(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに並列接続された複数の膜ろ過装置により、前記膜ろ過装置の前段側から供給された被処理水をろ過して前記膜ろ過装置の後段側から浄水を流出させる浄水システムの制御方法であって、
前記複数の膜ろ過装置は、膜ろ過動作を行う運転状態では、最小処理水量及び最大処理水量の各設定値により定められる処理水量範囲で運転するように設定されており、
前記浄水システムに要求される総浄水量及び前記膜ろ過装置の処理水量範囲に基づいて前記総浄水量を得るのに必要な前記膜ろ過装置の必要台数を決定する必要台数決定ステップと、
前記複数の膜ろ過装置の中で運転可能な膜ろ過装置の台数を把握し、前記必要台数と、運転可能な膜ろ過装置の台数とを比較する比較ステップと、
前記比較の結果に基づき、前記運転可能な膜ろ過装置の台数が前記必要台数以上である場合には、前記必要台数の前記膜ろ過装置を前記運転状態とし、前記運転可能台数が前記必要台数未満である場合には、前記運転可能台数の前記膜ろ過装置を前記運転状態として、前記最大処理水量の設定値で運転させる、運転ステップと、
を含み、さらに、前記膜ろ過装置の通水量を制御するにあたり、
前記膜ろ過装置の運転を停止する際に当該膜ろ過装置への通水量を記憶する工程と、
運転を停止した前記膜ろ過装置の運転を再開する際に通水量を前記記憶した通水量まで一段階で増加させる工程と、を含む第1の通水量制御方法、および、
前記運転可能台数が前記必要台数以上である場合に、待機状態にあった膜ろ過装置を運転状態とするにあたり、前記総浄水量及び前記必要台数に基づいて算出した前記膜ろ過装置一台あたりの処理水量を達成するために必要な通水量を予測し、前記待機状態にあった膜ろ過装置への通水量を、予測した前記通水量まで一段階で増加させる、第2の通水量制御方法
のいずれかを実施する、浄水システムの制御方法。
前記必要台数決定ステップにおいて、運転状態の膜ろ過装置の台数を把握し、前記処理水量範囲内で前記総浄水量が得られる運転台数の範囲内から、把握した運転状態の膜ろ過装置の台数に最も近い台数を必要台数として決定する請求項1に記載の浄水システムの制御方法。
前記浄水システムは、前記必要台数決定ステップにて、前記総浄水量を前記処理水量範囲内の所定の設定値で除し、得られた値の整数部分を前記必要台数として決定する、請求項1に記載の浄水システムの制御方法。
前記運転可能台数が前記必要台数未満である場合に、前記運転可能台数の前記膜ろ過装置を前記運転状態として、前記最大処理水量の設定値で動作するように前記膜ろ過装置の運転を制御した場合に、前記運転可能台数が変化したことを検知して、前記比較ステップ及び前記運転ステップを再度実施する、請求項1〜3の何れか一項に記載の浄水システムの制御方法。
互いに並列接続された複数の膜ろ過装置により、前記膜ろ過装置の前段側から供給された被処理水をろ過して前記膜ろ過装置の後段側から浄水を放出する浄水システムであって、
前記複数の膜ろ過装置は、膜ろ過動作を行う運転状態では、最小処理水量及び最大処理水量の各設定値により定められる処理水量範囲で運転するように設定されており、
前記浄水システムは、
前記複数の膜ろ過装置の運転を制御する制御部を備え、該制御部は、
前記浄水システムに要求される総浄水量及び前記膜ろ過装置の処理水量範囲に基づいて前記総浄水量を得るのに必要な前記膜ろ過装置の必要台数を決定し、
前記複数の膜ろ過装置の中で運転可能な膜ろ過装置の台数を把握し、
前記必要台数と、運転可能な膜ろ過装置の台数とを比較し、
前記比較の結果に基づき、前記運転可能な膜ろ過装置の台数が前記必要台数以上である場合には、前記必要台数の前記膜ろ過装置を前記運転状態とし、前記運転可能台数が前記必要台数未満である場合には、前記運転可能台数の前記膜ろ過装置を前記運転状態として、前記最大処理水量の設定値で運転させ、さらに、
前記膜ろ過装置の通水量を制御するにあたり、
前記膜ろ過装置の運転を停止する際に当該膜ろ過装置への通水量を記憶し、
運転を停止した前記膜ろ過装置の運転を再開する際に通水量を前記記憶した通水量まで一段階で増加させること、を含む第1の通水量制御、および、
前記運転可能台数が前記必要台数以上である場合に、待機状態にあった膜ろ過装置を運転状態とするにあたり、前記総浄水量及び前記必要台数に基づいて算出した前記膜ろ過装置一台あたりの処理水量を達成するために必要な通水量を予測し、前記待機状態にあった膜ろ過装置への通水量を、予測した前記通水量まで一段階で増加させる、第2の通水量制御
のいずれかを実施する、浄水システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、浄水場などでは、システム全体として安定的に所定の処理水量を得ることが重要である。
【0008】
しかし、運転台数を変更するだけの従来のシステムでは、故障時やシステム全体に求められている処理水量が変動した際に、所望水量の安定的な供給が迅速にできなかった。具体的には、従来のシステムでは各膜ろ過装置の処理水量を制御していなかったので、故障時や要求処理水量が変動した際に運転台数と同時に運転中の各膜ろ過装置の処理水量も変動させており、処理水量が安定するのに時間がかかった。特に並列接続された膜ろ過装置を採用した浄水システムでは、一のろ過装置の処理水量の変動が他のろ過装置に影響を与え易いため、処理水量が安定するのに長時間を要していた。
