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特許6667564サーボプレス機械及びサーボプレス機械の設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667564
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】サーボプレス機械及びサーボプレス機械の設定方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/00 20060101AFI20200309BHJP
   B30B 15/14 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   B30B15/00 D
   B30B15/14 M
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-56929(P2018-56929)
(22)【出願日】2018年3月23日
(65)【公開番号】特開2019-166552(P2019-166552A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100861
【氏名又は名称】アイダエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 康宏
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−192467(JP,A)
【文献】 特開平10−180498(JP,A)
【文献】 特開昭62−234700(JP,A)
【文献】 特開平10−272600(JP,A)
【文献】 特開2008−279460(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/165626(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/168910(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/00
B30B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動を直線運動に変換する偏心機構によって、サーボモータの回転をスライドの往復直線運動に変換してプレス加工を行うサーボプレス機械であって、
前記スライドのモーションの設定を行うための帯状領域を表示する表示部と、
入力操作を受け付ける操作部と、
を含み、
前記帯状領域の上端から下端まで延在する範囲は、前記スライドの前記直線運動における移動範囲に対応し、
前記帯状領域は、前記帯状領域が延在する方向に連続する複数のスライド動作領域で形成され、
前記スライド動作領域は、前記操作部に対する入力操作に伴ってそれぞれに前記スライドの速度を設定可能であり、
隣接する前記スライド動作領域の境界は、前記操作部に対する入力操作に伴って前記帯状領域が延在する方向に沿って移動可能であることを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項2】
請求項1において、
前記帯状領域は、前記偏心機構の回転動作に対応する、円環状の画像であり、円弧状の複数の前記スライド動作領域を並べて円環状に形成されることを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項3】
請求項2において、
前記帯状領域は、初期状態において、前記偏心機構の正転動作に対応する、上死点から下死点までの間に設けられた2つの前記スライド動作領域と、下死点から上死点までの間に設けられた1つの前記スライド動作領域とを含むことを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項4】
請求項2において、
前記帯状領域は、初期状態において、前記偏心機構の振子動作に対応する、上下に2つの前記スライド動作領域を含み、
上側の前記スライド動作領域は、前記スライドが動作しない範囲であることを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項5】
請求項1において、
前記帯状領域は、1本の帯状の画像であって、
前記画像は、両端が離れた位置にあり、かつ、前記両端の一方の端から下方に延びて下端で上方へ折返して他方の端に達し、
前記両端は前記スライドの上昇限に対応し、
前記下端は前記スライドの下降限に対応し、
前記下端には水平方向に延びる前記スライド動作領域を少なくとも1つ有することを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項6】
請求項1において、
前記帯状領域は、隣接する2本の帯状の画像であって、
前記画像のそれぞれは、一方の端が前記スライドの上昇限に対応し、他方の端が前記スライドの下降限を通過して上昇した位置にある反転点に対応し、
2本の帯状の前記画像は、前記他方の端が隣り合うように組み合わされていることを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記帯状領域は、前記操作部に対する入力操作に伴って、前記スライド動作領域の数を増減可能であることを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
前記操作部に対する入力操作に伴って前記スライド動作領域の幅を変化させることによって、当該スライド動作領域における前記スライドの速度が設定されることを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項9】
請求項8において、
前記幅を変化させる前記スライド動作領域は、前記下端を一端とする領域であることを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項において、
複数の前記帯状領域の形態が記憶された記憶部をさらに含み、
前記表示部は、前記操作部に対し入力操作に伴って、前記記憶部から複数の前記帯状領域のいずれか1つを選択して表示することを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項において、
前記操作部は、前記表示部に設けられ、
前記操作部に対する入力操作は、タッチ操作であることを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項12】
回転運動を直線運動に変換する偏心機構によって、サーボモータの回転をスライドの往復直線運動に変換してプレス加工を行うサーボプレス機械の設定方法であって、
