特許第6667530号(P6667530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667530
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】イソブタノールの酵素的生成方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/16 20060101AFI20200309BHJP
【FI】
   C12P7/16
【請求項の数】32
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2017-533487(P2017-533487)
(86)(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公表番号】特表2018-505664(P2018-505664A)
(43)【公表日】2018年3月1日
(86)【国際出願番号】IB2014003204
(87)【国際公開番号】WO2016097801
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2017年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】517211562
【氏名又は名称】ニューペック・エセ・アー・デ・セー・ウベ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ・ガリバイ・オリエル
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・エドゥアルド・ゴメス・サンチェス
(72)【発明者】
【氏名】モニカ・マリア・リオス・ロサノ
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・ヴァレリア・ゲルレロ・トルレス
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ・ロッサーノ・ベセリル
(72)【発明者】
【氏名】アレハンドラ・セシリア・エルレラ・ラミレス
(72)【発明者】
【氏名】パオラ・ロチャ・ルイス
(72)【発明者】
【氏名】アンネ−ラウレ・パトリシア・ショーヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ヘスス・アグスティン・バディジョ・コロナ
(72)【発明者】
【氏名】イバン・アレハンドロ・デ・ラ・ペーニャ・ミレレス
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・ラウル・イバン・ガルサ・ロドリゲス
【審査官】 千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/115151(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/028642(WO,A1)
【文献】 特開2000−342294(JP,A)
【文献】 特表2012−513759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)水と、乳酸と、少なくとも1種の酵素を含む酵素混合物と、少なくとも1種の補因子と、少なくとも1種の補酵素とを混合して反応混合物を調製する工程と、
B)反応混合物中での乳酸の触媒変換をイソブタノールの生成に十分な時間可能にしておく工程と、
C)B)における触媒変換によって得られた反応物からイソブタノールを分離する工程と
を含み、
B)における乳酸のイソブタノールへの変換は、NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系と共役されている、
イソブタノールの生成方法であって、
酵素混合物が、乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27及び/又はEC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、及びアルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1及び/又はEC 1.1.1.2)を含む、方法
【請求項2】
B)において、
乳酸がピルビン酸に変換され、
ピルビン酸が2-アセト乳酸に変換され、
2-アセト乳酸が2,3-ジヒドロキシ吉草酸に変換され、
2,3-ジヒドロキシ吉草酸がケトイソ吉草酸に変換され、
ケトイソ吉草酸がイソブチルアルデヒドに変換され、
イソブチルアルデヒドがイソブタノールに変換される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乳酸からのイソブタノールの実験収率が98〜100%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
A)において混合する前に酵素混合物を容器中に調製する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
容器が、パイプ、槽、又は反応器である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
A)において、反応混合物の調製に適する容器において混合が実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
容器が、パイプ、槽、反応器、又はこれらの組合せである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
A)において、少なくとも1種の酵素と基質間の相互作用を促進するのに適する方法によって混合が実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
A)において、混合が、機械式、空気式、若しくは水力式に実行される、又はこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
B)において、酵素類と基質間の相互作用を促進するのに適する容器又は反応器において触媒変換が実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
B)において、撹拌槽型反応器、栓流型反応器、流動床反応器、又は充填層反応器、又はこれらの組合せにおいて触媒変換が実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
B)において、2〜12のpHで触媒変換が実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
C)において、分子の物理化学的性質に依拠した分子の分離に適する方法によってイソブタノールが反応物から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
(C)において、膜、蒸留、蒸発、又はこれらの組合せによってイソブタノールが分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
膜が、逆浸透膜、浸透気化膜、ナノ濾過膜、又は限外濾過膜である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プロセス全体が、連続的に、半連続的に、又はバッチ方式で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
乳酸がL-乳酸とD-乳酸の少なくとも一方である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
反応混合物中の乳酸の濃度が少なくとも1g/Lである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1種の酵素が、担体に固定化、捕捉、埋設、接着、吸着、貼付、固定、又は結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
担体が、ゼオライト、活性炭、アクリルアミド、シリカゲル、アガロース、アルギネート、及び砂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
酵素混合物中の酵素の濃度が0.001g/Lより高い、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
酵素混合物中の酵素の濃度が0.001g/g担体より高い、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系におけるNAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPHの量が、化学量論的推定量未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
2モルの乳酸を1モルのイソブタノールに変換するのに使用されるNAD+及びNADHの合計量が1モル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
2モルの乳酸を1モルのイソブタノールに変換するのに使用されるNADP+及びNADPHの合計量が1モル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
2モルの乳酸を1モルのイソブタノールに変換するのに使用されるNADP+/NAD+及びNADPH/NADHの合計量が1モル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
C)における分離が、
C-1)B)において触媒変換によって得られた反応物を、イソブタノール及び水を含む第1のストリームと、イソブタノール及び水以外の反応物中成分を含む第2のストリームとに分離する工程と、
C-2)第1のストリームを、イソブタノールを含む第1の産出物ストリームと、水を含む第2の産出物ストリームとに分離する工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
A)、B)、又は両方における反応混合物に混合することにより、第2のストリームを再循環させる又は再使用する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
C-1)において、分子の物理化学的性質に依拠した分子の分離に適する方法によって分離が実行される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
膜、蒸留、蒸発、又はこれらの組合せによって分離が実行される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
C-2)において、分子の物理化学的性質に依拠した分子の分離に適する方法によって分離が実行される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
膜、蒸留、蒸発、又はこれらの組合せによって分離が実行される、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物工学の分野に関する。詳細には、本発明は、乳酸を触媒作用によってイソブタノールに変換する、イソブタノールの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
n-ブタノールやイソブタノール等の4炭素アルコール化合物は、重要な工業用化学物質であり、燃料添加剤として、プラスチック産業における供給原料として、また食品グレード抽出の薬剤として有用である。こうしたアルコールは、需要の増加のため、石油化学産業において、年々、より多くの量が生産されている。
【0003】
