特許第6667388号(P6667388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667388
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/30 20060101AFI20200309BHJP
【FI】
   B60N2/30
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-130238(P2016-130238)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-1926(P2018-1926A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆志
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−514590(JP,A)
【文献】 特開2006−321483(JP,A)
【文献】 特開2013−173535(JP,A)
【文献】 特開2013−154772(JP,A)
【文献】 実開昭59−066639(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 7/56− 7/60,
1/12− 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚係止部を有する支持ベース部と、
前記支持ベース部上に立設されるシートバックと、
前記シートバックに対して回動可能に設けられ、チップアップ可能に構成されたシートクッションと、
一端部が前記シートクッションに対して第1の回動中心の周りに回動可能に連結され、前記シートクッションがチップアップされた状態では畳まれ、前記シートクッションが着座可能な状態に設定された状態では伸展されて他端部の側が前記脚係止部に係止される立設部を有する支持脚と、
を備え
前記立設部は当該立設部の前記他端部の側が当該他端部の側に連結される連結部材を介して前記脚係止部に係止される車両用シートにおいて、
一端部に構成される第2の回動中心の周りに回動可能に設けられ、他端部が前記立設部の前記他端部に第3の回動中心の周りに回動可能に連結され、前記第3の回動中心を前記第2の回動中心の周りに旋回させるリンク部材と、
前記第3の回動中心が前記脚係止部から離れる方向に旋回するように前記立設部及び前記リンク部材に対して付勢力を付与する付勢部材と、
前記第3の回動中心が前記第1の回動中心及び前記第2の回動中心と一直線上に並ぶ位置に対して前記脚係止部から離れる方向に旋回した位置で、前記支持脚及び前記リンク部材の回動を規制する規制部と、
を備え、
前記第2の回動中心は、前記支持ベース部に対して位置が固定されると共に、前記シートバックの前記支持ベース部に対する回動中心を成し、前記リンク部材及び前記シートバックの前記支持ベース部に対する回動中心を兼ねることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記リンク部材は、前記シートクッションをチップアップする場合に、前記立設部を前記シートクッションの底面に沿うように畳む折り畳み機構を構成することを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートにおいて、
前記リンク部材の一端部は、前記支持ベース部に連結されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記規制部は前記シートクッションのフレームに設けられ、前記支持脚に当接して前記支持脚及び前記リンク部材の回動を規制することを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記規制部は前記支持ベース部に設けられ、前記リンク部材に当接して前記支持脚及び前記リンク部材の回動を規制することを特徴とする車両用シート。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記規制部は前記立設部に設けられ、前記リンク部材に当接して前記支持脚及び前記リンク部材の回動を規制することを特徴とする車両用シート。
【請求項7】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記規制部は前記リンク部材に設けられ、前記支持脚に当接して前記支持脚及び前記リンク部材の回動を規制することを特徴とする車両用シート。
【請求項8】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記付勢部材は、前記シートクッションのフレームと前記支持脚との間に設けられたスプリングであることを特徴とする車両用シート。
【請求項9】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記付勢部材は、前記立設部と前記リンク部材との間に設けられたスプリングであることを特徴とする車両用シート。
【請求項10】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記付勢部材は、前記支持ベース部と前記リンク部材との間に設けられたスプリングであることを特徴とする車両用シート。
【請求項11】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
当該車両用シートは、前記シートクッションをチップアップした状態において前記シートバックを前倒させることにより前記シートバック及び前記シートクッションを車床面の収納部にダイブダウンさせることが可能なダイブダウンシートであって、
前記立設部及び前記リンク部材は、チップアップした状態における相対位置関係を維持した状態でダイブダウンし、
前記立設部は、当該立設部の前記他端部の側が前記脚係止部に係止されることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る技術分野に属する背景技術として、特開2013−173535号公報(特許文献1)に記載された車両用シートが知られている。
特許文献1の車両用シートは、
車両の車体フロアに支持されたシートバックと、シートバックに対してチップアップされるように旋回自在に支持されたシートクッションと、シートクッションの底部に旋回自在に支持された脚手段と、シートクッションの底面から離れる方向に脚手段を偏倚させる付勢手段と、付勢手段の作用に抗して脚手段を制止すると共に脚手段をシートクッションの底面から垂直に起立させた状態で維持するためのストッパ手段と、シートバックに対するシートクッションのチップアップ動に同期して、脚手段を付勢手段の作用に抗してシートクッションの底面に折畳んで横たえさせる機構と、を含んでいる(要約参照)。
【0003】
