特許第6667501号(P6667501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6667501生存菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムを含む、皮膚および粘膜の皮膚糸状菌症および酵母感染症の処置用製剤、微生物ピシウム・オリガンドラムの細胞生存率を決定する方法ならびに該製剤の適用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667501
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】生存菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムを含む、皮膚および粘膜の皮膚糸状菌症および酵母感染症の処置用製剤、微生物ピシウム・オリガンドラムの細胞生存率を決定する方法ならびに該製剤の適用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/06 20060101AFI20200309BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20200309BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20200309BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20200309BHJP
   G01N 33/50 20060101ALN20200309BHJP
   G01N 33/68 20060101ALN20200309BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20200309BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALN20200309BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALN20200309BHJP
【FI】
   A61K36/06 ZZNA
   A61P17/00 101
   A61P31/10
   A61P1/02
   A61K9/08
   A61K9/10
   A61K47/12
   A61K47/04
   A61K47/10
   A61K47/26
   A61K47/06
   !G01N33/50 P
   !G01N33/68
   !C12N1/20 E
   !C12Q1/6844
   !C12Q1/06
【請求項の数】1
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-504824(P2017-504824)
(86)(22)【出願日】2016年8月22日
(65)【公表番号】特表2018-528154(P2018-528154A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】CZ2016000095
(87)【国際公開番号】WO2018001392
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2017年2月15日
(31)【優先権主張番号】PV2016-403
(32)【優先日】2016年7月1日
(33)【優先権主張国】CZ
(31)【優先権主張番号】PV2016-417
(32)【優先日】2016年7月8日
(33)【優先権主張国】CZ
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517025361
【氏名又は名称】バイオ エージェンス リサーチ アンド ディベロップメント − バード、エス.アール.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】スチャネク、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】クリメス、ラディン
【審査官】 横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−510100(JP,A)
【文献】 チェコ国特許発明第00028816(CZ,B6)
【文献】 国際公開第2016/112881(WO,A1)
【文献】 特開昭55−022668(JP,A)
【文献】 国際公開第1998/016110(WO,A1)
【文献】 Mycologia, 2006, Vol.98 No.3, p.410-422
【文献】 Ann appl Biol., 1990, Vol.116, p.205-212
【文献】 FEMS Microbiol Ecol., 2000, Vol.33, p.139-146
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 9/00
A61K 47/00
A61P
C12Q 1/00
G01N 33/00
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1〜99.9重量%の菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムと、0.1〜99.9%の、吸着剤、バッファー、保湿剤、デオドラント剤および芳香剤を含む群からの少なくとも1つの成分を含有する補助物質とを含有する乾燥混合物を水に分散させた水性懸濁液の形態である、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムを含有する、皮膚および粘膜の皮膚糸状菌症および酵母感染症の処置用製剤であって、適用部位において前記水性懸濁液1ml当たり、10個〜50個の微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞を含有することを特徴とし、ここで微生物ピシウム・オリガンドラムのβ−チューブリンの構成遺伝子の発現レベルを遺伝子測定により測定する方法により決定される前記微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞は休眠卵胞子、被嚢遊走子および生存多核菌糸体を含む、製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラム(Pythium oligandrum)を含む、皮膚および粘膜における皮膚糸状菌症(dermaphytoses)および酵母感染症の処置用製剤に関する。この製剤は、0.1〜99.9重量%の菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムと、0.1〜99.9%の、吸着剤、バッファー、保湿剤、デオドラント剤および芳香剤を含む群からの少なくとも1つの成分を含有する補助物質とを含有する乾燥混合物から調製される水性懸濁液の形態になる。