通常、こうしたアルコールは、化学合成又は生物学的方法によって生成される。n-ブタノールもイソブタノールも、プロピレンがロジウムを含む触媒に接触する結果、プロピレンのヒドロホルミル化が生じて、ブチルアルデヒド及びイソブチルアルデヒドが生成される方法である、プロピレンのヒドロホルミル化によって化学的に生成することができる。その後、アルデヒドは、欧州特許EP1733003 B1(この内容を全体として参照により本明細書に援用する)に記載されているとおり、水素化されて、ブタノール又はイソブタノールのいずれかの対応するアルコールが形成される。更に、n-ブタノールは、ABE発酵と名付けられた、よく知られた代謝経路によって生物学的に生成することもできる(Jones及びWoods、1986; Berezinaら、2012)。この発酵は、広く使用されている微生物であるクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)を使用して、産業界で広範に使用されている。
【0004】
イソブタノールに関しては、産業プロセスに十分な量のこの化合物を産生することのできる、遺伝子組換えでない微生物が存在しない。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)は、窒素供給源がバリンであるとき、イソブタノールを産生しうることが知られているが(Dickinsonら、1998)、このアミノ酸を窒素供給源として使用する培地は、経済的に実行可能でない。
【0005】
したがって、イソブタノールは、従来、遺伝子組換え生物を使用する発酵によって生成されている。出芽酵母や大腸菌(Escherichia coli)等の遺伝子組換え生物は、特許US7851188、US7910342、US7993889、US8017375、US8017376、US8071358、US8097440、US8133715、US8153415、US8158404、US8178328、US8232089、US8241878、US8273558、US8273565、及びUS8283144(これらの内容を全体として参照により本明細書に援用する)に記載されているとおり、イソブタノールの産生を増加させることが一般に知られている。これら特許に記載されている原料は、特許US7851188、US8017375、US8178328、及びUS8283144で強調されているとおり、通常は、グルコース、スクロース、フルクトース等の炭水化物である。この技術は、発展してきているとはいえ、遺伝子組換え生物を使用してイソブタノールを生成することに関連する種々の欠点の存在に留意することが重要である。たとえば、
【0006】
1.プロセスを効率的に実行するために大量の生細胞が存在しなければならない。細胞の量が少ない場合、発酵プロセスは、非常に遅くなる。このことは、当業界でよく知られている。
【0007】
2.外因性の代謝経路を生物に導入するということは、炭素流が微生物の成長とイソブタノール産生とに分けられるため、生物自身の代謝経路における競合の増加を示唆する。これが、プロセスによって理論収率に近い値に到達する妨げとなる(たとえば、グルコースの場合では、0.411グラムのイソブタノールが1グラムのグルコースから得られる)。したがって、許容される収率に到達するために、イソブタノール産生のための代謝経路を発現させるのでは足りず、代謝経路から遺伝子を除去してイソブタノール産生のために競合を減らすことも必要となる。たとえば、ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする遺伝子が除去されたことが、特許US7993889、US8017375、US8133715、US8153415、US8178328、及びUS8273565に記載されている。加えて、特許US8071358、US8097440、US8133715、US8153415、及びUS8273565に記載されているとおり、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ酵素をコードする遺伝子も除去されている。同様に、特許US8158404に記載されているとおり、アルデヒドデヒドロゲナーゼ酵素をコードする遺伝子も除去されている。
【0008】
3.更に、イソブタノールの収率を増やすために、内因性及び/又は外因性遺伝子を過剰発現させて、イソブタノール産生の生化学的経路を確立することも必要となる。たとえば、特許US8017376、US8071358、及びUS8273565に記載されているとおり、aft遺伝子の過剰発現によって、イソブタノールの合成に関与する酵素類の活性は増大する。
【0009】
4.上記2及び3に記載のとおりに遺伝子を除去する及び/又は過剰発現させることで、生物は、多くの場合、代謝的に不安定になることが、当業界で一般に知られている。
【0010】
したがって、種々の基質をめぐる相互作用又は競合が起こらず、プロセスに関連する微生物の成長も起こらないプロセスを有することが望ましい。
【0011】
こうした必要を考慮して、欧州特許EP2204453は、酵素的イソブタノール産生について記載している(この内容を全体として参照により本明細書に援用する)。しかし、プロセスを実行するには、グルコースが原料として使用され、それには、ピルビン酸に変換するのに少なくとも5種の酵素が必要となる。特許EP2204453B1は、ピルビン酸の産生にいくつかの酵素が使用されることに加えて、系の作動温度が50℃を超えることを記載している。これは、グルコースからのピルビン酸の生成を低めの温度で触媒する酵素類の還元効率のためである。一方、ピルビン酸のイソブタノールへの変換を触媒する一部の酵素類は、20℃〜37℃の温度で効率的に働く。その結果、こうした酵素類の一部は、特許EP2204453の実施例、詳細には実施例10で言及されているように、酵素系の不適合のせいで、その触媒活性を短時間損なう場合もある。
【0012】
他方、特許出願公開EP2700714A1(この内容を全体として参照により本明細書に援用する)は、少なくとも13種の酵素を使用してプロセスを実行すること以外は特許EP2204453B1と非常に類似したスキームを記載している。
【0013】
従来のイソブタノール生成法に関連する上述の欠点に加えて、イソブタノールを乳酸から生成する方法、及びイソブタノールの生成が酵素的に実行される方法が存在しないことを留意すべきである。更に、こうした酵素類の作用によって、電子受容体及び供与体分子が継続的かつ安定した方式で長期間再生される方法も、先行技術には存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP1733003 B1
【特許文献2】US7851188
【特許文献3】US7910342
【特許文献4】US7993889
【特許文献5】US8017375
【特許文献6】US8017376
【特許文献7】US8071358
【特許文献8】US8097440
【特許文献9】US8133715
【特許文献10】US8153415
【特許文献11】US8158404
【特許文献12】US8178328
【特許文献13】US8232089
【特許文献14】US8241878
【特許文献15】US8273558
【特許文献16】US8273565
【特許文献17】US8283144
【特許文献18】EP2204453
【特許文献19】EP2700714A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、乳酸からのイソブタノール生成のための酵素的方法であって、イソブタノール生成は、NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生と関連付けられており、この方法は、微生物の成長と関連しなくてもよい、酵素的方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、乳酸からのイソブタノール生成を、NAD+/NADH再生系と関連付けることである。
【0017】
本発明の更なる目的は、乳酸からのイソブタノール生成を、NADP+/NADPH再生系と関連付けることである。
【0018】
同時に、本発明の別の目的は、乳酸からのイソブタノール生成を、NAD+/NADHとNADP+/NADPHの混合物の再生系と関連付けることである。
【0019】
同様に、本発明の目的は、乳酸からのイソブタノール生成がNAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系と関連付けられており、制御された環境で実施することができ、反応混合物のいずれかの成分をプロセスに再循環させることができる方法を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系が、バッチ法での乳酸からのイソブタノール生成と関連付けられている方法を開発することである。
【0021】
本発明の別の目的は、NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系が、半連続法での乳酸からのイソブタノール生成と関連付けられている方法を開発することである。
【0022】
本発明の別の目的は、NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系が、連続法での乳酸からのイソブタノール生成と関連付けられている方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
単独又は組み合わされたこれら及び他の目的は、水と、乳酸と、少なくとも1種の酵素を含む酵素混合物と、少なくとも1種の補因子と、少なくとも1種の補酵素とを混合して反応混合物を調製する工程と、反応混合物中での乳酸の触媒変換をイソブタノールの生成に十分な時間可能にしておく工程と、B)における触媒変換によって得られた反応物からイソブタノールを分離する工程とを含む、イソブタノールの生成方法を発見したことにより達成された。B)における乳酸のイソブタノールへの変換は、NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系と関連付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】乳酸からのイソブタノール生成と関連付けられたNAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系のスキームを示す図である。
図2】イソブタノールのバッチ生成法の挙動パターンを示すグラフである。
図3】CSTR反応器においてイソブタノールを連続的に生成する方法の挙動パターンを示すグラフである。
図4】PBR反応器のz軸に沿ってイソブタノールを連続的に生成する方法の挙動パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の目的を理解するために、次の定義及び略語を定める。
【0026】
用語「乳酸(lactic acid)」、「乳酸(lactate)」、「2-ヒドロキシプロパン酸」、及び「α-ヒドロキシプロパン酸」は、同じ分子を指し、このような分子は、3つの炭素を含み、次の分子式:H3C-CHOH-COOH(C3H6O3)を有する。本発明の目的では、用語「乳酸」とは、国際データベースにおいてCAS識別番号50-21-5、79-33-4、10326-41-7、598-82-3で報告されているいずれかの異性体又は異性体の混合物を指し、L-乳酸若しくはD-乳酸又は両方のいずれかの割合の混合物でよい。また、本発明の目的では、「乳酸(lactic acid)」は、溶液中で、またpHに応じて、そのイオン形態で存在しうるので、用語「乳酸(lactate)」は、「乳酸(lactic acid)」と同等である。「乳酸(lactate)」は、生物学的であろうと、化学的であろうと、様々な手段で得ることができる。生物学的手段では、「乳酸(lactate)」は、たとえば、有機化合物の発酵によって得ることができる。「乳酸(lactate)」を産生する生物の一部として、大腸菌、カゼイ菌(Lactobacillus casei)、デルブリュッキ菌(Lactobacillus delbrueckii)、ラクチス菌(Lactococcus lactis)等が挙げられる。化学的には、「乳酸(lactate)」は、エタノール、シアン化ナトリウム、及び硫酸から得ることができ、シアン化物によるアルデヒドのカルボニル基への求核攻撃でプロセスが終結して、ラセミ形態の乳酸のニトリルが生成する。ニトリルを水及び過剰の硫酸の存在下で加水分解すると、遊離「乳酸(lactic acid)」が得られる。
