特許第6667546号(P6667546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6667546巻回型の電気構成素子または電子構成素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667546
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】巻回型の電気構成素子または電子構成素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20200309BHJP
   H01G 4/33 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   H01G4/32 311A
   H01G4/32 301B
   H01G4/33 101
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-546016(P2017-546016)
(86)(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公表番号】特表2018-501666(P2018-501666A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2015077070
(87)【国際公開番号】WO2016083227
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年9月26日
(31)【優先権主張番号】102014223873.0
(32)【優先日】2014年11月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502098145
【氏名又は名称】ライプニッツ−インスティトゥート フュア フェストケルパー− ウント ヴェルクシュトフフォルシュング ドレスデン エー ファオ
【氏名又は名称原語表記】Leibniz−Institut fuer Festkoerper− und Werkstoffforschung Dresden e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル グリム
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー カルナウシェンコ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン バウアー
(72)【発明者】
【氏名】ダニール カルナウシェンコ
(72)【発明者】
【氏名】デニス マカロフ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ゲー. シュミット
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−527484(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0046414(US,A1)
【文献】 米国特許第07621761(US,B1)
【文献】 米国特許第04235522(US,A)
【文献】 米国特許第06586738(US,B2)
【文献】 特開2008−151818(JP,A)
【文献】 カナダ国特許出願公開第02305069(CA,A1)
【文献】 特表2003−533897(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0103486(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/007110(WO,A2)
【文献】 国際公開第2012/123348(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
H01G 4/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回型の構成素子の製造方法において、犠牲層を備えた基板に、全体的または部分的に交互に重ねられて配置された少なくとも2つの機能層と絶縁層とが被着され、少なくとも、前記犠牲層上に直接に配置された前記機能層または前記絶縁層は、少なくとも巻取り方向に対して実質的に平行に配置された両側に、巻取り後に前記犠牲層の両側に残留する穿孔部を有していることを特徴とする、巻回型の構成素子の製造方法。
【請求項2】
