(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カルボキシル基およびスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を含有する酸性基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含むモノマー成分(a)の共重合体であり、重量平均分子量1万〜50万、ガラス転移温度30℃以上150℃以下である酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)、および、
ヘテロ環構造を有する窒素含有モノマーと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含むモノマー成分(b)の共重合体であり、重量平均分子量1万〜50万、ガラス転移温度30℃以上150℃以下である窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)を、
酸性基含有モノマー:窒素含有モノマーのモル比が、5:95〜80:20の比率となるようにブレンドしてなる焼成ペースト用樹脂組成物であって、
前記モノマー成分(a)が、酸性基含有モノマーを0.1〜10質量%、水酸基含有モノマーを0.5〜30質量%含み、
前記モノマー成分(b)が、窒素含有モノマーを1〜50質量%、水酸基含有モノマーを0.5〜30質量%含む
ことを特徴とする焼成ペースト用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0021】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの両方または一方を示すために用いられ、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの両方または一方を示すために用いられ、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの両方または一方を示すために用いられる。
【0022】
<焼成ペースト用樹脂組成物>
本発明の焼成ペースト用樹脂組成物は、重量平均分子量1万〜50万、ガラス転移温度30℃以上の酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、重量平均分子量1万〜50万、ガラス転移温度30℃以上の窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)とのブレンド物である。
【0023】
<酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)>
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、カルボキシル基および/またはスルホン酸基を含有する酸性基含有モノマー(モノマー(a1))と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(モノマー(a2))とを含むモノマー成分(a)を共重合して得られたものである。
【0024】
酸性基含有モノマー(モノマー(a1))
本発明に係る酸性基含有モノマー(モノマー(a1))は、酸性基としてカルボキシル基および/またはスルホン基を含有する重合性モノマーである。
【0025】
酸性基含有モノマーであるモノマー(a1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5−カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。また、スルホン酸基含有モノマーとしては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等が挙げられ、側鎖に硫酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー等も挙げられる。
【0026】
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成するモノマー成分(a)100質量%中、モノマー(a1)の使用量は、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは1〜5質量%である。前記範囲でモノマー(a1)を共重合して得られた酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を、窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)とブレンドすることにより、ペーストの高粘度化と擬塑性を両立でき、種々印刷方式に適合する粘度を有する焼成ペースト用樹脂組成物が得られる。
【0027】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(モノマー(a2))
(メタ)アクリル酸アルキルエステルであるモノマー(a2)としては、例えば、CH
2=CR
1−COOR
2で表される化合物が挙げられる。式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数1〜18のアルキル基である。上記アルキル基の炭素数は1〜4が好ましい。
【0028】
モノマー(a2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、iso−ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、iso−デシル(メタ)アクリレート、ウンデカ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso−ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらモノマー(a2)は、得られる酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)のTgが30℃以上となるように選択され、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成するモノマー成分(a)100質量%中、モノマー(a2)の使用量は、通常30〜97質量%、好ましくは40〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%である。モノマー(a2)が前記範囲で含まれていると、各種溶媒への溶解性や焼成性が良好な焼成ペースト用樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