【0027】
用語「ピルビン酸(pyruvate)」、「ピルビン酸(pyruvic acid)」、「2-オキソプロパン酸」、「α-ケトプロピオン酸」、「焦性ブドウ酸」、及び「アセチル蟻酸」は、同じ分子を指し、このような分子は、3つの炭素を含み、次の分子式CH3COCOOH(C3H4O3、CAS:127-17-3)を有する。
【0028】
用語「2-アセト乳酸(2-acetolactic acid)」、「2-アセト乳酸(2-acetolactate)」、「2-ヒドロキシ-2-メチル-3-オキソブタン酸」、及び「2-アセチル乳酸」は、同じ分子を指し、このような分子は、5つの炭素を含み、次の分子式CH3COC(CH3)OHCOOH(C5H8O4、CAS:該当なし)を有する。
【0029】
用語「2,3-ジヒドロキシ吉草酸」、「2,3-ジヒドロキシ-3-メチルブタン酸」、「2,3-ジヒドロキシ-イソ吉草酸(2,3-dihydroxy-isovalerate)」、「2,3-ジヒドロキシ-イソ吉草酸(2,3-dihydroxy-isovaleric acid)」は、同じ分子を指し、このような分子は、5つの炭素を含み、次の分子式(CH3)2COHCHOHCOOH(C5H10O4、CAS:1756-18-9)を有する。
【0030】
用語「ケトイソ吉草酸(ketoisovaleric acid)」、「ケトイソ吉草酸(ketoisovalerate)」、「3-メチル-2-オキソブタン酸」、「2-オキソイソ吉草酸」、「2-オキソイソペンタン酸」、及び「2-ケトバリン」は、同じ分子を指し、このような分子は、5つの炭素を含み、次の分子式(CH3)2CHCOCOOH(C5H8O3、CAS:759-05-7)を有する。
【0031】
用語「イソブチルアルデヒド」、「2-メチルプロパナール」、及び「2-メチルプロピオンアルデヒド」は、同じ分子を指し、このような分子は、4つの炭素を含み、次の分子式(CH3)2CHCHO(C4H8O、CAS:78-84-2)を有する。
【0032】
用語「イソブタノール」、「イソブチルアルコール」、及び「2-メチル-1-プロパノール」は、同じ分子を指し、このような分子は、4つの炭素を含み、次の分子式(CH3)2CHCH2OH(C4H10O、CAS:78-83-1)を有する。
【0033】
用語「還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)」及び「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)」とは、ある分子から他の分子に電子を輸送し、酸化還元反応又はレドックス反応を実行する、細胞代謝の分子を指す。
【0034】
用語「還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)」及び「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)」とは、ある分子から他の分子に電子を輸送し、酸化還元反応又はレドックス反応を実行する、細胞代謝の分子を指す。
【0035】
本発明の目的では、用語「NAD(P)+」は、用語「NAD+」及び/又は「NADP+」と同等であり、用語「NAD(P)H」の使用は、用語「NADH」及び/又は「NADPH」と同等である。
【0036】
用語「理論収率」とは、反応によって得ることのできる生成物の最大量を指し、化学量論式によって計算される。理論収率は、反応の化学量論性に基づき計算される、実験的な反応によって得られる生成物の理論量と比較される場合もある。
【0037】
用語「実験収率」とは、化学反応によって実験的に得られた生成物の、消費された物質に対する量を指す。
【0038】
用語「変換効率」とは、実験収率と理論収率の比から得られるパーセンテージを指し、その値は、0%から100%まで様々となりうる。
【0039】
用語「レドックス反応」とは、ある化合物が還元され、別の化合物が酸化される、酵素の作用を仲介とする生化学反応を指す。こうした反応は、NADH又はNADPH(酸化剤)とNAD+又はNADP+(還元剤)が存在するため、細胞中で起こりうる。
【0040】
用語「ポリペプチド」及び「酵素」は、出発化合物と最終化合物が分子的及び/又は空間的に異なっていてもよい、出発化合物から最終化合物までの変換反応を実施することのできる、アミノ酸残基を含む有機分子を指す。
【0041】
用語「遺伝子」とは、先行技術でアデニン、グアニン、シトシン、及びチミンとして知られている窒素化合物又は塩基から構成される生物学的分子を指す。遺伝子は、生物学的酵素類が合成されるように細胞において情報を伝える分子である。
【0042】
用語「反応器」とは、化学的、生化学的、生物学的反応、又はこれらの組合せを、制御された方式で行うことのできる、適切な材料で組み立てられた物理的容器を指す。先行技術において様々なタイプの反応器を見出すことができる。一例として、連続式撹拌槽型反応器(CSTR)、栓流型反応器、流動床反応器、及び充填層反応器(PBR)が挙げられる。反応器の一部の特徴として、a)反応による腐食への耐性、b)温度、撹拌、pH、溶解ガス濃度、圧力等の作動変数をモニターし、制御する能力、c)連続式、半連続式、又はバッチ方式となりうる作動モード(反応器が作動しうる種々の作動方式は、当業界で知られているといえる)、d)様々な種類の触媒を使用して反応を実行する能力、たとえば、触媒は、溶解させてもよいし、又は捕捉若しくは固定化されてもよい(触媒が反応を触媒しうる種々のモードは、当業界で知られているといえる)を挙げることができる。
【0043】
用語「補因子」とは、酵素類の作用に必要となる無機化合物、たとえば、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Na+、K+、Co2+、Ni2+、Mn2+等を指す。
【0044】
用語「基質」とは、酵素が反応を及ぼす分子を指す。酵素は、基質に特異的かつ選択的である場合もある。
【0045】
用語「酵素混合物」及び「酵素類の混合物」とは、乳酸からのイソブタノール生成を可能にする、同じ溶液中に見られる一組の酵素類を指す。酵素混合物及び酵素類の混合物は、乳酸又は本発明の方法で用いる他の成分と混合する前に調製することができる。一態様では、酵素類は、パイプ、槽、反応器等の容器において、乳酸又は他の成分と混合する前に、混合することができる。
【0046】
酵素混合物中の酵素の濃度は、0.001g/Lより高い、0.01g/Lより高い、又は好ましくは0.1g/Lより高くてよい。
【0047】
酵素が以下で定めるとおりに固定化されるとき、酵素混合物中の酵素の濃度は、0.001g/g担体より高い、0.01g/g担体より高い、又は好ましくは0.1g/g担体より高くてよい。
【0048】
本発明の一態様では、酵素混合物は、乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27及び/又はEC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1及び/又はEC 1.1.1.2)、及びこれらの類似体の少なくとも1種を含んでよい。本発明の好ましい一態様では、酵素混合物は、乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27及び/又はEC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、及びアルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1及び/又はEC 1.1.1.2)を含んでよい。
【0049】
用語「補酵素」とは、一部の酵素類の活性に不可欠である有機及び非タンパク化合物を指す。補酵素の例としては、「フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)」、「チアミンピロリン酸(ThPP)」、「フラビンモノヌクレオチド(FMN)」等が挙げられる。
【0050】
用語「反応混合物」とは、ポリペプチド又はポリペプチドの混合物による触媒反応にかけることのできる、水性、油性、気体、又は固体の相である化学化合物の群を指す。反応混合物は、酵素混合物と、補因子と、補酵素と、NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPHと、乳酸とを含んでよい、又はこれらから構成されていてよい。反応混合物は、混合物の調製に適している容器において化合物を混合することにより調製できる。たとえば、パイプ、槽、又は反応器を反応混合物の調製に利用することができる。反応混合物は、酵素と基質の相互作用を促進するのに適した方法によって化合物を混合することにより調製してもよい。
【0051】
反応混合物が乳酸を含むとき、反応混合物中の乳酸の濃度は、少なくとも1g/L、20g/L、100g/L、200g/L、又は好ましくは300g/Lでよい。
【0052】
用語「順次」とは、乳酸が乳酸デヒドロゲナーゼ酵素(EC 1.1.1.27及び/又はEC 1.1.1.28)によってピルビン酸に、ピルビン酸がアセト乳酸シンターゼ酵素(EC 2.2.1.6)によって2-アセト乳酸に、2-アセト乳酸がケトール酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)によって2,3-ジヒドロキシ吉草酸に、2,3-ジヒドロキシイソ吉草酸がジヒドロキシ酸デヒドラターゼ酵素(EC 4.2.1.9)によってケトイソ吉草酸に、ケトイソ吉草酸がケト酸デカルボキシラーゼ酵素(EC 4.1.1.72)によってイソブチルアルデヒドに、イソブチルアルデヒドがアルコールデヒドロゲナーゼ酵素(EC 1.1.1.1及び/又はEC 1.1.1.2)によってイソブタノールに、順序正しく転換されることを意味する。
【0053】
用語「多酵素系」とは、乳酸をイソブタノールへと順次変換する一組の酵素類を指す。
【0054】
用語「遺伝子欠失」とは、タンパク質をコードするDNA領域を削除するプロセスを指す。
【0055】
用語「外因性遺伝子」とは、生物にとって異質であるタンパク質をコードするDNA領域を指す。
【0056】
用語「内因性遺伝子」とは、生物の天然タンパク質をコードするDNA領域を指す。
【0057】
用語「過剰発現」とは、内因性又は外因性遺伝子によってコードされるタンパク質の発現レベルの増大を指す。
【0058】
用語「NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPHの再生」とは、NAD+及び/又はNADP+分子がNADH及び/又はNADPH分子に変換される結果、こうした変換を触媒しうるいずれかの酵素が作用し、NADH及び/又はNADPH分子がNAD+及び/又はNADP+に変換される結果、こうした変換を触媒しうるいずれかの酵素が作用することを指す。これらの変換は、同じ反応系において見出すことができる。
【0059】
用語「遊離酵素(free enzyme)」とは、溶液中に分布した酵素を指す。
【0060】
用語「遊離酵素類(free enzymes)」とは、溶液中に分布した一組の酵素類を指す。
【0061】
用語「担体」とは、自身のタンパク質構造を変化させないことが好ましい、固体又は半固体の不活性マトリックスを指す。担体は、酵素を固定化するのに適しうるどんな種類の担体でもよい。担体の例として、限定はしないが、ゼオライト、活性炭、アクリルアミド、シリカゲル、アガロース、アルギネート、砂、又はこれらのいずれかの組合せを挙げることができる。
【0062】
用語「固定化酵素(immobilized enzyme)」とは、いずれかの物理的又は化学的方法によって、「担体」に貼付、捕捉、埋設、接着、吸着、結合、固定等がなされた酵素を指す。