表示部に表示された帯状の帯状領域に対し入力操作を行うことで、前記帯状領域に設けられた前記スライドの速度を設定可能な複数のスライド動作領域の境界を移動して、前記スライド動作領域ごとに設定された速度で動作する前記スライドの高さ範囲を設定することを特徴とする、サーボプレス機械の設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボプレス機械及びサーボプレス機械の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサーボプレス機械におけるスライドのモーションの設定は、例えばスライドの位置に対するスライドの速度が表形式で表され、その表における各欄の数値を入力することで行っている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
このようなモーションの設定によって作成されたスライドのモーションを操作者が直感的にイメージしにくいという問題があった。従来の表形式のようなモーション設定のインターフェイスは入力結果を操作者の想像に依存しているため意図したものと異なる設定をしてしまう恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−54642号公報
【特許文献2】特開2004−58152号公報
【特許文献3】特開2003−260599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、操作者が設定後のスライドのモーションを視覚的に認識しながらモーションの設定をすることができるサーボプレス機械及びサーボプレス機械の設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0007】
[適用例1]
本適用例に係るサーボプレス機械は、
回転運動を直線運動に変換する偏心機構によって、サーボモータの回転をスライドの往復直線運動に変換してプレス加工を行うサーボプレス機械であって、
前記スライドのモーションの設定を行うための帯状領域を表示する表示部と、
入力操作を受け付ける操作部と、
を含み、
前記帯状領域の上端から下端まで延在する範囲は、前記スライドの前記直線運動における移動範囲に対応し、
前記帯状領域は、前記帯状領域が延在する方向に連続する複数のスライド動作領域で形成され、
前記スライド動作領域は、前記操作部に対する入力操作に伴ってそれぞれに前記スライドの速度を設定可能であり、
隣接する前記スライド動作領域の境界は、前記操作部に対する入力操作に伴って前記帯状領域が延在する方向に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0008】
本適用例に係るサーボプレス機械によれば、帯状領域によってスライドの直線運動における移動範囲を表現することによって、操作者が設定後のスライドのモーションを視覚的
に認識しながらモーションの設定をすることができる。また、複数のスライド動作領域ごとにスライドの速度を設定可能としつつ、スライド動作領域の境界を移動可能とすることによって、操作者がスライドのモーションを視覚的に認識しながら入力操作をすることができるので、操作性が向上する。
【0009】
[適用例2]
上記適用例に係るサーボプレス機械において、
前記帯状領域は、前記偏心機構の回転動作に対応する、円環状の画像であり、円弧状の複数の前記スライド動作領域を並べて円環状に形成することができる。
【0010】
本適用例に係るサーボプレス機械によれば、帯状領域を一般的な偏心機構であるクランクシャフトの回転動作に対応する円環状の画像とすることによって、操作者がスライドのモーションを視覚的に認識しやすいため、操作性が向上する。
【0011】
[適用例3]
上記適用例に係るサーボプレス機械において、
前記帯状領域は、初期状態において、前記偏心機構の正転動作に対応する、上死点から下死点までの間に設けられた2つの前記スライド動作領域と、下死点から上死点までの間に設けられた1つの前記スライド動作領域とを含むことができる。
【0012】
本適用例に係るサーボプレス機械によれば、偏心機構の正転動作によるスライドのモーションにおいて汎用されるモーションを帯状領域の初期状態とすることによって、操作者がスライドのモーションを容易に設定することができる。
【0013】
[適用例4]
上記適用例に係るサーボプレス機械において、
前記帯状領域は、初期状態において、前記偏心機構の振子動作に対応する、上下に2つの前記スライド動作領域を含み、
上側の前記スライド動作領域は、前記スライドが動作しない範囲であることができる。
【0014】
本適用例に係るサーボプレス機械によれば、偏心機構の振子動作によるスライドのモーションにおいて汎用されるモーションを帯状領域の初期状態とすることによって、操作者がスライドのモーションを容易に設定することができる。
【0015】
[適用例5]
上記適用例に係るサーボプレス機械において、
前記帯状領域は、1本の帯状の画像であって、
前記画像は、両端が離れた位置にあり、かつ、前記両端の一方の端から下方に延びて下端で上方へ折返して他方の端に達し、
前記両端は前記スライドの上昇限に対応し、
前記下端は前記スライドの下降限に対応し、
前記下端には水平方向に延びる前記スライド動作領域を少なくとも1つ有することができる。
【0016】
本適用例に係るサーボプレス機械によれば、このような帯状領域の画像を用いることにより、スライドを下死点で一時停止させるスライドのモーションを操作者が視覚的に認識しながらモーションの設定をすることができる。
【0017】
[適用例6]
本適用例に係るサーボプレス機械において、
前記帯状領域は、隣接する2本の帯状の画像であって、
前記画像のそれぞれは、一方の端が前記スライドの上昇限に対応し、他方の端が前記スライドの下降限を通過して上昇した位置にある反転点に対応し、
2本の帯状の前記画像は、前記他方の端が隣り合うように組み合わせることができる。
【0018】
本適用例に係るサーボプレス機械によれば、このような帯状領域の画像を用いることにより、いわゆる2回打ちのスライドのモーションを操作者が視覚的に認識しながらモーションの設定をすることができる。
【0019】
[適用例7]
上記適用例に係るサーボプレス機械において、
前記帯状領域は、前記操作部に対する入力操作に伴って、前記スライド動作領域の数を増減可能であることができる。
【0020】
本適用例に係るサーボプレス機械によれば、スライドの領域を増減することでより複雑なモーションの設定をすることができる。
【0021】
[適用例8]
上記適用例に係るサーボプレス機械において、
