(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第四工程では、前記蓋部材に設けられた通液路を通して、地中内の液分が前記蓋部材を透過することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の砕石杭の施工方法。
前記第四工程では、砕石の押し固めの程度を、前記ケーシングパイプの貫入に要するトルクに基づいて検出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の砕石杭の施工方法。
前記ケーシングパイプおよび前記拡径部のうちの少なくとも一方に、前記拡径部よりも大径の翼体が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の砕石杭の施工用治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ケーシングパイプに砕石を投入して貫入穴に排出させる際には、ケーシングパイプの先端が完全な開放状態になることが好ましい。
しかしながら、特許文献1の技術では、蓋が地中で開くため、蓋の開放が不完全になることがある。また、特許文献2の技術では、蓋の一部分のみに開口部を設けたに過ぎないので、ケーシングパイプの先端は完全な開放状態にはならない。
このため、従来の技術では、投入した砕石がケーシングパイプの内部で閉塞して、貫入穴に排出できなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ケーシングパイプの内部への土砂流入を防止すると共に、ケーシングパイプの先端を容易かつ確実に開放状態にすることができる砕石杭の施工方法、砕石杭の施工用治具および砕石杭の施工システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る砕石杭の施工方法は、先端に拡径部が設けられたケーシングパイプを、前記拡径部内に蓋部材を離脱自在に収容した状態で地中に貫入する第一工程と、前記ケーシングパイプを地中から引き戻すと共に、前記蓋部材を前記拡径部から離脱させる第二工程と、前記ケーシングパイプ内に地上から砕石を投入する第三工程と、前記ケーシングパイプの貫入と引き戻しを繰り返して砕石を地中内で押し固める第四工程と、を備え
、前記蓋部材は、外形が前記ケーシングパイプの内径よりも大きく前記拡径部の内径よりも小さく形成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、第一工程において、蓋部材が拡径部内に収容されているので、ケーシングパイプの先端開口が閉塞される。このため、ケーシングパイプの内部への土砂流入を防止できる。また、第二工程において、蓋部材を拡径部から離脱させるので、ケーシングパイプが開放されて、貫入穴への砕石の投入を確実に実施できる。さらに、第四工程において、ケーシングパイプの貫入と引き戻しを繰り返すことで、例えば拡径部によって砕石を押し固めることができる。
【0010】
また、前記第四工程では、前記蓋部材は、砕石杭の基礎として用いられることを特徴とする。
この発明によれば、蓋部材をそのまま、砕石杭の一部(基礎)として利用することにより、砕石杭を造成しやすくできる。例えば、蓋部材として、砕石を袋に詰め込んだものを用いることができる。
【0011】
また、前記第四工程では、前記拡径部よりも大径の翼体によって、地中に設置された砕石を押し固めることを特徴とする。
この発明によれば、地中に設置された砕石を確実に押し固めることができる。
【0012】
また、前記第四工程では、前記蓋部材に設けられた通液路を通して、地中内の液分が前記蓋部材を透過することを特徴とする。
この発明によれば、蓋部材に地下水の水圧が作用した場合であっても、拡径部から蓋部材を脱落させることができる。すなわち、拡径部が地下水位以下に貫入すると、蓋部材に水圧が作用する。このため、蓋部材が拡径部から脱落できなくなるおそれがある。しかし、地下水が蓋部材を透過するので、蓋部材に地下水の水圧が作用することなく、拡径部から蓋部材が脱落する。
【0013】
