特許第6667566号(P6667566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667566
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】壁面検査装置
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20200309BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20200309BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20200309BHJP
   B64C 25/36 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   B64C39/02
   G01D21/00 D
   B64C27/08
   B64C25/36
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-70611(P2018-70611)
(22)【出願日】2018年4月2日
(65)【公開番号】特開2019-181972(P2019-181972A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2019年7月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518113281
【氏名又は名称】小林 國義
(74)【代理人】
【識別番号】100069420
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 武
(72)【発明者】
【氏名】小林 國義
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−168861(JP,A)
【文献】 特開2017−193327(JP,A)
【文献】 特開2016−132267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線によって飛行が遠隔制御される無人飛行体と、
前記無人飛行体に取り付けられ、無人飛行体の飛行位置における構造物の壁面の状態を検査する検査手段と、
前記無人飛行体又は前記検査手段に取り付けられて構造物の壁面に転接し、前記壁面との転接状態で無人飛行体の飛行に伴って走行することにより無人飛行体と壁面との間隔を一定に保つ走行車輪と、を備え、
前記検査手段は前記壁面の方向に延びて壁面に接触する打診棒と、打診棒の接触による信号に基づいた音又は振動に基づいて壁面の状態を検知する音センサ又は振動センサとを有し、
前記走行車輪は前記無人飛行体の側面から延びるクランク状の車軸を備え、前記車軸の後端部が前記無人飛行体の受け機構に差し込まれて受け機構を中心に回転可能となっていることにより前記走行車輪が前記無人飛行体に対する上下位置の変更が可能となっており、
前記打診棒は前記受け機構に連結されて前記走行車輪と連動して上下位置の変更が可能となっていることを特徴とする壁面検査装置。
【請求項2】
前記走行車輪の走行時のバランスを保つバランスウェイトが前記無人飛行体又は検査手段に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の壁面検査装置。
【請求項3】
前記検査手段は前記壁面の画像を撮像するカメラであることを特徴とする請求項1記載の壁面検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローン等の無人飛行体を用いて建造物やトンネル等の構造物の壁面を検査する壁面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドローン等の無人飛行体を用いて建造物の壁面に植えた緑化植物の状態を検査するシステムが開示されている。この検査システムは無線によって無人飛行体を遠隔操作することにより建造物の壁面に沿って飛行させながらカメラによって壁面の緑化植物を撮像して植物の状態を観察するものである。
【0003】
しかしながら、この従来の検査システムは壁面に植えられた緑化植物を検査するだけであり、建造物の壁面自体の状態を検査することはできないものとなっている。一方、壁面の状態検査に際しては、壁面と一定の間隔を保つ必要がある。無人飛行体の壁面との間隔の調整を行うための従来技術としては、特許文献2及び3に記載された技術が開示されている。
【0004】
特許文献2記載の技術は、無人飛行体から壁面に光を照射し、無人飛行体が搭載している撮像装置によって画像を得、この画像に基づいて壁面との位置関係を計測して間隔を調整するものである。特許文献3記載の技術は、無人飛行体に測距装置を搭載して壁面との間隔を自動計測して間隔調整するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−108656号公報
【特許文献2】特開2017-224123号公報
【特許文献3】特開2014-227166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2及び3に記載された技術では、光画像の解析や測距装置のデータの解析とこの解析に基づいた制御とが必要であり、高度の専門的技術が必要となっている。又、解析のための装置や解析に基づいて動作する操作装置が必要であり、構造が複雑で高価となる問題も有している。又、特許文献2及び3の技術は壁面との間隔調整を行うだけであり、特許文献1と同様に壁面自体の検査を行うことはできないものである。
【0007】