前記穿孔部は、ウェブ状の構造化部から成っており、前記ウェブは、四角形の基本形状を有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記四角形の基本形状の前記ウェブにおいて、該ウェブの一方の側は、前記層の巻取り方向に対して実質的に平行に配置されており、かつ巻き取られる前記層の縁の構成要素であると共に、1〜1000μmの辺長さ(B)を有しており、前記ウェブの、前記層の巻取り方向に対して実質的に平行な他方の側は、巻き取られる前記層の縁に対して5〜200μmの間隔(H)をあけて配置されていて、各前記ウェブ間に20〜4000μmの間隔を有しており、前記ウェブの、巻取り方向に見て最初の辺と、巻き取られる前記層の、前記ウェブ以外の縁との間の角度(α)は、15〜135°であり、前記ウェブの、巻取り方向に見て最後の辺と、巻き取られる前記層の、前記ウェブ以外の縁との間の角度(β)は、45〜135°であり、次いで前記犠牲層が全体的または部分的に除去され、積層体が巻き取られる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記基板として、剛性のまたはフレキシブルな材料が使用される、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
シリコン、ケイ素の酸化物、ガラス、セラミックから成る基板、またはポリエチレンテレフタラート(PET)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から成る箔、およびポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、生体多糖類、アセチルセルロース、ポリアリルアミン(PAH)、メチルセルロースまたはエチルセルロースから成る犠牲層が用いられる、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
原子層堆積および/または化学気相堆積により、前記機能層として、導電性の材料から成る層が被着され、かつ前記絶縁層として、誘電性かつ/または電気的に絶縁性の材料から成る層が被着される、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記犠牲層に積層体が被着され、該積層体は、少なくとも1つの誘電性かつ/または電気的に絶縁性の材料から成る層と、少なくとも1つの第1の導電性の材料から成る層と、少なくとも1つの誘電性かつ/または電気的に絶縁性の材料から成る別の層と、少なくとも1つの第2の導電性の材料から成る層とから成っており、前記誘電性かつ/または電気的に絶縁性の材料から成る層は、前記導電性の材料から成る層を、実質的に完全に被覆している、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記導電層用の材料として、Ti、Cr、Al、Au、Ni、Pd、Cu、W、Ta、ならびにこれらの化合物、または酸化インジウムスズ、または高ドープされた半導体材料が使用される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
誘電性かつ/または絶縁性の層の材料としてAlO、有利にはAl、SiO、有利にはSiO、AlTiO、SiTiO、HfO、TaO、ZrO、HfSiO、ZrSiO、TiZrO、TiZrWO、TiO、SrTiO、PbTiO、SiAlO、窒化アルミニウム AlN等の金属窒化物、窒化ケイ素 SiN、AlScN、酸窒化アルミニウム AlO等の金属酸窒化物、酸窒化ケイ素 SiO、HfSiOおよび/またはSiCが使用される、請求項6から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記犠牲層に直接に被着される少なくとも1つの層は、1mm〜30mmの巻取り長さを有している、請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記犠牲層上に重ねられて配置される前記機能層と前記絶縁層とは、巻取り方向に対して平行な両側に、ウェブの数と幾何学形状とが同一の、ウェブ状の構造化部を有している、請求項1から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
被着される前記機能層および前記絶縁層において、前記層の巻取り方向に対して実質的に平行に配置されていて、巻き取られる前記層の縁の構成要素であるウェブの辺は、10〜200μmの辺長さ(B)を有している、請求項1から11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