前記操作部に対する入力操作に伴って前記スライド動作領域の幅を変化させることによって、当該スライド動作領域における前記スライドの速度を設定することができる。
【0022】
本適用例に係るサーボプレス機械によれば、スライド動作領域の幅がスライドの設定速度に対応することによって、操作者が速度の変化を視覚的に認識しながらモーションの設定をすることができる。
【0023】
[適用例9]
上記適用例に係るサーボプレス機械において、
前記幅を変化させる前記スライド動作領域は、前記下端を一端とする領域であることができる。
【0024】
本適用例に係るサーボプレス機械によれば、幅を変化させるスライド動作領域が帯状領域の下端を一端とする領域であることにより、下死点付近における特有のプレスモーションを設定することができる。
【0025】
[適用例10]
上記適用例に係るサーボプレス機械において、
複数の前記帯状領域の形態が記憶された記憶部をさらに含み、
前記表示部は、前記操作部に対し入力操作に伴って、前記記憶部から複数の前記帯状領域のいずれか1つを選択して表示することができる。
【0026】
本適用例に係るサーボプレス機械によれば、複数の帯状領域を予め記憶部に用意しておくことによって、複数種類のモーションの設定に柔軟に対応することができる。
【0027】
[適用例11]
上記適用例に係るサーボプレス機械において、
前記操作部は、前記表示部に設けられ、
前記操作部に対する入力操作は、タッチ操作であることができる。
【0028】
本適用例に係るサーボプレス機械によれば、タッチ操作で入力することにより、操作性
が向上する。
【0029】
[適用例12]
本適用例に係るサーボプレス機械の設定方法は、
回転運動を直線運動に変換する偏心機構によって、サーボモータの回転をスライドの往復直線運動に変換してプレス加工を行うサーボプレス機械の設定方法であって、
表示部に表示された帯状の帯状領域に対し入力操作を行うことで、前記帯状領域に設けられた前記スライドの速度を設定可能な複数のスライド動作領域の境界を移動して、前記スライド動作領域ごとに設定された速度で動作する前記スライドの高さ範囲を設定することを特徴とする。
【0030】
本適用例に係るサーボプレス機械の設定方法によれば、スライドの速度が設定されたスライド動作領域の境界を移動することによって、スライド動作領域に対応するスライドの高さ範囲を設定することができるので、操作者が設定後のスライドのモーションを視覚的に認識しながらモーションの設定をすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るサーボプレス機械によれば、操作者が設定後のスライドのモーションを視覚的に認識しながらモーションの設定をすることができる。また、本発明に係るサーボプレス機械の設定方法によれば、操作者が設定後のスライドのモーションを視覚的に認識しながらモーションの設定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態に係るサーボプレス機械の全体を示す正面図である。
図2】本実施形態に係るサーボプレス機械の操作盤のブロック図である。
図3】本実施形態に係るサーボプレス機械の操作盤の正面図である。
図4】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された正転動作を設定する画像を示す図である。
図5】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された正転動作を設定する画像を示す図である。
図6】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された正転動作を設定する画像を示す図である。
図7】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された正転動作を設定する画像を示す図である。
図8】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された帯状領域を分割する操作を説明する図である。
図9】本実施形態に係るサーボプレス機械の正転動作におけるスライドのモーションを示す図である。
図10】本実施形態に係るサーボプレス機械の正転動作におけるスライドのモーションを示す図である。
図11】本実施形態に係るサーボプレス機械の正転動作におけるスライドのモーションの具体例について説明する図である。
図12】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された振子動作を設定する画像を示す図である。
図13】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された振子動作を設定する画像を示す図である。
図14】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された振子動作を設定する画像を示す図である。
図15】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された振子動作を設定する画像を示す図である。
図16】本実施形態に係るサーボプレス機械の振子動作におけるスライドのモーションを示す図である。
図17】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された下死点停止動作を設定する画像を示す図である。
図18】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された下死点停止動作を設定する画像を示す図である。
図19】本実施形態に係るサーボプレス機械の下死点停止動作におけるスライドのモーションを示す図である。
図20】本実施形態に係るサーボプレス機械の表示部に表示された2回打ち動作を設定する画像を示す図である。
図21】本実施形態に係るサーボプレス機械の2回打ち動作におけるスライドのモーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0034】
本実施形態に係るサーボプレス機械は、回転運動を直線運動に変換する偏心機構によって、サーボモータの回転をスライドの往復直線運動に変換してプレス加工を行うサーボプレス機械であって、前記スライドのモーションの設定を行うための帯状領域を表示する表示部と、入力操作を受け付ける操作部と、を含み、前記帯状領域の上端から下端まで延在する範囲は、前記スライドの前記直線運動における移動範囲に対応し、前記帯状領域は、前記帯状領域が延在する方向に連続する複数のスライド動作領域で形成され、前記スライド動作領域は、前記操作部に対する入力操作に伴ってそれぞれに前記スライドの速度を設定可能であり、隣接する前記スライド動作領域の境界は、前記操作部に対する入力操作に伴って前記帯状領域が延在する方向に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0035】