本発明は、以上の従来技術の問題点を考慮してなされたものであり、無人飛行体と壁面との間隔を簡単な構造で保つことができると共に壁面の検査を高精度に行うことが可能な壁面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の壁面検査装置は、無線によって飛行が遠隔制御される無人飛行体と、前記無人飛行体に取り付けられ、無人飛行体の飛行位置における構造物の壁面の状態を検査する検査手段と、前記無人飛行体又は前記検査手段に取り付けられて構造物の壁面に転接し、前記壁面との転接状態で無人飛行体の飛行に伴って走行することにより無人飛行体と壁面との間隔を一定に保つ走行車輪と、を備え、前記検査手段は前記壁面の方向に延びて壁面に接触する打診棒と、打診棒の接触による信号に基づいた音又は振動に基づいて壁面の状態を検知する音センサ又は振動センサとを有し、前記走行車輪は前記無人飛行体の側面から延びるクランク状の車軸を備え、前記車軸の後端部が前記無人飛行体の受け機構に差し込まれて受け機構を中心に回転可能となっていることにより前記走行車輪が前記無人飛行体に対する上下位置の変更が可能となっており、 前記打診棒は前記受け機構に連結されて前記走行車輪と連動して上下位置の変更が可能となっていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、前記走行車輪の走行時のバランスを保つバランスウェイトが前記無人飛行体又は検査手段に取り付けられていることを特徴とする。
又、前記検査手段は前記壁面の画像を撮像するカメラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、走行車輪の走行が壁面との転接状態でなされるため、簡単な構造で無人飛行体と壁面との間隔を確実に保つことができる。このように無人飛行体と壁面との間隔を保つことができるため、無人飛行体に取り付けられている検査手段による壁面の検査を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による壁面検査状態を示す斜視図である。
図2】壁面検査装置及び壁面検査状態を示す平面図である。
図3】壁面検査装置の動作の構成を示すブロック図である。
図4】トンネル壁面の検査状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図1図4により具体的に説明する。図1は本発明の壁面検査装置1による建造物7の壁面8の検査状態を示す斜視図、図2は検査状態の詳細を示す平面図、図3はブロック図、図4はトンネル9の壁面8aを検査する状態の側面図である。
【0014】
本発明の壁面検査装置1では、壁面8の検査に無人飛行体2を用いるものである。無人飛行体2としてはドローン、マルチコプター、ラジオコントロールヘリコプター等を選択することができる。以下、無人飛行体2をドローン2として説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、ドローン2はドローン本体3と、ドローン本体3に取り付けられた複数(4基)のプロペラ4とを備えている。ドローン本体3には、それぞれのプロペラ4を駆動制御するプロペラモータ、プロペラモータを駆動するモータドライバ、通信機、その他の飛行に必要な機器が格納されている(いずれも図示省略)。
ドローン2はパソコン等のコントローラ5と無線通信することにより飛行が遠隔制御される。コントローラ5はドローン2の飛行を制御すると共に、後述するように検査本体12と通信することにより壁面8の状態を解析する。
【0016】
ドローン本体3には、走行車輪10、バランスウェイト11及び検査本体12が着脱自在に取り付けられている。なお、走行車輪10及びバランスウェイト11としてはドローン本体3に取り付けることなくこれらを検査本体12に取り付け、この検査本体12をドローン本体3に着脱自在に取り付ける構造としても良い。このように走行車輪10及びバランスウェイト11を検査本体12に取り付ける構造とすることにより、これらが検査本体12と一体となってドローン本体3に対して着脱することができる。これによりドローン2を改造することなく、市販のドローンを用いることができるメリットがある。
【0017】
走行車輪10は壁面8と転接して回転する車輪である。走行車輪10はドローン本体3の側面から壁面8に向かって延びるクランク状の車軸13を備え、この車軸13の先端部に自由回転可能に取り付けられている。走行車輪10はドローン2の飛行に伴って壁面8との転接状態で回転しながら走行する。走行車輪10が壁面8と転接することによりドローン2(すなわち検査本体12)と壁面8との間隔を一定に保つことができる。これにより壁面8との間隔を保つための撮像装置や測距装置が不要となるため、簡単な構造で壁面8との間隔を保つことができる。又、走行車輪10が壁面8と転接してドローン2(すなわち検査本体12)と壁面8との間隔を確実に保つことができることから検査本体12による壁面8の検査を高精度に行うことができる。
図示例において、走行車輪10はドローン2を挟むように2つが設けられているが、その数は任意に変更することができる。
【0018】
この実施形態においては、走行車輪10は上下位置の変更が可能となるものである。このためドローン本体3内に差し込まれている車軸13の後端部が軸受やギヤ等の受け機構(図示省略)に取り付けられており、この受け機構を中心に車軸13が回転可能となっている。車軸13が回転することにより、ドローン本体3に対して走行車輪10を上下方向に位置変更することができる。これにより図1に示す建造物7の垂直状の壁面8だけなく、図4に示すようにトンネル9の弧状の壁面8aであっても、走行車輪10はその壁面8aに転接した状態で回転しながら走行することができる。これにより建造物の壁面8だけなくトンネルの壁面8aや橋梁、天井などの他の構造物の壁面への適用が可能となる。