水酸基含有モノマー(モノマー(a3))
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成するモノマー成分(a)は、各種フィラーの分散性や粘度特性の向上の観点から、共重合成分として、水酸基含有モノマー(モノマー(a3))を含むものであってもよい。ただし、後述のモノマー(b1)に記載する水酸基含有(メタ)アクリルアミド類はモノマー(a3)には含まれない。
【0031】
モノマー(a3)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートでのヒドロキシアルキル基の炭素数は、通常2〜8、好ましくは2〜6である。また、ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環状アルキルを有する水酸基含有モノマーも使用することが可能である。
【0032】
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成するモノマー成分(a)としてモノマー(a3)を使用する場合、その使用量は、モノマー成分(a)100質量%中、通常0.5〜30質量%、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは3〜15質量%である。モノマー(a3)が前記範囲で含まれていると、各種フィラーの分散性が良好で、塗工に適切な粘度を有する焼成ペーストを得ることができる。
【0033】
その他の(メタ)アクリル酸エステル
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成するモノマー成分(a)は、モノマー(a1)〜(a3)の他に、任意の共重合成分として、例えば、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートなどの、その他の(メタ)アクリル酸エステルを含むことができる。
【0034】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−エトキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成するモノマー成分(a)100質量%中、上記その他の(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
【0038】
その他の(メタ)アクリル酸エステルは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
共重合性モノマー
また、酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成するモノマー成分は、酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)の物性を損わない範囲で、例えば、スチレン系単量体、酢酸ビニルなどのその他の共重合性モノマーをモノマー成分(a)に含むことができる。
【0039】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、へキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨウ化スチレン等のハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレンが挙げられる。
【0040】
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成するモノマー成分(a)100質量%中、上記その他の共重合性モノマーの使用量は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0041】
その他の共重合性モノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
<酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)の物性>
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算値で、1万〜50万、好ましくは2万〜30万であり、さらに好ましくは3万〜15万である。
【0042】
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)のMwが上記範囲であると、糸曳き性、スクリーン印刷性に優れた焼成ペースト用樹脂組成物を得ることができる。
【0043】
また、ガラス転移温度(Tg)は示差走査型熱量計(DSC)による測定で求められる。
【0044】
測定条件としては試料5mg、窒素雰囲気下とし、1回目の測定(1st RUN)で昇温速度20℃/分で−100℃から200℃まで昇温した後、降温速度99.9℃/分で−100℃まで冷却し、さらに2回目の測定(2nd RUN)で昇温速度20℃/分で−100℃から200℃まで昇温した。ここでガラス転移温度は2nd RUNに おいて−100℃から200℃まで昇温したときに測定されるDSC曲線のベースラインが吸熱方向にシグモイド型に変化する領域において、シグモイド型に変化する領域より低温側のベースラインの延長線と、シグモイドにおける変曲点の接線の交点を指す。
【0045】
DSCよって求められる酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)のTgは、通常30℃以上、好ましくは50〜150℃である。このようなTgを有する酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を用いることにより、糸曳き性、焼成性に優れた焼成ペースト用樹脂組成物を得ることができる。酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)のTgが30℃より低い場合、ポリマー重合時不均化停止反応が少なくなるため、解重合性が悪く、焼成ペースト用樹脂組成物の焼成後に炭素残渣が残り、また、印刷表面のべたつきを生じてしまう等の不具合を起こす恐れがある。
【0046】
<窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)>
窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、窒素含有モノマー(モノマー(b1))と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(モノマー(b2))とを含むモノマー成分(b)を共重合して得られたものである。