【0063】
用語「固定化酵素類(immobilized enzymes)」とは、いずれかの物理的又は化学的方法によって、「担体」に貼付、捕捉、埋設、接着、吸着、結合、固定等がなされた一組の酵素類を指す。
【0064】
用語「L-乳酸デヒドロゲナーゼ」、「L(+)-nLDH」、「L-(+)-乳酸デヒドロゲナーゼ」、「L-乳酸デヒドロゲナーゼ(L-lactic dehydrogenase)」、「L-乳酸デヒドロゲナーゼ(L-lactic acid dehydrogenase)」、「NAD+依存性L-乳酸デヒドロゲナーゼ」、及び「L-乳酸デヒドロゲナーゼ(L-lactic dehydrogenase)」(EC 1.1.1.27)とは、L-乳酸化合物をピルビン酸に変換することを含む触媒活性を有するポリペプチドを指す。しかし、L-乳酸をピルビン酸にする変換反応を触媒する、この酵素群に分類されていない他の酵素類が存在することもありうる。そのような酵素類は、L-乳酸デヒドロゲナーゼの類似体であるとみなす。L-乳酸をピルビン酸にする変換反応を触媒しうる酵素類の例をTable 1(表1)に記載する。Table 1(表1)に記載する酵素類は、こうした酵素類のより多くの例を見出すことのできるデータベースが、GeneBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)、Braunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等、多数存在するため、参考のために示すにすぎない。
【0065】
【表1】
【0066】
用語「D-乳酸デヒドロゲナーゼ」、「D-特異性乳酸デヒドロゲナーゼ」、「D-(-)-乳酸デヒドロゲナーゼ(NAD+)」、「D-乳酸デヒドロゲナーゼ(D-lactic acid dehydrogenase)」、「D-乳酸デヒドロゲナーゼ(D-lactic dehydrogenase)」(EC 1.1.1.28)とは、D-乳酸化合物をピルビン酸に変換することを含む触媒活性を有するポリペプチドを指す。しかし、D-乳酸をピルビン酸にする変換反応を触媒する、この酵素群に分類されていない他の酵素類が存在することもありうる。そのような酵素類は、D-乳酸デヒドロゲナーゼの類似体であるとみなす。D-乳酸をピルビン酸にする変換反応を触媒しうる酵素類の例をTable 2(表2)に記載する。Table 2(表2)に記載する酵素類は、こうした酵素類のより多くの例を見出すことのできるデータベースが、GeneBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)、Braunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等、多数存在するため、参考のために示すにすぎない。
【0067】
【表2】
【0068】
用語「アセト乳酸シンターゼ」、「アセト乳酸シンターゼ」、「α-アセトヒドロキシ酸シンテターゼ」、「(α-アセトヒドロキシ酸シンターゼ)」、「α-アセト乳酸シンターゼ」、「α-アセト乳酸シンテターゼ」、「アセトヒドロキシ酸シンテターゼ」、「アセトヒドロキシ酸シンターゼ」、「アセト乳酸ピルビン酸-リアーゼ(カルボキシル化する)」、「アセト乳酸シンテターゼ(acetolactic synthetase)」(EC 2.2.1.6)とは、ピルビン酸化合物を2-アセト乳酸に変換することを含む触媒活性を有するポリペプチドを指す。しかし、ピルビン酸を2-アセト乳酸にする変換反応を触媒する、この酵素群に分類されていない他の酵素類が存在することもありうる。そのような酵素類は、アセト乳酸シンターゼの類似体であるとみなす。ピルビン酸を2-アセト乳酸にする変換反応を触媒しうる酵素類の例をTable 3(表3)に記載する。Table 3(表3)に記載する酵素類は、こうした酵素類のより多くの例を見出すことのできるデータベースが、GeneBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)、Braunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等、多数存在するため、参考のために示すにすぎない。
【0069】
【表3】
【0070】
用語「ケト酸レダクトイソメラーゼ」、「ケトール酸レダクトイソメラーゼ」、「ジヒドロキシイソ吉草酸デヒドロゲナーゼ(異性化する)」、「アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ」、「α-ケト-β-ヒドロキシアシルレダクトイソメラーゼ」「2-ヒドロキシ-3-ケト酸レダクトイソメラーゼ」、「アセトヒドロキシ酸レダクトイソメラーゼ」、「アセト乳酸レダクトイソメラーゼ」、及び「ジヒドロキシイソ吉草酸(を異性化する)デヒドロゲナーゼ」(EC 1.1.1.86)とは、2-アセト乳酸を2,3-ジヒドロキシ吉草酸に変換することを含む触媒活性を有するポリペプチドを指す。しかし、2-アセト乳酸を2,3-ジヒドロキシ吉草酸にする変換反応を触媒する、この酵素群に分類されていない他の酵素類が存在することもありうる。そのような酵素類は、ケト酸レダクトイソメラーゼの類似体であるとみなす。2-アセト乳酸を2,3-ジヒドロキシ吉草酸にする変換反応を触媒しうる酵素類の例をTable 4(表4)に記載する。Table 4(表4)に記載する酵素類は、こうした酵素類のより多くの例を見出すことのできるデータベースが、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)、Braunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等、多数存在するため、参考のために示すにすぎない。
【0071】
【表4】
【0072】
用語「ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(dihydroxy acid dehydratase)」、「ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(dihydroxy-acid dehydratase)」、「アセトヒドロキシ酸デヒドラターゼ」、「α,β-ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ」、「DHAD」、「2,3-ジヒドロキシイソ吉草酸デヒドラターゼ」、「α,β-ジヒドロキシイソ吉草酸デヒドラターゼ」、及び「2,3-ジヒドロキシ酸ヒドロリアーゼ」(EC 4.2.1.9)とは、2,3-ジヒドロキシ吉草酸をケトイソ吉草酸に変換することを含む触媒活性を有するポリペプチドを指す。しかし、2,3-ジヒドロキシ吉草酸をケトイソ吉草酸にする変換反応を触媒する、この酵素群に分類されていない他の酵素類が存在することもありうる。そのような酵素類は、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼの類似体であるとみなす。2,3-ジヒドロキシ吉草酸をケトイソ吉草酸にする変換反応を触媒しうる酵素類の例をTable 5(表5)に記載する。Table 5(表5)に記載する酵素は、こうした酵素類の例を見出すことのできるデータベースが、GeneBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)、Braunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等、多数存在するため、参考のために示すにすぎない。
【0073】
【表5】
【0074】
用語「ケト酸デカルボキシラーゼ」、「分枝鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(branched-chain-2-oxoacid decarboxylase)」、「分枝鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(branched-chain oxo acid decarboxylase)」、「分枝鎖α-ケト酸デカルボキシラーゼ」、「分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼ」(EC 4.1.1.72)とは、ケトイソ吉草酸をイソブチルアルデヒドに変換することを含む触媒活性を有するポリペプチドを指す。しかし、ケトイソ吉草酸をイソブチルアルデヒドにする変換反応を触媒する、この酵素群に分類されていない他の酵素類が存在することもありうる。そのような酵素類は、ケト酸デカルボキシラーゼの類似体であるとみなす。ケトイソ吉草酸からイソブチルアルデヒドへの変換反応を触媒しうる酵素類の例をTable 6(表6)に記載する。Table 6(表6)に記載する酵素類は、こうした酵素類のより多くの例を見出すことのできるデータベースが、GeneBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)、Braunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等、多数存在するため、参考のために示すにすぎない。
【0075】
【表6】
【0076】
用語「アルコールデヒドロゲナーゼ」、「アルデヒドレダクターゼ」、「ADH」、「アルコールデヒドロゲナーゼ(NAD)」、「脂肪族アルコールデヒドロゲナーゼ」、「NAD依存性アルコールデヒドロゲナーゼ」、「NADH-アルコールデヒドロゲナーゼ」、及び「NADH-アルデヒドデヒドロゲナーゼ」(EC 1.1.1.1)とは、NADHを使用してイソブチルアルデヒド化合物をイソブタノールに変換することを含む触媒活性を有するポリペプチドを指す。しかし、イソブチルアルデヒドをイソブタノールにする変換反応を触媒する、この酵素群に分類されていない他の酵素類が存在することもありうる。そのような酵素類は、アルコールデヒドロゲナーゼの類似体であるとみなす。NADHを使用してイソブチルアルデヒドをイソブタノールにする変換反応を触媒しうる酵素類の例をTable 7(表7)に記載する。Table 7(表7)に記載する酵素類は、こうした酵素類のより多くの例を見出すことのできるデータベースが、GeneBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)、Braunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等、多数存在するため、参考のために示すにすぎない。
【0077】
【表7】
【0078】
また用語「アルコールデヒドロゲナーゼ」、「アルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)」、「アルデヒドレダクターゼ(NADPH)」、「NADP-アルコールデヒドロゲナーゼ」、「NADP+-アルデヒドレダクターゼ」、「NADP+依存性アルデヒドレダクターゼ」、「NADPH-アルデヒドレダクターゼ」、「NADPH依存性アルデヒドレダクターゼ」、及び「アルコールデヒドロゲナーゼ(NADP)」(EC 1.1.1.2)は、NADPHを使用してイソブチルアルデヒド化合物をイソブタノールに変換することを含む触媒活性を有するポリペプチドを指す。しかし、イソブチルアルデヒドをイソブタノールにする変換反応を触媒する、この酵素群に分類されていない他の酵素類もありうる。そのような酵素類は、アルコールデヒドロゲナーゼの類似体であるとみなす。NADPHを使用してイソブチルアルデヒドをイソブタノールにする変換反応を触媒しうる酵素類の例をTable 8(表8)に記載する。Table 8(表8)に記載する酵素類は、こうした酵素類のより多くの例を見出すことのできるデータベースが、GeneBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)、Braunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等、多数存在するため、参考のために示すにすぎない。
