【文献】
CHAU J.L.H. and KAO C.C.,Microwave plasma synthesis of TiN and ZrN nanopowders,Materials Letters,2006年 8月22日,Vol.61,pp. 1583-1587
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
窒化ジルコニウム粉末(A)と窒化チタン粉末又は酸窒化チタン粉末(B)とを含み、前記窒化ジルコニウム粉末(A)と前記窒化チタン粉末又は前記酸窒化チタン粉末(B)の含有割合は、質量比(A:B)で(90:10)〜(25:75)の範囲にあり、
前記窒化ジルコニウム粉末がX線回折プロファイルにおいて、窒化ジルコニウムのピークを有する一方、二酸化ジルコニウムのピーク、低次酸化ジルコニウムのピーク及び低次酸窒化ジルコニウムのピークを有さず、
前記混合粉末を分散液に濃度50ppmで分散した分散液スペクトルにおいて、波長400nmの光透過率をX、波長550nmの光透過率をY、波長1000nmの光透過率をZとするとき、X>10%、Y<10%、Z<16%であって、かつX/Yが1.25以上で、Z/Yが2.0以下であることを特徴とする黒色膜形成用混合粉末。
二酸化ジルコニウム粉末と、金属マグネシウム粉末と、窒化マグネシウム粉末とを、金属マグネシウムが二酸化ジルコニウムの2.0〜6.0倍モルの割合になるように、かつ窒化マグネシウムが二酸化ジルコニウムの0.3〜3.0倍モルの割合になるように混合して第1混合物を得た後、前記第1混合物を窒素ガス雰囲気下、650〜900℃の温度で焼成することにより、前記二酸化ジルコニウム粉末を還元して、二酸化ジルコニウム、低次酸化ジルコニウム及び低次酸窒化ジルコニウムを含有しない窒化ジルコニウム粉末(A)を作製し、
前記作製した窒化ジルコニウム粉末(A)と窒化チタン粉末又は酸窒化チタン粉末(B)とを、質量比(A:B)で(90:10)〜(25:75)の範囲に混合することを特徴とする黒色膜形成用混合粉末の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
〔黒色膜形成用混合粉末〕
本実施形態の黒色膜形成用混合粉末は、窒化ジルコニウム粉末(A)と窒化チタン粉末又は酸窒化チタン粉末(B)とを含み、窒化ジルコニウム粉末(A)と前記窒化チタン粉末又は前記酸窒化チタン粉末(B)の含有割合は、質量比(A:B)で(90:10)〜(25:75)の範囲、好ましくは(80:20〜40:60)の範囲にある。窒化ジルコニウム粉末(A)の割合が90を超えて、窒化チタン粉末又は酸窒化チタン粉末(B)の割合が10未満であると、この混合粉末から黒色膜を形成したときに、黒色膜の波長1000nmにおける遮光性が劣るようになる。また窒化ジルコニウム粉末(A)の割合が25未満であって、窒化チタン粉末又は酸窒化チタン粉末(B)の割合が75を超えると、この混合粉末から黒色膜を形成したときに、黒色膜の波長400nmにおける光の透過性が劣り、高解像度のパターニング膜が得られなくなる。
【0022】
また黒色膜形成用混合粉末を構成する窒化ジルコニウム粉末(A)は、X線回折プロファイルにおいて、窒化ジルコニウムのピークを有する一方、二酸化ジルコニウムのピーク、低次酸化ジルコニウムのピーク及び低次酸窒化ジルコニウムのピークを有しない特徴がある。窒化ジルコニウム粉末は、BET法により測定される比表面積が20〜90m
2/gであることが好ましい。窒化ジルコニウム粉末の比表面積が20m
2/g未満では、黒色レジストとしたときに、長期保管時に沈降し易く、90m
2/gを超えると、黒色顔料としてパターニング膜を形成したときに、遮光性が不足し易いからである。30〜60m
2/gが好ましい。
【0023】
また黒色膜形成用混合粉末を構成する窒化チタン粉末又は酸窒化チタン粉末(B)は、BET法により測定される比表面積が10〜90m
2/gであることが長期保管時の沈降を防止し、黒色顔料としてパターニング膜を形成したときの十分な遮光性を得るために好ましい。この粉末(B)は、TiNが100%の粉末で構成されるか、又は主としてTiNからなっているが、その合成時における酸素の混入や、粉末表面の酸化により、一部酸素を含有する酸窒化チタン粉末で構成される。
【0024】
更に黒色膜形成用混合粉末は、混合粉末を分散液に濃度50ppmで分散した分散液スペクトルにおいて、波長400nmの光透過率をX、波長550nmの光透過率をY、波長1000nmの光透過率をZとするとき、X>10%、Y<10%、Z<16%であって、かつX/Yが1.25以上で、Z/Yが2.0以下であることを特徴とする。Xが10%以下では、波長400nmの光透過率が低
過ぎ、黒色顔料としてパターニング膜を形成するときにフォトレジスト膜の底部まで露光されず、パターニング膜のアンダーカットが発生して高解像度のパターニング膜が得られない。Yが10%以上では、波長550nmの光透過率が高
