特許第6667570号(P6667570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6667570マルチバンドパス液晶チューナブルフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667570
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】マルチバンドパス液晶チューナブルフィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/28 20060101AFI20200309BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20200309BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20200309BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20200309BHJP
   G01J 3/51 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   G02B27/28 Z
   G02F1/13 505
   G02B5/20 101
   G02B5/30
   G01J3/51
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-75624(P2018-75624)
(22)【出願日】2018年4月10日
(65)【公開番号】特開2018-180539(P2018-180539A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年4月10日
(31)【優先権主張番号】17166085.5
(32)【優先日】2017年4月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516114695
【氏名又は名称】ライカ インストゥルメンツ (シンガポール) プライヴェット リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Leica Instruments (Singapore) Pte. Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルゲ テメリス
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−529092(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0098309(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/042766(WO,A1)
【文献】 特開2017−032537(JP,A)
【文献】 米国特許第07630021(US,B2)
【文献】 特開平03−282417(JP,A)
【文献】 特表2011−514546(JP,A)
【文献】 特開2001−066434(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0300143(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/056102(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/28
G02F 1/13
G02B 5/20 − 5/30
G01J 3/00 − 3/52
G01N 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過波長(17)の光(13)を伝達する光学フィルタ(1)であって、
前記光学フィルタ(1)は、伝達方向(11)に沿って配置された少なくとも2つの光学フィルタ段(3)を備えており、前記伝達方向(11)に沿って、前記通過波長(17)の光(13)が前記光学フィルタ(1)を介して伝達され、
前記少なくとも2つの光学フィルタ段(3)各々は、少なくとも1つの入射側偏光子(5)と、少なくとも1つの固定リターディング素子(7)と、可変リターディング素子(19)と、を備えている光学フィルタ(1)において、
前記少なくとも2つの光学フィルタ段(3)各々における固定リターディング素子(7)と可変リターディング素子(19)とは、異なる厚さを有し、
複数の固定リターディング素子(7)は、互いに平行であり、
前記少なくとも2つの光学フィルタ段(3)各々は、動作波長範囲(41)にわたって広がる周期的伝達特性(35)を有しており、
各伝達特性(35)は、他の伝達特性(35)各々の少なくとも1つのピーク(43c〜43e)とそれぞれオーバラップした少なくとも2つのピーク(43c〜43e)を有しており、
前記光学フィルタ(1)の総合伝達特性(29)は、スペクトル的に互いに分離された少なくとも2つのスペクトル通過帯域(45)を有することを特徴とする、
光学フィルタ(1)。
【請求項2】
少なくとも3つの通過帯域(45)が設けられており、前記少なくとも3つの通過帯域(45)は、波数スペクトルにおいて互いに等間隔に離間されていることを特徴とする、
請求項1記載の光学フィルタ(1)。
【請求項3】
可変リターディング素子(19)の少なくとも1つは、液晶素子(21)として具現化されていることを特徴とする、
請求項1または2記載の光学フィルタ(1)。
【請求項4】
