【実施例】
【0058】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明を説明するものである。
以下に示す更に詳細な実施例は、例をあげて本発明の本質を説明するものであり、これによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになるものである。
化合物の塩の形態が何も特定されていない場合、該化合物が、その化学構造、使用した合成の条件、ワークアップ及び精製の工程に応じて、遊離塩基又は塩又は双極性イオンとして存在する可能性がある。当業者であれば、該化合物が特定の塩の形態には限定されないことが理解されよう。化合物の塩の形態が特定されている場合、通常、対イオンの化学量論は省略する。多荷電カウンターイオン(multiply charged counterions)の場合、当業者であれば、得られた塩は荷電されていないので、相応の化学量論となることが理解されよう。当業者であれば、本化合物が単塩(mono salt)に限定されることなく、二塩(disalt)、三塩(trisalt)又は他の化合物として存在する可能性があること、即ち、対イオンの化学量論(counterion stoichiometries)を理解できるであろう。更に、当業者であれば、使用した合成の条件、並びにワークアップ及び精製の工程によっては、該化合物が予想外に異なる対イオンを有する塩として存在する可能性があることも理解されよう。対イオン及び化合物の特性の評価(即ち、対イオンの化学量論)は、単に収量を求めるために行うものである(記載の式に示す)。
【0059】
中間体の合成
中間体A.1: 3,5-ジアミノ-6-クロロピラジン-2-カルボン酸
【0060】
【化20】
A.1
【0061】
3,5-ジアミノ-6-クロロピラジン-2-カルボン酸メチル(100g;494mmol)、メタノール(1l)及びNaOH(6mol/lで水に含有;240ml;1.44mol)の混合物を3時間還流させる。混合物を室温に放冷し、塩酸(6mol/lで水に含有;約240mL)を加えて中和させる。水(200ml)を添加する。形成された析出物を吸引濾過し、水で洗浄して60℃で乾燥する。
C
5H
5ClN
4O
2ESI 質量スペクトル:m/z = 189 [M+H]+; m/z = 187 [M-H]
-
中間体A.2: 3,5-ジアミノ-6-ブロモピラジン-2-カルボン酸
【0062】
【化21】
A.2
【0063】
A.2は、3,5-ジアミノ-6-ブロモピラジン-2-カルボン酸メチル(J.Med.Chem.10 (1967) 66-75に記載のごとく、3,5-ジアミノ-6-クロロピラジン-2-カルボン酸メチルから調製)から、中間体A.1の合成に記載の手順と同様にして調製する。
中間体I.1
【0064】
【化22】
I.1
【0065】
3-フルオロ-4-ニトロ-フェノール(25.29g;0.16mol)とN-(2-ブロモエチル)カルバミン酸(carbaminic acid)(1,1)-ジメチル)エチルエステル(36.08g;0.16mol)と炭酸カリウム(24.48g;0.18mo)との混合物をアセトンで8時間還流する。混合物を蒸発濃縮する。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤: DCM/メタノール 100/1)で精製する。
C
13H
17FN
2O
5
下記に示すそれぞれのフェノールとそれぞれのハロゲン化アルキルから、以下の中間体が適宜調製される。適用条件によっては、遊離塩基、TFA塩又は他の塩が合成により生成されることがあるが、これは後述の実施例化合物の合成に一様に適用することができる。
【0066】
【化23】
【0067】
中間体II.1
【0068】
【化24】
II.1
【0069】
中間体I.1(19.1g;63.6mmol)とエチルアミン(2MのTHF溶液;47.7ml;95.4mmol)と炭酸カリウム(14.0g;102mmol)との混合物を、THF(300ml)中、50℃で2時間、室温で3日間撹拌する。不溶物を濾取して取り除き、母液を蒸発濃縮する。残渣をDCMに投入し、水で洗浄する。有機層を分取して乾燥蒸発させる。
C
15H
23N
3O
5 ESI 質量スペクトル: m/z = 326 [M+H]+
下記に示すそれぞれのハロゲン化アリールとそれぞれの求核試薬から、以下の中間体が適宜調製される。適用条件によっては、遊離塩基、TFA塩又は他の塩が合成により生成されることがあるが、これは後述の実施例化合物の合成に一様に適用することができる。
