特許第6667440号(P6667440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667440
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】呼吸作動ネブライザー
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/06 20060101AFI20200309BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20200309BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20200309BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   A61M11/06
   A61M11/00 D
   A61M15/00 Z
   A61M16/06 D
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-544005(P2016-544005)
(86)(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公表番号】特表2016-533245(P2016-533245A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】US2014056448
(87)【国際公開番号】WO2015042343
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年9月19日
(31)【優先権主張番号】61/880,880
(32)【優先日】2013年9月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516083690
【氏名又は名称】インスピリックス,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】INSPIRX,INC.
(74)【復代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】ヴァサンダニ,パレシ
(72)【発明者】
【氏名】シュクラ,ヴィジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホセイン,ケイ.モサデック
(72)【発明者】
【氏名】トディーワラ,ロヒントン ディー.
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0157663(US,A1)
【文献】 特開2008−161528(JP,A)
【文献】 特表平11−506642(JP,A)
【文献】 特表2000−504603(JP,A)
【文献】 米国特許第05687912(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/06
A61M 11/00
A61M 15/00
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に吸入薬を投与するための、呼吸トリガ・ネブライザーであって、
前記ネブライザーは、気道と、横軸と、縦軸とを有し、
a.上部チャンバの気道を画定する水平方向に配向した円筒状の本体と、
b.内部に薬剤溶液を含有し前記横軸を定義する液体リザーバを有する垂直方向に配向した下部チャンバと、
c.ガスジェットと流体連通する加圧ガス導入口と、
d.前記ガス導入口を囲みまたは前記ガス導入口に隣接し、液体オリフィスと流体連通する液体流路であって、前記ガスジェットは前記液体オリフィスと隣接し、前記ガスジェットは垂直方向に配向する前記液体流路と、
e.前記上部チャンバの気道内に配置され、前記ガスジェットに対して遠位にある可撓性ダイヤフラムと前記可撓性ダイヤフラムとは反対側の端部に設けられたバッフルとを有し、(1)第1の位置において、前記バッフルが前記ガスジェットから所定の距離にあり、前記液体流路内に圧力差を生じて前記液体流路から前記薬剤溶液を引き出し、前記ガスジェットと前記液体オリフィスの相互作用によって前記薬剤溶液の噴霧を引き起こし、(2)第2の位置において、前記バッフルが、前記ガスジェットから遠位の距離にあり、前記液体流路に液体を引き出すには前記圧力差が不十分であって前記液体の噴霧が発生しない、水平移動可能なシャフトアセンブリと、を備え、