少なくとも2つの光学フィルタ段(3)は、同一のリターデーション(37a〜37e)を有しており、2つの前記光学フィルタ段(3)の周期的伝達特性(35)は、互いにシフトされていることを特徴とする、
請求項1から3までのいずれか1項記載の光学フィルタ(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの光学フィルタ段(3)は、少なくとも1つの他の光学フィルタ段(3)のリターデーション(37a〜37e)とは異なるリターデーション(37a〜37e)を有することを特徴とする、
請求項1から4までのいずれか1項記載の光学フィルタ(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの光学フィルタ段(3)は、少なくとも1つの他の光学フィルタ段(3)のリターデーション(37a〜37e)とは2倍異なるリターデーション(37a〜37e)を有することを特徴とする、
請求項1から4までのいずれか1項記載の光学フィルタ(1)。
【請求項7】
制限されたスペクトル帯域(44)内の光(13)に各々制限されている少なくとも2つの像を同時にキャプチャするカメラ(53)において、
前記カメラ(53)は、請求項1から6までのいずれか1項記載の光学フィルタ(1)を備えており、
前記フィルタの総合伝達特性(29)の少なくとも1つのスペクトル通過帯域(45)は、前記スペクトル帯域(44)各々の中に位置していることを特徴とする、
カメラ(53)。
【請求項8】
前記スペクトル帯域(44)は、RGBカラーコーディング(60a)またはGCMYカラーコーディング(58a)に対応していることを特徴とする、
請求項7記載のカメラ(53)。
【請求項9】
マルチスペクトル撮像システム(87)において、
同時撮像のために請求項7または8記載の少なくとも1つのカメラ(53)が設けられていることを特徴とする、
マルチスペクトル撮像システム(87)。
【請求項10】
少なくとも2つのカメラ(53)が設けられており、前記少なくとも2つのカメラ(53)各々の少なくとも2つの通過帯域(45)は、スペクトル的に互いにシフトされていることを特徴とする、
請求項9記載のマルチスペクトル撮像システム(87)。
【請求項11】
少なくとも2つの異なるスペクトル帯域(44)の光(13)によって試料(79)を照射する照射システム(73)であって、
広帯域光源(75)と請求項1から6までのいずれか1項記載の光学フィルタ(1)とを備えている、
照射システム(73)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過波長の光を伝達する光学フィルタに関する。このフィルタは、伝達方向に沿って配置された少なくとも2つの光学フィルタ段を備えており、この伝達方向に沿って、通過波長の光が光学フィルタを介して伝達され、少なくとも2つの光学フィルタ段各々は、少なくとも1つの入射側偏光子と少なくとも1つの固定リターディング(位相遅延)素子とを備えている。
【0002】
本発明はさらに、制限されたスペクトル帯域内の光に各々が制限されている少なくとも2つの像を同時にキャプチャするカメラ、マルチスペクトル撮像システム、および照射システムに関する。
【背景技術】
【0003】
各々が複屈折材料を含む多数のフィルタ段をベースとする光学フィルタは、従来技術において知られている。これらのフィルタ段を、SolcまたはLyotによる設計で配置することができる。どのような構成が使用されるにせよ、従来技術の光学フィルタは、特に慣用の固定波長光学フィルタに比べてピーク伝達値が低い、という欠点を有している。したがって、カメラまたは撮像システムに適用する場合には、従来技術の光学フィルタは高感度のカメラを必要とする。また、従来技術の光学フィルタを適用した照射システムの場合には、高い照射強度が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、本発明の課題は、伝達値が改善された光学フィルタ、カメラ、マルチスペクトル撮像システムおよび照射システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
冒頭で述べた光学フィルタは、上述の問題点を以下のようにして解決する。すなわち少なくとも2つの光学フィルタ段各々は、動作波長範囲にわたって広がる周期的伝達特性を有しており、各伝達特性は、他の伝達特性各々の少なくとも1つのピークとそれぞれオーバラップした少なくとも2つのピークを有しており、光学フィルタの総合伝達特性は、スペクトル的に互いに分離された少なくとも2つのスペクトル通過帯域を有する。
【0006】
冒頭で述べた形式のカメラは上述の問題点を、本発明による光学フィルタを備えることによって解決する。この場合、フィルタの総合伝達特性の少なくとも1つのスペクトル通過帯域は、スペクトル帯域各々の中に位置している。
【0007】
同時撮像のための本発明によるマルチスペクトル撮像システムは上述の問題点を、少なくとも1つの本発明によるカメラを備えることによって解決する。
【0008】
少なくとも2つの異なるスペクトル帯域の光によって試料を照射する本発明による照射システムは、広帯域光源と本発明による光学フィルタとを備えることによって、上述の問題点を解決する。
【0009】
通過波長とは、波長依存性の伝達カーブの中心波長のことであると解されたい。この場合、伝達カーブは特定のパルス形状を有することができる。
【0010】
よって、通過波長とは、対応する光学フィルタの最大伝達波長のことであると解されたい。この場合、通過波長と隣り合った波長を伝達することもできるが、その場合の伝達率は通過波長よりも低い。
【0011】