【0002】
さらに、本発明は、微生物ピシウム・オリガンドラムの細胞生存率を決定する方法に関する。
【0003】
本発明はまた、この製剤を適用する方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
皮膚糸状菌症(dermaphytoses)は、特に皮膚、爪および毛髪を襲う好角質性真菌である皮膚糸状菌により引き起こされ、長い潜伏期間を特徴とする真菌感染症である。これは主に、免疫分子による認識からこれらの好角質性真菌の表面を有効にマスキングした結果、宿主の免疫系による反応を最小にすることによって促進される。好角質性真菌は、ヒトの身体の表面全体の皮膚に存在する角質タンパク質を、有効な酵素分解および消化成分の代謝によりこれらの生存維持物質として使用する。これらのカビはトリコフィトン属(Trichophyton)、エピデルモフィトン属(Epidermophyton)およびミクロスポルム属(Microsporum)に代表され、これらの微生物がそれらの生活スタイルを生存可能にするための因子の分子特性はすでに特定されている(6)。皮膚および粘膜の真菌症は、一般に刺激、発赤、薄片もしくは皮膚のさらにより大きな領域の剥離を含む、さまざまな兆候を特徴とし、皮膚は、より敏感な領域において時として白くふやける。一般に付随する症状としては、発汗の増加および患部の腸内毒素症の進行の証拠となる社会的に煩わしい臭気(悪臭)症状が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
皮膚糸状菌症(dermaphytosis)の同意語は白癬症であり、それらの解剖学的局在化に依存して、皮膚糸状菌症の最も一般的な形態は、足部白癬(足の上)、爪白癬(爪の下)、体部白癬(身体、主に胴の毛髪野内部分および下肢の近位部分の真菌感染症)、股部白癬(鼠径領域、ぴったりとした衣服で汗をかいた後の、夏の間の若い男性に最も一般的)、頭部白癬(ふさふさした頭髪中短い切れ毛の丸い病巣、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)などの動物好性皮膚糸状菌と接触した児童に最も多い)である。皮膚糸状菌症(dermaphytoses)は通常死に至る病ではないが、人口のかなりの割合を襲う極めて広汎性の感染症であり、その症状はこれらを患うヒトの仕事および社会的生活を不快にする。
【0006】
酵母菌日和見感染症は、ヒトの比較的広範囲に及ぶ現代病であり、ヒトの皮膚および粘膜に生存する普通無害な片利共生酵母が、ストレス、過労、ウイルス感染または他のストレス状態の間に免疫系が弱った結果活性化され、異なる形態学および代謝により特徴付けられる侵攻性形態に変化する。調査は、最も一般的な病原性酵母のカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびその近縁種に圧倒的に集中する。分子および遺伝子研究は、近年、病原性酵母によるこの異常な挙動の原因となる個別の因子の特定に寄与しており、これを特定することが、新たに開発された療法の後続の重要な目標である(2)。
【0007】
皮膚糸状菌および酵母による感染症の処置に現在利用可能な療法は、アゾール、アリルアミンおよびエキノカンジンの群に由来する化学的抗真菌製品が主流であるが、これらはその有効性の低さおよび使用者の幅広い群(高齢者、糖尿病または肝臓疾患を有する人々、免疫が弱った人々)に害をなす頻繁な副作用のために評判が悪い。これらの製品を使用する療法は、相対的に非常に高価であり、一時的な効果しか有さない。これらの製品は、このタイプの病気に付随する腸内毒素症(正常な生理的細菌叢の崩壊)に対処することはできない。この理由のため、長期にわたって有効な、正常な細菌叢を安定化する最新の処置が大きな課題である。
【0008】
皮膚糸状菌症(dermaphytoses)および酵母感染症に対する天然の生物学的製品の使用は、このように、最小限の開発に留まっている。ピシウム・オリガンドラム微生物を皮膚の保護に使用する問題は、Biopreparaty spol.sr.o.の従業員、発明者Veselyら、優先日1999年11月18日による実用新案CZ 9883Uにおいて扱われている。著者らは、9群の患者において特定の皮膚問題を扱うために、製品1g当たり2×10個を超えない量の卵胞子の懸濁液を使用する。しかし、CZ 9883Uの著者は誤った推定をしており、CZ 9883Uは皮膚糸状菌症の原因菌の除去には当たらず、このような論争を立証する証拠はこの文献内に存在しない。この著者らは、微生物ピシウム・オリガンドラムのスコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis breviacaulis)に対する効果の実験室結果を提示しているが、この微生物は土壌腐敗菌である(皮膚糸状菌ではない)。CZ UV9883においてモニターされた患者のうち微生物試験を実施された患者は全くおらず、したがって、これらの患者が実際にはどのように皮膚糸状菌に侵されたかを証明することは不可能である。公表された治療効果に関係する範囲において、患者が医学的にモニターされたという文献中の記述はなく、多くの事例において、その多くが、記載の効果に関する彼らの主観的感覚(爪の色の変化、痛みの消失)の事柄である。この発明の出願人による特許CZ302297は、初めてより高濃度の卵胞子(製品1g当たり2×10個超)を毒性試験に使用したが、ヒトの皮膚糸状菌症または酵母感染症の問題をより詳細に扱っていない。一方で、この溶液の有利性は、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムが水性懸濁液環境以外の環境、例えば軟膏、油および他の形態の適用において作用する能力をまず明らかにしたことである。さらに、休眠卵胞子以外の微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞の形態、特に、微生物ピシウム・オリガンドラムの直接菌類寄生に最も有効な形態である被嚢遊走子および菌糸体の生存断片の有意性が初めて強調された。この発明の出願人による実用新案CZ28816Uは、詳細には二重微生物製剤を使用して微生物日和見感染症の問題に対処するが、これらはコロニー形成単位(CFU)を使用する伝統的な方法で特徴付けられ、微生物ピシウム・オリガンドラムの場合、その使用は落とし穴がないわけではない。