【0070】
【化25】
【0071】
中間体III.1
【0072】
【化26】
III.1
【0073】
中間体II.1(13.3g;40.9mmol)を含むメタノール(500ml)を、Parr水素添加装置(室温、水素圧3bar、触媒:1.30g Pd/C 10%)内で水素添加する。触媒を濾過により取り除き、溶媒を留去して中間体III.1を得る。
下記に示すそれぞれのハロゲン化アリールとそれぞれのアミンから、以下の中間体が適宜調製される。適用条件によっては、遊離塩基、TFA塩又は他の塩が合成により生成されることがあるが、これは後述の実施例化合物の合成に一様に適用することができる。
【0074】
【化27】
【0075】
中間体IV.1
【0076】
【化28】
IV.1
【0077】
工程1:中間体III.1(12.00g;40.63mmol)とグリシン誘導体(9H-フルオレン-9 -イルメトキシカルボニルアミノ)-酢酸(12.08g;40.63mmol)とカップリング試薬HATU(16.99g;44.69mmol)とDIPEA(13.91mL;81.25mmol)との混合物を、DMF(50ml)中、室温で1時間撹拌する。混合物を蒸発濃縮する。
工程2:残渣を氷酢酸(50mL)に投入し60℃で3時間撹拌する。溶媒を留去する。残渣をDCMに投入し、水及びNaHCO
3(飽和水溶液)で洗浄する。有機層を分取し、乾燥、蒸発濃縮する。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:DCM/メタノール(40/1))で精製する。
C
32H
36N
4O
5 ESI質量スペクトル: m/z = 557 [M+H]+
HPLC分析:RT=0.63分(HPLC G)
グリシン誘導体のN-フタロイル-グリシンと下記に示すそれぞれのジアミノ化合物から、以下の中間体が適宜調製される。適用条件によっては、遊離塩基、TFA塩又は他の塩が合成により生成されることがあるが、これは後述の実施例化合物の合成に一様に適用することができる。
【0078】
【化29】
【0079】
中間体V.1
【0080】
【化30】
V.1
【0081】
カルボン酸中間体IV.2(2.00g;4.24mmol)とアミン(R,R)-3,4-ジヒドロキシピロリジン(0.592g;4.24mmol)とTBTU(1.36g;4.24mmol)とトリエチルアミン(1.79ml;12.7mmol)とDMF(10ml)との混合物を、室温で2時間撹拌する。混合物を氷水に投入し、EEで抽出する。有機層を分取し、乾燥(MgSO
4)、濾過、蒸発濃縮する。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH 0->10 %)で精製する。
C
27H
28N
4O
7 ESI質量スペクトル: m/z = 521 [M+H]+
下記に示すそれぞれのジアミノ化合物から、以下の中間体が適宜調製される。適用条件によっては、遊離塩基、TFA塩又は他の塩が合成により生成されることがあるが、これは後述の実施例化合物の合成に一様に適用することができる。
【0082】
【化31】
【0083】
中間体VI.1
【0084】
【化32】
VI.1
【0085】
ベンズイミダゾール中間体V.1(0.500g;0.913mmol)とアルキル化剤のヨードエタン(367μl;4.56mmol)とACN (10ml)との混合物を120℃で2時間撹拌する(密封容器;マイクロ波加熱)。生成物をRP-HPLC(モディファイア:TFA)で精製する。
C
29H
33N
4O
7 x CF
3COO ESI質量スペクトル: m/z = 549 [M]+
HPLC分析:RT=0.41分 (HPLC法A)
下記に示すそれぞれのベンズイミダゾールとアルキル化剤から、以下の中間体が適宜調製される。適用条件によっては、遊離塩基、TFA塩又は他の塩が合成により生成されることがあるが、これは後述の実施例化合物の合成に一様に適用することができる。
【0086】
【化33】
【0087】
中間体VII.1
【0088】
【化34】
VII.1
【0089】
中間体VI.12(630mg;1.23mmol)とCDI(398mg;2.45mmol)とACN(15ml)との混合物を、50℃で30分撹拌する。アミンXV.1(276mg;1.23mmol)を添加して、混合物を室温で2時間撹拌した後、蒸発濃縮する。粗生成物をRP-HPLC(モディファイア:TFA)で精製する。
C
34H
37N
5O
