(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係るパルスオキシメータプローブ(以下、単に「プローブ」という)の外観を示す図であり、
図1Aは右から見た図、
図1Bは下から見た図であり、
図2は、同プローブの閉状態を示す斜視図であり、
図3は、同プローブの開状態を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すプローブ10は、パルスオキシメータ本体(図示せず)に接続可能なコネクタ20を備えたケーブル30付きのタイプである。
【0014】
プローブ10は、一対のハウジング11、12を有するクリップ式のプローブである。プローブ10は、ハウジング11、12により、被検者の指に装着して、動脈血酸素飽和度(SpO
2)を計測するプローブとして説明する。これに伴い、指の爪側の面を上として、爪側から指を挟むハウジング11を上ハウジング11と称し、指の腹を下として、指の腹側から指を挟むハウジング12を下ハウジング12と称して説明する。
【0015】
上ハウジング11及び下ハウジング12の各後端部11a、12aは、クリップの開閉を操作するための開閉操作部13を構成する。上ハウジング11及び下ハウジング12は、後端部11a、12a側で互いに揺動可能に連結されており、先端部11b、12b同士が接近離反して開閉自在となっている(
図2、
図3参照)。これにより、ユーザ(検査者、被検者自身であっても良い。)が開閉操作部13をつまむと、上ハウジング11及び下ハウジング12の各先端部11b、12b側が開く。これにより、指挿入口15側から被検者の指を上ハウジング11及び下ハウジング12の間に挿入することが可能となる。上ハウジング11及び下ハウジングは、互いの間に被検者の測定部位の収容部を形成する。
【0016】
図4は、
図2のA−A線矢視断面図である。
【0017】
上ハウジング11及び下ハウジング12は、連結部14を介して互いに揺動自在で、且つ、対向方向(垂直方向)に平行移動可能に連結される。ここでは、連結部14は、上ハウジング11の後端部11a側で上ハウジング11の幅方向(図では水平方向)に突出して設けられた軸部141と、下ハウジング12の後端部12a側で、長手方向に沿って立設されたガイド壁部142とを有する。ガイド壁部142には、ガイド孔143が形成され、このガイド孔143に、軸部141が上下方向及び揺動方向自在に遊嵌する。なお、上述の長手方向とは、上ハウジング11および下ハウジング12の長手方向であり、上ハウジング11および下ハウジング12間に挿入される測定部位である指の挿入方向と同じ方向を意味する。
【0018】
また、
図4に示すように、上ハウジング11及び下ハウジング12の間には、付勢部材としてのコイルばね16が、上ハウジング11及び下ハウジング12の各先端部11b、12b側が開いたときに、これらを閉じさせる復帰力が働くように、巻設されている。このようにコイルばね16は、先端部11b、12b同士を閉じる方向に付勢している。よって、上ハウジング11及び下ハウジング12の間に被検者の指を挿入した後、ユーザが開閉操作部13を放すと、コイルばね16の力により上ハウジング11及び下ハウジングの各先端部11b、12b側が閉じ、被検者の指が挟持される。このとき後端部11a、12a同士は、垂直方向に平行移動可能である。
【0019】
なお、指挿入口15に指を挿入するときは、指の爪側を上ハウジング11に向け、指の腹側を下ハウジング12に向ける。よって、上ハウジング11及び下ハウジング12は、被検者の指をその指の爪側及び腹側から挟むに適した構成となっている。
【0020】
上ハウジング11及び下ハウジング12は、発光部51と、受光部52と、上下表面部材61、62と、を有する。
【0021】
発光部51及び受光部52は、上ハウジング11及び下ハウジング12のそれぞれに設けられる。発光部51及び受光部52は、収納部を挟み対向して配置されている。発光部51は、例えば発光ダイオード等の発光素子により構成され、受光部52は、例えばフォトダイオード等の受光素子により構成される。発光部51は、挟まれた指に向けて赤色光又は赤外光を発光するものであり、受光部52は、挟まれた指を透過した赤色光又は赤外光を検出するものである。発光部51は、
図4に示すように上ハウジング11及び下ハウジング12の先端部11b、12b同士を閉じた状態(閉状態)では、発光部51の光軸が、受光部52の中心から外れる位置に配置されている。なお、発光部51と受光部52との位置関係についての詳細は後述する。