過ぎ、またZが16%以上では、波長1000nmの光透過率が高
過ぎ、いずれも遮光性に劣る。好ましくは、X>12%、Y<8%、Z<10%であり、またX/Yが1.25以上であることにより、紫外線透過の効果があり、パターニング膜のアンダーカットを発生しない。Z/Yが2.0以下であることにより可視光線遮蔽効
果がある。好ましくは、X/Yが1.3以上、Z/Yが1.8以下である。
【0025】
以下、本実施形態の黒色膜形成用混合粉末の出発原料を原料毎に説明する。
【0026】
[二酸化ジルコニウム粉末]
粉末(A)を作製するために用いられる二酸化ジルコニウム粉末としては、例えば、単斜晶系二酸化ジルコニウム、立方晶系二酸化ジルコニウム、イットリウム安定化二酸化ジルコニウム等の二酸化ジルコニウムの粉末がいずれも使用可能であるが、窒化ジルコニウム粉末の生成率が高くなる観点から、単斜晶系二酸化ジルコニウム粉末が好ましい。この二酸化ジルコニウム粉末は、比表面積の測定値から球形換算した平均一次粒径で500nm以下であることが、BET法により測定される比表面積が20〜90m
2/gの窒化ジルコニウム粉末(A)を得るために好ましく、粉末の取扱い易さから、平均一次粒径10nm以上500nm以下であることが更に好ましい。
【0027】
[金属マグネシウム粉末]
粉末(A)を作製するために用いられる金属マグネシウム粉末は、粒径が小さ
過ぎると、反応が急激に進行して操作上危険性が高くなるので、粒径が篩のメッシュパスで100〜1000μmの粒状のものが好ましく、特に200〜500μmの粒状のものが好ましい。ただし、金属マグネシウムは、すべて上記粒径範囲内になくても、その80質量%以上、特に90質量%以上が上記範囲内にあればよい。
【0028】
[窒化マグネシウム粉末]
粉末(A)を作製するために用いられる窒化マグネシウム粉末は、焼成時に窒化ジルコニウム表面又は窒化チタン表面をコーティングして、金属マグネシウムの還元力を緩和して、窒化ジルコニウム粉末又は窒化チタン粉末の焼結及び粒成長を防止する。窒化マグネシウム粉末は、比表面積の測定値から球形換算した平均一次粒径で1000nm以下であることが好ましく、粉末の取扱い易さから、平均一次粒径10nm以上500nm以下であることが好ましい。なお、窒化マグネシウムのみではなく、酸化マグネシウムも窒化ジルコニウムの焼結予防に有効であるため、窒化マグネシウムに一部酸化マグネシウムを混合して使用することも可能である。
【0029】
[二酸化チタン粉末]
粉末(B)を作製するために用いられる二酸化チタン粉末としては、例えば、正方晶(アナターゼ型、ルチル型)系二酸化チタン、斜方晶(ブルッカイト型)系二酸化チタン等の二酸化チタンの粉末がいずれも使用可能であるが、窒化チタン粉末の生成率が高くなる観点から、正方晶系二酸化チタン粉末が好ましい。この二酸化チタン粉末は、比表面積の測定値から球形換算した平均一次粒径で70nm以下であることが、BET法により測定される比表面積が10〜90m
2/gの窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)を得るために好ましく、粉末の取扱い易さから、平均一次粒径10nm以上60nm以下であることが更に好ましい。
【0030】
〔黒色膜形成用混合粉末の製造方法〕
本実施形態の黒色膜形成用混合粉末の製造方法は、窒化ジルコニウム粉末(A)と窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)とを各別に作製しておき、両粉末を前述した質量比で均一に混合して、窒化ジルコニウム粉末(A)と窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)の混合粉末を製造する方法である。
【0031】
粉末(A)の作製方法
この方法では、窒化ジルコニウム粉末(A)は、二酸化ジルコニウム(ZrO
2 )、金属マグネシウム(金属Mg)及び窒化マグネシウム(Mg
3N
2)の各粉末を出発原料として用い、特定の雰囲気下、特定の温度と時間で焼成することにより作製される。
【0032】
(1-1) 粉末(A)を作製するときの金属マグネシウム粉末の添加量
二酸化ジルコニウム粉末に対する金属マグネシウム粉末の添加量の多寡は、後述する雰囲気ガス中のアンモニアガス及び水素ガスの量とともに二酸化ジルコニウムの還元力に影響を与える。金属マグネシウムの量が少な
過ぎると、還元不足で目的とする窒化ジルコニウム粉末が得られにくくなり、多
過ぎると、過剰な金属マグネシウムにより反応温度が急激に上昇し、粉末の粒成長を引き起こす恐れがあるとともに不経済となる。金属マグネシウム粉末は、その粒径の大きさによって、金属マグネシウムが二酸化ジルコニウムの2.0〜6.0倍モルの割合になるように、金属マグネシウム粉末を二酸化ジルコニウム粉末に添加して混合する。2.0倍モル未満では、二酸化ジルコニウムの還元力が不足し、6.0倍モルを超えると、過剰な金属マグネシウムにより反応温度が急激に上昇し、粉末の粒成長を引き起こす恐れがあるとともに不経済となる。好ましくは3.0〜5.0倍モルである。