【0079】
【表8】
【0080】
本発明の一態様は、多酵素系によって、乳酸からイソブタノールが順次生成され、イソブタノールの生成が、NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系(図1)と関連付けられている方法に関する。この変換は、プロセス全体を連続的に、半連続的に、又はバッチ方式で行うことのできる容器又は反応器において実施することができる。
【0081】
更に、本発明は、好ましくは、理論収率以下の実験収率で乳酸をイソブタノールに順次変換するポリペプチドを提供することにより、先行技術の不備を克服する。
【0082】
更に、本発明の方法では、乳酸のピルビン酸への変換、アセト乳酸の2,3-ジヒドロキシ吉草酸への変換、及びイソブチルアルデヒドのイソブタノールへの変換の際に、NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPHの再生が可能となりうるので、本発明は、上述のプロセスを実施するのに、NAD+及び/又はNADP+並びにNADH及び/又はNADPHの化学量論反応によって設定される量を必要としなくてもよい。
【0083】
同様に、本発明の方法は、NAD+、NADP+、NADH、及び/又はNADPH系をリサイクルさせる単位操作を用いて、化学量論性によって設定される量より少量のこうした化合物しか必要とせずに、より多量の乳酸をイソブタノールに変換しうることが可能となりうる。
【0084】
本発明では、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)酵素、及びその類似体を使用してL-乳酸をイソブタノールに変換することができ、系に加えるNAD+の量は、L-乳酸のイソブタノールへの変換についての化学量論反応によって設定される量より少なくてよい。L-乳酸のイソブタノールへの変換において得られる実験収率は、理論収率(L-乳酸1グラムあたり0.411グラムのイソブタノール)以下でよい。
【0085】
更に別の態様において、本発明では、D-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)酵素、及びその類似体を使用してD-乳酸をイソブタノールに変換することができ、系に加えるNAD+の量は、D-乳酸のイソブタノールへの変換についての化学量論反応によって設定される量より少なくてよい。D-乳酸のイソブタノールへの変換において得られる実験収率は、理論収率(D-乳酸1グラムあたり0.411グラムのイソブタノール)以下でよい。
【0086】
更に別の態様において、本発明では、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27)、D-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)酵素、及び/又はその類似体を使用して、L-乳酸とD-乳酸の混合物をイソブタノールに変換することができ、系に加えるNAD+の量は、L-乳酸とD-乳酸の混合溶液のイソブタノールへの変換についての化学量論反応によって設定される量より少なくてよい。L-乳酸とD-乳酸の混合物のイソブタノールへの変換において得られる実験収率は、理論収率(L-乳酸とD-乳酸の混合物1グラムあたり0.411グラムのイソブタノール)以下でよい。
【0087】
また、本発明では、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)酵素、及び/又はその類似体を使用してL-乳酸をイソブタノールに変換することができ、系に加えるNADP+の量は、L-乳酸のイソブタノールへの変換についての化学量論反応によって設定される量より少なくてよい。L-乳酸のイソブタノールへの変換において得られる実験収率は、理論収率(L-乳酸1グラムあたり0.411グラムのイソブタノール)以下でよい。
【0088】
同様に、本発明では、D-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)酵素、及び/又はその類似体を使用してD-乳酸をイソブタノールに変換することができ、系に加えるNADP+の量は、D-乳酸のイソブタノールへの変換についての化学量論反応によって設定される量より少なくてよい。D-乳酸のイソブタノールへの変換について得られる実験収率は、理論収率(D-乳酸1グラムあたり0.411グラムのイソブタノール)以下でよい。
【0089】
一方、本発明では、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27)、D-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)酵素、及び/又はその類似体を使用して、L-乳酸とD-乳酸の混合物をイソブタノールに変換することができ、系に加えるNADP+の量は、L-乳酸とD-乳酸の混合物のイソブタノールへの変換についての化学量論反応によって設定される量より少なくてよい。L-乳酸とD-乳酸の混合物のイソブタノールへの変換について得られる実験収率は、理論収率(L-乳酸とD-乳酸の混合物1グラムあたり0.411グラムのイソブタノール)以下でよい。
【0090】
本発明の他の態様は、乳酸からイソブタノールを順次生成する一連の反応を実施する酵素類の混合物に関する。そこで、乳酸のイソブタノールへの変換に使用される好ましい酵素混合物は、次のとおりである。
【0091】
a)出発基質をL-乳酸とし、レドックス反応でNAD+/NADHを使用して最終生成物としてのイソブタノールを得る場合、酵素混合物は、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)、及び/又はこれらのいずれかの類似体を含みうる。
【0092】
b)出発基質をD-乳酸とし、レドックス反応でNAD+/NADHを使用して最終生成物としてのイソブタノールを得る場合、酵素混合物は、D-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)、及び/又はこれらのいずれかの類似体を含みうる。
【0093】
c)出発基質をL-乳酸とD-乳酸の混合物とし、レドックス反応でNAD+/NADHを使用して最終生成物としてのイソブタノールを得る場合、酵素混合物は、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27)、D-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)、及び/又はこれらのいずれかの類似体を含みうる。
d)出発基質をL-乳酸とし、レドックス反応でNADP+/NADPHを使用して最終生成物としてのイソブタノールを得る場合、酵素混合物は、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)、及び/又はこれらのいずれかの類似体を含みうる。
【0094】
e)出発基質をD-乳酸とし、レドックス反応でNADP+/NADPHを使用して最終生成物としてのイソブタノールを得る場合、酵素混合物は、D-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)、及び/又はこれらのいずれかの類似体を含みうる。
【0095】
f)出発基質をL-乳酸とD-乳酸の混合物とし、レドックス反応でNADP+/NADPHを使用して最終生成物としてのイソブタノールを得る場合、酵素混合物は、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27)、D-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)、及び/又はこれらのいずれかの類似体を含みうる。
【0096】
g)出発基質をL-乳酸とし、レドックス反応でNAD+/NADHとNADP+/NADPHの混合物を使用して最終生成物としてのイソブタノールを得る場合、酵素混合物は、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)、及び/又はこれらのいずれかの類似体を含みうる。
【0097】
h)出発基質をD-乳酸とし、レドックス反応でNAD+/NADHとNADP+/NADPHを使用して最終生成物としてのイソブタノールを得る場合、酵素混合物は、D-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)、及び/又はこれらのいずれかの類似体を含みうる。
【0098】
i)出発基質をL-乳酸とD-乳酸の混合物とし、レドックス反応でNAD+/NADH及びNADP+/NADPHを使用して最終生成物としてのイソブタノールを得る場合、酵素混合物は、L-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27)、D-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)、アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)、ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)、ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)、及び/又はこれらのいずれかの類似体を含みうる。
【0099】
本発明の別の態様では、操作モードが、遊離酵素類を使用して連続的になっていることが好ましい、NAD(P)+/NAD(P)H再生系と関連付けられた、乳酸からのイソブタノールの生成方法が提供される。酵素類の混合物は、上述のもののいずれかでよい。
【0100】
本発明の好ましい態様では、以下に記載するいくつかの段階を含みうる。
I.混合槽において、水と、乳酸と、酵素類の混合物と、NAD(P)+/NAD(P)Hと、触媒作用を働かせるために酵素類によって使用される補因子及び補酵素とを一緒に混合する。触媒作用を働かせるために各酵素によって使用される補因子及び補酵素は、各酵素の性質と関係する場合がある。Table 9(表9)に、本発明で使用することが好ましい補因子の一部と種々の酵素類を示す。Table 9(表9)に示す補因子及び補酵素は、例示的な目的のためのものにすぎず、当業者が見出す他の補因子又は補酵素を除外しない。
【0101】
上述の成分は、パイプ、反応器、又は成分の混合に適する他のいずれかの容器中で混合してよい。
【0102】
成分は、酵素と基質間の相互作用を促進するのに適したどんな方法によって混合してもよい。加えて、混合は、機械式、空気式(pneumatically)、又は水力式(hydraulically)で実施することができる。単一の混合法を利用してもよいし、又は2種以上の異なる混合法を組み合わせて成分を混合してもよい。
【0103】
II. Iで調製した混合物を触媒反応にかける。混合槽からの流出液ストリームが反応器を連続的に通過する結果、触媒反応条件を含めた反応条件は、2〜12の間、4〜10の間、好ましくは6〜8の間のpH、5℃〜50℃の間、好ましくは15℃〜40℃の間、より好ましくは25℃〜37℃の間の温度で安定したままとなる。流出液ストリームが反応器に入るとき、乳酸から100%以下の変換効率でイソブタノールを生成することができる。触媒反応の継続時間は、乳酸をイソブタノールに変換するのに十分な長さであることが好ましい。
【0104】
本発明の一態様では、このような手順の間、乳酸は、触媒作用によってイソブタノールに変換しうる。乳酸の触媒変換は、触媒変換を実行するのに適する容器において行うことができる。たとえば、撹拌槽型反応器、栓流型反応器、流動床反応器、又は充填層反応器を、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0105】