【0022】
発光部51は、上ハウジング11に埋設され、受光部52は、下ハウジングに埋設されている。なお、発光部51を下ハウジング12に埋設し、受光部52を上ハウジング11に埋設しても良い。
【0023】
上ハウジング11及び下ハウジング12は、それぞれの後端部11a、12a側で連結部14を有する上下本体部31、32を有し、上本体部31に上表面部材61が取り付けられ、下本体部32に下表面部材62が取り付けられている。
【0024】
各本体部31、32は、比較的硬質のプラスチック成形体である。上本体部31は、上ハウジング11の後端部11a及び軸部141を有し、下本体部32は、下ハウジング12の後端部11a及びガイド壁部142を有する。
【0025】
上下表面部材61、62は、上ハウジング11及び下ハウジング12において、挟まれた被検者の指と接触する表面層に設けられている。
【0026】
上下表面部材61、62は、比較的軟質の部材で構成されていることが望ましく、本実施の形態では、上表面部材61が、例えばシリコンゴム等、弾性を有する樹脂材料から形成されている。
【0027】
上下表面部材61、62は、発光部51及び受光部52がそれぞれ配置される測定面部611、621を有し、表面部材61及び表面部材62の少なくとも一方(例えば、表面部材61)は、測定面部(例えば、測定面部621)よりも突出して測定部位を挟持する突出面部(例えば、突出面部612)を有する。突出面部61は、指挿入口15から収容部に挿入される指(測定部位)を、先端部11b、12b同士が閉じられるときに他方のハウジングである下ハウジング12とともに挟持する。本実施の形態では、表面部材61及び表面部材62の双方に突出面部612、622が形成されている。
【0028】
上下表面部材61、62はいずれも、挟まれる指の形状に合わせて湾曲する凹部610及び凹部620を有する。この凹部610、620は、ハウジング長手方向に沿って延在している。
【0029】
これら凹部610、620の表面層で、測定面部611、621と突出面部612、622とを構成する。したがって、ここでは、測定面部611、621と突出面部612、622の表面、つまり、上下ハウジング11、12の先端部11b、12b側の内面は、装着部位である指形状に対応した凹状となっている。
【0030】
測定面部611、621は、上ハウジング11及び下ハウジング12が閉じた状態では、指挿入口15より奥側に上下で対向して配置される(
図4参照)。
【0031】
測定面部611、621の凹状の底面部分には、それぞれ発光部51と、受光部52とが、発光部51が発する光を受光部52で受光できるように配置される。
【0032】
ここでは、発光部51と受光部52は、上ハウジング11及び下ハウジング12を開き、測定部位に装着した際に相対するように、上ハウジング11及び下ハウジング12を閉じた状態では、測定部位を挿入する方向に異なる位置に配置される。受光部52は、上ハウジング11及び下ハウジング12が閉じた状態において、挿入方向において、発光部51よりも指挿入口15側に位置する。
【0033】
図5は、指に装着した状態のプローブの発光部と受光部の位置関係を示す図である。
【0034】
発光部51及び受光部52は、発光部52の光軸Lが、先端部11b、12b同士を閉じた状態では受光部52の中心から外れており、先端部11b、12b同士を開くにつれて受光部52の中心に向けて移動する、配置関係を有する。
【0035】
発光部51及び受光部52は、上ハウジング11及び下ハウジング12のそれぞれに対して以下の様に配置される。
【0036】
図5に示すように、上ハウジング11及び下ハウジング12を開き、被検者に装着して実際の測定部位である指先でSpO
2を計測する際に、発光部51の光軸Lが、受光部52の受光面の領域に入る位置に配置される。具体的には、指に装着された上ハウジング11および下ハウジング12の開状態において、発光部51から発光面に対して垂直方向に発する光が、受光面に入光する位置に受光部52が配置される。より好ましくは、上ハウジング11および下ハウジング12を指に装着した開状態において、発光部51の発光面に対して垂直方向の光が受光部52の受光面の中央に入光するように発光部51及び受光部52は配置される。閉状態で発光部51と受光部52とが上ハウジング11及び下ハウジング12の長手方向である指の挿入方向において異なる位置で対向するように位置させる。また、発光部51の光軸Lは、先端部11b、12b同士を閉じた状態では受光部62の面に対して垂直(