【0009】
既存の解決策の欠点および医薬品開発への道に対する大きな制約は、したがって、有効物質ピシウム・オリガンドラムの性質についての完全な理解の欠如であり、製剤中のその量は通常正確に決定できない。したがって、このような製剤の強度および有効性の定義は、確認および再現が困難であると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記で明示した欠点は、本発明の請求項1に記載の、皮膚および粘膜の皮膚糸状菌症および酵母感染症の処置において菌類寄生生物ピシウム・オリガンドラムを含有する製剤により排除または有意に制限され、その根本的要素は、前記製剤が、適用部位に適用される水性懸濁液1ml当たり1〜10×10個、好ましくは10〜50個の微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞を含有し、それによって微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞が休眠卵胞子、被嚢遊走子および生存多核菌糸体を含有するという事実に基づく。
【0011】
さらに、前記発明の新しい主題は、微生物ピシウム・オリガンドラムの細胞生存率を決定する方法でもある。本発明において菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの細胞生存率とは、栄養に富んだ培地において標準大気中30℃で維持された、微生物ピシウム・オリガンドラムのβ−チューブリンの構成遺伝子の発現レベルを測定することによる、製剤の遺伝子検査(11)により決定された生存率を意味する。
【0012】
本発明はさらに、本発明に係る製剤の適用方法に関し、その根本的要素は、
a)乾燥混合物の規定量の微温湯または生理溶液への機械的分散を使用して、適用部位において水性懸濁液1ml当たり、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞が1〜10×10個、有利には1〜500個、好ましくは10〜50個となる含有量を達成する水性懸濁液を調製するステップ、
b)菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞の推奨される量の使用により処置される診断のタイプに応じて、このように作られた前記水性懸濁液を適用するステップ、
c)処置される診断に応じて適用部位において菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞をコロニー形成させるステップ、
d)処置される診断に応じて適用部位において菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞を増殖させ、皮膚糸状菌または酵母を除去するステップ、および
e)その後適用部位における前記製剤を胞子形成させ、並行して除去し、これにより正常な細菌叢の安定化および発達を促進し、長期治療効果を確保するステップ、
を含むという事実に基づく。
【0013】
軟膏、油、ゲル剤、スプレー、湿らせた絆創膏または粉末への本発明に係る製剤の適用は、特定の診断の必要条件に対応する量の生存細胞により適用患部にコロニー形成する目的で、当業者に公知の方法で実施される。
【0014】
当業者に公知の生理溶液は、例えば、最も一般的な溶液である9g/1リットルの濃度のNaClまたは例えば、10mg/1リットルの量のリン酸ナトリウムにより緩衝化された生理溶液、いわゆるPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)である。
【0015】
原理上は、すべての生存細胞が、適用場所において菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムのコロニー形成および再生を確保できる。乾燥混合物の湿潤後24〜48時間で局所条件に従って生存細胞を提供可能な休眠卵胞子が、本発明に係る製剤における最大量として代表される。本発明に係る製剤はまた、被嚢遊走子および生存多核菌糸体を含有し、これらは通常、乾燥混合物を湿潤して20分以内に生存細胞を提供できる。
【0016】
処置される診断に応じて適用部位において菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞をコロニー形成させることは、当業者に公知の様式で進行する。本発明者らの実験では、本発明に係る製剤におけるこれらすべての過程は、適用部位に、皮膚糸状菌または酵母などの標的化微生物が存在することに依存する。菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムに対するこのような標的微生物が存在する場合、これらの標的化微生物、すなわち、皮膚糸状菌または酵母に付着した後1〜2時間以内に生存細胞のコロニーが形成される。微生物ピシウム・オリガンドラムは、標的化微生物により提供された栄養を使用して1〜2日以内に増殖する。生存細胞は標的化微生物の除去のほぼ2週間以内に適用部位から消失する。このような場合、標的化微生物由来の栄養は使い果たされているので、微生物ピシウム・オリガンドラムが適用部位において、休止状態、これは胞子形成を意味するが、へ移行することが観察される。このように生じた休眠卵胞子は、これらの適用部位における動的過程、すなわち、例えば、患部から死細胞の分離および粘膜における分泌物の放出により定期的に除去されるので、皮膚および粘膜上で長期生存しない。適用部位を離れた菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムにより、正常な細菌叢の発達および安定のための条件が創出されることが、実験的に確認された。
【0017】
菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞の推奨量を含む本発明に係る製剤を適用した場合、本出願人は、皮膚糸状菌症および爪白癬の処置において、1mlの水性懸濁液中の生存細胞の推奨量は50個であるのに対して、非治癒創傷における酵母の除去では30個であり、口腔における酵母の除去では10個であることを実験的に確認した。
