【文献】
Am. J. Physiol. Renal Physiol., 2006, 290(6), pp.F1329-F1336
【文献】
Biochem. J., 2010, 432(2), pp.333-341
【文献】
J. Biol. Chem., 1999, 274(13), pp.8933-8940
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0037】
長年にわたる特許法に慣例に従って、単語「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、請求の範囲を含めた本明細書においてそれを含む単語と一緒に使用される場合、「1つ又は複数」を意味する。本発明のいくつかの実施形態は、1つ又は複数の要素、方法工程、及び/又は本発明の方法からなる又は基本的にそれからなることができる。本発明の精神と範囲から逸脱することなく本明細書に記述される任意の方法又は組成物が、開示される本明細書の実施形態に記述される他の任意の方法若しくは組成物に対して遂行され、同様の若しくは類似の結果を更に得られると考えられる。
I.アスプロシン
【0038】
本開示の実施形態は、アスプロシンに関連する方法及び組成物を含み、アスプロシンは、フィブリリン−1のC末端切断フラグメントである。天然のヒトアスプロシンの配列(フィブリリン−1のアミノ酸2732〜2871;配列番号1)は、以下の通りである:
STNETDASNIEDQSETEANVSLASWDVEKTAIFAFNISHVSNKVRILELLPALTTLTNHNRYLIESGNEDGFFKINQKEGISYLHFTKKKPVAGTYSLQISSTPLYKKKELNQLEDKYDKDYLSGELGDNLKMKIQVLLH。アスプロシンは、ヒト細胞から単離することができ、従ってもはや天然ではない、又は特定の実施形態において、それは組換えであってもよい。本明細書で称される通り、配列番号1の天然の配列が、組換え手段によって生成される場合、得られたポリペプチドは、組換えアスプロシンと称することができる。組換えアスプロシンの別の例の配列は、標識又はタグを含む。例えば、大腸菌(E.coli)における翻訳のための開始コドンを含むようにN末端のメチオニンを伴って結合しているHisタグ(配列番号2)は、以下の通りである:
MHHHHHHSTNETDASNIEDQSETEANVSLASWDVEKTAIFAFNISHVSNKVRILELLPALTTLTNHNRYLIESGNEDGFFKINQKEGISYLHFTKKKPVAGTYSLQISSTPLYKKKELNQLEDKYDKDYLSGELGDNLKMKIQVLLH。アスプロシンの実施形態は、機能的誘導体若しくはその機能的フラグメントを含み、有効量を与えたときに哺乳動物個体の食欲を増加させ及び/又は体重を増やす能力を有する場合、その誘導体若しくはフラグメントは機能的であると考え得る。そのような活性は、例えば脂肪量の増加を評価するためのMRIスキャン又は体重計を使用する体重の測定を含めた任意の適切な手段によって測定することができる。特定の実施形態において、例えばin vitroでの脂肪細胞分化の促進をアッセイすることによって、機能的活性を評価することができる。特定の実施形態において、アスプロシン又は機能的フラグメント若しくは機能的誘導体は、可溶性である。アスプロシン又は機能的フラグメント若しくは機能的誘導体は、融合タンパク質に含まれることができる。
【0039】
アスプロシンタンパク質性組成物は、標準的な分子生物学的技術によるタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチドの発現、天然の供給源からのタンパク質性化合物の単離、又はタンパク質性材料の化学合成を含めた当業者に公知の任意の技術によって作製することができる。アスプロシンコード領域(フィブリリン−1から切り離されてもよいが、フィブリリン−1内の領域など)は、本明細書に開示する若しくは当業者に公知であるような技術を使用して増幅及び/又は発現させることができる。別法として、タンパク質、ポリペプチド及びペプチドの様々な市販調製物が、当業者に公知である。
【0040】
特定の実施形態において、アスプロシン(又はそのフラグメント若しくは誘導体)タンパク質性化合物は、精製することができる。一般に、「精製されている」とは、分画に供して他の様々なタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチドを除去した特定の又はタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド組成物のことを指すことになり、その組成物は、例えば、特定の若しくは所望のタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド用として当業者に公知であるようなタンパク質アッセイによって評価できる活性を実質的に保持している。そのような誘導体及びフラグメントを含めたアスプロシンの生物学的機能的等価物を、利用することができる。本発明によるアスプロシンポリヌクレオチド並びに/又はタンパク質の構造内に修飾及び/若しくは変更を作製し、類似の又は改善された特徴を有する分子を得ることができるので、そのような生物学的機能的等価物も本発明の中に包含される。
【0041】
アスプロシン機能的誘導体又はそのフラグメントは、配列番号1と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個以上のアミノ酸改変を含むことができる。アスプロシン機能的誘導体又はそのフラグメントは、配列番号1のN末端トランケーションを含むことができ、例えばトランケーションは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100個以下のアミノ酸であるか、又はトランケーションは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100個のアミノ酸である。アスプロシン機能的誘導体又はそのフラグメントは、配列番号1のC末端トランケーションを含むことができ、トランケーションは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100個以下のアミノ酸、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100個のアミノ酸などである。アスプロシン機能的誘導体若しくはそのフラグメントは、配列番号1内に内部欠失を含むことができ、内部欠失は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100個以下のアミノ酸、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100個のアミノ酸などである。特定の実施形態において、アスプロシン機能的誘導体又はそのフラグメントは、配列番号1と少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%同一である配列を含むことができる。
【0042】
特定の実施形態において、食欲刺激薬は、アスプロシン又は機能的フラグメント又は機能的誘導体を含む。刺激薬をアスプロシンと特に製剤化して、哺乳動物個体の食欲を刺激することができる。そのような刺激薬は、低体重、栄養不良、栄養不足である個体、農業動物(ウシ、ブタ、子羊、鶏等など)の大きさを増加させるため、ボディービルダーのため等、量を増やそうとする個体に与えることができる。刺激薬組成物は、アスプロシン以外の他の刺激薬を有することができる。
【0043】
A.修飾ポリヌクレオチド及びポリペプチド
アスプロシンの生物学的機能的等価物は、「野生型」又は標準的なタンパク質をコードするする能力を保持すると同時に固有の配列を含有するように操作されたポリヌクレオチドから産生することができる。これは、遺伝暗号の変質、即ち、同じアミノ酸をコードする複数のコドンの存在によって達成することができる。一例において、当業者は、ポリヌクレオチドがタンパク質をコードする能力を損なうことなくそのポリヌクレオチドに制限酵素認識配列を導入したいと思うことができる。
【0044】
別の例において、アスプロシンポリヌクレオチドは、より著しい変更を含む生物学的機能的等価物である(及びコードする)ことができる。タンパク質構造において特定のアミノ酸を、例えば抗体の抗原結合領域、基質分子に対する結合部位、受容体などのような構造との相互作用的結合能を大きく減少することなく他のアミノ酸と置換することができる。いわゆる「保存的な」変更は、構造変化が、設計された機能を実施するタンパク質の能力に影響を与えないものなので、タンパク質の生物活性を損なわない。従って、本明細書に開示される遺伝子及びタンパク質の配列に様々な変更を作製し、同時に本発明の目的を実現できることが本発明者によって考えられる。
【0045】
機能的等価物に関しては、「生物学的機能的等価物」の定義に内在するタンパク質及び/又はポリヌクレオチドは、許容可能なレベルの同等な生物活性を持つ分子を保持していても、分子の定義済みの部分に作製できる変更の数に制限があるという概念であることは、当業者にはよく理解される。従って生物学的機能的等価物は、選択されたアミノ酸(又はコドン)において置換できるタンパク質(及びポリヌクレオチド)であると本明細書において定義される。
【0046】
一般に、分子の長さが短いほど、機能を保持していても分子内に少ない変更しか作製できない。より長いドメインは、中間の数の変更を有することができる。全長タンパク質は、更に多くの変更に対して最大の許容範囲を有することになる。しかしながら、構造に強く左右される特定の分子若しくはドメインは、修飾をほとんど又はまったく許容できないことを認識しなければならない。
【0047】
一般にアミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、サイズ及び/又はなどに基づく。アミノ酸側鎖置換基のサイズ、形状及び/若しくは型の分析から、アルギニン、リジン及び/若しくはヒスチジンは全て正に荷電した残基であり;アラニン、グリシン及び/若しくはセリンは全て類似のサイズであり;並びに/又はフェニルアラニン、トリプトファン及び/若しくはチロシンは全て概ね類似の形状を有することが明らかになる。従って、これらの考慮すべき点に基づいて、アルギニン、リジン及び/若しくはヒスチジン;アラニン、グリシン及び/若しくはセリン;並びに/又はフェニルアラニン、トリプトファン及び/若しくはチロシン;は、本明細書において生物学的機能的等価物と定義される。
【0048】
より定量的な変化を得るために、アミノ酸の水治療法インデックスを考えることができる。各アミノ酸は、その疎水性及び/若しくは電荷特性に基づいて水治療法インデックスが割り当てられ、これらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(0.4);トレオニン(0.7);セリン(0.8);トリプトファン(0.9);チロシン(1.3);プロリン(1.6);ヒスチジン(3.2);グルタミン酸(3.5);グルタミン(3.5);アスパラギン酸(3.5);アスパラギン(3.5);リジン(3.9);並びに/又はアルギニン(4.5)である。
【0049】
タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する水治療法アミノ酸インデックスの重要性は、当技術分野において一般に理解される(Kyte及びDoolittle、1982年、参照により本明細書に組み込む)。特定のアミノ酸を、類似の水治療法インデックス及び/若しくはスコアを有する他のアミノ酸と置換することができ、並びに/又は類似の生物活性をなお保持することは公知である。水治療法インデックスに基づく変更を作製する際に、水治療法インデックスが±2以内にあるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内が特に好ましく、及び/又は±0.5以内が更により一層好ましい。
【0050】
本発明の特定の実施形態の場合のように、類似のアミノ酸の置換を、特にそれによって作られる生物学的機能的等価物のタンパク質及び/又はペプチドが免疫学的実施形態において使用されるように意図される場合、親水性に基づいて効果的に作製できることも当技術分野において理解される。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,554,101号は、隣接するアミノ酸の親水性によって決定されるタンパク質の最大局所平均親水性が、その免疫原性及び/又は抗原性、即ちタンパク質の生物学的特性と相関すると述べている。
【0051】
米国特許第4,554,101号に詳述されるように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられた:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸塩(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(0.5);ヒスチジン(0.5);システイン(1.0);メチオニン(1.3);バリン(1.5);ロイシン(1.8);イソロイシン(1.8);チロシン(2.3);フェニルアラニン(2.5);トリプトファン(3.4)。類似の親水性値に基づく変化を作製する際に、親水性値が±2以内にあるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内が特に好ましく、及び/又は±0.5以内が更により一層好ましい。
【0052】
B.改変アミノ酸
本発明は、多くの態様において、適切なポリヌクレオチドの転写及び翻訳による、細胞でのペプチド並びにポリペプチドの合成を利用する。これらのペプチド並びにポリペプチドは、20種「天然の」アミノ酸及びその翻訳後修飾を含むことになる。しかしながら、in vitroペプチド合成は、修飾及び/又は異常アミノ酸の使用を可能にする。例示的な修飾及び/又は異常アミノ酸は、当技術分野において公知であるが、それに限定されない。
【0053】
C.模倣体
上述の生物学的機能的等価物に加えて、本発明者らは、構造的若しくは機能的に類似の化合物を製剤化して、本発明のペプチド又はポリペプチドの重要な部分を模倣できることも考える。ペプチド模倣体と称されることがあるそのような化合物は、本発明のペプチドと同じ様式で使用することができ、それ故に、また機能的等価物である。特定の実施形態において、模倣体は、アスプロシンのβプリーツを1つ又は複数含む。
【0054】
タンパク質の2次、3次構造の要素を模倣する特定の模倣体については、Johnsonら(1993年)に記述されている。ペプチド模倣体の使用の背後にある基礎的な論拠は、タンパク質のペプチド骨格が、抗体及び/又は抗原の分子間相互作用などを容易にするようにアミノ酸側鎖を方向付けるように主に存在しているということである。従ってペプチド模倣体は、天然の分子と類似の分子間相互作用ができるように設計される。そのようなペプチド模倣体には、天然アミノ酸又はアミノ酸側鎖を全く組み込まないが、アスプロシンペプチド配列に基づいて設計され、アスプロシンを機能的に置きかえる能力を有する化合物がある。
【0055】
II.アスプロシン又はアスプロシン受容体のインヒビター
本開示の実施形態は、アスプロシンの、1つ又は複数のインヒビターを含む。特定の実施形態において、ある場合にはインヒビターは抗体でないが、インヒビターは抗体である。特定の実施形態において、インヒビターは、1つ又は複数の小分子、1つ又は複数のアプタマー、1つ又は複数の非抗体ファージディスプレイ由来ペプチド、その組合せなどであってもよい。特定の実施形態において、アスプロシンのインヒビターは、アスプロシンに特異的に結合し、それを不活性化する。特定の実施形態において、インヒビターは可溶性である。いくつかの実施形態において、アスプロシンの可溶性受容体媒介阻害の方法及び組成物がある。特定の実施形態において、RNAi及び/又はマイクロRNA媒介阻害を利用することができ、例えば、特定の実施形態において、アスプロシンは、FBN1から分離して自身の転写単位を有する。