図4参照)であり、受光部52の中心に向くとき、垂直の方向に対して8°〜16°の角度θを成す。より好ましくは、θは、9°〜15°の範囲内の角度である。ここでは、発光部51と受光部52とは、それぞれ表面部材61、62の測定面部611、621において、θが略12°となる位置関係を有するように配設される。
【0037】
すなわち、発光部51と受光部52との位置関係は、
図4に示す閉状態において、発光部51の光軸Lと、受光部52で受光する受光部分の中心の傾き角度θが8°〜16°内の角度となるように配置されるといってもよい。θの範囲、実値は上述した範囲と同様であるので説明は省略する。
【0038】
パルスオキシメータを装着する装着部位を指とする場合、パルスオキシメータの発光部及び受光部の間に位置される被検部位で最もSpO
2を検出し易い部位は、爪の付け根近傍であることが知られている。特に指先では、動脈と静脈とが幅方向の両側部分を通り指先で繋がるので、指先を潰すことで低灌流状態にならないようにして、爪の付け根部分の動脈血酸酸素飽和濃度を測定することが好ましい。
【0039】
測定面部611、621は、これら指先を囲むように収容する位置に配置されており、発光部51は、指先の爪の付け根に対応する位置に配置されることが望ましい。
【0040】
測定面部621は、測定部位の下面である指の腹に当接する。
【0041】
突出面部612、622は、上ハウジング11及び下ハウジング12が測定部位に装着された際に、測定部位において被検部位を避けた位置で測定部位を挟持する。
【0042】
突出面部612、622は、それぞれ測定面部611、621と指挿入口15側で、曲面で連続して配置されている。ここでは、突出面部612、622は、指挿入口15を上下で仕切る上下の開口縁を形成している。
【0043】
突出面部612、622は、凹部610、620に形成されているので、それぞれ断面凹状の帯状表面となっており、測定面部611、621よりも装着部位である指に密着しやすい。
【0044】
上下表面部材61、62のそれぞれにおいて、突出面部612、622間の距離は、測定面部611、621間の距離よりも近くなるため、装着部位である指(挿入された指)を、測定面部611、621よりも部分的に強く押圧する。
【0045】
また、測定面部611の表面から突出面部612の表面までの高さは、測定面部621の表面から突出面部622の表面までの高さよりも高い。ここでは、上表面部材61は、弾性を有する樹脂材料によって変形可能であり、相対的に柔らかい材料で形成される場合、指に装着して表面部材61が潰れても突出面部612で指を挟持できる。
【0046】
また、本実施の形態のプローブ10では、
図5に示すように、突出面部612、622は、測定部位として装着される指の第1関節K1若しくは、当該第1関節K1と第2関節K2との間に位置するように対応して配置されている。
【0047】
このため、プローブ10が指に装着された状態では、突出面部612、622が、コイルばね16により測定部位に当接する部分で、測定部位を挟むこととなり、測定部位は、測定面部611、621間よりも、突出面部612、622で挟まれ保持された状態となる。また、突出面部612、622は、指が抜脱方向に移動する際に、指の第1関節K1に掛止する機能も有する。これにより、上下ハウジング11、12は、装着された指から抜けにくくなる。
【0048】
プローブ10では、上ハウジング11及び下ハウジング12を、それぞれの先端部11b、12b同士を、互いに離間する方向、つまり、上下方向に移動させる。そして、指を指挿入口15から上ハウジング11および下ハウジング12間に挿入して、被験部位である指先を測定面部612、622間に位置させて、上ハウジング11および下ハウジング12を閉じて、プローブ10を指に装着する。なお、測定面部612、622間に位置する指は、発光部51および受光部52間に配置される。上ハウジング11及び下ハウジング12を、後端部11a、12a側で互いに揺動してV字状に開いた状態において、測定面部611、621間に配置された指が太い場合、連結部14側、つまり奥側に配置される指先は、連結部14で結合される上ハウジング11および下ハウジング12の後端部11a、12aを、上下方向に、相対的に離間するように押圧する。すると、コイルばね16の付勢力に抗して軸部141がガイド孔143内で上下方向に移動し、上ハウジング11および下ハウジング12は上下方向に平行移動させる。これにより、指の太さ(測定部位の大きさ)に関わらず、上ハウジング11および下ハウジング12は指(装着部位)に装着される。