【0018】
爪白癬形態の皮膚糸状菌症を本発明に従って処置するために、理想的には、水性懸濁液状の製剤1ml当たり50個の生存細胞を含有する製剤を、本懸濁液0.15ml/患部面積1cmの量で、ウェットラップの形態またはクリーム、軟膏、ウェットワイプ、抗菌スプレー、湿らせたパッチおよび湿らせた粉末の形態で適用する。
【0019】
本発明に従って非治癒創傷における酵母感染症を処置するために、製剤は、理想的には生理溶液中水性懸濁液1ml当たり30個の生存細胞を含有する湿布を使用した湿式治癒製品の形態で適用され、および理想的には生理溶液中水性懸濁液1ml当たり30個の生存細胞を含有する湿布に8時間後に交換することを4日間行う。湿式治癒形態はまた、この濃度で、クリーム、軟膏、ウェットワイプ、抗菌スプレー、湿らせたパッチの形態で適用され、その後、これらの湿式治癒製品を8時間ごとに4日間にわたり交換して適用してもよい。
【0020】
本発明に従って口腔における酵母感染症を処置するために、適用は、理想的には適用水性懸濁液1ml当たり10個の生存細胞を含有する水性懸濁液状の製品ですすぐことによって実施され、すすぎは少なくとも1日2回連続5日間行う。微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞は、練り歯磨き、ゲル剤もしくは口腔スプレーに使用されてもよく、または水性懸濁液は、注射器および針を使用して処置される場所に適用されてもよい。これらのすべての適用は、少なくとも1日2回、連続5日間実施される。
【0021】
本発明の主な有利性は、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの細胞の検証済み生存率、診断のモニターにおける有意な長期治療効果の達成、乾燥状態で長期、最大2年の管理および保存可能な製剤安定性ならびに適用する際のより正確で調節された投薬量を可能としたことである。菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの、病原性酵母カンジダ・アルビカンスを抑制および死滅させる証明済みの能力は、他の診断、例えば膣真菌症(カンジダ症)に対して作用する他の製剤の開発に関する出発点として機能可能である。
【0022】
本発明の別の利点は、現在の技術レベルおよび今日までに適用された殺真菌性生物学的製剤に関して、皮膚および粘膜の皮膚糸状菌症および酵母感染症の処置用の本発明に従った製剤が、生存細胞の決定に正確な分子法が使用された、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞の量の測定に基づいて正確に規定された量の有効な生物学的物質を含有すること、ならびに臨床的にチェックされた製剤適用方法である。
【0023】
本発明は、既知の生存率の休眠卵胞子、被嚢遊走子および生存多核菌糸体を含む微生物ピシウム・オリガンドラムを使用する新世代の製剤を、低値の微生物汚染で創出することを容易にする。特許請求する製剤は、実施例に記載の実験室試験および実地試験に記載の新しい再現可能な治療効果を有する、承認および通告された製剤の配合物に含まれ得る。実験室の懸濁液試験において皮膚糸状菌および病原性酵母の成長抑制が、記載され、この抑制は、動物の皮膚糸状菌症に対する適用の間の効果、ヒトの爪白癬の処置ならびに糖尿病および非糖尿病患者の非治癒創傷ならびに口腔における病原性酵母の抑制である。
【0024】
いくつかの溶液および方法論が、生存率パラメーターを決定するための先行する調査に採用されたが、これらはいずれもこの目的に特に適切ではない。これらは、他のタイプの細胞にはよく作用するさまざまな生存細胞染色技術に基づく方法を含むが、微生物ピシウム・オリガンドラムにおいてはこれらの複雑な手順のため結果は決して信頼できないことが知られている。本発明の出願人は、高濃度のオスモライトでの原形質分離技術を把握しており、これは信頼できる結果を提供するが、顕微鏡下での観察者による主観的評価に左右される。これに加えて、ピシウム・オリガンドラムの卵胞子の無損傷についての情報は提供されているが、その生存率については情報がない。
【0025】
広く使用されている方法論の別の群は、ピシウム・オリガンドラムの生存細胞を含有する製剤をペトリ皿にプレーティングして、その後形成されたコロニーの数をモニターすることに基づく。遺憾ながら、活発なライフスタイルおよび多核菌糸体による高速の線形広がりを伴うピシウム・オリガンドラムの生物学的特性は、そうでなければ微生物学において共通基準であるこれらの方法に特に適合性を有するものではない。多くの場合、微生物ピシウム・オリガンドラムの休眠卵胞子の製剤中の生存率を決定する最終候補は、発芽卵胞子の顕微鏡による直接モニターである。しかし、対照的にこれは、予定通りの時間および使用する実験技術(ビデオ映像)の見方が要求される。
【0026】
上記の問題を考慮して、微生物ピシウム・オリガンドラムの細胞の生存率を決定する大きな希望が、分子遺伝学的技術に提起された。本発明者らの先行する研究において、本発明者らは、この微生物の2つの独立した標的遺伝子配列のqPCR増幅に基づく分子試験を使用して、生存率の決定を試みた(4)。にもかかわらず、この取り組みにより、この方法のかなり大きなバックグラウンドの結果として、高含有量の微生物ピシウム・オリガンドラムの死滅細胞を含有する多数の製剤にとって適切であることは証明されなかった。微生物ピシウム・オリガンドラムの生細胞によってのみ構成的に発現される特定の転写産物をモニターすることが、この点についてはよりよい解決であることが証明され、この微生物の豊富に発現されるタンパク質であるβ−チューブリンに関する転写産物が最終的に選択された。実験は全体で1週間かかり、(混入細菌の成長を抑制するために)ペニシリンを含有する培地において休眠卵胞子を4日間培養し、24時間ごとに試料を採取し、逆転写酵素を用いて転写に関してRT−PCR法を使用して分析した。本発明者らは、ゼロ点に対する時間依存性成長の、線形化され、測定された指数曲線を推定することによって生存率値を見いだした。
【0027】