【0056】
本開示の実施形態は、アスプロシン受容体の、1つ又は複数のインヒビターを含む。特定の実施形態において、ある場合にはインヒビターは抗体でないが、インヒビターは抗体である。特定の実施形態において、インヒビターは、1つ若しくは複数の小分子、1つ若しくは複数のアプタマー、1つ若しくは複数の非抗体ファージディスプレイ由来ペプチド、RNAi若しくはマイクロRNA媒介インヒビター、その下流にあるシグナル伝達の特異的インヒビター、又はその組合せなどであってもよい。特定の実施形態において、アスプロシン受容体のインヒビターは、アスプロシンに特異的に結合し、それを不活性化する。特定の一実施形態において、それはその発現を特異的に遮断する、さもなければ機能的活性を低下させる。特定の実施形態において、インヒビターは可溶性である。
【0057】
特定の実施形態において、インヒビターは、構造的又は機能的モチーフを標的し、インヒビターのアスプロシン標的部位は、公知である場合も又は公知でない場合もある。特定の実施形態において、インヒビターは、アスプロシンの、1つ又は複数のβプリーツを標的する。特定の実施形態において、アスプロシンのインヒビターは、アスプロシンに対する受容体のインヒビターである。
【0058】
特定の実施形態において、1つ又は複数のアスプロシンインヒビターを含む食欲抑制薬がある。抑制薬組成物は、アスプロシン以外の他の抑制薬を有することができる。抑制薬をアスプロシンと特に製剤化して、哺乳動物個体の食欲を抑制することができる。そのような抑制薬は、過体重、肥満である、糖尿病である、過体重になるリスクがある、肥満になるリスクがあるなどの個体に与えることができる。
【0059】
特定の実施形態において、インヒビターは抗体である。本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEなど広く任意の免疫学的結合剤を指すものとする。一般に、IgG及び/又はIgMは、生理的状況において最も一般的な抗体であり、実験室環境において最も容易に作製されるので、それらが好ましい。用語「抗体」は、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子を指すために使用され、Fab’、Fab、F(ab’)
2、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(一本鎖Fv)などのような抗体フラグメントを含む。様々な抗体に基づく構築物及びフラグメントを調製し、使用する技術は、当技術分野において周知である。抗体を調製し、特徴づける手段も、当技術分野において周知である(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年、を参照のこと;参照により本明細書に組み込む)。
【0060】
A.ポリクローナル抗体
一般にアスプロシンに対するポリクローナル抗体は、アスプロシン若しくはそのフラグメント及びアジュバントの複数回の皮下(sc)又は腹膜内(ip)注射により、動物に産生させることができる。二官能性又は誘導体化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl
2又はR
1N=C=NR(式中、R及びR
1は、異なるアルキル基である)を使用して、標的アミノ酸配列を含有するアスプロシン若しくはフラグメントを、免疫される種において免疫原性であるタンパク質、例えばスカシガイヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン又は大豆トリプシンインヒビターにコンジュゲートすることは有用であり得る。
【0061】
動物を、コンジュゲート1mg又は1μg(それぞれウサギ又はマウス用)をフロイト完全アジュバント3体積と混合し、複数部位で皮内に溶液を注射することによって免疫原性コンジュゲート若しくは誘導体に対して免疫することができる。1か月後に、動物を、複数部位での皮下注射によりフロイト完全アジュバント中に最初の量の1/5〜1/10のコンジュゲートで追加免疫した。7〜14日後に、動物を採血し、血清を抗アスプロシン抗体価についてアッセイする。力価がプラトーになるまで動物を追加免疫する。好ましくは、動物を、同じアスプロシンのコンジュゲートであるが、異なるタンパク質に及び/又は異なる架橋試薬によってコンジュゲートされたもので追加免疫した。コンジュゲートは、タンパク質融合として組換え細胞培養において作製することもできる。また、ミョウバンなど凝集剤を使用して、免疫応答を増強する。
【0062】
B.モノクローナル抗体
特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、個体において体重を減らすために使用するアスプロシンのインヒビターとして生成し、利用することができる。モノクローナル抗体のための免疫原は、アスプロシンポリペプチド全長であることができ、又はそのフラグメントであってもよい。モノクローナル抗体の生成に利用できる免疫原の例示的な配列は、以下の通りである:
【0063】
HuFbn1−2746:2770 ETEANVSLASWDVEKTAIFAFNISH(配列番号3)
【0064】
HuFbn1 2838:2865 KKKELNQLEDKYDKDYLSGELGDNLKMK(配列番号4)
【0065】
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られ、即ち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在する場合がある起こり得る天然に存在する突然変異を除いて同一である。従って、修飾語句「モノクローナル」は、別々の抗体の混合物ではない抗体の特徴を示す。
【0066】
例えば、本発明の抗アスプロシンモノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein、Nature 256:495(1975年)によって最初に記述されたハイブリドーマ方法を使用して作ることができ、又は組換えDNA方法(Cabillyら、米国特許第4,816,567号)によって作製することができる。ハイブリドーマ方法において、先述の通り、マウス又はハムスターなど他の適切な宿主動物を免疫して、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合することになる抗体を産生する若しくは産生することができるリンパ球を生じさせる。別法として、リンパ球はin vitroで免疫することができる。次いでリンパ球を、ポリエチレングリコールなど適切な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、59〜103頁[Academic Press、1986年])。
【0067】
このようにして、調製したハイブリドーマ細胞を、融合していない親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する1つ若しくは複数の物質を好ましくは含有する適切な培地に播種し、増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(HGPRT又はHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマ用の培地は、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を一般に含むことになり、その物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨げる。
【0068】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択した抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル発現を支持し、HAT培地などの培地に感受性があるものである。これらの中で、好ましい骨髄腫細胞系は、ソーク研究所セルディストリビューションセンター、San Diego、Calif.USAから入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍、並びにアメリカンタイプカルチャーコレクション、Rockville、Md.USAから入手可能なSP−2細胞から得られるそれらなどのマウス骨髄腫系である。
【0069】
ハイブリドーマ細胞を増殖させる培地を、アスプロシンに対して作られるモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又は放射免疫測定法(RIA)若しくは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのin vitro結合アッセイによって決定される。
【0070】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson及びPollard、Anal.Biochem.107:220頁(1980年)のスキャッチャード分析によって決定できる。
【0071】
所望の特異性、親和性及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、そのクローンを限界希釈手順によってサブクローニングし、標準的な方法によって増殖させることができる。Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、59〜104頁(Academic Press、1986年)。この目的のために適切な培地には、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地又はRPMI−1640培地がある。加えて、ハイブリドーマ細胞を、動物において腹水腫瘍としてin vivo増殖させることができる。
【0072】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又は親和性クロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって培地、腹水若しくは血清から最適に分離される。
【0073】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)を使用して容易に単離され、配列決定される。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として働く。一旦単離したら、DNAを発現ベクターに入れることができ、次いでそのベクターをサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は免疫グロブリンタンパク質を特に産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得る。DNAも、例えば、相同なマウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより、Morrison、ら、Proc.Nat.Acad.Sci.81、6851頁、(1984年)、又は非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て若しくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合させることにより修飾することができる。その方式で、本明細書の抗アスプロシンモノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体を調製する。
【0074】
一般に、そのような非免疫グロブリンポリペプチドを、本発明の抗体の定常ドメインと置換する、又は本発明の抗体の抗原結合部位の1方の可変ドメインと置換して、アスプロシンに対する特異性を有する1つの抗原結合部位及び異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作る。
【0075】
キメラ又はハイブリッド抗体は、架橋剤を伴う方法を含めた、合成タンパク質化学において公知の方法を使用してin vitroで調製することもできる。例えば、抗毒素は、ジスルフィド交換反応を使用して又はチオエーテル結合を形成することによって構築することができる。この目的に適切な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル4メルカプトブチルイミダートがある。
【0076】
診断適用の場合、本発明の抗体は、通常、検出可能な部分を用いて標識することができる。検出可能な部分は、直接又は間接的のいずれかで、検出可能なシグナルを産生することが可能な任意のものであってもよい。例えば、検出可能な部分は、
3H、
14C、
32P、
35S若しくは
125Iなどの放射性同位元素、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン若しくはルシフェリンなどの蛍光又は化学発光化合物;ビオチン;放射性アイソトープ標識、例えば
125I、
32P、
14C、若しくは
3Hなど、又はアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ若しくはホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素であってもよい。
【0077】
Hunter、ら、Nature 144:945頁(1962年);David、ら、Biochemistry 13:1014頁(1974年);Pain、ら、J.Immunol.Meth.40:219頁(1981年);及びNygren、J.Histochem.and Cytochem.30:407頁(1982年)によって記述される方法を含めて、当技術分野において公知の、検出可能な部分に抗体を別々にコンジュゲートするための任意の方法を利用することができる。
【0078】
本発明の抗体は、競合結合アッセイ、直接及び間接的サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイなど任意の公知のアッセイ方法で利用することができる。Zola、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、147〜158頁(CRC Press、Inc.1987年)。
【0079】
競合結合アッセイは、標識した標準(アスプロシン又はその免疫学的反応部分であってもよい)が、限られた量の抗体との結合について試験サンプル分析物(アスプロシン)と競合する能力を利用する。試験サンプル中のアスプロシンの量は、抗体に結合することになる標準の量に反比例する。結合することになる標準の量の決定を容易にするために、抗体に結合している標準及び分析物を結合せずに残っている標準並びに分析物から都合よく分離できるように、競合の前か後に抗体は一般に不溶化される。
【0080】
サンドイッチアッセイは、検出しようとするタンパク質の異なる免疫原性部分又はエピトープにそれぞれ結合することが可能な2つの抗体の使用を含む。サンドイッチアッセイにおいて、試験サンプル分析物は、固体支持体上に固定されている第1の抗体に結合され、その後第2の抗体が分析物に結合し、従って不溶性の3つの部分の複合体を形成する。David及びGreene、米国特許第4,376,110号。第2の抗体は、それ自体が検出可能な部分を用いて標識されてもよく(直接サンドイッチアッセイ)又は検出可能な部分を用いて標識された抗免疫グロブリン抗体を使用して測定されてもよい(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1つの型はELISAアッセイであり、その場合に、検出可能な部分は酵素である。