【0047】
窒素含有モノマー(モノマー(b1))
モノマー(b1)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−iso-プロピル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;
(メタ)アクリルロイルモルフォリン、(メタ)アクリロイルピロリドン、(メタ)アクリロイルピロリジン等の環状(メタ)アクリルアミド類;
N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類;
N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール等のN−ビニル環状アミド類などが挙げられる。
【0048】
さらに、上記以外のモノマー(b1)として、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、ウレイド(メタ)アクリレート等も使用することが可能である。
【0049】
窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)を形成するモノマー成分(b)100質量%中、モノマー(b1)の使用量は、通常1〜50質量%、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。前記範囲でモノマー(b1)を共重合して得られた窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)を、酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)とブレンドして得られる樹脂組成物を用いることで、ペーストの高粘度化と擬塑性を両立でき、種々印刷方式に適合する粘度を有する焼成用ペーストが得られる。これらモノマー(b1)のうち、糸曳き性、スクリーン印刷性、および、酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)とブレンドした際に、酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)と窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)間で適した水素結合ネットワークを形成できる点で、ヘテロ環構造を有するものが好ましく、特に2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0050】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(モノマー(b2))
モノマー(b2)としては、上記モノマー(a2)と同様のものが使用できる。
窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)を形成するモノマー成分(b)100質量%中、モノマー(b2)の使用量は、通常30〜97質量%、好ましくは40〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%である。モノマー(b2)が前記範囲で含まれていると、各種溶媒への溶解性や焼成性の点で優れた焼成ペースト用樹脂組成物を得ることができる。
【0051】
水酸基含有モノマー(モノマー(b3))
窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)を形成するモノマー成分(b)は、各種フィラーの分散性や粘度特性向上の観点から、共重合成分として、水酸基含有モノマー(モノマー(b3))を含むものであってもよく、モノマー(b3)としては、上記モノマー(a3)と同様のものを使用できる。
【0052】
窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)を形成するモノマー成分(b)100質量%中、モノマー(b3)の使用量は、0.5〜30質量%、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは3〜15質量%である。モノマー(b3)が前記範囲で含まれていると、各種フィラーの分散性が良好で、塗工に適切な粘度を有する焼成ペーストを得ることができる。
【0053】
窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)を形成するモノマー成分(b)は、物性を損なわない範囲で、モノマー(b1)〜(b3)の他に、モノマー成分(a)に含むことのできるその他の(メタ)アクリル酸エステルおよび共重合性モノマーとして上記したような任意の共重合成分を含むものであってもよい。
<窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)の物性>
窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算値で、通常1万〜50万、好ましくは2万〜30万であり、さらに好ましくは3万〜15万である。
【0054】
窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)のMwが上記範囲であると、糸曳き性、スクリーン印刷性に優れた焼成ペースト用樹脂組成物を得ることができる。
【0055】
また、窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)のガラス転移温度(Tg)は、上記酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)と同様、ガラス転移温度(Tg)は示差走査型熱量計(DSC)により測定して求められる。
【0056】
DSCにより求められる窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)のTgは、通常30℃以上、好ましくは50〜150℃である。このようなTgを有する窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)を用いることにより、糸曳き性、焼成性に優れた焼成ペースト用樹脂組成物を得ることができる。窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)のTgが30℃より低い場合、ポリマー重合時不均化停止反応が少なくなるため、解重合性が悪く、焼成ペースト用樹脂組成物の焼成後に炭素残渣が残り、また、印刷表面のべたつきを生じてしまう等の不具合を起こす恐れがある。
【0057】