【0009】
そこで、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、浄水システムの運転条件が変動した際に、迅速且つ安定的に所望水量を供給することができる、浄水システム及び浄水システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明に係る浄水システムの制御方法は、互いに並列接続された複数の膜ろ過装置により、前記膜ろ過装置の前段側から供給された被処理水をろ過して前記膜ろ過装置の後段側から浄水を流出させる浄水システムの制御方法であって、前記複数の膜ろ過装置は、膜ろ過動作を行う運転状態では、最小処理水量及び最大処理水量の各設定値により定められる処理水量範囲で運転するように設定されており、前記浄水システムに要求される総浄水量及び前記膜ろ過装置の処理水量範囲に基づいて前記総浄水量を得るのに必要な前記膜ろ過装置の必要台数を決定する必要台数決定ステップと、前記複数の膜ろ過装置の中で運転可能な膜ろ過装置の台数を把握し、前記必要台数と、運転可能な膜ろ過装置の台数とを比較する比較ステップと、前記比較の結果に基づき、前記運転可能な膜ろ過装置の台数が前記必要台数以上である場合には、前記必要台数の前記膜ろ過装置を前記運転状態とし、前記運転可能台数が前記必要台数未満である場合には、前記運転可能台数の前記膜ろ過装置を前記運転状態として、前記最大処理水量の設定値で運転させる、運転ステップと、を含むことを特徴とする。
このような浄水システムの制御方法によれば、浄水システムの運転条件が変動した際に、迅速且つ安定的に所望水量を供給することができる。
【0011】
また、本発明に係る浄水システムの制御方法において、前記必要台数決定ステップにおいて、運転状態の膜ろ過装置の台数を把握し、前記処理水量範囲内で前記総浄水量が得られる運転台数の範囲内から、把握した運転状態の膜ろ過装置の台数に最も近い台数を必要台数として決定することが好ましい。
このような浄水システムの制御方法によれば、膜ろ過装置の処理水量範囲内である限りにおいて、膜ろ過装置を運転状態から他の状態へと変更せずに浄水システムの運転を継続するため、浄水システムの応答性を一層向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る浄水システムの制御方法において、前記必要台数決定ステップにて、前記総浄水量を前記処理水量範囲内の所定の設定値で除し、得られた値の整数部分を前記必要台数として決定することが好ましい。
このような浄水システムの制御方法によれば、膜ろ過装置を所定の処理水量に近い処理水量で運転させることができるので、浄水システムの応答性を一層向上させることができる。
【0013】
さらに、本発明に係る浄水システムの制御方法において、前記膜ろ過装置の運転を停止する際に当該膜ろ過装置への通水量を記憶する工程と、運転を停止した前記膜ろ過装置の運転を再開する際に通水量を前記記憶した通水量まで一段階で増加させる工程と、を含む、ことが好ましい。
このような浄水システムの制御方法によれば、目的とする処理水量を安定的に得られるようになるまでの時間を短縮することができ、浄水システムの制御の安定性を一層向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る浄水システムの制御方法において、前記運転可能台数が前記必要台数以上である場合に、待機状態にあった膜ろ過装置を運転状態とするにあたり、前記総浄水量及び前記必要台数に基づいて算出した前記膜ろ過装置一台あたりの処理水量を達成するために必要な通水量を予測し、前記待機状態にあった膜ろ過装置への通水量を、予測した前記通水量まで一段階で増加させることが好ましい。
このような浄水システムの制御方法によれば、所望の処理水量を安定的に得られるようになるまでの時間を一層短縮することができ、浄水システムの制御の安定性をより一層向上させることができる。
【0015】
さらに、本発明に係る浄水システムの制御方法において、前記運転可能台数が前記必要台数未満である場合に、前記運転可能台数の前記膜ろ過装置を前記運転状態として、前記最大処理水量の設定値で動作するように前記膜ろ過装置の運転を制御した場合に、前記運転可能台数が変化したことを検知して、前記比較ステップ及び前記運転ステップを再度実施することが好ましい。
このような浄水システムの制御方法によれば、急激に総浄水量が増加した場合であっても、迅速に所望の総浄水量を達成することができる。
【0016】