本実施形態に係るサーボプレス機械の設定方法は、回転運動を直線運動に変換する偏心機構によって、サーボモータの回転をスライドの往復直線運動に変換してプレス加工を行うサーボプレス機械の設定方法であって、表示部に表示された帯状の帯状領域に対し入力操作を行うことで、前記帯状領域に設けられた前記スライドの速度を設定可能な複数のスライド動作領域の境界を移動して、前記スライド動作領域ごとに設定された速度で動作する前記スライドの高さ範囲を設定することを特徴とする。
【0036】
1.サーボプレス機械の概要
図1図3を用いて、サーボプレス機械(以下「プレス機械1」という)の概要について説明する。図1は本実施形態に係るプレス機械1の全体を示す正面図であり、図2はプレス機械1の操作盤20のブロック図であり、図3はプレス機械1の操作盤20の正面図である。
【0037】
図1に示すように、プレス機械1は、回転運動を直線運動に変換する偏心機構4によって、サーボモータ7の回転をスライド3の往復直線運動に変換してプレス加工を行う。
【0038】
プレス機械1は、クランクシャフト5とコネクティングロッド6を有する偏心機構4、偏心機構4を駆動するサーボモータ7、偏心機構4とサーボモータ7とを接続する減速機8、及びプレス機械1の各種の設定及び操作を行う操作盤20を有する。
【0039】
サーボモータ7は、交流サーボモータである。サーボモータ7は、交流サーボモータに
限らず、誘導モータ、リラクタンスモータ、直流サーボモータなどを採用することができる。
【0040】
偏心機構4は、クランクシャフト5を用いるクランク機構に限らず、エキセントリック軸を有するクランク機構を採用することができる。また、偏心機構4として、プレス機械1に用いられている公知のスライド駆動機構、例えば、ナックル機構、リンク機構等による倍力機構を用いることができる。また、メインギヤと一体となった偏心板を有する機構を用いることもできる。クランクシャフト5は、上死点70(図1に破線で示す)と下死点72の間をサーボモータ7の駆動によって回転する。
【0041】
ボルスタ2及びスライド3にはそれぞれ金型が固定される。コネクティングロッド6の下端側に接続されたスライド3は、サーボモータ7の駆動によりクランクシャフト5を回転させることでボルスタ2に対し昇降する。スライド3が鉛直方向に昇降する移動範囲10は、上昇限11(図1に破線で示す)と下降限12との間の範囲である。
【0042】
操作盤20は、スライド3のモーションの設定を行うための帯状領域30を表示する表示部22と、入力操作を受け付ける操作部60と、を含む。操作盤20は、プレス機械1に取り付けられ、電気的に接続される。操作盤20は、プレス機械1を操作する操作者がプレス機械1の各種設定及び操作を行うものである。
【0043】
表示部22は、液晶画面(LCD(Liquid Crystal Display))である。表示部22として公知の他の表示装置(例えば有機EL(Electro Luminescence)等)を用いてもよい。表示部22には操作者のための各種ユーザーインターフェイス(GUI(Graphical User Interface))を表示させることができる。
【0044】
操作部60は、表示部22に設けられる。操作部60は、表示部22と一体に設けられたタッチパネル式であり、操作部60に対する入力操作は、タッチ操作で行うことができる。表示部22上の操作部60に対し操作者がタッチ操作で入力することにより、表示された画像24を変化させることができるため、操作性が向上する。タッチパネル式は、表示部22に指やペンで直接触れることにより操作部60の操作を行うことができる。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等の公知の方式のタッチパネルを用いることができる。操作部60は、表示部22と一体のタッチパネル式に限らず、表示部22に表示された画像24等を変化させる操作が可能であれば表示部22に対し着脱可能なパネルであってもよいし、表示部22とは別に設けられた公知の入力手段(例えばマウス、トラックボール、キーボード等)を採用してもよい。
【0045】
操作盤20は、操作者が操作する物理的なボタン等が配置された第2操作部61を備える。第2操作部61は、タッチパネル式の操作部60の代わりに操作できる入力手段及び操作部60とは異なる操作用の入力手段を含む。
【0046】
図2に示すように、操作盤20は、表示部22及び操作部60と電気的に接続する演算部62及び記憶部64を含む。
【0047】
演算部62は、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部64に記憶されたプログラムを実行することによってプレス加工の処理を実行する。また、演算部62は、操作者による操作部60及び第2操作部61の操作に従ってスライド3のモーションを設定することができ、また記憶部64に予め記憶されたスライド3のモーションを変更することができる。
【0048】
記憶部64は、プレス機械1のプログラムや設定データ、例えばスライド3のモーションデータを記憶する。スライド3のモーションは、1サイクルのスライド3の動作曲線で表すことができ、通常は縦軸にスライド3のスライド位置(スライド3のストローク)(mm)、横軸に1サイクルの時間(sec)で表される。演算部62は、記憶部64に記憶されたモーションデータに従ってサーボモータ7に指令を出力し、サーボモータ7がこの指令に従って駆動することで予め設定されたモーションに従ってスライド3を動作させる。
【0049】
図3に示すように、操作盤20は、正面中央に表示部22及び操作部60を有し、表示部22の下方に第2操作部61を有する。表示部22には、帯状領域30を含む画像24が表示される。
【0050】
帯状領域30の上端31から下端32まで延在する範囲は、スライド3の直線運動における移動範囲10に対応する。したがって、上端31はクランクシャフト5の上死点70に対応し、下端32はクランクシャフト5の下死点72に対応する(図1)。帯状領域30の上端31にはクランクシャフト5の回転角として「0°」と表示され、下端32には同回転角として「180°」と表示される。また、帯状領域30の幅(太さ)は、スライド3の速度に対応し、帯状領域30の最大幅Wがスライド3の最大速度を表す。ここでスライド3の速度とは、目標とする速度をいい、その速度でスライド3が移動するように操作盤20はサーボモータ7に指令を出す。
【0051】