III. IIで得られた反応物からイソブタノールを分離する。イソブタノールが豊富になり、乳酸が消耗されていてよい、反応器出口ストリームは、補因子、補酵素、及び酵素類をイソブタノール及び水から分離することのできる分離系を通過する。酵素類、補酵素、及び補因子は、Iにおける混合槽又はIIにおける反応器へとリサイクルさせることのできる、濃縮されたストリームを形成しうる。分離は、たとえば、分子の物理化学的性質に依拠した、分子の分離に適するいずれかの方法によって行うことができる。
【0106】
IV.他方、水-イソブタノール混合物は、別の系によって分離することができる。分子の分離に適するどんな分離方法を用いてもよい。分離は、分子の大きさに基づいて行ってもよい。分離系は、膜系(逆浸透、浸透気化、ナノ濾過、限外濾過等)、蒸留、蒸発、又は大きさ若しくはそのいずれかの物理化学的性質のどちらかによって分子の分離を可能にする他のいずれかの系でよい。
【0107】
イソブタノールを分離するとき、触媒変換によって得られた反応物は、イソブタノール及び水を含むストリームと、イソブタノール及び水以外の成分を含むストリームとに分離することができる。イソブタノール及び水を含むストリームは、イソブタノールを含むストリームと、水を含むストリームとに更に分離することができる。イソブタノール及び水以外の成分を含むストリームは、混合槽又は反応器に混合してリサイクルさせることができる。
【0108】
【表9A】
【0109】
【表9B】
【0110】
本発明の異なる態様では、イソブタノールの生成がNAD(P)+/NAD(P)Hの再生系と関連付けられている、乳酸からのイソブタノールの生成方法が提供される。操作モードが連続的になっており、固定化酵素類の混合物が使用されることが好ましい。固定化酵素類の混合物は、上述のもののいずれかを含んでよい。固定化は、当業界で一般に知られている種々の方法によって行うことができる。Table 10(表10)に、酵素類の固定化に使用することのできる担体の一部を示す。Table 10(表10)に挙げた担体は、例示的な目的のためのものにすぎず、Table 10(表10)で言及されていなくとも、当業者が見出す他の担体を除外しない。
【0111】
【表10】
【0112】
本方法は、以下に記載するとおりのいくつかの段階を含みうる。
【0113】
I.槽において、酵素類を担体中/担体上に固定化する。1種又は複数の酵素を同じ又は異なる担体中/担体上に固定化することができる。加えて、担体は、異なる数の酵素を有する同じタイプのものであっても、又は、異なるタイプのものであっても、異なる大きさを有しても、若しくは異なる化学組成を有してもよい。各担体は、1つ又は複数の種類の酵素を収容してもよい。補酵素及び補因子は、担体中/担体上に存在しても、しなくてもよい。酵素類を固定化したなら、こうした酵素類を反応器に加える。
【0114】
II.別の混合槽において、水、乳酸、及びNAD(P)+/NAD(P)Hを混合する。各酵素は、酵素の性質に応じて、触媒作用を働かせるのに、補因子及び補酵素を使用する場合もある。Table 9(表9)に、本発明において様々な酵素類と共に好ましく使用される一部の補酵素及び補因子を示している。Table 9(表9)に記載の補因子及び補酵素は、例示的な目的のためのものにすぎず、当業者が見出す他の補因子及び補酵素を除外しない。
【0115】
上述の成分は、パイプ、反応器、又は成分の混合に適した他のいずれかの容器中で混合してよい。
【0116】
成分は、酵素と基質間の相互作用を促進するのに適したどんな方法によって混合してもよい。加えて、混合は、機械式、空気式(pneumatically)、又は水力式(hydraulically)で実行することができる。単一の混合法を利用してもよいし、又は2種以上の異なる混合法を組み合わせて成分を混合してもよい。
【0117】
III.段階IIから出るストリームが、固定化酵素類を含有する反応器全体を連続的に流動する。反応器は、2〜12の間、4〜10の間、好ましくは6〜8の間のpH、5℃〜50℃の間、好ましくは15℃〜40℃の間、より好ましくは25℃〜37℃の間の温度で、安定した反応条件を維持する。ストリームが反応器に入るとき、乳酸から100%以下の変換効率でイソブタノールを生成することができる。担体は、好ましくは、反応器内で維持されるべきである。しかし、担体を反応器から除去し、更なる使用のためにリサイクルさせてもよい。
【0118】
IV.段階IIIからの、イソブタノールの豊富な産出物、及び乳酸が消耗された流出液は、補酵素及び補因子をイソブタノール及び水から分離する分離系を通過することができる。補酵素及び補因子は、混合槽又は酵素反応器へとリサイクルさせることのできる、濃縮されたストリームとなりうる。
【0119】
V. IVに記載の分離系を出るイソブタノール-水混合物を、他の分離系によって分離してもよい。この系は、一方がイソブタノールストリーム、他方が水ストリームである2つのストリームを生じうる。
【0120】
IV及びVで言及した分離系は、膜系(逆浸透、浸透気化、ナノ濾過、限外濾過等)、蒸留、蒸発、又は大きさ若しくはそのいずれかの物理化学的性質のどちらかによって分子の分離を可能にする他のいずれかの系を含みうる。
【0121】
本発明の一態様は、上で開示した方法によって調製されるバイオ燃料又はバイオ燃料前駆体に関する。バイオ燃料又はバイオ燃料前駆体は、ASTM D7862の要件を満たすことが好ましい。
【0122】
本発明の別の態様は、炭化水素の混合物と上述のバイオ燃料前駆体をブレンドすることにより調製される自動車用燃料に関する。
【実施例】
【0123】
以下の実施例は、本発明の新規性を明確にするためのものである。以下の実施例が本発明の範囲の限定ではないことを理解すべきである。本発明の記載及び以下の実施例から、当業者は、いくつかの変更形態を実行することができるが、そうした変更形態は、特許請求の範囲に記載するとおりの本発明の範囲及び精神の内にあるとみなす。
【0124】
(実施例1)
酵素活性の定量化
様々な酵素類の酵素活性を求めるために、種々の酵素遺伝子を、Green及びSambrook、2010に記載のプロトコールに従って、DUET(Merck社、米国)シリーズ等の市販の発現ベクターにクローン化した。引き続いて、Green及びSambrook、2010に記載のプロトコールに従って酵素類を精製した。試験した酵素類の一覧をTable 11(表11)に示す。
【0125】
【表11】
【0126】
注.L-LDH:L-乳酸デヒドロゲナーゼ、D-LDH:D-乳酸デヒドロゲナーゼ、ALS:アセト乳酸シンターゼ、CAR:ケト酸レダクトイソメラーゼ、DAD:ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ、CAD:ケト酸デカルボキシラーゼ、ADH:アルコールデヒドロゲナーゼ、2AL 2-アセト乳酸、DHV 2,3-ジヒドロキシ吉草酸、KIV:ケトイソ吉草酸、IBA:イソブチルアルデヒド、IBOH:イソブタノール。
【0127】
酵素のアッセイ及び結果を以下に記載する。
【0128】
a)L-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27):
L-乳酸デヒドロゲナーゼは、NAD+及び/又はNADP+を使用して、L-乳酸をピルビン酸に変換するものであり、したがって、文献(Cetinelら、2013)に記載のプロトコールに従い、様々な初期濃度のL-乳酸、NAD+及び/又はNADP+、pH、及び温度によってアッセイを行った。異なる微生物からの3種の酵素を例として使用した。屈折率検出器を用い、Rezex-ROA有機酸H+カラムを使用するHPLCによって、L-乳酸消費動力学をモニターした。Cary-60分光光度計を温度制御しながら340nmの波長で使用して、NADH及び/又はNADPHの生成をモニターした。試験条件をTable 12(表12)に示す。
【0129】
【表12】
【0130】
すべてのアッセイにおいて、L-乳酸からピルビン酸への変換と、NADH及び/又はNADPH生成の両方が認められた。Table 13(表13)に示す結果は、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)やBraunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等の種々の国際的なデータベースが報告した反応の化学量論性を考慮に入れている、1時間の反応時間後に得られた変換効率を表す。
【0131】
【表13】
【0132】
b)D-乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28)
D-乳酸デヒドロゲナーゼは、NAD+及び/又はNADP+を使用して、D-乳酸をピルビン酸に変換するものであり、したがって、文献(Kimら、2014)に記載のプロトコールに従い、様々な初期濃度のD-乳酸、NAD+及び/又はNADP+、pH、及び温度によってアッセイを行った。異なる微生物からの3種の酵素を例として使用した。屈折率検出器を用い、Rezex-ROA有機酸H+カラムを使用するHPLCによって、L-乳酸消費動力学をモニターし、Cary-60分光光度計を温度制御しながら340nmの波長で使用して、NADH及び/又はNADPHの生成をモニターした。アッセイ条件をTable 14(表14)に示す。
【0133】
【表14】
【0134】
実施したすべてのアッセイにおいて、D-乳酸からピルビン酸への変換と、NADH及び/又はNADPHの生成が認められた。Table 15(表15)に示す結果は、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)やBraunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等の種々の国際的なデータベースが報告した反応の化学量論性を考慮に入れている、1時間の反応時間後に得られた変換効率を表す。
【0135】
【表15】
【0136】
c)アセト乳酸シンターゼ(EC 2.2.1.6)
アセト乳酸シンターゼは、ピルビン酸を2-アセト乳酸に変換するものであり、したがって、文献(Holtzclaw及びChapman、1975;Barakら、1987;Atsumiら、2009)に記載のプロトコールに従い、様々な初期濃度のピルビン酸、pH、及び温度によってアッセイを行った。異なる微生物からの3種の酵素を例として使用した。210nmの波長でUV検出器を用い、Acclaim有機酸カラムを使用するUHPLCによって、ピルビン酸消費動力学をモニターし、Cary-60分光光度計も320nmの波長まで温度制御しながら使用した。アッセイ条件をTable 16(表16)に示す。
【0137】
【表16】
【0138】
Table 17(表17)には、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)やBraunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等の種々の国際的なデータベースが報告した反応の化学量論性を考慮に入れている、1時間の反応時間後に得られた変換効率の結果を示す。
【0139】
【表17】
【0140】
d)ケト酸レダクトイソメラーゼ(EC 1.1.1.86)及びジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.9)
一方で、ケト酸レダクトイソメラーゼは、2-アセト乳酸を2,3-ジヒドロキシ吉草酸に変換し、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼは、2,3-ジヒドロキシ吉草酸をケトイソ吉草酸に変換する。2-アセト乳酸は市販品として入手可能でなく、2,3-ジヒドロキシ吉草酸は不安定であるため、両酵素の活性は、アセト乳酸シンターゼとケト酸レダクトイソメラーゼとジヒドロキシ酸デヒドラターゼとを一緒にしたアッセイによって間接的に求めた。文献(Flintら、1993;Bastianら、2011;Liら、2011)に記載のプロトコールを使用し、様々な初期濃度のピルビン酸、NADH及び/又はNADPH、pH、及び温度によって、これを実現した。異なる微生物からの2種のレダクトイソメラーゼ酵素と2種のジヒドロキシケト酸デヒドラターゼ酵素の組合せを例として使用した。210nmの波長でUV検出器を用い、Acclaim有機酸カラムを使用するUHPLCによって、ピルビン酸消費動力学及びケトイソ吉草酸生成(ジヒドロキシデヒドラターゼ酵素活性)をモニターし、Cary-60分光光度計を温度制御しながら340nmの波長で使用して、NADH及び/又はNADPH消費(ケト酸レダクトイソメラーゼ酵素の基質)をモニターした。アッセイ条件をTable 18(表18)に示す。