.前記シャフトアセンブリの動きは、前記ガスジェットに対して固定された垂直距離で、前記第1の位置と前記第2の位置の間で、前記シャフトアセンブリから延びるタブによって制御され、
.前記シャフトアセンブリの動きは、前記ガスジェットに対して固定された垂直距離で、前記第1の位置と前記第2の位置の間で、前記シャフトアセンブリから延びるタブによって制御され、前記患者の吸入の間前記ダイヤフラムは前方に撓み、前記シャフトアセンブリは、前記第2の位置から前記第1の位置へ移動し、前記患者が吸入していないときには、前記ダイヤフラムは後位置に向かって後方に撓み、前記シャフトアセンブリは、前記第2の位置へ移動し、
.霧状の前記薬剤溶液は、前記患者によって吸入されることにより、前記患者の肺に提供される、
ことを特徴とする呼吸トリガ・ネブライザー。
【請求項2】
吸入マスクが前記ネブライザーに接続され、吸入中、霧状の前記薬剤溶液が前記吸入マスクを通じて送られる、請求項1に記載のネブライザー。
【請求項3】
マウスピースが前記ネブライザーに接続され、吸入中、霧状の前記薬剤溶液が前記マウスピースを通じて送られる、請求項1に記載のネブライザー。
【請求項4】
前記シャフトアセンブリが前記第1の位置から前記第2の位置に移動するとき、音声信号が生成される、請求項1に記載のネブライザー。
【請求項5】
前記音声信号は、側部カバーの一部と接触するトリガによって生成されるクリック音である、請求項2に記載のネブライザー。
【請求項6】
前記ガスジェットと前記液体オリフィスが同一平面上にある、請求項1に記載のネブライザー。
【請求項7】
前記液体オリフィスは、前記液体流路の上部に1つまたはそれ以上の穴を備える、請求項1に記載のネブライザー。
【請求項8】
前記液体オリフィスは、前記ガスジェットと同心関係の同心管状の開口部を含む、請求項1に記載のネブライザー。
【請求項9】
前記バッフルは、0.5L/minから15L/minまでの範囲の吸入流速に応答する、請求項1に記載のネブライザー。
【請求項10】
請求項1に記載のネブライザーにおいて使用されるように構成された、前記上部チャンバ内に外気が入ることを可能にする、呼吸の際に開放する弁を備える、噴霧化および吸入を改善する呼吸強化バルブシステム。
【請求項11】
前記上部チャンバ内に外気が入ることを可能にする、吸入の際に開放する弁を備える、噴霧化および吸入を改善する呼吸強化バルブシステムを更に備える、請求項1に記載のネブライザー。
【請求項12】
前記気道と流体連通し、呼気弁が前記気道上に存在する、吸入マスク又はマウスピースを更に備える、請求項1に記載のネブライザー。
【請求項13】
前記呼気弁は、前記ネブライザーから排出された略すべての呼気薬剤をとらえるフィルタを有する、請求項12に記載のマスクを備えたネブライザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸入エアロゾル薬の投与用ネブライザーに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸装置の分野において、ネブライザー(噴霧器)は、肺に直接投与される薬剤を必要とする患者に、エアロゾルの形態で薬剤を吸入させるために使用される重要な装置である。ネブライザーは、薬剤の溶液(通常は水溶液)又は懸濁液からエアロゾルまたはミストを発生させる装置を使用する。ミストは、薬剤のエアロゾル化懸濁液または微粒化懸濁液、すなわち、空気、医療用酸素、または他の吸入ガス中に浮遊する微小液滴であってもよい。エアロゾルは、患者の口および/または鼻へ運ばれ、肺に吸入される。ある例では、ミストがマウスピースを介して肺に運ばれる。他の例では、ネブライザーは、吸入マスクに結合されてもよい。
【0003】
ガスジェット、超音波、および振動メッシュ式ネブライザーを含む、いくつかの噴霧技術が知られている。本開示は、ベンチュリ(Venturi)を使用して動作し、加圧ガス(空気または他の適切なガス、例えば、医療用酸素)のジェットが、水溶液中の薬剤を収納するリザーバに接続された毛細管上のオリフィス上に向けられる、ガスジェット・ネブライザーに関するものである。ベンチュリによって、薬液は毛細管のオリフィスから空気のジェットに引き込まれる局部的低圧領域が形成され、ここで、液体がせん断作用によって霧化される。一般的に、ジェット流出物において、バッフルが、噴霧流中で適切なサイズの液滴の形成を補助するために用いられる。さらに、バッフルは、装置から大きな液滴が放出されるのを防ぐことができるので、薬剤含有溶液のエアロゾルの微小液滴だけが、装置から放出される。