さらにこの車両用シートは、シートバックのサイドブラケット(特許文献1では第2のサイドブラケットという)とシートクッションの湾曲アーム(特許文献1では第2の湾曲アームという)との間に、シートクッションがチップアップされるのを阻止するロック手段(特許文献1では第2のロック手段という)を備えている。このロック手段は、サイドブラケットに設けられ湾曲アーム側に突出する突出プレートと、湾曲アームに旋回自在に支持された搖動プレートと、を備える。突出プレートには2つの離間された係合ノッチ(第1係合ノッチ及び第2係合ノッチ)が設けられ、搖動プレートには第1係合ノッチ又は第2係合ノッチのいずれか一つに離脱可能に係合される係合爪が形成されている(段落0023参照)。
【0004】
搖動プレートの係合爪が第1係合ノッチ又は第2係合ノッチのいずれか一つに係合されることにより、シートバックに対するシートクッションの旋回動作が阻止される(段落0024参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−173535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には明瞭な記載がないものの、シートクッションがチップアップされていない状態で、すなわち車両用シートが脚手段で車体フロアに設置された状態で、搖動プレートの係合爪は第1係合ノッチに係合し、シートクッションはシートバックに対する旋回動作が阻止される。また、シートクッションがチップアップされた状態では、搖動プレートの係合爪は第2係合ノッチに係合し、シートクッションはシートバックに対する旋回動作が阻止される。
【0007】
特許文献1の車両用シートでは、シートクッションをチップアップした状態で固定するために、第1係合ノッチ及び第2係合ノッチを有する突出プレートと、係合爪が形成された搖動プレートとを備えたロック手段を設けている。ロック手段は車両用シートに多くの部品を付加して構成されるため、車両用シートの構造が複雑になる。そして、ロック手段の組み付けのために車両用シートの組み立て時間が増加し、車両用シートの生産性が低下する。またロック手段の組み付けにより、車両用シートの重量が増加することになる。
【0008】
本発明の目的は、簡単な構成で、シートクッションをチップアップした状態で固定することができる車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の車両用シートは、
脚係止部を有する支持ベース部と、
前記支持ベース部上に立設されるシートバックと、
前記シートバックに対して回動可能に設けられ、チップアップ可能に構成されたシートクッションと、
一端部が前記シートクッションに対して第1の回動中心の周りに回動可能に連結され、前記シートクッションがチップアップされた状態では畳まれ、前記シートクッションが着座可能な状態に設定された状態では伸展されて他端部の側が前記脚係止部に係止される立設部を有する支持脚と、
を備え
前記立設部は当該立設部の前記他端部の側が当該他端部の側に連結される連結部材を介して前記脚係止部に係止される車両用シートにおいて、
一端部に構成される第2の回動中心の周りに回動可能に設けられ、他端部が前記立設部の前記他端部に第3の回動中心の周りに回動可能に連結され、前記第3の回動中心を前記第2の回動中心の周りに旋回させるリンク部材と、
前記第3の回動中心が前記脚係止部から離れる方向に旋回するように前記立設部及び前記リンク部材に対して付勢力を付与する付勢部材と、
前記第3の回動中心が前記第1の回動中心及び前記第2の回動中心と一直線上に並ぶ位置に対して前記脚係止部から離れる方向に旋回した位置で、前記支持脚及び前記リンク部材の回動を規制する規制部と、
を備え、
前記第2の回動中心は、前記支持ベース部に対して位置が固定されると共に、前記シートバックの前記支持ベース部に対する回動中心を成し、前記リンク部材及び前記シートバックの前記支持ベース部に対する回動中心を兼ねる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、少数の部品を追加することにより、簡単な構成で、シートクッションをチップアップした状態で固定することができる車両用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例に係る車両用シート1について、着座位置にセットされた状態、チップアップした状態及びダイブダウンした状態を示す側面図である。
図2】着座位置にセットされた車両用シート1について、フレームの構成を示す側面図である。
図3】着座位置にセットされた車両用シート1について、フレームの構成を示す正面図である。
図4図2の車両用シート1の支持脚6B及びリンク部材7の近傍を拡大して示す側面図である。
図5図3の車両用シート1の支持脚6Bの近傍を拡大して示す正面図である。
図6】着座位置からチップアップされた状態に至る途中の状態における車両用シート1について、フレームの構成を示す側面図である。
図7】チップアップされた状態の車両用シート1について、フレームの構成を示す側面図である。
図8】車両用シート1について、着座位置にセットされた状態(実線)、チップアップした状態(一点鎖線)及びダイブダウンした状態(一点鎖線)の各状態におけるフレームの構成を示す側面図である。
図9】着座位置にセットされた車両用シート1について、支持脚6が脚保持部材8に保持された状態を示す斜視図である。
図10】脚保持部材8の近傍を拡大して示す側面図である。
図11】着座位置にセットされた車両用シート1の側面図であり、フレームの構成の特徴を説明するための図である。
図12】本発明に係る車両用シート1の構成を示す概念図である。
図13】本発明に係る車両用シート1の動作状態を説明する概念図である。
図14】本発明に係る車両用シート1においてシートクッション2がチップアップされた状態を示す概念図である。
図15】ストッパ30Bの第1変更例を示す図である。
図16】ストッパ30Bの第2変更例を示す図である。
図17】ストッパ30Bの第3変更例を示す図である。
図18】渦巻きばね30Aの第1変更例を示す図である。
図19】渦巻きばね30Aの第2変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施例を説明する。以下の説明では、前後方向は車両の前後方向を、幅方向は車両又は車両用シートの幅方向(両者とも同じ方向)を、左右方向は車両の前方を向いた状態(車両用シートに腰掛けた状態)における左右方向を、上下方向は車両を水平に配置した状態における鉛直方向を意味する。なお、左右方向は車両又は車両用シートの幅方向と同じ方向である。また、図中の記号Fは矢印方向が車両の前方であることを、記号Rは矢印方向が車両の後方であることを示す。また記号rは矢印方向が車両の右方向であることを、記号lは矢印方向が車両の左方向であることを示す。
【0013】
また車両用シート1が、人が着座可能な状態に設定(セット)されている場合を、着座位置に設定(セット)された状態と呼んで説明する。なお、車両用シート1が着座位置に設定された状態では、シートクッション2は後述するチップアップ状態又はダイブダウン状態から支持ベース部5上の所定の位置に戻され、シートバック3はシートクッション2に対して所定の角度で起立した状態をとる。