【0033】
(1-2) 粉末(A)を作製するときの窒化マグネシウム粉末の添加量
窒化マグネシウム粉末は、その粒径の大きさによって、窒化マグネシウムが二酸化ジルコニウムの0.3〜3.0倍モルの割合になるように、二酸化ジルコニウムに添加して混合する。0.3倍モル未満では窒化ジルコニウム粉末の焼結防止にならず、3.0倍モルを超えると、焼成後の酸洗浄時に要する酸性溶液の使用量が増加する不具合がある。好ましくは0.4〜2.0倍モルである。
【0034】
(1-3) 粉末(A)を作製するときの金属マグネシウム粉末による還元反応
窒化ジルコニウム粉末を生成させるための金属マグネシウムによる還元反応時の温度は、650〜900℃、好ましくは700〜800℃である。650℃は金属マグネシウムの溶融温度であり、温度がそれより低いと、二酸化ジルコニウムの還元反応が十分に生じない。また、温度を900℃より高くしても、その効果は増加せず、熱エネルギーの無駄になるとともに粒子の焼結が進行し好ましくない。また還元反応時間は30〜90分が好ましく、30〜60分が更に好ましい。
【0035】
上記還元反応を行う際の反応容器は、反応時に原料や生成物が飛び散らないように、蓋を有するものが好ましい。これは、金属マグネシウムの溶融が開始されると、還元反応が急激に進行し、それに伴って温度が上昇して、容器内部の気体が膨張し、それによって、容器の内部のものが外部に飛び散るおそれがあるからである。
【0036】
(1-4) 粉末(A)を作製するときの金属マグネシウム粉末による還元反応時の雰囲気ガス
金属マグネシウム粉末による還元反応時の雰囲気ガスは、窒素ガス単体であるか、又は窒素ガスと水素ガスの混合ガスであるか、又は窒素ガスとアンモニアガスの混合ガスである。上記還元反応は上記混合ガスの気流中で行われる。混合ガス中の窒素ガスは、金属マグネシウムや還元生成物と酸素との接触を防ぎ、それらの酸化を防ぐとともに、窒素をジルコニウムと反応させ、窒化ジルコニウムを生成させる役割を有する。混合ガス中の水素ガス又はアンモニアガスは、金属マグネシウムとともに、二酸化ジルコニウムを還元させる役割を有する。水素ガスは、上記混合ガス中、0〜40体積%含むことが好ましく、10〜30体積%含むことが更に好ましい。またアンモニアガスは、上記混合ガス中、0〜50体積%含むことが好ましく、0〜40体積%含むことが更に好ましい。この還元力のある雰囲気ガスを使用することにより、最終的に低次酸化ジルコニウム及び低次酸窒化ジルコニウムを含まない窒化ジルコニウム粉末を作製することができる。一方、この範囲より水素ガスの割合、或いはアンモニアガスの割合が高いと還元は進むものの窒素源が少なくなるため、低次酸化ジルコニウム又は低次酸窒化ジルコニウムが生成してしまい、望ましくない。また、水素ガスの割合よりもアンモニアガスの割合が高いのは、ガスの窒化能力が水素よりアンモニアのほうが高いからと考えられる。
【0037】
(1-5) 粉末(A)を作製するときの焼成後の反応物の処理
二酸化ジルコニウム粉末と、金属マグネシウムと、窒化マグネシウム粉末との混合物を上記混合ガスの雰囲気下で焼成することにより得られた反応物は、反応容器から取り出し、最終的には室温まで冷却した後、塩酸水溶液などの酸溶液で洗浄して、金属マグネシウムの酸化によって生じた酸化マグネシウムや生成物の焼結防止のため反応当初から含まれていた窒化マグネシウムを除去する。この酸洗浄に関しては、pH0.5以上、特にpH1.0以上、温度は90℃以下で行うのが好ましい。これは酸性が強
過ぎたり、温度が高
過ぎるとジルコニウムまでが溶出してしまうおそれがあるためである。そして、その酸洗浄後、アンモニア水などでpHを5〜6に調整した後、濾過又は遠心分離により固形分を分離し、その固形分を乾燥した後、粉砕して窒化ジルコニウム粉末(A)を得る。
【0038】
本実施形態では、主に金属マグネシウムを使用した窒化ジルコニウム粉末について記載しているが、この窒化ジルコニウム粉末はナノ粒子プラズマ合成法により作製することも可能である。具体的にはプラズマナノ粒子製造装置に金属ジルコニウム粉末を導入し、N
2ガス雰囲気にて窒化ジルコニウムナノ粒子を得る方法である。本方法により合成される窒化ジルコニウムも本実施形態と同様にBET法により測定される比表面積20〜90m
2/gの粉末を得ることができるが、原料である金属ジルコニウムの燃焼性が高く危険であること、更にはコスト的に高くなるデメリットがある。
【0039】
粉末(B)の作製方法
本実施形態の窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)を作製する方法の一例として、金属マグネシウム粉末を還元剤として用いて、二酸化チタン粉末をこの金属マグネシウム粉末により還元して粉末(B)を作製する方法を説明する。