被着される前記機能層および前記絶縁層において、前記層の巻取り方向に対して平行に配置されていて、巻き取られる前記層の縁の構成要素ではないウェブの辺、またはウェブの角隅部が、巻き取られる前記層の縁に対して10〜50μmの間隔(H)をあけて配置されている、請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
被着される前記機能層および前記絶縁層において、巻取り方向に見た各ウェブ間の間隔(D)が、20〜500μmである、請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
被着される前記機能層および前記絶縁層において、ウェブの四角形の、巻取り方向に見て最初の辺と、巻き取られる前記層の、前記四角形以外の縁との間の角度(α)は、30〜120°であり、更に有利には45°であり、ウェブの四角形の、巻取り方向に見て最後の辺と、巻き取られる前記層の、前記四角形以外の縁との間の角度(β)は、80〜120°であり、更に有利には90°である、請求項1から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記犠牲層は、エッチングにより、または有機溶媒および/または水および/またはエチレンジアミン四酢酸を用いて除去される、請求項1から15のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理、材料工学、ならびにマイクロエレクトロニクスおよびナノエレクトロニクスの分野に関係しており、例えば電気構成素子および電子構成素子にコンデンサとして使用されたり、または誘導型および/または抵抗型の三次元エレメント、またはアンテナに使用されたりするような、巻回型の電気構成素子または電子構成素子の製造方法に関する。
【0002】
我々の電子モバイル社会は、モバイルユース用の超コンパクト集積構成素子を移動中、快適に使用することができるようにするために、常に新たな成果/改良を求めている。コンデンサは、ほぼ全ての電気機器および電子機器に見られるものである。
【0003】
コンデンサの電気容量にとって重要なのは、導電層の面積である。この面積が大きいほど、電気容量もより大きくなる。
【0004】
ただしこの場合に注目すべきことは、コンデンサが電気構成素子として、電気機器または電子機器に組み込まれる点である。したがってこのために必要とされる構成面積は、できるだけ小さいほうが望ましい。この構成面積が小さいほど、電気機器または電子機器をより小型に構成することができる。このため、過去にはマイクロエレクトロニクスにおける小型化、特にトランジスタ、およびインダクタまたはコンデンサ等の個別受動素子のサイズ縮小に開発が集中した(R. Sharma et al., Adv. Energy Mater., 2014, 4, 1301631)。
【0005】
巻取り技術では、複数の層が1つの基板に被着され、次いで巻き取られる。巻取りの仕組みは、複数の層を張設状態で被着し、次いでこれらの層を基板から剥離させることで層が弛緩することにより、達成される。
【0006】
国際公開第2010/129319号(WO 2010/129319 A2)に基づき、シリコン基板のプラズマエッチングまたは湿式化学エッチングが公知であり、シリコン基板上に堆積させられた、張設された二次元構造体が巻き取られて、三次元構造体が形成される。
【0007】
Bufonによれば、犠牲層上に配置され、この犠牲層を除去して巻き取られる層構造が知られている。この場合、犠牲層をアンダカットし、張設された層を基板から分離させる速度は、最高100μm/hである(C.C.B.Bufon et al., Nano Letters, 2010, 10, 2506-2510)。
【0008】
また、欧州特許第2023357号明細書(EP 2 023 357 B1)に基づき公知のコンデンサの製造方法では、犠牲層を溶解して層構造が巻き取られる。層構造の下側部分として、水と接触させられるヒドロゲルが用いられてもよく、この場合はヒドロゲルが水を吸って膨らんで、積層体の巻回を生ぜしめる(V. Luchnikov et al., Advanced Materials 2005, 17, 1177-1182)。
【0009】