【0014】
また、シートバック3がシートクッション2上に折り畳まれた状態を前倒状態と呼び、シートバック3が着座可能な位置又は状態に設定されている場合のシートバック3の位置又は状態を着座位置又は着座状態と呼ぶ。
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る車両用シート1の一実施例を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用シート1について、着座位置にセットされた状態、チップアップした状態及びダイブダウンした状態を示す側面図である。
【0017】
図1に示すように、車両用シート1は、人が着座する座面を有するシートクッション2と、シートクッション2の後端部に立設され背もたれ(着座する人の腰部や背部を支える面)を有するシートバック3と、シートバック3の上端部に設けられたヘッドレスト4とを備えている。また、車両用シート1は、支持ベース部5により、車両の床(車床)に固定されている。支持ベース部5はスライド機構を備え、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4は一体で車両の前後方向にスライドすることができる。
【0018】
シートクッション2は、前部を後部に対して上位に位置するように跳ね上げてチップアップすることができる。図1では、チップアップした状態のシートクッションを一点鎖線2’で示す。
【0019】
シートクッション2は、チップアップした状態2’から、シートバック3及びヘッドレスト4と一体で、ダイブダウンした状態(シートバック3がシートクッション2上に折り畳まれた状態)に移行することができる。図1では、ダイブダウンした状態のシートクッション、シートバック及びヘッドレストを一点鎖線2''、3''及び4''で示す。
【0020】
シートクッション2及びシートバック3が着座位置にセットされた状態(図1の実線2で示す状態)から、一点鎖線2''、3''及び4''で示すダイブダウンした状態に移行することも可能である。この場合、シートバック3の前倒れに連動させてシートクッション2及びシートバック3を車床面100Aよりも低い低段の車床面(収納部)100Bに下降させて低段の車床面100Bに収納する。車両用シート1がダイブダウンした状態では、前倒させたシートバック3(3'')の背面を荷物の積載面として利用することができる。なお本実施例のように、ダイブダウン可能な車両用シート1をダイブダウンシートと呼ぶ場合もある。
【0021】
次に、図2乃至図5を参照して、車両シート1のフレーム構造を説明する。図2は、着座位置にセットされた車両用シート1について、フレームの構成を示す側面図である。図3は、着座位置にセットされた車両用シート1について、フレームの構成を示す正面図である。図4は、図2の車両用シート1の支持脚6B及びリンク部材7の近傍を拡大して示す側面図である。図5は、図3の車両用シート1の支持脚6Bの近傍を拡大して示す正面図である。
【0022】
車両用シート1では、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4の各フレーム材を覆うようにクッション材やカバー部材が設けられる。図2乃至図9に示すフレーム構成は、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4からクッション材やカバー部材を除いた状態を示している。なお図1では、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4にクッション材やカバー部材が設けられた状態を示している。
【0023】
シートクッション2の骨格を成すシートクッションフレーム11は、パイプ材で形成されている。シートクッションフレーム11は、シートクッション2が着座位置にセットされた状態で、シートクッション2の前部で左右方向に延設される前縁部11Aと、前縁部11Aの両端部から後方に延設された側縁部11Bとを有する。側縁部11Bは、前縁部11Aの右側の端部から後方に延設された右側の側縁部11B1(図3参照)と、前縁部11Aの左側の端部から後方に延設された左側の側縁部11B2(図2,3参照)とを有する。
【0024】
シートクッションフレーム11の側縁部11Bの後端部には、ヒンジ部12が連結され固定されている。ヒンジ部12は、シートクッションフレーム11の右側の側縁部11B1に設けられた右側ヒンジ部12A(図3参照)と、シートクッションフレーム11の左側の側縁部11B2に設けられた左側ヒンジ部12B(図2,3参照)とを有する。ヒンジ部12は、折り曲げ加工を施された板材で形成されている。ヒンジ部12はシートクッション2のフレームの一部を構成する部材と見なしてもよい。
【0025】
シートバック3の骨格を成すシートバックフレーム13は、パイプ材で形成されている。シートバックフレーム13は、シートバック3が着座位置にセットされた状態で、上部で左右方向に延設される上縁部13Aと、上縁部13Aの両端部から下方に延設される側縁部(垂下部)13Bとを有する。側縁部13Bは、上縁部13Aの右側の端部から下方に延設された右側側縁部13B1(図3参照)と、上縁部13Aの左側の端部から下方に延設された左側側縁部13B2(図2,3参照)とを有する。
【0026】
シートバックフレーム13の側縁部13Bの下端部には、ヒンジ部14が連結され固定されている。ヒンジ部14は、シートバックフレーム13の右側の側縁部13B1に設けられた右側ヒンジ部14A(図3参照)と、シートバックフレーム13の左側の側縁部13B2に設けられた左側ヒンジ部14B(図2,3参照)とを有する。ヒンジ部14は、折り曲げ加工を施された板材で形成されている。ヒンジ部14はシートバック3のフレームの一部を構成する部材と見なしてもよい。
【0027】
シートクッションフレーム11及びヒンジ部12は、シートバックフレーム13及びヒンジ部14に対して、回転軸15を中心として回動可能に連結されている。これにより、シートクッション2はチップアップ動作が可能に構成される。
【0028】
シートクッション2のヒンジ部12には、支持脚6(6A,6B,6C)が連結されている。支持脚6の立設部6A,6Bは、シートクッション2が着座位置にセットされた状態において、上下方向に延設されるように設けられる。立設部6Aの下端部と立設部6Bの下端部とには、左右方向に延設された連結部材6Cが連結されている。
【0029】
立設部6Aの上端部は、シートクッション2の右側ヒンジ部12Aに連結されている。立設部6Bの上端部は、シートクッション2の左側ヒンジ部12Bに連結されている。立設部6Bは、図2の符号16で示す位置に設けられた回転軸を中心として、左側ヒンジ部12Bに対して回動可能に連結されている。また立設部6Aは、右側ヒンジ部12A上において、左側ヒンジ部12Bの回転軸16に対応する位置に設けられた回転軸を中心として、右側ヒンジ部12Aに対して回動可能に連結されている。
【0030】
