特許第6667433号(P6667433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6667433低温にて光沢のある積層構造を生成するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667433
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】低温にて光沢のある積層構造を生成するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20200309BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20200309BHJP
   C03C 17/10 20060101ALI20200309BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20200309BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20200309BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   B05D7/24 302Z
   B05D7/24 303C
   B05D7/24 301C
   B05D5/06 101A
   C03C17/10
   C09D11/037
   C09D11/52
   B32B15/01 E
【請求項の数】21
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-516612(P2016-516612)
(86)(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公表番号】特表2017-501015(P2017-501015A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2014070351
(87)【国際公開番号】WO2015044189
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年7月27日
(31)【優先権主張番号】102013015806.0
(32)【優先日】2013年9月24日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102013016280.7
(32)【優先日】2013年10月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ベール スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ボルト カイ−ウルリッヒ
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−127680(JP,A)
【文献】 特開2009−106903(JP,A)
【文献】 特開2006−124826(JP,A)
【文献】 特開2004−273205(JP,A)
【文献】 特開2011−189323(JP,A)
【文献】 特開2005−247905(JP,A)
【文献】 特開2013−181205(JP,A)
【文献】 特開2004−207143(JP,A)
【文献】 特表2007−528796(JP,A)
【文献】 特開2012−094510(JP,A)
【文献】 特開2010−257643(JP,A)
【文献】 特開2001−229731(JP,A)
【文献】 特開2010−238825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B32B 1/00−43/00
C03C 15/00−23/00
C09D 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層構造(2)を生成するためのプロセスであって、
E1.
i.0.1重量%から50重量%の範囲の量であり、1nmから25nmの範囲内の直径を有する金(Au)粒子、
ii.100重量%に対する残余量の極性プロトン性有機溶媒、
iii.5重量%未満の水
を含む組成物(6)を提供するステップであって、前記組成物(6)は、3から8の範囲内のpHを有し、各場合の前記重量%は前記組成物(6)の総質量に基づくものであり、合計100重量%となる、提供するステップ;
E2.前記組成物(6)を基体(4)に適用して前駆物質(12)を与えるステップ;
E3.前記前駆物質(12)を25℃から300℃の範囲内の温度に加熱して、前記層構造(2)を与えるステップ
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記組成物(6)の粘度は、1mPasから100000mPasの範囲内で選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記極性プロトン性有機溶媒は、少なくとも20重量%のポリアルコールを含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ポリアルコールは2から20の炭素原子を有する、請求項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ポリアルコールは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2,3−プロパントリオール(グリセロール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジニトロベンゼン、L−アドレナリン、単糖、二糖、液体ポリオールと混合された単糖または二糖、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される、請求項またはに記載のプロセス。
【請求項6】
前記組成物(6)はさらに、一般式(I)のメルカプト−カルボキシル化合物であって、
SH−R−COOH (I)
ここで
は、置換、未置換、分岐鎖または非分岐鎖、環式または多環式C−C20−炭化水素ラジカルである、メルカプト−カルボキシル化合物、
または前記メルカプト−カルボキシル化合物の少なくとも1つの塩を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記C−C20−炭化水素ラジカルは、以下の特性:
e1.前記C−C20−炭化水素ラジカルの炭素原子の少なくとも1つが、少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン化物、アミン、アミド、リン酸基、硫酸基、またはそれらの少なくとも2つの組み合わせによって置換されていること、または
e2.前記C−C20−炭化水素ラジカルが、さらなる置換、未置換、分岐鎖もしくは非分岐鎖、環式もしくは多環式C−C20−炭化水素ラジカルによって置換され得るか、または分岐され得ること、あるいは
e3.前記C−C20−炭化水素ラジカルの炭素原子の少なくとも1つが、芳香族ラジカル、または5−、6−もしくは7−員芳香族複素環の場合には1、2、3もしくは4の窒素、酸素および硫黄原子によって置換されており、ここで芳香族複素ラジカルはハロゲン原子、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ基、保護されたアミノラジカル、シアノ、トリフルオロメチル基、1から4の炭素原子を有する炭化水素ラジカル、1から4の炭素原子を有するアルコキシラジカルによって置換され得ること
のうち少なくとも1つ、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記組成物(6)は、前記組成物の総質量に基づいて0.1重量%から4重量%の前記メルカプト−カルボキシル化合物を含む、請求項またはに記載のプロセス。
【請求項9】
前記メルカプト−カルボキシル化合物は、L−システイン、D−システイン、γ−L−グルタミル−L−システイニルグリシン(グルタチオン)、(RS)−N−(2−メルカプト−1−オキソプロピル)グリシン(チオプロニン)、メルカプトコハク酸、N−アセチルシステイン、チオサリチル酸、ジメルカプトコハク酸、L−メチオニン、D−メチオニン、チオ尿素、2−メルカプトプロピオン酸、チオグリセロール、チオジプロピオン酸、シスチン、メチル3−メルカプトプロピオネート、Naチオグリコレート、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される、請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記組成物(6)は、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ロジウム(Rh)、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる金属を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記組成物(6)は、界面活性物質をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
さらなるステップE4.において、前記層構造(2)の少なくとも一部に保護層(10)が適用される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記基体(4)は、紙、木材、テキスタイル、ガラス、ポリマー、金属、セラミック、角質化層、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記基体(4)は1013S/cm未満の伝導率を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
ステップE2.における前記組成物(6)の前記適用は、ブラシ、スクリーン、フェルトペン、万年筆、またはノズルによって行われる、請求項1〜14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記層構造(2)は、以下の特性:
S1.前記層構造(2)は少なくとも70重量%の金を含み、かつ0.05μmから1μmの範囲内の厚さを有する金属層であること、
S2.伝導率は1013S/cm未満であること、
S3.光沢は500GUから1300GUの範囲内であること、
S4.密度は10kg/lから20kg/lの範囲内であること
のうち少なくとも1つを有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
層構造(2)の前駆物質(12)を得ることのできるプロセスであって、
E1.