【0081】
C.ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入されたアミノ酸残基を1つ又は複数有する。これらの非ヒトアミノ酸残基を、「移入」(import)可変ドメインから一般に取り出される「移入」残基としばしば称する。ヒト化は、Winter及び共同研究者(Jonesら、Nature 321、522〜525頁[1986年];Riechmannら、Nature 332、323〜327頁[1988年];Verhoeyenら、Science 239、1534〜1536頁[1988年])の方法に従って齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列で置換することにより基本的に実行することができる。従って、そのような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(Cabilly、上記)であり、完全なヒト可変ドメインより実質的に少ないドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。実際に、一般にヒト化抗体は、いくつかのCDR残基及び場合によりいくつかのFRの残基が齧歯類抗体中の類似部位由来の残基によって置換されているヒト抗体である。
【0082】
抗体は、抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持したままでヒト化されることが重要である。この目的を達成するために、好ましい方法によると、ヒト化抗体は、親並びにヒト化配列の3次元モデルを使用して親配列及び様々な概念上のヒト化産物を分析する過程によって調製される。3次元免疫グロブリンモデルが一般に利用可能であり、当業者によく知られている。選択した候補免疫グロブリン配列の予想される3次元立体配座構造を例示し、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これら表示の点検により、候補免疫グロブリン配列の機能性において可能性がある残基の役割の分析、即ちその抗原を結合する候補免疫グロブリンの能力に影響する残基の分析が可能になる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増加など、所望の抗体の特徴を実現するように、FR残基をコンセンサス及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に与える影響において直接且つ最も実質的に関係する。更なる詳細については、1991年6月14日に出願の出願第07/715,272号の一部継続出願である1992年8月21日に出願の米国特許出願第07/934,373号を参照のこと。
【0083】
D.ヒト抗体
ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ方法によって作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫及びマウスヒトヘテロ骨髄腫細胞系については、例えば、Kozbor、J.Immunol.133、3001頁(1984年)、及びBrodeur、ら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51〜63頁(Marcel Dekker、Inc.New York、1987年)に記述されている。
【0084】
免疫化により、内在性免疫グロブリン産生がない場合にヒト抗体レパートリーを産生する能力のあるトランスジェニック動物(例えばマウス)を産生することが、現在では可能である。例えば、キメラの及び生殖細胞系変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域遺伝子のホモ接合性欠失(J.sub.H)が、内在性抗体生成の完全な阻害をもたらすことが記述された。そのような生殖細胞系変異体マウスにおけるヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの移行は、抗原チャレンジによりヒト抗体の産生をもたらすことになる。例えばJakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90、2551〜255頁(1993年);Jakobovitsら、Nature 362、255〜258頁(1993年)を参照のこと。
【0085】
別法として、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら、Nature 348、552〜553頁[1990年])を使用して、免疫していないドナーの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからin vitroでヒト抗体及び抗体フラグメントを産生することができる。この技術により、抗体Vドメイン遺伝子は、M13又はfdのような繊維状バクテリオファージのメジャー若しくはマイナーコートタンパク質遺伝子にインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的抗体フラグメントとして提示される。
【0086】
繊維状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能特性に基づく選択の結果、その特性を呈する抗体をコードしている遺伝子が選択される。従って、ファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、様々な形式で実行することができ;その総説については、例えばJohnson、Kevin S.及びChiswell、David J.、Current Opinion in Structural Biology 3、564〜571頁(1993年)を参照のこと。V遺伝子区分のいくつかの供給源を、ファージディスプレイに使用できる。Clacksonら、Nature 352、624〜628頁(1991年)は、免疫化したマウスの脾臓から得られるV遺伝子の小さいランダムな組合せライブラリから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。Marksら、J. Mol.Biol.222、581〜597頁(1991年)、又はGriffithら、EMBO J.12、725〜734頁(1993年)に記述される技術に基本的に従って、免疫していないヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構築することができ、抗原(自己抗原を含める)の多様なアレイに対する抗体を、単離することができる。自然免疫応答において、抗体遺伝子は高率で突然変異を蓄積する(体細胞超変異)。導入された変更のいくつかは、より高い親和性を付与されることになり、高親和性表面免疫グロブリンを提示しているB細胞は、以降の抗原チャレンジの間に優先的に複製され、区別される。この天然の過程は、「チェーンシャッフリング」として公知の技術を利用することによって模倣することができる(Marksら、Bio/Technol.10、779〜783頁[1992年])。この方法において、ファージディスプレイによって得られる「初代」ヒト抗体の親和性は、免疫していないドナーから得られるVドメイン遺伝子の天然に存在するバリアント(レパートリー)のレパートリーで重鎖及び軽鎖V領域遺伝子を順次置きかえることによって改善することができる。この技術により、nM範囲の親和性を持つ抗体及び抗体フラグメントの産生が可能になる。ファージ抗体の非常に大きなレパートリー(別名「全体の母ライブラリ」[mother-of-all libraries])を作製するための戦略については、Waterhouseら、Nucl.Acids Res.21、2265〜2266頁(1993年)に記述されており、そのようなファージの大きなライブラリからの高親和性ヒト抗体の直接単離については、Griffithら、EMBO J.(1994年)印刷中、に報告されている。ヒト抗体が、初発齧歯類抗体と類似の親和性及び特異性を有する場合、遺伝子シャフリングを使用して、齧歯類抗体からヒト抗体を得ることもできる。「エピトープインプリンティング」とも称されるこの方法により、ファージディスプレイ技術によって得られる齧歯類抗体の重鎖又は軽鎖Vドメイン遺伝子は、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置きかえられ、齧歯類−ヒトキメラが作られる。抗原に対する選択により、機能的抗原結合部位を復元する能力があるヒト可変部分を単離する、即ちエピトープが、パートナーの選択肢を決定する(インプリント)。残っている齧歯類Vドメインを置きかえるためにこの過程を繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開されたPCT特許出願WO93/06213を参照のこと)。CDR移植による齧歯類抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この技術は、齧歯類起源のフレームワーク又はCDR残基を全く持たない完全なヒト抗体を提供する。
【0087】
E.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル、好ましくはヒト又はヒト化抗体である。この場合、結合特異性の1方は、アスプロシンに対してであり、他方は、他の任意の抗原、好ましくは別の受容体又は受容体サブユニットに対してである。例えば、アスプロシン及びアスプロシン受容体又は異なる2つのアスプロシン受容体を特異的に結合する二重特異性抗体は、本発明の範囲内である。
【0088】
二重特異性抗体を作製する方法は、当技術分野において公知である。伝統的に、2つの重鎖が異なる特異性を有する場合、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づく(Millstein及びCuello、Nature 305、537〜539頁[1983年])。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムに組み合わさることにより、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、1つだけが正しい二重特異性構造を有する10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生する。通常親和性クロマトグラフィー工程によって行われる正しい分子の精製は、かなり煩雑であり、産物収量が低い。類似の手順が、PCT出願公開番号WO93/08829(1993年5月13日に公開される)、及びTrauneckerら、EMBO 10、3655〜3659頁(1991年)に開示されている。
【0089】
異なるより好ましい手法によると、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を持つ抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。好ましくは、ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと融合される。融合体の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、及び必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクトする。こうすることで、構築において使用した3つのポリペプチド鎖の比が不均等だと収量が最適となる実施形態において、3つのポリペプチドフラグメントの相互の割合を調整する上で大きな柔軟性が得られる。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等しい比での発現が、高い収量をもたらす場合、又は比が特に重要でない場合、1つの発現ベクターに2つ若しくは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を挿入することが可能である。この手法の好ましい実施形態において、二重特異性抗体は、一方のアームにある第1の結合特異性を持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖、及び他方のアームにあるハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)からなる。二重特異的分子の片方にしか免疫グロブリン軽鎖がないことにより簡易な分離方法が可能になるので、この非対称の構造が、免疫グロブリン鎖の不要な組合せと所望の二重特異性化合物との分離を容易にすることが判明した。この手法は、1992年8月17日に出願の同時係属出願第07/931,811号に開示されている。
【0090】
二重特異性抗体の生成についての更なる詳細は、例えばSureshら、Methods in Enzymology 121、210頁(1986年)を参照のこと。
【0091】
F.ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体も、本発明の範囲内である。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。そのような抗体は、例えば、不要な細胞へ免疫系細胞を標的すること(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染の治療(PCT出願公開番号WO91/00360及びWO92/200373;欧州特許第03089号)に提唱された。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の都合のいい架橋方法を使用して作製することができる。適切な架橋剤は当技術分野において周知であり、米国特許第4,676,980号においていくつかの架橋技術と一緒に開示されている。
【0092】
III.体重増進を必要とする個体
本開示の実施形態は、体重増進を必要とする個体において体重を増加させる方法及び組成物を含む。個体は、例えば脂肪量の増加を必要とする場合がある。個体は、病状若しくは病態を含めた様々な理由又は別の理由により体重増進を必要とする場合がある。個体が、病状により低体重である場合、病状は、遺伝的な状態である場合もそうでない場合もあり、又は遺伝性の状態である場合もそうでない場合もある。特定の実施形態において、低体重の原因は、遺伝、代謝及び/又は疾患によるものであり得る。特定の実施形態において、病状は、症状として低体重である。いくつかの場合において、低体重になる症状は、その病状の全ての個体に存在するが、その病状の全てではない個体に存在する場合もある。低体重になる症状は、脂肪代謝調節、脂肪貯蔵及び炎症過程と関係のある経路の異常による場合があるが、いくつかの場合には、低体重は、脂肪代謝調節、脂肪貯蔵及び炎症過程と直接関係しない。個体は、いくつかの場合には、新生児早老症様症候群、マルファン症候群、HIV感染、甲状腺機能亢進症、癌、結核、胃腸若しくは肝臓問題、医薬副作用、又は神経性食欲不振症若しくは神経性過食症などの精神病により低体重になる場合がある。例えば、悪液質を有する個体は、本開示の方法及び組成物に供することができる。悪液質は、例えば、癌、AIDS、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、うっ血性心不全、結核、家族性アミロイド多発神経障害、水銀中毒、ホルモン不全症などを含めた任意の理由の結果であり得る。
【0093】
特定の実施形態において、体重増進を必要とする個体は、18.5未満の肥満指数(BMI)又は年齢及び身長群に対して正常より15%〜20%低い体重の個体である。本開示の方法及び組成物に供される個体は、先ずは体重増進を必要とすると開業医によって同定されることができ、体重を増加させるという特定の目的のために個体に治療用組成物を送達することができる。