さらに、多くのネブライザーの設計において、バッフルは、薬剤リザーバと連通する液体オリフィス上に、ベンチュリ・ジェットによって形成された低圧領域を偏向させるために必要とすることができる。このような設計では、バッフルは、液体を噴霧化する加圧ガスの流れの中に、液体を引き込むために必要とされる。そのようなネブライザーの一例が、米国特許第4,588,129号に開示されている。エアロゾルは、その後、患者によって吸入される。一般的にエアロゾルの生成は連続的に行われるので、ジェットによって生じる圧力差が、連続的に一貫して動作することを確実にするために、通常は、通気孔が設けられている。ネブライザーの薬剤リザーバは、通常、薬剤の滅菌水溶液が加えられた、円錐状、カップ状、またはボウル状の容器である。
【0004】
ガスジェット・ネブライザー以外の噴霧方法として、例えば、超音波ネブライザーおよび振動メッシュ式ネブライザーが知られている。
【0005】
ネブライザーで使用される典型的な薬剤は、喘息および閉塞性肺疾患を治療するための薬剤であるが、他の肺又は全身治療用の薬剤をネブライザーでの吸入によって投与することもできる。例えば、喘息および気管支痙攣を治療するために使用されるアルブテロール(多くの国でサルブタモールと呼ばれる)を、噴霧液として投与することができる。他の例として、カリニ肺炎(PCP)(別名ニューモシスティス肺炎原因菌)を治療するために使用される薬剤であるペンタミジンがある。他の多くの薬剤が、吸入薬として有用または潜在的に有用であり、潜在的にネブライザーで使用することができる。
【0006】
ネブライザーは、自ら呼吸を調整することができない、または、定量吸入器等の協調吸入装置の使用上の指示に従うことができない、小児、高齢者、意識不明者、または障害のある患者への吸入薬の投与に特に有用である。また、ネブライザーは、薬剤吸入用マウスピースを使用できない患者のための吸入マスクとして使用することができる。ネブライザーによって、特定の用量の薬剤が、数分間にわたって患者に投与され、毎分10〜20(またはそれ以上)の呼吸(tidal)又は深くゆっくりとした吸入を行うことができるので、呼吸調整を必要としない。
【0007】
ネブライザーは、典型的には、マウスピースを備え、患者は口にマウスピースを挿入して、自分の唇で気密シールを作りながら、噴霧薬剤を口から吸入して肺の中に摂取することができる。口にマウスピースを保持できない、または、マウスピースの周囲で唇を閉じることができないため、シールを形成できない患者の場合には、ネブライザーとともに吸入マスクを使用してもよい。このようなマスクの一例が、国際出願第2012/173993号に開示されている。
【0008】
呼吸作動ネブライザーでは、患者が吸入する間だけ、薬剤の噴霧が発生する。呼吸作動ネブライザーは、患者が吸入および呼息のいずれもしていないときに、呼息または他の間隔中は、エアロゾルの噴霧または流れを停止するための手段を有する。このような装置は、例えば、Denyerの米国再発行特許第RE40591号、Grychowskiらの米国特許第5823179号および第6644304号から公知である。呼吸作動ネブライザーは、米国内ではMonaghan Medical社によりブランド名AEROECLIPSE(登録商標)で販売され、他の国ではTrudell Medical International社により販売されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
呼吸作動ネブライザーは、従来のネブライザーに対して顕著な利点を有することができる。従来のネブライザーでは、患者が吸入しているか否かにかかわらず、薬剤が連続的にエアロゾル化される。従来のネブライザーでは、典型的には、大気中に放出されるので、吸入されていないエアロゾルは、患者の前の空気中に排出される。これは、薬剤を浪費し、近くにいる(介護者を含む)他人をエアロゾル化した薬剤に曝すことになる。また、この薬剤の損失により、投与量を正確に決定することが不可能になる。多くの場合、これらの欠点は問題にならない。従来の(連続型)ネブライザーは低コストであり、従来のネブライザーで使用される薬剤のうちの多くが低毒性で低コストだからである。
【0010】