i.0.1重量%から50重量%の範囲の量であり、1nmから25nmの範囲内の直径を有する金(Au)粒子、
ii.100重量%に対する残余量の極性プロトン性有機溶媒、
iii.5重量%未満の水
を含む組成物(6)を提供するステップであって、前記組成物(6)は、3から8の範囲内のpHを有し、各場合の前記重量%は前記組成物(6)の総質量に基づくものであり、合計100重量%となる、提供するステップ;
E2.前記組成物(6)を基体(4)に適用して前駆物質(12)を与えるステップ
を含む、プロセス。
【請求項18】
前記前駆物質(12)は、以下の特性:
V1.前記基体(4)の厚さは0.1mmから5cmの範囲内であること、
V2.ステップE2.において適用される前記組成物の厚さは0.1μmから70μmの範囲内であること、
V3.前記基体(4)の伝導率は1013S/cm未満であること、
V4.ステップE2.において適用される前記組成物(6)の伝導率は10−1S/cmから10−8S/cmの範囲内であること
のうち少なくとも1つを有する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
z1.0.1重量%から50重量%の範囲の量であり、20nm以下の粒径D50を有する金(Au)粒子、
z2.0重量%から5重量%の範囲内の水、
z3.100重量%に対する残余量の極性プロトン性有機溶媒、
を含む組成物(6)であって、前記組成物(6)は、3から8の範囲内のpHを有し、ここで各場合の前記重量%は前記組成物(6)の総質量に基づくものであり、合計100重量%となる、組成物(6)。
【請求項20】
前記組成物(6)は、
z4.前記組成物(6)の総質量に基づいて0重量%から10重量%の範囲の量のポリビニルピロリドン、
z5.前記組成物(6)の総質量に基づいて0重量%から90重量%の範囲の量のポリアルコール
より選択される少なくとも1つのさらなる成分を含む、請求項19に記載の組成物(6)。
【請求項21】
前記ポリアルコールは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2,3−プロパントリオール(グリセロール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジニトロベンゼン、L−アドレナリン、単糖、二糖、液体ポリオールと混合された単糖または二糖、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される、請求項20に記載の組成物(6)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下のステップを含む、層構造を生成するためのプロセスに関する。E1.i.0.1重量%から50重量%の範囲の量の金(Au)粒子、ii.100重量%に対する残余量の極性プロトン性有機溶媒、iii.5重量%未満の水を含む組成物を提供するステップであって、各場合の重量%は組成物の総質量に基づくものであり、合計100重量%となる、提供するステップ;E2.その組成物を基体に適用して前駆物質を与えるステップ;E3.その前駆物質を25℃から200℃の範囲内の温度に加熱して、コートされた層構造を与えるステップ。
【0002】
さらに、本発明は、上述のプロセスのステップE1.およびE2.によって得ることのできる層構造の前駆物質と、上述のプロセスによって得ることのできる層構造とに関する。
【0003】
加えて本発明は、z1.組成物の総質量に基づいて0.1重量%から50重量%Auの範囲の量の金(Au)粒子、z2.組成物の総質量に基づいて0重量%から5重量%の範囲内の水、z3.組成物の総質量に基づいて100重量%に対する残余量の極性プロトン性有機溶媒を含む組成物を提供する。本発明はさらに、本発明に従う層構造または本発明のプロセスによって得ることのできる層構造を含む物体を提供する。
【背景技術】
【0004】
セラミック材料の上に金属層を生成するためのプロセスは、先行技術により公知である。すなわち特許文献1においては、加熱によって着色装飾を達成するために、セラミックに金チオレート化合物の水溶液が適用される。ここでは加熱が400℃から1200℃の温度範囲で行われる。
【0005】
先行技術は、基体に金粒子を適用し、低温によってそこから光沢のある金層を形成できるやり方を何ら記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第00/10941号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的にいうと、本発明は先行技術の不利益を少なくとも部分的に克服するという課題に対処するものである。
【0008】
対処されるさらなる課題は、基体上の金粒子を低温で光沢のある層に転換することである。
【0009】
加えて対処される課題は、金層を含む層構造を生成するための効率的かつ安価なプロセスを提供することである。
【0010】
対処されるさらなる課題は、層構造を生成するための非常に環境に優しいプロセスを提供することである。
【0011】
加えて対処される課題は、広範囲に変動させ得る厚さを有する金層を有する層構造を提供可能にすることである。
【0012】
さらに対処される課題は、非常に固く接着する金コーティングを有する層構造を生成するためのプロセスを提供することである。
【0013】
対処されるさらなる課題は、非常に光沢のある表面を有する層構造を生成可能にすることである。
【0014】
加えて対処される課題は、溶媒中に金粒子を含有する組成物を提供することであり、この組成物から低温で金層を形成できる。
【0015】
本発明は最初に、層構造を生成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、
E1.i.0.1重量%から50重量%の範囲の量の金(Au)粒子、
ii.100重量%に対する残余量の極性プロトン性有機溶媒、
iii.5重量%未満の水
を含む組成物を提供するステップであって、各場合の重量%は組成物の総質量に基づくものであり、合計100重量%となる、提供するステップ;
E2.その組成物を基体に適用して前駆物質を与えるステップ;
E3.その前駆物質を25℃から300℃の範囲内、好ましくは25℃から250℃の範囲内、特に好ましくは25℃から200℃の範囲内の温度に加熱して、層構造を与えるステップ
を含む。
【0016】
ステップE1.における組成物の提供は、こうしたプロセスに対する組成物を提供するために当業者が選択する任意のやり方によって行われ得る。好ましくは、この組成物はステップE2.における組成物の適用のために好適な容器にて提供される。さらに、この容器は好ましくは組成物の計量放出のための弁を有する容器である。
【0017】
組成物は、組成物の総質量に基づいて0.1重量%から50重量%の範囲、好ましくは0.5重量%から40重量%の範囲、または好ましくは1重量%から20重量%の範囲の量の金(Au)粒子を含む。さらに組成物は、組成物の総質量に基づいて5重量%未満、好ましくは4重量%未満、または好ましくは3重量%未満の水を含む。組成物は、付加的に少なくとも1つのさらなる成分を含み得る。
【0018】
組成物は、組成物の総質量に基づいて100重量%に対する残余量として、極性プロトン性有機溶媒を含み、ここで各場合の重量%は組成物の総質量に基づくものであり、合計100重量%となる。極性プロトン性有機溶媒は、このプロセスに対して当業者が使用する任意の極性プロトン性有機溶媒であり得る。本発明の目的に対して、プロトン性溶媒は、より電気陰性度の高い元素に結合しているために容易に開裂し得る水素原子を含有する。極性プロトン性有機溶媒は、好ましくは2から20の炭素原子を有する。さらに、極性プロトン性有機溶媒は、たとえば−OH、−SH、−NH、−NH、−COOHなどの、少なくとも1つの極性プロトン性ラジカルを有する。極性プロトン性有機溶媒の典型的な例は、アルコール、アミン(本発明の目的に対して、アミンは脂肪族および脂環式アミンである)、酸アミド、およびカルボン酸である。ここでは特に、たとえばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールおよび2−メチル−2−プロパノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、またはそれらの少なくとも2つの混合物などの低級アルコールが好ましい。
【0019】