この決定方法の有利性は、微生物ピシウム・オリガンドラムの任意の製剤中の生存細胞の量を、その菌の年齢および調製方法とは独立して、正確に決定できることである。微生物ピシウム・オリガンドラムを含有する製剤中の細胞の生存率は、その調製および保存方法に大きく依存することを強調しなければならない。この理由のため、顕微鏡的に決定された製剤中の休眠卵胞子の総数からこのパラメーターを判断することはほぼ不可能である(さまざまな決定が、微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞の量をモニターされた休眠卵胞子量の0.01%から30%であると述べており、非常に不確かなデータを提供する)。上記の理由から、微生物ピシウム・オリガンドラムの生物学的効力(有効量)を発現する既存の実践は、卵胞子の生存率を決定することなく申告されたその総数に基づき、基本的に使用が難しい再現性の低い結果を提供し、このことから、適用された物質の量を補正した後であっても、最適な薬剤投下量の決定が不可能であることは明らかである。
【0028】
新たに確立された方法を使用する場合、実験室および実地試験の結果は一貫性があり、適用混合物1ml当たり10個〜50個の生存卵胞子を含有する懸濁液のさまざまな実際の適用においてすべてが最適活性を指し示した。
【0029】
適用プロトコルの最適設定とは別に、休眠卵胞子の生存率の測定が出願人により実施され、提出した発明におけるこれ以降の記載は、製剤の個別のバッチのモニタリングにおいて安定性試験にとっても重要である。有効性試験の本発明者らの実際の実験では、休眠卵胞子の数が製剤1g当たり330個未満(適用混合物1ml当たり10個)に下がった場合、皮膚糸状菌および酵母の除去における有効性は低下し、一方、この値が製剤1g当たり33個(適用混合物1ml当たり1個)未満に低下すると、有効な効果の保証が不可能になることを、明確に証明している。また一方で、非常に高含量の休眠卵胞子を含む製剤において濃度と有効性との関係は明確に表すことができず、投入された原料の純度および観察された技術の緻密さとに関連した製剤の純度に主に依存する。混入物質が出現した場合、混合物1g当たり33,000個超の休眠卵胞子(適用混合物1ml当たり1,000個)を含有する製剤において明白な有効性の低下が観察でき、おそらく未知の不純物の干渉による影響に基づくものと考えられる。このような有効性の低下は、菌類寄生の卵菌ピシウム・オリガンドラムの非常に純度の高い形態においては観察されなかったが、このタイプの製剤による経験が現在非常に限定されている。
【0030】
微生物ピシウム・オリガンドラムの有効性の早急な試験を行うための別の欠点は、皮膚糸状菌の小分生子または酵母の懸濁液により実施される特定の懸濁液試験において、少なくとも48時間かかる休眠卵胞子の緩慢な生存率である。この理由のため、このような試験を実施するために、休眠卵胞子を、公開された方法に従って調製された被嚢遊走子と置き換えることが好ましいと思われる。本発明者らは、両方の製剤、すなわち、新鮮に調製された被嚢遊走子、および生存率が決定された休眠卵胞子を用いて、両者の皮膚糸状菌および病原性酵母を抑制する能力が同等であることを、実験による直接比較で確認した。さらに、被嚢遊走子の場合、これは、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞の保存可能形態である。
【0031】
提案する方法は、標的化された適用部位におけるコロニー形成の証拠および生物学的、代謝的、形態学的および他の活性の記載が要求される、生菌医薬製剤の試験に提起された必要条件と非常に適合している。本発明による方法は、動物における皮膚糸状菌症の処置に関してすでに適用に成功しており、この方法はとりわけ、腸内毒素症の排除における微生物ピシウム・オリガンドラムの役割ならびに皮膚および他の適用部位、例えば粘膜における正常な、生理学的微生物平衡の確立を明確にすることが可能である(4、9)。
技術的解決を例示的実施形態においてさらに詳細に記載し、添付の概略図においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は微生物ピシウム・オリガンドラムの生存被嚢遊走子の付与量に依存した、皮膚糸状菌および酵母の抑制の有効性の実験室試験を示す図であり、下記により詳細に述べる。 図1Aは、収集株DMF2374の皮膚糸状菌、トリコフィトン・インタージギターレ(Trichophyton interdigitale)メンタグロフィテス変種(var.mentagrophytes)を使用した、インキュベーション24時間後の有効性試験を表す図である。 図1Bは、収集株DMF2374の皮膚糸状菌、トリコフィトン・インタージギターレ(Trichophyton interdigitale)メンタグロフィテス変種(var.mentagrophytes)を使用した、インキュベーション48時間後の有効性試験を表す図である。 図1Cは、収集株CCM8353の皮膚糸状菌、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)を使用した、インキュベーション24時間後の有効性試験を表す図である。 図1Dは、収集株CCM8353の皮膚糸状菌、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)を使用した、インキュベーション48時間後の有効性試験を表す図である。 図1Eは、収集株PL231の皮膚糸状菌、エピデルモフィトン・フロコースム(Epidermophyton floccosum)を使用した、インキュベーション24時間後の有効性試験を表す図である。 図1Fは、収集株PL231の皮膚糸状菌、エピデルモフィトン・フロコースム(Epidermophyton floccosum)を使用した、インキュベーション48時間後の有効性試験を表す図である。 図1Gは、収集株CCF8261の病原性酵母、カンジダ・アルビカンスを使用した、インキュベーション24時間後の有効性試験を表す図である。 図1Hは、収集株CCF8261の病原性酵母、カンジダ・アルビカンスを使用した、インキュベーション48時間後の有効性試験を表す図である。