また、上記目的を達成する本発明に係る浄水システムは、互いに並列接続された複数の膜ろ過装置により、前記膜ろ過装置の前段側から供給された被処理水をろ過して前記膜ろ過装置の後段側から浄水を放出する浄水システムであって、前記複数の膜ろ過装置は、膜ろ過動作を行う運転状態では、最小処理水量及び最大処理水量の各設定値により定められる処理水量範囲で運転するように設定されており、前記浄水システムは、前記複数の膜ろ過装置の運転を制御する制御部を備え、該制御部は、前記浄水システムに要求される総浄水量及び前記膜ろ過装置の処理水量範囲に基づいて前記総浄水量を得るのに必要な前記膜ろ過装置の必要台数を決定し、前記複数の膜ろ過装置の中で運転可能な膜ろ過装置の台数を把握し、前記必要台数と、運転可能な膜ろ過装置の台数とを比較し、前記比較の結果に基づき、前記運転可能な膜ろ過装置の台数が前記必要台数以上である場合には、前記必要台数の前記膜ろ過装置を前記運転状態とし、前記運転可能台数が前記必要台数未満である場合には、前記運転可能台数の前記膜ろ過装置を前記運転状態として、前記最大処理水量の設定値で運転させる、ことを特徴とする。
このような浄水システムの制御方法によれば、浄水システムの処理水量が変動した際に、迅速且つ安定的に所望水量を供給することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、浄水システムの処理水量が変動した際に、迅速且つ安定的に所望水量を供給することができる、浄水システム及びそのような浄水システムの制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。本発明による浄水システムの制御方法は、本発明による浄水システムにおいて実施されうる。本発明による浄水システムは、互いに並列接続された複数の膜ろ過装置により、かかる膜ろ過装置の前段側から供給された被処理水をろ過して膜ろ過装置の後段側から処理水を放出する浄水システムである。そして、本発明による浄水システム及び浄水システムの制御方法は、特に限定されることなく、上水処理、下水処理、工業用水処理、排水処理、海水淡水化などの各種水処理において被処理水中の汚濁物質などを分離除去する際に用いることができる。特に、本発明による浄水システム及び浄水システムの制御方法は、安定的な処理水量が求められる上水処理に好適である。
さらに、本発明による浄水システム及び浄水システムの制御方法は、特に限定されることなく、ポンプ送水あるいは自然流下により送水された被処理水をろ過するために用いることができる。特に、本発明による浄水システム及び浄水システムの制御方法は、並列に接続された膜ろ過装置間の干渉が大きく、膜ろ過装置の処理水量を変動させた際の影響が大きい、自然流下により送水された被処理水をろ過する浄水システムに好適である。
また、膜ろ過装置を備える浄水システムでは、膜ろ過装置の前段側あるいは後段側に薬品注入設備等が設けられ、かかる薬品注入設備等を用いて、被処理水を前処理し、及び/又は処理水を後処理することが多いが、安定的な処理水量を達成可能な本発明による浄水システム及び浄水システムの制御方法によれば、薬品注入設備等を用いたこれらの処理も安定化させることができる。
【0020】
(浄水システム)
図1は、本発明の一実施形態による浄水システムの概略構成を示す図である。浄水システム10は、原水槽11、互いに並列接続された膜ろ過装置12a〜12c、浄水槽13、及び制御部14を備える。更に、膜ろ過装置12aは、浄水システムの被処理水である原水が膜ろ過装置12aに入水する側である前段側に通水制御手段121aを備える。膜ろ過装置12b及び12cも同様に前段側にそれぞれ通水制御手段121b及び121cを備える。浄水システム10では、原水槽11から原水配管15を経て膜ろ過装置12a〜12cに供給された被処理水をろ過して、得られた処理水は処理水配管16を経て浄水槽13に供給される。
なお、
図1では、送水圧力は、原水槽11における原水水頭と浄水槽13における浄水水頭との水頭差によって付与される。すなわち、
図1では、浄水システム10は、自然流下による浄水システムであるものとして図示する。
【0021】
<膜ろ過装置>
膜ろ過装置12a〜12cは、浄水システム10の運転時において、膜ろ過動作を行う運転状態と、膜ろ過動作の実施は可能であるが意図的に膜ろ過動作を行わない待機状態と、膜ろ過性能を再生するための物理洗浄を行う再生状態と、例えば故障などにより膜ろ過動作を行うことができない運転不能状態との何れかとなるように構成されている。なお、運転状態および待機状態にある膜ろ過装置は、運転可能な膜ろ過装置であり、再生状態および運転不能状態にある膜ろ過装置は、運転不可能な膜ろ過装置である。そして、膜ろ過装置のろ過膜としては、例えばセラミックろ過膜を用いることができる。なお、明瞭のために、
図1では3台の膜ろ過装置12a〜12cのみを図示するが、浄水システム10は3台以上、或いは2台以下の膜ろ過装置を備えることができる。膜ろ過装置12a〜12cは、ろ過性能を保つために、運転状態となった時点から一定時間後、或いは、膜差圧が所定値に達した後に物理洗浄を実施して膜ろ過性能を再生する再生状態となる。ここで、浄水システム10では、同時期に再生状態に入ることができる膜ろ過装置の台数に上限を設け、当該上限値の台数の膜ろ過装置が再生状態に入っている場合には、何れかの膜ろ過装置の再生が終了するまで他の膜ろ過装置は新たに再生状態に入らないようにしてもよい。
【0022】
膜ろ過装置12a〜12cは、それらの最小処理水量の設定値以上最大処理水量の設定値以下の処理水量範囲で運転するように通水量が設定されている。ここで、膜ろ過装置12a〜12cの「最大処理水量の設定値」は、膜ろ過装置の仕様にて定められた時間当たりの流量(m