また、砕石の押し固めの程度を、前記ケーシングパイプの貫入に要するトルクに基づいて検出することを特徴とする。
この発明によれば、砕石の押し固めを均一にすることができ、砕石杭の品質、機能の安定化を図ることができる。
【0014】
本発明に係る砕石杭の施工用治具は、地中に貫入されると共に内部に砕石が投入されるケーシングパイプと、前記ケーシングパイプの先端に設けられた拡径部と、前記拡径部内に離脱自在に収容された蓋部材と、を備え
、前記蓋部材は、外形が前記ケーシングパイプの内径よりも大きく前記拡径部の内径よりも小さく形成されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、蓋部材が拡径部内に収容されているので、ケーシングパイプの先端開口が閉塞される。このため、ケーシングパイプの内部への土砂流入を防止できる。また、蓋部材を拡径部から離脱させるので、ケーシングパイプが開放されて、貫入穴への砕石の投入を確実に実施できる。さらに、ケーシングパイプの貫入と引き戻しを繰り返すことで、例えば拡径部によって砕石を押し固めることができる。
【0016】
また、前記ケーシングパイプおよび前記拡径部のうちの少なくとも一方に、前記拡径部よりも大径の翼体が設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、地中に設置された砕石を確実に押し固めることができる。
【0017】
また、前記蓋部材に、通液路が設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、蓋部材に地下水の水圧が作用した場合であっても、拡径部から蓋部材を脱落させることができる。すなわち、拡径部が地下水位以下に貫入すると、蓋部材に水圧が作用する。このため、蓋部材が拡径部から脱落できなくなるおそれがある。しかし、地下水が通液路を介して蓋部材を透過するので、蓋部材に地下水の水圧が作用することなく、拡径部から蓋部材が脱落する。
【0018】
本発明に係る砕石杭の施工システムは、本発明に係る砕石杭の施工用治具と、前記ケーシングパイプを地中に回転させながら貫入させる貫入装置と、を備え、前記貫入装置は、前記ケーシングパイプを介して地中に投入した砕石を前記施工用治具によって押し固めると共に、砕石の押し固めの程度を、前記ケーシングパイプの貫入に要するトルクに基づいて検出することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、砕石の押し固めを均一にすることができ、砕石杭の品質、機能の安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本願の請求項1に係る砕石杭の施工方法、および、請求項6に係る砕石杭の施工用治具によれば、ケーシングパイプの内部への土砂流入を防止すると共に、ケーシングパイプの先端を開放状態にして貫入穴への砕石の投入を確実に実施できる。さらに、例えば拡径部によって砕石を押し固めることができる。
【0021】
本願の請求項8に係る砕石杭の施工システムによれば、砕石の押し固めを均一にして、砕石杭の品質、機能の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第一実施形態〕
以下、図面を参照し、本発明の第一実施形態に係る砕石杭Pの施工方法、砕石杭Pの施工用治具1および砕石杭Pの施工システムSを説明する。なお、以下に示す各寸法などの数値や材質は一例であり、これらの数値や材質は適宜変更することができる。
図1は、本発明の第一実施形態に係る砕石杭Pの施工用治具1の側面図である。
図2は、砕石杭Pの施工用治具1の拡大断面図である。
【0024】
砕石杭Pの施工用治具1は、約2000mmの長さを有するケーシングパイプ2と、ケーシングパイプ2の下端(先端)に連結された拡径部5と、を備える。
ケーシングパイプ2は外径約267mmの鋼管、拡径部5は外径約356mmの鋼管からなり、互いの中心軸が一致するように突き合わせ溶接される。
ケーシングパイプ2と拡径部5には、例えばSTK490が用いられる。
【0025】
ケーシングパイプ2と拡径部5の接続部分には、段差部7が設けられる。段差部7は、ケーシングパイプ2の軸方向に対して垂直に配置された円環形の部材である。