光学フィルタ段とは、波長依存性の伝達率を有する複数の光学部品から成るアセンブリのことであると解されたい。光学フィルタ段各々の伝達特性により、伝達方向に沿って光学フィルタ段へ入射される光に作用が及ぼされる。
【0012】
光学フィルタの総合伝達特性を得るために、全ての光学フィルタ段の伝達特性が掛け合わせられる。
【0013】
入射側偏光子を、予め定められた直線偏光をほぼ100%伝達する直線偏光子として具現化することができ、この場合、予め定められた上述の偏光とは異なる偏光の光は、偏光子によって減衰させられる。
【0014】
予め定められた偏光方向に対し垂直に偏光された光は、好ましくは完全に阻止される。入射される偏光と偏光子の予め定められた偏光方向との間の角度に関して、伝達率はコサインカーブを辿り、その際にコサインカーブの負の半波を辿る。
【0015】
光学フィルタ段各々の固定リターディング素子を、固定の複屈折を有する複屈折材料として具現化することができる。複屈折の結果、垂直に偏光された光成分相互間にリターデーションが生じるので、複屈折材料はリターダまたはリターディング素子とも呼ばれる。
【0016】
本発明による光学フィルタは少なくとも2つの光学フィルタ段を備えており、これらの光学フィルタ段の双方は、動作波長範囲にわたって広がる周期的伝達特性を有している。動作波長範囲とは、この範囲内で光学フィルタが少なくとも1つの通過波長の光を伝達する波長範囲のことである、と解されたい。
【0017】
光学フィルタ内に設けられる偏光子、固定リターディング素子、あるいは場合によっては反射防止層または保護層などといった、光学フィルタ内で適用される光学素子の個々の伝達特性によって、動作波長範囲が制限される可能性がある。
【0018】
本発明によればフィルタ段各々は、動作波長範囲内に少なくとも2つのピークを含む伝達特性を有する。複数の光学フィルタ段の少なくとも2つの伝達特性はオーバラップしており、この場合、各光学フィルタ段の伝達特性における少なくとも第1および第2の最大伝達率が、他の光学フィルタ段の伝達特性各々の少なくとも1つの最大伝達率とオーバラップしている。
【0019】
光学フィルタの総合伝達特性は、個々の伝達特性の乗算によって得られるが、このことは非線形作用を伴わない線形の光相互作用の場合にのみ当てはまる。
【0020】
光学フィルタの総合伝達特性は、スペクトル的に分離された少なくとも2つのスペクトル通過帯域を有しており、このスペクトル通過帯域内で、光学フィルタに入射される光が光学フィルタの最大伝達率で伝達されることになる。
【0021】
好ましくは、少なくとも2つのスペクトル通過帯域のスペクトルポジションとは異なるいかなる波長の光も、特に少なくとも2つのスペクトル通過帯域各々のスペクトル帯域幅外の波長は、光学フィルタによって完全に阻止される。少なくとも2つのスペクトル通過帯域間のスペクトル分離は好ましくは、それらのスペクトル通過帯域のスペクトル帯域幅の少なくとも2倍になる。
【0022】
光学フィルタの総合伝達特性は、複数の光学フィルタ段の個々の伝達特性を含むので、スペクトル通過帯域のスペクトル帯域幅および形状は、光学フィルタの全てのスペクトル通過帯域について同一である。
【0023】
以下では、本発明のさらに別の有利な実施形態について説明する。それらの実施形態の技術的特徴は、任意に組み合わせ可能または省略可能である。
【0024】
本発明による光学フィルタの1つの実施形態によれば、少なくとも2つの光学フィルタ段は、類似したまたはそれどころか同一である個々の伝達特性を有することができ、その際、少なくとも1つの個々の伝達特性は、第2の光学フィルタ段の少なくとも1つの他の個々の伝達特性に対して、スペクトル的にシフトされている。オーバラップした、ただしシフトされた個々の伝達特性から結果として生じるスペクトル通過帯域を、1つの伝達特性のスペクトルのシフトなしで得られたスペクトル通過帯域に対して、スペクトル的に狭めることができる。
【0025】
本発明による光学フィルタのさらに別の実施形態によれば、少なくとも3つの通過帯域が設けられており、その際に少なくとも3つの通過帯域は、波数スペクトル内においてスペクトル的に互いに等間隔で離間されている。この場合、波数は波長の逆数である。したがって結果として得られる光学フィルタの通過帯域によって、スペクトル通過帯域により規定される3つ以上の最大伝達率を有する光学櫛が形成される。
【0026】
各通過帯域間のスペクトルの離間を、実際に各通過帯域の中心波長間で測定することができる。
【0027】
なお、スペクトル通過帯域カーブの外観すなわち通過帯域の帯域幅とピーク・トゥー・ピーク距離とは、波長と対比してプロットした場合、動作波長範囲における短い波長の側と長い波長の側とで異なる可能性がある、ということに留意されたい。波数(波長の逆数)と対比してプロットした場合、スペクトル通過帯域の帯域幅とピーク・トゥー・ピーク距離とは同一である。
【0028】
本発明による光学フィルタのさらに別の有利な実施形態によれば、複数の光学フィルタ段のうちの少なくとも1つは、対応する光学フィルタ段の波長依存性の周期的伝達特性をシフトするために、可変リターディング素子を備えている。
【0029】
この実施形態によれば、光学フィルタ段の少なくとも1つは、固定量の複屈折を加える、すなわち入射光をリターディングする固定リターディング素子を備えていると共に、可変の複屈折ないしはリターデーションを加える素子も備えている。かかる可変のリターデーションによって、波長依存性の周期的伝達特性が波長軸に沿ってシフトされ、その結果、少なくとも2つの個々の伝達特性のオーバラップした最大値が、場合によっては異なるスペクトルポジションをとるようになり、他方、これによって光学フィルタの少なくとも2つのスペクトル通過帯域も同様にシフトされる。