独国特許発明第10159415号明細書(DE 101 59 415 B4)に基づき、基板から補助層を剥離させる際の導体層の巻回または折返しにより、マイクロスコピックなコイルやナノスコピックなコイル、変圧器およびコンデンサを製造することが公知である。このためには、予め導体路と基板との間に被着された補助層が基板から剥離され、その結果、導体路が巻き取られる。この場合、補助層としてはゲルマニウムまたはアルミニウムアーセナイドが用いられる。Sharmaによると、同様にGe/GeOを犠牲層として使用し、これを湿式エッチングを行う2%のH溶液を用いて除去する(R.Sharma et al., Adv. Energy Mater., 2014, 4, 1301631)。更に、類似のエッチング技術を用いて流体素子センサエレメントを製造することができる(C.S. Martinez-Cisneros et al., Nano Lett. 2014, 14, 2219)。ほぼ単結晶のSiおよびGeから成る、張設されたマルチレイヤを基板から除去するためにHを使用して、電気機械的なセンサエレメント用のマイクロらせん構造体を製造することも公知である(D.J.Bell et al., Sensors & Actuators A 2006, 130, 54-61)。
【0010】
別の巻回型のマイクロ構成部品には、別の無機の犠牲層が使用される。巻回型のトランジスタの場合には、犠牲層としてアルミニウムアーセナイド(AlAs)が使用される(D. Grimm et al., Nano Lett. 2013, 13, 213)。AlAs犠牲層は、湿式エッチングを行うHClまたはHFから成る混合物により除去される。
【0011】
(I. Moench et al., Smart Mater. Struct. 2011, 20, 85016)によると、巻回型の抵抗は、厚さ1.5μmのフォトレジストを犠牲層として使用することにより、製造可能である。このフォトレジストは、溶媒、一般にはアセトンにより除去される。類似のエッチング技術により製造される別の用途には、マイクロ流体素子センサエレメント(S.M.Harazim et al., Lab Chip 2012, 12, 2649)および体積あたりの活性表面積が大きなマイクロ電池(C. Yan et al., Adv. Mater. 2013, 25, 539; J. Deng et al., Angew. Chem. 2013, 125, 2382)が含まれる。
【0012】
公知の従来技術における欠点は、例えばコンデンサ、アンテナ、抵抗およびコイル等の巻回型の構成部品の製造に、有利には大きな活性の構成部品面積ひいては長い巻取り長さが必要とされることから、巻回プロセスに比較的長い時間がかかってしまう、という点にある。犠牲層を使用した場合には、これを選択エッチングにより除去せねばならない。エッチング媒体としては、例えば希釈された過酸化水素、酸または有機溶媒が使用されるが、これらは人間の皮膚にとって有害である。GeO犠牲層の場合には水を使用することも知られているが、この場合は極めて低い巻取り速度しか達成することができない。比較的長時間使用した場合、特に過酸化水素、酸およびDI水は金属層に腐食作用を及ぼすので、巻取り時間が長い場合は大きな欠点となる。巻取り長さの長い構成部品用の犠牲層としてフォトレジストを使用することは不可能である。それというのも、所要のフォトリソグラフィのプロセスステップは、フォトレジスト犠牲層をやはり腐食させる溶媒の使用を要するからである。
【0013】
更に、積層体の、長距離にわたりまっすぐな巻取りを、再現可能には保証することができず、これにより、利用可能な巻取り長さが制限されている、ということも欠点である。
【0014】
本発明の課題は、多数巻きによる巻回型の電気構成素子または電子構成素子の、廉価で環境に優しく、かつ時間を節約する製造方法を提供することにある。
【0015】
この課題は、各請求項に記載された本発明により解決される。本発明の有利な構成は、各従属請求項に記載されている。
【0016】
巻回型の構成素子の、本発明による製造方法では、犠牲層を備えた基板に、全体的または部分的に交互に重ねられて配置された少なくとも2つの機能層と絶縁層とが被着され、少なくとも、犠牲層上に直接に配置された機能層または絶縁層は、少なくとも巻取り方向に対して実質的に平行に配置された両側に、穿孔部を有している。
【0017】
有利には、穿孔部はウェブ状の構造化部から成っており、ウェブは、四角形の基本形状を有している。
【0018】
同様に有利には、四角形の基本形状のウェブにおいて、ウェブの一方の側は、層の巻取り方向に対して実質的に平行に配置されており、かつ巻き取られる層の縁の構成要素であり、1〜1000μmの辺長さ(B)を有しており、ウェブの、層の巻取り方向に対して実質的に平行な他方の側は、巻き取られる層の縁に対して5〜200μmの間隔(H)をあけて配置されていて、各ウェブ間に20〜4000μmの間隔を有しており、ウェブの、巻取り方向に見て最初の辺と、巻き取られる層の、ウェブ以外の縁との間の角度(α)は、15〜135°であり、ウェブの、巻取り方向に見て最後の辺と、巻き取られる層の、ウェブ以外の縁との間の角度(β)は、45〜135°であり、次いで犠牲層が全体的または部分的に除去され、積層体が巻き取られる。