帯状領域30は、帯状領域30が延在する方向に連続する複数のスライド動作領域(図3では正転動作時の第1スライド動作領域41、第2スライド動作領域42及び第3スライド動作領域43)で形成される。帯状領域30によってスライド3の直線運動における移動範囲10を表現することによって、操作者が設定後のスライド3のモーションを視覚的に認識しながらモーションの設定をすることができる。また、スライド動作領域(41,42,43)は、操作部60に対する入力操作に伴ってそれぞれにスライド3の速度を設定可能である。
【0052】
隣接するスライド動作領域(第1スライド動作領域41と第2スライド動作領域42、第2スライド動作領域42と第3スライド動作領域43、第3スライド動作領域43と第1スライド動作領域41)の境界(第1境界51、第2境界52、第3境界53)は、操作部60に対する入力操作に伴って帯状領域30が延在する方向に沿って移動可能である。スライド動作領域(41,42,43)ごとにスライド3の速度を設定可能としつつ、スライド動作領域(41,42,43)の境界(51,52,53)を移動可能とすることによって、操作者がスライド3のモーションを視覚的に認識しながら入力操作することができるので操作性が向上する。
【0053】
帯状領域30は、偏心機構4の回転動作に対応する、円環状の画像である。帯状領域30は、円弧状の複数のスライド動作領域(図3では第1スライド動作領域41、第2スライド動作領域42、第3スライド動作領域43)を並べて円環状に形成する。帯状領域30を偏心機構4の回転動作に対応する円環状の画像とすることによって、操作者がスライド3のモーションを視覚的に認識しやすいため、操作性が向上する。帯状領域30は、円環状に限らず、他の形態(鉛直方向または水平方向に延びる直線状、V字状、U字状等)を採用することができる。
【0054】
表示部22は、帯状領域30以外の画像を表示することができる。例えば、操作用のボタンを画像として表現したものなどがある。
【0055】
2.正転動作
図4図11を用いて、偏心機構4の正転動作に対応するスライド3のモーションを設定する操作について説明する。図4図7は本実施形態に係るプレス機械1の表示部22に表示された正転動作を設定する画像24を示す図であり、図8は本実施形態に係るプレス機械1の表示部22に表示された帯状領域30を分割する操作を説明する図であり、図9及び図10は本実施形態に係るプレス機械1の正転動作におけるスライド3のモーションを示す図であり、図11は本実施形態に係るプレス機械1の正転動作におけるスライド3のモーションの具体例について説明する図である。
【0056】
図4図7に示すように、表示部22には円環状の帯状領域30の画像24と複数のボタン(26a〜26e)の画像とが表示されている。
【0057】
図4で操作者の指80が正転動作選択ボタン26aに触れる(タップ)と、正転動作のモーションが選択され、表示部22に画像24が表示される。「BASE SPM」は、このプレス機械1の正転動作のスライド3のモーションにおける基準のSPM(1分あたりのストローク数)を表示し、「CYCLE SPM」は、表示されている帯状領域30におけるSPMが表示されている。
【0058】
図4に示された帯状領域30は、初期状態の画像24である。帯状領域30は、偏心機構4の正転動作に対応する、上死点70(図1)から下死点72(図1)までの間に設けられた2つの第1スライド動作領域41及び第2スライド動作領域42と、下死点72から上死点70までの間に設けられた1つの第3スライド動作領域43とを含む。第2スライド動作領域42は、下端32を一端とする領域である。スライド動作領域42が帯状領域30の下端32を一端とする領域であることにより、下死点72付近における特有のプレスモーションを設定することができる。当該特有のプレスモーションとしては、例えば、後述するような上金型と被加工材料とが接触する際の衝撃の低減やダイクッションの押し戻しによる製品の跳ね上がり防止などがある。偏心機構4の正転動作によるスライド3のモーションにおいて汎用されるモーションを帯状領域30の初期状態とすることによって、操作者がスライド3のモーションを容易に設定することができる。
【0059】
帯状領域30の上端31には第3境界53があってスライド3の高さ(図1の上昇限11における下降限12からの高さ)が200.0mmであることが表示され、下端32には第2境界52があってスライド3の高さが0.0mmであることが表示されている。
【0060】
第1スライド動作領域41〜第3スライド動作領域43は異なる色で表示され、操作者が各スライド動作領域を明確に認識することができる。
【0061】
第1境界51は、上端31から円環状の帯状領域30に沿って90度の位置にあり、スライド3の高さが100.0mmの位置であることが表示されている。
【0062】
図5に示すように、操作者が指80を第1境界51に触れたまま矢印の方向へ移動(スワイプ)させると、帯状領域30が延在する方向に沿って第1境界51が移動する。これにより第1スライド動作領域41が長くなり、第2スライド動作領域42が短くなる。第2境界52の位置は80.0mmとなり、スライド3の高さが80.0mmの位置から第2スライド動作領域42が始まることが設定される。以下、操作者の指80による操作方法について主として説明するが、マウス等の他の入力手段を用いてもよい。
【0063】
図4の初期状態において、全てのスライド動作領域(41,42,43)の幅は、最も広く(帯状領域30の幅と一致する)表示されている。スライド動作領域(41,42,43)の幅は各領域におけるスライド3の目標速度の百分率を表す。目標速度は、スライ
ド動作領域(41,42,43)における制御上の目標とするスライド3の移動速度である。したがって、最大幅Wは、スライド3の最大速度(100%)である。
【0064】
図6に示すように、操作者が指80を第2スライド動作領域42に触れたまま矢印の方向に幅が狭まるように移動(ピンチイン)または第2スライド動作領域42の外周縁に触れたまま内周縁側に向かって移動(スワイプ)させると、第2スライド動作領域42の最大幅W(図5)から狭くなって変更後の幅W1になる。また変更後の幅W1を最大幅Wに変更する場合はピンチアウトまたは逆方向にスワイプさせる。ここでは最大幅Wを減じて最大速度の60%としている。このように、操作部60に対する入力操作に伴って第2スライド動作領域42の幅を変化させることによって、第2スライド動作領域42におけるスライド3の速度を設定することができる。第1スライド動作領域41及び第3スライド動作領域43も同様に速度を設定可能である。第1スライド動作領域41〜第3スライド動作領域43の各幅がスライド3の設定速度に対応することによって、操作者が視覚的に速度の変化を認識しながらモーションの設定をすることができる。なお、各幅を変化させる画像に限らず、各スライド動作領域(41,42,43)に数値情報を表示させる等の方法で速度を表示してもよい。演算ボタン26eに指80を触れると、演算部62が第2スライド動作領域42におけるスライド3の速度が60%になった1サイクルのSPMを演算し、「48min−1」と表示する。