すなわち、段差部7の内周部にケーシングパイプ2の下端が溶接され、段差部7の外周部に拡径部5の上端が溶接される。したがって、ケーシングパイプ2と拡径部5は、完全に連通する。
【0026】
ケーシングパイプ2の上端側には、後述する母管15が接続される継手駒3が設けられる。また、ケーシングパイプ2の下端側には、掘削翼4が設けられる。
掘削翼(翼体)4は、ケーシングパイプ2の外周面から外周方向(ケーシングパイプ2の径方向)に突出し、ケーシングパイプ2の外周面を螺旋状にほぼ一周するように配置された円環形の板状部材である。掘削翼4は、外径が約700mm、ピッチが134mmに形成される。掘削翼4は、例えばケーシングパイプ2の2.5倍径に設定すること等ができる。
掘削翼4は、施工用治具1が正回転(右回転)して地中に貫入(埋入)される際に、施工用治具1を地中に向けて推し進める部材として機能する。また、掘削翼4は、施工用治具1が逆回転(左回転)して地中から引き戻される際に、施工用治具1を地上に向けて推し進める部材としても機能する。
さらに、掘削翼4は、施工用治具1で形成した貫入穴Hに投入された砕石Gを押し固める部材として機能する。
【0027】
拡径部5は、約350mmの長さを有し、下端(先端)が軸方向に対して傾斜するように形成される。具体的には、拡径部5の下端(先端)は、軸方向に垂直な面(水平面)から約25°程度の傾斜を有する。拡径部5の下端を斜めに形成することにより、拡径部5を地下に貫入させやすくなる。
【0028】
また、拡径部5の下端側には、先端掘削翼6が設けられる。先端掘削翼6は、拡径部5の最先端から外周方向に突出する扇状の板片である。先端掘削翼6は、外周方向に約70mm程度の長さを有する。先端掘削翼6は、拡径部5において、周方向に沿った一部分に局所的に設けられている。
先端掘削翼6は、施工用治具1を地中に貫入する際に、拡径部5が貫入を阻害しない(貫入抵抗にならない)ようにするために設けられる。つまり、先端掘削翼6は、掘削翼4と同様に、施工用治具1が正回転(右回転)して地中に貫入される際に、施工用治具1(拡径部5)を地中に向けて推し進めるネジ部として機能する。また、先端掘削翼6は、掘削翼4と同様に、施工用治具1が逆回転(左回転)して地中から引き抜かれる際に、施工用治具1(拡径部5)を地上に向けて推し進めるネジ部としても機能する。
さらに、先端掘削翼6は、施工用治具1で形成した貫入穴Hに投入された砕石Gを押し固める部材として機能する。
【0029】
ケーシングパイプ2の上端には、母管15が継手16を介して連結される。
母管15は、ケーシングパイプ2とほぼ同一形状の部材である。すなわち、母管15は、約2000mmの長さを有する、外径約267mmの鋼管である。母管15の上端側には、ケーシングパイプ2と同様に、継手駒3が設けられる。
母管15とケーシングパイプ2は、互いの中心軸が一致するように突き合わせ配置される。
【0030】
継手16は、ケーシングパイプ2と母管15を連結する円環形の部材である。具体的には、継手16は、外径約312mmの鋼管であり、継手16の内周面に、ケーシングパイプ2と母管15がそれぞれ嵌合する。そして、継手16は、ケーシングパイプ2や母管15に設けられた継手駒3に係合して、ケーシングパイプ2と母管15を連結する。これにより、母管15に加えられた回転トルクがケーシングパイプ2に伝達する。
【0031】
母管15の上端には、さらに母管15が継手16を介して連結される。つまり、継手16は、母管15同士も連結する。
【0032】
施工用治具1は、拡径部5に収容配置される蓋部材10をさらに備える。
蓋部材10は、拡径部5に収容配置されて、ケーシングパイプ2の先端開口を閉塞する部材である。すなわち、蓋部材10は、段差部7に押し付けられる。
つまり、蓋部材10は、外径(外形)がケーシングパイプ2の内径よりも大きく、拡径部5の内径よりも小さく形成される。
蓋部材10は、例えば円筒形や球形等に形成される。砕石Gを袋に詰めて固めたものや鋼等で形成したものであってもよい。蓋部材10は、拡径部5に収容配置されて、ケーシングパイプ2を閉塞するものであれば、形状や材料は任意に設定できる。