6 x TFA ESI質量スペクトル: m/z = 612 [M+H]+
HPLC分析:RT=0.37分 (HPLC法A)
下記に示すそれぞれのアミンから以下の中間体が適宜調製される。適用条件によっては、遊離塩基、TFA塩又は他の塩が合成により生成されることがあるが、これは後述の実施例化合物の合成に一様に適用することができる。
【0090】
【化35】
【0091】
中間体VIII.1
【0092】
【化36】
VIII.1
【0093】
フタルイミド誘導体である中間体VI.1(1.32g;1.99mmol)とヒドラジン水和物(290μl;5.98mmol)とエタノール(20ml)との混合物を50℃で2時間攪拌する。室温に冷却して、不溶物を濾過で取り除き、濾液を蒸発濃縮する。粗生成物をRP-HPLC(モディファイア:TFA)で精製する。
C
21H
31N
4O
5 x CF
3COO x CF
3COOH ESI質量スペクトル: m/z = 419 [M]+
下記に示すフタルイミド誘導体から以下の中間体が適宜調製される。適用条件によっては、遊離塩基、TFA塩又は他の塩が合成により生成されることがあるが、これは後述の実施例化合物の合成に一様に適用することができる。
【0094】
【化37】
【0095】
中間体IX.1
【0096】
【化38】
IX.1
【0097】
実施例1.14化合物(73mg;0.089mmol)とHCl水溶液(6mol/l)との混合物を100℃で1時間撹拌する。粗生成物をRP-HPLC(モディファイア:TFA)で精製する。
C
22H
26ClN
7O
5 x TFA ESI質量スペクトル: m/z = 504 [M]+
HPLC分析:RT=0.41分 (HPLC法A)
下記に示す出発物質から以下の中間体が適宜調製される。適用条件によっては、遊離塩基、TFA塩又は他の塩が合成により生成されることがあるが、これは後述の実施例化合物の合成に一様に適用することができる。
【0098】
【化39】
【0099】
中間体X.1
【0100】
【化40】
X.1
【0101】
中間体IV.1(2.50g;4.49mmol)とピペリジン(4.45ml;44.9mmol)とTHF(30ml)との混合物を、室温で一晩撹拌する。DCMを加えて混合物をHCl水溶液(0.5mol/l)で抽出する。水性相を分取し、NaOH水溶液(0.5mol/l)を添加してわずかに塩基性にして、EEで抽出する。有機層を分取し蒸発濃縮する。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH 9:1)で精製する。
C
17H
26N
4O
3 ESI 質量スペクトル: m/z = 335 [M+H]+
中間体XI.1
【0102】
【化41】
XI.1
【0103】
中間体A.1(750mg;3.98mmol)とN-メチルモルホリン(791μl;7.18mmol)とTHF(10ml)との混合物に、イソブチルクロロホルメート(465μl;3.59mmol)を滴下する。混合物を15分間撹拌した後、中間体X.1(1.20g;3.59mmol)を含有するTHF(30ml)溶液を添加する。混合物を一晩攪拌して、蒸発濃縮し、DCMに投入して水で抽出する。有機層を分取し、水で洗浄して再度分取し、乾燥(Na
2SO
4)して蒸発濃縮する。残渣をジエチルエーテルと一緒にすり砕き、濾過して乾燥する。
C
22H
29ClN
8O
4 ESI質量スペクトル: m/z = 505 [M+H]+
中間体XII.1
【0104】
【化42】
XII.1
【0105】
中間体VI.4(250mg;0.380mmol)とNaOH水溶液(1mol/l;760μl;0.760mmol)とMeOHとの混合物を、室温で3時間撹拌する。HCl水溶液(1mol/l)を添加して混合物を中和した後、ある程度蒸発濃縮する。析出物を吸引濾過し、水で洗浄して乾燥する。
C
24H
32ClN
8O
6 x Br ESI質量スペクトル: m/z = 563 [M]+
HPLC分析:RT=0.81分 (HPLC法B)
下記に示す出発物質から以下の中間体が適宜調製される。適用条件によっては、遊離塩基、TFA塩又は他の塩が合成により生成されることがあるが、これは後述の実施例化合物の合成に一様に適用することができる。
【0106】
【化43】
【0107】
中間体XIII.1
【0108】
【化44】
XIII.1
【0109】