【0040】
(2-1) 粉末(B)を作製するときの金属マグネシウム粉末の添加量
二酸化チタン粉末に対する金属マグネシウム粉末の添加量の多寡は、後述する雰囲気ガス中のアンモニアガス及び水素ガスの量とともに二酸化チタンの還元力に影響を与える。金属マグネシウムの量が少な
過ぎると、還元不足で目的とする窒化チタン又は酸窒化チタン粉末が得られにくくなり、多
過ぎると、過剰な金属マグネシウムにより反応温度が急激に上昇し、粉末の粒成長を引き起こす恐れがあるとともに不経済となる。金属マグネシウム粉末は、その粒径の大きさによって、金属マグネシウムが二酸化チタンの2.0〜6.0倍モルの割合になるように、金属マグネシウム粉末を二酸化チタン粉末に添加して混合する。2.0倍モル未満では、二酸化チタンの還元力が不足し、6.0倍モルを超えると、過剰な金属マグネシウムにより反応温度が急激に上昇し、粉末の粒成長を引き起こす恐れがあるとともに不経済となる。好ましくは2.5〜5.0倍モルである。
【0041】
(2-2) 粉末(B)を作製するときの窒化マグネシウム粉末の添加量
窒化マグネシウム粉末は、その粒径の大きさによって、窒化マグネシウムが二酸化チタンの0.2〜3.0倍モルの割合になるように、二酸化チタンに添加して混合する。0.2倍モル未満では窒化チタン又は酸窒化チタン粉末の焼結防止にならず、3.0倍モルを超えると、焼成後の酸洗浄時に要する酸性溶液の使用量が増加する不具合がある。好ましくは0.3〜2.5倍モルである。
【0042】
(2-3) 粉末(B)を作製するときの金属マグネシウム粉末による還元反応
窒化チタン又は酸窒化チタン粉末を生成させるための金属マグネシウムによる還元反応時の温度及び反応時間は、粉末(A)を作製するときと同じである。またこの還元反応を行う際の反応容器は、粉末(A)を作製するときの反応容器と同じである。
【0043】
(2-4) 粉末(B)を作製するときの金属マグネシウム粉末による還元反応時の雰囲気ガス
粉末(B)を作製するときの金属マグネシウム粉末による還元反応時の雰囲気ガスは、粉末(A)を作製するときの雰囲気ガスと同じである。この還元反応は上記混合ガスの気流中で行われる。混合ガス中の窒素ガスは、金属マグネシウムや還元生成物と酸素との接触を防ぎ、それらの酸化を防ぐとともに、窒素をチタンと反応させ、窒化チタン又は酸窒化チタンを生成させる役割を有する。混合ガス中の水素ガス又はアンモニアガスは、金属マグネシウムとともに、二酸化チタンを還元させる役割を有する。水素ガス及びアンモニアガスの混合ガス中に含まれる割合は、粉末(A)を作製するときと同じである。
【0044】
(2-5) 粉末(B)を作製するときの焼成後の反応物の処理
二酸化チタン粉末と、金属マグネシウムと、窒化マグネシウム粉末との混合物を上記混合ガスの雰囲気下で焼成することにより得られた反応物の処理は、粉末(A)を作製するときの反応物の処理と同じである。即ち、酸洗浄後、アンモニア水などでpHを5〜6に調整した後、濾過又は遠心分離により固形分を分離し、その固形分を乾燥した後、粉砕して窒化チタン粉末又は酸窒化チタン粉末(B)を作製する。
【0045】
なお、窒化チタン粉末又は酸窒化チタン粉末(B)の製造方法について、二酸化チタン粉末を金属マグネシウム粉末で還元処理する例を説明したが、本発明では、この方法に限らず、二酸化チタン粉末を窒素ガスと水素ガスの混合ガス、又は窒素ガスとアンモニアガスの混合ガスの雰囲気下、650〜900℃の温度で焼成することにより、二酸化チタン粉末を還元して、窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)を作製する方法、又は二酸化チタン粉末を高周波熱プラズマにより蒸発させ窒素をキャリアガスとして導入し冷却過程で窒化して窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)を作製する方法、プラズマの周縁部にアンモニアガスを吹き込んで窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)を作製する方法等がある。上述した比表面積を有すれば、窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)は市販品を用いてもよい。
【0046】
作製された粉末(A)及び粉末(B)からの黒色膜形成用混合粉末の製造
各別に作製された窒化ジルコニウム粉末(A)と窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)とを例えば、ヘンシェルミキサーを用いて、上述した質量比で秤量した後に、均一に混合して、黒色膜形成用混合粉末を製造する。
【0047】
〔混合粉末を黒色顔料として用いたパターニング膜の形成方法〕