なお、走行車輪10をドローン本体3ではなく検査本体12に取り付ける場合には、図示を省略するが、その車軸13を検査本体12から壁面8、8aの方向に延びるように設けると共に、車軸13の後端部を受け機構に取り付けることにより走行車輪10の上下位置の変更が可能となる。
【0019】
バランスウェイト11は走行車輪10の反対側に配置されている。このバランスウェイト11はドローン本体3から走行車輪10の反対側に延びた連結ロッド14の後端部に取り付けられることによりドローン本体3に取り付けられるものである。バランスウェイト11はこの位置で走行車輪10の走行時のバランスを保つように機能する。これによりドローン2の全体が水平状態を保って飛行することができ、壁面8、8aの検査を確実に行うことができる。
なお、バランスウェイト11もドローン本体3に取り付けることなく、検査本体12に取り付けた構造とすることができる。
【0020】
検査本体7は建造物の壁面8を検査する各種の検査手段を有している。この実施形態における検査手段を説明する。
検査本体7には壁面8、8aの方向に延びる打診棒16が取り付けられている。打診棒16の先端は球状のセンサボール17となっており、このセンサボール17が壁面8、8aと接触する。センサボール17の接触によって音信号や振動信号が打診棒16に入力される。
【0021】
検査本体7の内部には、打診棒16の後端部に連結された音センサ20又は振動センサ21(図3参照)が設けられており、打診棒16に入力された音又は振動に基づいて壁面8、8aの状態を検知するようになっている。これにより例えば、壁面8、8a内に発生した空隙や壁面8、8aに取り付けたタイルやモルタルの浮き状態などを知ることができる。かかる音センサ20、振動センサ21はセンサボール17の内部に設けることも可能である。なお、検知に際しては、プロペラ4の風切り音や騒音を軽減させるため、音センサ20や振動センサ21のボリュームを低減させることが良好である。
【0022】
打診棒16は走行車輪10と連動して上下位置の変更が可能となっている。このため、打診棒16は走行車輪10の車軸13が取り付けられる上述の受け機構に連結されており、受け機構を中心に打診棒16が回転する。この回転により打診棒16の上下方向への位置変更を走行車輪10の上下の位置変更と連動させることができる。このような打診棒16とすることにより、例えば、図4に示すトンネル9の弧状の壁面8aに対しても、そのセンサボール17が接触するため検査することができる。
【0023】
ここで、打診棒16はコイルばね等のばねを介して検査本体7に取り付けられることが好ましい。ばねを介した取り付けでは、センサボール17の壁面8、8aとの接触による衝撃を緩和することができるため、高精度の検査が可能となる。
【0024】
図3は壁面8、8aの検査を行うための検査本体12とコントローラ5との関係のブロック図を示す。
検査本体12は通信部22、照明部23、GPS部24、高度計25、マーキング部26、検査手段27及びこれらを制御する制御部28を有し、これらがバス31によってアクセス可能に連結されている。コントローラ5は通信部41、モニター部42、記録部43、解析部44、操作部45及びこれらを制御する制御部46を有し、これらがバス47によってアクセス可能に連結されている。
【0025】
検査本体12の通信部22とコントローラ5の通信部41とは無線によって信号のアクセスが行われる。検査本体12の照明部23は検査時における壁面8、8aの照明を行う。GPS部24は検査本体12の位置(ドローン2の位置)を検出する。これにより検査時におけるドローン2の飛行位置を知ることができ、壁面8、8aに対する検査位置を知ることができる。高度計25は検査本体12の高度(ドローン2の高度)を検出する。これにより壁面8、8aに対する検査位置の高さを知ることができる。マーキング部26は壁面8、8aの検査位置に対してインクを噴射する。これにより検査位置のマーキングを行うことができ、不良箇所の視認が容易となる。
【0026】
検査本体12の検査手段27は、音センサ20、振動センサ21、カメラ29、赤外線カメラ30、X線カメラ31を備えている。カメラ29、赤外線カメラ30、X線カメラ31はいずれも壁面8、8aの検査位置を撮像するものである。なお検査手段27としては、これらの全てを備えることなく、検査目的に応じてその一部を備えるものであって良い。又、これ以外の手段を備えることも可能である。
【0027】
コントローラ5のモニター部42は壁面8、8aの画像を可視表示する。記録部43は壁面8、8aの検査結果を検査位置に合わせて記録する。解析部44は検査手段27からのデータや信号に基づいて壁面8、8aの状態を解析する。操作部45はドローン2の飛行の制御を行うことができる。なお、ドローン2の飛行については、壁面8、8aの検査マップをプログラミングし、これを操作部45に入力することにより飛行の制御を自動的に行うことも可能である。
【0028】
以上の壁面検査装置1によれば、走行車輪10の走行が壁面8、8aとの転接状態でなされるため、簡単な構造でドローン2と壁面8、8aとの間隔を確実に保つことができる。このようにドローン2と壁面8、8aとの間隔を保つことができることにより、ドローン2に取り付けられている検査手段による壁面8、8aの検査を高精度に行うことができる。さらに検査のための足場構築の施工も不要となり、壁面8、8aの検査を迅速に行うことができるばかりでなく、検査の省力化も可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1 壁面検査装置
2 ドローン
3 ドローン本体
5 コントローラ
7 建造物
8、8a 壁面
9 トンネル
10 走行車輪
11 バランスウェイト
12 検査本体
13 車軸
16 打診棒
17 センサボール
20 音センサ
21 振動センサ
29 カメラ
図1
図2
図3
図4