蓋部材10は、地下水よりも比重が大きく、後述するように、自重により拡径部5から円滑に落下(離脱)可能とされている。
【0033】
蓋部材10は、ケーシングパイプ2や拡径部5に接続されることなく、拡径部5から離脱自在に配置される。
蓋部材10は、ケーシングパイプ2を地中に貫入する際には、拡径部5に収容配置された状態を維持する。つまり、蓋部材10は、ケーシングパイプ2を地中に貫入する際に、貫入抵抗を受けて段差部7に押し付けられる。これにより、蓋部材10は、ケーシングパイプ2の先端開口を閉塞する。つまり、ケーシングパイプ2と拡径部5が実質的に不連通になる。この際、蓋部材10は、貫入抵抗により損壊したり変形したりして、ケーシングパイプ2の内部に押し込まれることはない。蓋部材10は、ケーシングパイプ2を地中に貫入する際に、ケーシングパイプ2内に土砂が流入すること規制する。
【0034】
一方、蓋部材10は、ケーシングパイプ2を地中から引き戻す際には、蓋部材10は貫入抵抗等を受けないので、自重により拡径部5から離脱(落下)してケーシングパイプ2の先端開口を開放する。つまり、ケーシングパイプ2と拡径部5が連通する。そして、蓋部材10は、拡径部5から離脱すると、貫入穴Hの底部に取り残される。
【0035】
蓋部材10は、地下水(液分)が透過可能な通液路11を有する。上述したように、蓋部材10が砕石Gを袋に詰めて固めたものである場合には、砕石G同士の間の隙間を地下水が通過できる。
蓋部材10を拡径部5に収容した状態で地中に貫入して地下水位以下に達すると、蓋部材10に地下水の水圧が作用する。このため、蓋部材10が段差部7に押し付けられて、拡径部5から脱落できなくなるおそれがある。
そこで、蓋部材10に通液路11を設けて、地下水が蓋部材10を透過するようにした。これにより、蓋部材10に作用する地下水の水圧を緩和され、拡径部5から蓋部材10が容易に脱落できる。
なお、通液路11の数や形状、開口面積等は任意に設定することができる。
【0036】
次に、上述した施工用治具1を用いた砕石杭Pの施工システムSおよび砕石杭Pの施工方法について説明する。
図3は、施工用治具1を用いた砕石杭Pの施工システムSおよび砕石杭Pの施工方法を示す図である。
図4〜
図13は、
図3に続く砕石杭Pの施工方法を工程順に示す図である。
【0037】
なお本実施形態では、砕石杭Pの一例として、地下約3〜5mの間に、押し固めた砕石Gが配置された砕石杭Pを施工する方法について説明する。砕石杭Pは、地表から離れた液状対策範囲(この場合、地下約3〜5m)において杭径が大きく、液状対策範囲から地表までの範囲において杭径が小さい。
【0038】
砕石杭Pの施工システムSは、上述した施工用治具1と、この施工用治具1を地中に貫入させる小型地盤改良機(貫入装置)Mと、からなる。
【0039】
(第一工程)
まず、砕石杭Pの施工方法では、
図3に示すように、小型地盤改良機Mに施工用治具1を設置する。この際、例えば、地面Eの表面を掘削した後、掘削部に蓋部材10を配置し、その後、ケーシングパイプ2を蓋部材10上に建て込み、拡径部5の内部に蓋部材10を収容した状態で、ケーシングパイプ2を小型地盤改良機Mに保持させる。
【0040】
次に、
図4に示すように、小型地盤改良機Mで施工用治具1を正回転(右回転)させて、施工用治具1を地中に貫入する。
この際、蓋部材10は、貫入抵抗を受けて段差部7に押し付けられる。このため、蓋部材10は、拡径部5から脱落することなく、地中に貫入する。
また、施工用治具1の先端に、ケーシングパイプ2よりも大径の拡径部5を設けているが、掘削翼4を備えているので、施工用治具1は、円滑に地中に向けて推し進められる。
そして、ケーシングパイプ2の上端側のみが地上に露出するまで施工用治具1を地中に貫入する。さらに、ケーシングパイプ2の上端に、母管15を継手16を介して連結する。
【0041】
次に、
図5に示すように、小型地盤改良機Mで施工用治具1を正回転させて、施工用治具1を更に地中に貫入する。母管15の上端側のみが地上に露出するまで、施工用治具1を地中に貫入する。
そして、母管15の上端に、2つ目の母管15を、継手16を介して連結する。