【0094】
IV.体重増進を必要とする個体の治療
本開示の実施形態において、個体は、その体重を測定する及び/若しくはそのBMIを測定する並びに/又は脂肪量の測定のためにMRI及び/若しくは二重エネルギーX線吸収測定(DEXA)スキャンを行うなどによって体重増進を必要とするか決定される。個体は、体重増進を必要とすることが公知である又は体重増進が必要になる疑いがある若しくは体重増進が必要になるリスクがある場合がある。個体は、体重増進を必要とすることを自身で決定してもよく、及び/又は適切な開業医によって決定されてもよい。
【0095】
個体が、体重増進を必要とすることが公知である又は体重増進が必要になるリスクがある若しくはなりやすいことが公知になった時点で、アスプロシン若しくは機能的誘導体若しくは機能的フラグメントのその個体に適切且つ有効な量を与えることができる。特定の実施形態において、アスプロシン又は機能的誘導体若しくは機能的フラグメントの1つ若しくは複数を、例えば1つの組成物若しくは複数の組成物として個体に与える。アスプロシン又は機能的誘導体若しくは機能的フラグメントを含む組成物を、治療適用として特に製剤化することができる。
【0096】
個体に適切な用量のアスプロシンを、必要に応じて又は通常の治療計画の一部として与えることができる。個体は、アスプロシン又は機能的誘導体若しくは機能的フラグメントを取ることに加えて、体重を増やすために、他の方策及び/又は組成物を取ることもできる。個体は、毎日、毎週、毎月等で、アスプロシン又は機能的誘導体若しくは機能的フラグメントを取ることができる。個体は、飲食ありで又は空腹時にアスプロシン又は機能的誘導体若しくは機能的フラグメントを取ることができる。
【0097】
個体は、アスプロシン又は機能的誘導体若しくは機能的フラグメント治療計画の間中開業医によって監視されてもされなくてもよい。個体は、所望の体重が実現されたらアスプロシン又は機能的誘導体若しくは機能的フラグメントを取ることを中止でき、個体が、後の時点で体重を増やすことが必要になる場合、アスプロシン又は機能的誘導体若しくは機能的フラグメントを取ることを再開できる。過度に体重を増やす目的で、個体が、適切な量のアスプロシン又は機能的誘導体若しくは機能的フラグメントを超える際には、個体は、例えば運動、カロリー摂取量を減少させる、及び/若しくはアスプロシンのインヒビターを取ることを含めた任意の適切な手段によってその体重を減少させることができる。
【0098】
V.体重減少を必要とする及び/又はグルコース制御の改善を必要とする個体
本開示の実施形態は、体重減少を必要とする個体において体重を低下させる方法及び組成物を含む。個体は、例えば脂肪量の低下を必要とする場合がある。個体は、病状若しくは病態を含めた様々な理由又は別の理由により体重減少を必要とする場合がある。個体が、病状により体重減少を必要とする場合、病状は、遺伝的な状態である場合もそうでない場合もあり、及び遺伝性の状態である場合もそうでない場合もある。体重減少を必要とする原因は、遺伝、代謝及び/又は病気によるものであり得る。特定の実施形態において、病状は、症状として過体重又は肥満である。いくつかの場合において、過体重又は肥満になる症状は、その病状の全ての個体に存在するが、その病状の全てではない個体に存在する場合もある。過体重又は肥満になる症状は、脂肪代謝調節、脂肪貯蔵及び炎症過程と関係のある経路の異常による場合があるが、いくつかの場合には、過体重又は肥満は、脂肪代謝調節、脂肪貯蔵及び炎症過程と直接関係しない。個体は、糖尿病;甲状腺機能低下;メタボリックシンドロームを含めた代謝障害;医薬物による副作用;アルコール中毒;摂食障害;睡眠不足;運動不足;坐業的な生活様式;栄養不足;依存症停止;及び/又はストレスのせいで過体重若しくは肥満である場合があるが;いくつかの実施形態において、そのような状態は過体重又は肥満の結果である。
【0099】
特定の実施形態において、個体は、グルコース制御に異常が有り、そのような異常の改善を必要とすることが決定される。特定の実施形態において、グルコース制御における異常とは、個体の血中に過剰な量のグルコースがあるということである。特定の実施形態において、個体は、糖尿病若しくは前糖尿病性であり、過体重又は肥満である場合もそうでない場合もある。特定の実施形態において、個体に、アスプロシンの任意のインヒビターの1つ又は複数を有効量与えて、過剰な血糖のレベルを減少させることを含め血糖制御を改善する。このような治療を糖尿病性又は前糖尿病性個体に施すと、血糖制御の改善が見られる。血糖レベルの低下は、正常な血糖レベルである場合も又はそうでない場合もある。特定の実施形態において、血糖制御における改善に加えて、糖尿病又は前糖尿病の症状の1つ若しくは複数は、アスプロシンの1つ若しくは複数のインヒビターの投与により改善する。前糖尿病性個体の場合、糖尿病の発症は、アスプロシンの、1つ又は複数のインヒビターの使用により予防される。インスリン抵抗性個体の場合、アスプロシン阻害によりインスリン感受性の回復又は改善が得られ、特定の実施形態において、より良好なグルコースクリアランスを得られる。
【0100】
特定の実施形態において、体重減少を必要とする個体は、過体重(BMI 25〜29)又は肥満である(BMI 30以上)。本開示の方法及び組成物に供される個体は、先ずは体重減少を必要とすると開業医によって同定されることができ、体重を低下させるという特定の目的のために個体に治療用組成物を送達することができる。
【0101】
本開示の実施形態において、個体へのアスプロシン又は機能的誘導体若しくは機能的フラグメントの投与により、個体における糖尿病の発症はない。特定の実施形態において、個体は糖尿病である又は糖尿病でない。
【0102】
VI.体重減少を必要とする個体の治療
本開示の実施形態において、個体は、その体重を測定する及び/若しくはそのBMIを測定する並びに/又は脂肪量の判定のためにMRI及び/若しくはDEXAスキャンを行うなどによって体重減少を必要とするか決定される。個体は、体重減少を必要とすることが公知である又は体重減少が必要になる疑いがある若しくは体重減少が必要になるリスクがある場合がある。個体は、体重減少を必要とすることを自身で決定してもよく、及び/又は適切な開業医によって決定されてもよい。
【0103】
個体が、体重減少を必要とすることが公知である又は体重減少が必要になるリスクがある若しくはなりやすいことが公知になった時点で、アスプロシンのインヒビターのその個体に適切且つ有効な量を与えることができる。特定の実施形態において、アスプロシンインヒビターの1つ又は複数を、例えば1つの組成物若しくは複数の組成物として個体に与える。アスプロシンインヒビターを含む組成物を、治療適用として特に製剤化することができる。
【0104】
個体に適切な用量のアスプロシンインヒビターを、必要に応じて又は通常の治療計画の一部として与えることができる。個体は、アスプロシンインヒビターを取ることに加えて、体重を減らすために、他の方策及び/又は組成物を取ることもできる。個体は、毎日、毎週、毎月等で、アスプロシンインヒビターを取ることができる。個体は、飲食ありで又は空腹時にアスプロシンインヒビターを取ることができる。
【0105】
個体は、アスプロシンインヒビター治療計画の間中開業医によって監視されてもされなくてもよい。個体は、所望の体重が実現されたらアスプロシンインヒビターを取ることを中止でき、個体が、後の時点で体重を減らすことが必要になる場合、アスプロシンインヒビターを取ることを再開できる。過度に体重を減らす目的で、個体が、適切な量のアスプロシンインヒビターを超える際には、個体は、例えばカロリー摂取量を増加させる及び/又はアスプロシン若しくは機能的フラグメント若しくは機能的誘導体を取ることを含めた任意の適切な手段によってその体重を増加させることができる。
【0106】
VII.体重調節を必要とする個体の診断
特定の実施形態において、個体は、体内(例えば血漿中を含める)のアスプロシンのレベルに基づいて体重の増加が必要であると診断される又は体重の増加を必要としやすいと診断される。適切なサンプルは、個体から得ることができ、サンプルを得た当事者又は第3の当事者によって加工することができる。サンプルは、分析の前に適切な条件下で保管及び/又は運搬されることができる。特定の実施形態において、アスプロシンのレベルが特定のレベルより低いことが決定される場合、個体が、体重増進を必要とすることが公知である又は体重増進が必要になりやすいことが公知であり、適切な量のアスプロシン又はその機能的フラグメント若しくは機能的誘導体を個体に与える。特定の実施形態において、診断は、個体が体重増進を必要とする若しくは体重増進が必要になりやすいことを同定するためではなく、むしろ体重増進が必要になる又はそれに感受性になる原因を同定するために、アスプロシンレベルに基づいて行われる。
【0107】
特定の実施形態において、個体は、体内(例えば血漿中を含める)のアスプロシンのレベルに基づいて体重の低下が必要であると診断される又は体重の低下を必要としやすいと診断される。適切なサンプルは、個体から得ることができ、サンプルを得た当事者又は第3の当事者によって加工することができる。サンプルは、分析の前に適切な条件下で保管及び/又は運搬されることができる。特定の実施形態において、アスプロシンのレベルが特定のレベルより高いことが決定される場合、個体が、体重減少を必要とすることが公知である又は体重減少が必要になりやすいことが公知であり、適切な量の1つ又は複数のアスプロシンインヒビターが個体に与える。特定の実施形態において、診断は、個体が体重減少を必要とする若しくは体重減少が必要になりやすいことを同定するためではなく、むしろ体重減少が必要になる又はそれに感受性になる原因を同定するために、アスプロシンレベルに基づいて行われる。特定の場合において、肥満の個体は、過剰なアスプロシンの産生を引き起こす、フィブリリン−1(又はその領域)の複製を有することができる。
【0108】
体内のアスプロシンのレベルを同定する任意の適切な手段を、利用することができる。特定の実施形態において、サンドイッチELISA、ウェスタンブロット、競合放射性標識結合アッセイ、受容体活性アッセイ、及び/又はアスプロシン誘導細胞内/細胞外シグナル伝達カスケードの測定を利用して、アスプロシンの血漿レベルを同定する。
【0109】
VIII.医薬調製物
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる担体に溶解若しくは分散させた1つ若しくは複数のアスプロシン(又は機能的フラグメント又は機能的誘導体)又は1つ若しくは複数のアスプロシンインヒビターを有効量含む。句「薬学的又は薬理学的に許容できる」とは、必要に応じて例えばヒトなどの動物に投与した場合に、副、アレルギー又は他の有害反応を生じない分子的実体及び組成物のことを指す。Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版 Lippincott Williams及びWilkins、2005年に例示されるように、少なくとも1つのアスプロシン(又は機能的フラグメント又は機能的誘導体)又は少なくとも1つのアスプロシンインヒビターを含有する医薬組成物の調製は、本開示に照らして当業者に公知になり、参照により本明細書に組み込む。更に、動物(例えば、ヒト)投与の場合、調製物は、FDA Office of Biological standards(FDA Office of Biological standards)による要求に応じて無菌性、発熱性、一般的な安全性及び純度水準を満たすべきであることは理解されよう。
【0110】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容できる担体」は、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、香料、色素、当業者に公知のそのような材料及びその組合せを含む(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版 Mack Printing社、1990年、1289〜1329頁を参照のこと、参照により本明細書に組み込む)。従来の任意の担体が有効成分と適合しない場合を除き、医薬組成物におけるその使用が考えられる。
【0111】
アスプロシン(又は機能的フラグメント又は機能的誘導体)又はアスプロシンインヒビターは、それが固体、液体若しくはエアゾール形態で投与されるかどうか、それが注射のような投与経路のために無菌である必要があるかどうかによって、異なる型の担体を含むことができる。本発明は、静脈内、皮内、経皮的、くも膜下腔内、動脈内、腹膜内、鼻腔内、腟内、直腸内、局所、筋肉内、皮下、粘膜、経口、局所、局部的、吸入(例えばエアゾール吸入)、注射、注入、持続注入、標的細胞を直接浸す局所灌流、カテーテルによって、胃洗浄によって、クリームで、脂質組成物(例えば、リポソーム)で、又は当業者に公知の他の方法若しくは先述の任意の組合せによって投与することができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版 Mack Printing社、1990年を参照のこと、参照により本明細書に組み込む)。
【0112】
アスプロシン(又は機能的フラグメント又は機能的誘導体)又はアスプロシンインヒビターは、遊離塩基、中性若しくは塩形態で組成物へと製剤化することができる。薬学的に許容できる塩は、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基と形成される塩を含み、或は薬学的に許容できる塩は、例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸若しくはマンデル酸のような有機酸と形成される。遊離カルボキシ基と形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム若しくは水酸化第二鉄などの無機塩基;又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン若しくはプロカインのような有機塩基から得ることもできる。製剤において、溶液は、投与製剤に適合する方式で及び治療上有効になるような量で投与されることになる。製剤は、注射可能な溶液、若しくは肺へ送達するためのエアゾールのような非経口投与用として製剤化され、又は薬物放出カプセル剤等のような消化性投与用として製剤化されるなど様々な剤形で容易に投与される。
【0113】
更に本発明によると、投与に適切な本発明の組成物は、不活性希釈剤を含む又は含まない薬学的に許容できる担体中で提供される。担体は、吸収可能であるべきであり、液体、半固形、即ちペースト、又は固形担体を含む。任意の通常媒体、薬剤、希釈剤又は担体が、レシピエント若しくはそこに含有される組成物の治療有効性に不利益になる場合を除いて、本発明の方法を実践するのに使用する投与可能な組成物の使用は適当である。担体若しくは希釈剤の例には、脂肪、油、水、食塩水、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、充填剤等、又はその組合せがある。組成物は、1つ又は複数の成分の酸化を遅延させるために様々な酸化防止剤を含むこともできる。加えて、微生物活動の防止は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール又はその組合せを含むがこれに限定されない様々な抗菌剤及び抗真菌剤などの防腐剤によってもたらすことができる。
【0114】
本発明によると、組成物は、都合よく実用的な任意の様式、即ち溶液、懸濁液、乳化、混合物、封入、吸収等により担体と組み合わされる。そのような手順は、当業者にとって所定の仕事である。
【0115】