さらに、極性プロトン性有機溶媒は、グリコール、アミン、酸アミド、およびカルボン酸、ならびにそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。グリコールは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2,3−プロパントリオール(グリセロール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジニトロベンゼン、L−アドレナリン、単糖、二糖、液体ポリオールと混合された単糖または二糖、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、好ましくは3から500の繰り返し単位を有するポリエチレングリコール、たとえばモノ−1,2−プロピレングリコール、ジ−1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコールなど、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。アミンは、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、モルホリン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、ジ(2−シアノエチル)アミン、ジ(2−アミノエチル)アミン、トリ(2−アミノエチル)アミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、およびトリプロパノールアミン、ならびにそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。酸アミドは、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、ブタンアミド、ペンタンアミド、ヘキサンアミド、ヘプタンアミド、オクタンアミド、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。カルボン酸は、ギ酸、酢酸、アクリル酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、ニコチン酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。示されるアルコールが好ましい。
【0020】
極性プロトン性有機溶媒とは別に、組成物は好ましくは少なくとも1つのさらなる非プロトン性溶媒を含む。非プロトン性溶媒は、ケトン、アルデヒド、およびスルホキシド、ならびにそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。ケトンは、炭酸エチレン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、シクロヘキサノンからなる群より選択され得る。アルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、カプリルアルデヒド、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。スルホキシドは、たとえばジメチルスルホキシドなどであり得る。好ましくは、組成物はその組成物の総質量に基づいて0.1重量%から10重量%、または好ましくは0.2重量%から9重量%、0.5重量%から5重量%の非プロトン性溶媒を含む。
【0021】
前駆物質を与えるために組成物を基体に適用することは、こうしたプロセスにおいて組成物を適用するために当業者が選択する任意のやり方で行われ得る。ここで、以後基体層とも呼ばれる基体は、好ましくは少なくとも部分的に組成物で覆われる。
【0022】
適用は好ましくは組成物の堆積、もしくは組成物への浸漬、またはそれら2つの組み合わせであり得る。組成物の堆積による適用は、たとえばスピンコーティング、含浸、注入、滴下、噴射、噴霧、ドクターブレードコーティング、塗布、または印刷、たとえば基体層への計量ポンプまたはインクジェット、スクリーン、グラビア、オフセットまたはパッド印刷などによるものなどによってもたらされ得る。組成物は、好ましくは計量ポンプ、インクジェット印刷、スクリーン印刷、またはグラビア印刷によって基体層に適用される。組成物は、好ましくは0.01μmから250μmの湿潤フィルム厚、好ましくは0.1μmから50μmの湿潤フィルム厚にて適用される。
【0023】
本発明の目的に対して、堆積とは、好ましくは液体または印刷組成物とも呼ばれる適用に用いられる組成物が、被覆されるべき表面にノズルの形の補助によって適用されることを意味する。堆積はさまざまな補助によってもたらされ得る。よって適用または被覆に用いられる印刷組成物は、基体層の上において/上に向けて、ノズルを通じて噴霧もしくは噴射されるか、またはスリットダイによって堆積されてもよい。さらなる方法は、カーテン鋳造およびスピンコーティングである。加えて、適用または被覆に用いられる印刷組成物は、たとえば基体の表面に対する/表面上へのロールまたはローラーなどによって適用または印刷され得る。公知の噴霧または噴射プロセスは、たとえばノズルによるマイクロ計量またはデジタル印刷などである。ここで、適用または被覆用印刷組成物はしぼり出されてもよいし、適用用印刷組成物は単にノズルを通じて表面上に滴下されることによって適用されてもよい。
【0024】
さらなる印刷プロセスとして、好ましくはスクリーン印刷プロセスが使用され得る。スクリーン印刷プロセスにおいては、寸法的に非常に安定した材料、たとえば木材、金属、好ましくは鋼、セラミックまたはポリマーなどからなり、かつ選択されたメッシュ開口部サイズを有するスクリーンが、被覆されるべき物体、この場合には基体の上または上方に配置される。適用または被覆用印刷組成物は、ノズルを介してこのスクリーンに適用され、ドクターブレードによってメッシュに押込まれる。ここでは、スクリーンのパターンの結果として、異なる場所に異なる量の適用または被覆用印刷組成物が適用され得る。よって、メッシュ開口部のジオメトリおよび配置によって、被覆用印刷組成物の均一なフィルムが適用され得るか、または適用用印刷組成物がまったくもしくはほとんどない領域と、大量の適用用印刷組成物を有する領域とが交互になるかが決まる。表面に被覆用印刷組成物の均一なフィルムを適用することが好ましい。たとえばパターンなどの規定された構造などを得るために、メッシュが開口している規定領域においてのみ印刷組成物が基体に移されるように、適切に適用された材料(複写層、スクリーン印刷テンプレート)によってスクリーンのメッシュ開口部が部分的に閉じられてもよい。さらに、印刷組成物による被覆のために、スクリーンの代わりに規定の開口部を有する薄膜(ステンシル)が用いられてもよい。
【0025】
ノズルまたはロールまたはローラーの構成、ならびに被覆用組成物の粘度および極性に依存して、基体層の所望の表面に異なる厚さを有する層を適用できる。適用または被覆において適用される層は、好ましくは0.5μmから100μmの範囲内、好ましくは1μmから50μmの範囲内、特に好ましくは2μmから30μmの範囲内の厚さにて適用される。適用される層の厚さは、以後湿潤層厚と呼ばれる。湿潤層厚は、被覆の際に適用されるそれぞれの材料に依存する。湿潤層厚は、被覆するステップの直後に測定される。
【0026】
浸漬において、コートされるべき表面は、たとえば適用用組成物を含む浴槽に通される。代替的には、浸漬コーティングで行われるのと同様に、その表面を適用用組成物に単純に浸漬して、再び引き出してもよい。適用の際の複数の浸漬によって、異なる厚さのコーティングが達成され得る。加えて上述のとおり、コーティングの厚さは適用用組成物の選択に依存する。このやり方で、適用の際にそれぞれのコーティングの0.5μmから100μmの範囲内、好ましくは1μmから50μmの範囲内、特に好ましくは2μmから30μmの範囲内の湿潤層厚が達成され得る。堆積および浸漬プロセスの組み合わせを使用することも想定され得る。
【0027】
一実施形態において、使用される組成物の適用は、たとえば基体などの被覆されるべき層のそれぞれの表面の上に設けられた適用オリフィスを通じてもたらされる。ここで適用オリフィスは、好ましくは適用用組成物を介してその表面に結合される。マイクロ計量としても公知であるこのプロセスは、ここでの基体表面などの物体に簡単なやり方で異なる厚さのコーティングを適用することを可能にするという特定の特性を有する。適用オリフィスはあらゆる想定可能な形状およびサイズを有し得る。たとえば適用オリフィスは、円形、楕円形、角のある形、および星形、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される形状を有し得る。適用オリフィスは、10nmから1mm、好ましくは100nmから0.5mm、特に好ましくは100nmから100μmの面積を有し得る。好ましくは、適用用組成物は2000mbarから10000mbarの範囲内、好ましくは2500mbarから5000mbarの範囲内、特に好ましくは3000mbarから4000mbarの範囲内の圧力によって、ノズルを通じて表面上に適用される。被覆用組成物を基体の表面に結合することによって、適用中に適用用組成物が表面から脱離することを防ぐことが可能になる。このやり方で、非常に均質なフィルムを表面に適用し得ることを確実にできる。
【0028】
組成物の適用は、好ましくはスクリーン印刷プロセスまたはグラビア印刷プロセスによって行われる。このプロセスの好ましい実施形態において、印刷の際に組成物はスクリーンを通じて適用されるか、または印刷シリンダによって適用される。スクリーンは、好ましくは鋼またはステンレス鋼で構成されたフレームを含む。同様に好ましくはステンレス鋼ワイヤまたは高強度合成繊維からなるメッシュまたはスクリーンが、好ましくはフレーム内に配置される。
【0029】