【0042】
次に、
図6に示すように、小型地盤改良機Mで施工用治具1を正回転させて、施工用治具1を更に地中に貫入する。2つ目の母管15の上端側のみが地上に露出するまで、施工用治具1を地中に貫入する。
これにより、施工用治具1の先端(拡径部5)は、地下約5.8mに配置される。
【0043】
(第二工程)
次に、
図7に示すように、小型地盤改良機Mで施工用治具1を逆回転(左回転)させる。
これにより、施工用治具1が地上に向けて引き戻され、施工用治具1の先端(拡径部5)は、地下約5.3mに配置される。施工用治具1の下方に、貫入穴Hが現れる。貫入穴Hは、ケーシングパイプ2の貫入により形成される。
【0044】
次に、
図8に示すように、2つの母管15とケーシングパイプ2に長尺ロッド17を挿入する。そして、長尺ロッド17で拡径部5に収容されている蓋部材10を突く(押圧する)。
これにより、蓋部材10は、拡径部5から離脱して、自重により貫入穴Hの底部に落下する。なお、長尺ロッド17で蓋部材10を突くことなく、蓋部材10が自重により貫入穴Hの底部に落下することもある。
【0045】
貫入穴Hの底部に落下した蓋部材10は、そのまま砕石杭Pの基礎として用いられる。蓋部材10は、軟弱地盤に砕石Gがまばらに食い込んでいくのを抑制する。つまり、砕石Gを軟弱地盤領域で押し固める場合であっても、砕石Gが軟弱地盤に食い込んでいくのを、蓋部材10によって規制(邪魔)することができる。したがって、蓋部材10を起点にすることで、砕石杭Pを造成しやすくなる。
【0046】
(第三工程)
次に、
図9に示すように、2つ目の母管15の上端にホッパー18を装着する。そして、このホッパー18に砕石Gを投入して、施工用治具1を介して、貫入穴Hに砕石Gを埋め込む(投入、排出する)。
施工用治具1のケーシングパイプ2と拡径部5が完全に連通しているので、砕石Gが施工用治具1の内部で詰まることがなく、砕石Gが貫入穴Hに円滑に投入される。
【0047】
(第四工程)
次に、
図10に示すように、小型地盤改良機Mで施工用治具1を正・逆回転させる。つまり、施工用治具1を地中で上下動させる。具体的には、施工用治具1の貫入と引き戻しを繰り返して、施工用治具1の先端を地下約4〜5mの間で5〜10回程度上下動させる。そして、徐々に施工用治具1を地上に向けて引き戻す。なおこのとき、必要に応じて砕石Gを追加で投入してもよい。
これにより、ケーシングパイプ2や母管15の内部に充填された砕石Gが貫入穴Hに円滑に投入されるとともに、貫入穴Hに投入された砕石Gが、拡径部5や先端掘削翼6、掘削翼4により地中で押し広げられながら押し固められる。砕石Gの押し固めの程度は、小型地盤改良機Mによる施工用治具1の回転トルクに基づいて検出され、本実施形態では、例えば前記回転トルクが最大で80kN・mになるまで、施工用治具1を正・逆回転させる。これにより、砕石Gは、ケーシングパイプ2や掘削翼4の外径と同等、またはそれ以上の直径を有する砕石杭Pの一部となる。なお、施工用治具1の回転トルクは、小型地盤改良機Mに設けた測定器(不図示)によって計測される。
【0048】
次に、
図11に示すように、2つ目の母管15と継手16を撤去して、1つ目の母管15の上端にホッパー18を装着する。
そして、このホッパー18から砕石Gを投入して、1つの母管15と施工用治具1を介して、地中に砕石Gを排出し、地中で押し固められた前記砕石杭Pの一部の上方に砕石Gを投入する。
【0049】
次に、
図12に示すように、小型地盤改良機Mで施工用治具1を再び正・逆回転させる。具体的には、施工用治具1の貫入と引き戻しを繰り返して、施工用治具1の先端を地下約3〜4mの間で5〜10回程度上下動させる。なおこのとき、必要に応じて砕石Gを追加で投入してもよい。
これにより、ケーシングパイプ2や母管15の内部に充填された砕石Gが貫入穴Hに円滑に投入されるとともに、貫入穴Hに投入された砕石Gが地中で押し固められる。このとき、前記回転トルクが最大で80kN・mになるまで、施工用治具1を正・逆回転させる。これにより、地下約3〜5mの間の液状対策範囲に、押し固められた砕石Gが配置される。
【0050】
最後に、