しかし、高価な薬剤や、患者の近くに他人に対して毒性または増感性を有する薬剤の場合には、従来のネブライザーは呼吸作動ネブライザーよりもはるかに望ましくない。患者が吸入していないときには噴霧を停止しているので、呼吸作動ネブライザーを用いることで、投与量を正確に計量することができ、薬剤の無駄が非常に少なくなるからである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態において、本発明は、患者に対して水平方向に配向した、一般的に円筒形の本体を含む、呼吸作動ガスジェット・ネブライザーを提供する。本体内に、リザーバに格納された薬剤の溶液を霧状にするように構成されたベンチュリを備える。本体内に、バッフルと患者の呼吸に応じて水平に移動するダイヤフラムとに一体化されたシャフトを備える。患者が吸入したときには、ダイヤフラムが撓んでバッフルを患者に向かってベンチュリの上に移動させ、噴霧を発生させることができる。患者の吸入が停止したときには、ダイヤフラムは初期設定(デフォルト)位置に撓んで、バッフルはベンチュリに対する遠位位置に移動し、それにより噴霧を停止する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、噴霧モードにおけるネブライザーの断面図である。
図1B図1Bは、非噴霧モードにおけるネブライザーの断面図である。
図1C図1Cは、図1Bの一部の詳細断面図である。
図2A図2Aは、前方から見た分解図である。
図2B図2Bは、後方からみた分解図である。
図3A図3Aは、前方から見た組立後のネブライザーの斜視図である。
図3B図3Bは、ネブライザーの前方端の正面図である。
図3C図3Cは、後方から見た組立後のネブライザーの斜視図である。
図4A図4Aは、ネブライザーの気道に接続された吸入マスクを備える本発明のネブライザーの斜視図である。
図4B図4Bは、ネブライザーの気道に接続された吸入マスクを備える本発明のネブライザーの別の斜視図である。
図5A図5Aは、ネブライザーの気道に接続されたマウスピースを備える本発明のネブライザーの斜視図である。
図5B図5Bは、ネブライザーの気道に接続されたマウスピースを備える本発明のネブライザーの別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示された、吸入によってヒトまたは動物に薬剤を投与するためのガスジェット・ネブライザーにおける噴霧動作は、その中に溶解した薬剤の溶液を含むリザーバを備える装置と、高圧ジェットオリフィスとジェットに隣接する1又はそれ以上の複数の液体オリフィスとによるベンチュリ効果に依存し、バッフルまたはデフレクタがジェットを短距離でジェットオリフィス上に衝突させる。ベンチュリ・オリフィスに隣接した1またはそれ以上の液体オリフィスが、薬剤の溶液を含む薬剤リザーバから供給を受ける、液体チューブまたは毛細管と連通する。噴霧またはエアロゾル化(これらの用語は、本明細書において交換可能なものとして使用されている)は、バッフルが液体オリフィス上にベンチュリによって生成された低圧領域を偏向することで生じるものと推測される。いかなる動作の理論にも束縛されるものではないが、バッフルに衝突したベンチュリ・ジェットによって生成された減圧が、液体オリフィスを通じて薬液を引き出し、それが液体オリフィスを出るときに剪断作用によってジェットが液体をエアロゾル化すると考えられている。バッフルはまた、一般的に、大きな液滴を偏向させ、薬剤リザーバにそれらを強制的に戻す、二次機能を実行する。これは、薬剤ネブライザーでは、空気中に自由に浮遊する非常に小さな液滴のみが吸入エアロゾルとして望まれているからである。バッフルが無い場合、液体オリフィスは、ベンチュリ低圧領域の影響を受けないので、いかなる液体も液体オリフィスから引き出されず、エアロゾル化しないものと推測される。したがって、本発明では、可動バッフルが水平面内に設けられており、バッフルがベンチュリの真上にあるときには噴霧が生じ、バッフルがベンチュリから離れるように水平に移動したときには、噴霧を停止する。本発明では、患者の吸入に応答して噴霧位置にバッフルを移動させることにより、患者が吸入するときのみに噴霧が発生し、患者が呼息しているとき、または、吸入していないときには、噴霧が発生しない。噴霧を生成または停止するバッフルのこの動作を、「呼吸トリガ」または「呼吸作動」(用語は、交換可能に使用される)噴霧と称する。
【0014】