得られた混合粉末を黒色顔料として用いた、ブラックマトリックスに代表されるパターニング膜の形成方法について述べる。先ず、上記混合粉末を感光性樹脂に分散して黒色感光性組成物に調製する。次いでこの黒色感光性組成物を基板上に塗布した後、プリベークを行って溶剤を蒸発させて、フォトレジスト膜を形成する。次にこのフォトレジスト膜にフォトマスクを介して所定のパターン形状に露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、フォトレジスト膜の未露光部を溶解除去し、その後好ましくはポストベークを行うことにより、所定の黒色パターニング膜が形成される。
【0048】
形成されたパターニング膜の遮光性(透過率の減衰)を表す指標として光学濃度、即ちOD(Optical Density)値が知られている。本実施形態の混合粉末を用いて形成されたパターニング膜は高いOD値を有する。ここでOD値は、光がパターニング膜を通過する際に吸収される度合を対数で表示したものであって、次の式(1)で定義される。式(1)中、Iは透過光量、I
0は入射光量である。
OD値=−log
10(I/I
0) (1)
【0049】
上記基板としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。また上記基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。黒色感光性組成物を基板に塗布する際には、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布法を採用することができる。塗布厚さは、乾燥後の膜厚として、通常、0.1〜10μm、好ましくは0.2〜7.0μm、更に好ましくは0.5〜6.0μmである。パターニング膜を形成する際に使用される放射線としては、本実施形態では、波長が250〜410nmの範囲にある放射線が好ましい。放射線の照射エネルギー量は、好ましくは10〜10,000J/m
2 である。また上記アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等の水溶液が好ましい。上記アルカリ現像液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができ、現像条件は、常温で5〜300秒が好ましい。このようにして形成されたパターニング膜は、高精細の液晶、有機EL用ブラックマトリックス材、イメージセンサー用遮光材
、光学部材用遮光材、遮光フィルター、IRカットフィルター、黒色カバーレイフィルム等に好適に用いられる。
【実施例】
【0050】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0051】
〔窒化ジルコニウム粉末(A)の作製例〕
先ず、窒化ジルコニウム粉末(A)の作製例No.A−1〜No.A−13を説明する。作製例No.A−1〜No.A−6は、第2の観点の製造条件を満たす例であり、作製例No.A−7〜No.A−13は、第2の観点の製造条件を満たさない例である。
【0052】
<No.A−1>
BET法により測定される比表面積から算出される平均一次粒径が50nmの単斜晶系二酸化ジルコニウム粉末7.4gに、平均一次粒径が150μmの金属マグネシウム粉末7.3gと平均一次粒径が200nmの窒化マグネシウム粉末3.0gを添加し、石英製ガラス管に黒鉛のボートを内装した反応装置により均一に混合した。このとき金属マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウムの5.0倍モル、窒化マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウムの0.5倍モルであった。この混合物を窒素ガスの雰囲気下、700℃の温度で60分間焼成して焼成物を得た。この焼成物を、1リットルの水に分散し、10%塩酸を徐々に添加して、pHを1以上で、温度を100℃以下に保ちながら洗浄した後、25%アンモニア水にてpH7〜8に調整し、濾過した。その濾過固形分を水中に400g/リットルに再分散し、もう一度、前記と同様に酸洗浄、アンモニア水でのpH調整をした後、濾過した。このように酸洗浄−アンモニア水によるpH調整を2回繰り返した後、濾過物をイオン交換水に固形分換算で500g/リットルで分散させ、60℃での加熱攪拌とpH7への調整をした後、吸引濾過装置で濾過し、更に等量のイオン交換水で洗浄し、設定温度;120℃の熱風乾燥機にて乾燥することにより、窒化ジルコニウム粉末(A)を作製した。
【0053】
<No.A−2>
金属マグネシウムの添加量を二酸化ジルコニウムの2.0倍モルに変更した以外、作製例No.A−1と同一の原料を用いて、作製例No.A−1と同様にして窒化ジルコニウム粉末(A)を作製した。
【0054】
<No.A−3>