図12に示すように、ケーシングパイプ2内に砕石Gを充填した状態で、小型地盤改良機Mで施工用治具1を逆回転させて、
図13に示すように、施工用治具1を地中から引き抜く。これにより、砕石杭Pが造成される。この砕石杭Pでは、液状対策範囲よりも上方に位置して地表に至るまでの範囲において砕石が押し広げられて押し固められておらず、この範囲における杭径が、液状対策範囲における杭径よりも小さい。
【0051】
以上説明したように、第一実施形態に係る砕石杭Pの施工方法、砕石杭Pの施工用治具1および砕石杭Pの施工システムSによれば、蓋部材10が拡径部5に収容されているので、ケーシングパイプ2の先端開口が閉塞される。このため、ケーシングパイプ2の内部への土砂流入を防止できる。また、蓋部材10を拡径部5から離脱させるので、ケーシングパイプ2が開放されて、貫入穴Hへの砕石Gの投入を確実に実施できる。
【0052】
また、蓋部材10として、砕石Gを袋に詰め込んだものを用いたので、この蓋部材10をそのまま砕石杭Pの基礎として用いることができる。したがって、砕石杭Pを造成しやすくなる。
【0053】
また、拡径部5よりも大径の掘削翼4によって、地中に設置された砕石Gを押し固めるので、砕石Gを確実に押し固めることができる。
【0054】
また、蓋部材10に設けられた通液路11を通して、地下水が蓋部材10を透過するので、拡径部5が地下水位以下まで貫入した場合であっても、拡径部5から蓋部材10が円滑に脱落する。
なぜなら、拡径部5が地下水位以下に貫入して蓋部材10に地下水の水圧が作用して段差部7に押圧される場合であっても、地下水が通液路11を介して蓋部材10を透過する。このため、蓋部材10に地下水の水圧が作用することなく、拡径部5から蓋部材10が脱落する。
【0055】
また、砕石Gの押し固めの程度を、施工用治具1の貫入に要するトルクに基づいて検出するので、砕石Gの押し固めを均一にすることができ、砕石杭Pの品質、機能の安定化を図ることができる。
【0056】
(検証試験)
なお、第一実施形態に係る砕石杭Pの施工方法、砕石杭Pの施工用治具1および砕石杭Pの施工システムSの検証試験を行ったところ、以下の結果が確認された。
(1)施工用治具1の貫入深さ以上に深い位置まで砕石杭Pが造成されたことが確認された。
(2)砕石杭Pの外径が、掘削翼4の外径よりも大きくなり、掘削翼4の外径以上の外径の砕石杭Pが造成されたことが確認された。
【0057】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態に係る砕石杭Pの施工方法、砕石杭Pの施工用治具21および砕石杭Pの施工システムSについて、
図14を参照して説明する。
なお、この第二実施形態においては、第一実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0058】
図14は、本発明の第二実施形態に係る砕石杭Pの施工用治具21の側面図である。
施工用治具21は、掘削翼4および先端掘削翼6に代えて、掘削翼24のみを備える。
掘削翼(翼体)24は、拡径部5の外周面から外周方向に突出し、拡径部5の外周面を螺旋状にほぼ一周するように配置される。掘削翼24は、外径やピッチは、掘削翼4と同一である。
掘削翼24は、掘削翼4および先端掘削翼6と同一の機能を発揮する。
【0059】
施工用治具21は、第一実施形態に係る施工用治具1と同一の作用効果を奏する。また、施工用治具21を用いた砕石杭Pの施工方法および砕石杭Pの施工システムSも、第一実施形態と同一の作用効果を奏する。
【0060】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、拡径部5から蓋部材10を離脱させる方法は、長尺ロッド17をケーシングパイプ2に挿入する場合に限らない。施工用治具1を地上に向けて引き戻して、拡径部5から蓋部材10を自然に落下させてもよい。また、施工用治具1を上下方向に振動させて、拡径部5から蓋部材10を脱落させてもよい。さらに、ケーシングパイプ2の上端側から空圧や水圧をかけて、拡径部5から蓋部材10を脱離させてもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。