図2図2はモルモットの実験的皮膚糸状菌症の処置の臨床結果を示す図であり、図の上部はプラセボにより処置されたモルモットの結果を示し、図の下部は本発明の例示的実施形態1に従った懸濁液を使用して処置されたモルモットの結果を示すものであり、以下により詳細に説明する。 図2Aは、感染箇所の皮膚に特徴的発赤がある、プラセボを適用した処置16日目の、麻酔下のモルモットの背中の写真を示す。 図2Bは、プラセボを適用した動物の皮膚の組織学的切片を表し、未処置皮膚糸状菌による刺激に反応した、皮膚の上層におけるケラチノサイトの特徴的増殖を示す図である。 図2Cは、処置の各日におけるプラセボを適用した動物の皮膚糸状菌症の臨床指標を表し、発赤指標(明るい灰色の柱)および皮膚損傷指標(暗い灰色の柱)として示した図である。 図2Dは、感染領域の皮膚に低レベルの発赤がある、本発明の例示的実施形態1に従った懸濁液を適用した処置16日目の、麻酔下のモルモットの背中の写真を示す。 図2Eは、本発明の例示的実施形態1に従った懸濁液を適用した動物の皮膚の組織学的切片を表し、処置に成功した動物における有意に低いレベルのケラチノサイトの増殖を示す図である。 図2Fは、処置の各日における本発明の例示的実施形態1に従った懸濁液を適用した動物の皮膚糸状菌症の臨床指標を表し、発赤指標(明るい灰色の柱)および皮膚損傷指標(暗い灰色の柱)として示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明者らが提供する溶液は、CZ302297に立脚して、本発明に従ったヒトおよび獣医学用医薬品のための製剤のさらなる実験室分析および実地試験に基づくことで可能になり、その詳細な処方を、皮膚糸状菌症および爪白癬の処置、非治癒創傷および口腔からの酵母の除去への使用に関してここに明記した。提出した発明は、以下の例示的実施形態においてさらに詳細に記載するが、これらに限定されるものではない。これらの例示的実施形態は、この記載が綿密であり、特許請求の範囲の範囲内において本発明の本質を記載することを確保するために提示する。
【0034】
(実施例1)
モルモットにおける皮膚糸状菌症の処置、爪白癬ならびに非治癒創傷および口腔中の酵母の除去のための、決定された既知の生存率の微生物ピシウム・オリガンドラムを含有する乾燥混合物の製剤。
(表1、表2、表3)
【0035】
a) 菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの製剤
ピシウム・オリガンドラムM1株(DV74株、その連続プロトコルは以下に示す)を寒天において維持し、開始培養物は液体培養により調製した。滅菌粟粒(パニクム・ミリアセウムL(Panicum miliaceum L.))を液体培地に植え付けた。培養を、滅菌条件下でほぼ7日間進行させ、次いで湿潤バイオマスを慎重に乾燥させ、平均サイズ35μm〜50μmの粒子を含有する粉末に粉砕した。卵胞子の量を顕微鏡下で見積もり、製剤を、CZ302297の条件に従って、1g当たり7±1×10個の卵胞子となる含有量に標準化した。
【0036】
b) 3つのバッチにおける微生物ピシウム・オリガンドラムの細胞生存率の測定
微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞の数を決定するために、本発明の出願人は、本発明に従った水性懸濁液の形態の製剤の遺伝子検査を使用して実施される独創的な手順を開発し、栄養に富んだ培地において標準大気中30℃で維持された微生物ピシウム・オリガンドラムのβ−チューブリンに関する構成遺伝子の発現レベルを測定した。
【0037】
分析材料中の生存細胞の量を、下記の手順を使用して決定した。
1gの乾燥物質を秤量し、100mlの水中にキッチンブレンダーで混合した。0.5mlのこの懸濁液を、30℃においてインキュベートした6ウェルの培養皿中で、4.5mlの培養培地と混合し、この50μlの試料中から、インキュベーション開始後48時間、72時間および96時間において試料を採取した。核酸を抽出し、この抽出液をヌクレアーゼ非含有水で50倍に希釈した。続いて、標準プロトコルに従って、4μlの抽出液、1μlの、ピシウム・オリガンドラムのβ−チューブリン増幅用プライマー混合物(3)、および5μlの酵素混合物を含有する反応混合物中で逆転写およびPCR増幅した。得られた指数曲線を線形化して、初期ゼロ時間に対して推定した。このようにして確認された生存率は、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムのバッチ(A)の場合41,700/物質1g、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムのバッチ(B)の場合12,500/物質1gおよび菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムのバッチ(C)の場合8,300/物質1gであった。注:この実施形態および他の実施形態における丸括弧内の文字A、BおよびCは、上記の生存率を有する菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの個別のバッチを示す。
【0038】
適用されたピシウム・オリガンドラムM1の連続プロトコルを以下に示す:
被験株DV74のピシウム・オリガンドラムのM1_ITS4_rRNA
【0039】
【化1】
【0040】
被験株DV74のピシウム・オリガンドラムM1、COXII ミトコンドリアチトクロームオキシダーゼ
【0041】
【化2】
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
(実施例2)
実験室試験における皮膚糸状菌および酵母の成長抑制および除去
図1
公開プロトコル(5)に従って調製された被嚢遊走子形態の微生物ピシウム・オリガンドラムの適用を、実験室有効性試験のために選択した。他の製剤の抗菌活性検証に好ましい懸濁液による試験方法(1)を選択した。遊走子を2分間ボルテックス混合することによって被嚢し、これらの条件下で16℃において実験開始まで維持した。皮膚糸状菌トリコフィトン・インタージギターレ・メンタグロフィテス変種DMF2374、ミクロスポルム・カニスCCM8353およびエピデルモフィトン・フロコースムPL231由来の小分生子の懸濁液ならびにカンジダ・アルビカンスCCM8261酵母の懸濁液を、公開された方法論に従って調製した(7、1)。遊走子の懸濁液および小分生子または酵母細胞の懸濁液を必要な濃度に希釈し、細胞を、6ウェルのプラスチック皿において48時間30℃において懸濁液中で培養した。培養方法により生細胞の数を決定するための試料を、24時間後および48時間後に採取した。
【0046】
実験結果を図1に示す。全試験において、被嚢遊走子の量が、皮膚糸状菌または酵母を含む検査溶液1ml当たり10個〜50個の間の生存細胞で研究した、皮膚糸状菌および病原性酵母カンジダ・アルビカンスの成長抑制のための最適条件であったことを示している。被嚢遊走子の量がこれより低い場合、有効な成長抑制は保証されなかった。驚くべきことに、遊走子の量がこれより高くても、標的化微生物の成長抑制によりよい結果をもたらすとは限らず、この成長は同じか、またはより高いかのいずれかであった。