【0141】
【表18】
【0142】
Table 19(表19)には、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)やBraunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等の種々の国際的なデータベースが報告した反応の化学量論性を考慮に入れている、1時間の反応時間後に得られた変換効率の結果を示す。
【0143】
【表19】
【0144】
e)ケト酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.72)
ケト酸デカルボキシラーゼは、ケトイソ吉草酸をイソブチルアルデヒドに変換するものであり、したがって、文献(Plazaら、2004)に記載のプロトコールに従い、様々な初期濃度のケトイソ吉草酸、pH、及び温度によってアッセイを行った。異なる微生物からの3種の酵素を例として使用した。210nmの波長でUV検出器を用い、Acclaim有機酸カラムを使用するUHPLCによって、ケトイソ吉草酸消費動力学をモニターし、Cary-60分光光度計も318nmの波長まで温度制御しながら使用した。アッセイ条件をTable 20(表20)に示す。
【0145】
【表20】
【0146】
Table 21(表21)には、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)やBraunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等の種々の国際的なデータベースが報告した反応の化学量論性を考慮に入れている、1時間の反応時間後に得られた変換効率の結果を示す。
【0147】
【表21】
【0148】
f)アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.1)
このアルコールデヒドロゲナーゼは、NADHを使用してイソブチルアルデヒドをイソブタノールに変換するものであり、したがって、文献(Atsumiら、2010)に記載のプロトコールに従い、様々な初期濃度のイソブチルアルデヒド、NADH、pH、及び温度によってアッセイを行った。異なる微生物からの3種の酵素を例として使用した。屈折率検出器を用い、Rezex-ROA有機酸H+カラムを使用するHPLCによって、イソブタノール生成動力学をモニターし、Cary-60分光光度計を温度制御しながら340nmの波長で使用して、NADHの消費をモニターした。アッセイ条件をTable 22(表22)に示す。
【0149】
【表22】
【0150】
実施したすべてのアッセイにおいて、イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換と、NADH消費が認められた。Table 23(表23)に示す結果は、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)やBraunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等の種々の国際的なデータベースが報告した反応の化学量論性を考慮に入れている、1時間の反応時間後に得られた変換効率を表す。
【0151】
【表23】
【0152】
g)アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.2)
このアルコールデヒドロゲナーゼは、NADPHを使用してイソブチルアルデヒドをイソブタノールに変換するものであり、したがって、文献(Atsumiら、2010)に記載のプロトコールに従い、様々な初期濃度のイソブチルアルデヒド、NADPH、pH、及び温度によってアッセイを行った。異なる微生物からの3種の酵素を例として使用した。屈折率検出器を用い、Rezex-ROA有機酸H+カラムを使用するHPLCによって、イソブタノール生成動力学をモニターし、Cary-60分光光度計を温度制御しながら340nmの波長で使用して、NADHの消費をモニターした。試験条件をTable 24(表24)に示す。
【0153】
【表24】
【0154】
実施したすべてのアッセイにおいて、イソブチルアルデヒドからイソブタノールへの変換と、NADPH消費が認められた。Table 25(表25)に示す結果は、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(http://www.kegg.jp)やBraunschweig Enzyme Database(http://www.brenda-enzymes.org)等の種々の国際的なデータベースが報告した反応の化学量論性を考慮に入れている、1時間の反応時間後に得られた変換効率を表す。
【0155】
【表25】
【0156】
(実施例2)
NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系と共役させた、一バッチ法での乳酸からのイソブタノールの酵素的生成
この例は、NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生構想を立証するためのものである。
【0157】
a)NADHの生成を触媒する酵素と、NAD+の生成を触媒する2種の酵素とを次の反応に従って共役させることによるNAD+/NADH:
【0158】
- 乳酸のピルビン酸への変換。この反応では、2つの乳酸分子の2つのピルビン酸分子への変換と共に、2つのNAD+分子から2つのNADH分子が得られる。この反応を行いうるのは、L-乳酸デヒドロゲナーゼ酵素(EC 1.1.1.27)及び/又はD-乳酸デヒドロゲナーゼ酵素類(EC 1.1.1.28)である。
2C3H6O3 + 2NAD+ ==> 2C3H4O3 + 2NADH + 2H+ (1)
【0159】
- ピルビン酸の2-アセト乳酸への変換。この反応では、2つのピルビン酸分子から1つの2-アセト乳酸分子が得られる。この反応を行いうるのは、アセト乳酸シンターゼ酵素類(EC 2.2.1.6)である。
2C3H4O3 ==> C5H8O4 + CO2 (2)
【0160】
- 2-アセト乳酸の2,3-ジヒドロキシ吉草酸への変換。この反応では、1つのNADH分子からの1つのNAD+分子の形成と共に、1つの2-アセト乳酸分子から1つの2,3-ジヒドロキシ吉草酸分子が得られる。この反応は、ケト酸レダクトイソメラーゼ酵素類(EC 1.1.1.86)によって触媒されうる。天然酵素は、NADHに対する親和性が非常に低い。しかし、文献(Raneら、1997)で知られているといえる、NADHを基質として使用する突然変異体が存在しうる。こうした突然変異体が実行しうるのは、次の反応である。
C5H8O4 + NADH + H+ ==> C5H10O4 + NAD+ (3)
【0161】
- 2,3-ジヒドロキシ吉草酸のケトイソ吉草酸への変換。この反応では、1つの2,3-ジヒドロキシ吉草酸分子から1つのケトイソ吉草酸分子が得られる。この反応は、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ酵素類(EC 4.2.1.9)によって触媒されうる。
C5H10O4 ==> C5H8O3 + H2O (4)
【0162】
- ケトイソ吉草酸のイソブチルアルデヒドへの変換。この反応では、1つのケトイソ吉草酸分子から1つのイソブチルアルデヒド分子が得られる。この反応は、ケト酸デカルボキシラーゼ酵素類(EC 4.1.1.72)によって触媒されうる。
C5H8O3 ==> C4H8O + CO2 (5)
【0163】
- イソブチルアルデヒドのイソブタノールへの変換。この反応では、1つのNADH分子からの1つのNAD+分子の形成と共に、1つのイソブチルアルデヒド分子から1つのイソブタノール分子が得られる。この反応は、アルコールデヒドロゲナーゼ酵素類(EC 1.1.1.1)によって触媒されうる。
C4H8O + NADH + H+ ==> C4H10O + NAD+ (6)
【0164】
上記化学方程式から、多酵素系の全体としての化学量論において、理論上はNAD+又はNADHの損失又は獲得がない。反応全体では、結果として、1つのイソブタノール分子を生成するのに2つの乳酸分子が使用され、次の反応に従って、100%の変換効率が実現される。
2C3H6O3 ==> C4H10O + 2CO2 + H2O (7)
【0165】
b)NADPHを生じる酵素と、NADP+を生じる2種の酵素類とを次の反応に従って共役させることによる、NADP+/NADPH
【0166】
- 乳酸のピルビン酸への変換。この反応では、2つの乳酸分子の2つのピルビン酸分子への変換と共に、2つのNADP+分子から2つのNADPH分子が得られる。この反応は、L-乳酸デヒドロゲナーゼ酵素(EC 1.1.1.27)及び/又はD-乳酸デヒドロゲナーゼ酵素類(EC 1.1.1.28)によって触媒されうる。
2NADP+ + 2C3H6O3==> 2NADPH + 2C3H4O3 + 2H+ (8)
【0167】
- ピルビン酸の2-アセト乳酸への変換。この反応では、2つのピルビン酸分子から1つの2-アセト乳酸分子が得られる。この反応は、アセト乳酸シンターゼ酵素類(EC 2.2.1.6)によって触媒されうる。
2C3H6O3 ==> C5H8O4 + CO2 (9)
【0168】
- 2-アセト乳酸の2,3-ジヒドロキシ吉草酸への変換。この反応では、1つのNADPH分子からの1つのNADP+分子の形成と共に、2-アセト乳酸分子から2,3-ジヒドロキシ吉草酸分子が得られる。この反応は、ケト酸レダクトイソメラーゼ酵素類(EC 1.1.1.86)によって触媒されうる。
C5H8O4 + NADPH + H+ ==> C5H10O4 + NADP+ (10)
【0169】
- 2,3-ジヒドロキシ吉草酸のケトイソ吉草酸への変換。この反応では、2,3-ジヒドロキシ吉草酸分子からケトイソ吉草酸分子が得られる。この反応は、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ酵素類(EC 4.2.1.9)によって触媒されうる。
C5H10O4 ==> C5H8O3 + H2O (11)
【0170】
- ケトイソ吉草酸のイソブチルアルデヒドへの変換。この反応では、ケトイソ吉草酸分子からイソブチルアルデヒド分子が得られる。この反応は、ケト酸デカルボキシラーゼ酵素類(EC 4.1.1.72)によって触媒されうる。
C5H8O3 ==> C4H8O + CO2 (12)
【0171】
- イソブチルアルデヒドのイソブタノールへの変換。この反応では、1つのNADPH分子からの1つのNADP+分子の生成と共に、イソブチルアルデヒド分子からイソブタノール分子が得られる。この反応は、アルコールデヒドロゲナーゼ酵素類(EC 1.1.1.2)によって触媒されうる。
C4H8O + NADPH + H+ ==> C4H10O + NADP+ (13)
【0172】
上記化学方程式から、多酵素系の全体としての化学量論において、理論上はNADP+又はNADPHの損失又は獲得がない。反応全体では、結果として、1つのイソブタノール分子を生成するのに2つの乳酸分子が使用され、次の反応に従って、100%の変換効率が実現される。
2C3H6O3 ==> 2CO2 + H2O + C4H10O (14)
【0173】
c)次の反応に従って、NAD(P)Hを生じる酵素類をNAD(P)+を生じる酵素類と共役させることによる、NAD(P)+/NAD(P)Hの混合物
【0174】