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)および窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)の製造方法
本発明の酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)および窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)の重合方法は、特に制限されるものではないが、通常は溶液重合を用いることが好ましい。溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、各モノマー、重合開始剤を仕込み、窒素等の不活性ガス気流中、適当な重合温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行われる。この場合、有機溶媒、各モノマー、重合開始剤および/または連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0058】
重合用有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサ等で例示される芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、iso−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油等で例示される脂肪族系または脂環族系炭化水素;酢酸アルキル(ここで、アルキルとしてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなどが例示される。以下、同じ。)、安息香酸メチル等で例示されるエステル;エチレングリコールもしくはジエチレングリコールのモノアセテート、ジアセテート、アルキルエーテルアセテート(例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、モノアルキルエーテル、ジアルキルエーテル等で例示されるエチレングリコールの誘導体;プロピレングリコール、ジプロピレンエチレングリコール、トリプロピレングリコールのいずれかのグリコールのモノアセテート、ジアセテート、アルキルエーテルアセテート、モノアルキルエーテル(例えば、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル)、ジアルキルエーテル等で例示されるプロピレングリコール誘導体;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等で例示されるケトン、テキサノール(2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールモノ−iso−ブチレート)などを挙げることができる。これらの有機溶媒はそれぞれ単独で、または、2種以上混合して用いることができる。
【0059】
重合用有機溶媒としては沸点が高い溶剤が好ましく、具体的には沸点が50〜300℃の溶剤がより好ましい。
【0060】
重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジ−iso−プロピルパーオキシジーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシビバレート等で例示される有機過酸化物;2,2'−アゾビス−iso−ブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等で例示されるアゾ化合物などをそれぞれ単独又は組み合わせて使用することができる。
【0061】
重合開始剤の使用量は、酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成するモノマー成分(a)、または窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)を形成するモノマー成分(b)の合計100質量部当り、一般には、0.01〜5質量部であり、0.02〜2質量部の範囲内とすることが好ましい。
【0062】
連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリセロール、β−メルカプトプロピオン酸、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。連鎖移動剤を用いることにより、製造される酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)および窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量を制御することができる。これらの連鎖移動剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0063】
連鎖移動剤は、酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成するモノマー成分(a)、または窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)を形成するモノマー成分(b)100質量部に対して、通常1質量部以下、好ましくは0.01〜0.5質量部の範囲内の量で使用することができる。
【0064】
重合温度としては、40〜180℃が好ましい。重合温度が上記範囲であると、充分な反応速度が得られるとともに、温度が高すぎることによる解重合が生じることもない。
【0065】
上記重合温度で反応させる時間は4〜16時間が好ましい。反応時間が上記範囲であると、反応を完全に進行させることができる。
【0066】
ポリマーの重量平均分子量を、本発明の範囲とするためには、重合開始剤を重合の初期に添加することに加えて、重合がある程度進行してから、さらに重合開始剤を添加することも好ましい。その場合、重合開始剤の使用量は、すべての添加量の合計で上記範囲内にあることが好ましい。
【0067】
上記反応を行なった後、反応混合物は室温まで冷却する。そして、ヘキサン等の非極性溶媒を用いて、ポリマーを析出させる。析出したポリマーは濾別して、乾燥させる。
<焼成ペースト用樹脂組成物>
本発明に係る焼成ペースト用樹脂組成物は、酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)とのブレンド物である。
【0068】