このプロセスの好ましい実施形態において、スクリーンは1μmから300μmの範囲内、好ましくは2μmから200μmの範囲内、または好ましくは3μmから90μmの範囲内のメッシュ開口部サイズを有する。これは各場合において、約70メッシュから635メッシュ、または約100メッシュから600メッシュ、または約200メッシュから500メッシュのメッシュ数に対応し、このメッシュの単位は、メッシュワイヤ/インチまたはメッシュワイヤ/2.54cmに対応する。スクリーン印刷による適用の場合、任意の市販ドクターブレードがドクターブレードとして用いられ得る。ドクターブレードは、好ましくはポリマーを含む。ドクターブレードは、好ましくは40ショアAから80ショアAの範囲内のドクターブレード硬度を有する。組成物は、好ましくは500mPa*sから100000mPa*sの範囲内、または好ましくは700mPa*sから50000mPa*sの範囲内の粘度を有する。
【0030】
基体は、基体への組成物の適用を可能にする任意の形状を有し得る。基体は、好ましくは少なくとも1つの連続した表面を有する。この少なくとも1つの連続した表面は、好ましくは1mmから10mの範囲内、または好ましくは10mmから5mの範囲内、または好ましくは100mmから1mの範囲内の面積を有する。基体は球形、円形、角のある形、円錐形、または楕円形の構成を有し得る。基体の形状は好ましくは、球形、円錐形、円形、多角形、たとえば三角形、正方形、矩形、台形、五角形、六角形、七角形、または八角形など、楕円形、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択される。基体は好ましくは、ステップE2.における適用の際に、基体の連続した表面の全面積に基づいて5%から100%の程度まで、または好ましくは10%から100%の程度まで、または好ましくは15%から100%の程度まで組成物によって被覆される。組成物は、基体の表面の全面積に適用されてもよいし、パターンで適用されてもよい。よって、基体上の組成物によって被覆された領域と、被覆されていない領域とが交互になってもよい。このパターンは、たとえばチェッカーボードパターン、ハニカムパターン、または菱形パターンなどの規則的構成を有し得る。代替的または付加的に、組成物は不規則的パターンで基体に適用されてもよい。
【0031】
前駆物質を与えるためのステップE2.における組成物の適用の後に、ステップE3.において前駆物質を25℃から200℃の範囲内、好ましくは40℃から180℃の範囲内、または好ましくは50℃から150℃の範囲内の温度に加熱するステップが続く。前駆物質の加熱は、この目的のために当業者が選択する任意のやり方で実行され得る。加熱は好ましくは、照射、オーブンにおける加熱、高温ガスによる加熱、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択される方法による加熱である。照射は、たとえばIR放射、レーザー放射、UV放射、またはそれらの組み合わせなどによってもたらされ得る。たとえば熱風オーブンなどのオーブンにおける加熱は、たとえば不連続的または連続的に実行され得る。高温ガスによる加熱は、たとえば適用される組成物の上にたとえば空気、窒素、酸素またはそれらの混合物などの高温ガス流を通すことなどによって行われ得る。ステップE3.における加熱の持続時間は、好ましくは0.5時間から10時間の範囲内、または好ましくは0.5時間から5時間の範囲内、または好ましくは0.5時間から3時間の範囲内である。この加熱によって、少なくとも基体と金含有層とを含む層構造が与えられ、この金含有層は以後金層とも呼ばれる。
【0032】
このプロセスの好ましい実施形態において、金粒子は2nmから25nmの範囲内、好ましくは3nmから20nmの範囲内、または好ましくは4nmから18nmの範囲内の直径を有する。本目的に対して、金粒子の直径は粒子の平均直径である。金粒子の直径は、混合物の顕微鏡検査によって定められ得る。サイズを正確に定めるために、粒子上の互いに最も遠い2点の周りに仮想円を描く。この仮想円の直径が粒子の直径に対応する。金粒子は好ましくは球から楕円の形状を有する。金(Au)粒子は、好ましくは20nm、または好ましくは15nm、または好ましくは12nmの粒径分布D50を有し、これは示される直径よりも大きい粒子が50%以下であることを意味する。粒径は、さまざまな方法を用いて定められ得る。粒径は、好ましくはレーザー光散乱、光学顕微鏡法、個々の粒子の光学的計数、またはそれらの少なくとも2つの組み合わせによって定められる。さらに、粒径および粒径分布の決定は、好ましくは透過型電子顕微鏡法(transmission electron microscopy:TEM)によって記録される画像の光学的個別評価の助けによって行われる。
【0033】
このプロセスの好ましい実施形態において、組成物の粘度は1mPasから100000mPasの範囲内、好ましくは10mPasから90000mPasの範囲内、または好ましくは20mPasから50000mPasの範囲内で選択される。粘度は1/500sのずり範囲で定めた。
【0034】
このプロセスの好ましい実施形態において、極性プロトン性有機溶媒は、少なくとも20重量%のポリアルコールを含む。ポリアルコールとは、少なくとも2のアルコールラジカルを有する有機化合物である。ポリアルコールは、好ましくは2から10のアルコールラジカルを有する。ポリアルコールはさらなる官能基を有し得る。この少なくとも1つのさらなる官能基は、−S−、−SH、−O−、−OOH、=O、−N−、−NH、−NH、−P、−P(OH)、−Cl、−F、−Br、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0035】
このプロセスの好ましい実施形態において、ポリアルコールは2から20の炭素原子を有する。
【0036】
このプロセスの好ましい実施形態において、ポリアルコールは1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2,3−プロパントリオール(グリセロール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジニトロベンゼン、L−アドレナリン、単糖、二糖、液体ポリオールと混合された単糖または二糖、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、好ましくは3から500の繰り返し単位を有するポリエチレングリコール、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。
【0037】
このプロセスの好ましい実施形態において、組成物はさらに、一般式(I)のメルカプト−カルボキシル化合物であって、
SH−R−COOH (I)
ここで
は、置換、未置換、分岐鎖または非分岐鎖、環式または多環式C−C20−炭化水素ラジカルである、メルカプト−カルボキシル化合物、
またはこのメルカプト−カルボキシル化合物の少なくとも1つの塩を含む。
【0038】
このプロセスの好ましい実施形態において、置換、未置換、分岐鎖または非分岐鎖、環式または多環式C−C20−炭化水素ラジカルは、以下の特性のうち少なくとも1つ、好ましくは2つまたはすべてを有する。
e1.C−C20−炭化水素ラジカルの炭素原子の少なくとも1つが、少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン化物、アミン、アミド、リン酸基、硫酸基、またはそれらの少なくとも2つの組み合わせによって置換されていること、または
e2.C−C20−炭化水素ラジカルが、さらなる置換、未置換、分岐鎖もしくは非分岐鎖C−C20−炭化水素ラジカルによって置換され得るか、または分岐され得ること、あるいは
e3.C−C20−炭化水素ラジカルの炭素原子の少なくとも1つが、芳香族ラジカル、または5−、6−もしくは7−員芳香族複素環の場合には1、2、3もしくは4の窒素、酸素および硫黄原子によって置換されており、ここで芳香族複素ラジカルはハロゲン原子、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ基、保護されたアミノラジカル、シアノ、トリフルオロメチル基、1から4の炭素原子を有する炭化水素ラジカル、1から4の炭素原子を有するアルコキシラジカルによって置換され得ること。
【0039】
本発明の目的に対して、未置換C−C20−炭化水素ラジカルは、1から20の−CH−または−CH−基からなる炭化水素ラジカルである。本発明の目的に対して、置換C−C20−炭化水素ラジカルは、1から20の−CH−基からなる炭化水素ラジカルであって、少なくとも1つの−CH−または−CH−基のH原子が別の原子または別の原子の基によって置換されたものである。他の原子は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ハロゲン化物、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択され得る。他の原子基は、置換炭化水素ラジカル、未置換炭化水素ラジカル、分岐鎖炭化水素ラジカル、非分岐鎖炭化水素ラジカル、飽和炭化水素ラジカル、不飽和炭化水素ラジカル、環式炭化水素ラジカル、多環式炭化水素ラジカル、芳香族炭化水素ラジカル、非芳香族炭化水素ラジカル、アシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、一級アミン、二級アミン、三級アミン、アミド、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、チオール基、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0040】