中間体III.6(7.11g;15.2mmol)を含有するDMF(50ml)溶液に、N-BOC-2-アミノエタナール(2.67g;16.7mmol)を含有するDMF(50ml)溶液を滴下する。酢酸(10ml)を添加し、混合物を室温で一晩攪拌した後、蒸発濃縮する。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EE 0->100%)で精製する。
中間体XIV.1
【0110】
【化45】
XIV.1
【0111】
中間体VI.9(1.00g;1.37mmol)と臭化リチウム(1.20g;13.8mmol)とDMF(15ml)との混合物を100℃で一晩攪拌する。混合物を蒸発濃縮して、粗生成物をRP-HPLC(モディファイア:TFA)で精製する。
C
31H
34N
3O
6P x TFA ESI質量スペクトル: m/z = 576 [M+H]+
HPLC分析:RT=0.53分 (HPLC法A)
中間体XV.1
【0112】
【化46】
XV.1
【0113】
Stempel, Buzzi; Journal of the American Chemical Society 71 (1949) p.2968ffに記載の手順に従って、本化合物を調製する。
それぞれのピリジン及びアミンから、更に必要に応じて脱ベンジル化を行い、以下の中間体が適宜調製される。適用条件によっては、遊離塩基、TFA塩又は他の塩が合成により生成されることがあるが、これは後述の実施例化合物の合成に一様に適用することができる。
【0114】
【化47】
【0115】
実施例の合成
実施例1.01
【0116】
【化48】
1.01
【0117】
アミン中間体VIII.2(100mg;0.151mmol)を、中間体A.1(28.3mg;0.150mmol)とTBTU(53.0mg;0.165mmol)とトリエチルアミン(63.2μl;0.45mmol)とDMF(5.0ml)との混合物に添加する。混合物を室温で一晩撹拌した後、蒸発濃縮する。粗生成物をRP-HPLC(モディファイア:TFA)で精製する。
C
26H
34ClN
8O
5S x C
2F
3O
2 ESI質量スペクトル: m/z = 605 [M]+
HPLC分析:RT=0.38分 (HPLC法A)
中間体A.1と下記に示すそれぞれのアミン中間体から、以下の実施例化合物が適宜調製される。適用条件によっては、TFA塩、双極性イオン又は他の塩が合成により生成されることがある。
【0118】
【化49】
【0119】
実施例2.01
【0120】
【化50】
2.01
【0121】
アミンの2-(アミノメチル)-ピリジン(3.89μl;0.056mmol)を、酸中間体IX.1(28.0mg;0.056mmol)とTBTU(19.6mg;0.061mmol)とトリエチルアミン(23.4μl;0.167mmol)とDMF(2.0ml)との混合物に添加する。混合物を室温で一晩攪拌した後、蒸発濃縮する。粗生成物をRP-HPLC(モディファイア:TFA)で精製する。
C
28H
33ClN
9O
4 x C
2F
3O
2 ESI質量スペクトル: m/z = 594 [M]+
HPLC分析:RT=0.70分 (HPLC法B)
実施例 3.01
【0122】
【化51】
3.01
【0123】
中間体V.4(15.0mg;0.022mmol)とHCl(4mol/lでTHF0.5 mlに含有)との混合物を室温で1時間攪拌した後、蒸発濃縮する。
C
21H
29ClN
9O
3 x HCl x Cl ESI質量スペクトル: m/z = 490 [M]+
HPLC分析:RT=0.61分 (HPLC法B)
下記に示すそれぞれのBOC中間体から、以下の実施例化合物が適宜調製される。純度を高めるために、必要に応じて粗生成物をRP-HPLC(モディファイア:TFA)で精製する。適用条件によっては、塩化物塩、TFA塩、双極性イオン又は他の塩が合成により生成されることがある。
【0124】
【化52】
【0125】
実施例4.01
【0126】
【化53】
4.01
【0127】
実施例化合物3.02(150mg;0.170mmol)と炭酸カリウム(23.4mg;0.170mmol)とDMF(1.0ml)とアルキル化剤1-ヨードヘキサン(30.8μl;0.204mmol)との混合物を、室温で2時間攪拌した後、蒸発濃縮する。粗生成物をRP-HPLC(モディファイア:蟻酸)で精製する。
C
36H
55ClN
11O
4 x C
2HF
3O
2 x CHO
2 ESI質量スペクトル: m/z = 740 [M]+
HPLC分析:RT=3.52分 (HPLC法C)
実施例化合物3.02と下記に示すアルキル化剤から、以下の実施例化合物が適宜調製される。適用条件によっては、塩化物塩、TFA塩、双極性イオン又は他の塩が合成により生成されることがある。