連結部材6Cはパイプ材で形成されており、中央部が大径を成し、その両端部に中央部よりも小径の小径部6Ca,6Cbが設けられている。立設部6A,6Bは、板状部材で構成され、連結部材6Cの小径部6Ca,6Cbが貫通する開口部が設けられている。水平部6の小径部6Ca,6Cbは立設部6A,6Bを貫通して、立設部6A,6Bの外側に突出している。
【0031】
立設部6Bの外側に突出した連結部材6Cの小径部6Cbには、リンク部材7の一端部が連結されている。リンク部材7は、小径部6Cbを回転軸(回転中心)として、支持脚6に対して回動可能に構成されている。またリンク部材7の他端部は、支持ベース部5に対して位置が固定された回転軸17に連結され、リンク部材7は回転軸17を中心として支持ベース部5に対して回動可能に構成されている。回転軸17は小径部6Cbよりも後方に位置し、かつ上方に位置する。
【0032】
シートバック3の左側ヒンジ部14Bと、支持脚6の立設部6Bと、リンク部材7とは、車両用シート1の内方から外方に向けて、この順番に配置されている。また、立設部6Bの回転軸16は、左側ヒンジ部14Bの内側に設けられている。この構成により、左側ヒンジ部14Bと立設部6Bとリンク部材7とは、相互に干渉することなく回動できると共に、各部品をコンパクトに配置することができる。
【0033】
本実施例では、リンク部材7の回転軸を連結部材6Cの小径部6Cbで構成することにより、部品点数を減らすことができると共に、簡素な構成を実現することができる。
【0034】
シートバック3のシートバックフレーム13の上端部には、ヘッドレスト4の骨格を成すヘッドレストフレーム23A,23Bが取り付けられている。
【0035】
支持ベース部5は、ロアレール18Aとアッパレール18Bとを有するスライドレール装置18を備える。ロアレール18Aは車床100Aに固定されている。アッパレール18Bはロアレール18Aに対して前後方向にスライド可能に構成されている。スライドレール装置18は、車両用シート1を前後方向にスライドさせるためのスライド機構である。
【0036】
スライドレール装置18は、車両用シート1の左右側部に一つずつ配置されている。左右のスライドレール装置18のうち、車両室内において内寄りに配置される方のスライドレール装置18をインナースライドレール装置18と呼び、車両室内において外寄りに配置される方のスライドレール装置18をアウタースライドレール装置18と呼ぶ場合もある。
【0037】
スライドレール装置18のアッパレール18Bには、シートライザー19が取り付けられている。シートライザー19は支持ベース部5の一部であり、板状の金属部材を折り曲げ加工して形成される。シートライザー19は、チップアップ機能やダイブダウン機能を有する車両用シート1を保持或いは支持するための保持部材(支持部材)であり、シートライザー19の上部にシートバック3が取り付けられる。本実施例では、シートバック3のヒンジ部14の下端部が回転軸17に連結され、シートバック3のシートバックフレーム13及びヒンジ部14が回転軸17を中心としてシートライザー19に対して回動可能に取り付けられている。
【0038】
回転軸17はシートライザー19に対して位置が固定されている。回転軸17はリンク部材7の他端部が連結される回転軸であり、リンク部材7の連結部とシートバック3のヒンジ部14の連結部とを兼ねている。複数の回動部材の回転中心を一つの回転軸に集約することにより、簡素な構造を実現することができる。
【0039】
支持ベース部5のスライドレール装置18やシートライザー19等は、樹脂製のカバー20(図1参照)によって覆われている。
【0040】
スライドレール装置18のロアレール18Aの前部は、取付具21A,21Bにより、車床100Bに固定されている。取付具21Aは右側のスライドレール装置18を車床100Bに固定し、取付具21Bは左側のスライドレール装置18を車床100Bに固定する。
【0041】
スライドレール装置18のアッパレール18Bには、支持脚6を着脱可能に固定する脚保持部材(キャッチャー)8が取り付けられている。シートクッション2が着座位置に設定された状態では、支持脚6の連結部材6Cは脚保持部材8に係合している。
【0042】
図5の符号30Aは連結部材6Cの小径部6Cbに設けられた渦巻きばね(付勢部材)を示す。渦巻きばね30Aの一端部(外端)30Aaは支持脚6の立設部6Bに設けられた係止部31に係止され、他端部(内端)はリンク部材7に設けられた係止部(図示せず)に係止されている。図2及び図4の符号30Bはシートクッションフレーム11に設けられたストッパ(規制部)を示す。渦巻きばね(付勢部材)30A及びストッパ30Bは、シートクッション2をチップアップされた状態で固定するロック機30を構成する。このロック機構30については後で詳細に説明する。
【0043】
次に、図6乃至図8を参照して、車両用シート1のチップアップ動作及びダイブダウン動作について説明する。
【0044】
図6は、着座位置からチップアップされた状態に至る途中の状態における車両用シート1について、フレームの構成を示す側面図である。図7は、チップアップされた状態の車両用シート1について、フレームの構成を示す側面図である。図8は、車両用シート1について、着座位置にセットされた状態(実線)、チップアップした状態(一点鎖線)及びダイブダウンした状態(一点鎖線)の各状態におけるフレームの構成を示す側面図である。
【0045】
図6に示す状態は、図2に示す状態(着座位置)から、シートクッションフレーム11(シートクッション3)の前部を持ち上げて後部(回転軸15への連結部)に対して上位に位置するように、シートクッション3をチップアップ動作させる途中の状態を示している。シートクッション3の前部を持ち上げることにより、支持脚6の連結部材6Cは脚保持部材8から離脱している。
【0046】
また支持脚6の立設部6A,6Bは、連結部材6Cの小径部6Cbにリンク部材7が連結されているため、回転軸16を中心として回動し、シートクッションフレーム11に対する姿勢が変化する。すなわち、連結部材6Cがシートクッションフレーム11に近づき、立設部6A,6Bがシートクッションフレーム11に沿うように姿勢を変化させる。
【0047】
このとき、リンク部材7は回転軸17を中心として回動し、立設部6Bとリンク部材7とは小径部6Cbを中心として相互に回動して相対変位する。
【0048】
図7に示す状態は、チップアップ動作が完了した状態である。チップアップ動作が完了した状態では、シートクッションフレーム11とシートバックフレーム13とが略平行となり、シートクッション2の座面とシートバック3の前面とが対向して当接した状態となる。
【0049】
またチップアップ動作が完了した状態では、支持脚6の立設部6A,6Bはシートクッションフレーム11に沿うように、回転軸16との連結部を上側に、連結部材6Cとの連結部を下側にして、長手方向がほぼ上下方向(鉛直方向)に配置された姿勢となる。このときリンク部材7は、連結部材6Cとの連結部を上側に、回転軸17との連結部を下側にして、長手方向がほぼ上下方向(鉛直方向)に配置された姿勢となる。
【0050】