本発明の目的に対して、非分岐鎖C−C20−炭化水素ラジカルは、1から20の−CH−または−CH−基からなる直鎖炭化水素ラジカルである。分岐鎖C−C20−炭化水素ラジカルは、1から20の−CH−または−CH−基からなる炭化水素ラジカルであって、少なくとも1つの−CH−または−CH−基のH原子がさらなる炭化水素ラジカルによって置換されたものである。このさらなる炭化水素ラジカルは、同様に置換または未置換、分岐鎖または非分岐鎖、または環式もしくは多環式であり得る。
【0041】
本発明の目的に対して、環式C−C20−炭化水素ラジカルは、1から20の−CH−または−CH−基からなる炭化水素ラジカルであって、炭素原子が環に配置されているものである。多環式C−C20−炭化水素ラジカルは、1から20の−CH−または−CH−基からなる炭化水素ラジカルであって、炭素原子が2つまたはそれ以上の環に環状に配置されているものである。環式および多環式炭化水素ラジカルは、芳香族環も有し得る。
【0042】
置換、未置換、分岐鎖または非分岐鎖、環式または多環式C−C20−炭化水素ラジカルは、以下の組み合わせの1つに示された特性を有し得る。
L1. 置換C−C20−炭化水素ラジカル、
L2. 未置換C−C20−炭化水素ラジカル、
L3. 置換、分岐鎖C−C20−炭化水素ラジカル、
L4. 置換、非分岐鎖C−C20−炭化水素ラジカル、
L5. 未置換、分岐鎖C−C20−炭化水素ラジカル、
L6. 未置換、非分岐鎖C−C20−炭化水素ラジカル、
L7. 置換、分岐鎖、環式C−C20−炭化水素ラジカル、
L8. 置換、非分岐鎖、環式C−C20−炭化水素ラジカル、
L9. 未置換、分岐鎖、環式C−C20−炭化水素ラジカル、
L10. 未置換、非分岐鎖、環式C−C20−炭化水素ラジカル、
L11. 置換、分岐鎖、多環式C−C20−炭化水素ラジカル、
L12. 置換、非分岐鎖、多環式C−C20−炭化水素ラジカル、
L13. 未置換、分岐鎖、多環式C−C20−炭化水素ラジカル、
L14. 未置換、非分岐鎖、多環式C−C20−炭化水素ラジカル。
【0043】
上述のとおり、置換炭化水素ラジカルも上記の特性または特性の組み合わせを有し得る。
【0044】
このプロセスの好ましい実施形態において、組成物は、組成物の総質量に基づいて0.1重量%から4重量%、好ましくは0.5重量%から3.5重量%、または好ましくは0.3重量%から3.0重量%のメルカプト−カルボキシル化合物を含む。
【0045】
このプロセスの好ましい実施形態において、メルカプト−カルボキシル化合物は、L−システイン、D−システイン、γ−L−グルタミル−L−システイニルグリシン(グルタチオン)、(RS)−N−(2−メルカプト−1−オキソプロピル)グリシン(チオプロニン)、メルカプトコハク酸、N−アセチルシステイン、チオサリチル酸、ジメルカプトコハク酸、L−メチオニン、D−メチオニン、チオ尿素、2−メルカプトプロピオン酸、チオグリセロール、チオジプロピオン酸、シスチン、メチル3−メルカプトプロピオネート、Naチオグリコレート、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。
【0046】
このプロセスの好ましい実施形態において、組成物は、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ロジウム(Rh)、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる金属を含む。この少なくとも1つのさらなる金属は、金属粒子またはさらなる金属−有機錯体として存在し得る。組成物は、組成物の総質量に基づいて好ましくは0.1重量%から5重量%、または好ましくは0.2重量%から4.5重量%、または好ましくは0.5重量%から4重量%のさらなる金属を含む。
【0047】
金属−有機錯体の有機成分は、好ましくは少なくとも1、少なくとも2またはそれ以上の炭素原子、好ましくは2から100、または好ましくは4から50、または好ましくは5から20の炭素原子を有する分子を含む。有機成分は、好ましくは1または2またはそれ以上の炭素以外の非金属原子を含む。加えて、好ましくはその少なくとも1つの非金属原子の少なくとも1つが、有機化合物の金属成分と少なくとも配位的に、好ましくはイオン的に相互作用する。加えて、少なくとも1つの非金属原子と金属成分との間に共有結合が形成されることも可能である。非金属原子は、好ましくは酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素、ハロゲン、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。好ましくは、金属−有機化合物の有機成分中の少なくとも1つの炭素原子と少なくとも1つの非金属原子とがともに有機化合物を形成する。
【0048】
このプロセスの好ましい実施形態において、金属−有機化合物は、炭酸塩、シュウ酸塩、エステル、カルボン酸塩、ハロカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、アセトネート、ケトネート、リン酸塩、亜リン酸塩、リン化物、ホスファン、スルホネート、およびスルホレジネート、ならびにそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される有機成分を有する。有機成分は、好ましくはアセテート、プロピオネート、ブタノエート、イソブタノエート、エチルブチレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ヘプタノエート、オクタノエート、イソオクタノエート、ノナノエート、デカノエート、イソノネート、ピバレート、シクロヘキサンブチレート、アセチルアセトネート、エチルヘキサノエート、ヒドロキシプロピオネート、トリフルオロアセテート、ヘキサフルオロ−2,4−ペンタジオネート、ネオデカノエート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、プロパンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、硫黄含有不飽和天然および/または合成樹脂、たとえばテレピン、ロジンおよびコパイババルサムなど、ならびにそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。
【0049】
上述のとおり、組成物は上述の成分に加えて少なくとも1つのさらなる成分を含み得る。この少なくとも1つのさらなる成分は、好ましくは結合剤、さらなる溶媒、架橋剤、別の添加剤、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。結合剤としては、たとえばポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、およびそれらの少なくとも2つの混合物などを使用できる。さらなる溶媒は、好ましくはジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO)、エチレングリコール、N−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone:NMP)、アンモニア、アルコール、たとえばエタノール、イソプロパノールまたはヘキサノールなど、エトキシエタノール、メトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシエタノール、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。架橋剤は、たとえばシランなどであり得る。さらなる添加剤は、たとえばポリアルキレングリコールエーテルまたはアルキルポリグルコシドなどの非イオン性界面活性剤、たとえばアルキルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホネートまたはアルカンスルホネートなどのイオン性界面活性剤、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。組成物は、組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.1重量%から5重量%、好ましくは0.5重量%から4.5重量%、または好ましくは1重量%から4重量%の、少なくとも1つのさらなる成分を含む。
【0050】
このプロセスの好ましい実施形態において、組成物は3から8の範囲内、または好ましくは4から7の範囲内のpHを有する。
【0051】