【0019】
更に有利には、基板として、剛性のまたはフレキシブルな材料が使用される。
【0020】
また有利には、シリコン、ケイ素の酸化物、ガラス、セラミックから成る基板、またはポリエチレンテレフタラート(PET)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から成る箔、およびポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、生体多糖類、アセチルセルロース、ポリアリルアミン(PAH)、メチルセルロースまたはエチルセルロースから成る犠牲層が用いられる。
【0021】
原子層堆積および/または化学気相堆積により、機能層として、導電性の材料から成る層が被着され、かつ絶縁層として、誘電性かつ/または電気的に絶縁性の材料から成る層が被着される場合も有利である。
【0022】
犠牲層に積層体が被着され、積層体は、少なくとも1つの誘電性かつ/または電気的に絶縁性の材料から成る層と、少なくとも1つの第1の導電性の材料から成る層と、少なくとも1つの誘電性かつ/または電気的に絶縁性の材料から成る別の層と、少なくとも1つの第2の導電性の材料から成る層とから成っており、誘電性かつ/または電気的に絶縁性の材料から成る層は、導電性の材料から成る層を、実質的に完全に被覆していると、やはり有利である。
【0023】
導電層用の材料として、Ti、Cr、Al、Au、Ni、Pd、Cu、W、Ta、ならびにこれらの化合物、または酸化インジウムスズ、または高ドープされた半導体材料が使用されると、更に有利である。
【0024】
また、誘電性かつ/または絶縁性の層の材料としてAlO、有利にはAl、SiO、有利にはSiO、AlTiO、SiTiO、HfO、TaO、ZrO、HfSiO、ZrSiO、TiZrO、TiZrWO、TiO、SrTiO、PbTiO、SiAlO、金属窒化物、窒化アルミニウム AlN、窒化ケイ素 SiN、AlScN、金属酸窒化物、酸窒化アルミニウム AlO、酸窒化ケイ素 SiO、HfSiOおよび/またはSiCが使用される場合も有利である。
【0025】
犠牲層に直接に被着される少なくとも1つの層が、1mm〜30mmの巻取り長さを有している場合も有利である。
【0026】
また、巻取り方向に対して平行な両側に、ウェブの数と幾何学形状とが同一の、ウェブ状の構造化部を有する機能層と絶縁層とが、犠牲層上に重ねられて配置される場合も有利である。
【0027】
同様に、被着される機能層および絶縁層において、層の巻取り方向に対して実質的に平行に配置されていて、巻き取られる層の縁の構成要素であるウェブの辺が、10〜200μmの辺長さ(B)を有している場合も有利である。
【0028】
更に、被着される機能層および絶縁層において、層の巻取り方向に対して平行に配置されていて、巻き取られる層の縁の構成要素ではないウェブの辺、またはウェブの角隅部が、巻き取られる層の縁に対して10〜50μmの間隔(H)をあけて配置されていると有利である。
【0029】
また、被着される機能層および絶縁層において、巻取り方向に見た各ウェブ間の間隔(D)が、20〜500μmである場合も有利である。
【0030】
また、被着される機能層および絶縁層において、ウェブの四角形の、巻取り方向に見て最初の辺と、巻き取られる層の、前記四角形以外の縁との間の角度(α)は、30〜120°であり、更に有利には45°であり、ウェブの四角形の、巻取り方向に見て最後の辺と、巻き取られる層の、前記四角形以外の縁との間の角度(β)は、80〜120°であり、更に有利には90°である。
【0031】
更に、犠牲層が、エッチングにより、または有機溶媒および/または水および/またはエチレンジアミン四酢酸を用いて除去されると有利である。
【0032】
本発明に基づく構成により初めて、廉価で環境に優しく、かつ時間を節約する、多数巻きによる巻回型の電気構成素子または電子構成素子の製造方法を提供することが可能である。
【0033】
これを達成する方法では、例えばシリコン、ケイ素の酸化物、ガラス、セラミックから成る剛性のまたはフレキシブルな基板、または例えばポリエチレンテレフタラート(PET)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から成る箔に、犠牲層が被着される。