本発明の実施形態では、呼吸トリガ・ネブライザーは、患者に吸入薬を投与するために提供され、前記ネブライザーは、横軸と縦軸とを有し、上部チャンバの気道を画定する水平方向に配向した円筒状の本体と、内部に薬剤溶液を含有し前記横軸を定義する液体リザーバを有する垂直方向に配向した下部チャンバと、ガスジェットと流体連通する加圧ガス導入口と、前記ガス導入口を囲みまたは前記ガス導入口に隣接し、液体オリフィスと流体連通する液体流路とを備え、前記ガスジェットは前記液体オリフィスと隣接し、前記ガスジェットは垂直方向に配向し、前記ネブライザーは、前記上部チャンバの気道内に配置され、前記ガスジェットに対して遠位にある可撓性ダイヤフラムと前記可撓性ダイヤフラムとは反対側の端部に設けられたバッフルとを備え、(1)第1の位置において、前記バッフルが前記ガスジェットから所定の距離にあり、前記液体流路内に圧力差を生じて前記液体流路から前記薬剤溶液を引き出し、前記ガスジェットと前記液体オリフィスの相互作用によって前記薬剤溶液の噴霧を引き起こし、(2)第2の位置において、前記バッフルが、前記ガスジェットから遠位の距離にあり、前記液体流路に液体を引き出すには前記圧力差が不十分であって前記液体の噴霧が発生しない、水平移動可能なシャフトアセンブリとを備え前記シャフトアセンブリの動きは、前記ガスジェットに対して固定された垂直距離で、前記第1の位置と前記第2の位置の間で、前記シャフトアセンブリから延びるタブによって制御され、前記患者の吸入の間前記ダイヤフラムは前方に撓み、前記シャフトアセンブリは、前記第2の位置から前記第1の位置へ移動し、前記患者が吸入していないときには、前記ダイヤフラムは後位置に向かって後方に撓み、前記シャフトアセンブリは、前記第2の位置へ移動する。
【0015】
したがって、図中の本発明のネブライザー10は、定義された横軸と縦軸を有する。一態様では、横軸は薬剤リザーバ112によって定義される。一般的に、薬剤リザーバ112は液体を格納しているので略水平でなければならないからである。図に示すように、別の態様において、横軸は、気道端104から装置の背部のキャップ130まで、略円筒状の本体100の中心を通る直線によって定義してもよい。図1Aおよび図1Bに示されるように、横軸と縦軸は、すなわち、縦軸は上から下に、横軸は右から左に描画されている。したがって、キャップ150は、装置の最上部にあり、下部本体110は、装置の底部にある。
【0016】
ネブライザー10の本体100は、円筒形状であり水平に配向された本体部を備え、内部チャンバ101を画定する。本体100の腹側は、下部本体110に接続された円形の開口部106を有する。下部本体110は薬剤リザーバ112を含み、薬剤リザーバ112は動作中に液体薬剤で充填される。リザーバ112は、底部が狭く、ベンチュリ内に吸気の際に開口部320内に薬液を供給するカップ状容器である。
【0017】
ベンチュリは、下部本体110と一体になっている。ベンチュリは、加圧ガス入口ステム116と、加圧ガスチューブ115とを備える。管115の上部において、少なくとも1つの液体ウィンドウ330は、前記ウィンドウ上にセクション332を備える。管115は、円錐セクション117で狭くなり、ベンチュリ・オリフィス310に通じる。通路336は、セクション332とセクション117との間に形成される。通路336の上部には、薬剤溶液が噴霧中に通過する、1またはそれ以上の液体オリフィス312がある。ステム144は管115上に嵌められ、薬剤溶液が噴霧中に通過する狭い通路335を画定する。薬剤溶液は、ステム144の底部の開口部320を通って、通路335内に供給される。噴霧中、薬剤溶液は、開口部320から、通路335を上昇し、ウィンドウ330から引き出される。薬剤溶液は、その後、通路336内に移動し、オリフィス312から出る。薬剤溶液は、その後、ベンチュリの高速低圧局部環境に曝されて、噴霧中に、チャンバ101の空間でエアロゾル化される。
【0018】
一実施形態では、ベンチュリ・オリフィス310と複数のオリフィス312は、平坦な表面313上に配置され、オリフィス310と312のすべてが同一平面上にある。
【0019】
本体100の背面側には、上部キャップ150によって覆われた円形開口部108を含んでもよい。上部キャップ150は容易に取り外し可能であることが意図され、ピペットで、または単に、リザーバ112へ薬剤溶液を注入することで、リザーバ112に薬液を追加するために使用することができる。
【0020】
本体100の前端部(患者に最も近い端部)は、気道105を画定する開口部104を含み、気道105により、吸入中はネブライザーから、エアロゾル化薬剤が患者の口または鼻に排出される。吸入中に、エアロゾル化した薬剤は、その後、患者の肺に移動する。一実施形態において、バッフル109が、開口部105の後方の気道に配置される。バッフル109が存在する場合には、開口部105の下の約3分の1をブロックし、患者が自由に浮遊するエアロゾル粒子のみを吸入することを確実にすることに役立つ。バッフル109は、より大きなエアロゾル粒子が吸入されて摂取されることを阻止するのに役立つ。
【0021】