図7の平面図においては、立設部6A,6Bの一方(シートクッションフレーム11側)の側縁部がシートクッションフレーム11と重複する位置にある。すなわち車両用シート1を側方から見た場合に、立設部6A,6Bの一方(シートクッションフレーム11側)の側縁部はシートクッションフレーム11と重複する位置にある。このとき支持脚6の立設部6A,6Bは、シートクッションフレーム11に対して立設された状態(図2の状態)から、シートクッションの下面に形成された収納スペースに収納された状態(図7の状態)となる。
【0051】
リンク部材7はシートクッション3のチップアップ動作に連動して支持脚6の立設部6A,6Bを収納状態に遷移させるための部材であり、左右の立設部6A,6Bのうちいずれか一方の側に設けられていればよい。しかしリンク部材7は左右の立設部6A,6Bの両方に設けられてもよい。
【0052】
図8では、チップアップした状態のシートクッションフレーム11(シートクッション2)、支持脚6の立設部6B及びリンク部材7をそれぞれ符号11’(2’)、6B’及び7’で、またダイブダウンした状態のシートクッションフレーム11(シートクッション2)、シートバックフレーム13(シートバック3)、支持脚6の立設部6B及びリンク部材7をそれぞれ符号11''(2'')、13''(3'')、6B''及び7''で示す。
【0053】
ダイブダウンを完了した状態のシートクッションフレーム11''(シートクッション2'')、支持脚6の立設部6B''及びリンク部材7''は、チップアップを完了した状態のシートクッションフレーム11’(シートクッション2’)と支持脚6の立設部6B’とリンク部材7’との相対位置関係を維持している。そして支持脚6の連結部材6Cは、脚保持部材8に係合され、シートライザー19に対する相対位置が固定されている。
【0054】
本実施例では、シートクッション2のチップアップ動作に連動して、支持脚6がシートクッション2の下面に形成された収納スペースに自動で収納される。このため、チップアップ動作後に支持脚6を収納する操作が不要になる。
【0055】
また、シートクッション2をチップアップした状態から着座位置に戻す場合には、収納スペースに収納された支持脚6は自動で展開され、シートクッション2の下面に立設された状態に復帰する。或いは、シートクッション2及びシートバック3がダイブダウンした状態から着座位置に戻される場合にも、支持脚6は自動で展開される。このため、車両用シート1をチップアップ状態或いはダイブダウン状態から着座位置に戻す場合に、支持脚6を展開する操作が不要になる。
【0056】
本実施例では、支持脚6を収納或いは展開する操作が不要になり、シートアレンジを変える際の操作回数を低減することができる。これにより、操作性の良い車両用シート1を提供することができる。
【0057】
次に、図9及び図10を参照して、脚保持部材8について説明する。図9は、着座位置にセットされた車両用シート1について、支持脚6が脚保持部材8に保持された状態を示す斜視図である。図10は、脚保持部材8の近傍を拡大して示す側面図である。なお、図9では、左側のシートライザー19の一部(前部)を切り欠いて、脚保持部材8を示している。
【0058】
本実施例では、脚保持部材8は左右のシートライザー19にそれぞれ一つずつ設けられている。
【0059】
図9に示すように、アッパレール18Bにシートライザー19が取り付けられており、脚保持部材8はシートライザー19に固定されている。すなわち、脚保持部材8はシートライザー19を介してアッパレール18Bに固定されている。
【0060】
脚保持部材8は、板状の金属を折り曲げることで形成される。脚保持部材8は、図10に示すように、断面がギリシャ文字のΩのような形状をしている。脚保持部材8は、支持脚6の連結部材6Cを受容する受容部8Aと、受容部8Aに対して連結部材6Cを挿入もしくは引き抜くための抜き差し口8Bと、支持脚6の連結部材6Cを受容部8Aに挿入する際に連結部材6Cを抜き差し口8Bに案内する受け片8C,8Dとを有する。
【0061】
脚保持部材8は、受容部8Aを下側に、抜き差し口8Bを上側にして、シートライザー19上に固定されている。抜き差し口8Bの幅寸法は連結部材6Cの直径よりも小さい。脚保持部材8は、板状の金属を折り曲げることで形成されており、弾性変形可能な部材である。受容部8Aに対して連結部材6Cを挿入もしくは引き抜く際には、脚保持部材8は抜き差し口8Bの幅寸法を拡大するように弾性変形し、連結部材6Cが受容部8Aに受容された後は元の形状(抜き差し口8Bの幅寸法)に戻る。
【0062】
脚保持部材8は車両用シート1に人が着座した時に大きな荷重を受ける。従って、脚保持部材8を支持する部材にも高い剛性と大きな強度とが求められる。アッパレール18Bを有するスライドレール装置18及びシートライザー19は、人が着座した時の荷重を受けるために高い剛性と大きな強度とを備えている。本実施例では、脚保持部材8の支持部材としてスライドレール装置18及びシートライザー19を利用しているので、脚保持部材8の支持部材に高い剛性と大きな強度とが確保されている。
【0063】
脚保持部材8の支持強度及び剛性を高めるため、脚保持部材8はスライドレール装置18のアッパレール18Bに対して、鉛直方向上方に位置するように配設されている。図5に示すように、脚保持部材8は、その下面8Aがシートライザー19を介してアッパレール18Bの上面18B1と対向するように配設されている。すなわち、脚保持部材8の下面8Aと板状のシートライザー19の板面19A,19Bとアッパレール18Bの上面18B1とが平行に配設され、脚保持部材8の下面8Aと板状のシートライザー19の一方の板面(上面)19Aとが面で接触し、シートライザー19の他方の板面(下面)19Bとアッパレール18Bの上面18B1とが面で接触している。
【0064】
さらに脚保持部材8は、アッパレール18Bの前端部と後端部の間に配設されている。特に本実施例では、脚保持部材8は、アッパレール18Bの後端部よりも前端部の近傍に配設されている。
【0065】
また、脚保持部材8の支持部材としてスライドレール装置18及びシートライザー19を利用しているので、高い剛性と大きな強度とを有する支持部材を別に設ける必要がなく、簡素の構造を実現できる。
【0066】
また、脚保持部材8がスライドレール装置18及びシートライザー19上に配置されているため、左右のスライドレール装置18の間に脚保持部材8やその支持部材を配置する必要がない。このため、左右のスライドレール装置18の間のスペースを荷物置き用スペースとして、有効に利用することができる。
【0067】
本実施例では、脚保持部材8は左右のシートライザー19(又はスライドレール装置18)にそれぞれ一つずつ設けられており、合わせて二つの脚保持部材8が設けられている。左右のいずれか一方に配置した一つの脚保持部材8で必要な強度を確保できる場合は、脚保持部材8を一つだけ設ける構成であってもよい。
【0068】