【0034】
犠牲層は、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、生体多糖類、アセチルセルロース、ポリアリルアミン(PAH)、メチルセルロースまたはエチルセルロース等の、水溶性ポリマから成っていてよい。択一的に、フォトリソグラフィのプロセスステップにおいて安定的でありかつ湿式化学式または乾式化学式にエッチング可能な、あらゆるポリマが使用可能である。この場合、犠牲層は、5nm〜100μm、有利には500nm未満の厚さを有している。
【0035】
次いで犠牲層に、機能層または絶縁層が、例えば原子層堆積および/または化学気相堆積により被着される。機能層および絶縁層の材料および寸法は、製造されるべき巻回型の電気構成素子または電子構成素子による。
【0036】
コンデンサを製造する場合には、犠牲層に例えば積層体が被着され、この積層体は、少なくとも1つの誘電性かつ/または電気的に絶縁性の材料から成る層と、少なくとも1つの第1の導電性の材料から成る層と、少なくとも1つの誘電性かつ/または電気的に絶縁性の材料から成る別の層と、少なくとも1つの第2の導電性の材料から成る層とから成っており、誘電性かつ/または電気的に絶縁性の材料から成る層は、導電性の材料から成る層を、実質的に完全に被覆している。
【0037】
導電層用の材料としては、例えばTi、Cr、Al、Au、Ni、Pd、Cu、W、Ta、ならびにこれらの化合物、または酸化インジウムスズ、または高ドープされた半導体材料が使用可能であり、誘電性かつ/または絶縁性の層の材料としては、例えばAlO、有利にはAl、SiO、有利にはSiO、AlTiO、SiTiO、HfO、TaO、ZrO、HfSiO、ZrSiO、TiZrO、TiZrWO、TiO、SrTiO、PbTiO、SiAlO、金属窒化物、窒化アルミニウム AlN、窒化ケイ素 SiN、AlScN、金属酸窒化物、酸窒化アルミニウム AlO、酸窒化ケイ素 SiO、HfSiOおよび/またはSiCが使用可能である。
【0038】
本発明において重要なのは、少なくとも、犠牲層に直接に配置された機能層または絶縁層が、少なくとも、巻取り方向に対して実質的に平行に配置された両側に、穿孔部を有している点である。
【0039】
本発明の枠内で穿孔部とは、層の、巻取り方向に対して実質的に平行に配置されている各側に、それぞれ有利には四角形の基本形状を有するウェブの形態で設けられた、一種の目打を意味する。
【0040】
本発明による穿孔部は、可能な限り規則的に配置された、幾何学形状的に同じまたは異なる多数のウェブから成っており、これらのウェブは、層または積層体の寸法に比べ、少なくとも所定のオーダだけ小さな寸法を有しており、有利には、巻き取られる層または各層の、巻取り方向に対して実質的に平行な側縁を完全に越えて張り出しており、層の巻取り後には可能な限り完全に犠牲層上に残留していて、最早本発明による巻回型の電気構成素子または電子構成素子の構成要素ではなくなる。この場合、ウェブの形状と、巻き取られる層に対するウェブの配置形式とが特に重要である。
【0041】
犠牲層上の、少なくとも最下層に設けられる前記穿孔部は、積層体の巻取りに際して、目標破断箇所として働く。目標破断箇所は、構造的または機械的または物理的な手段または設計に基づいて設けられた構造要素である。
【0042】
本発明により使用されるウェブは、四角形の基本形状を有しており、かつ少なくとも、基板上で巻き取られるべき積層体の、犠牲層に直接に配置された層の構成要素であり、ウェブの各側縁は、それぞれ巻取り方向に対して平行に配置されている。
【0043】
ウェブは常に、その四角形の基本形状の少なくとも一辺で以て、層と材料結合されている。この辺(B)は、1〜1000μm、有利には10〜200μmの寸法を有していて、常に各層の縁部分であり、目標破断箇所に相当する、すなわち、この辺に沿って、巻取り中にウェブ材料からの層材料の分離を行わせようとするものである。
【0044】
四角形の基本形状のウェブの場合、四角形の二辺は実質的に平行に、かつ巻取り方向に対して可能な限り完全に平行に形成されていると共に、二辺は巻取り方向に対して非平行に形成されている。巻取り方向に対して平行な一方の辺は、巻き取られる層の縁の構成要素であり、巻取り方向に対して平行な他方の辺は、巻き取られる層の縁に対して所定の間隔(H)をあけて位置しており、この場合の間隔は5〜200μm、有利には10〜50μmである。ウェブの四角形の非平行な二辺は、巻取り方向に対して所定の角度で配置されている。この場合、ウェブの四角形の、巻取り方向に見て最初の辺と、巻き取られる層の、前記四角形以外の縁との間の角度(α)は、15〜135°、有利には30〜120°、更に有利には45°であり、ウェブの四角形の、巻取り方向に見て最後の辺と、巻き取られる層の、前記四角形以外の縁との間の角度(β)は、45〜135°、有利には80〜120°、更に有利には90°である。