【0065】
図7に示すように、図6の操作の代わりに、指80を第2スライド動作領域42に触れた後、表示部22にキーボードを表示させて速度の百分率(例えば「60」)を入力することで、第2スライド動作領域42におけるスライド3の速度を変更することもできる。
【0066】
図8に示すように、操作者が指80で分割ボタン26cに触れると、左中段のように第3スライド動作領域43が分割されて第4スライド動作領域44が表示される。さらに分割ボタン26cに触れるたびに、第5スライド動作領域45、第6スライド動作領域46が表示され、最大で帯状領域30を6等分するスライド動作領域を表示することができる。第1スライド動作領域41、第3スライド動作領域43及び第4スライド動作領域44〜第6スライド動作領域46はそれぞれ第2スライド動作領域42と同様にスライド3の速度を設定することができる。
【0067】
また、操作者が結合ボタン26dに触れれば、図3の右上の初期状態の帯状領域30は図3の左上のように第2スライド動作領域42が消滅し、第1スライド動作領域41と第3スライド動作領域43で帯状領域30を2等分したように表示される。図8の他の帯状領域30の場合は分割の操作と逆の操作を行うことができる。
【0068】
このように帯状領域30は、操作部60に対する入力操作に伴って、スライド動作領域(41〜46)の数を増減可能である。スライド動作領域(41〜46)を増減することでより複雑なモーションの設定をすることができる。
【0069】
図9の破線は、図4における帯状領域30によるスライド3のモーションを表す初期状態の正転動作曲線74a(スライド3のモーション)を示す。縦軸はスライド3の位置(mm)であり、横軸は時間(sec)である。初期状態の正転動作曲線74aは、サーボモータ7が100%の速度で回転してクランクシャフト5を回すため、スライド3がクランクシャフト5の上死点70から下死点72を通って再び上死点70へ戻る正弦波軌道が目標のモーションとなる。
【0070】
図10の破線は、図6における速度変更後の動作曲線74bを示す。図5において第1境界51を下げて、図6において第2スライド動作領域42の速度を60%にした1サイクルのモーションとなる。
【0071】
以上のように表示部22で設定された画像24に基づくスライド3のモーションデータによってプレス機械1は動作する。
【0072】
このように、プレス機械1の操作者は、サーボモータ7によるクランクシャフト5の回転によるプレス加工の動作を帯状領域30によって視覚的に認識しながらスライド3のモーションを設定することができる。すなわち、円環状の画像204の上端31をクランクシャフト5の上死点70に、下端32を下死点72に置き換えることでクランクシャフト5の回転運動を視覚的に認識し、スライド3のモーションを設定することができる。
【0073】
図11を用いてスライド3のモーションの具体的な設定例について説明する。図11において画像24の帯状領域30は、分割ボタン26cがタップされたことにより第3スライド動作領域43が分割されて第4スライド動作領域44が下端32に表示されている。さらに図11では、第2スライド動作領域42及び第4スライド動作領域44の幅が変更されている。画像24の帯状領域30によって設定されたスライド3のモーションを図11の右側に分割・変更後の動作曲線74cとして示す。
【0074】
図11において、第2スライド動作領域42は、スライド3に取り付けられた上金型とボルスタ2上の下金型に配置された被加工材料とが接触する際の衝撃を低減させるべく、加工開始タイミングの少し前からスライド3の下降速度を低減して設定されている。この例では最大速度の50%まで減じて設定されている。
【0075】
第4スライド動作領域44(下端32の第2境界52から第4境界54までの間)は、第2スライド動作領域42における速度よりもスライド3の上昇速度をさらに低減している。この例では最大速度の20%まで減じて設定されている。このように設定することによって、ダイクッションの押し戻しによる製品の跳ね上がりや製品と金型の接触による製品のキズの発生を防止することが期待できる。
【0076】
「製品の跳ね上がり」とは、下死点72(図1)付近におけるダイクッションの押し戻し動作による製品の上昇動作よりも、上金型の上昇動作の方が速くなることがあり、その結果として、上金型と製品との間に瞬間的に隙間が生じ、製品が跳ね上がることをいう。
【0077】
下死点72付近におけるスライド3の速度及びその速度が適用されるスライド3の移動範囲(図11では第2スライド動作領域42及び第4スライド動作領域44)の設定は、プレス加工における成形不良や加工歩留りの低下を招くことを防止するために特に重要である。そのため、本実施形態の画像24のような入力インターフェイスのようにスライド3の位置と速度の関係性が視覚的に認識出来ることが特に好ましい。
【0078】
3.振子動作
図12図16を用いて偏心機構4の振子動作に対応するスライド3のモーションを設定する操作について説明する。図12図15は本実施形態に係るプレス機械1の表示部22に表示された振子動作を設定する画像204を示す図であり、図16は本実施形態に係るプレス機械1の振子動作におけるスライド3のモーションを示す図である。
【0079】
図12に示すように、操作者が指80を振子動作選択ボタン26bに触れる(タップ)と、振子動作のモーションが選択され、表示部22に画像24が表示される。振子動作は、クランクシャフト5が上死点70まで回転することなく下死点72を中心に振り子のように往復回転する動作である。振子動作の場合、スライド3は、上昇限11(図1)まで上昇することなく下降して昇降するため、サイクルタイムが短縮し、プレス機械1の生産性が向上する。
【0080】
表示部22に表示された画像204の帯状領域300は、図12の初期状態において、偏心機構4の振子動作に対応する、上下に2つの第1スライド動作領域401及び第2スライド動作領域402を含む。上側の第1スライド動作領域401は、スライド3が動作しない範囲である。すなわち、クランクシャフト5は第1境界501a,501bに対応する90度と270度とで折返し、第2スライド動作領域402の範囲だけで回転するため、スライド3は第2スライド動作領域402の範囲でのみ昇降動作する。偏心機構4の振子動作によるスライド3のモーションにおいて汎用されるモーションを帯状領域300の初期状態とすることによって、操作者がスライド3のモーションを容易に設定することができる。
