせて、インバータ14の駆動信号(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの開閉信号)を生成する。
【0073】
制御装置16は、
図1に示す駆動回路16eを介して、生成された駆動信号をコンバータ12のスイッチング素子12gのゲート12g3に付与する。また、制御装置16は、
図1に示す駆動回路16fを介して、生成された駆動信号を複数(4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)の各ゲート(14e3〜14h3)に付与する。これらにより、制御装置16は、逆潮流が見込まれるときに、インバータ14の出力電力Poutをインピーダンス推定値Z_estに応じて適切に低下させることができる。
【0074】
なお、制御装置16は、燃料電池11に供給する燃料および酸化剤ガスの供給量をそれぞれ制御して、燃料電池11の出力電力PFcを所望の電力値(出力電力PFcの目標値)に制御する。燃料電池11に供給する燃料および酸化剤ガスの供給量と、燃料電池11の出力電力PFcとの関係は、例えば、シミュレーション、実機による検証等によって、予め算出することができる。これらの関係は、マップ、数式等に変換されて、
図2に示す第二記憶装置16b2に記憶されている。
【0075】
本実施形態の系統連系制御装置10によれば、制御装置16は、燃料電池出力目標値設定部44を備える。燃料電池出力目標値設定部44は、インバータ14の出力電力検出値Pout_dが出力電力目標値Pout_refと比べて大きいときに、第一目標値V1_refに補正値V2を加算して、燃料電池11の出力電圧VFcの目標値VFc_refを算出し設定する。また、第一目標値V1_refの補正値V2は、燃料電池11の内部インピーダンスZ0を推定したインピーダンス推定値Z_estと相関している。そのため、本実施形態の系統連系制御装置10は、負荷電力PLが低下する負荷変動時(出力電力検出値Pout_dが出力電力目標値Pout_refと比べて大きいとき)に、内部インピーダンスZ0の変動に合わせて燃料電池11の出力電力Poutに関する目標値である出力電圧VFcの目標値VFc_refを設定することができ、逆潮流を抑制することができる。
【0076】
燃料電池11は、経年劣化などによって、内部インピーダンスZ0が増加する傾向にある。そのため、例えば、燃料電池11の発電部位の温度と、第一目標値V1_refの補正値V2との関係を予め規定したマップ等に基づいて第一目標値V1_refの補正値V2を算出すると、第一目標値V1_refの補正値V2が適切でない可能性がある。また、燃料電池11の稼働時間に応じて、これらの関係を規定したマップ等を複数用意すると、制御プログラムの複雑化、肥大化を招く可能性がある。本実施形態の系統連系制御装置10によれば、補正値算出部43は、燃料電池11の内部インピーダンスZ0を推定して、第一目標値V1_refの補正値V2を算出する。そのため、本実施形態の系統連系制御装置10は、上述した場合と比べて、第一目標値V1_refの補正値V2を適正化することが容易であり、制御プログラムの複雑化、肥大化を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態の系統連系制御装置10によれば、補正値算出部43は、出力電圧検出器15aによって順次検出された複数(20個)の電圧検出値VFc_dの変化量である出力電圧変化量ΔVを、複数(20個)の電圧検出値VFc_dが検出された時間と同一時間に出力電流検出器15bによって順次検出された複数(20個)の電流検出値IFc_dの変化量である出力電流変化量ΔIで除算して、インピーダンス推定値Z_estを算出する。そのため、本実施形態の系統連系制御装置10は、特許文献1に記載の発明のように、電流の時系列データと電圧の時系列データとをそれぞれFFT法で演算処理する必要がない。よって、本実施形態の系統連系制御装置10は、特許文献1に記載の発明と比べて、燃料電池11の内部インピーダンスZ0の推定に要する演算処理を簡素化することができ、短時間にインピーダンス推定値Z_estを算出することができる。また、本実施形態の系統連系制御装置10は、負荷電力PLが低下する負荷変動時(出力電圧変化量ΔVおよび出力電流変化量ΔIの変化量が大きいとき)に、インピーダンス推定値Z_estを算出する。そのため、出力電圧変化量ΔVおよび出力電流変化量ΔIの変化量が小さいときに出力電圧変化量ΔVを出力電流変化量ΔIで除算することによる弊害(0に近い数値を0に近い数値で除算することによって演算結果が不定値になる不都合)を回避することができる。
【0078】