【0049】
また、主に
図3に示すように、上ハウジング11の上表面部材61は、凹部610の左右両端部61aから下方側に立設された一対の壁部61bをさらに有し、下ハウジング12の下表面部材62は、凹部620の左右両端部62aから上方側に立設された一対の壁部62bをさらに有する。
【0050】
図3から分かるように、上ハウジング11において形成された壁部61b及び下ハウジング12において形成された壁部62bはそれぞれ、凹部610、620に沿って、上ハウジング11及び下ハウジング12の長手方向に延設されている。壁部61bは、上ハウジング11側(発光部51側)の遮光性(つまり外光乱入防止)を確保し、壁部62bは、下ハウジング12側(受光部52側)の遮光性を確保する。
【0051】
また、下ハウジング12において形成された壁部62bは、凹部620側に湾曲して傾けられている。これにより、表面部材62の表面上を滑らせるようにして指挿入口15側から連結部14側へ指を挿入(
図5参照)させると、進入する指によって壁部62bが外側に押し広げられる。このとき、壁部62bがその弾性により元の位置に戻ろうとする復帰力が発生する。この力は、壁部62bと接触している指を左右から支持する力として働くこととなるため、指を左右方向にずれにくくできる。壁部62bが指に密着することで、指の挿抜方向(言い換えればハウジング長手方向)での指の位置ズレも生じにくくすることができる。すなわち、プローブ10の装着安定性を向上させることができる。また、これにより外光の乱入も安定的に抑制させることができるようになることもあり、結果として動脈血酸素飽和度の計測精度を著しく向上させることができる。
【0052】
なお、下表面部材62の奥側端部には、それ以上の指の進入を阻止する壁部62f(
図4参照)が形成されているため、挿入された指の位置決めを行うことができる。
【0053】
なお、凹部610の左右両端部61aから下方に延在する壁部61bは、
図3に示すように、凹部620の左右両端部62aから上方に延在する壁部62bの外側に配置されている。そのため、壁部62bによる指の支持が壁部61bで妨げられることはない。
【0054】
また、上ハウジング11および下ハウジング12を、それぞれの先端部11b、12b同士が離間する方向、つまり、上下方向に移動して開状態にして、上ハウジング11および下ハウジング12間に指を装着する。この場合、開状態の上ハウジング11および下ハウジング12の後端部11a、12a間同士を離間させるような太い指が測定面部611、621間に挿入される場合がある。この場合では、指が奥側、つまり連結部14側に挿入し、測定面部611、621間へ侵入すると、連結部14の軸部141がコイルばね16の付勢力に抗して、ガイド孔内143で上下方向に移動する。これにより連結部14で結合される上ハウジング11および下ハウジング12の後端部11a、12a側は、上下方向に、相対的に離間する方向に移動して、ハウジング11および下ハウジング12は上下方向に平行移動する。これにより、指の太さに関わらず、上ハウジング11および下ハウジング12は指に装着される。
【0055】
本実施の形態のプローブ10では、発光部51と受光部52は、発光部51の光軸Lが、先端部11b、12b同士を閉じた状態では受光部52の中心から外れており、先端部11b、12b同士を開くにつれて受光部51の中心に向けて移動する。
この位置関係における発光部51及び受光部52は、ハウジング11、12の先端部11b、12bを閉じた状態で、発光部51は上ハウジング11に、受光部52は下ハウジング12にそれぞれ、被検者の指(測定部位)の収容部への挿入方向において異なる位置で対向配置されている。
【0056】
これにより、上ハウジング11および下ハウジング12を開いて測定部位である指に装着した際に、発光部51から、発光面に対して垂直方向に発し、指を透過した光は、正確に受光部52に多く入光するので、クリップ式であっても、より精度良く、動脈血酸素飽和度を計測できる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。