一実施形態では、図面に示されるように、開口部105は、アダプタ400およびスイベルアダプタ410と連通している。本実施形態では、マウスピースまたはマスクは、スイベルアダプタ410上の気道430に接続することができる。また、図示の実施形態では、アダプタ400に一体化された排気弁420が示されている。排気弁420の実施形態では、フラップ422が図示され、フラップ422は、可撓性を有するゴム材料からなり、吸入中は気密シールを提供し、呼息中は撓んで開放し呼気を排出する。他の構成の排気弁も可能である。本体100には、呼気のために設けられた他の排気や圧力均等化手段が存在しないため、このネブライザーには排気弁が必要である。
【0022】
本体100の後端部は、エンドキャップ130に接続された円形の開口部102を備える。キャップ130には一連の複数の排気132がある。一連の一方向排気132はキャップ130の内部にあり、吸入中は圧力を均等化するために空気が入ることができ、呼息中は封止されるように構成されている。
【0023】
流路支持体140は、垂直シャフト144とキャップ部142とを含む一体化部分であり、シャフト144は、ガスチューブ115の上で入れ子構造になるパイプを画定する。シャフト144とチューブ115との間の空間が液体通路335である。キャップ部142は、バッフルガイド流路148,149を含む。図2Aに示すように、位置決めタブ146は左側の垂直シャフト144から突出し、可動バッフルに対して支持体140を位置合わせするのに役立つ。タブ146は、下部本体110のスロット147に嵌合する。
【0024】
本体100の内部にはシャフトアセンブリ200が一体化され、ダイヤフラム210と、ベンチュリ・バッフル202とを含む。ダイヤフラム210は、周囲を捩れ方向の可撓性を有しないリング212によって支持され、インデント122と本体100の一部と入れ子構造になる。ダイヤフラム210は、軟質ゴムなどの可撓性材料からなり、患者の呼吸に応じて容易に屈曲することができる。ダイヤフラム210の中心は、シャフト200に接続されている。シャフト200の前端部は、支持体205,206を含む。ガイドスキッド204は、支持体205に接続され、バッフル202は、支持体206に接続されている。バッフル202の後端部はタブ203を含み、シャフト200が前方に移動したとき、吸入中にシャフト200がさらに前進するのを防止する、バックストップとして作用する。
【0025】
このネブライザーは「呼吸トリガ」と称される。これは、使用中の吸入の動作により薬剤の噴霧を開始し、吸入中または他の時点では吸入が停止したときに、薬剤の噴霧を停止し、患者が吸入していないときには、患者の肺に自然に空気を引き込む。吸入中、呼吸動作は、ネブライザー10のチャンバ101内に負圧を生じさせる。これにより、ダイヤフラム210は前方に撓み、バッフル202を初期設定の非噴霧位置から噴霧位置に前進させる。ベンチュリ・ジェットの直上の位置に一体化シャフト200と可動バッフル202を移動させることによって、液体オリフィス312がベンチュリからの高速低圧局部環境にさらされるとき、エアロゾル化が生じさせる。この移動は、図1A及び図1Bの断面図に図示される。図1Bは、初期設定の非吸入位置である。ダイヤフラムは、吸入が生じていない間は、図1Bに示す位置に付勢されている。吸入中は、チャンバ101内の負圧は、ダイヤフラム210を前方に引き寄せ、シャフト200およびバッフル202を移動させて、噴霧を発生させる。ダイヤフラムは、低吸入流速に、例えば、非常に吸気能力が弱い重病患者や小児からの吸入に対しても、十分に敏感であって、噴霧化位置にシャフトを移動させるために十分な力を提供するように設計される必要がある。実施形態において、ダイヤフラムは、新生児0.5L/minから成人15L/minまでの吸入流速の範囲内で移動するように設計されてもよい。
【0026】
吸入が停止すると、ダイヤフラムは、初期設定の位置に向かって後方に撓み、図1Bに示す構成に戻り、可動バッフル202を後方に引き戻すので、ベンチュリ・ジェットが支持体205と支持体206の間の空間に排出される。バッフルがベンチュリの直上にない場合には、噴霧は生じない。ジェットは直接上方に排気され、液体オリフィス312はベンチュリ効果にさらされないので、液体がオリフィス312を通じて引き出されることはない。
【0027】
複数の排気ポート120は、吸入中の圧力を均等化し、ネブライザーの本体が真空状態になることを防止する。ダイヤフラム210と一体化された複数の可撓性フラップ220は、セクション122の複数のインデントに留まり、内部チャンバ101から複数のポート120をカバーする。呼息中、または呼吸が緩和されたときには、フラップが、内部チャンバ101内の空気とエアロゾル化した薬剤がネブライザーから漏れるのを防止する。吸入中、内部チャンバ101内の負圧により、複数のフラップが開放され、チャンバ101内の気圧を均等化する。