このプロセスの好ましい実施形態において、組成物はさらに界面活性物質を含む。組成物は、好ましくは0.001重量%から5重量%、好ましくは0.005重量%から4重量%、または好ましくは0.01重量%から3重量%の界面活性物質を含む。界面活性物質は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤、ならびにそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。述べられたすべての界面活性剤は、非極性部分と極性部分とを含む。非極性部分は、アルキル基、アルキルベンゼン基、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。非イオン性界面活性剤の極性部分は、アルコール基、エーテル基、アクリレート基、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択され得る。アニオン性界面活性剤の極性部分は、カルボン酸塩、スルホネート、硫酸、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。カチオン性界面活性剤の極性部分は、たとえば四級アンモニウム基などであり得る。両性界面活性剤の極性部分は、カチオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤の少なくとも1つの極性部分の組み合わせから選択され得る。ケイ素含有化合物を含む界面活性物質が好ましい。こうした化合物の例は、400g/molから10000g/molの範囲内、好ましくは500g/molから9000g/molの範囲内、または好ましくは600g/molから8000g/molの範囲内のモル質量を有するジメチルポリシロキサンである。商業的に入手可能な界面活性製品の例は、ポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン、たとえばBYK−333(登録商標)など、ポリアクリレート、たとえばBYK−381(登録商標)など、およびポリプロピレングリコール、たとえばDISPERBYK−193(登録商標)などであり、これらはすべてヴェーゼル(Wesel)のBykケミー社(Byk−Chemie GmbH)より得ることができる。
【0052】
このプロセスの好ましい実施形態においては、さらなるステップE4.において、層構造の少なくとも一部に保護層が適用される。好ましくは保護層は、物理的に乾燥させる表面コーティング、酸化的に架橋する表面コーティング、熱的に架橋する表面コーティング(例、自動車用の市販の透明コーティング)、および照射架橋する表面コーティングからなる群より選択される。
【0053】
上述のとおりに組成物が適用される基体は、層構造を生成するために当業者が使用する任意の材料であり得る。このプロセスの好ましい実施形態において、基体は紙、木材、テキスタイル、ガラス、ポリマー、金属、セラミック、角質化層、特に手指爪または足指爪、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択される。紙は、このプロセスにおける基体に対して当業者が選択する任意のタイプの紙であり得る。紙は、好ましくは10g/mから500g/mの範囲内、または好ましくは20g/mから400g/mの範囲内、または好ましくは50g/mから350g/mの範囲内の単位面積当り重量を有する。木材は、このプロセスにおける基体に対して当業者が選択する任意のタイプおよび形状の木材であり得る。
【0054】
テキスタイルは、層構造の基体に対して当業者が選択する任意のテキスタイルであり得る。テキスタイルは繊維、織布または不織布の形であり得る。テキスタイルは織られるか、組まれるか、輪にされるか、編まれるか、または織られなくてもよい。テキスタイルは、たとえばウール、綿、絹、セルロース、またはその他の天然繊維などの天然材料を含んでもよく、好ましくはこうした天然材料からなっていてもよい。加えてテキスタイルは、たとえばナイロン、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアラミドもしくはその他のポリマー、または炭素、ガラスもしくは金属繊維(ワイヤ)などの合成材料の繊維を含んでもよく、好ましくはこうした合成材料の繊維からなっていてもよい。加えてテキスタイルは、前述の材料の少なくとも2つの混合物を含んでもよく、好ましくはこうした混合物からなっていてもよい。
【0055】
ガラスは、層構造の基体に対して当業者が選択する任意のガラスであり得る。ガラスは、好ましくはアルカリガラス、無アルカリガラス、ケイ酸塩ガラス、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。ガラスは、好ましくはソーダ石灰ガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、ケイ酸アルミニウムガラス、石英ガラス、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。
【0056】
ポリマーは、層構造の基体に対して当業者が選択する任意のポリマーであり得る。ポリマーは、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリルアミド、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリル酸エステルコポリマー、酢酸ビニル/アクリル酸エステルコポリマーおよびエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。
【0057】
金属は、層構造の基体に対して当業者が選択する任意の金属であり得る。金属は、好ましくは鉄、鋼、アルミニウム、銀、チタン、銅、金、スズ、亜鉛、鉛、ケイ素、およびそれらの少なくとも2つの混合物または組み合わせからなる群より選択される。
【0058】
セラミックは、層構造の基体に対して当業者が選択する任意のセラミック材料であり得る。セラミックは、好ましくは酸化物セラミック、ケイ酸塩セラミック、非酸化物セラミック、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。
【0059】
酸化物セラミックは、好ましくは金属酸化物、半金属酸化物、およびそれらの混合物からなる群より選択される。金属酸化物の金属は、アルミニウム、ベリリウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ジルコニウム、チタン、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。金属酸化物は、好ましくは酸化アルミニウム(Al)、酸化ナトリウム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化イットリウム(Y)、チタン酸アルミニウム(AlTiO)、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。半金属酸化物の半金属は、好ましくはホウ素、ケイ素、ヒ素、テルル、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。
【0060】
ケイ酸塩セラミックは、好ましくはステアタイト(Mg[Si10(OH)])、菫青石(Mg,Fe2+(AlSi)[AlSi18])、ムライト(AlAl2+2xSi2−2x10−x、ここでx=単位格子当りの酸素空格子点)、長石(Ba,Ca,Na,K,NH)(Al,B,Si))、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。ケイ酸塩セラミックは、好ましくは磁器である。
【0061】
非酸化物セラミックは炭化物、窒化物、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。炭化物は、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(BC)、炭化チタン(TiC)、炭化タングステン、セメンタイト(FeC)からなる群より選択され得る。窒化物は、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、シリコンアルミニウムオキシニトリド(silicon aluminum oxynitride:SIALON)、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0062】
このプロセスの好ましい実施形態において、基体は1013S/cm未満の伝導率を有する。基体は好ましくは10S/cmから10−13S/cmの範囲内、または好ましくは10S/cmから10−10S/cmの範囲内、または10S/cmから10−8S/cmの範囲内の導電率を有する。
【0063】
本発明の好ましい実施形態において、ステップE2.における組成物の適用は、ブラシ、スクリーン、フェルトペン、万年筆、またはノズルによって行われる。この目的のために当業者が選択する任意の従来のブラシをブラシとして用いることが可能である。スクリーンおよびノズルの選択および寸法は、上に示されている。
【0064】
本発明はさらに、上述のプロセスのプロセスステップE1およびE2によって得ることのできる層構造の前駆物質を提供する。
【0065】
前駆物質の好ましい実施形態において、前駆物質は以下の特性の少なくとも1つを有する。
V1.基体の厚さは0.1mmから5cmの範囲内であること、