本実施例では、脚保持部材8がシートライザー19(又はスライドレール装置18)に配設される構成であるため、脚保持部材8は支持脚6の連結部材6Cを左右方向の片寄った位置で保持する。このため、脚保持部材8を一つだけ設ける場合には、脚保持部材8が支持脚6を支持する強度を高める必要がある。一方、脚保持部材8を二つ設ける場合には、一つの脚保持部材8が支持脚6を支持する強度を低くすることができる。
【0069】
次に、図4図5及び図11図14を参照して、ロック機構30について説明する。
【0070】
まず、図11を参照して、車両用シート1のフレームの構成の特徴について説明する。図11は、着座位置にセットされた車両用シート1の側面図であり、フレームの構成の特徴を説明するための図である。
【0071】
上述したように、シートバック3は、下端部に設けられた回転軸(第2の回動軸)17を中心として前傾方向及び後傾方向に回動可能な状態で支持ベース部5(シートライザー19)に連結されている。シートクッション2は、後端部に設けられた回転軸(第4の回動軸)15を中心として座面が背もたれに近づく方向及び座面が背もたれから離れる方向にシートバック3に対して回動可能な状態でシートバック3の第2の回転軸17と上端部との間に連結されている。支持脚6は、上端部に設けられた回転軸(第1の回転軸)16を中心として前傾方向及び後傾方向にシートバック3に対して回動可能な状態で連結されると共に、下端部に設けられた連結部材6Cの小径部(第3の回転軸)6Cbを中心として前傾方向及び後傾方向に支持ベース部5(シートライザー19)に対して回動可能な状態で連結されている。
【0072】
図11に示すように、回転軸(回動軸)16の回動中心と連結部材6Cの小径部6Cbによって構成される回転軸(回動軸)6Cbの回動中心とを直線で結んだ線分Ax6と、回転軸(回動軸)15の回動中心と回転軸16の回動中心とを直線で結んだ線分Ax12と、回転軸(回動軸)17の回動中心と回転軸15の回動中心とを直線で結んだ線分Ax14と、回転軸6Cbの回動中心と回転軸17の回動中心とを直線で結んだ線分Ax7と、を仮想する。また水平線を直線LHで示す。
【0073】
線分Ax6は両端部の各回転中心を結ぶ立設部6の軸線(第1の節)を表し、線分Ax7は両端部の各回転中心を結ぶリンク部材7の軸線(第2の節)、線分Ax12は両端部の各回転中心を結ぶヒンジ部12の軸線(第3の節)を表し、線分Ax14は両端部の各回転中心を結ぶヒンジ部14の軸線(第4の節)を表し、を表す。立設部6(線分Ax6)、ヒンジ部12(線分Ax12)、ヒンジ部14(線分Ax14)及びリンク部材7(線分Ax7)はリンク機構を構成し、回転軸6Cb、回転軸16、回転軸15及び回転軸17はリンク機構の関節を構成する。
【0074】
ここで、車両用シート1が着座位置にセットされた状態では、回転軸6Cbと回転軸17とはシートライザー19上に位置が固定されている。もちろんチップアップ動作及びダイブダウン動作を行う場合は、回転軸6Cbはシートライザー19から分離される。
【0075】
また、第1の回転軸17及び第2の回転軸15は第3の回転軸16及び第4の回転軸6Cbに対して後方に配置され、第2の回転軸15は第1の回転軸17に対して後方に配置され、第3の回転軸16は第4の回転軸6Cbに対して後方に配置されている。これにより、第1の節を構成する立設部6の軸線Ax6が水平線(水平面)との間に成す角度θは、90度よりも小さく鋭角を成している。また、軸線Ax6と軸線Ax7との間の角度θax67は、90度よりも小さく、軸線Ax6と水平線LHとの間の角度θよりも小さい。
【0076】
角度θax67は、リンク機構を構成する四つの軸線(節)Ax6,Ax7,Ax12,Ax14が形成する四角形の内側(以下、リンク機構の内側という)に形成される角度である。
【0077】
本発明に係る車両用シート1は、図5に示すように、ロック機構30を備える。ロック機構30は、シートクッション2をチップアップされた状態で固定する。ロック機構30は、連結部材6Cの小径部6Cbに設けられた渦巻きばね(付勢部材)30Aと、シートクッションフレーム11に設けられたストッパ(規制部)30B(図4参照)と、を有する。
【0078】
本実施例では、渦巻きばね30Aは支持脚6の立設部6とリンク部材7との連結部に設けられている。渦巻きばね30Aは、一端部(外端)30Aaが支持脚6の立設部6Bに設けられた係止部31に係止され、他端部(内端)がリンク部材7に設けられた係止部(図示せず)に係止されている。すなわち渦巻きばね30Aは、立設部6Bとリンク部材7との間に設けられている。渦巻きばね30Aは、支持脚6の立設部6B(線分Ax6)とリンク部材7(線分Ax7)との間の角度θax67を拡げる方向に、立設部6Bとリンク部材7とを付勢する。
【0079】
ストッパ30Bは、左側ヒンジ部12Bの内側に設けられている。ストッパ30Bは、シートクッション2をチップアップする際に、支持脚6の立設部6Bに当接して、立設部6B(節Ax6)の回動範囲を規制する部材である。本実施例では、ストッパ30Bをヒンジ部12(すなわち、シートクッションフレーム11)に設けることで、シートクッションフレーム11のフレーム構成部材を利用してストッパ30Bを構成することができる(図5参照)。
【0080】
図12は、本発明に係る車両用シート1の構成を示す概念図である。
【0081】
図12では、渦巻きばね30Aをコイルスプリングで表記している。渦巻きばね30Aは図12のコイルスプリング30Aと同様に機能する。このため、渦巻きばね30Aで構成した場合も、図12の概念図で同様に説明することができる。また、図5の渦巻きばね30Aに代えて、コイルスプリング30Aを用いて図12のように構成することも可能である。以下、渦巻きばね30Aとコイルスプリング30Aとを区別せず、スプリング30Aとして説明する。
【0082】
スプリング30Aは回転軸6Cb(すなわち連結部材6C)をシートクッション2の底面に近づけるように付勢する付勢部材である。スプリング30Aが図12のようなコイルスプリング30Aで構成される場合、コイルスプリング30Aは連結部材6Cに対して引っ張り力が作用するように構成される。この場合、スプリング30Aの一端部はシートクッションフレーム11に係止され、他端部は支持脚6Bの立設部6に係止される。
【0083】
なお、スプリング30Aの他端部は回転軸6Cb又は連結部材6C、或いはリンク部材7に係止されてもよい。コイルスプリング30Aの他端部を支持脚6の立設部6B又はリンク部材7に係止する場合、回転軸6Cbの近傍で立設部6B又はリンク部材7に係止するとよい。これにより、スプリング30Aの付勢力を効率よく支持脚6の立設部6B又はリンク部材7に作用させることができる。
【0084】
またスプリング30Aの一端部はシートクッションフレーム11側に係止されていればよく、ヒンジ部12又はその他のフレーム部に係止されていればよい。コイルスプリング30Aの一端部が係止される係止部は、図12の平面図上において、回転軸16の中心よりも車両用シート1の後方に配置する。これにより、回転軸6Cb(すなわち連結部材6C)は、チップアップ動作に際に、シートクッション2の底面に近づくように付勢される。
【0085】
次に、図13を参照して、車両用シート1の動作について説明する。図13は、本発明に係る車両用シート1の動作状態を説明する概念図である。