さらに、本実施形態の系統連系制御装置10によれば、補正値算出部43は、基準時刻t0から第一時間T1経過した第一時刻t11までの間に順次検出された複数(10個)の電圧検出値VFc_dの移動平均である第一電圧移動平均値Vave1から、第一時刻t11から第一時間T1と同一時間経過した第二時刻t12までの間に順次検出された複数(10個)の電圧検出値VFc_dの移動平均である第二電圧移動平均値Vave2を減算して、出力電圧変化量ΔVを算出する。また、補正値算出部43は、基準時刻t0から第一時刻t11までの間に順次検出された複数(10個)の電流検出値IFc_dの移動平均である第一電流移動平均値Iave1から、第一時刻t11から第二時刻t12までの間に順次検出された複数(10個)の電流検出値IFc_dの移動平均である第二電流移動平均値Iave2を減算して、出力電流変化量ΔIを算出する。そのため、本実施形態の系統連系制御装置10は、例えば、第一時間T1に順次検出された複数の検出値を単に平均して変化量を算出し変化量同士を除算して、インピーダンス推定値Z_estを算出する場合と比べて、広範囲(第一時間T1の二倍の時間)の出力電圧変化量ΔVおよび出力電流変化量ΔIを用いてインピーダンス推定値Z_estを算出することができる。よって、本実施形態の系統連系制御装置10は、内部インピーダンスZ0の推定精度を向上させることができる。
【0079】
また、
図1に示すように、内部インピーダンスZ0が大きくなる程、内部インピーダンスZ0による電圧降下分が大きくなる。その結果、発電によって生じる内部電圧E0と、燃料電池11の出力電圧VFcとの差が大きくなる。つまり、インピーダンス推定値Z_estが大きくなる程、上述した電圧降下分の影響が大きくなるので、第一目標値V1_refを補正する補正量を大きくする必要がある。本実施形態の系統連系制御装置10によれば、補正値算出部43は、インピーダンス推定値Z_estが大きくなる程、第一目標値V1_refの補正値V2を大きくする。そのため、本実施形態の系統連系制御装置10は、インピーダンス推定値Z_estに合致した適切な補正値V2によって、第一目標値V1_refを補正することができる。
【0080】
<変形形態>
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、補正値算出部43は、燃料電池11の発電部位の所定時間の温度変化量が所定閾値以下のときには、直近に推定したインピーダンス推定値Z_estを使用することもできる。
【0081】
既述したように、内部インピーダンスZ0は、燃料電池11の発電部位(燃料と酸化剤ガスとを反応させるセルスタック)の温度によって変動する。換言すれば、燃料電池11の発電部位の温度変化が小さいときには、内部インピーダンスZ0の変動も小さくなる。よって、燃料電池11の発電部位の温度変化が小さいときには、内部インピーダンスZ0の推定を行わないで直近に推定したインピーダンス推定値Z_estを使用しても、インピーダンス推定値Z_estの推定誤差は少ない。
【0082】
図7は、変形形態に係り、制御装置16の制御手順の一例を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、
図4に示すフローチャートに対して、ステップS13a、ステップS15aおよびステップS19が追加されている。以下、実施形態と異なる点を中心に説明する。インバータ14の出力電力検出値Pout_dが、インバータ14の出力電力目標値Pout_refと比べて大きいとき(ステップS13でYesの場合)に、制御装置16は、燃料電池11の発電部位の所定時間の温度変化量が所定閾値(温度閾値TH1)以下であるか否かを判断する(ステップS13a)。
【0083】
燃料電池11の発電部位の温度として、例えば、既述したセルスタックの温度(セル温度、雰囲気温度など)が挙げられる。セルスタックの温度は、発電量が多くなるにつれて、上昇する傾向がある。なお、温度変化量の所定閾値(温度閾値TH1)を大きくする程、インピーダンス推定値Z_estの推定誤差は、大きくなる。そのため、許容されるインピーダンス推定値Z_estの推定誤差を考慮して、例えば、シミュレーション、実機による検証等によって、予め、温度変化量を算出する所定時間、所定閾値(温度閾値TH1)などを設定しておくと良い。
【0084】
発電部位の温度変化量が所定閾値(温度閾値TH1)を超えているとき(ステップS13aでNoの場合)には、補正値算出部43は、実施形態と同様にして、インピーダンス推定値Z_estを算出し(ステップS14)、第一目標値V1_refの補正値V2を算出する(ステップS15)。本変形形態では、制御装置16は、ステップS17で燃料電池11の出力電圧VFcの目標値VFc_refを算出した後も、ステップS14で算出した直近のインピーダンス推定値Z_estおよびステップS15で算出した直近の第一目標値V1_refの補正値V2を第一記憶装置16b1に記憶し続ける(ステップS15a)。