【0047】
(実施例3)
皮膚糸状菌に感染したモルモットにおける皮膚糸状菌の除去および生理学的細菌叢の確立
図2
この試験は公開されたプロトコル(4、7)に従って、トリコフィトン・インタージギターレ・メンタグロフィテス変種DMF2374の検証済みの株による感染症を用いて実施した。培養バイオマスを水に置き換えた、本発明の例示的実施形態の混合物と同一の混合物を、適用期間の間プラセボとして使用し、本発明の例示的実施形態1cに従った殺真菌物質を実験物質として使用した。
【0048】
この試験の結果を図2に記載する。図2の下部の処置モルモットの全体の外観および動物の皮膚の組織学および動物の臨床的皮膚糸状菌症指標の値は、活性物質ピシウム・オリガンドラムを省いたプラセボを使用して処置した動物と比較して、実験的皮膚糸状菌症の処置に有意な臨床効果を明確に示している。
【0049】
(実施例4)
皮膚糸状菌の除去および爪白癬を有する患者の臨床状態の改善
(表4)
次ページの表4は、他の皮膚糸状菌症と併せて爪白癬に侵された21人の患者に関する研究結果を示す。本発明に従った製剤の適用前に、21人すべての患者は顕微鏡により陽性所見を有し、少なくとも1種の皮膚糸状菌、場合により2種の皮膚糸状菌の発生が培養によりすべての患者に確認された。病原性酵母カンジダ・アルビカンスの発生は、付随する微生物学の中で圧倒的に最も一般的であった。付随する診断で最も一般的なものは、糖尿病、足部白癬および足部白癬インタージギターレであり、一症例では、手の真菌性疾患が観察された。1または複数の足の爪が、爪の面積平均範囲1.5に渡って侵されていた。
【0050】
例示的実施形態1cに従った製剤の適用は、2日連続の夜間の爪のラップの形態で研究のすべての患者に実施し、14日後および1ヶ月後に適用を反復した。
【0051】
有効性の評価は、適用終了後9ヶ月、すなわち研究開始の10ヶ月後に実施した。培養により2人の患者に皮膚糸状菌トリコフィトン・ルブルムが残存して散発していたことが明らかになり、この皮膚糸状菌は1人の患者において広範囲に発生し、カンジダ・アルビカンス酵母が1人の患者において散発ししていたものの、大部分の患者が顕微鏡下で陰性であった。全体として、菌類学的処置のレベルは非常に満足のいくものとして評価でき、95%の患者において菌類負荷が解決し、臨床処置は、平均して6ポイントスケールの2.1のレベルと評価された(1−爪の形態異常がない完全な処置、6−状態の悪化)。総合すると、爪白癬が、爪の形態異常が全くない12人の患者において治癒し(54.5%)、1人の患者は残存する形態異常を治療され(4.5%)、6人の患者において50%超の臨床的改善が明らかであり(27.3%)、1人の患者において50%までの有意ではない改善があり(4.5%)、2人の患者において、適用終了後9ヶ月たっても臨床状態に変化がなかった(9.2%)が、医学文献によりこれらの症例において再感染の高い可能性が示唆される。臨床状態の悪化に悩む患者は存在しなかった。
【0052】
【表4】
【0053】
(実施例5)
患者の非治癒創傷における病原性酵母の抑制および除去
(表5)
本発明に従った製剤の適用の、病原性酵母カンジダ・アルビカンスによる酵母感染症により悪化された非治癒創傷を有する12人の患者の群に対する影響を予備実践研究においてモニターした。6人の患者は糖尿病を患っており、6人は患っていなかった。糖尿病群の患者の平均年齢は77.5歳であり、非糖尿病群の患者の平均年齢は57.2歳であった。女性のほうが多く、女性は静脈瘤性潰瘍および非治癒創傷の発生しやすさが高いことが知られている。患者の既往歴のさらなる結果として、抗生物質を含む一般に使用される医薬製剤を使用した治療の開始後最短で6ヶ月間、数人の患者に関してはさらに長い(最長2年)期間の非治癒創傷の処置においても進展がなかった。
【0054】
湿式処置を、湿式治癒の一部として例示的実施形態1dに従った製剤を使用して調製された懸濁液を使用して患者に提供した。適用包帯は、8時間おきに全部で4日間に渡って交換した。記載の適用は微生物学的負荷を非常に大幅に低減し、糖尿病患者の場合、病原性酵母の発生は95.3%低減し、非糖尿病患者においては75.3%低減し、全研究に関しては85.3%の低減が観察された。炎症過程の程度、膿の分泌強度などを評価する参加医師の評価に基づく感染症の臨床像の改善が、糖尿病患者において78.3%および非糖尿病患者において67.2%あり、全研究に対して総計で72.8%の改善を意味する。微生物負荷の低減と微生物感染症の臨床像の改善との間に非常に大きな相関が見いだされ、このことは、公開された医薬文献の文脈内において非常に大きな発見である。
【0055】
【表5】
【0056】
(実施例6)
口腔における病原性酵母の抑制および除去
(表6)
口腔中に病原性酵母の存在を有する12人の患者において、口中医の監督下で歯科衛生学救急において研究を実施した。
【0057】
微生物学的サンプリングおよび診断の性質の解明の後で、患者に情報を与え、例示的実施形態1dに従った5個の発泡性錠剤を含有する、口腔において病原性酵母を除去する1パックの製剤を提供した。夜の口腔衛生の後で、患者は慎重に口腔を洗浄し、その後、微温湯において予備活性後、微生物ピシウム・オリガンドラムの平均10個の生存卵胞子を含有する状態で少なくとも5分間製剤ですすいだ。外用薬溶液の残りが一晩そこに留まるように、この後は口腔をすすがなかった。適用を朝にも反復し、患者はこの方法を、パック内の5個の発泡性錠剤を使用して5日間継続した。
【0058】
その後臨床的モニタリングおよび有効性評価を、適用の後ほぼ6ヶ月続けた。病原性酵母は口腔から症例の67.1%において除去され、同時に、罹患患者の臨床症状が平均66.8%改善した。患者は主に口腔の反復炎症および歯周病を患っていた。口腔における酵母の発生の低減および臨床症状の改善との間に、この場合もまた相関が特定された。
【0059】
【表6】
【0060】
産業上の利用可能性
皮膚および粘膜の皮膚糸状菌症および酵母感染症の処置用製剤を使用して、皮膚糸状菌または酵母による皮膚および粘膜の感染症に付随する症状、例えば、社会的に煩わしい悪臭症状、足の多汗症、刺激および灼熱感を抑制することができ、ならびに非治癒創傷、口腔、皮膚、泌尿生殖器粘膜、毛髪およびこれらの微生物により侵される他の場所における皮膚糸状菌および酵母の発生を抑制および除去することができる。