本発明の特定の実施形態において、組成物は、半固形若しくは固形担体と組み合わされる又は十分に混合される。混合は、粉砕など任意の都合の良い様式で実施することができる。組成物を治療活性の減少、即ち胃における変性から保護するために、混合過程において安定剤を添加することもできる。組成物用の安定剤の例には、緩衝液、グリシン及びリジンのようなアミノ酸、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトール等のような炭水化物がある。
【0116】
更なる実施形態において、本発明は、アスプロシン(又は機能的フラグメント又は機能的誘導体)又はアスプロシンインヒビター、1つ又は複数の脂質、及び水性溶媒を含む医薬品脂質ビヒクル組成物の使用に関することができる。本明細書で使用される場合、用語「脂質」は、特徴として水に不溶性であり有機溶剤で抽出可能な広範な任意の物質を含むと定義されることになる。この幅広いクラスの化合物は、当業者に周知であり、本明細書において用語「脂質」が使用されるように、どんな特定の構造にも限定されない。例には、長鎖脂肪族炭化水素及びその誘導体を含有する化合物がある。脂質は、天然に存在することができ、又は合成、(即ち、人間によって設計又は産生される)こともできる。しかしながら、脂質は通常生体物質である。生体脂質は当技術分野において周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、サルファタイド、エーテル及びエステル連結した脂肪酸を含む脂質及び重合性脂質、並びにその組合せがある。当然ながら、当業者によって脂質と理解される本明細書において特に記述したもの以外の化合物も、本発明の組成物及び方法に包含される。
【0117】
当業者は、脂質ビヒクルに組成物を分散させるために利用できる様々な技術に精通している。例えば、アスプロシン(又は機能的フラグメント又は機能的誘導体)又はアスプロシンインヒビターは、脂質を含有する溶液に分散され、脂質で溶解され、脂質で乳化され、脂質と混合され、脂質と組み合わせられ、脂質に共有結合され、脂質中に懸濁液として含有され、ミセル若しくはリポソームを含有する又はそれと複合体形成され、さもなければ当業者に公知のあらゆる手段によって脂質若しくは脂質構造と関連付けることができる。分散は、リポソームの形成を生じる場合も又は生じない場合もある。
【0118】
動物患者に投与される本発明の組成物の実際の投与量は、体重、状態の重症度、治療される疾患の型、以前の又は並列の治療的介入、患者の特発性疾患など身体的及び生理的因子並びに投与経路によって決定することができる。投与量並びに投与経路に応じて、好ましい投与量及び/又は有効量の投与の回数は、対象の応答によって変化し得る。投与に関して責任がある開業医は、いかなる場合も組成物中の有効成分の濃度及び個々の対象に対して適当な用量を決定することになる。
【0119】
特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば少なくとも約0.1%の活性化合物を含むことができる。他の実施形態において、活性化合物は、単位体重で約2%〜約75%、又は約25%〜約60%、例えば、これらから導き出せる任意の範囲を含むことができる。当然、適切な投与量が、所与の任意の単位用量の化合物で得られるように、治療上有用な各組成物において活性化合物の量を調製することができる。可溶性、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、産物貯蔵寿命、並びに他の薬理学的に考慮すべき点などの因子が、そのような医薬製剤を調製する当業者によって検討されることになり、従って、様々な投与量及び治療計画が望ましいものであり得る。
【0120】
他の非限定的な例において、用量は、投与当たり約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重から、約1000mg/kg/体重以上まで、及びこれらから導き出せる任意の範囲を含むこともできる。本明細書に挙げた数から導き出せる範囲の非限定的な例において、上記の数に基づいて、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重〜約500mg/kg/体重等の範囲を投与することができる。
【0121】
A.消化性組成物及び製剤
本発明の好ましい実施形態において、アスプロシン(又は機能的フラグメント又は機能的誘導体)又はアスプロシンインヒビターは、消化性経路によって投与するために製剤化される。消化性経路とは、組成物が消化管と直接接触する投与の考え得る全ての経路を含む。特に、本明細書に開示する医薬組成物は、経口、頬側、直腸又は舌下に投与することができる。従って、これらの組成物を、不活性希釈剤若しくは吸収可能な食用担体と共に製剤化することができ、又はそれらを堅い又は柔らかい殻のゼラチンカプセルに封入することができ、又はそれらを錠剤に圧縮することができ、又はそれらを治療食の食物に直接入れることができる。
【0122】
特定の実施形態において、活性化合物を賦形剤と組み合わせ、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル、懸濁剤、シロップ、ウエハー等の形態で使用することができる(Mathiowitzら、1997年;Hwangら、1998年;米国特許第5,641,515号;第5,580,579号及び第5,792,451号、各々特に参照によりその全体を本明細書に組み込む)。錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤等は:結合剤、例えばトラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチン又はその組合せなど;賦形剤、例えばリン酸二カルシウム、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム又はその組合せなど;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸又はその組合せなど;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムなど;甘味剤、例えばスクロース、ラクトース、サッカリン又はその組合せなど;賦香剤、例えばペパーミント、冬緑油、チェリー香味料、オレンジ香味料等などを含有することもできる。単位投与量形態がカプセルである場合、それは、上記の型の材料に加えて、液状担体を含有することができる。コーティングとして、さもなければ単位投与量の物理的な形態を修飾するために他の様々な材料が存在し得る。例えば、錠剤、丸剤又はカプセル剤は、セラック、糖、又は両方でコーティングすることができる。剤形がカプセルである場合、それは、上記の型の材料に加えて、液状担体などの担体を含有することができる。ゼラチンカプセル剤、錠剤又は丸剤は、腸溶性にコートすることができる。腸溶性のコーティングは、pHが酸性である胃又は上部腸における組成物の変性を防止する。米国特許第5,629,001号を参照のこと。小腸に達すると同時に、その中の塩基性pHは、コーティングを溶解させ、組成物の放出並びに特殊化した細胞、例えば上皮腸細胞及びパイエル板M細胞による吸収を可能にする。エリキシルのシロップは、活性化合物、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、色素並びにチェリー又はオレンジ風味などの香味料を含有することができる。当然ながら、任意の単位投与量形態を調製するのに使用される任意の材料は、薬学的に高純度であり、利用する量で実質的に非毒性であるべきである。加えて、活性化合物は、徐放性調製物及び製剤に組み入れることができる。
【0123】
別法として経口投与の場合、本発明の組成物は、1つ若しくは複数の賦形剤と共に、うがい薬、歯磨き剤、口腔錠、経口スプレー、又は舌下剤といった経口的に投与される製剤形態に組み入れることができる。例えば、うがい薬は、ホウ酸ナトリウム溶液(Dobellの溶液)など、適当な溶媒中に必要とされる量で有効成分を入れて調製することができる。別法として、有効成分は、ホウ酸ナトリウム、グリセリン及び重炭酸カリウムを含有している、若しくは歯磨き剤に分散されている、又は水、結合剤、研磨材、賦香剤、発泡剤及び湿潤剤を含むことができる組成物に治療上有効な量で添加されているなどの経口溶液に入れることができる。別法として、組成物は、舌下に置く、さもなければ口の中で溶解することができる錠剤又は液状に作ることができる。
【0124】
消化性の投与の他の様式に適している追加の製剤には、坐剤がある。坐剤は、様々な体重及び形状の固体剤形であり、直腸への挿入により通常投薬される。挿入後に、坐剤は、腔体液中で軟化、解ける又は溶解する。一般に、坐剤の場合、従来の担体は、例えば、ポリアルキレングリコール、トリグリセリド又はその組合せを含むことができる。特定の実施形態において、坐剤は、例えば、約0.5%〜約10%、及び好ましくは約1%〜約2%の範囲で有効成分を含有する混合物から形成することができる。
【0125】
B.非経口組成物及び製剤
更なる実施形態において、アスプロシン(又は機能的フラグメント又は機能的誘導体)又はアスプロシンインヒビターは、非経口経路によって投与することができる。本明細書で使用される場合、用語「非経口的」は、消化管を迂回する経路を含む。特に、本明細書に開示する医薬組成物は、例えば、それだけには限らないが、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、又は腹膜内に投与することができる、米国特許第6,7537,514号、第6,613,308号、第5,466,468号、第5,543,158号;第5,641,515号;及び第5,399,363号(各々を特に参照によりその全体を本明細書に組み込む)。
【0126】
遊離塩基又は薬理学的に許容できる塩である活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と最適に混合された水に調製することができる。分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びその混合物並びに油中に調製することもできる。貯蔵及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するための防腐剤を含有する。注射可能な使用に適した医薬形態には、無菌の水溶液若しくは分散剤及び無菌の注射可能な液剤又は分散剤の即時調製用の無菌の散剤がある(米国特許第5,466,468号、特にその全体を参照により本明細書に組み込む)。全ての場合において、形態は、無菌でなければならず、簡単な注射能力が存在する程度に液性でなければならない。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌など、微生物の汚染作用に備えて保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(即ち、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、その適当な混合物並びに/又は植物油を含有する溶媒若しくは分散媒であってもよい。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散剤の場合には必要とされる粒子サイズを維持することにより、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によって得ることができる。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましくなる。注射可能な組成物の持続的吸収は、組成物における遅延吸収薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によって得ることができる。
【0127】
水溶液での非経口投与の場合、例えば、溶液は、必要に応じて適当に緩衝され、液体希釈剤は充分な生理食塩水又はグルコースで先ず等張性にするべきである。これらの特定の水溶液は、特に静脈内、筋肉内、皮下及び腹膜内投与に適している。これに関して、利用できる滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知になる。例えば、1投与量を、等張性NaCl溶液に溶解し、皮下注入液を添加するか又は提唱された注入の部位で注射するかいずれかが可能である(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、1035〜1038頁及び1570〜1580頁を参照のこと)。投与量のいくつかの変形は、治療される対象の状態によって必然的に生ずることになる。投与に関して責任がある者は、いかなる場合も、個々の対象に対して適当な用量を決定することになる。更に、ヒト投与の場合、調製物は、FDA Office of Biologics standards(FDA Office of Biologics standards)による要求に応じて無菌性、発熱性、一般的な安全性及び純度水準を満たすべきである。
【0128】
無菌の注射可能な溶液は、上に挙げた他の様々な成分を含む適当な溶媒に活性化合物を必要量入れ、必要に応じてその後ろ過殺菌することにより調製される。一般に、分散剤は、無菌化した様々な有効成分を、塩基性分散媒及び上に挙げた他の成分から必要とされるものを含有する無菌のビヒクルに入れることによって調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌の散剤の場合、好ましい調製の方法は、有効成分の粉末+事前に無菌ろ過した溶液から追加の所望の任意の成分を産する真空乾燥及び凍結乾燥技術である。粉末状の組成物は、安定剤を含む又は含まない液状担体、例えば水又は食塩水などと組み合わせられる。
【0129】
C.多岐にわたる医薬組成物及び製剤
本発明の他の好ましい実施形態において、活性化合物アスプロシン(又は機能的フラグメント又は機能的誘導体)又はアスプロシンインヒビターは、様々な多岐にわたる経路、例えば局所(即ち、経皮的)投与、粘膜投与(鼻腔内、膣等)及び/若しくは吸入による投与用として製剤化することができる。
【0130】
局所投与用の医薬組成物は、軟膏、パスタ剤、クリーム又は散剤など医薬用途のために製剤化された活性化合物を含むことができる。軟膏剤は、局所適用のための油性、吸着性、乳液性及び水溶性全てに基づく組成物を含むが、クリーム及びローション剤は、乳液性基材だけを含む組成物のものである。局所的に投与する医薬物は、表皮を経由する有効成分の吸着を容易にするための浸透促進剤を含有することができる。適切な浸透促進剤には、グリセリン、アルコール、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドン及びラウロカプラムがある。局所適用のための組成物用として可能な基剤には、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリーム及びワセリン並びに他の任意の適切な吸収性、乳液性又は水溶性軟膏基剤がある。局所調製物は、有効成分を保存し、混合物が均質になるようにするために、必要に応じて乳化剤、ゲル化剤及び抗菌性防腐剤を含むこともできる。本発明の経皮投与は、「パッチ剤」の使用を含むこともできる。例えば、パッチ剤は、既定の速度で及び一定の期間にわたり連続的な様式で1つ又は複数の活性物質を供給することができる。
【0131】
特定の実施形態において、医薬組成物は、点眼薬、鼻腔内スプレー、吸入及び/又は他のエアゾール送達ビヒクルによって送達することができる。例えば、鼻エアゾールスプレーにより肺に組成物を直接送達する方法は、米国特許第5,756,353号及び第5,804,212号に記述されている(各々を特にその全体を参照により本明細書に組み込む)。同様に、鼻腔内微小粒子樹脂(Takenagaら、1998年)及びリゾホスファチジルグリセロール化合物(米国特許第5,725,871号、特にその全体を参照により本明細書に組み込む)を使用する薬物の送達も、医薬品技術分野において周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達については、米国特許第5,780,045号に記述されている(特にその全体を参照により本明細書に組み込む)。