3/h)の最大値を上限として、任意に定めることができる値である。原則的に、複数の膜ろ過装置12a〜12cについて、各設定値は共通の値とする。かかる設定値は、浄水システム10に求められる制御の応答性や特性、さらには浄水システム10の設置状況や設置目的などを勘案した処理水量範囲を規定するように定めることができる。
例えば、「最大処理水量の設定値」は、膜ろ過装置12a〜12cの仕様にて定められた時間当たりの流量(m
3/h)の上限値以下の値であって、浄水システム10全体としての所望の総処理水量を、通常「運転状態」とすることが想定される台数にて除して得られた値とすることができる。他方、「最小処理水量の設定値」は、例えば、上記所望の総処理水量を、浄水システム10が備える膜ろ過装置12a〜12cの全台数にて除して得られた値とすることができる。
なお、最小処理水量と最大処理水量の各設定値が近い値であるほど、膜ろ過装置12a〜12cが処理する水量の変動が少なく、制御により処理水量を変更した場合であっても、迅速に制御を安定化させることができるが、当然、各設定値が近いほど、浄水システムとしての柔軟性は低くなるため、これらのバランスを考慮して各設定値を定めることが好ましい。特に、最小処理水量は、浄水システム10が自然流下による送水方式を採用しており、通水制御手段121a〜121cがバルブとして実装される場合には、少なくともキャビテーションが生じないような設定値とすることが好ましい。
【0023】
<通水制御手段>
膜ろ過装置12a〜12cに備えられた通水制御手段121a〜121cは、例えば、バルブやポンプであり得る。
図1においては、一例として、通水制御手段121a〜121cは開度調整可能なバルブとして図示する。通水制御手段121a〜121cは、それぞれ、膜ろ過装置12a〜12cの前段側に配置され、膜ろ過装置12a〜12cの通水量を制御する。通水制御手段121a〜121cがバルブである場合には、それらのバルブ開度を種々設定し、或いはそれらを開閉することにより、膜ろ過装置12a〜12cにより得られる処理水量を調節し、或いは膜ろ過装置12a〜12cの運転状態を切り替えることができる。また、通水制御手段121a〜121cがインバーター駆動によるポンプである場合には、ポンプの回転数を適宜制御し、或いはポンプを駆動/停止することにより、膜ろ過装置12a〜12cにより得られる処理水量を調節し、或いは膜ろ過装置12a〜12cの運転状態を切り替えることができる。
【0024】
<制御部>
さらに、浄水システム10の制御部14は、膜ろ過装置12a〜12cの運転状態を把握及び制御すると共に、通水制御手段121a〜121cをモニタリング及び制御するように構成されている。具体的には、制御部14は、膜ろ過装置12a〜12cの運転状態が運転状態、待機状態、運転不能状態、及び再生状態のいずれであるかを把握している。更に、制御部14は、バルブとして構成される通水制御手段121a〜121cのバルブ開度及び処理水量をモニタリングし、図示しない記憶部に記憶することが好ましい。バルブ開度は、膜ろ過装置12a〜12cの通水量に対応する。制御部14によるモニタリングは、バルブとして構成される通水制御手段121a〜121cのバルブ開度が変更される度に行われても良いし、浄水システム10の運転中に定期的に行われても良い。さらには、制御部14は、ある膜ろ過装置を運転状態から他の状態に切り替えた際に、切替後所定時間経過し膜ろ過装置が安定的に運転している時点におけるバルブ開度及び処理水量を記憶することが好ましく、運転状態から待機状態、運転不能状態、又は再生状態に移行する直前のバルブ開度及び処理水量を記憶することが更に好ましい。このように、待機状態、運転不能状態、又は再生状態にある膜ろ過装置について、直近の運転状態におけるバルブ開度及び処理水量を記憶しておくことで、後述するように、浄水システム10の制御の安定性を向上させるための制御を実施することができる。なお、制御部14は、例えば、演算機能を有するコンピュータにより実装され、図示しない記憶部は、例えば、メモリにより実装される。
以下、制御部14による浄水システム10の制御方法について更に詳細に説明する。
【0025】
<浄水システム制御方法>
図2は、本発明の一実施形態による浄水システムの制御方法を説明するフローチャートである。まず、制御部は、複数の膜ろ過装置の運転を制御するにあたり、浄水システムが供給するべき浄水量である総浄水量(m
3/日)を設定する総浄水量設定ステップ(ステップS01)を実施する。ステップS01では、例えば、浄水システムが、上水処理用の浄水システムである場合には、制御部は、要求水量を総浄水量として設定することができる。
【0026】
次に、制御部は、ステップS01で設定した総浄水量、及び膜ろ過装置の処理水量範囲に基づいて膜ろ過装置の必要台数を決定する必要台数決定ステップ(ステップS02)を実施する。ここで、浄水システムにおける必要台数は、総浄水量を最大処理水量の設定値で除して得られる値と、総浄水量を最小処理水量の設定値で除して得られる値との間の整数値となれば任意の台数に決定することができるが、以下の2通りの決定方法を採用することが好ましい。