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)および窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)のブレンド比としては、酸性基含有モノマーであるモノマー(a1)と窒素含有モノマーであるモノマー(b1)のモル比(モノマー(a1)とモノマー(b1)の合計を100モル%とした場合のモル%比)が、モノマー(a1):モノマー(b1)=5:95〜85:15の範囲であることが好ましく、10:90〜80:20の範囲であることがより好ましく、40:60〜80:20の範囲であることがさらに好ましい。
【0069】
酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)および窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)のブレンド比を、前記範囲とした焼成ペースト用樹脂組成物を用いることで、糸曳き現象を起こさず、ペーストの高粘度化と擬塑性を両立した塗工性に優れる焼成ペーストを提供できる。
【0070】
なお、一般に、ポリマー鎖内およびポリマー鎖間の相互作用が強すぎると、糸曳き現象が確認され、相互作用が弱いほど糸曳き減少は抑制されると考えられる。
【0071】
一方で、相互作用が弱すぎると、焼成ペースト用樹脂の粘度が下がりすぎてしまい、焼成ペースト用樹脂を含む組成物を基材に塗布した際に塗膜を形成することが難しくなる等の問題が生じてしまうが、塗工時には組成物の粘度が下がった方が望ましい。なぜなら、たとえばスクリーン印刷により焼成ペースト用樹脂組成物を基板に塗布する場合は、焼成ペースト用樹脂組成物を目の細かなメッシュ上にスキージで擦って塗布するため、焼成ペースト用樹脂組成物がメッシュをきれいに通り抜ける必要があるためである。
【0072】
したがって、焼成ペースト用樹脂には、適度な粘度を有しつつ、塗工時には擦りや攪拌等の応力を与えることにより適度な流動性(擬塑性)を有するといいう二律背反の特性が求められる。
【0073】
本発明に係る焼成ペースト用樹脂では、酸性基と窒素含有基との間の相互作用により、水素結合ネットワークが形成されているものと考えられる。そして、このネットワークは、焼成ペースト用樹脂に適度な粘度を生じさせる一方で、共有結合よりも弱いため、塗工時には擦りや攪拌等の応力により容易に切断される。
【0074】
その結果、酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)および窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)をブレンドした焼成ペースト用樹脂は、適度な粘度を有しながら、擦りや攪拌等により応力を与えると流動性が生じ、良好な塗工性を発揮するという良好なチキソトロピック性を発揮しているものと考えられる。
【0075】
<焼成ペースト>
本発明の焼成ペーストは、上記酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)および窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)のブレンド物からなる焼成ペースト用樹脂組成物、溶剤(C)および無機粉末(D)を含み、さらに、必要に応じて分散剤(E)を含む。
【0076】
焼成ペースト用
本発明の焼成ペーストは、焼成ペースト100質量%中、焼成ペースト用樹脂組成物(酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)および窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)のブレンド物)を、1〜20質量%含むことが好ましく、4〜10質量%含むことがより好ましい。
【0077】
焼成ペースト用樹脂組成物(酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)および窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)のブレンド物)の含有割合が前記範囲にあると、溶剤(C)との相溶性が良好であるとともに、得られる焼成ペーストに適度な粘性を付与することができ、焼成ペーストの無機粉末(D)の分散性および焼成ペーストの基板への結着性も良好である。
【0078】
溶剤(C)
溶剤(C)としては、焼成後に残渣が残らず、酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)および窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B)を溶解することができる溶剤であれば制限なく用いることができる。
【0079】
溶剤(C)としては、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールアルキルエーテルアセテート(ここで、アルキルとしては、エチル、プロピル、n−ブチルなどが例示される。以下同じ。)、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールモノ−iso−ブチレート、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールジ−iso−ブチレート等の有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤はそれぞれ単独で、または、2種以上混合して用いることができる。
【0080】
これらの溶剤の内、沸点、レベリング性の観点から、より好ましい溶剤は、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、ブチルカルビトールアセテートである。
【0081】
また、溶剤(C)の沸点は150〜300℃であることが好ましく、200〜290℃であることがより好ましく、220〜280℃であることがさらに好ましい。沸点が上記範囲にあると、焼成ペーストをスクリーン印刷した後のペーストの乾燥速度が速すぎて版の目詰まりとなることもない一方で、乾燥速度が遅すぎて作業性が低下することもない。
【0082】
本発明の焼成ペーストは、焼成ペースト100質量%中に、溶剤(C)を20〜70質量%含むことが好ましく、30〜60質量%含むことがより好ましい。
【0083】
溶剤(C)の割合が上記範囲にあると、焼成ペースト用樹脂組成物との相溶性が良好であるとともに、得られる焼成ペーストが所望の粘度を発現することができる。
無機粉末(D)
無機粉末(D)としては、例えば、金属粉末、金属酸化物粉末、ガラス粉末、顔料粉末、蛍光体粉末、セラミック粉末、およびこれらに感光性を付与した粉末等が挙げられる。これらの無機粉末は用途に応じて選択されるが、それぞれ単独で、または、2種以上混合して用いることができる。