【0132】
用語エアゾールとは、液状又は加圧ガス噴射剤中に分散された液体粒子の微粉化した固体のコロイド系のことを指す。吸入用としての本発明の典型的なエアゾールは、液体噴射剤、又は液体噴射剤及び適切な溶媒の混合物中の有効成分の懸濁液からなることになる。適切な噴射剤には、炭化水素及び炭化水素エーテルがある。適切な容器は、噴射剤の圧力要件により異なることになる。エアゾールの投与は、対象の年齢、体重並びに症状の重症度及び応答によって変わることになる。
【0133】
IX.本開示のキット
本明細書に記述される組成物のいずれかが、キットに含まれ得る。非限定的な例において、アスプロシン(又は機能的フラグメント若しくは機能的誘導体)及び/又はアスプロシンインヒビターが、キットに含まれ得る。従ってキットは、適切な容器手段中に、アスプロシン(又は機能的フラグメント若しくは機能的誘導体)及び/又はアスプロシンインヒビターを含むことになる。
【0134】
キットの成分は、水性媒体又は凍結乾燥形態で梱包することができる。キットの容器手段は、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、注射器又は他の容器手段を一般に含むことになり、その中に成分は入れられ、好ましくは適当にアリコートされ得る。2つ以上の成分がキットの中にある場合、キットは、追加の成分を別々に入れることができる第2、第3又は他の追加の容器を一般に含有することにもなる。しかしながら、様々な組合せの成分をバイアルに含めることができる。本発明のキットは、商品販売用として厳重に封をした、アスプロシン(又は機能的フラグメント若しくは機能的誘導体)及び/又はアスプロシンインヒビター並びに他の任意の試薬容器を含有する手段も一般に含むことになる。そのような容器には、注射又は所望のバイアルが保持されるブロー成形したプラスチック容器があり得る。
【0135】
キットの成分が、1つ及び/又はより多くの液体として提供される場合、液体は水溶液であり、無菌の水溶液が特に好ましい。アスプロシン(又は機能的フラグメント又は機能的誘導体)又はアスプロシンインヒビター組成物は、注射可能な組成物に製剤化することもできる。その場合、容器手段は、それ自体が注射器、ピペット及び/若しくは他のそのような装置であってよく、製剤を、それらから身体の感染域に適用し、動物に注射し、並びに/又はキットの他の成分に適用する及び/若しくはそれと混合することさえできる。
【0136】
しかしながら、キットの成分は、乾燥粉末として提供することができる。試薬及び/又は成分が乾燥粉末として提供される場合、粉末は、適切な溶媒の添加によって再構成できる。溶媒も別の容器手段で提供され得ることが想定される。
【0137】
本発明のキットは、例えば、注射及び/又は所望のバイアルが保持されるブロー成形プラスチック容器など、商品販売用として厳重に封をしてバイアルを含有するための手段を一般に含むことになる。
【0138】
キットは、それぞれ、食欲刺激薬又は食欲抑制薬として製剤化されたアスプロシン(又は機能的フラグメント又は機能的誘導体)若しくはアスプロシンインヒビターを含むことができる。
【0139】
特定の実施形態において、キットは、例えば食欲抑制薬若しくは食欲刺激薬を含めた、体重減少若しくは体重増進のための1つ又は複数の組成物を更に含む。特定の実施形態において、キットは、個体並びに/若しくはその処理工程からサンプルを得るための1つ又は複数の装置及び/若しくは試薬を含む。
【実施例】
【0140】
以下の実施例を、本発明の好ましい実施形態を実証するために含める。続く実施例において開示される技術は、本発明の実践においてよく機能するように本発明者によって発見された技術を表し、従って、その実践に対して好ましい様式を構成すると考え得ることを当業者は認識するべきである。しかしながら、本開示に照らして、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、開示されている特定の実施形態に多くの変更を施してもなお、同様の又は類似の結果を得られることを当業者は認識するべきである。
【0141】
実施例1
最適な脂肪量を維持するために重要な脂肪由来ポリペプチドホルモン
新生児早老症様症候群(NPS)関連脂肪異栄養症
NPSは、顔面及び四肢に主に影響を及ぼす皮下脂肪組織の減少による先天性のるい痩によって特徴づけられる(Hou、ら、2009年;O’Neill、ら、2007年)。表現型は、皮下脂肪の不足によりやせた表皮及び浮き出た脈管構造により出生時に(及び子宮内成長遅延として出生前でも)一般に明らかである(O’Neill、ら、2007年)。患者は、全ての年齢で、年齢における正常より、標準偏差の数倍だけ低い肥満指数(BMI)を示す(O’Neill、ら、2007年)。NPS患者は、顔面異形の特徴及び皮下脂肪の減少ため早老性のように見えるが、白内障、若白髪又はインスリン抵抗性など真性の早老症の通常の特徴を有さない(O’Neill、ら、2007年)。臨床検査によって、2名の個体をNPSと同定し、そのるい痩表現型を駆動する機序が本明細書において特徴づけられる。両方の患者のBMIは極度に低く(
図1b)、臀筋範囲を相対的に残して顔面及び四肢に主に影響を及ぼす皮下脂肪の減少を肉眼的に示す(
図1a)。両方の患者の空腹時血漿グルコース及びインスリンレベルが正常なことは、その患者のインスリン感受性及びグルコース処理が正常であることを示唆する(O’Neill、ら、2007年)。その患者が、家族でただ一人の罹患したメンバーであることから、潜在的de novo突然変異又は劣性遺伝であることがまず示唆される(
図1b)。
【0142】
全エキソーム配列決定により、NPSにおける3’FBN1突然変異が同定される
全エキソーム及びサンガー配列決定の組合せにより、両方の患者のFBN1遺伝子におけるde novoヘテロ接合性、3’突然変異が同定された(
図1b、1c)。類似の症例に関する文献検索により、同一の表現型とFBN1 3’トランケーション突然変異の両方について記述している5つの症例報告が発見された(Graul−Neumann、ら、2010年;Horn及びRobinson、ら、2011年;Goldblatt、ら、2011年;Takenouschi、ら、2013年;Jacquinet、ら、2014年)。7例全ての患者(本開示のそれを含む)が、NPSと診断され、全員が、およそ8600塩基対のコード領域の71塩基対区分内にトランケーション突然変異を有していた(
図1c)。最後から2番目のエクソンの3’ 50ヌクレオチドに起こる突然変異の7つ全て(
図1c)で、ナンセンス変異依存分解が回避されており、フレームシフトによりフィブリリン−1タンパク質のC末端トランケーションを生ずると予測される(
図1d)。FBN1は、眼、大動脈など大血管及び骨格に一般に影響を及ぼす結合組織障害であるマルファン症候群と関連する遺伝子である(Pyeritz、ら、2009年)。患者は、一般に長身で、痩せており、その高さと比較して指端距離が長い(Pyeritz、ら、2009年)。本開示の患者は、古典的なマルファン症候群患者と大きく異なるように見えたが、注意深い身体的検査により、本開示の患者においてマルファン症候群の診断のための改定されたGhent疾病分類に基づくマルファン症候群の特徴のを有することが分かった(Loeys、ら、2010年)。これは、FBN1に3’突然変異を持つNPSに関連する、公開されている5つの症例報告によって確証された(Graul−Neumann、ら、2010年;Horn及びRobinson、ら、2011年;Goldblatt、ら、2011年;Takenouschi、ら、2013年;Jacquinet、ら、2014年)。従って、これらのNPS患者は、マルファン症候群の表現型(脈管、眼、骨格の特徴)と部分的な脂肪異栄養とを兼ね備える。脂肪異栄養は、NPS患者に固有の外見を与えるため、関連するマルファン症候群を診断する作業が相対的に難しい。これにより、これら患者においてFBN1突然変異が同定されるまでの数十年にわたって、NPSが、マルファン症候群とつながりのないそれ自身の固有の臨床的存在であると記述されいた理由が説明できる(OMIM 264090)。フィブリリン−1は、モジュラータンパク質であり、その中で異なるモジュールに影響を及ぼす突然変異が、異なる表現型(マルファン症候群、先端短肢異形成症、幸福顔貌骨異形成症、スティッフスキン症候群[Stiff skin syndrome]、ヴェィユ−マルケサーニ症候群)をもたらす(Pyeritz、ら、2009年;Davis、ら、2012年)。従って、更に別の症候群とフィブリリン−1突然変異との関連は、意外でない。臨床及び分子診断の確定により、本実施例は、フィブリリン−1 C末端トランケーション突然変異が脂肪異栄養をもたらす機序を解明する。
【0143】
FBN1は、白色脂肪組織において高く及び動的に発現される
FBN1は、皮下脂肪の減少したNPS表現型と一致して、ヒト脂肪組織において高レベルで発現する(Biogps.org、ホモサピエンスプローブセット:202765_s_at)。マウスにおいて、Fbn1は、褐色脂肪組織及び骨格筋と比較して白色脂肪組織において特異的に発現する(
図2a)。脂肪細胞へのヒト前脂肪細胞の分化は、FBN1発現の増加をもたらした(
図2b)、一方で高脂肪食に数週間曝露したマウスにおいて鼠径部脂肪組織におけるFbn1発現の減少が、観察された(
図2c)。
【0144】
アスプロシンは、循環する、プロフィブリリンのC末端切断産物である
フィブリリン−1は、2871アミノ酸プロタンパク質として作製され、細胞から分泌され、フーリンと呼ばれる細胞外プロテアーゼによってC末端で切断される(Milewicz、ら、1995年;Ritty、ら、1999年;Raghunath、ら、1999年;Wallis、ら、2003年)。これにより、140アミノ酸のC末端切断産物(CTポリペプチド)が放出され、細胞外基質成分として働く成熟フィブリリン−1が得られる(Milewicz、ら、1995年;Ritty、ら、1999年;Raghunath、ら、1999年;Wallis、ら、2003年)。7つ全てのNPS突然変異は、切断部位の周りに集中しており、CTポリペプチドにヘテロ接合性の欠失を生じる(
図1d)。CTポリペプチドは、タンパク質の他の部分と比較して最も高い進化的な保存性を示し、他の種と比較した場合、生物学的に重要な役割を示唆する(
図3a、3b)。正常な生理的条件下で、CTポリペプチドは、安定なままであり、NPS表現型に関連して独立した機能を有すると考えられた。ウェスタンブロッティングにより、ヒト及びマウスの血漿において固有の、少しの16kDa交差反応実体の存在が確認された(
図3c、3d)。肥満マウス及びヒトからの血漿を使用すると、両方の種においてCTポリペプチドのレベルが、体脂肪蓄積に比例していることが判明した(
図3c、3d)。FBN1は、白色脂肪組織において高発現し、NPS表現型は、白色脂肪量の減少によって臨床的に区別されるので、CTポリペプチドは、ギリシア語の「白」であるAsprosに因んでアスプロシンと命名された。
【0145】
アスプロシンは、NPS関連脂肪生成分化異常をin vitroでレスキューする
NPS突然変異の影響を、NPS患者及び非罹患の対照対象の皮膚線維芽細胞を使用してin vitroで細胞の脂肪生成分化に関して試験した。細胞を、いくつかの転写因子及び脂肪特異的遺伝子の発現の増加を誘導する脂肪生成誘導カクテルに7日間曝露した(Jaager、ら、2012年)。WT細胞と比較して、NPS変異体線維芽細胞は、脂肪生成分化が著しく損なわれていた(
図4a)。この異常は、WT FBN1又は分泌形態のアスプロシンのいずれかの過剰発現によってレスキューできるが(
図4d)、シグナルペプチド無しで発現し結果として細胞内にトラップされるアスプロシンではレスキューされない(
図4c、4e、4f)。アスプロシンの脂肪生成効果が作用するのが細胞外であることを確認するために、組換えアスプロシンを、大腸菌に生成させた。培地への組換えアスプロシンの添加は、WT細胞における脂肪生成分化を促進し(
図4g)、NPS変異体細胞における脂肪生成異常をレスキューするのに十分であった(
図4h)。
【0146】
高い循環アスプロシンは、肥満性及び糖尿病誘発性である
先ずはin vivoでのアスプロシンの効果を試験するために、それを、標準的な食事を給餌したWTマウスにおいてCMVプロモーターの制御下にWT FBN1又はGFPのcDNAを保有するアデノウイルスを使用して肝臓で発現させた。大量のアスプロシンが、FBN1アデノウイルスに曝露したマウスの循環血液中に存在していた(
図7)ことは、肝臓によるプロフィブリリンの正しい分泌及び切断を示唆した。アデノウイルス注射の10日後、マウスに対するMRIスキャンは、循環アスプロシンがより多いマウスにおいて2.5倍の脂肪量の増加を示したが(
図5a)、非脂肪量に変化はなかった(
図5b)。そのようなマウスの体重は、対照マウスのそれと比べて比例して増加した(
図5c)。
【0147】
第2の手法は、標準的な食事を給餌したWTマウスにおいて10日間の高度に精製した組換えアスプロシン又はGFPの毎日の皮下注射を利用した。アデノウイルス手法と同様に、10日間毎日の皮下アスプロシン注射は、GFP注射と比較して脂肪量の著しい増加を引き起こした(
図5d)。アデノウイルス実験に対して、アスプロシン及びGFP注射されたマウスの両方の非脂肪量は、わずかであるが、著しい低下(
図5e)を示し、これは毎日の取扱い並びに注射によりマウスに掛かったストレスを反映した可能性がある。とにかく、両方の手法により、循環アスプロシン量の急速な増加が、in vivoで脂肪増加を駆動することが実証された。両方の実験において、鼠径部白色脂肪の顕微鏡検査は、アスプロシンに曝露したマウスにおいてより大きな脂肪細胞体積を示した(
図8)。これらのマウスにおけるより多い体脂肪蓄積と整合して、より高レベルの血漿レプチン及びアディポネクチンが存在していた(
図9)。これらは、循環レベルが脂肪量に正比例することが公知の脂肪由来ホルモンである。同時に、より低レベルの血漿トリグリセリド及び遊離脂肪酸が存在していたが(
図10)、これは、より大きな脂肪細胞におけるより大きな脂質貯留を反映している可能性がある。
【0148】
より多くの循環アスプロシンに曝露したマウスにおいて肥満が始まったと考えて、これらの動物においてグルコースホメオスタシスをアッセイした。絶食し、アスプロシン処理したマウスが、高血糖及び高インスリン血症を示したことは(
図11)、インスリン抵抗性を示唆した。グルコース及びインスリン負荷試験の両方が、高い循環アスプロシンの糖尿病誘発性効果と整合した(
図5g、5h、5i、5j)。肥満及びインスリン抵抗性の状態と一致して、より多くの循環アスプロシンに曝露した動物の肝臓において脂質蓄積は増加した(
図12)。要約すると、循環アスプロシンの急速な増加は、マウスにおいて強力な肥満性及び糖尿病誘発性効果を有することが判明した。
【0149】
トランケートされたプロフィブリリンの優性阻害効果
極度に無脂肪であることに加えて、NPS患者は、インスリン感受性でもある(O’Neill、ら、2007年)。過度の循環アスプロシンに曝露したマウスの反対の生理的プロファイルは、NPS表現型が、循環アスプロシンレベルの減少による可能性があることを裏付ける。そのヘテロ接合遺伝子型からは、NPS患者が、非罹患の対照と比較して半分の循環アスプロシンを有するはずであることが予測されるが、これらの患者において循環アスプロシンは検出できなかった(