【0027】
まず、第一の必要台数決定方法としては、運転状態の膜ろ過装置の台数を把握し、処理水量範囲内で総浄水量が得られる運転台数の範囲内から、把握した運転状態の膜ろ過装置の台数に最も近い台数を必要台数として決定する方法が挙げられる。膜ろ過装置を新たに運転または停止した場合には急激な流れの変化に起因して並列に接続された膜ろ過装置間で干渉(例えば、各膜ろ過装置への送水圧力の変動など)が生じ得るところ、このように、現状運転している膜ろ過装置の台数に最も近い台数を必要台数とし、運転台数の変更を可能な限り少なくすれば、膜ろ過装置の運転または停止によって並列に接続された膜ろ過装置間で干渉が生じて運転状態が変動するのを抑制し、浄水システムを安定的に運転することができる。
【0028】
この方法の一例としては、
図3に示す方法が挙げられる。具体的には、既に浄水システム10を運転している状態においてステップS02を実施するに当たり、ステップS02において、現状運転している膜ろ過装置の台数(以下、「現状運転台数」ともいう)を取得し、ステップS01で設定した総浄水量を、取得した現状運転台数で除算し、設定した総浄水量を得るために現状運転している膜ろ過装置一台あたりが供給すべき処理水量を算出する(ステップS02−1A)。そして、制御部は、かかる処理水量が膜ろ過装置の処理水量範囲内であるかを判定する(S02−2A)。そして、ステップS02−2Aにおける判定結果が「はい」であれば、制御部は、現状運転台数を必要台数として決定する(ステップS02−6A)。一方、ステップS02−2Aにおける判定結果が「いいえ」である場合には、制御部は処理水量が膜ろ過装置の最大処理水量の設定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS2−3A)。ステップS2−3Aにおける判定結果が「いいえ」であれば、制御部は総浄水量を(現状運転台数−n)台で除し(ステップS02−4A)、再度ステップS02−2Aにて判定を行う。一方、ステップS2−3Aにおける判定結果が「はい」であれば、制御部は総浄水量を(現状運転台数+n)台で除し(ステップS02−5A)、再度ステップS02−2Aにて判定を行う。そして、制御部は、ステップS02−4AまたはステップS02−5Aにおけるnの数を1ずつ増やしつつ、ステップS02−2Aにおける判定結果が「はい」になるまでこれを繰り返す。
【0029】
また、この方法の他の例では、現状運転台数を把握して、さらに、総浄水量を最大処理水量の設定値で除して得られる値と、総浄水量を最小処理水量の設定値で除して得られる値との間の整数値(即ち、処理水量範囲内で総浄水量を供給可能な台数範囲)を取得するステップ(ステップS02−1B、図示しない)を行い、かかる整数値の中から現状運転台数に最も近い台数を必要台数として決定する(ステップS02−6A)ことができる。
【0030】
第2の必要台数の決定方法としては、総浄水量を処理水量範囲内の所定の設定値で除し、得られた値の整数部分又は、かかる値に最も近い整数を必要台数として決定する方法(ステップS02−1C、図示しない)が挙げられる。例えば、「処理水量範囲内の所定の設定値」は、被処理水の水質や浄水システムの設置状況などを考慮して定めることができる、膜ろ過装置への負荷が少ない処理水量であり得る。例えば、「処理水量範囲内の所定の設定値」を「最小処理水量の設定値」と一致させても良い。この場合、膜ろ過装置をなるべく少ない処理水量で運転させることができるので、膜ろ過装置への負荷が低く、膜ろ過装置の長寿命化に寄与することができる。かかる方法により決定された必要台数は、後述するステップS03における判定へと送られる。或いは、「処理水量範囲内の所定の設定値」は、「現状運転している膜ろ過装置の処理水量」と一致させても良い。この場合、現状運転している各膜ろ過装置について運転状態の変動を最小化して、浄水システムを安定的に運転することができる。さらには、「処理水量範囲内の所定の設定値」を「処理水量範囲の中間値」と一致させることもできる。
【0031】
このような、第1及び第2の必要台数の決定方法は、組み合わせて用いることももちろん可能である。例えば、ステップS01の直後に、ステップS01の開始前の総浄水量(前回の設定値)からの総浄水量の増減を判定するステップをさらに設けて、総浄水量が減少する場合には、ステップS02−1Cに進むこととし、その他の場合にはステップS02−1A又はステップS02−1Bに進むこととしても良い。
【0032】
そして、制御部は、運転可能な膜ろ過装置の台数を把握し、運転可能台数がステップS02にて決定した必要台数以上であるかを判定する(ステップS03)。ここで、制御部は、運転可能な膜ろ過装置の台数として、その時点において運転状態及び待機状態にある膜ろ過装置や、運転不能状態から復帰して運転可能となった膜ろ過装置の合計台数である運転可能台数を把握する。ステップ03において「はい」と判定された場合、すなわち、運転可能台数が必要台数以上である場合には、制御部は、必要台数の膜ろ過装置を運転する(ステップS04)。このとき、制御部は、ステップS01にて把握した総浄水量を必要台数で按分した水量が膜ろ過装置一台あたりの処理水量となるように、各通水制御手段による通水量を調節する。また、制御部は、浄水システムの安定的な運転を維持する観点から、通常は、可能な限り現状運転している膜ろ過装置が運転を継続するように(即ち、新たに運転/停止させる膜ろ過装置の数が少なくなるように)、運転させる膜ろ過装置を選択する。