V2.ステップE2.において適用される組成物の厚さは0.1μmから70μmの範囲内、好ましくは0.1μmから10μmの範囲内、または好ましくは0.1μmから1μmの範囲内であること、
V3.基体の伝導率は1013S/cm未満であること、
V4.ステップE2.において適用される組成物の伝導率は10−1S/cmから10−8S/cmの範囲内であること。
【0066】
本発明はさらに、上述のプロセスによって得ることのできる層構造を提供する。
【0067】
層構造の好ましい実施形態において、層構造は以下の特性の少なくとも1つを有する。
S1.層構造は少なくとも70重量%の金を含み、かつ0.05μmから1μmの範囲内の厚さを有する金属層であること、
S2.伝導率は1013S/cm未満であること、
S3.光沢は500GUから1300GUの範囲内であること、
S4.密度は10kg/lから20kg/lの範囲内、好ましくは12kg/lから19.6kg/lの範囲内、または好ましくは15kg/lから19.4kg/lの範囲内であること。
【0068】
本発明はさらに、以下を含む組成物を提供する。
z1.0.1重量%から50重量%の範囲の量の金(Au)粒子、
z2.0重量%から5重量%の範囲内の水、
z3.100重量%に対する残余量の極性プロトン性有機溶媒、
ここで各場合の重量%は組成物の総質量に基づくものであり、合計100重量%となる。
【0069】
組成物の好ましい実施形態において、組成物は以下から選択される少なくとも1つのさらなる成分、好ましくは2つのさらなる成分、または好ましくはすべてのさらなる成分を含む。
z4.組成物の総質量に基づいて0重量%から10重量%の範囲の量のポリビニルピロリドン、
z5.組成物の総質量に基づいて0重量%から90重量%の範囲の量のポリアルコール。
【0070】
組成物の好ましい実施形態において、ポリアルコールは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2,3−プロパントリオール(グリセロール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジニトロベンゼン、L−アドレナリン、単糖、二糖、液体ポリオールと混合された単糖または二糖、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、好ましくは3から500の繰り返し単位を有するポリエチレングリコール、およびそれらの少なくとも2つの混合物からなる群より選択される。
【0071】
組成物の好ましい実施形態において、金(Au)粒子は、20nm以下、好ましくは17nm以下、または好ましくは15nm以下の粒径D50を有する。
【0072】
本発明はさらに、上述の層構造または上述のプロセスによって得ることのできる層構造を含む物体を提供する。この物体は、この目的のために当業者が選択する任意の物体であり得る。この物体は、ガラスプレート、円筒形のガラス本体、不規則な形状のガラス本体、タイル、石プレート、金属プレート、木材プレート、ポリマープレートまたはフィルム、花瓶、食事用プレート、カップ、ビーカー、およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】本発明に従うプロセスのプロセスステップを概略的に示す図である。
図2a】本発明に従う前駆物質を概略的に示す図である。
図2b】本発明に従う層構造を概略的に示す図である。
図2c】付加的な保護層を有する、本発明に従う層構造を概略的に示す図である。
図2d】本発明に従う層構造を含む物体を概略的に示す図である。
図3】実施例1サンプルa)による、本発明に従う組成物の電子顕微鏡写真を示す図である。
図4】実施例1サンプルb)による、本発明に従うさらなる組成物の電子顕微鏡写真を示す図である。
図5】実施例1サンプルc)による、本発明に従うさらなる組成物の電子顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
ここで、測定方法、非限定的な実施例および図面の助けによって、本発明を示す。
【0075】
測定方法
別様に示されない限り、テスト方法および実施例は標準的な条件下で実行される。別様に示されない限り、%の範囲は重量%の範囲である。
【0076】
基体
スクリーン印刷可能なペーストを、10×7×0.3cmの寸法を有する平坦なガラスプレートの上に印刷した。平坦なガラスプレートは、シェーンセ(Schoensee)のレコ・グラス(Leco Glas)より購入した。
【0077】
粘度
CP25−1測定コーン(角度1°)を用いて、20±0.1℃の温度にて、ソフトウェア レオプラス(Rheoplus)バージョン32 V.3.40(アントン・パール(Anton Paar)より)を用いたコーンアンドプレートシステムのフィジカ(Physica)MCR301によって、印刷組成物の粘度を測定した。30秒間その温度にした後、25の等距離ステップを有する1s−1から500s−1のずり速度の勾配を生成し、各々の場合に各ステップを30秒間一定に保った。500s−1のずり速度を30秒間維持した。その後、ずり速度を上記と同様の25の等距離ステップにおいて1s−1まで低減させた。この500s−1のずり速度における30秒間の最後に粘度を定めた。
【0078】
湿潤フィルム厚
上述のとおりの硬化層の層厚を測定するために、200倍の拡大率を有するツァイス(Zeiss)5104775光学切片顕微鏡を用いた。測定を行うために、印刷および硬化した試料を試料テーブルの上に置き、0位置を設定した。その後、十字線の水平線を基体の表面に位置合わせした。次いで十字線を層表面に位置合わせし、測定値を読取った。測定は室温(23℃から25℃)にて行った。
【0079】
透過型電子顕微鏡法(TEM)
透過型電子顕微鏡法のために、120KVの加速電圧を有するフィリップス(Phillips)EM420機器を用いた。検査されるべきサンプルの一滴をTEMグリッドに滴下した。その後TEMグリッドを機器に入れた。測定に必要な10−4Paの高真空を生成する際に、懸濁物に存在する溶媒は完全に蒸発した。顕微鏡写真において識別可能な粒子は、測定可能である限り、すべて個別に測定した。報告される粒径は、得られた個々の値の統計学的評価に基づくものである。
【0080】
伝導率
溶液の伝導率を測定するために、インラブ(Inlab)738センサ(メトラー・トレド(Mettler Toledo))を有するセブン(Seven)GoTM SG3(メトラー・トレドより)を用いた。0.1mol/lおよび0.01mol/lの濃度のKCl水溶液を用いて較正を行った。
【0081】
光沢
EN ISO 2813:1999に従って測定を行った。TQCサーミンポート・クオリティ・コントロール社(TQC Therminport Quality Control GmbH)のモデルGL0030機器を用いた。20°の入射/測定角度にて測定を行った。基体としてガラスを用い、150℃にて1時間乾燥した後の層厚は約0.3cmであった。機器に組み込まれた研磨黒色ガラスプレートによって較正を行った。
【0082】
pH値
ポータメス(Portamess)pHメータ(ニック・エレクトロニッシュ・メスゲレート社(Knick Elektronische Messgeraete GmbH & Co.KG))のモデルを用いて、溶液のpHを直接測定した。温度測定が組み込まれたガラス電極モデルSE200N(PT100抵抗センサ、3mol/l KCL溶液に関する)を、一定のpHが示されるまで測定溶液に浸漬した。
【0083】
スクリーン印刷
セファー社(Sefar AG)より商業的に入手可能な織られたポリエステルメッシュ(構造のあるものまたはないもの)120/34(120スレッド/cm、直径34μm)を通じた手動印刷(プラスチックドクターブレード)によって、ペーストをガラスプレートに直接適用した。各場合の印刷は、室温および大気圧にて行った。
【0084】
乾燥
印刷したガラスプレートを、150℃に加熱した乾燥オーブン(サーモ・サイエンティフィック(Thermo Scientific)より、Typ UT6060)に導入して、そこに60分間置いた。
【実施例】
【0085】
実施例1
ナノ金溶液の生成
A)還元
427グラムの蒸留水、7gのポリビニルピロリドン タイプK−15(アプリケム社(AppliChem GmbH)、ダルムシュタット(Darmstadt)より)、22.3gの無水クエン酸三ナトリウム(メルク(Merck)KGaA、ダルムシュタットより)の溶液を、3リットルのガラスビーカー内で撹拌しながら25分間にわたって99〜100℃に加熱した。ガラスビーカーを時計ガラスで覆った。温度計によって温度をモニタした。その温度に達すると、pH=6.9に設定した46.0gの21.75パーセント強度の塩化金(III)ナトリウム溶液(ヘレウス・プレシャス・メタルズ社(Heraeus Precious Metals GmbH)より)を15秒間にわたって激しく撹拌しながら加えた。激しい発泡が起こり、色が黄色から黒色を経て紫色に素早く変化した。その後反応を完了させるために、溶液を97〜98℃にてさらに10分間撹拌した。溶液を室温まで冷却した。
【0086】
B)沈降