【0086】
図13において、図13(a)は、車両用シート1が着座位置にセットされた状態を示している。この状態では、支持脚6の連結部材6Cは脚保持部材8に保持されている。スプリング30Aは回転軸6Cb(すなわち連結部材6C)をシートクッション2の底面に近づけるように付勢しているが、車両用シート1は着座位置にセットされたままの状態を維持する。
【0087】
図13(b)は、車両用シート1が着座位置から跳ね上げられた状態で、且つチップアップ動作が完了していない状態を示している。この状態は、支持脚6の立設部6B(軸線Ax6)とリンク部材7(軸線Ax7)との間の角度θax67は、180°よりも小さい。そして、軸線(第1の節)Ax6と軸線(第2の節)Ax7とは一直線上に並んでいない状態である。
【0088】
車両用シート1のチップアップ動作に際して、シートクッション2は、連結部材6Cが脚保持部材8から外されて脚保持部材8による拘束から解放され、人による操作力または図示しない付勢機構による付勢力により、シートバック3に向けて跳ね上げられる。この場合、スプリング30Aの付勢力はチップアップ動作を補助する力として機能する。なお、この状態では、支持脚6の立設部6Bはストッパ30Bに当接しておらず、立設部6B(節Ax6)の回動動作は規制されていない。
【0089】
図13(c)は、車両用シート1のチップアップ動作を完了する直前の状態を示している。この状態は、角度θax67が180°となり、回転軸16の中心、軸線(第1の節)Ax6、回転軸6Cbの中心、軸線(第2の節)Ax7及び回転軸17の中心が一直線上に並んでいる。
【0090】
角度θax67が180°の状態では、シートクッション2は着座位置に戻る方向およびその逆方向(シートクッション2の座面がシートバック3に近づく方向)のいずれの方向にも動作することができ、シートクッション2は不安定な状態である。なお、角度θax67が180°の状態では、シートクッション2の座面がシートバック3に最も近づいた状態となる。
【0091】
次に、図14を参照して、シートクッション2のチップアップ状態におけるロック状態について説明する。図14は、本発明に係る車両用シート1においてシートクッション2がチップアップされた状態を示す概念図である。
【0092】
角度θax67が180°よりも小さい状態でシートクッション2に押し下げる力が作用すると、角度θax67が小さくなる方向に立設部6B(軸線Ax6)とリンク部材7(軸線Ax7)とが回動し、シートクッション2は着座位置に戻る。
【0093】
一方、角度θax67が180°よりも大きい状態でシートクッション2に押し下げる力が作用すると、立設部6B(軸線Ax6)とリンク部材7(軸線Ax7)とは角度θax67がさらに大きくなる方向に回動しようとする。このとき、支持脚6の立設部6Bがストッパ30Bに当接してその回動動作が規制されると、シートクッション2はもはや着座位置に戻ることはできず、チップアップ状態でロックされた状態となる。
【0094】
すなわち、図13(c)に示す状態からシートクッション2を下げる方向(チップアップ動作とは逆方向)に操作すると、シートクッション2は着座姿勢に戻る方向に回動する。このとき、スプリング30Aの付勢力により、立設部6B(軸線Ax6)およびリンク部材7(軸線Ax7)は角度θax67が180°よりも大きくなるように回動する。そして、その回動動作がストッパ30Bにより規制されることにより、シートクッション2はチップアップ状態で安定した状態となる。
【0095】
図14に示すチップアップ動作の完了状態(ロック状態)では、支持脚6の立設部6B(軸線Ax6)とリンク部材7(軸線Ax7)との間の角度θax67は、180°よりも大きい。しかし、ロック状態における角度θax67は、200°以下の角度にすることが好ましい。角度θax67が大きくなると、ロック状態におけるシートクッション2の跳ね上げ量(チップアップ動作量)が小さくなってしまう。このため角度θax67は、ロック状態を維持できる範囲で、できる限り180°に近づけることが好ましい。
【0096】
シートクッション2をチップアップ状態から着座位置に戻す際には、ロック状態を解除するために、スプリング30Aの付勢力よりも大きな操作力で、角度θax67が180°よりも小さい角度になる位置までシートクッション2を一度持ち上げる。このときの操作量を小さくするためには、ロック状態における角度θax67はロック状態を維持できる範囲でできる限り180°に近づけることが好ましい。
【0097】
次に、ストッパ30Bの変更例について説明する。上述した実施例では、ストッパ(規制部)30Bをヒンジ部6に設けているが、ヒンジ部6以外の部分に設けてもよい。また、ストッパ30Bは立設部6に当接する構成としたが、他の部分に当接する構成にしてもよい。
【0098】
図15は、ストッパ30Bの第1変更例を示す図である。
【0099】
図15に示すように、ストッパ30Bを支持ベース部5のシートライザー19に設け、ストッパ30Bがリンク部材7に当接することで、支持脚6及びリンク部材7の回動を規制するように、構成にしてもよい。
【0100】
図16は、ストッパ30Bの第2変更例を示す図である。
【0101】
図16に示すように、ストッパ30Bを支持脚6に設け、ストッパ30Bがリンク部材7に当接することで、支持脚6及びリンク部材7の回動を規制するように、構成にしてもよい。
【0102】
図17は、ストッパ30Bの第3変更例を示す図である。
【0103】
図17に示すように、ストッパ30Bをリンク部材7に設け、ストッパ30Bが支持脚6に当接することで、支持脚6及びリンク部材7の回動を規制するように、構成にしてもよい。本変更例では、リンク部材7の、支持脚6の立設部6Bと連結される側の端部に、立設部6B側に向かって突き出した突出部30Bを設け、この突出部をストッパ30Bとしている。
【0104】
上述した実施例及び変更例におけるストッパ30Bは車両用シート1の左右いずれの側に配置してもよい。或いは、ストッパ30Bは車両用シート1の左右両側に配置してもよい。要するにストッパ30Bは、立設部6(軸線Ax6)およびリンク部材7(軸線Ax7)の回動動作、或いはシートクッション2の回動動作において、角度θax67がロック位置(ロック角度)を越えてさらに大きくなるのを規制するように設けられれば良い。
【0105】
次に、スプリング30Aの変更例について説明する。
【0106】
本実施例では、渦巻きばね30Aを左側の支持脚6(左側立設部6B)とリンク部材7との連結部に配置する構成について、説明した。リンク部材7を車両用シート1の右側或いは両側に配置する場合は、渦巻きばね30Aを右側の支持脚6(右側立設部6A)とリンク部材7との連結部に配置してもよい。或いは、リンク部材7を車両用シート1の両側に配置する場合は、渦巻きばね30Aを車両用シート1の両側に配置してもよい。
【0107】
図18は、渦巻きばね30Aの第1変更例を示す図である。
【0108】