窒化マグネシウムの添加量を二酸化ジルコニウムの0.3倍モルに変更した以外、作製例No.A−1と同一の原料を用いて、作製例No.A−1と同様にして窒化ジルコニウム粉末(A)を作製した。
【0055】
<No.A−4>
窒化マグネシウムの添加量を二酸化ジルコニウムの3.0倍モルに変更し、かつ焼成温度を650℃に変更した以外、作製例No.A−1と同一の原料を用いて、作製例No.A−1と同様にして窒化ジルコニウム粉末(A)を作製した。
【0056】
<No.A−5>
焼成温度を650℃に変更した以外、作製例No.A−1と同一の原料を用いて、作製例No.A−1と同様にして窒化ジルコニウム粉末(A)を作製した。
【0057】
<No.A−6>
焼成温度を900℃に変更した以外、作製例No.A−1と同一の原料を用いて、作製例No.A−1と同様にして窒化ジルコニウム粉末(A)を作製した。
【0058】
<No.A−7>
作製例No.A−1に示された方法に準じて、特許文献2の実施例1に示される方法で、微粒子低次酸化ジルコニウム・窒化ジルコニウム複合体を得た。即ち、平均一次粒径が19nmの二酸化ジルコニウム粉末7.2gと、平均一次粒径が20nmの微粒子酸化マグネシウム3.3gを混合粉砕して混合粉体Aを得た。この混合粉体0.5gに平均一次粒径が150μmの金属マグネシウム粉末2.1gを加えて混合し混合粉体Bを得た。このとき金属マグネシウムと酸化マグネシウムの添加量はそれぞれ二酸化ジルコニウムの1.4倍モル及び1.4倍モルであった。この混合粉体Bを窒素ガスの雰囲気下、700℃の温度で60分間焼成した。以下、作製例No.A−1と同様にして、微粒子低次酸化ジルコニウム・窒化ジルコニウム複合体(A)を作製した。
【0059】
<No.A−8>
平均一次粒径が40nmの二酸化ジルコニウム粉末7.2gに、平均一次粒径が150μmの金属マグネシウム粉末7.1gと平均一次粒径が200nmの窒化マグネシウム粉末2.9gを添加し、作製例No.A−1と同様に均一に混合した。このとき金属マグネシウムと窒化マグネシウムの添加量はそれぞれ二酸化ジルコニウムの5.0倍モル及び、0.5倍モルであった。雰囲気ガスである反応ガスを窒素ガス100体積%にし、また焼成温度を1000℃、焼成時間を60分にした。それ以外、作製例No.A−1と同一の原料を用いて、作製例No.A−1と同様にして窒化ジルコニウム粉末(A)を作製した。
【0060】
<No.A−9>
金属マグネシウムの添加量を二酸化ジルコニウムの1.5倍モルに変更した以外、作製例No.A−1と同一の原料を用いて、作製例No.A−1と同様にして窒化ジルコニウム粉末(A)を作製した。
【0061】
<No.A−10>
金属マグネシウムの添加量を二酸化ジルコニウムの6.5倍モルに変更した以外、作製例No.A−1と同一の原料を用いて、作製例No.A−1と同様にして窒化ジルコニウム粉末(A)を作製した。
【0062】
<No.A−11>
窒化マグネシウムの添加量を二酸化ジルコニウムの0.2倍モルに変更した以外、作製例No.A−1と同一の原料を用いて、作製例No.A−1と同様にして窒化ジルコニウム粉末(A)を作製した。
【0063】
<No.A−12>
窒化マグネシウムの添加量を二酸化ジルコニウムの3.5倍モルに変更した以外、作製例No.A−1と同一の原料を用いて、作製例No.A−1と同様にして窒化ジルコニウム粉末(A)を作製した。
【0064】
<No.A−13>
焼成温度を600℃に変更した以外、作製例No.A−1と同一の原料を用いて、作製例No.A−1と同様にして窒化ジルコニウム粉末(A)を作製し得た。
【0065】
作製例No.A−1〜13の各製造方法、金属マグネシウムと窒化マグネシウム又は酸化マグネシウム(以下、Mg源という。)の添加量に対する二酸化ジルコニウムのモル比、雰囲気ガスである反応ガスの種類とその体積%の割合、焼成温度と焼成時間を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
〔窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)の作製例〕
次に、窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)の作製例No.B−1〜No.B−4を説明する。
【0068】
<No.B−1>
BET法により測定される比表面積から算出される平均一次粒径が30nmの二酸化チタン粉末7.2gに、平均一次粒径が150μmの金属マグネシウム粉末11gと平均一次粒径が200nmの窒化マグネシウム粉末4.6gを添加し、石英製ガラス管に黒鉛のボートを内装した反応装置により均一に混合した。このとき金属マグネシウムの添加量は二酸化チタンの5.0倍モル、窒化マグネシウムの添加量は二酸化チタンの0.5倍モルであった。この混合物を窒素ガスの雰囲気下、700℃の温度で60分間焼成して焼成物を得た。この焼成物を、1リットルの水に分散し、10%塩酸を徐々に添加して、pHを1以上で、温度を100℃以下に保ちながら洗浄した後、25%アンモニア水にてpH7〜8に調整し、濾過した。その濾過固形分を水中に400g/リットルに再分散し、もう一度、前記と同様に酸洗浄、アンモニア水でのpH調整をした後、濾過した。このように酸洗浄−アンモニア水によるpH調整を2回繰り返した後、濾過物をイオン交換水に固形分換算で500g/リットルで分散させ、60℃での加熱攪拌とpH7への調整をした後、吸引濾過装置で濾過し、更に等量のイオン交換水で洗浄し、設定温度;120℃の熱風乾燥機にて乾燥することにより、窒化チタン粉末(B−1)を作製した。