図6a)。CTポリペプチドは、細胞からのプロフィブリリン分泌に必要であることが最近示された(Jensen、ら、2014年)。その非存在下では、ナンセンス変異依存分解を回避した、トランケートされたプロフィブリリンは、細胞内にトラップされたままである(Jensen、ら、2014年)。従って、NPSにおける変異体であるトランケートされたプロフィブリリンは、優性阻害様式で作用して、WT対立形質のプロフィブリリンの分泌を妨げると考えられた。これは、少なくとも、ナンセンス変異依存分解を受ける、又は遺伝子全体が欠失される(その両方ともトランケートされたプロフィブリリンを発現できない)、よりN末端側でのトランケーションがある患者において、NPS表現型が古典的なマルファン症候群と異なる理由も説明できる。この理論を試験するために、アスプロシンのレベルを、NPS細胞及びトランケートされたプロフィブリリン変異体の過剰発現があるWT細胞からの細胞培養培地でアッセイした。両方の例において、予想通り、培地中のアスプロシンレベルが著しく減少した(
図6b、6d)。加えて、WT細胞における変異体プロフィブリリンの過剰発現が、培地へのフィブリリン−1分泌の量を減少させるのに十分だったことは、NPSで見られるマルファン症候群表現型に対する病因の優性阻害様式を示唆した(
図13)。
【0150】
方法
研究対象及び倫理記載
ベイラー医科大学における施設内倫理委員会に承認された3つのプロトコールのうち1つの下で、参加の前に全ての対象からインフォームドコンセントを得た。
【0151】
臨床評価
臨床医は、直接の既往歴、物理学的検査及び家族の既往歴の分析によって研究対象を評価した。医療記録及び注釈の形態で臨床情報を再検討した。これらの対象との問診は、電話によっても行った。家族を、患者と一緒に面談した。利用可能である場合はいつでも、以前の診断研究、手術の報告又は放射線学的研究からの報告を再検討した。インフォームドコンセントの後に、皮膚線維芽細胞を単離するための皮膚生検を、適当な麻酔及び一般的な予防措置下で実行した。
【0152】
全エキソームの捕捉及び配列決定
患者番号1及び彼女の両親からのゲノムDNAを、全エキソーム配列決定に供した(トリオ分析)。全エキソーム配列決定に利用される方法は、以前に詳細に記載されている(Lupski、ら、2013年)。要約すれば、ゲノムDNA 1mgを、Covarisプレート(Covaris、Inc.Woburn、MA)中で超音波処理により断片化した。ゲノムDNAサンプルを、記述されている通りIlluminaペアエンドライブラリに構築した(Lupski、ら、2013年)。前捕捉ライブラリを、BCM−HGSC CORE exome capture designと一緒にプールし、溶液中でハイブリダイズさせた(Bainbridge、ら、2011年)(52Mb、Nimble−Gen)。捕捉したDNAフラグメントを、1サンプルにつき9〜10Gb産生するIllumina HiSeq 2000プラットフォームで配列決定し、206以上の最少深度までカバーされる標的エキソーム塩基を平均90%達成した。
【0153】
データ分析
産生した配列リードを、HGSC Mercury分析パイプラインを使用してGRCh37(hg19)ヒトゲノム参照アセンブリにマップし、整列した。Atlas2スイートを使用してバリアントを決定し、コールして、バリアントコールファイル(VCF)を産生した高品質のバリアントを、組織内で開発したアノテーションツールのスイートを使用してアノテーションした。
【0154】
サンガー配列決定
患者番号2のゲノムDNAを、サンガー配列決定に供した。プライマー3を使用してFBN1遺伝子のイントロン−エクソン境界を含むエクソン65及び66を包含するようにプライマーを設計した。サンガーリードを、Lasergene Seqmanソフトウェアを使用して分析した。
【0155】
動物
10週齢の雄のWT C57/Bl6マウスを、全てのin vivo研究に使用した。マウスを、檻当たり2〜5匹で、12時間の明/12時間の暗周期で、飼料及び水への不断の接近ありで飼育した。尾静脈注射により、マウスを、アデノウイルス媒介遺伝子導入(マウス当たり10
11個ウイルス粒子)に曝露した。皮下注射により、マウスに、2.6μM Hisタグ組換えアスプロシン又は組換えGFPを10日間、毎日注射した。ウイルス注入又はペプチド注射の10日間後にマウスを屠殺し、血漿及び様々な器官を摘出した。ベイラー医科大学動物飼育利用委員会は、全ての実験を承認した。
【0156】
FBN1及びGFPアデノウイルス
FBN1 cDNAを保有するアデノウイルスを、標準的なAd5ベクター系を使用してCMVプロモーターの制御下にFBN1コード領域をクローニングすることにより作った。対応するGFPアデノウイルスを、ベイラー医科大学ベクター開発コアから購入した。
【0157】
組換えアスプロシン及びGFP
ヒトFBN1(2732〜2871アミノ酸)cDNAを、クローニングし、大腸菌において発現させるためにpSPEプラスミドにその後サブクローニングした。大腸菌に発現させた融合タンパク質は、N末端に6個のアミノ酸Hisタグ及び140アミノ酸の野生型C末端FBN1(2732〜2871アミノ酸)から構成される長さ146アミノ酸である。HisタグGFPを、対照ポリペプチドとしてThermo Scientificから購入した。
【0158】
身体組成及び血清分析
身体組成を、ECHO−MRIシステム(Echo medical systems、Texas)で分析した。マウス血清を、心穿刺によって得られる血液から調製し、COBAS Integra 400 plus analyzer(Roche)で分析した。マウスレプチンELISAキット(Millipore)、NEFA C テストキット(Wako)、マウスアディポネクチンELISAキット(Millipore)及び血清/血漿トリグリセリド検出キット(Sigma)を使用することにより、血漿レプチン、FFA、アディポネクチン及びトリグリセリドレベルをそれぞれ測定した。
【0159】
組織検査
マウス鼠径部脂肪組織サンプルを、H&E染色のために10%ホルムアルデヒドに固定した。凍結肝臓をオイルレッドO染色に使用して、肝臓トリグリセリド含有量を評価した。
【0160】
グルコース負荷試験(GTT)及びインスリン負荷試験(ITT)
GTTの場合、空腹期間の6時間後に1.5gグルコース/kg体重の腹腔内注射を実行した。ITTの場合、空腹期間の4時間後にレギュラーインスリン(ヒューマリンR;0.75単位/kg体重)の腹腔内注射を投与した。血糖値を、血糖計(Life Scan)を使用して測定した。
【0161】
発現ベクター
WT FBN1(アミノ酸1〜2871)、140アミノ酸アスプロシン(アミノ酸2732〜2871)及びN末端で天然の27アミノ酸のFBN1シグナルペプチドと結合したアスプロシン(アミノ酸1〜27+アミノ酸2732〜2871)を、pCMV6−Neoベクター系を使用してCMVプロモーターの制御下にサブクローニングした。GFPを発現する同じベクター又は空のベクターを、対照として使用した。
【0162】
細胞培養
NPS対象から単離したヒト皮膚線維芽細胞又は非罹患の対照対象由来WT皮膚線維芽細胞を、標準的なプロトコールを使用して脂肪生成分化に供した。脂肪生成を刺激するために、培地を2μMインスリン、1μMデキサメタゾン、0.25mMイソブチルメチルキサンチン及び10−7Mロシグリタゾンで7日間補充した。in vitro遺伝子導入には、発現プラスミドを用いる標準的なトランスフェクション方法を使用した。
【0163】
RNA及びタンパク質分析
標準的なRNA抽出手順(Qiagen製RNeasy Mini Kit)を利用した。逆転写を、製造者のプロトコールを使用してSuperscript IIIキット(Invitrogen)を使用して実施した。遺伝子発現分析の場合、QPCRを、Roche製配列特異的プライマー及びプローブ(Universal Probe Library)を使用して実行した。TBPを、全ての遺伝子発現アッセイの内部対照として使用した。ウェスタンブロッティングを、アスプロシンに対した作られたマウスモノクローナル抗体を使用して血漿又は細胞培養培地に対して標準的な方法を使用して実行し、その抗体はAbnova(カタログ番号H00002200−M01)から購入した。フィブリリン−1に対するマウスモノクローナル抗体を、Abcam(カタログ番号ab3090)から購入した。培地に対するウェスタンブロッティングの場合、細胞を7日間脂肪生成分化に供し、続いて誘導培地をMediatech製のCellgro ITS(インスリン、トランスフェリン、セレニウム)で補充した無血清DMEMで3日間置き換える。そのとき、ウェスタンブロッティングを始める前に、培地を、Amicon Ultra−2 Centrifugal filter unitを使用して濃縮した。
【0164】
統計的方法
全ての結果を、平均±SEMとして示した。必要に応じて、P値を、対応のないスチューデントt−検定又はANOVAによって算出した。
*P<0.05、
**P<0.01及び
***P<0.001。
【0165】
実施例2
フィブリリン−1 C末端ポリペプチドの機能獲得のin vivo影響の決定。
フィブリリン−1タンパク質は、50年前に同定された(Guba、ら、1964年)。細胞外基質の維持におけるその機能(特に大動脈平滑筋における)並びに健康及び疾患におけるその役割について多くが公知である(Davis及びSummers、ら、2012年;Reinhardt、ら、1995年)。その構造は「モジュール状」であることが知られており、つまり、タンパク質の異なる部分における突然変異が異なる臨床予後をもたらす。そのように、その突然変異は、マルファン症候群、先端短肢異形成症、幸福顔貌骨異形成症、スティッフスキン症候群及びヴェィユ−マルケサーニ症候群と関連する(Davis及びSummers、2012年)。全エキソーム配列決定及び既存の文献を使用して、それは、新生児早老症様症候群(NPS)として公知の稀な、るい痩障害とも関連する。
【0166】
NPSは、皮下脂肪組織の急激な減少によりるい痩をもたらす常染色体優性遺伝性障害である(
図1)(O’Neill、ら、2007年;Hou、ら、2009年)。患者の表現型は、特にその脂肪異栄養に関して、古典的なマルファン症候群とは別であるが重複する(Graul−Neumann、ら、2010年;Takenouchi、ら、2013年;Horn、ら、2011年;Goldblatt、ら、2011年)。従って、突然変異の部位及び型を、差異を説明するために特徴づけた。本開示において2例の患者を同定し、4例は以前に記載されており(Graul−Neumann、ら、2010年;Takenouchi、ら、2013年;Horn、ら、2011年;Goldblatt、ら、2011年)全てが、FBN1の最後から2番目のエクソンにおけるC末端トランケーション突然変異を有していた。これらの6つのトランケーション突然変異は、約8600bpの遺伝子において互いに70bp以内ある。特に、脂肪異栄養は、FBN1の他の部分に見つかった突然変異と関連して記述されてこなかったので、これらの変異体タンパク質の中で共有される特徴が、脂肪生物学に何らかの影響を及ぼすことは明らかである。これらの研究は、通常親タンパク質から切断され(Ritty、ら、1999年;Raghunath、ら、1999年;Wallis、ら、2003年;Milewicz、ら、1995年)、その後細胞から分泌されるそれぞれ独立に機能するフィブリリン−1 C末端ポリペプチドを明らかにした。予備実験は、C末端ポリペプチドのハプロ不全が、異常脂肪分化をもたらすことを示した。目的は、このポリペプチドの過剰発現が、WT及び脂肪異栄養症マウスの脂肪量を増やすのに十分かどうか特徴づけることである。これは、脂肪量の減少をもたらす全身性及び局所性両方の脂肪異栄養症状態に対し直接的な治療的意味を持ち得る。
【0167】
in vivo脂肪ホメオスタシスにおいてフィブリリン−1 C末端ペプチドが十分であるとする予測を吟味することができる。これらの研究は、脂肪増大能力に対するC末端ペプチドの影響を、組換えC末端ポリペプチド及びそのcDNAを保有するアデノウイルスで処理したマウスにおいて評価することができる。包括的な遺伝子発現及び代謝学データセットを得、それらに対しデータマイニングを行って、フィブリリン−1 C末端ポリペプチドによって利用される経路について試験可能な仮説を構築することができる。
【0168】
実験手法:
A.マウスにおいて組換えフィブリリン−1 C末端ポリペプチド及びGFPを注射する:
8週齢のC57/Bl6 WT及びPPARγヌル(脂肪異栄養症)マウスに、組換えC末端ポリペプチド又は組換えGFP 20μgを、皮下手法を使用して2日毎に合計5用量それぞれ注射する。組換えポリペプチドは、細菌発現その後の精製及びエンドトキシン除去を使用して以前に生成された。マウスにおける内在性血漿レベルを評価した予備データに基づいてそれぞれ20μgの用量を決定した。注射の10日後に、性別を一致させた各群のマウス8匹を全てのアッセイにおいて比較した。
【0169】
B.マウスにおいてフィブリリン−1 C末端ポリペプチド及びGFPを保有するアデノウイルスベクターを注射する:8週齢のC57/Bl6 WT及びPPARγヌル(脂肪異栄養症)マウスに、以前に生成した、シグナルペプチドに融合したC末端ポリペプチド(
図14)を発現するアデノウイルス又はGFPを発現するアデノウイルスのそれぞれ1011個のウイルス粒子を注射した。この技術を使用する過去の経験に基づくと、アデノウイルス感染量の大部分は、肝臓を感染させることになる(Chopra、ら、2008年;Chopra、ら、2011年)。肝細胞による過剰発現の後に、天然のフィブリリン−1シグナルペプチドと融合されたC末端ポリペプチドは、細胞によって分泌されるべきである。注射後2週間に、性別を一致させた各群のマウス8匹を、ポリペプチドの血漿レベルについて比較し、その後他の下流のアッセイを行った。
【0170】
C.体脂肪蓄積に対するC末端ポリペプチドの過剰発現の影響を測定する:
マウスを麻酔し、体重及び長さを記録する。それらをDEXAアナライザ(Oosting、ら、2012年)に入れ、正確な測定スキャンを実行する前にスカウトスキャンを実行する。マウス当たりの照射線量を、300μSvでセットする。データの分析にあたって、対象の領域を定義する。分析は、頭部範囲を除く全身測定を含むことができる。ソフトウェアによりカウントデータを、骨及び非骨成分に転換する。情報は、各マウスの体重、身長、骨及び脂肪量、骨量密度並びに非脂肪量について生成される。DEXA測定及び分析は、BCMの「Mouse Phenotyping Core Facility」で実行する。安楽死後に、鼠径部脂肪体を抽出し、撮影し、計量する。
【0171】
D.不偏的な血漿代謝物質プロファイリングを実行することにより包括的な代謝変化に対するC末端ポリペプチドの過剰発現の影響を測定する:
フィブリリン−1 C末端ポリペプチドの過剰発現の結果として生物全体での、代謝変化を同定するために、RNAseqを利用する。絶食及び給餌したマウスからのEDTA血漿を、瀉血によって採集する。凍結し、暗号化したサンプルを、Metabolon、Inc.(Durham、NC)に送り、本来の供給源とだけ関連する固有の識別子によってMetabolonシステムに登録する。品質管理の目的で回収標準を抽出過程の第1の工程の前に添加する。サンプル調製は、小分子の回収を最大にしつつタンパク質を除去するための一連の専用の有機及び水性抽出を使用する。抽出したサンプルを、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)及び液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)プラットフォームによる分析用として等量ずつに分ける。操作に関するいくつかの反復サンプルを、各サンプルを少量含有する均一なプールから作る。生のMSデータファイルを、リレーショナルデータベースにロードする。ピークを、Metabolonの専用のピーク組み込みソフトウェアを使用して同定し、コンポーネント部分を、別々の特別に設計された複合データ構造体に保管する。化合物を、精製した標準のライブラリ項目又は反復性の未知の物質に対する比較によって同定する。公知の化学物質の同定は、LC及びGC両方のプラットフォームへの配布のためにLIMSに登録されている市販され、精製されている1,000個超の標準化合物との比較に基づく。実態的統計学は、分類変数及び連続変数に対する平均±標準偏差(平均±SD)の度数によって示され、その後ボンフェローニ事後検定分析して統計的有意性を得る。この技術を使用して、様々なクラス(アシルカルニチン、有機酸、アミノ酸、ペプチド、イオン等)のおよそ3000個の別々の血漿代謝産物を、不偏的様式で同時にアッセイすることができる。