【0033】
ここで、膜ろ過装置の「通水量」及び「処理水量」とは以下のような関係にある。膜ろ過装置は所定の通水量で通水された被処理水をろ過膜によりろ過して処理水を得る装置であるが、このろ過膜は、使用により被処理水中の不純物等によって目詰まりを生じる。従って、上述したように膜ろ過装置には物理洗浄が必須となっている。さらに、不純物等による目詰まりにより、膜ろ過装置のろ過膜のろ過性能は、膜ろ過装置の運転中に低下していくため一定ではない。このため通水量と処理水量との関係は、膜ろ過装置の運転期間の長さや、膜ろ過装置自体の経年劣化の度合いによって異なる。従って、膜ろ過装置の運転期間中において、所望の浄水量が一定の場合であっても、かかる所望の浄水量を得るためには、定期的に通水量と処理水量の関係をモニタリングして、その時々のろ過性能に応じた通水量とする必要がある。また、複数の膜ろ過装置を備える浄水システムにあっては、往々にして、膜ろ過装置毎にろ過性能が異なる。このため、各膜ろ過装置の後段側において流量計等の処理水量を測定するための測定装置を配置して処理水量を測定し、制御部により、通水制御手段による通水量と、測定装置により測定した処理水量とを対応付けることが好ましい。そして、制御部は、各膜ろ過装置について得られた通水量と処理水量との関係に基づいて、通水制御手段による通水量を調節することが好ましい。
このように、膜ろ過装置の「通水量」と「処理水量」との関係は膜ろ過装置の運転期間中において経時的に変化し、また、膜ろ過装置毎に異なるものである。
【0034】
さらに、ステップS04にて、待機状態にあった膜ろ過装置の運転を開始する場合には以下の2通りの制御方法を採用しうる。第1の方法としては、図示しない記憶部にて膜ろ過装置の前回運転時点における通水量が記憶されている場合に、かかる通水量まで、通水量を一段階で増加させる方法が挙げられる。ここで、従来の膜ろ過装置の通水量制御においては、運転を開始するにあたり、所定の時間をかけて通水量を緩やかに増加させて、目標とする通水量とすることが一般的であった。一方、本実施形態にかかる浄水システムの制御方法において、通水量を「一段階で」増加させるとは、従来のように緩やかに通水量を増加させるのでなく、一回の制御動作で一気に目標とする通水量まで上げることを意味する。具体的には、例えば、バルブとして構成される通水制御手段にあっては、前回運転時のバルブ開度まで一回の制御で開放する。このように、待機状態にあった膜ろ過装置の運転を開始するにあたり、既に記憶されている通水量まで一段階で上げることで、目的とする処理水量を安定的に得られるようになるまでの時間を短縮することができ、浄水システムの制御の安定性を一層向上させることができる。
【0035】
一方、第2の方法としては、待機状態にあった膜ろ過装置の直近の運転状態におけるバルブ開度及び処理水量から、総浄水量及び必要台数に基づいて算出した膜ろ過装置一台あたりの処理水量を達成するために必要な通水量を予測し、待機状態にあった膜ろ過装置への通水量を、予測した通水量まで一段階で増加させる方法が挙げられる。具体的には、例えば、バルブとして構成される通水制御手段にあっては、予測した通水量と、直近の運転状態におけるバルブ開度及び処理水量の関係とに基づいて、必要なバルブ開度を算出し、かかるバルブ開度まで一回の制御で開放する。このように予測した通水量まで一段階で通水量を増加させることで、所望の処理水量を安定的に得られるようになるまでの時間を一層短縮することができ、浄水システムの制御の安定性を一層向上させることができる。
【0036】
なお、これらの第1及び第2の通水制御手段の制御方法は、総浄水量が変更された際の膜ろ過装置の台数変動のときのみならず、運転中の膜ろ過装置を再生状態とし、待機状態にあった膜ろ過装置の運転を開始する際にも採用することができる。
【0037】
さらに、必要台数が運転状態の膜ろ過装置の台数よりも少なく、ステップS04にて、運転状態にあった膜ろ過装置の運転を停止させる場合には、制御部は、ある膜ろ過装置に対応する通水制御手段による通水を停止させると共に、運転を継続させる膜ろ過装置について、総浄水量を必要台数で除した処理水量を得るように、通水制御手段により通水量を制御する。このとき、制御部は、直近の物理洗浄が終了した後の運転状態にあった時間(物理洗浄終了後のろ過継続時間)の短い膜ろ過装置から優先的に運転を停止させて待機状態とすることが好ましい。浄水システムにおいて、比較的状態の良い、ろ過膜の目詰まりが少ない膜ろ過装置を待機状態として保持しておくことで、かかる膜ろ過装置を再度運転状態とした場合の運転継続可能時間を長くし、浄水システムの制御の安定性を向上させることができるからである。
【0038】