【0069】
<No.B−2>
BET法により測定される比表面積から算出される平均一次粒径が30nmの二酸化チタン粉末7.2gをアンモニアガスにより900℃で還元反応を行い、黒色の酸窒化チタン粉末を得た。
【0070】
<No.B−3>
熱プラズマ法により作製された窒化チタン粉末(日清エンジニアリング社製)を準備した。
【0071】
<No.B−4>
熱プラズマ法により作製された窒化チタン粉末(中国Hefei Kei'er Nano Teck社製)を準備した。
【0072】
次に、作製例No.A−1〜No.A−13の中から抽出した窒化ジルコニウム粉末(A)と、作製例No.B−1〜No.B−4から抽出した窒化チタン又は酸窒化チタン粉末(B)とを表2に示す質量比(A:B)で均一に混合して実施例1〜15及び比較例1〜11の26種類の混合粉末を製造した。その内容を表2に示す。
【0073】
<比較試験と評価その1>
実施例1〜15、比較例3〜11で得られた粉末(A)と粉末(B)の混合粉末、比較例1で得られた粉末(B)のみの粉末、比較例2で得られた粉末(A)のみの粉末をそれぞれ試料として、以下に詳述する方法で、(1) X線回折プロファイル、(2) 粉末濃度50ppmの分散液における分光曲線、(3) 400nmの光透過率X、550nmの光透過率Y及び1000nmの光透過率Z及び(4)X/YとZ/Yを測定又は算出した。それぞれの測定結果又は算出結果を表2に示す。表2において、「TiN・TiNO」は窒化チタン又は酸窒化チタンを意味する。
【0074】
【表2】
【0075】
(1) X線回折プロファイル: 作製例No.A−1と作製例No.A−7の試料について、X線回折装置(リガク社製、型番MiniflexII)により、CuKα線を用いて印加電圧45kV,印加電流40mAの条件にて、θ−2θ法でX線回折プロファイルからX線回折分析を行った。そのX線回折プロファイルから、窒化ジルコニウムのピーク(2θ=33.95°、39.3°)、二酸化ジルコニウムのピーク(2θ=30.2°)、低次酸化ジルコニウムのピーク及び低次酸窒化ジルコニウムのピーク(2θ=30.5°、35.3°)の有無を調べた。
図2にX線回折プロファイルを示す。
図2において、「ZrN」は窒化ジルコニウムを、「Zr
2N
2O」は低次酸窒化ジルコニウムをそれぞれ意味する。
【0076】
(2) 粉末濃度50ppmの分散液における分光曲線: 実施例1〜15と比較例1〜11の各試料について、これらの試料を循環式横型ビーズミル(メディア:ジルコニア)に各別に入れ、アミン系分散剤を添加して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGM−
Ac)溶剤中での分散処理を行った。得られた26種類の分散液を10万倍に希釈し粉末濃度を50ppmに調整した。この希釈した分散液における各試料の光透過率を日立ハイテクフィールディング
社製分光光度計(UH−4150)を用い、波長240nmから1300nmの範囲で測定し、h線(405nm)近傍の波長400nmと、波長550nmと、波長1000nmにおける各光透過率(%)を求めた。
図1には、実施例1、実施例2、比較例1、2の4つの分光曲線を示す。
【0077】
(3) 400nmの光透過率X、550nmの光透過率Y及び1000nmの光透過率Z: 実施例1〜15と比較例1〜11の各試料の分光曲線から、それぞれの光透過率X、Y及びZを読み取った。
【0078】
(4) X/Y: 実施例1〜15と比較例1〜11の各試料の分光曲線から読み取られた光透過率Xと光透過率YよりX/Yを、光透過率Zと光透過率YよりZ/Yをそれぞれ算出した。
【0079】
図2から明らかなように、作製例No.A−7の試料は、X線回折プロファイルにおいて、窒化ジルコニウムのピーク(2θ=33.95°、39.3°)のみならず、低次酸窒化ジルコニウムのピーク(2θ=30.5°、35.3°)を有した。これに対して作製例No.A−1の試料は、X線回折プロファイルにおいて、窒化ジルコニウムのピークを有する一方、二酸化ジルコニウムのピークも低次酸化ジルコニウムのピークも低次酸窒化ジルコニウムのピークも有しなかった。
【0080】