【0030】
したがってこの実施形態の光学フィルタは、チューナブルマルチバンドパスフィルタであり、これによってこのフィルタを介して少なくとも2つのスペクトル通過帯域を伝達できるようになり、その際に少なくとも2つのスペクトル通過帯域のスペクトルポジションをユーザが変更可能である。
【0031】
光学フィルタ段各々が可変リターディング素子を備えていれば、本発明による光学フィルタをさらに改善することができる。この実施形態によれば、設けられた複数の光学フィルタ段における個々の周期的伝達特性の全てを、スペクトル的にシフトすることができる。よって、周期的伝達特性のオーバラップした最大値のポジションを、したがってスペクトル通過帯域のスペクトルポジションを、光学フィルタの動作波長範囲内のほぼ任意の波長に合わせてチューニングすることができる。
【0032】
このため本発明による光学フィルタの上述の実施形態によれば、従来技術では1つのスペクトル帯域であったのに、複数のスペクトル帯域のリアルタイム撮像が可能になることから、従来技術の光学フィルタを凌ぐさらなる利点が得られるようになる。他方、このことにより結果として、スループット効率の改善と合わせて、相応に高速化されたスキャニング速度が得られるようになり、すなわち損失が減少しかつコストおよびサイズが小さくなる。
【0033】
従来技術の光学フィルタは、たとえ従来技術のチューナブルフィルタであったとしても、リアルタイムでは単色像を供給することしかできない。本発明の光学フィルタによれば、少なくとも2つのスペクトル通過帯域をリアルタイムで、すなわち同時に、考慮することができる。
【0034】
本発明による光学フィルタのさらに別の実施形態によれば、可変リターディング素子の少なくとも1つは液晶素子として具現化されている。液晶素子は、電界内に配置したときに指向性をもたせることができる等方性液晶に基づくものである。電界の電界強度を変化させることによって液晶が回転させられ、それらの液晶に入射される光に対して加えられるそれらの液晶の複屈折ないしはリターデーションを変化させる。したがって可変リターディング素子によって加えられる可変のリターデーションを、容易に制御し変更することができる。
【0035】
本発明による光学フィルタのさらに別の実施形態によれば、少なくとも2つの光学フィルタ段は等しいリターデーションを有しており、この場合、2つの光学フィルタ段の周期的伝達特性は互いにシフトされている。本発明による光学フィルタのこの実施形態が有する利点とは、スペクトル通過帯域の光学的な帯域幅を変化させることができる、ということである。帯域幅のこのような変化を、光学フィルタのスペクトル通過帯域のチューナビリティに対する代案として、またはそれに加えて、適用することができる。スペクトル通過帯域の狭いスペクトル帯域幅を達成する目的で、2つ以上の光学フィルタ段が同一のリターデーションを有することができる。
【0036】
本発明による光学フィルタを、少なくとも1つの光学フィルタ段が、少なくとも1つの他の光学フィルタ段のリターデーションとは異なるリターデーションを有することによって、さらに改善することができる。固定リターディング素子のリターデーションがそれぞれ異なる結果として、個々の伝達特性においてそれぞれ異なる周期性が生じるようになる。
【0037】
複屈折材料すなわち液晶が適用される場合、伝達方向に沿って測定される液晶の厚さと共にリターデーションが大きくなる。したがって、比較的厚い固定リターディング素子を備えた光学フィルタ段は、周期性が低減された、すなわち周期的伝達特性のスペクトル周波数が高められた伝達特性を有することができる。また、比較的厚い固定リターディング素子を備えた光学フィルタ段の最大伝達率は、比較的薄い固定リターディング素子を適用した光学フィルタ段の周期的伝達特性の最大伝達率よりも、互いに密に位置している。
【0038】
低いスペクトル周波数を有する個々の伝達特性は、広いスペクトル帯域幅を有することができ、高いスペクトル周波数を有する伝達特性は、それに応じていっそう狭いスペクトル帯域幅を有することができる。よって、達成される総合伝達特性は、高いスペクトル周波数の個々の伝達特性のスペクトル帯域幅によって決定されるスペクトル帯域幅を有することができ、この場合、スペクトル通過帯域の中心波長を、低いスペクトル周波数の伝達特性の最大伝達率によって決定することができる。
【0039】
本発明による光学フィルタのさらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの光学フィルタ段は、少なくとも1つの他の光学フィルタ段のリターデーションとは2倍異なるリターデーションを有する。リターデーションが2倍異なることから結果として、やはりそれぞれ2倍異なる対応する周期的伝達特性における最大伝達率のスペクトル周波数が生じることになる。
【0040】
よって、比較的小さいリターデーションの結果として生じた伝達特性の1つの半波内に、好ましくは、2倍のリターデーションの結果として生じた第2の周期的伝達特性の2つの半波が含まれる。
【0041】
このため、リターデーションがそれぞれ異なる複数の光学フィルタ段の少なくとも2つの周期的伝達特性におけるピーク(最大伝達率)間のオーバラップが保証される。
【0042】
さらに別の実施形態によれば、光学フィルタ内に一連の光学フィルタ段1,2,...Nを含めることができ、この場合、光学フィルタ段2のリターデーションは光学フィルタ段1のリターデーションの2倍であり、光学フィルタ段3のリターデーションは光学フィルタ段2のリターデーションの2倍であり、...、光学フィルタ段Nのリターデーションは光学フィルタ段N−1のリターデーションの2倍である。