【0128】
【化54】
【0129】
実施例5.01
【0130】
【化55】
5.01
【0131】
中間体V.6(760mg;0.796mmol)とHCl水溶液(37%;196μl;2.39mmol)との混合物を室温で1時間攪拌した後、蒸発濃縮する。粗生成物をRP-HPLCで精製する。
C
25H
33ClN
9O
5 x Cl ESI質量スペクトル: m/z = 574 [M]+
HPLC分析:RT=3.19分 (HPLC法C)
実施例6.01
【0132】
【化56】
6.01
【0133】
ベンジルエーテル中間体V.7(60mg;0.091mmol)と三臭化ホウ素(1mol/lでDCMに含有;140μl;0.140mmol)とDCM(3.0ml)とDMF(2.0ml)との混合物を室温で3時間攪拌した後、蒸発濃縮する。粗生成物をRP-HPLCで精製する。
C
21H
29BrN
7O
5P ESI質量スペクトル: m/z = 570 [M+H]+
HPLC分析:RT=0.37分 (HPLC法G)
実施例 7.01
【0134】
【化57】
7.01
【0135】
ベンジルエーテル中間体V.8を使って、実施例6.01に記載の手順に従って同様にして本化合物を調製する。
C
19H
25ClN
7O
5P ESI質量スペクトル: m/z = 498 [M+H]+
HPLC分析:RT=0.69分 (HPLC法G)
【0136】
(分析方法と分取クロマトグラフィー)
原則として、調製した化合物について
1H-NMRと質量スペクトルを求めた。記載の質量ピーク(例えば、(M+H)+、(M+HCOO)-)は、モノアイソトピック分子量を指す。既製のシリカゲル60TLCプレートF
254 (メルク社(ダルムシュタット)製、品番1.05714)を用いて、展開槽を飽和(chamber saturation)させない状態で、或は、既製の酸化アルミニウム60F
254TLCプレート(メルク社(ダルムシュタット)製、品番1.05713)を用いて、展開槽を飽和させない状態で、TLCからのRf値を求めた。溶離剤に記載の比率は、当該溶媒の体積単位を示す。NH
3の体積単位は、NH
3の濃縮水溶液を指す。シリカゲルクロマトグラフィー精製では、ミリポア(Millipore)社のシリカゲル(MATREXTM商標、35-70my)を用いる。
【0137】
分取薄層クロマトグラフィー(TLC):
メルク社製分取TLCプレート(PLCシリカゲル60 F
254+366、2mm)を用いる。バンドを有する生成物を剥ぎ取り、シリカ粉に載った生成物をDCM、メタノール又はこれらの混合物(生成物の溶解度による)で抽出する。シリカは濾過で取り除き、濾液を蒸発乾固して精製した化合物を得る。
分取HPLC:
固定相(特に記載のない限り):XBridge C18;10μm又はSunFire C18;10μm (いずれもウォーターズ社(www.waters.com)製)
分析HPLC/MS法
記載のHPLC保持時間は、下記のパラメータのもとで測定したものである。
【0138】
HPLC法A
【0139】
HPLC法B
【0140】
HPLC法C
カラム:Atlantis dC18 5μm 4.6x50mm、温度35℃
移動相:A = H2O 90% + 10% CH3CN + CF3COOH 0.05%
B = CH3CN 90% + 10% H2O
時間(分) %A %B 流速(ml/分)
0.00 100 0 1.3
0.70 100 0 1.3
4.5 0 100 1.3
5.80 0 100 1.3
6.00 100 0 1.3
【0141】
HPLC法D
【0142】
HPLC法E
【0143】
HPLC法G
【0144】
本願明細書では前記及び後記において以下の略称を使用している。
【0145】
【0146】
(薬理学的試験方法)
前記に示した実施例化合物のIC
50値は、ウッシングチャンバーアッセイで求めた。
ウッシングチャンバー:マウスの腎臓細胞M-1を、5%のFCSと5μMのデキサメタゾンとを含むDMEMで10〜12日間、ポリエステル製のトランスウェルフィルターで培養した。フィルターは、ウッシングチャンバー装置に装着されたテフロン被覆ウェルプレートに挿入した。測定に先立ち、M-1細胞の培地をCaco-2輸送緩衝液(Invitrogen社製、ドイツ)で交換する。測定中は、ウッシングチャンバーの温度を37℃に保った。短絡電流(I_sc)は、データ取得及び分析についてのソフトウェアパッケージLab Viewを使って、電圧クランプモードで測定した。経上皮電気抵抗(TEER)を、5秒ごとに±5mVして電圧を印加することにより求めた。最終濃度の3μMで、或は、濃度を上昇させながら(1-3-10μM)、頂端膜側溶液(apical solution)に化合物を投与した。各実験の最後に、頂端膜側コンパートメント(apical compartment)に3μMのアミロライドを添加して、アミロライド感受性I_SCを測定した。アミロライドの影響による阻害をパーセントでIC