【0172】
E.RNAseqを使用して包括的な遺伝子発現のレベルで、脂肪ホメオスタシスに対するC末端ポリペプチドの脂肪特異的過剰発現の影響を評価する:
フィブリリン−1 C末端ポリペプチドの過剰発現の結果として脂肪組織におけるゲノム全体での、転写変化を同定するために、RNAseqを利用する。総RNAを、以前に急速冷凍した鼠径部脂肪組織から単離する。配列決定反応を、個別の5匹のマウス鼠径部白色脂肪細胞に由来のプールしたRNAサンプルで行う。4レーンのフローセルを、Genome Analyzer IIによるサンプルの配列決定に使用する。Genome Analyzer(GA)は、38サイクル行う。サイクル1〜38におけるGAからの画像をGAパイプラインソフトウェア(v1.3、Illuminaソフトウェア)で分析して、画像分析、ベースコール及び参照ゲノムに対する配列整列化を行う。配列は、ELANDソフトウェアで整列化する。整列させたリードをIllumina CASAVAプログラム(v1.0)の入力として使用して、参照ゲノムの遺伝子、エクソン及びスプライス結合部位に整列する配列リードを計数する。諸特徴(遺伝子、エクソン及びスプライス結合部位)に整列している配列の生の計数を、対応するその特徴の長さで生の計数を割ることによりCASAVAによって標準化する。DEGseq及びDEseqの入力として遺伝子当たりのリード計数を使用して、差次的に発現している遺伝子を同定する。両方のツールが、統計パッケージR及びBioconductorによって利用可能である。DEGseq及びDESeqは、異なる統計的手法(ポアソン分布、負の二項分布)を使用して、差次的遺伝子発現の確率を評価する。P≦0.001及び発現レベルにおける2倍の変化(標準化した)を、カットオフ基準として使用する。
【0173】
特定の実施形態において、本明細書に記述される研究は、対をなす過程、つまり脂肪増大及び炎症にとって、フィブリリン−1 C末端ポリペプチドが十分であることを確立すると期待できる。同じ評価項目を評価する目的で、2つの機能獲得手法が本明細書に記述される。一方の手法が失敗しても、他方が決定的結果を与えると期待される。血漿中の天然のポリペプチドの半減期に関する情報の不足により、ペプチドの大部分が速やかに分解する場合、組換えポリペプチド実験は失敗する可能性がある。その場合、アデノウイルス媒介遺伝子導入手法は、十分量のポリペプチドを一定に産生することによりこの問題を回避して、機能獲得をもたらすと期待される。まさしくその性質により、過剰発現実験は、試験されるタンパク質の真の機能を反映しない生理的状態を作り出してしまう可能性を有する。従って、それらは注意深く解釈し、可能ならば、同時に行う機能消失研究との関連で解釈する必要がある。本明細書に提唱される機能獲得及び機能消失研究の総体的な解釈により、フィブリリン−1 C末端ポリペプチドの真のin vivo機能について正しい結論を導き出すことを可能にすることができる。
【0174】
実施例3
フィブリリン−1 C末端ポリペプチドの機能消失のin vivoの影響を決定する。
フィブリリン−1タンパク質は、酵素のフーリン/PACEファミリーによるタンパク質分解プロセッシングを受けることが示されているC末端切断部位(RGRKRRモチーフ)を含有する(Ritty,ら、1999年;Raghunath、ら、1999年;Wallis、ら、2003年;Milewicz、ら、1995年)。この結果、2つのフラグメント、即ち細胞外基質への適当な挿入のための切断事象によって決まる機能的フィブリリン−1(約2500アミノ酸)(Raghunath、ら、1999年;Milewicz、ら、1995年)、及びそれ独自の機能が未知のより小さいC末端ポリペプチド(約140アミノ酸)を得られる。NPS表現型をもたらすFBN1におけるヘテロ接合性突然変異の6つ全てに共通の結果は、C末端ポリペプチドの大多数の減少である。実際にC末端フラグメントのハプロ不全が表現型に関与する場合、そのフラグメントをその正常レベルに復元することにより、表現型をレスキューするはずである。この考えがin vitroで検討され、C末端ポリペプチドの発現を回復させること、並びに単純に培地に添加することによってC末端ポリペプチドに変異体細胞を曝露することが、NPS関連の脂肪分化及び炎症誘発性異常をレスキューすることが判明した(
図15)。
【0175】
類似の手法が、in vivo利用される。循環C末端ポリペプチド(
図16)を、モノクローナル抗体を使用して免疫学的に捕捉して、脂肪増大の必要性並びに肥満及びメタボリックシンドロームに対する予防の可能性を解明する。これは、純然たる脂肪増大に起因する状態である、肥満及びメタボリックシンドロームの両方に対して直接的な治療的意味を有する。
【0176】
実験的な手法:
A.WT及び遺伝的肥満マウスを、フィブリリン−1 C末端ポリペプチドを標的にしているモノクローナル抗体に曝露する:
8週齢のC57/Bl6 WT及びob/ob(機能消失レプチン突然変異で肥満マウス)マウスに、抗−CT−フィブリリン−1 IgG又は非特異的IgG 500μgを、腹膜内手法を使用して毎日、合計5用量注射する。フィブリリン−1 C末端抗体を標的しているモノクローナル抗体は、Sigma Inc.から以前に入手し、組織内で確認した。注射の10日後に、性別を一致させた各群のマウス8匹を全てのアッセイにおいて比較した。
【0177】
B.体脂肪蓄積に対するC末端ポリペプチドの減少の影響を測定する:
体脂肪蓄積に対するフィブリリン−1 C末端ポリペプチドの中和の影響は、目的1Cに記載の通りDEXAスキャン及び鼠径部脂肪パッド体重を使用して測定される。抗−CT−フィブリリン−1 IgG及び対照IgGに曝露した性別を一致させた8週齢のWT並びにob/obマウス8匹を、評価する。
【0178】
C.不偏的な血漿代謝物質プロファイリングを実行することにより包括的な代謝変化に対するC末端ポリペプチドの減少の影響を測定する:
抗−CT−フィブリリン−1 IgG及び対照IgGに曝露した性別を一致させた8週齢のWT並びにob/obマウス8匹に由来のEDTA血漿を、瀉血によって採集する。代謝学分析を、目的1Dに記載の通り実行する。
【0179】
D.RNAseqを使用して包括的な遺伝子発現のレベルで、脂肪ホメオスタシスにおけるフィブリリン−1 C末端ポリペプチドの減少の影響を評価する:
総RNAを、抗−CT−フィブリリン−1 IgG及び対照IgGに曝露した性別を一致させた8週齢のWT並びにob/obマウス15匹に由来の以前に急速冷凍した鼠径部脂肪組織から単離する。配列決定反応を、個別の5匹のマウス鼠径部白色脂肪細胞に由来のプールしたRNAサンプルで行う(N=3)。本明細書の他の部分に記述されるように、RNAseq分析を行う。
【0180】
特定の実施形態において、本明細書に記述される研究は、フィブリリン−1 C末端ポリペプチドが脂肪増大のために必要であり、肥満に対して予防的であることを確立すると期待することができる。フィブリリン−1 C末端ポリペプチドを標的とするモノクローナル抗体を使用して検討された研究は、それが遺伝子除去研究であった場合ほどには明快ではない。しかしながら、目的が、肥満に対する治療法としてそのようなモノクローナル抗体の使用を研究することであるとすると、少なくともいくつかの実施形態において、非特異的抗体と比較してこれを試験することは重要である。この手法が、肥満に対するそのような抗体の予防的役割を確立する実施形態において、それらの結果は、例えば遺伝的なノックアウト研究で確認される。
【0181】
実施例4
図17は、血漿CTポリペプチド(アスプロシン)量の増加が、アスプロシンを注射したマウスにおける過食症を引き起こすことを示す。本開示の実施形態において、方法は、体重を増やす又は脂肪量を増加させる必要がある個体にCTポリペプチドを有効量与えることを含む。
【0182】
NPS若しくは不十分な脂肪量を有する個体の別の病状の個体において、個体は、NPS又はそのような病状がない別の個体と比較して、毎日のカロリー負荷の消費が減少している可能性がある。これらの個体に関する特定の実施形態において、これらの個体の食欲を増加させることによるなど毎日のカロリー負荷を増加させるために、その実施形態では、これらの個体に、アスプロシン又はその機能的誘導体を有効量与えることができる。
【0183】
実施例5
本開示の実施形態の重要性
レプチンの発見は、極端な体重をもたらす遺伝性障害が、肥満、糖尿病及びメタボリックシンドロームの理解において非常に有益になる可能性があることを示す(Friedman、2009年)。最適な脂肪量の維持に必要であり、その起源が細胞外基質タンパク質であるフィブリリン−1と関連する新規のポリペプチドホルモン、アスプロシンについて本明細書に記述する。この点では、アスプロシンは、エンドスタチン、即ち異なる細胞外基質タンパク質であるコラーゲンXVIIIのC末端切断産物である血管形成調節因子に似ている(O’Reilly、ら、1997年)。従って、いくつかの細胞外基質成分が、親タンパク質とは別の機能があるC末端切断産物の担体として進化した可能性があると考えることは合理的であり得る。
【0184】
これまでのいくつかの研究は、どのようにプロフィブリリンが分泌され、フーリンプロテアーゼ系によって細胞外で切断される可能性が高いかを示した(Graul−Neumann、ら、2010年;Horn及びRobinson、2011年;Goldblatt、ら、2011年;Takenouchi、ら、2013年;Jacquinet、ら、2014年)。この切断事象は、フィブリリン−1の正しいプロセッシング及び細胞外基質への挿入に必要である(Graul−Neumann、ら、2010年;Horn及びRobinson、2011年;Goldblatt、ら、2011年;Takenouchi、ら、2013年;Jacquinet、ら、2014年)。しかしながら、他の切断産物、140アミノ酸C末端ポリペプチドの消長は、依然として未知であった。本開示の実施形態において、NPS患者の遺伝子型は、C末端ポリペプチドであるアスプロシンが、脂肪生物学において重要な役割を有する可能性を示唆した。この開示のデータは、アスプロシンが循環血液中に存在し、最適な脂肪量の維持に必要であることを示す。マウスにおいて過度のアスプロシンは、脂肪増加並びに肥満及び低い代謝健全性の特徴であるグルコース不耐性の発症をもたらすが、ヒトにおいてアスプロシンの減少は脂肪異栄養をもたらす。実際、マウス及びヒトで低い代謝健全性と相関する肥満状態において、循環アスプロシンのレベルは上昇している。反対に、皆無かそれに近い循環アスプロシンを有するNPS患者の表現型がるい痩及びインスリン感受性を示すことは、いくつかの実施形態において、アスプロシンを低下させることが、正の代謝性プロファイルに有利に働くことを示す。これは、インスリン抵抗性をもたらすいくつかの型の脂肪異栄養と対照的である(Nolis、ら、2013年)。
【0185】
一実施形態において、NPSにおけるインスリン感受性が保持されるということは、おそらくインスリンに応答するグルコース取り込み能力を保持する特定の脂肪細胞、特に臀筋範囲が残っているのである。別の実施形態において、マウスにおいてアスプロシン自体がインスリン抵抗性を促進し、従って、NPSにおけるその不在は、直接のインスリン感作効果を有し得る。
【0186】
データは、NPSにおける循環アスプロシンの、NPS遺伝子型から予測されるそれを越える極度の減少が、少なくとも部分的には、ナンセンス変異依存分解を回避し細胞内にトラップされた変異体プロフィブリリンの優性阻害効果の結果であることを示す。特定の実施形態において、これが、遺伝子全体の欠失、非トランケーション突然変異又はフーリン切断部位に近位のトランケーション突然変異によりマルファン症候群を引き起こすが、NPSを特徴づける脂肪異栄養の追加の特徴を生じない理由である(Pyeritz、ら、2009年)。
【0187】
アスプロシンは、2つの理由で注目すべきである。外部からのアスプロシンに曝露したマウスは、ちょうど10日間で脂肪量及びインスリン抵抗性の増加を示した。注目すべきは、これは高脂肪食ではなく標準の食事で達成された。第2には、そのコード領域は、プロフィブリリンの残りと比較して極めて高い進化的保存を示す。これは、細胞表面レセプターによって媒介される可能性がある高度に保存された機能を示す。そのような仮定の受容体の同一性は、まだ公知でない。その発現プロファイルに基づくと、脂肪組織はアスプロシン産生及び分泌のより優性な部位の1つである可能性が高いので、アスプロシンが、脂肪細胞分化にも必要であることは逆説的のように思われる。しかしながら、自身を産生する器官を調節するのに役立つ分子の例は無数にある。脂肪生成分化並びに脂肪量の増加の他に、いくつかの実施形態において、アスプロシンは、脂肪及びおそらく他の組織の他の機能も調節する。実際、グルコースホメオスタシスがアスプロシンの媒介で妨げられることが、脂肪量の改変又は脂肪活性の改変による効果なのかは、依然として不明である。
【0188】
結果は、興味深い治療的手立てを提供する。最も明らかなものは、NPS患者における欠損を単に修正することである。しかしながら、組換えアスプロシンは、例えば高齢、癌、HIV感染等のような、多様な病因に伴う悪液質がある患者に有用である。そのような患者は、他の原因の中でも特に脂肪量減少により著しく虚弱になり(Mueller、ら、2014年;Pureza及びFlorea、2013年;Gelato、ら、2007年;Agarwal、ら、2013年;Kulstad及びSchoeller、2007年)、アスプロシンによって与えられる脂肪増加の恩恵をうける可能性がある。反対に、循環アスプロシンを低下させると、肥満及び糖尿病の患者における脂肪量の減少並びに血糖制御の改善がもたらされる可能性がある。特定の実施形態において、NPS関連脂肪異栄養及び肥満は、一方でほとんど無く、他方で過大な結果になるアスプロシン方程式の2つの結果である。いずれにせよ、本開示の特定の実施形態で、病理学的に改変された脂肪量の状態における循環アスプロシンレベルを修正することにより、著しい治療的有用性が得られる。
【0189】
参照文献
本明細書に記載の特許及び刊行物の全ては、本発明に関係する当業者のレベルの指標となる。特許並びに刊行物の全ては、各個の刊行物が参照により組み込まれることが特別に及び個々に示される場合と同程度に参照により本明細書に組み込む。
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【0190】
本発明及びその利点を詳細に記述したが、添付の請求の範囲によって定義される通り本発明の精神と範囲から逸脱することなく本明細書に様々な変化、置換及び変更を作り得ることを理解すべきである。更に、本出願の範囲は、本明細書に記述される過程、機械、製造、組成物、手段、方法及び工程の特定の実施形態に限定されることを意図していない。当業者が本発明の開示から容易に認識することになるように、本明細書に記述される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行する又は実質的に同じ結果を達成する現存の若しくは後に開発される過程、機械、製造、組成物、手段、方法、若しくは工程は、本発明に従って利用され得る。従って、添付の請求の範囲は、そのような過程、機械、製造、組成物、手段、方法、又は工程をその範囲内に含むことを意図される。