図1及び表2から明らかなように、比較例1、4〜11の試料は分光透過曲線における400nmの透過率Xは18.8〜24.3%の範囲にあって、550nmの透過率Yは7.5〜8.4%の範囲にあった。また1000nmの透過率Zは16.5〜19.4%の範囲にあった。比較例1、4〜11の試料の光透過率Xに対する光透過率Yの比であるX/Yは2.2〜3.0の範囲にあって本発明の要件である1.25以上は満たすが、光透過率Zに対する光透過率Yの比であるZ/Yは2.2〜2.5にあって本発明の要件である2.0以下を満たさなかった。
【0081】
また比較例2及び3の試料は分光透過曲線における400nmの透過率Xはそれぞれ11.2%及び10.3%であって、550nmの透過率Yはそれぞれ9.3%及び8.4%であった。また1000nmの透過率Zはそれぞれ8.2%及び9.2%であった。比較例2及び3の試料の光透過率Zに対する光透過率Yの比であるZ/Yはそれぞれ0.88及び1.1であって本発明の要件の要件である2.0以下を満たすが、光透過率Xに対する光透過率Yの比であるX/Yはそれぞれ1.24及び1.23であって本発明の要件である1.25以上を満たさなかった。
【0082】
これに対して、実施例1〜15の試料の分光透過曲線における400nmの透過率Xは10.4〜18.0%の範囲にあって、550nmの透過率Yは5.8〜8.8%の範囲にあった。また1000nmの透過率Zは3.9〜15.6%の範囲にあった。実施例1〜15の試料の光透過率Xに対する光透過率Yの比であるX/Yは1.5〜2.3の範囲にあって本発明の要件である1.25以上
を満たすとともに、光透過率Zに対する光透過率Yの比であるZ/Yは0.8〜2.0の範囲にあって本発明の要件である2.0以下を満たした。
【0083】
<比較試験と評価その2>
実施例1〜15、比較例1〜11で得られた試料を光透過率の測定に用いた分散液にアクリル樹脂を、質量比で黒色顔料:樹脂=6:4となる割合で添加し混合して黒色感光性組成物を調製した。この組成物をガラス基板上に焼成後の膜厚が1μmになるようにスピンコートし、250℃の温度で60分間焼成して被膜を形成した。この被膜の紫外線(中心波長370nm)及び可視光(中心波長650nm)のOD値を前述した式(1)に基づき、マクベス社製の品名D200の濃度計(densitometer)を用い
て測定した。その結果を表2に示す。表2において、紫外線の透過性を示す尺度として、紫外線(UV)の370nmのOD値が2.0以下を「優」とし、2.0を超え2.5以下を「良」とし、2.5を超える場合を「不良」とした。また可視光の遮光性を示す尺度として、可視光の650nmのOD値が4.5を超える場合を「優」とし、3.8以上4.5以下を「良」とし、3.8未満を「不良」とした。
【0084】
表2から明らかなように、紫外線の透過性及び可視光視光の遮光性を示す尺度としてのOD値に関して、比較例1の試料は窒化チタン粉末又は酸窒化チタン粉末(B)を含まないため、可視光の650nm
のOD値が低く「不良」であった。また比較例2の試料は窒化ジルコニウム粉末(A)を含まないため、UVの370nm
のOD値が高く「不良」であった。また比較例3の試料は粉末(A)と粉末(B)の質量比において粉末(A)の含有割合が24と低過ぎたため、UVの370nm
のOD値が高く「不良」であった。また比較例4の試料は粉末(A)と粉末(B)の質量比において粉末(B)の含有割合が8と低過ぎたため、可視光の650nm
のOD値が低く「不良」であった。
【0085】
また比較例5の試料は二酸化ジルコニウムの還元が不十分のため、可視光の650nm
のOD値が低く「不良」であった。また比較例6の試料は焼成温度が1000℃と高過ぎたため、可視光の650nm
のOD値が低く「不良」であった。また比較例11の試料は焼成温度が600℃と低過ぎたため、可視光の650nm
のOD値が低く「不良」であった。
【0086】
また比較例7の試料は金属マグネシウムが二酸化ジルコニウムの1.5倍モル
という少な過ぎる割合で混合して作られたため、可視光の650nm
のOD値が低く「不良」であった。また比較例8の試料は金属マグネシウムが二酸化ジルコニウムの6.5倍モル
という多過ぎる割合で混合して作られたため、可視光の650nm
のOD値が低く「不良」であった。
【0087】
また比較例9の試料は窒化マグネシウムが二酸化ジルコニウムの0.2倍モル
という少な過ぎる割合で混合して作られたため、可視光の650nm
のOD値が低く「不良」であった。また比較例10の試料は窒化マグネシウムが二酸化ジルコニウムの3.5倍モル
という多過ぎる割合で混合して作られたため、可視光の650nm
のOD値が低く「不良」であった。
【0088】
これに対して、実施例1〜15の試料は、本発明の要件を満たしているため、紫外線(UV)の370nm
のOD値は、「優」又は「良」であり、また可視光の650nmのOD値も「優」又は「良」であった。このことから、実施例1〜15の試料は、可視光の遮光性能が高いことに加え、紫外線を透過するためパターニングに有利であることが判った。