50として結果を表す。
上記の実施例化合物で、ウッシングチャンバーアッセイにより下記のIC
50値を得た。
【0147】
【0148】
CALU-3細胞における透過性:
透過性のあるフィルター支持体上に生成したコンフルエントな極性(polarized)CALU-3細胞の単分子層全体で、透過性の測定を行い、肺上皮組織を化合物が通過する可能性についてのデータを提供する。CALU-3細胞単分子層全体での化合物の見掛透過係数(Papp)の測定(pH7.4、37℃)は、頂端膜側から基底膜側(aprical-to-basal:AB)及び基底膜側から頂端膜側(basal-to-apical:BA)輸送方向で行う。AB透過係数(Papp、AB)は、肺内腔から血液への薬物の吸収を表し、BA透過係数(Papp、BA)は、主に受動透過性を介した血液から肺内腔への薬物伝達を表す。これは、Calu-3細胞が、肺上皮細胞同様に、P-gpのような排出トランスポーターを発現しない一方で、供給トランスポーターの発現があるからである。
【0149】
CALU-3細胞(面積1cm
2あたり細胞数1-2x10
5)を、フィルターインサート(Costarトランスウェルポリカーボネートフィルター、ポアサイズ0.4μm )に接種し、目の詰んだ単分子層が形成されるまで培養する(10〜12日間、DMEM)。対象の化合物を適切な溶媒(DMSO、10mM原液)に溶解する。原液はHTP-4緩衝液 (128.13mM NaCl、5.36mM KCl、1mM MgSO
4、1.8mM CaCl
2、4.17mM NaHCO3、1.19mM Na2HPO4 x 7H2O、0.41mM NaH2PO4xH2O、15mM HEPES、20mMグルコース、0.25% BSA、pH7.4)で希釈して輸送液(化合物:10μM、最終DMSO <= 0.5 %)を調製する。輸送液(TL)を供与側の頂端膜側又は基底膜側に付与し、A-B又はB-A透過性をそれぞれ測定する(3回のフィルター反復実験)。供与側と同じ緩衝液が受容側にも含有されている。30分の馴化後、供与側からは開始時t0=0分及び実験終了時tn=90分のタイミングで試料を回収し、受容側のチャンバーからも0、30、60及び90分のタイミングで試料を回収する。取り除いた分はHTP-4緩衝液で補充する(replenwash)。試料中の化合物濃度をHPLC-MS/MS又はシンチレーション計数機で求める。透過係数(Papp)及び排出率は以下の式にしたがって算出する。Papp [cm/s] =(受容側濃度 [nM] * 受容側体積[mL]/時間 [秒])*(1/フィルター面積)*(1/供与側濃度 [nM])
上記の実施例化合物で、CALU-3細胞アッセイにより下記の透過性を得た。
【0150】
【0151】
適応症
見出したとおり、式(I)の化合物は、広範囲に亘る治療分野で使用できることを特徴とする。とりわけ、本発明の式(I)の化合物は、ENaC阻害剤としての医薬的な有効性により、有利に適合する用途を言及する必要がある。例として、呼吸器系疾患又は愁訴、又は、気道のアレルギー性疾患が挙げられる。
特に言及すべきは、粘液の増産や炎症を伴う気道及び肺の疾患及び/又は気道の閉塞性疾患の予防と治療である。例えば、急性、アレルギー性又は慢性気管支炎、慢性閉塞性気管支炎 (COPD)、咳、肺気腫、アレルギー性もしくは非アレルギー性鼻炎又は副鼻腔炎、慢性鼻炎又は副鼻腔炎、喘息、肺胞炎、農夫病(Farmer's disease)、過敏性気道、感染性の気管支炎又は肺炎、小児喘息、気管支拡張症、肺繊維症、成人性呼吸障害症候群(ARDS)、気管支浮腫、肺浮腫、有毒ガスの吸引吸入等といった様々な原因による気管支炎、肺炎又は間質肺炎、心不全、放射線治療、化学療法、嚢胞性線維症又は膵線維症を原因とする気管支炎、肺炎又は間質肺炎、或はα1-アンチトリプシン欠損症である。
【0152】