【0085】
一方、発電部位の温度変化量が所定閾値(温度閾値TH1)以下のとき(ステップS13aでYesの場合)には、補正値算出部43は、インピーダンス推定値Z_estを、ステップS15aで記憶したインピーダンス推定値Z_estに設定する。また、補正値算出部43は、第一目標値V1_refの補正値V2を、ステップS15aで記憶した補正値V2に設定する(ステップS19)。そして、制御は、ステップS17に進む。
【0086】
本変形形態の系統連系制御装置10によれば、補正値算出部43は、燃料電池11の発電部位の所定時間の温度変化量が所定閾値を超えているときに推定されたインピーダンス推定値Z_estであって直近のインピーダンス推定値Z_estを、温度変化量が所定閾値以下のときのインピーダンス推定値Z_estとする。そのため、本変形形態の系統連系制御装置10は、インピーダンス推定値Z_estの算出頻度を低減することができ、インピーダンス推定値Z_estの推定誤差の抑制と、演算負荷の低減との両立を図ることができる。
【0087】
また、インバータ14の出力電力検出値Pout_dと、インバータ14の出力電力目標値Pout_refとの間の電力差(実施形態における偏差ΔPout)が大きくなる程、第一目標値V1_refの補正値V2を大きくして、燃料電池11の出力電力PFcを速やかに低下させることもできる。この場合、補正値算出部43は、インバータ14の出力電力検出値Pout_dとインバータ14の出力電力目標値Pout_refとの間の電力差(実施形態における偏差ΔPout)と、第一目標値V1_refの補正値V2との間の関係を規定する関係規定部を備えると好適である。関係規定部の上記関係には、上記電力差(実施形態における偏差ΔPout)が大きくなる程、第一目標値V1_refの補正値V2が大きくなる相関関係が含まれると好適である。補正値算出部43は、上記相関関係に従って、第一目標値V1_refの補正値V2を算出すると好適である。
【0088】
関係規定部は、例えば、横軸に上記電力差を採り、縦軸に第一目標値V1_refの補正値V2を採り、上記電力差と第一目標値V1_refの補正値V2との間の関係を示すことにより、これらの関係を規定することができる。これらの関係は、例えば、シミュレーション、実機による検証等によって、予め算出することができる。これらの関係は、マップ、数式等に変換されて、
図2に示す第二記憶装置16b2に記憶される。このように、関係規定部は、例えば、上述したマップ、数式等として捉えることができる。
【0089】
本変形形態の系統連系制御装置10によれば、補正値算出部43は、インバータ14の出力電力検出値Pout_dとインバータ14の出力電力目標値Pout_refとの間の電力差が大きくなる程、第一目標値V1_refの補正値V2が大きくなる相関関係が含まれる関係規定部を備えている。そして、補正値算出部43は、上記相関関係に従って、第一目標値V1_refの補正値V2を算出する。そのため、補正値算出部43は、インバータ14の出力電力検出値Pout_dと、インバータ14の出力電力目標値Pout_refとの間の電力差を考慮して第一目標値V1_refの補正値V2を算出することができる。よって、本変形形態の系統連系制御装置10は、上記電力差が大きくなる程、第一目標値V1_refの補正値V2を大きくして、燃料電池11の出力電力PFcを速やかに低下させることができる。
【0090】
また、燃料電池出力目標値設定部44は、燃料電池11の出力電力PFcに関する目標値として、燃料電池11の出力電流IFcの目標値IFc_refを設定することもできる。この場合、燃料電池11の出力電流IFcの目標値IFc_refの第一の目標値を第一目標値I1_refとし、第一目標値I1_refの補正値を補正値I2とする。燃料電池出力目標値設定部44は、第一目標値算出部41によって算出された第一目標値I1_refから、補正値算出部43によって算出された第一目標値I1_refの補正値I2を減算して、燃料電池11の出力電流IFcの目標値IFc_refを算出し設定する。なお、出力電圧VFcと出力電流IFcとでは、次元が違うので、第一目標値I1_refの補正値I2は、出力電圧VFcの場合の補正値V2と比べて、小さくすると良い。また、第一目標値I1_refの補正値I2は、出力電圧VFcの場合の補正値V2と同様にして、例えば、シミュレーション、実機による検証等によって、予め算出することができる。
【0091】
本発明に係る系統連系制御装置10は、
図4および
図7に示す演算以外にも種々の演算を含めることができる。また、
図4および
図7に示す演算の順序は、適宜変更することができる。さらに、本発明に係る系統連系制御装置10は、多相(例えば、三相)の系統電源およびインバータに適用することもできる。