一方、ステップS03にて運転可能台数が必要台数未満であると判定した場合には、制御部は、運転可能台数の膜ろ過装置を全て運転状態として、各々の前記膜ろ過装置を最大処理水量の設定値で運転させる(ステップS05)。この場合、所望の総浄水量を達成することはできないが、浄水システムのその時点における最大処理水量を供給することとなる。そして、制御部は、例えば、再生状態にあった膜ろ過装置の物理洗浄が終了して待機状態となったことなどにより、運転可能台数が変化したことを把握する(ステップS06)と、ステップS03を再度実施する。このようにして、制御部は、可能な限り迅速に所望の総浄水量を達成するように、膜ろ過装置の運転を制御する。
以下、本発明による浄水システム制御方法による制御例について具体的に説明する。
【0039】
<制御例1>
まず、制御例1として、互いに並列接続された膜ろ過装置を24台備え、1台の膜ろ過装置の最大処理水量の設定値が450(m
3/h)であり、最小処理水量の設定値が400(m
3/h)であり、運転台数が20台、待機状態の膜ろ過装置が2台、再生状態の膜ろ過装置が2台である浄水システムにおいて、総浄水量が200,000(m
3/日)から210,000(m
3/日)に増加した場合について説明する。必要台数決定ステップS02において、現状運転台数を維持することを優先するステップS02−1A〜S02−6Aを実施した場合には、表1に示すように、ステップS02−1Aにて210,000(m
3/日)÷24(h)÷20(台)を計算し、一台あたりの処理水量437.5(m
3/h)を得て、かかる値が最大処理水量及び最小処理水量の設定値から定められる処理水量範囲である、400(m
3/h)以上450(m
3/h)以下の範囲内であるかをステップS02−2Aにて判定する。この場合、437.5(m
3/h)は上記範囲内であるため、制御部は、ステップS02−6Aに進み、現状運転台数である20台を必要台数として決定する。その後、ステップS03及びステップS04を経て、制御部14は、現状運転台数である20台を維持し、運転中の各膜ろ過装置の処理水量を437.5(m
3/h)まで増量させ、目標とする総浄水量210,000 (m
3/日)を供給するように通水制御手段を制御する。
【0041】
一方、ステップS02において、膜ろ過装置を所定の設定値(この場合、最低処理水量である400(m
3/h))に近い処理水量で運転させることを優先するステップS02−1Cを実施した場合には、210,000 (m
3/日)÷24(h)÷400(m
3/h)=21.88より必要台数として21台が決定される。そして、制御部は、ステップS03にて、運転可能台数22台(内訳:運転台数20台+待機台数2台)が、必要台数21台よりも多いと判定し、ステップS04にて必要台数21台の膜ろ過装置を運転するように制御する。膜ろ過装置の運転台数及び総処理水量は以下の表2に示す通りになる。
【0043】
このように、必要台数決定ステップS02において、膜ろ過装置を最低処理水量である400(m
3/h))に近い処理水量で運転させることを優先した場合には、膜ろ過装置の運転台数は一台増加するものの、運転を継続している膜ろ過装置における通水量の変化量を低減させることができる。
【0044】
<制御例2>
次に、総浄水量が減少した場合における浄水システムの制御方法について具体的に説明する。膜ろ過装置の最大処理水量及び最小処理水量の設定値や各状態の膜ろ過装置の台数は制御例1と同様であって、総浄水量が、200,000(m
3/日)から190,000(m
3/日)に減少した場合について説明する。ステップS02−1A〜ステップS02−6Aに従った場合には、ステップS02−1Aにて190,000(m
3/日)÷24(h)÷20(台)を計算し、一台あたり処理水量395.83(m
3/h)を得て、かかる値が最大処理水量及び最小処理水量の設定値から定められる範囲である、400(m
3/h)以上450(m
3/h)以下の範囲内であるかをステップS02−2Aにて判定する。この場合、395.83(m
3/h)は上記最小処理水量の設定値(400m
3/h)を下回るため、制御部は、ステップS02−3A、S02−4Aへと進み、現状運転台数である20台から1台少なくして、190,000 (m
3/日)÷24(h)÷19(台)を計算し、一台あたり処理水量416.67(m
3/h)を得る。かかる値は、400(m
3/h)以上450(m
3/h)以下の範囲内であるため、ステップS02−2Aにおける判定結果が「はい」となり、制御部は、ステップS02−6Aにて19台を必要台数として決定する。その後、ステップS03及びステップS04を経て、制御部は、表3に示すように、19台の膜ろ過装置を処理水量416.67(m
3/h)で運転するように制御する。
【0046】
一方、ステップS02において、膜ろ過装置をなるべく少ない処理水量で運転させることを優先するステップS02−1Cを実施した場合にも、190,000 (m
3/日)÷24(h)÷400(m
3/h)=19.79より必要台数として19台が決定される。そして、制御部は、ステップS03にて、運転可能台数22台(内訳:運転台数20台+待機台数2台)が、必要台数19台よりも多いと判定し、ステップS04にて必要台数19台の膜ろ過装置を運転するように制御する。膜ろ過装置の運転台数及び処理水量は、表3と同様の値となる。
【0047】
<制御例3>