特に好ましくは、本発明は、肺を含んだ上気道及び下気道の炎症性又は閉塞性疾患、例えば、アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症、COPD、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎及び喘息などの治療用医薬組成物を調製するための、式(I)の化合物の使用に関する。
COPD、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、喘息、嚢胞性線維症といった炎症性及び閉塞性疾患の治療に、とりわけ、COPD、慢性気管支炎、喘息、嚢胞性線維症の治療に式(I)の化合物を使用することが特に好ましい。
実際の医薬的有効量又は治療用投薬量については、当然のことながら、患者の年齢や体重、投与経路、病気の重篤度等の当該分野の当該者には公知の要因によって変わる。いずれにしても、患者の個々の状況を基に、医薬的有効量が送達できる投与量と方法で、該医薬組成物は投与する。
【0153】
(組成物)
式(I)の化合物は単独で使用してもよいし、又は、本発明の式(I)で表される他の有効成分と一緒に使用してもよい。所望であれば、式(I)の化合物は他の薬理的に有効な物質と一緒に使用することもできる。
そこで、本発明は更に、式(I)の化合物又はその塩が1種以上と、更なる有効成分として、ENaC阻害剤、ベータ受容体刺激薬、抗コリン作動薬、コルチコステロイド、PDE4-抑制剤、LTD4-拮抗剤、EGFR-抑制剤、ドーパミン作動薬、H1抗ヒスタミン剤、PAF-拮抗剤、MAP-キナーゼ抑制剤、MPR4-抑制剤、iNOS-抑制剤、SYK-抑制剤、嚢胞性線維症膜貫通制御因子(CFTR)矯正薬及びCFTR賦活薬の分類から選択される1種以上の化合物、或はそれらの2つ又は3つの組合せを含む、医薬製剤に関する。
(製剤)
投与に適した形態は、例えば、吸入用粉末又はエアロゾルである。いずれの場合も医薬的に有効な化合物の含有量は、全組成物の0.2〜50質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲、即ち、本願明細書で後述する投与範囲を達成するのに十分な量がよい。
【0154】
吸入投与の場合、有効成分組成物は、粉末、水溶液もしくは水性-エタノール性溶液として、又は噴射剤ガス製剤を使って投与するとよい。
そこで、好ましくは、医薬製剤が、前述の好適な実施形態による式(I)の化合物を1つ以上含むことを特徴とする。
また、式(I)の化合物を吸入により投与する場合、とりわけ、一日1回又は2回投与ができると好ましい。この目的のためには、式(I)の化合物は吸入に適した形態で利用できるようにしなければならない。吸入可能な製剤として、吸入用粉末、噴射剤含有定量エアロゾル、又は噴射剤を含まない吸入用溶液が挙げられるが、これらは、任意であるが従来からの医薬的に許容できる賦形剤と共に使用するとよい。
本発明の範囲において、噴射剤を含有しない吸入性溶液という用語には、濃縮物又は直ぐに使用できる無菌吸入溶液が含まれる。明細書の次のパートで、本発明で使用できる製剤をより詳細に説明する。
【0155】
吸入用粉末
式(I)の有効成分が医薬的に許容できる賦形剤と共に存在する場合、以下の医薬的に許容できる賦形剤を使用して本発明の吸入用粉末を調製することができる。単糖類(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖類(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖及び多糖類(例えば、デキストラン)、多価アルコール類(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)或はこれら賦形剤相互の混合物。好ましくは、単糖類又は二糖類が使用され、ラクトース又はグルコースの使用が好ましく、限定はされないが、その水和物の形が特に好ましい。本発明の目的のためには、ラクトースが特に好ましい賦形剤であり、ラクトース一水和物が最も好適である。すり潰して微粉状にして、最後に成分を一緒に混合することによる本発明の吸入用粉末の調製方法は、従来技術より公知である。
【0156】
噴射剤含有吸入用エアロゾル