【0061】
引用文献
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2.Calderona RA、Fonzi WA(2001)Trends Microbiol 9、327−335頁。
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11.Yacoub A、Berger H、Gerbore Jら(2016)Genome Announcements 4、e00215−16。
<付記>
<項1>
0.1〜99.9重量%の菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムと、0.1〜99.9%の、吸着剤、バッファー、保湿剤、デオドラント剤および芳香剤を含む群からの少なくとも1つの成分を含有する補助物質とを含有する乾燥混合物から得られる、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムを含有する、皮膚および粘膜の皮膚糸状菌症および酵母感染症の処置用製剤であって、適用部位において水性懸濁液1ml当たり、1〜10×10個の微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞を含有することを特徴とし、ここで前記微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞は休眠卵胞子、被嚢遊走子および生存多核菌糸体を含む、製剤。
<項2>
水性懸濁液状の適用される製剤1ml当たり、1〜500個の前記微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞を含有することを特徴とする、<項1>に記載の製剤。
<項3>
適用製剤の水性懸濁液1ml当たり、10〜50生存細胞の前記微生物ピシウム・オリガンドラムを含有することを特徴とする、<項1>に記載の製剤。
<項4>
0.1〜99.9重量%の菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムと、0.1〜99.9%の、吸着剤、バッファー、保湿剤、デオドラント剤および芳香剤を含む群からの少なくとも1つの成分を含有する補助物質とを含有する乾燥混合物から得られる、皮膚および粘膜の皮膚糸状菌症および酵母感染症の処置のための微生物ピシウム・オリガンドラムの細胞の生存率を決定する方法であって、水性懸濁液形態の前記製剤の遺伝子検査により実施され、栄養に富んだ培地において標準大気中30℃で維持された微生物ピシウム・オリガンドラムのβ−チューブリンに関する構成遺伝子の発現レベルが測定されることを特徴とする方法。
<項5>
<項1>〜<項3>のいずれかに記載の、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムを含有する皮膚および粘膜の皮膚糸状菌症および酵母感染症の処置用製剤の適用方法であって、
a)乾燥混合物の規定量の微温湯または生理溶液への機械的分散を使用して、適用部位において水性懸濁液1ml当たり、菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞が1〜10×10個、有利には1〜500個、好ましくは10〜50個となる含有量を達成する水性懸濁液を調製するステップ、
b)菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞の推奨される量の使用により処置される診断のタイプに応じて、このように作られた前記水性懸濁液を適用するステップ、
c)処置される診断に応じて適用部位において菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞をコロニー形成させるステップ、
d)処置される診断に応じて適用部位において菌類寄生微生物ピシウム・オリガンドラムの生存細胞を増殖させ、皮膚糸状菌または酵母を除去するステップ、および
e)その後適用部位における前記製剤を胞子形成させ、並行して除去し、これにより正常な細菌叢の安定化および発達を促進し、長期治療効果を確保するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
<項6>
爪白癬の形態の皮膚糸状菌症の処置のために、乾燥混合物を水に分散させた湿潤懸濁液の形態で水性懸濁液状の製剤1ml当たり50個の生存細胞を含有する前記製剤を患部に適用することを特徴とする、<項5>に記載の製剤適用方法。
<項7>
爪白癬の形態の皮膚糸状菌症の処置のために、非水性懸濁液状の製剤1ml当たり50個の生存細胞を含有する前記製剤を、クリーム、ゲル剤、軟膏、ウェットワイプ、抗菌スプレー、湿らせたパッチおよび湿らせた粉末の形態で患部に適用することを特徴とする、<項5>に記載の製剤適用方法。
<項8>
非治癒創傷における酵母感染症を処置するために、前記製剤が、生理溶液中水性懸濁液1ml当たり30個の生存細胞を含有する湿布の形態で適用されること、および生理溶液中水性懸濁液1ml当たり30個の生存細胞を含有する湿布に8時間後に交換することを4日間行うことを特徴とする、非治癒創傷における酵母感染症を処置するための<項5>に記載の製剤適用方法。
<項9>
前記製剤が、水性懸濁液1ml当たり30個の生存細胞を含有するクリーム、軟膏、ウェットワイプ、抗菌スプレー、湿らせたパッチおよび粉末の形態の湿式治癒製品を使用して適用され、その後、これらの非水性圧縮物を8時間ごとに4日間にわたり交換することを特徴とする、<項5>に記載の製剤適用方法。
<項10>
前記適用が、適用水性懸濁液1ml当たり10個の生存細胞を含有する水性懸濁液状の前記製剤ですすぐことによって実施され、前記すすぎを少なくとも1日2回、連続5日間行うことを特徴とする、口腔における酵母感染症を処置するための<項5>に記載の製剤適用方法。
<項11>
前記適用が、練り歯磨き、ゲル剤または口腔スプレーの一部として水性懸濁液1ml当たり10個の生存細胞を含有する製剤を使用して実施されるか、または前記適用が注射器および針を使用して水性懸濁液を口腔に導入することによって実施され、これらの適用は少なくとも1日2回、連続5日間行うことを特徴とする、<項5>に記載の製剤の適用方法。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]