【0045】
巻取り方向に見た各ウェブ間の間隔(D)は、20〜4000μm、有利には20〜500μmである。これは実質的に、巻き取られる層の縁における各ウェブ間の間隔に当てはまる。また、ウェブの1つの角隅部が、隣のウェブの1つの角隅部に接触しておりかつ/または材料接続的に結合されていることも可能である。これにより各ウェブ間に形成される孔は、三角形に形成されていてよい。
【0046】
有利には、犠牲層上に重ねられて配置される全ての機能層および絶縁層が、巻取り方向に対して実質的に平行な両側に、同一の穿孔部を有している。
【0047】
層または各層の両側に、形状と大きさと間隔とに関して互いに異なる穿孔部を形成することも可能である。これにより、巻取り方向に意図的に影響を及ぼすことができるようになり、例えばコイルを製造することができる。
【0048】
少なくとも犠牲層上の最下層が、本発明により提供されたウェブの形状と寸法とを備える穿孔部を有しており、かつ1000μm〜30mmの巻取り長さを有していてよい、本発明により形成された積層体において、次に犠牲層が完全にまたは部分的に除去される。これは例えばエッチングにより、または有機溶媒または水を使用して行われる。犠牲層を少なくとも部分的に除去する間に、積層体が巻き取られる。巻き取られた積層体の直径は、10〜100μmであってよい。
【0049】
本発明に基づく構成により、多数巻きを達成するために大きな巻取り長さを有する巻回型の電気構成素子または電子構成素子用の積層体を、確実にまっすぐに巻き取ることが初めて可能になる。これは特に、1mm〜30mmの巻取り長さに当てはまる。
【0050】
従来技術の構成では、特に巻取り開始時の犠牲層除去に際して、積層体のとりわけ角隅部が問題となる。それというのも、まずこれらの角隅部において犠牲層がより急速に除去されるからである。積層体が一般に0.5〜1mmの長さだけ巻き取られると、角隅部も巻き取られるので、しばしば一様な巻取り先頭部を実現することができずに、巻取り過程が停止されることになる。
【0051】
そこで本発明に基づく方法により、前記のような異なる巻取り速度が時間的かつ局所的に相殺されることで、巻き取られる積層体の特に角隅部と側辺とにおいて、巻取り用の力は必然的に、巻取り方向において少なくとも部分的に、巻取り過程中に各層材料の縁からウェブを剥離および/または裂断させるために費やされることになる。
【0052】
この場合、ウェブの特別な幾何学形状が、巻取り中の、巻き取られる積層体からのウェブ材料の確実な剥離またはこのウェブ材料の裂断を保証する。犠牲層の除去は、穿孔部の孔の領域で、層材料が存在しない、巻取り方向に見た各ウェブ間の間隔にわたって行われるので、この時間中は、巻き取られる積層体にあまり応力が作用せず、ひいては巻取り過程が巻取り先頭部全体にわたり単独で容易に、かつ専ら巻取り方向だけに実現される。
【0053】
以下に、本発明の複数の実施例をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】aは従来技術により巻き取られる層を示す図であり、bは穿孔部を備えた、巻き取られる層を示す図である。
図2】aは従来技術による、層の巻取りプロセスのフローチャートであり、bは穿孔部を備えた層の巻取りプロセスのフローチャートである。
【0055】
例1:コンデンサ
多数巻きにより超コンパクトマイクロコンデンサを製造するためには、厚さ1μmの、熱により被着された二酸化ケイ素層を備える、長さ20mmおよび幅5mmのシリコン基板を完全に被覆するように、メチルセルロース層が、遠心分離機内で4500rpm(回転毎分)の回転速度で遠心分離され、次いで加熱板上で5分、120℃で加熱され、乾燥される。5nmよりも薄い、メチルセルロースから成るこの層は、犠牲層である。
【0056】
次に、原子層堆積法により、厚さ11nmのAl層が、犠牲層を完全に被覆するように150℃で堆積させられる。誘電体的に作用するこのAl層は、巻取り後には2つの金属電極間の絶縁層としても働き、かつ犠牲層を次のプロセスステップおよび湿気から保護するために用いられる。光学的なフォトリソグラフィにより、コンデンサの第1の電極が、巻取り方向の長さ10mmおよび幅0.6mmを備えて構造化される。電子ビーム蒸着により、15nmのTiから成る、張設された導電層に続いて、20nmのCrから成る、張設された導電層が、それぞれ0.1nm/sの速度で堆積させられ、次いで除去される。この層は、巻取り方向に対して平行な層の両側に、四角形の基本形状を有するウェブを備えた穿孔部を有していて、穿孔部は、層の堆積中にマスクにより実現されている。穿孔部は、両側とも同じ幾何学形状および同じ大きさのウェブから成っていて、予想される50μmのロール直径に合わせられていると共に、次の寸法、すなわち:
ウェブの高さ:H=9μm、
層の縁に沿ったウェブの幅:B=25μm、
層の縁に沿ったウェブの間隔:D=25μm、
巻取り方向の第1の角度:α=21°、
巻取り方向の第2の角度:β=78°を有している。
【0057】
その後、第2の厚さ11nmのAl層が再び、原子層堆積により第1の導電層を完全に被覆するように、ただし側方の穿孔部は設けられずに、150℃で堆積させられる。第2の電極用の光学的なリソグラフィの後に続いて、10nmのCrから成る、同様に側方のウェブ状の構造化部は設けられていない第2の導電層が0.1nm/sの速度で堆積させられ、次いでリフトオフされる。最後に、張り出している犠牲層が水で除去されると共に、張設された積層体が2mm/minの速度で巻き取られる。
【0058】
本発明による穿孔部の使用により、全巻取り長さにわたり、巻取り先頭部全体にわたって常に巻取り方向に高い巻取り速度で巻取り過程を実現することができた。このようにして、廉価で環境に優しく、かつ時間を節約する方法により、巻回型のコンデンサを製造することができた。
【0059】
例2:アンテナ
三次元アンテナを製造するためには、22×22mmで、厚さ200μmのガラス基板を完全に被覆するように、4%(w/v)に希釈されたポリアクリル酸(PAA)から成る層が、3000rpmで遠心分離される。この犠牲層の最終的な層厚さは500nmである。この層は、35℃で2分間乾燥されてから、脱イオン(DI)水中の1molのCaCl溶液に浸漬される。次いでコーティングされた基板はDI水中で洗浄され、乾燥される。標準的なフォトリソグラフィによりアンテナの基底面が、フォトレジストAR−P3510を用いて構造化される。PAA犠牲層は、非コーティング箇所において、希釈されていない現像液AR300−35により除去され、DI水中で洗浄される。フォトレジストはアセトン中で除去され、コーティングされた基板はイソプロパノール中で洗浄され、乾燥される。前記犠牲層には、有機材料から成る張設された積層体が被着される。第1の層は、水中で1:1の比率で4%(w/v)に希釈されたPAA(M=150000)とPVAとから成る層である。第2の層は、N−メチル−2−ピロリドン中で2%(w/v)に希釈されたポリイミド(M=100000)から成っている。第1のポリマ層は、8000rpmで犠牲層の全面に、500nmの層厚さを有するように被着される。この層は、標準的なフォトリソグラフィと、希釈されていない現像液とを用いて構造化され、その際この層には、層の、巻取り方向に対して平行な両側に、四角形の基本形状と、次の寸法、すなわち:
ウェブの高さ:H=200μm、
層の縁に沿ったウェブの幅:B=100μm、
層の縁に沿ったウェブの間隔:D=300μm、
巻取り方向の第1の角度:α=45°、
巻取り方向の第2の角度:β=90°とを有するウェブを備えた穿孔部が設けられる。穿孔部は、両側とも同じ幾何学形状および同じ大きさのウェブから成っている。張設された層には、次いで穿孔部無しの金属層が堆積させられる。このためには標準的なフォトリソグラフィによりフォトレジストが構造化され、マグネトロンスパッタリングによりTa(10nm)/Cu(100nm)/Ta(10nm)が堆積させられる。この場合は0.1Paの分圧でArがスパッタガスとして使用される。アセトンによりリフトオフが行われ、最後にイソプロパノール中で洗浄が行われる。
【0060】
このようにして製造された、底面積が5.5×17mmの平坦な二次元構造体を、基板から剥離して巻き取ることにより、らせん状の三次元アンテナが形成される。剥離は、0.5molのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液中での犠牲層の選択エッチングにより達成される。巻取りプロセス後にアンテナはDI水中で洗浄され、空気中で乾燥される。巻き取られたアンテナの直径は300μmであり、巻取り後の長さは5.5mmである。
【0061】
本発明による穿孔部の使用により、巻取り長さ全体と巻取り先頭部全体とにわたって、常に巻取り方向に高い巻取り速度で巻取り過程を実現することができた。このようにして、廉価で環境に優しく、かつ時間を節約する方法により、巻回型のアンテナを製造することができた。
図1
図2