【0081】
図13に示すように、指80を第1境界501aに触れながら矢印の方向に移動する(スワイプ)と図12の初期状態では100.0mmだった第1境界501aが80.0mmまで移動する。これと同時に第1境界501bも同様に80.0mmの高さまで移動する。振子動作は、第2スライド動作領域402におけるスライド3の動作が同じ高さで往復する動作だからである。演算ボタン26eに触れると、サイクルSPMが「121min−1」と計算されて表示される。
【0082】
図14に示すように、指80を第2スライド動作領域402に触れたまま矢印の幅が方向に狭まるように移動(ピンチイン)または第2スライド動作領域402の外周縁に触れたまま内周縁側に向かって移動(スワイプ)させると、第2スライド動作領域402の最大幅W(図5)から狭くなって変更後の幅W1になる。ここでは最大幅Wを減じて最大速度の60%である。演算ボタン26eに触れると、サイクルSPMが「70min−1」と計算されて表示される。
【0083】
図15に示すように、指80が分割ボタン26cに触れると、第2スライド動作領域402が分割されて、第2スライド動作領域402の両端に2つの第3スライド動作領域403が表示される。2つに分かれて表示されている第3スライド動作領域403の一方の最大幅Wを変更すれば他方も同様に幅が変更され、一方の第2境界502aの位置を帯状領域300が延在する方向に沿って移動すれば他方の第2境界502bも同じ高さに移動する。さらに細かく第2スライド動作領域402を分割することもできる。
【0084】
図16に示すように、初期状態の振子動作曲線75aは図12の帯状領域300によって動作するスライド3のモーションを表し、振子ストローク変更後の動作曲線75bは図13の帯状領域300によって動作するスライド3のモーションを表す。スライド3の移動範囲10が図12の初期状態では高さ0mm〜100mmだったものが、図13の変更後では高さ0mm〜80mmとなっている。その分第2スライド動作領域402の所要時間も短縮される。
【0085】
このように、プレス機械1の操作者は、サーボモータ7によるクランクシャフト5の下死点72を中心とした振子動作を帯状領域300によって視覚的に認識しながらスライド3のモーションを容易に設定することができる。
【0086】
4.下死点停止動作
図17図19を用いて下死点停止動作のスライド3のモーションを設定する操作について説明する。図17及び図18は本実施形態に係るプレス機械1の表示部22に表示された下死点停止動作を設定する画像214を示す図であり、図19は本実施形態に係るプレス機械1の下死点停止動作におけるスライド3のモーションを示す図である。
【0087】
図17に示すように、操作者が指80を下死点停止動作選択ボタン26fに触れる(タ
ップ)と、下死点停止動作のモーションが選択され、表示部22に画像214が表示される。下死点停止動作は、クランクシャフト5の下死点72で一定時間停止して正転動作をするスライド3のモーションである。
【0088】
帯状領域310は、1本の帯状の画像214であって、画像214は、その両端313,314が離れた位置にあり、かつ、両端313,314の一方の端313から下方に延びて下端32で上方へ折返して他方の端314に達している。
【0089】
両端313,314はスライド3の上昇限11に対応し、下端32はスライド3の下降限12に対応する。下端32には水平方向に延びる第3スライド動作領域413を少なくとも1つ有する。このような帯状領域310の画像214を用いることにより、スライド3を下死点72で一時停止させるスライド3のモーションを操作者が視覚的に認識しながらモーションを設定することができる。
【0090】
帯状領域310は、略U字型であり、その2つの上端31,31が間隔を隔てて左右に配置された両端313,314になる。帯状領域310は、右上側から帯状領域310が延在する方向に沿って第1スライド動作領域411、第2スライド動作領域412、第3スライド動作領域413、第4スライド動作領域414、第5スライド動作領域415が連続する。
【0091】
図18に示すように、各スライド動作領域(411〜415)は、図4の例と同様に最大幅Wを変更することによってスライド3の速度を設定することができる。ここでは、第2スライド動作領域412におけるスライド3の目標速度を50%に変更している。また、操作者が指80で第3スライド動作領域413に触れながら外側から内側に向けて滑らせる(スワイプ)、または第3スライド動作領域413が狭くなるように移動させる(ピンチイン)ことで、クランクシャフト5の下死点72(図1)におけるスライド3の停止時間を変更(0.0sec→6.0sec)することができる。演算ボタン26eに触れる(タップ)とサイクルSPMが8min−1と計算されて、表示部22に表示される。
【0092】
図19に示すように、図17におけるスライド3のモーションを表す初期状態の正転動作曲線76aは、図18のように変更することによって下死点停止の動作曲線76bのスライド3のモーションに変更される。
【0093】
プレス機械1の操作者は、帯状領域310で視覚的に下死点72の停止状態を認識しつつスライド3のモーションを容易に設定することができる。
【0094】
5.2回打ち動作
図20及び図21を用いて2回打ち動作のスライド3のモーションを設定する操作について説明する。図20は本実施形態に係るプレス機械1の表示部22に表示された2回打ち動作を設定する画像224,225を示す図であり、図21は本実施形態に係るプレス機械1の2回打ち動作におけるスライド3のモーションを示す図である。このモーションでは、スライド3の一回目の下降動作に伴う加工成形の後に被加工材のスプリングバックが発生したとしても、スライド3の二回目の下降動作に伴う加工成形(同一金型内でのリストライク)によって低減することが可能である。
【0095】
図20に示すように、操作者が指80を2回打ち動作選択ボタン26gに触れる(タップ)と、2回打ち動作のモーションが選択され、表示部22に画像224,225が表示される。2回打ち動作は、1サイクルでスライド3を2回下降限12(下死点72)まで下降させてプレス加工するモーションである。
【0096】
帯状領域320は、隣接する2本の帯状の画像224,225である。画像224,225のそれぞれは、一方の端323,325(上端31,31)がスライド3の上昇限11(図1)に対応し、他方の端324,326がスライド3の下降限12(図2)を通過して上昇した位置にある反転点13(図21)に対応する。2本の帯状の画像224,225は、他方の端324,326が隣り合うように組み合わされる。このような帯状領域320の画像224,225を用いることにより、いわゆる2回打ちのスライド3のモーションを操作者が視覚的に認識しながら設定することができる。