【0084】
金属粉末および金属酸化物粉末は、導電性粉末として用いられることが好ましく、ガラス粉末およびセラミック粉末は、誘電体粉末として用いられることが好ましい。
【0085】
金属粉末としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、タングステンやこれらの合金等からなる粉末等が挙げられる。金属酸化物粉末としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等が挙げられる。ガラス粉末としては、例えば、酸化ビスマスガラス、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、亜鉛ガラス、ボロンガラスや各種ケイ素酸化物のガラス粉末等が挙げられる。セラミック粉末としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等が挙げられる。
【0086】
本発明の焼成ペーストは、焼成ペースト100質量%中に、無機粉末(D)を20〜70質量%含むことが好ましく、35〜60質量%含むことがより好ましい。
【0087】
無機粉末(D)の割合が上記範囲にあると、本発明の焼成ペーストから得られる焼成体の導電性等の各性能が良好であるとともに、焼成ペースト中での分散性も良好である。
【0088】
分散剤(E)
分散剤(E)としては、例えば、カチオン系分散剤、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、両性界面活性剤、高分子系分散剤が挙げられる。これらの分散剤はそれぞれ単独で、または、2種以上混合して用いることができる。
【0089】
カチオン系分散剤としては、ポリアミン系の分散剤等が挙げられる。アニオン系分散剤としては、カルボン酸系、リン酸エステル系、硫酸エステル系、スルホン酸エステル系の分散剤等が挙げられる。ノニオン系分散剤としては、ポリエチレングリコール系分散剤等が挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボン酸と第4級アンモニウム塩とを有する界面活性剤等が挙げられる。高分子系分散剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0090】
本発明の焼成ペーストは、分散剤(E)を使用する場合には、焼成ペースト100質量%中に、分散剤(E)を0.01〜5質量%含むことが好ましく、0.1〜3質量%含むことがより好ましい。
【0091】
分散剤(E)の割合が上記範囲にあると、無機粉末(D)の焼成ペースト中での分散性がより良好となる。
添加剤
本発明の焼成ペーストは、上述した成分のほかに、本発明の目的を損なわない範囲で従来知られている可塑剤、湿潤剤、消泡剤等を含有してもよい。
【0092】
焼成ペーストの製造方法
本発明の焼成ペーストは、後述のとおり粘性を有するため、上述した各成分の混合物を、ミキサー、ロール等を単独または適宜組み合わせて1段階または数段階に分けて混練することによって製造されることが好ましい。また、必要に応じて、30〜150℃で加熱してもよい。
【0093】
焼成ペーストの粘度
本発明の焼成ペーストの25℃における粘度は、好ましくは20〜200Pa・s、より好ましくは50〜200Pa・s、さらに好ましくは100〜200Pa・sである。焼成ペーストの粘度が前記範囲にあると、塗工性に優れるとともに塗膜形成性も優れる。粘度の測定方法は、後述の実施例に記載の方法による。上記粘度は、焼成ペーストを組成物が均一な状態になるまで混練してから測定した値である。
【0094】
焼成ペーストの使用方法
上記焼成ペーストは、通常、基材に塗布したのち(以下「塗布工程」ともいう。)、乾燥させ(以下「乾燥工程」ともいう。)、積層物を焼成して(以下「焼成工程」ともいう。)使用される。
【0095】
塗布工程における基材としては、金属、セラミックス、グリーンシート、プラスチック、半導体等の部材が挙げられる。
【0096】
塗布工程における塗布方法としては、スクリーン印刷、ダイコート印刷、ドクターブレード印刷、ロールコート印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンス印刷等を用いた塗布法、シート状に加工するためのキャスティング法が挙げられ、スクリーン印刷が好ましい。
【0097】
乾燥工程は、溶剤(C)の乾燥を行う。
【0098】
焼成工程は、焼成ペースト用樹脂(酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A)および窒素含有(メタ)アクリル系ポリマー(B))を熱分解させるため、窒素ガス等の不活性ガス気流下、通常500〜1,000℃で、1〜5時間行われる。
【0099】
焼成ペーストの用途
本発明の焼成ペーストの具体的な用途としては、MLCCの製造に用いられる内部電極用ペースト、端子電極用ペースト、低温同時焼成セラミックス(LTCC)の製造に用いられる内部電極用ペースト、タッチパネルスクリーン用ペースト、PDP製造に用いられる誘電体ペースト、隔壁材ペースト、蛍光体ペーストやFEDの封止やICパッケージの封止に用いられる封止用ガラスペースト、グリーンシート用ペースト等が挙げられ、例えば、MLCCのグリーンシートの製造のために使用することが好ましい。ここで、グリーンシートとは、焼成ペーストを基材に塗布して得られた薄板状の未焼成体を意味する。
【0100】
本発明の焼成ペーストを用いて、例えば、以下の方法を用いてMLCCを製造することができる。セラミック原料に、エタノール、およびポリビニルブチラール系バインダーを加えて混合、分散し、セラミックスラリーを作製する。次いで、このセラミックスラリーをシート状に成形し、セラミックグリーンシートを得る。そして、このセラミックグリーンシートに、内部電極形成用の本発明の焼成ペースト(無機粉末(D)としてニッケル粉末を使用)を印刷して、内部電極パターン(導電性ペースト層)を形成し、乾燥させる。
【0101】
次いで、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを、内部電極パターンが交互に逆の端部側に引き出されるように複数枚積層し、未焼成の積層体を得る。
【0102】
上記未焼成の積層体を、N
2等の不活性ガス雰囲気中で焼成してセラミック積層体(積層セラミック素子)を得る。焼成後得られたセラミック積層体の両端面にCuペーストを塗布し、N
2等の不活性ガス雰囲気中で焼成し、内部電極と電気的に接続された端子電極を形成することにより、MLCCが得られる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