渦巻きばね30Aは回転軸16、すなわち支持脚(立設部)6とシートクッションフレーム11(すなわち、ヒンジ部12)との連結部に配置してもよい。すなわち渦巻きばね30Aは、一端部が支持脚(立設部)6に係止され、他端部がシートクッションフレーム11に係止される。
【0109】
この場合、四つの軸線(節)Ax6,Ax7,Ax12,Ax14で構成されるリンク機構の内側で支持脚(立設部)6の軸線Ax6とヒンジ部12の軸線Ax12との間に形成される角度が小さくなる方向に、渦巻きばね30Aで支持脚(立設部)6とヒンジ部12とを付勢するようにする。この場合、渦巻きばね30Aは車両用シート1の左右のいずれか一方、或いは左右両側に配置することができる。
【0110】
また、支持脚(立設部)6とシートクッションフレーム11(すなわち、ヒンジ部12)との間にコイルスプリング30Aを設ける構成であってもよい。
【0111】
図19は、渦巻きばね30Aの第2変更例を示す図である。
【0112】
また、渦巻きばね30Aは回転軸17、すなわちリンク部材7とシートライザー19との連結部に配置してもよい。この場合、四つの軸線(節)Ax6,Ax7,Ax12,Ax14で構成されるリンク機構の内側でリンク部材7の軸線Ax7とシートバックフレーム13(ヒンジ部14)の軸線Ax14との間に形成される角度が小さくなる方向に、渦巻きばね30Aでリンク部材7を付勢するようにする。リンク部材7を車両用シート1の右側或いは両側に配置する場合は、渦巻きばね30Aは車両用シート1の右側に配置することができる。或いは、リンク部材7を車両用シート1の両側に配置する場合は、渦巻きばね30Aを車両用シート1の両側に配置してもよい。
【0113】
また、リンク部材7とシートライザー19との間にコイルスプリング30Aを設ける構成であってもよい。
【0114】
上述した実施例及び各変更例におけるコイルスプリング30A又は渦巻きばね30Aとストッパ30Bとは、組み合わせを変えてロック機構30を構成することができる。
【0115】
上述した実施例及び各変更例では、コイルスプリング30Aを用いる場合、角度θax67が180°を超える前にコイルスプリング30Aが縮み切ってしまうと、支持脚(立設部)6とリンク部材7とをロック状態(ロック角度)に回動させることができない。そのため、支持脚(立設部)6とリンク部材7との回動量と、コイルスプリング30Aの長さ寸法とに配慮して、コイルスプリング30Aの配置を決める必要がある。これは、コイルスプリング30Aの配置に制約を与える場合がある。
【0116】
このコイルスプリング30Aの配置の制約について、渦巻きばね30Aを用いる場合はあまり問題にならず、配置の自由度が高くなる。しかし、渦巻きばね30Aは2つの部材の連結部に設けることが好ましく、この場合、2つの部材の連結部が大きくなる可能性がある。
【0117】
渦巻きばね30Aとコイルスプリング30Aとは、それぞれの特徴に配慮して用いればよい。
【0118】
上述した実施例及び各変更例の車両用シート1は、脚係止部(脚保持部材)8を有する支持ベース部5と、支持ベース部5上に立設されるシートバック3と、シートバック3に対して回動可能に設けられチップアップ可能に構成されたシートクッション2と、シートクッション2を支持する支持脚6と、支持脚6に連結されたリンク部材7と、支持脚6及びリンク部材7に対して付勢力を付与する付勢部材30Aと、支持脚6及びリンク部材7の回動を規制する規制部30Bと、を備える。
【0119】
支持脚6は、一端部がシートクッション2に対して第1の回動中心(回転軸16の中心)の周りに回動可能に連結される。支持脚6は、シートクッション2がチップアップされた状態では折り畳まれ、シートクッション2が着座可能な状態に設定された状態では伸展されて他端部が脚係止部8に係止される。
【0120】
リンク部材7は、一端部に構成される第2の回動中心(回転軸17の中心)の周りに回動可能に設けられる。リンク部材7の他端部は、支持脚6の前記他端部に第3の回動中心(回転軸6Cbの中心)の周りに回動可能に連結される。リンク部材7は、第3の回動中心を第2の回動中心の周りに旋回させる。このときの旋回軌道は図14の符号Tで示す二点鎖線のようになる。
【0121】
付勢部材30Aは、第3の回動中心が脚係止部8から離れる方向に旋回するように、支持脚6及びリンク部材7に対して付勢力を付与する。
【0122】
規制部30Bは、第3の回動中心が第1の回動中心及び第2の回動中心と一直線上に並ぶ位置に対して、脚係止部8から離れる方向に旋回した位置で、支持脚6及びリンク部材7の回動を規制する。
【0123】
本発明に係る実施例及び各変更例によれば、支持脚6をシートクッション2の底面に折り畳む折り畳み機構(リンク部材7)を利用してロック機構30を構成している。このため、大きな部品としては渦巻きばね30A又はコイルスプリング30A等のスプリングを追加するだけで、シートクッション2をチップアップ状態でロックするロック機構30を構成することができる。渦巻きばね30A又はコイルスプリング30Aの他には、渦巻きばね30A又はコイルスプリング30Aの係止部とストッパ30Bとを追加する必要があるが、これらは既存部品の適当な部位を利用したり、既存部品の形状を一部変更したりすることで構成することができる。このため本実施例は、少数の部品を追加することにより、簡単な構成で、シートクッションをチップアップした状態で固定することができる車両用シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0124】
1…車両用シート、2,2’ , 2''…シートクッション、3,3''…シートバック、4,4''…ヘッドレスト、5…支持ベース部、6…支持脚、6A…支持脚6の右側立設部、6B,6B’,6B''…支持脚6の左側立設部、6C…支持脚6の連結部材、16…回転軸、6Ca,6Cb…連結部材6Cの小径部、7,7’,7''…リンク部材、8…脚保持部材(キャッチャー)、8A…受容部、8B…抜き差し口、8C,8D…受け片、11,11’,11''…シートクッションフレーム、11A…シートクッションフレーム11の前縁部、11B…シートクッションフレーム11の側縁部、11B1…右側の側縁部、11B2…左側の側縁部、12…シートクッション2のヒンジ部、12A…右側ヒンジ部、12B…左側ヒンジ部、13,13''…シートバックフレーム、13A…シートバックフレーム13の上縁部、13B…シートバックフレーム13の側縁部(垂下部)、13B1…右側側縁部、13B2…左側側縁部、14…シートバック3のヒンジ部、14A…右側ヒンジ部、14B…左側ヒンジ部、15…回転軸、16…回転軸、17…回転軸、18…スライドレール装置(スライド機構)、18A…ロアレール、18B…アッパレール、18…スライドレール装置、19…シートライザー、20…樹脂製のカバー、21A,21B…取付具、23A,23B…ヘッドレストフレーム、30…ロック機構、30A…渦巻きばね又はコイルスプリング、30B…ストッパ、100A…車床面、100B…低段の車床面(収納部)。
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