【0043】
この実施形態によれば、個々の伝達特性の最大伝達率のオーバラップも保証される。光学フィルタ段1の周期的伝達特性によって、光学フィルタのスペクトル通過帯域の個数が決定され、この場合、スペクトル通過帯域の個数は、動作波長範囲内に位置する周期的伝達特性の最大伝達率の個数に相応する。
【0044】
さらに光学フィルタ段Nのスペクトル帯域幅によって、光学フィルタにおいて結果として生じるスペクトル通過帯域のスペクトル帯域幅を決定することができる。よって、この実施形態の光学フィルタは、少なくとも2つのスペクトル通過帯域を含む櫛形スペクトルを有することができ、この場合、櫛形スペクトル全体を、可変リターディング素子を用いてスペクトル的にシフトすることができる。
【0045】
櫛形スペクトルのスペクトル通過帯域を特に、スペクトル的に互いに等間隔に離間させることができる。このため結果として得られる光学フィルタによって、少なくとも2つの波長を同時に伝達させることができるようになり、それによってマルチスペクトルアプリケーションをリアルタイムに実施できるようになる。
【0046】
冒頭で述べた少なくとも2つの像を同時にキャプチャするカメラを、光学フィルタの動作波長範囲である伝達された全てのスペクトル通過帯域を検出するように、具現化することができる。この場合、光学フィルタの動作波長範囲は、好ましくはカメラが入射光に感応する範囲を示すカメラ波長範囲と一致する。カメラは、CCD検出器またはCMOS検出器として具現化可能な検出器を備えることができ、この場合、検出器の画素各々が1つのマイクロフィルタを備えることができる。
【0047】
少なくとも2つの像を同時にキャプチャする本発明によるカメラの第1の実施形態によれば、個々の画素に適用されるマイクロフィルタを、対応するマイクロフィルタの下限波長と上限波長との間の波長の光のみを伝達するバンドパスフィルタとして、具現化することができる。
【0048】
下限波長よりも短い波長または上限波長よりも長い波長は、マイクロフィルタによって好ましくは完全に阻止される。
【0049】
第2のマイクロフィルタのスペクトル帯域を、第1のマイクロフィルタのスペクトル帯域にスペクトル的に隣り合うように位置させることができ、この場合、第2のマイクロフィルタの帯域の下限波長は、第1のマイクロフィルタの帯域の上限波長以上である。
【0050】
したがって、カラーコーディングを規定するために、隣り合う画素に2つ以上のマイクロフィルタを適用することができる。レッド−グリーン−ブルー(RGB)カラーコーディングのケースであれば、3つの異なるマイクロフィルタから成るセットを適用することができ、グリーン−シアン−マゼンタ−イエロー(GCMY)カラーコーディングのケースであれば、4つの異なるマイクロフィルタから成るセットを隣り合う画素に適用することができる。
【0051】
このようにしてカメラの複数のマイクロフィルタによって、1つの波長範囲を予め選択することができ、この場合、光学フィルタのただ1つのスペクトル通過帯域が上述の波長範囲内にスペクトル的に位置しており、このスペクトル通過帯域はフィルタのスペクトル帯域の下位の波長範囲を形成する。したがって、上述の画素により測定される入射光の強度を、光学フィルタの対応するスペクトル通過帯域の強度に一義的に関連づけることができる。
【0052】
本発明によるカメラのその他の想定可能な実施形態によれば、それぞれ特有の伝達スペクトルを有する複数のマイクロフィルタが適用され、この場合、光学フィルタの少なくとも2つのスペクトル通過帯域は、マイクロフィルタ各々についてそれぞれ異なる伝達値を有する。このカメラはさらに、各画素の測定された強度をただ1つのスペクトル通過帯域に関連づけるために、後処理用のプロセッサを備えている。
【0053】
冒頭で述べたマルチスペクトル撮像システムを、少なくとも2つのカメラを設けることによってさらに改善することができ、この場合、少なくとも2つのカメラ各々の少なくとも2つの通過帯域は、スペクトル的に互いにシフトされている。
【0054】
一般にマルチスペクトル撮像システムは、複数のスペクトル通過帯域間のスペクトル距離が一定である、という制約を有しており、したがって通過帯域を互いに無関係に選択することはできない。本発明によるマルチスペクトル撮像システムのこの実施形態によれば、各カメラにより測定される通過帯域を互いに無関係に選択できることから、このような制約が緩和される。
【0055】
冒頭で述べた本発明による照射システムのために、広帯域連続光源または広帯域離散光源を適用することができる。このため照射システムは、少なくとも2つの異なるスペクトル通過帯域をフィルタリングして、この少なくとも2つの通過帯域によって試料を照射する。
【0056】
さらに考えられるのは、選択されたスペクトル通過帯域を得るために、広帯域離散光源のフィルタリングを適用できる、ということである。この通過帯域を、試料の個々の吸収特性に対応する照射波長に合わせてチューニングすることができる。したがって、2つの異なる蛍光チャネルにおける蛍光励起を実現させることができる。
【0057】
次に、本発明について添付の図面を参照しながら説明する。同じ技術的特徴および同じ技術的作用を有する特徴には、同じ参照符号を付すものとする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】従来技術の光学フィルタの概略的な構成を示す図である。
図2】複数の光学フィルタ段の個々の伝達特性と、結果として生じる光学フィルタの総合伝達特性とを示す図である。