本発明により使用できる噴射剤含有吸入用エアロゾルは、噴射剤ガス中に式(I)の化合物を溶解又は分散状態で含むことができる。本発明の吸入用エアロゾルを調製するために使用できる噴射剤ガスは、従来技術から公知である。適当な噴射剤ガスは、n−プロパン、n−ブタン又はイソブタン等の炭化水素化合物、及び、メタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンの好ましくはフッ素化誘導体等のハロ炭化水素化合物から選択される。上記噴射剤ガスは、単独で又はその混合物として使用できる。特に好ましい噴射剤ガスは、TG134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、TG227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)及びこれらの混合物から選択されるフッ素化アルカン誘導体である。本発明の使用の範囲で使われる噴射剤駆動型吸入エアロゾルには、補助溶剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、滑剤及びpH調節剤等の他の成分も含有させることができる。これらの成分はすべて当該分野において公知である。
【0157】
噴射剤を含まない吸入用溶液
本発明の式(I)の化合物は、噴射剤を含まない吸入用溶液又は吸入用懸濁液の調製に好ましく使用される。この目的のために使用される溶媒としては、水性溶媒又はアルコール系溶媒、好ましくはエタノール性溶媒が挙げられる。溶媒は、水を単独で使用してもよいし、水とエタノールとの混合物でもよい。該溶液又は懸濁液は、適切な酸を用いてpH2〜7、好ましくは2〜5に調整される。pH値は無機又は有機の酸から選択される酸を用いて調整すればよい。とりわけ好適な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸及び/又はリン酸が挙げられる。特に好適な有機酸の例としては、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、ギ酸及び/又はプロピオン酸等が挙げられる。推奨される無機酸は塩酸及び硫酸である。また、有効成分の1つと一緒になって酸付加塩をすでに形成している酸の使用も可能である。有機酸の中では、アスコルビン酸、フマル酸及びクエン酸が好ましい。所望であれば上記の酸の混合物を用いることもでき、特に、酸性化特性に加えて、例えば香料、酸化防止剤又は錯化剤としての他の特性を有する酸、例えばクエン酸又はアスコルビン酸等の場合は、混合して用いるとよい。本発明では、塩酸を用いてpH値を調整することが特に好ましい。
【0158】
本発明の目的のために使用される噴射剤無しの吸入溶液には、補助溶剤及び/又は他の賦形剤を添加することができる。好ましい補助溶剤は、ヒドロキシル基又は他の極性基を含むもので、例えばアルコール類、特にイソプロピルアルコール、グリコール類、特にプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール類及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル類である。本文脈における賦形剤及び添加剤という用語は、それ自体は活性物質ではないが、薬理的に好適な溶媒中で活性物質と共に処方して、該活性物質を含む製剤の定性的特性を改善することができる、薬理的に許容される任意の物質を意味する。これらの物質は薬理的作用を有していないことが好ましいが、所望の療法との関連において容易に認識できるような薬理作用は持たないか、少なくとも望ましくない薬理作用は有していない。賦形剤及び添加剤としては、例えば大豆レシチン、オレイン酸、ポリソルベートなどのソルビタンエステル類、ポリビニルピロリドン等の界面活性剤、他の安定剤、錯化剤、最終的な医薬製剤の品質保持期間を保証又は延長する酸化防止剤及び/又は保存剤、香味付与剤、ビタミン類及び/又は当分野において公知の他の添加剤が挙げられる。また、該添加剤には、等張剤として例えば塩化ナトリウムなどの薬理的に許容できる塩も含まれる。好ましい賦形剤としては、例えばpHの調節に使用されていないのであればアスコルビン酸、更にはビタミンA、ビタミンE、トコフェロールや同様なビタミン類及び人体で産生するプロビタミン類等の酸化防止剤が挙げられる。保存剤は、使用することによって病原体による汚染から該製剤を保護することができる。適当な保存剤は当分野において公知のものであり、特に当該分野において公知の濃度の塩化セチルピリジニウム、塩化ベンズアルコニウム又は安息香酸もしくは安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩である。
【0159】
上記の治療薬の形態として、例えば、呼吸器系疾患、COPD又は喘息なる語が記載された説明書と、本発明の化合物及び医薬組成物を作るための前記更なる有効成分から選択されるパートナーの1種以上を含む、呼吸器系疾患治療用の直ぐに使用できる医薬パックを提供する。