深紅色の溶液を、15ミクロンから20ミクロンの孔サイズを有するろ紙(シュライヒャー・ウント・シュール社(Schleicher & Schuell GmbH)、ダッセル(Dassel)より)でろ過した後、濃塩酸(メルクKGaA、ダルムシュタットより)によってpH3.0〜3.1/25℃にした。その後、表1に示される沈降剤の5%強度水溶液を液滴添加することによって、室温にてナノ金を黒色沈殿物として沈降させた。青みがかった色が残ることなく溶液の色が黒色になったときに、沈降プロセスは完了する。沈降剤としてメルカプトコハク酸を用いたとき、黒色沈殿物を得るために300mlの沈降溶液が必要であった。
【0087】
C)精製
黒色沈殿物を一晩沈降させて、上清の澄んだ茶色の母液を注意深くデカント除去した。その後、沈殿物を室温にて各回100gの酸性化蒸留水(pH1.0〜1.2)によって6回洗浄した。各洗浄動作の際に、混合物を10分間撹拌し、少なくとも3時間沈降させた。3時間後に洗浄溶液をデカント除去した。その後、デカントした水のpHが25℃にて1.8〜2.0となるような量の蒸留水によって洗浄を行った。洗浄水は、100℃にて0.02%未満の乾燥残留物を有した。万一乾燥残留物が0.02%よりも多ければ、0.02%以下の乾燥残留物(100℃)を達成するまで、洗浄溶液または蒸留水を用いたさらなる洗浄動作が必要である。
【0088】
D)分散
黒色残留物を40gの脱イオン水(2.5〜3.0μS/cm伝導率)においてスラリー化し、10%強度のアンモニア水溶液によってpH4.5〜5.0/25℃とした。これによって深紅色の分散物が得られ、この分散物をろ紙(20〜30ミクロンの孔サイズ)(シュライヒャー・ウント・シュール社、ダッセルより)でろ過した。結果として得られた懸濁物の金含有量は20%のAu(強熱残留物の重量決定)であった。
【0089】
【表1】
【0090】
メルカプトコハク酸はアルファ・エイサー社(Alfa Aesar GmbH & Co KG)、カールスルーエ(Karlsruhe)から購入し、N−アセチルシステインはメルクKGaA、ダルムシュタットから購入し、チオジエタノールはフルカ・ヘミー社(Fluka Chemie GmbH)、CH−ブフス(Buchs)から購入した。光学的性質を視覚的に評価した。
【0091】
表1の結果から、粒径が増加すると組成物の光学的性質が変化することが分かる。粒径が15nm未満のときは、光沢のある組成物が得られる。粒径が20nmを超えるときは、シルク仕上げの組成物が得られる。結果的に、粒径によって組成物の光沢特性を制御できる。
【0092】
スクリーン印刷可能なペーストの実施例
実施例I、IIおよびIII
表2は、金を含有する3つの異なるスクリーン印刷可能なペーストI、IIおよびIIIに対する成分をリストにしたものである。
【0093】
【表2】
【0094】
成分1〜6を順に計量して、少なくとも500gの容量を有するガラス皿に入れた。マグネチックスターラで撹拌しながら、各場合に40gの水を85℃にて蒸発させた。完全に冷却後、成分7を加え、混合物を室温にて3ロールミル(イグザクト(EXAKT)、ノルダーシュテット(Norderstedt)、ラボルヴァルツェンシュトゥール(Laborwalzenstuhl)より)によってホモジナイズした。2回の均質化パスを行った。
【0095】
その後、沈降剤メルカプトコハク酸サンプル1a)を有する実施例1からの溶液、または実施例IからIIIからのペーストをさまざまな基体に適用し、これは適用とも呼ばれる。適用の条件、態様、および加熱の際の条件を表3にまとめている。表3にはこの適用の結果もリストにしている。
【0096】
【表3】
【0097】
実施例IVおよびV
表4は、ホワイトゴールド処理のための金、白金およびパラジウムを含有する2つの異なるスクリーン印刷可能なペーストIVおよびVに対する成分をリストにしたものである。
【0098】
【表4】
【0099】
表4に示される成分1〜7を順に計量して、適切な皿に入れた。マグネチックスターラで撹拌しながら、各場合に279gの水を85℃にて蒸発させた。完全に冷却後、成分8を加え、混合物を室温にて3ロールミル(イグザクト、ノルダーシュテット、ラボルヴァルツェンシュトゥールより)によってホモジナイズした。2回の均質化パスを行った。ナノ白金溶液およびナノパラジウム溶液は、ケール(Kehl)のストレム・ケミカルズ社(Strem Chemicals Inc.)より商業的に入手可能である。
【0100】
図1は、本発明のプロセスのステップを概略的に示すものである。ステップE1 30において、実施例1からの組成物6を容器内に提供する。ステップE2 40において、70ショアのゴムドクターブレードを用いて、150μmのメッシュ開口部サイズを有するスクリーンを通じたスクリーン印刷によって、たとえば寸法7*10cmを有するガラスプレートなどの形の基体4に組成物6を適用する。組成物6の湿潤フィルム厚は約20μmである。基体4および組成物6は、ともに本発明に従う前駆物質12を形成する。ステップE3 50において、基体4および組成物6をともに、フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)からのモデルUT6060の熱風オーブン中で大気圧下で150℃にて1時間加熱する。ここで組成物6から金層8が形成され、こうして本発明に従う層構造2が得られる。ステップE4.において、任意には市販の透明表面コーティング(例、自動車コーティングのための透明コーティング、たとえばProfix(登録商標)2K MSクラーラック(Klarlack)CP400またはProfix(登録商標)2Kクラーラック・マット(Klarlack Matt)CM10など)の形の保護層10を、少なくとも組成物6から形成された金層8に適用するか、または層構造2全体の上に適用してもよい。
【0101】
図2aは、組成物6が適用された基体4からなる前駆物質12を示す。基体4は、たとえば紙、ガラスまたはセラミックなどであり得る。この例において、基体4は、20*20cmの寸法を有する厚さ1mmのポリプロピレンフィルムである。
【0102】
図1に対して説明したとおり、図2bに示される層構造2は、図2aに示される前駆物質12を50℃で加熱することによって形成される。この層構造2は、基体4および金層8からなる。金層の厚さは1μmである。
【0103】
図2cは、金層8の頂部に付加的に適用された保護層10を有する、図2bに従う層構造2を示す。代替的または付加的に、基体4の下側にも保護層10が適用されてもよい。
【0104】
図2dは、層構造2が適用されたテーブルプレート22からなる物体20を示す。層構造2は基体4と、金層8と、保護層10とを含む。層構造2は、図2aおよび図2bに対して説明したものと同じ寸法および材料を有してもよい。
【0105】
図3は、本発明に従う組成物6の透過型電子顕微鏡写真を示す。この組成物は実施例1のサンプルa)に対応する。この透過型電子顕微鏡写真の拡大率は45000であった。明らかに分かるとおり、円形から楕円形の金粒子は1nmから10nmの範囲の直径を有し、約半分の粒子が5nm未満の直径を有しており、これは4.9nmのD50に対応する。10%の粒子は2.8nm以下の直径を有し、これは2.8nmのD10に対応し、90%の粒子は10.1nm以下の直径を有し、これは10.1nmのD90に対応する。ここでは、他の粒子に付着している粒子も個々の粒子とみなした。付着粒子の空いている側において直径を定めた。
【0106】
図4は、図3に対して説明したものと同じタイプの透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて記録した画像を示す。図4は、実施例1のサンプルb)に従う組成物6を示す。図4は45000倍の拡大にて撮られたものである。図4において分かるとおり、金粒子は3nmから16nmの範囲の直径を有し、約半分の粒子が10nm未満の直径を有しており、これは9.1nmのD50に対応する。10%の粒子は5.5nm以下の直径を有し、これは5.5nmのD10に対応し、90%の粒子は15.8nm以下の直径を有し、これは15.8nmのD90に対応する。ここでは、他の粒子に付着している粒子も個々の粒子とみなした。付着粒子の空いている側において直径を定めた。
【0107】
図5は、図3に対して説明したものと同じタイプの透過型電子顕微鏡を用いて記録した画像を示す。図5は、実施例1のサンプルc)の組成物6を45000倍の拡大にて示す。図5において分かるとおり、金粒子は7nmから40nmの範囲の直径を有する。約半分の粒子が27nm未満の直径を有しており、これは24.9nmのD50に対応する。ここでは、他の粒子に付着している粒子も個々の粒子とみなした。付着粒子の空いている側において直径を定めた。
【0108】
表1から分かるとおり、組成物6の光沢はAu粒子の粒径に依存する。図3および図4の組成物6は光沢を示すが、図5の組成物6はシルク仕上げを示す。
【0109】
透過型電子顕微鏡写真にとって通例であるとおり、炭素フィルムを設けた銅グリッドにおいて透過型電子顕微鏡写真を記録した。
【符号の説明】
【0110】
2 層構造
4 基体
6 組成物
8 金層
10 保護層
12 前駆物質
20 物体
22 テーブルプレート
30 ステップE1.
40 ステップE2.
50 ステップE3.
60 ステップE4.

図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5