図3】本発明による光学フィルタを適用して少なくとも2つの像を同時にキャプチャするカメラの動作原理を示す図である。
図4】光学フィルタを適用した本発明の照射システムの動作原理を示す図である。
図5】本発明によるカメラの詳細な動作原理を示す図である。
図6】本発明によるマルチスペクトル撮像システムの動作原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1には、従来技術の光学フィルタ1の概略的な動作原理が示されている。光学フィルタ1は、図示の実施形態では6つの光学フィルタ段3を備えており、この場合、光学フィルタ段3の各々は、入射側偏光子5と1つの固定リターディング素子7とを備えており、このリターディング素子7の厚さ9は、図1の左側の光学フィルタ段から右側の光学フィルタ段3に向かって増加している。
【0060】
さらに各光学フィルタ段3は可変リターディング素子19を備えており、これは液晶素子21として具現化されている。各液晶素子21は、光透過性の電極27を備えた2つのガラスプレート25の間に設けられた液晶23を備えている。液晶23、ガラスプレート25および導電性の電極27は、左側の光学フィルタ段3についてのみ参照符号で表されている。
【0061】
各光学フィルタ段3は、以下のように配向された2つの偏光子を備えている。すなわち、これら2つの偏光子のうち第1の偏光子を通って通過する直線偏光された光が、これら2つの偏光子4のうち第2の偏光子を通って伝達される光に対し垂直に配向されている。
【0062】
図1に示されている構成によれば、入射側偏光子5は、対応する入射側偏光子5の左側に配置された光学フィルタ段3のための出射側偏光子6を成している。
【0063】
図1の左側に配置された光学フィルタ段3の入射側偏光子5は、全体の入射側偏光子5aを成しており、光学フィルタ1はさらに、入射側偏光子5を成さない全体の出射側偏光子6aを備えている。
【0064】
図1にはさらに伝達方向11も示されており、図1に示されている光学フィルタ1を介した伝達によって、伝達方向11または伝達方向11とは逆方向で進行する光13に対し同じように作用が及ぼされることから、図1には択一的な伝達方向11bも示されている。
【0065】
伝達方向11で光学フィルタ1に入射する光13は、図1では通過波長17である波長15を有している。
【0066】
光学フィルタ1は、通過波長17に対する最大伝達率31によって特徴づけられる総合伝達特性29を有している。つまり、通過波長17の出射光33が光学フィルタ1を介して伝達されるけれども、その一方で入射強度Iは出射強度Iよりも小さい。
【0067】
通過波長17ではない波長15の光13は、光学フィルタ1を介して伝達されない。
【0068】
図2a、図2bおよび図2cには、それぞれ異なる伝達特性35が示されている。図2aには、図1の6つの光学フィルタ段について5つの伝達特性35が示されているが、この場合には参照符号1の付された上方の枠は、図1の左側に配置された、すなわち図1の全体の入射側偏光子5aのすぐ隣りに配置された光学フィルタ段3の伝達特性35を表している。全体の出射側偏光子6aと隣り合った対物フィルタ段3に関する6番目の伝達特性35は、図2aには示されていない。
【0069】
図示の伝達特性35は、対応する光学フィルタ段3の伝達率31を波長15と対比してプロットしており、この場合、伝達特性35は動作波長範囲41内で示されている。
【0070】
この図は、液晶の厚さ9がそれぞれ異なることから、結果としてそれぞれ異なるリターデーション37a〜37eが生じることを示しており、ここでリターデーション37a〜37eは、第2のフィルタ段のスペクトル周波数39bが第1のフィルタ段のスペクトル周波数39aの2倍となり、相応に第3のフィルタ段のスペクトル周波数39cが第2のフィルタ段のスペクトル周波数39bの2倍の値となる、といった具合に選定されている。
【0071】
本発明による光学フィルタ1によって、伝達特性35c、35dおよび35eが結合され、ここでは伝達特性35cは実線でプロットされており、伝達特性35dは破線でプロットされており、伝達特性35eは点線でプロットされている。
【0072】
図2a〜図2cに概略的に描かれている本発明による光学フィルタ1の場合、伝達特性35aおよび35bを有する光学フィルタ段3は省かれ、伝達特性35c〜35eを有する光学フィルタ段3だけが、図2cに示されている総合伝達特性29に寄与する。図2bおよび図2cのプロットによって、動作波長範囲41内の波長15全体にわたりプロットされた伝達率31も表されている。
【0073】
図2bによれば、伝達ピーク43c、43dおよび43e、ならびに伝達特性35c〜35eにおけるその他の9つのピークが互いにオーバラップしている、ということがわかる。オーバラップしたピーク43c、43dおよび43eによって、1つのスペクトル通過帯域45aが形成されている。
【0074】
同様に、図2aでは参照符号が付されていない9つのオーバラップしたピークが生じた結果として、その他の3つの通過帯域45が形成され、光学フィルタ1の総合伝達特性29が4つのスペクトル通過帯域45を有するようになる。
【0075】
光学フィルタ1のこれらのスペクトル通過帯域45によって、1つの櫛形スペクトル47が形成され、これはスペクトル間隔49により互いに等距離で離間された4つの同じスペクトル通過帯域45により特徴づけられている。
【0076】
可変リターディング素子19(図1参照)を本発明による光学フィルタに適用すれば、櫛形スペクトル47全体を、図2cに示されているシフト方向51に沿ってスペクトル的にシフトさせることができる。
【0077】