【0097】
帯状領域320は、2つの隣接するJ字型の画像224,225の一方を左右反転した形態を有する。スライド3の最初の下降動作は右上側の画像224の端323からの第1スライド動作領域421及び第2スライド動作領域422で設定され、下降限12に対応する図20の右側の下端32から第3スライド動作領域423の端324までの間でスライド3の上昇動作が設定される。そして、2回目の下降動作は左側の画像225の端326からの第4スライド動作領域424で設定され、下降限12に対応する図20の左側の下端32から第5スライド動作領域425及び第6スライド動作領域426の端325までの間でスライド3の2回目の上昇動作が設定される。
【0098】
各スライド動作領域(421〜426)は、分割ボタン26cにより分割可能であり、結合ボタン26dにより結合可能である。また、各スライド動作領域(421〜426)におけるスライド3の目標速度は、図6及び図7等で説明したように変更することができる。
【0099】
図20では、初期状態(全てのスライド動作領域(421〜426)が最大速度(100%)の状態)から第2スライド動作領域422及び第4スライド動作領域424の幅を操作者が指80でピンチインして変更した状態を示している。
【0100】
図21に示すように、図20で設定されたスライド3のモーションは、2回打ち動作曲線77として表すことができる。上死点70からスライド3が下降して下死点72で上昇し、反転点13で再び下降して下死点72で再度上昇する動作が示されている。
【0101】
図9図10図16図19及び図21のモーション線図は、帯状領域30,300,310,320による設定を変更した段階で操作者の確認のために表示部22に表示できるようにしてもよい。
【0102】
プレス機械1の操作者は、帯状領域320を視覚的に2回打ち動作を認識しつつスライド3のモーションを容易に設定することができる。
【0103】
6.モーションの選択
図2に示すプレス機械1は、記憶部64に複数の帯状領域30,300,310,320の形態を記憶している。表示部22は、操作部60に対し入力操作に伴って、記憶部から複数の帯状領域30,300,310,320のいずれか1つを選択して表示する。この操作部60に対する入力操作は、例えば、図4図7に示す振子動作選択ボタン26bを長押しすることにより下死点停止動作選択ボタン26fまたは2回打ち動作選択ボタン26gを表示部22に表示させ、それからそれらのボタン(26f、26g)を押すようにしてもよい。複数の帯状領域30,300,310,320を予め記憶部64に用意しておくことによって、操作盤20が複数種類のモーションの設定に柔軟に対応することができる。
【0104】
記憶部64に記憶される帯状領域30,300,310,320の種類は本実施形態で説明されたものに限らず、他のモーションに応じて準備することができる。
【0105】
7.プレス機械の設定方法
図1図21を用いて説明したプレス機械1の設定方法について説明する。
【0106】
本実施形態に係る方法は、上述したプレス機械1の操作盤20を用いて、プレス機械1の設定を行う方法である。プレス機械1の操作者は、操作盤20の表示部22に表示された帯状の帯状領域30,300,310,320に対し入力操作を行う。
【0107】
入力操作としては、表示部22上のタッチパネル式の操作部60に対し操作者が指80を接触させてタップ、ピンチイン、ピンチアウト、スワイプ等のスマートフォンで用いる操作方法を採用することができる。入力操作として、上述した第2操作部61や他の公知の装置を採用してもよい。例えば、図7に示したようなキーボード画像による入力や、画像24,204,214,224等に対しマウスを使って表示部22に表示されたカーソルをクリック、ドラック、ドロップ等することで操作してもよい。
【0108】
操作者の入力操作により、帯状領域30,300,310,320に設けられたスライド3の速度が設定可能な複数のスライド動作領域(41,42,43,44,45,46等)の境界(51,52,53等)を移動して、スライド動作領域(41,42,43,44,45,46等)ごとにそれぞれ設定された速度で動作するスライド3の高さ範囲を設定する。スライド3の速度が設定されたスライド動作領域(41,42,43,44,45,46等)の境界(51,52,53等)を移動することによって、スライド動作領域(41,42,43,44,45,46等)に対応するスライド3の高さ範囲を設定することができるので、操作者が設定後のスライド3のモーションを視覚的に認識しながらモーションの設定をすることができる。
【0109】
本方法は、プレス機械1のための上述した操作を適用することができる。
【0110】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能であり、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0111】
1…プレス機械、2…ボルスタ、3…スライド、4…偏心機構、5…クランクシャフト、6…コネクティングロッド、7…サーボモータ、8…減速機、10…移動範囲、11…上昇限、12…下降限、13…反転点、20…操作盤、22…表示部、24,204,214,224,225…画像、26a…正転動作選択ボタン、26b…振子動作選択ボタン、26c…分割ボタン、26d…結合ボタン、26e…演算ボタン、26f…下死点停止動作選択ボタン、26g…2回打ち動作選択ボタン、30,300,310,320…帯状領域、31…上端、32…下端、313,323…端、314,324…端、325…端、326…端、41,401,411,421…第1スライド動作領域、42,402,412,422…第2スライド動作領域、43,403,413,423…第3スライド動作領域、44,414,424…第4スライド動作領域、45,415,425…第5スライド動作領域、46,426…第6スライド動作領域、51,501a,501b,511…第1境界、52,502a,502b,512…第2境界、53,513…第3境界、54,514…第4境界、60…操作部、61…第2操作部、62…演算部、64…記憶部、70…上死点、72…下死点、74a…初期状態の正転動作曲線、74b…速度変更後の動作曲線、74c…分割・変更後の動作曲線、75a…初期状態の振子動
作曲線、75b…振子ストローク変更後の動作曲線、76a…初期状態の正転動作曲線、76b…下死点停止の動作曲線、77…2回打ち動作曲線、80…指、W…最大幅、W1…変更後の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21