- 乳酸のピルビン酸への変換。この反応では、2つの乳酸分子の2つのピルビン酸分子への変換と共に、2つのNAD(P)+分子から2つのNAD(P)H分子が得られる。この反応は、L-乳酸デヒドロゲナーゼ酵素(EC 1.1.1.27)及び/又はD-乳酸デヒドロゲナーゼ酵素(EC 1.1.1.28)によって触媒されうる。
2C3H6O3 + 2NAD(P)+ ==> 2C3H4O3 + 2NAD(P)H + 2H+ (15)
【0175】
- ピルビン酸の2-アセト乳酸への変換。この反応では、2つのピルビン酸分子から1つの2-アセト乳酸分子が得られる。この反応は、アセト乳酸シンターゼ酵素類(EC 2.2.1.6)によって触媒されうる。
2C3H4O3 ==> C5H8O4 + CO2 (16)
【0176】
- 2-アセト乳酸の2,3-ジヒドロキシ吉草酸への変換。この反応では、1つのNAD(P)H分子からの1つのNAD(P)+分子の生成と共に、1つの2-アセト乳酸分子から1つの2,3-ジヒドロキシ吉草酸分子が生成される。この反応は、ケト酸レダクトイソメラーゼ酵素類(EC 1.1.1.86)によって触媒されうる。
C5H8O4 + NAD(P)H + H+ ==> C5H10O4 + NAD(P)+ (17)
【0177】
- 2,3-ジヒドロキシ吉草酸のケトイソ吉草酸への変換。この反応では、2,3-ジヒドロキシ吉草酸分子からケトイソ吉草酸分子が得られる。この反応は、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ酵素類(EC 4.2.1.9)によって触媒されうる。
C5H10O4 ==> C5H8O3 + H2O (18)
【0178】
- ケトイソ吉草酸のイソブチルアルデヒドへの変換。この反応では、1つのケトイソ吉草酸分子から1つのイソブチルアルデヒド分子が得られる。この反応は、ケト酸デカルボキシラーゼ酵素類(EC 4.1.1.72)によって触媒されうる。
C5H8O3 ==> C4H8O + CO2 (19)
【0179】
- イソブチルアルデヒドのイソブタノールへの変換。この反応では、1つのNAD(P)H分子からの1つのNAD(P)+分子の生成と共に、1つのイソブチルアルデヒド分子から1つのイソブタノール分子が得られる。この反応を触媒しうるのは、アルコールデヒドロゲナーゼ酵素類(EC 1.1.1.1及びEC 1.1.1.2)である。
C4H8O + NAD(P)H + H+ ==> C4H10O + NAD(P)+ (20)
【0180】
上記化学方程式から、多酵素系の全体としての化学量論において、理論上はNAD(P)+又はNAD(P)Hの損失又は獲得がない。反応全体では、結果として、1つのイソブタノール分子を生成するのに2つの乳酸分子が使用され、次の反応に従って、100%の変換効率が実現される。
2C3H6O3 ==> 2CO2 + H2O + C4H10O (21)
【0181】
NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系を、乳酸からのイソブタノール生成と関連付けるために、バッチ系を開発して、異なる操作条件(Table 26(表26))下で使用した。酵素類(Table 27(表27))、(先行技術に記載の濃度の)補因子及び補酵素、乳酸、並びにNAD+及び/又はNADP+を用いて反応混合物を配合した。図2に、バッチ法で実施した条件の1つの結果を示す。この特定の条件では、初期濃度20g/Lで1Lの体積のL-乳酸及び0.1g/LのNAD+を使用した。反応混合物中の酵素類(EC 1.1.1.27、EC 2.2.1.6、EC 1.1.1.86、EC 4.2.1.9、EC 4.1.1.72、及びEC 1.1.1.1)それぞれの濃度は、1g/Lに調整した。Table 26(表26)及びTable 27(表27)に示すとおりの異なる条件についても同様の挙動が得られたことを強調すべきである。
【0182】
すべての場合において、反応は、乳酸を加えて開始した。反応の当初から、反応混合物を継続的に試料採取して、反応の進捗を求めた。NADH及び/又はNADPH濃度をCary-60分光光度計において340nmの波長で経時的に測定した。乳酸及びイソブタノールは、屈折率検出器を用い、Rezex ROA-Organic Acids H+カラムを使用するHPLCによってモニターした。
【0183】
【表26】
【0184】
【表27】
【0185】
NADH再生なしの系では、理論上の化学量論バランスから、19.55gのピルビン酸(20gの乳酸と同等)を8.22gのイソブタノールに変換するのに147.8gのNADHが必要となることが示された。しかし、本発明で提案するようにNAD+/NADH再生系を共役させることにより、及びL-乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の作用による乳酸酸化と関連して、20gの乳酸を8.22gのイソブタノールに変換するのに、0.1gのNAD+しか必要とならない。
【0186】
0.1g/LのNADP+でプロセスを実行したとき、またNAD+とNADP+の混合物を0.1g/Lの濃度で使用したとき、前の段落に記載の結果と同様の結果が得られた。
【0187】
これまで言及した見解は、NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系と共役させた、バッチ法での乳酸からのイソブタノール生成が可能であることを立証したものである。
【0188】
(実施例3)
NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系と共役させた、連続法での乳酸からの酵素的イソブタノール生成
遊離酵素類を使用することによる連続法において、乳酸からのイソブタノールの酵素的生成をNAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系と共役させることの可能性を立証するために、次の手順を実行した。
【0189】
遊離酵素類を使用して、反応器中で乳酸を連続的にイソブタノールに変換した。酵素混合物(Table 27(表27))、(当業界で一般に用いられる濃度の)補因子及び補酵素、乳酸、並びにNAD+及び/又はNADP+を使用して反応混合物を配合した。反応器の操作条件をTable 28(表28)に示す。プロセスを連続的にするために、反応器の入口ストリームと出口ストリームは、同じものとした。
【0190】
図3に、初期濃度20g/LのD-乳酸、及び0.1g/LのNADP+に対応する、CSTRにおいて実施したいくつかの条件下で得られた一部の結果を示す。反応混合物中の酵素類(EC 1.1.1.28、EC 2.2.1.6、EC 1.1.1.86、EC 4.2.1.9、EC 4.1.1.72、及びEC 1.1.1.2)それぞれの濃度は、1g/Lに調整した。これら条件のすべてについて、50Lの操作体積を、様々な流動条件によって使用した。
【0191】
【表28】
【0192】
バッチ法(実施例2を参照されたい)と同じ方式で反応を開始し、その後、連続的方式で、反応媒質を加え、除去した。
【0193】
反応器からの産出物ストリームを逆浸透系に連結し、これによって、イソブタノールから酵素類、補因子、及び補酵素を分離した。酵素類、補因子、及び補酵素のストリームは、反応器へと循環させた。
【0194】
Table 27(表27)及びTable 28(表28)に挙げたすべての条件について、反応中間体の発生を、反応器出口ストリームにおいてモニターした。NADH及び/又はNADPHの発生をCary-60分光光度計において340nmの波長で測定した。乳酸及びイソブタノールは、屈折率検出器を用い、Rezex-ROA有機酸H+カラムを使用するHPLCによって測定した。
【0195】
図3に見られるように、変換効率は、流動条件に関して変動せず、100%に近かった。実施例2と同じように、このような結果によって、連続法において20g/Lの乳酸を変換するのに0.1g/LのNADP+だけを使用して、乳酸からのイソブタノールの酵素的生成をNAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH 再生系と共役させることの可能性が立証された。
【0196】
Table 27(表27)及びTable 28(表28)に示したような他の条件についても、非常に似通った変換効率が得られたことを強調すべきである。
【0197】
(実施例4)
NAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系と共役させた、固定化酵素類を使用する連続法での乳酸からのイソブタノールの酵素的生成
固定化酵素類を使用することによる連続法において、乳酸からのイソブタノールの酵素的生成をNAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH 再生系と共役させることの可能性を立証するために、次のことを実施した。
【0198】
各酵素又は酵素混合物(Table 27(表27))が種々の担体(Table 10(表10))に固定化されている反応器において、様々な量の固定化タンパク質を用いて、乳酸からイソブタノールを連続的に生成した。操作条件をTable 29(表29)に示す。固定化酵素混合物(Table 27(表27))、(当業界で一般に用いられる濃度の)補因子及び補酵素、乳酸、並びにNAD+及び/又はNADP+を使用して反応混合物を配合した。
【0199】
【表29】
【0200】
反応器の産出物ストリームは、補因子と補酵素の混合物を反応器及び/又は混合槽へとリサイクルさせる逆浸透系に連結した。NAD+及び/又はNADP+の初期濃度は0.1g/Lとし、反応器入口における乳酸濃度は、Table 29(表29)に従って様々とした。Table 27(表27)及びTable 29(表29)に挙げたすべての条件において、反応中間体の発生を、管型反応器に沿ってモニターした。NADH及び/又はNADPHの変化をCary-60分光光度計において340nmの波長で測定した。乳酸及びイソブタノール濃度は、屈折率検出器を用い、Rezex-ROA有機酸H+カラムを使用するHPLCによって測定した。
【0201】
図4に、管型反応器に充填された固定化酵素類を使用する連続法についての種々の条件下での性能の一部の結果を示す。こうした操作条件のすべてについて、50Lの操作体積を使用し、様々な条件の供給流で、L-乳酸の投入濃度は264g/L、NAD+は0.1g/Lとした。酵素類(EC 1.1.1.27、EC 2.2.1.6、EC 1.1.1.86、EC 4.2.1.9、EC 4.1.1.72、及びEC 1.1.1.1)それぞれの量は、担体1グラムあたり0.01グラムに調整した。
【0202】
この特定の場合については、補因子、補酵素、L-乳酸、及びNAD+からなる混合物が充填反応器に入ったときに反応が始まった。
【0203】
図4に見られるとおり、混合物が管型充填反応器を通って移動する間、L-乳酸がイソブタノールに変換されて、変換効率100%に到達した。Table 27(表27)及びTable 29(表29)に挙げた種々の操作条件下でも同じことが起こった。実施例2及び3と同じく、264g/Lの乳酸を108g/Lのイソブタノールに変換するのに0.1g/LのNAD+だけを使用して、乳酸からのイソブタノールの酵素的生成をNAD+/NADH及び/又はNADP+/NADPH再生系と関連付けることが可能であることが立証された。
【0204】
本発明の一態様では、2モルの乳酸を1モルのイソブタノールに変換するのに使用されるNAD+及びNADHの合計量は、1モル未満、0.1モル未満、又は好ましくは0.01モル未満である。
【0205】
本発明の一態様では、2モルの乳酸を1モルのイソブタノールに変換するのに使用されるNADP+及びNADPHの合計量は、1モル未満、0.1モル未満、又は好ましくは0.01モル未満である。
【0206】
本発明の一態様では、2モルの乳酸を1モルのイソブタノールに変換するのに使用されるNADP+/NAD+及びNADPH/NADHの合計量は、1モル未満、0.1モル未満、又は好ましくは0.01モル未満である。
(参考文献)
図1
図2
図3
図4