【0028】
一実施形態においては、吸入中にクリック音を発生させるノイズ生成機能を備えてもよい。図に示すように、端部キャップ132の内部にキャビティ134に留まる突起部230を含んでいてもよい。吸入中に、シャフトアセンブリ200が前方に引き出されたとき、キャビティ134内を移動する突起部230の動作によって、クリック音を発生させてもよい。一実施形態では、呼息中に、シャフトアセンブリ200に向かって初期設定の位置に戻ったときには、突起230とキャビティ134が互いにぶつかり、クリック音を発生させる。
【0029】
本発明の装置と患者との間のインターフェースは、マウスピースまたは吸入マスクである。マウスピースは、様々な実施形態を含むことができる。一実施形態では、マウスピースは、患者の口の中に挿入するのに適した、一般的に円筒形または(断面が)楕円形の付属物であってもよい。患者はその後、マウスピースの周囲を彼または彼女の唇で包み、シールを作り、さらに呼吸することで、霧状の薬剤を受領する。別の実施形態では、マウスピースを口や唇の間に挿入するための平坦部を有していてもよい。
【0030】
別の実施形態では、患者の口および/または鼻を覆う吸入マスクを使用してもよい。マスクは、患者の口および/または鼻へ送られる噴霧薬剤を受け入れるために、気道105に接続するための適切な入口を有する。小児は、特に、必須的鼻呼吸者である。吸入マスクの場合には、排気弁が必須である。本発明の噴霧装置には呼気を排出するための均圧出口がないからである。このような排気弁は、マスクに一体化してもよく、または、例えば図面で部品420として示されるように、ネブライザーとマスクとの間の連結部であってもよい。任意の排気弁の実施形態では、さらなる任意の実施形態は、活性な薬剤のほぼ全てをとらえ、患者の前の外気に入ることを防ぐフィルタである。活性な薬剤は、介護者を含む周囲の人に害を与える場合があり、さらに、例えば、眼の刺激を引き起こすなど、患者自身に害を及ぼす場合さえある。フィルタの使用により、この問題を防止することができる。
【0031】
本発明のネブライザーとマウスピースまたは吸入マスクの様々な実施形態が、図4及び図5に示されている。図4A及び図4Bは、スイベルアダプタを使用して、本発明のネブライザーに接続された吸入マスクを示している。様々なマスクを本発明のネブライザーとともに使用することができる。図4A及び図4Bに示されたマスクは、国際特許出願PCT/US2012/042055に記載され、おしゃぶり装置オリフィスを有している。このオリフィスを介して乳首を挿入してもよく、小児は、乳首を吸いながら、患者の鼻に位置合わせした気道を備えるマスクを通じて薬剤を吸入する。別の実施形態(図示せず)において、マスクは、おしゃぶり装置オリフィスを有していなくてもよい。
【0032】
図5Aおよび図5Bは、適用可能な年齢以上の小児または大人が一般的に使用する、マウスピースを備えたネブライザーを示す。マウスピースは、患者の口に挿入され、患者は自分の唇でマウスピースの周囲にシールを形成しながら、ネブライザーを用いて薬剤を吸入する。ここで、用語「適用可能な」とは、患者に意識があり、指示を受け入れ理解することができることを意味する。
【0033】
本明細書で使用される用語「薬剤」とは、患者の肺に直接投与するのに適した薬剤を意味する。
【0034】
本発明は、ネブライザー装置10およびネブライザー10により患者に薬剤を投与する方法の両方を提供する。患者に薬剤を投与する方法では、薬剤の溶液が開口部152を通ってリザーバ112に加えられ、空気または医療用酸素等の加圧された医療用ガスの供給源は、ステム116に接続される。様々な実施形態では、本発明のネブライザーに取り付けられたマウスピースは、患者の口に挿入され、または、マスクは、介護者によって患者の口と鼻の上に保持されるネブライザーに接続される。患者が吸入すると、ネブライザー10は、霧状の薬剤を供給し、患者の肺に入る。患者の呼息中または患者が呼吸していない間のように、患者が吸入していない場合には、噴霧が停止する。患者が吸入しているか否かにかかわらず、薬剤を連続的に霧状化する従来のネブライザーと比較して、無駄になる薬剤は最小であり、無駄が最小限になるため、薬剤の投与量をより正確に決定することができる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B