図3には、カメラ53の概略的な動作原理が示されており、この場合、カメラ53は、カラーフィルタ57、本発明による光学フィルタ1および撮像センサ59を備えている。撮像センサ59を、CMOSまたはCCDとして具現化することができる。
【0078】
光13は、伝達方向11に沿ってカメラ53に入射する。
【0079】
図3の大きい方の枠は、上述のカメラ53の動作原理の概略であり、伝達率31を波長15と対比してプロットしている。図3にプロットされた総合伝達特性29は、4つのスペクトル通過帯域45を含む櫛形スペクトル47を有している。
【0080】
カラーフィルタ57は4つのマイクロフィルタ61を備えており、これらのマイクロフィルタ61各々は、撮像センサ59の全ての画素(図示せず)のサブセットの前にポジショニングされている。特に各マイクロフィルタ61は、1つの単一の画素の前にポジショニングされている。なお、「前に」という言い回しは、光学フィルタ1と撮像センサ59との間のポジションのことであると解されたい。
【0081】
複数のマイクロフィルタ61を、撮像センサ59の対応する多数の画素に合わせたパターンで適用することができる。
【0082】
伝達率31のプロットによって、4つのマイクロフィルタ特性63a〜63dが表されており、この場合、各マイクロフィルタ特性63a〜63dは、1つのバンドパスフィルタ65に相応する。
【0083】
バンドパスフィルタ65は、1つのスペクトル帯域44を形成する下限波長67a〜67dと上限波長69a〜69dによって特徴づけられている。このプロットにおいて、上限波長69aおよび下限波長67bは、マイクロフィルタ特性63aがマイクロフィルタ特性63bとオーバラップしないように、選定されている。別の実施形態によれば、上述の特性63a〜63dに多少のオーバラップがあってもよい。
【0084】
したがって、複数のスペクトル通過帯域45のうちただ1つのスペクトル通過帯域だけが、スペクトル的に1つのマイクロフィルタ特性63a〜63d内に位置する。光13は4つの全てのスペクトル通過帯域45から成るので、4つの全ての通過帯域45がマイクロフィルタ61各々に入射することになる。ただしマイクロフィルタ61各々は、対応するマイクロフィルタ特性63a〜63d内にスペクトル的に位置していない3つのスペクトル通過帯域45を阻止することになる。
【0085】
このため、選択的に1つのパターンで配置された複数の画素にマイクロフィルタ61を設ければ、各々が1つの単一のスペクトル通過帯域45に制限された複数の像をキャプチャすることができる。
【0086】
よって、キャプチャされたスペクトル像は、対応するスペクトル通過帯域45の帯域幅71内の波長の光だけを考慮したものである。
【0087】
帯域幅71は、スペクトル通過帯域45aに対してのみ示されており、半値全幅(FWHM)として定められているが、本発明の別の実施形態によれば、これとは異なるように定めることができる。
【0088】
図4には、本発明による照射システム73の概略的な構成が示されており、この照射システム73は広帯域光源75と光学フィルタ1とを備えている。
【0089】
広帯域光源75を、連続光源75aとして具現化してもよいし、広帯域離散光源(図示せず)として具現化してもよい。図4に示されている広帯域光源75は、広帯域連続光源75aである。広帯域連続光源75aは、強度分布77aを有する光13を送出する。
【0090】
光源の強度分布77aは光学フィルタ1に入射し、図3の総合伝達特性29に従ってフィルタリングされ、その結果、フィルタリング後の強度分布77bが得られる。フィルタリング後の強度分布77bは、光学フィルタ1の複数のスペクトル通過帯域45に対応する4つのスペクトル帯域44を含んでいる。
【0091】
フィルタリングされた光13bは、フィルタリング後の強度分布77bを有しており、試料79に入射する。試料79は反射性であり、この場合、反射の度合いは試料79に入射する波長に依存する。したがって反射光13cは、いくつかのスペクトル特徴成分が減衰されているため、フィルタリング後の強度分布77bとは異なる反射後の強度分布77cを有する。
【0092】
次いで反射光13cが、カメラ53として具現化可能な検出システム81によってキャプチャされる。
【0093】
総合伝達特性29の櫛形スペクトル47をシフトすることができるので、図4の試料79をそれぞれ異なる波長15で照射することができ、図示の実施形態によれば、リアルタイムで同時に4つの波長によって試料79が照射される。
【0094】
図5には、本発明によるカメラの第2の実施形態に関する概略的な動作原理が示されている。
【0095】
図5に示されているカラーフィルタ57は、4つのマイクロフィルタ61によって特徴づけられたグリーン−シアン−マゼンタ−イエロー(GCMY)フィルタ58として具現化されている。図5に示されているGCMYフィルタ58の実施形態は、カラーコーディング57aを備えており、これはGCMYカラーコーディング58aである。
【0096】
相応に、RGBカラーコーディング60a(図示せず)を備えたレッド−グリーン−ブルー(RGB)フィルタ60(図示せず)として、カラーフィルタ57の異なる実施形態(図示せず)を具現化してもよい。
【0097】
マイクロフィルタ61は、図3に示したマイクロフィルタ61とは異なり、バンドパスフィルタ65としては具現化されていない。GCMYフィルタ58のマイクロフィルタ61はむしろ、波長15に依存するマイクロフィルタ61の伝達率31を表す特定の伝達カーブ83a〜83dを有するマイクロフィルタ特性63a〜63dによって、特徴づけられている。
【0098】