実施例における各値の測定条件は以下の通りである。
<重量平均分子量(Mw)>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)による分析を行い、ポリスチレン換算により算出した。
・測定装置:HLC−8320GPC(東ソー社製)
・GPCカラム構成:以下の4連カラム(すべて東ソー社製)
(1)TSKgel HxL−H(ガードカラム)
(2)TSKgel GMHxL
(3)TSKgel GMHxL
(4)TSKgel G2500HxL
・流速:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・サンプル濃度:1.5(w/v) (テトラヒドロフランで希釈)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
【0105】
[製造例1]
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、酢酸エチル100質量部、およびiso−ブチルメタクリレート88質量部、メタクリル酸2質量部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート10質量部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら30分攪拌して窒素置換を行った後、フラスコの内容物を80℃まで昇温した。次いで、フラスコ内の内容物を80℃に維持しながら、2,2'−アゾビス−iso−ブチロニトリル(AIBN)0.3質量部を1時間おきに計5回添加した。80℃で、最初のAIBN投入より8時間反応させた後、室温まで冷却した。得られたポリマー溶液を、n−ヘキサン2000質量部中へ30分かけて滴下を行い、ポリマー析出物を生成させた。ポリマー析出物については、200メッシュ金網で濾別し、105℃で8時間乾燥することで、酸性基含有(メタ)アクリル系ポリマー(A1)(ポリマー(A1))を調製した。得られたポリマー(A1)の重量平均分子量(Mw)は8万であり、ガラス転移温度(Tg)は48℃であった。
【0106】
[製造例2〜9]
重合反応に用いたモノマー成分を表1および表2に示すように変更したこと以外は製造例1と同様に行い、ポリマー(A2)〜(A4)、および、ポリマー(B1)〜(B5)を調製した。結果を表1、表2に示す。
【0107】
なお、ポリマー(A4)、ポリマー(B5)については、添加するAIBNを0.3質量部から2質量部に変更して調製した。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
[実施例1]
ポリマー(A1)を2.7質量部、ポリマー(B1)を7.3質量部(モノマー(a1):モノマー(b1)のモル%比=9.0:91.0)を混合して得られる焼成ペースト用樹脂組成物10質量%と、溶剤としてのジヒドロターピニルアセテート(沸点:220℃)90質量部を混合し、ポリマーが溶剤に溶解した後、無機粉末としてのNiフィラー(平均粒径200nm)を100質量部配合し、自転・公転ミキサー(商品名「あわとり練太郎」、シンキー社製)で混練した。その後、さらに3本ロールで混練して、焼成ペーストを得た。焼成ペーストの各物性の測定結果を表3に示す。
【0110】
[実施例2〜5、
参考例1、比較例1〜4]
実施例1において、各ポリマーの配合種、および配合比を表3に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして焼成ペーストを製造し、各物性を評価した。測定結果を表3、表4に示す。
【0111】
《評価》
<粘度>
実施例・比較例で得られた焼成ペーストを、E型粘度計によって25℃にて粘度の測定を行ない、以下の基準で評価した。
【0112】
粘度が100Pa・s以上、200Pa・s以下の場合:A
粘度が50Pa・s以上、100Pa・s未満である場合:B
粘度が20Pa・s以上、50Pa・s未満である場合:C
粘度が20Pa・s未満である場合:D
【0113】
<印刷性>
実施例・比較例で得られた焼成ペーストをガラス板に640メッシュ、ギャップ0.1mm、速度30cm/秒でスクリーン塗工、乾燥したものの表面粗さ(Ra)を表面粗さ計で測定し、該表面粗さ(μm)の値を指標として以下の基準にしたがって印刷性を評価した。
【0114】
Raが0.20以下である場合:A
Raが0.20を超えかつ0.30以下である場合:B
Raが0.30を超えかつ0.40以下である場合:C
Raが0.40より大きい場合:D
【0115】
<糸曳き性>
E型粘度計により25℃で測定した粘度が10Pa・sとなるように実施例・比較例に記載の配合比で配合したポリマー(A)およびポリマー(B)のブレンド物(焼成ペースト用樹脂組成物)を、ジヒドロターピニルアセテート溶剤に溶解した溶液に、ガラス棒を突き刺し引き上げた際に、溶液表面とガラス棒間に糸状で存在する溶液が切れるのに要する時間について測定を行い、以下の基準で評価した。
【0116】
3秒以下で溶液が切れる場合:A
3秒を超えて溶液が切れる場合:B
<焼成性>
実施例・比較例記載の配合比で配合したポリマー(A)およびポリマー(B)のブレンド物(焼成ペースト用樹脂組成物)を窒素雰囲気中700℃で1時間の焼成(TG−DTA)を行った場合の残炭の有無を以下の基準にしたがって目視にて確認して、共重合体の焼成性を以下の基準で評価した。
【0117】
残炭がない場合:A
残炭が有る場合:B
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
実施例1〜
5の焼成ペーストは、適度な粘性を有し、印刷性が良好で、焼成性も良好であることがわかる。
【0120】
比較例1のように、ポリマー(A)およびポリマー(B)のTgが30℃より低い場合、解重合性が悪いため焼成性が悪く、また、印刷表面もべたつきを生じてしまう。
【0121】
比較例2のように、Mwが50万よりも小さいポリマー(A)とポリマー(B)とをブレンドしたものでは粘性が低く、印刷性がよくない。
【0122】
比較例3および4のように、ポリマー(A)およびポリマー(B)のブレンドにおける、モノマー(a1)とモノマー(b1)のブレンド比が本発明の範囲を外れたものや、比較例5および6のように、ポリマー(A)またはポリマー(B)を単独で用いたものは、適度な粘度のものを調製することが困難である。
【0123】
したがって、本発明の焼成ペースト用樹脂は、ポリマー(A)およびポリマー(B)を、所定の割合でブレンドすることにより、高粘度化と擬塑性とを両立させ、種々印刷方式に適合した焼成ペースト用樹脂組成物を提供できることがわかる。