次に、制御例3として、制御例1及び2と同様に膜ろ過装置を24台備え、1台の膜ろ過装置の最大処理水量の設定値が450(m
3/h)であり、最小処理水量の設定値が400(m
3/h)であるが、一台の膜ろ過装置が故障しているため、運転台数が20台、待機状態の膜ろ過装置が1台、再生状態の膜ろ過装置が2台となっている浄水システムにおいて、総浄水量が200,000(m
3/日)から230,000(m
3/日)に増加した場合について説明する。
【0048】
この場合、必要台数決定ステップS02において、ステップS02−1A〜S02−6Aを実施した場合には、ステップS02−1Aにて230,000 (m
3/日)÷24(h)÷20(台)を計算し、一台あたりの処理水量479.16(m
3/h)を得て、かかる値が最大処理水量及び最小処理水量の設定値から定められる処理水量範囲である、400(m
3/h)以上450(m
3/h)以下の範囲内であるかをステップS02−2Aにて判定する。この場合、479.16(m
3/h)は上記最大処理水量を超えるため、制御部は、ステップS02−5Aに進み、230,000 (m
3/日)÷24(h)÷21(台)を計算し、一台あたりの処理水量456.35(m
3/h)を得る。しかしかかる値も上記最大処理水量を超えるため、制御部はステップS02−5Aにて、210,000 (m
3/日)÷24(h)÷22(台)を計算し、一台あたりの処理水量435.61(m
3/h)を得る。かかる処理水量は処理水量範囲内であるため、ステップS02−2Aにおける判定結果が「はい」となり、制御部は、ステップS02−6Aにて22台を必要台数として決定する。その後、ステップS03に進むが、このとき、運転可能台数は21台であるため、ステップS03における判定結果は「いいえ」となる。従って、制御部はステップS05へと進み、運転可能な21台の膜ろ過装置を最大処理水量の設定値である450(m
3/h)で運転するように、各膜ろ過装置を制御する(表4の変更後1)。その後、故障中であった1台の膜ろ過装置の修理が完了して、待機状態となるか、或いは再生状態にあった2台の膜ろ過装置の何れかが待機状態となったことを検出すると、制御部は再度ステップS03にて運転可能台数と必要台数との比較を行い、本制御例ではS04へと進み、22台の膜ろ過装置の処理水量が435.61(m
3/h)となるように通水制御手段を制御する(表4の変更後2)。
【0050】
一方、ステップS02において、ステップS02−1Cを実施した場合には、230,000 (m
3/日)÷24(h)÷400(m
3/h)=23.96より必要台数として23台が決定される。そして、制御部は、ステップS03にて、運転可能台数21台(内訳:運転台数20台+待機台数1台)が、必要台数23台よりも少ないと判定し、表5の変更後1のような運転状態となるように膜ろ過装置の運転を制御する。その後、必要台数が満たされるまでステップS06とステップS05とのループを繰り返し、表5の変更後2〜3となるような運転状態となるように膜ろ過装置の運転を制御する。なお、かかるループ処理の繰り返し回数は、浄水システムに備えられた膜ろ過装置の台数により制限される。
【0052】
<制御例4>
膜ろ過装置の最大処理水量及び最小処理水量の設定値や各状態の膜ろ過装置の台数は制御例1と同様であって、総浄水量が200,000(m
3/日)から210,000(m
3/日)に増加した際に、ステップS02として、ステップS02−1Bを実施した場合について説明する。即ち、制御例4では、新たな総浄水量である210,000(m
3/日)を最大処理水量の設定値で除して得られる値(=210,000(m
3/日)÷24(h)÷450(m
3/h)=19.44)と、新たな総浄水量である210,000(m
3/日)を最小処理水量の設定値で除して得られる値(=210,000(m
3/日)÷24(h)÷400(m
3/h)=21.88)とを求め、処理水量範囲内で総浄水量を供給可能な台数範囲(20〜21台)を求める。そして、現状運転台数である20台に最も近い台数(20台)を必要台数として決定する。そして、各膜ろ過装置の処理水量を437.5(m
3/h)(210,000(m
3/日)÷24(h)÷20(台))まで増量させ、運転を継続する。
【0053】
このように制御例1〜4により、本発明にかかる浄水システムの制御方法について具体的に説明してきたが、本法によれば、浄水システムの処理水量が変動した際に、迅速且つ安定的に所望水量を供給することができる。
【0054】
本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。従って、本発明は、上述の実施形態によって制限されるものと解するべきではない。すなわち、本発明については、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0055】
例えば、本発明による浄水システムは、原水及び/又は処理水の水質を測定する水質測定装置(例えば、濁度計など)を更に備えることができる。そして、かかる水質測定装置による測定結果に基づいて、各膜ろ過装置の最大処理水量及び最小処理水量の設定値を変更するように構成することももちろん可能である。