かかるGCMYフィルタ58を、総合伝達特性29を有する本発明による光学フィルタ1と組み合わせれば、GCMYフィルタ58の各マイクロフィルタ61は、光学フィルタ1によって供給される4つの全てのスペクトル通過帯域45を伝達する。波長15と対比させてプロットされたフィルタリング後の強度分布77bは、GCMYフィルタ58の対応するマイクロフィルタ特性63a〜63dと、光学フィルタ1によって供給される櫛形スペクトル47との乗算によって特徴づけられる。
【0099】
よって、マイクロフィルタ61の伝達カーブ83a〜83dは、櫛形スペクトル47に対する包絡線関数85として振る舞う。
【0100】
図6には、本発明によるマルチスペクトル撮像システム87の概略的な動作原理ならびに単純化されたその構成が示されている。
【0101】
マルチスペクトル撮像システム87は、マルチスペクトル撮像システム87に入射する光13を反射するポリクロイックミラー89を備えている。
【0102】
ポリクロイックミラー89は、それぞれ異なる反射率の少なくとも3つのスペクトル領域を有する反射特性(図示せず)を有しており、この場合、それぞれ異なる反射率のスペクトル領域が波長軸に沿って交互に現れる。(高反射性のスペクトル帯域と非反射性のスペクトル帯域とを分離する帯域端を含むダイクロイックミラーとは対照的。)
【0103】
ポリクロイックミラー89は、3つのプリズム素子90の間の界面に配置されており、各々光学フィルタ1が設けられた3つのカメラ53に向かって光13を反射する。
【0104】
この場合、第1のカメラ53aに第1の櫛形スペクトル47aが照射され、第2のカメラ53bに第2の櫛形スペクトル47bが照射され、さらに第3のカメラ53cに第3の櫛形スペクトル47cが照射されるように、光学フィルタ1がチューナブルに具現化されている。
【0105】
図6には、櫛形スペクトル47a〜47cのシフトに左右されることなく、個々のスペクトル通過帯域45が、各光学フィルタ1の総合伝達特性29において互いに等間隔で離間されている、ということが示されている。よって、スペクトル通過帯域45を別個には選択できない。
【0106】
(第1の櫛形スペクトル47aの総合伝達特性29のプロットで表された)4つの測定波長91a〜91dにおいて、マルチスペクトル検出またはマルチスペクトル撮像をリアルタイムに実施したい場合もある。測定波長91a〜91dは互いに等間隔で離間されていないので、1つの櫛形スペクトル47によって全ての測定波長91a〜91dをリアルタイムに検出することはできない。
【0107】
したがって、第2の櫛形スペクトル47bを有する第2のカメラ53bを適用することによって、測定波長91cを検出することができ、第3の櫛形スペクトル47cを生じさせる第3のカメラ53cを適用することによって、測定波長91bを測定波長91aおよび91dと同時に検出することができる。
【0108】
図6の右側には、結果として生じたマルチスペクトル撮像システムの総合感度93が、波長15と対比させてプロットされている。マルチスペクトル撮像システムの上述の総合感度93は、複数のスペクトル通過帯域間の等間隔の離間の制約を緩和するための1つの手法である。これによって、各撮像センサ59により測定されるスペクトル通過帯域45の独立した選択が可能となる。
【0109】
なお、図6は、本発明によるマルチスペクトル撮像システム87の概略的な動作原理を描いたものにすぎず、実際に構築するにあたっては、プリズム素子90と光学フィルタ1とカメラ53との間にさらに光学素子を追加する必要がある場合もある、という点に留意されたい。
【符号の説明】
【0110】
1 光学フィルタ
3 光学フィルタ段
4 偏光子
5 入射側偏光子
5a 全体の入射側偏光子
6 出射側偏光子
6a 全体の出射側偏光子
7 固定リターディング素子
9 厚さ
11 伝達方向
11b 択一的な伝達方向
13 光
13b フィルタリングされた光
13c 反射光
15 波長
17 通過波長
19 可変リターディング素子
21 液晶素子
23 液晶
25 ガラスプレート
27 光透過性の電極
29 総合伝達特性
31 伝達率
入射強度
出射強度
33 出射光
35 伝達特性
37a〜37e リターデーション
39a 第1のフィルタ段のスペクトル周波数
39b 第2のフィルタ段のスペクトル周波数
39c 第3のフィルタ段のスペクトル周波数
39d 第4のフィルタ段のスペクトル周波数
39e 第5のフィルタ段のスペクトル周波数
41 動作波長範囲
43c〜43e ピーク
44 スペクトル帯域
45,45a スペクトル通過帯域
47 櫛形スペクトル
47a 第1の櫛形スペクトル
47b 第2の櫛形スペクトル
47c 第3の櫛形スペクトル
49 スペクトル間隔
51 シフト方向
53 カメラ
53a 第1のカメラ
53b 第2のカメラ
53c 第3のカメラ
55 スペクトル帯域
57 カラーフィルタ
57a カラーコーディング
58 GCMYフィルタ
58a GCMYカラーコーディング
59 撮像センサ
60 RGBフィルタ
60a RGBカラーコーディング
61 マイクロフィルタ
63a〜63d マイクロフィルタ特性
65 バンドパスフィルタ
67a〜67d 下限波長
69a〜69d 上限波長
71 帯域幅
73 照射システム
75 広帯域光源
75a 広帯域連続光源
77a 光源の強度分布
77b フィルタリング後の強度分布
77c 反射後の強度分布
79 試料
81 検出システム
83a〜83d 伝達カーブ
85 包絡線関数
87 マルチスペクトル撮像システム
89 ポリクロイックミラー
90 プリズム素子
91a〜91d 測定波長
93 マルチスペクトル撮像システムの総合感度
図1
図2
図3
図4
図5
図6