特許第6667701号(P6667701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチユ三菱フォークリフト株式会社の特許一覧

特許6667701FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム
<>
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000002
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000003
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000004
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000005
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000006
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000007
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000008
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000009
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000010
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000011
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000012
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000013
  • 特許6667701-FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6667701
(24)【登録日】2020年2月27日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】FT図更新装置、トラブルシューティング用フロー図更新装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/90 20190101AFI20200309BHJP
   G06Q 10/00 20120101ALI20200309BHJP
【FI】
   G06F16/90 100
   G06Q10/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-60515(P2019-60515)
(22)【出願日】2019年3月27日
【審査請求日】2019年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 誠
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】中島 潤
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真司
【審査官】 後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−301134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/90
G06Q 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に関するFT図を更新するFT図更新装置であって、
トラブル事例から事象を抽出する事象抽出部と、
前記トラブル事例の前記事象同士の第1因果関係を抽出する第1因果関係抽出部と、
抽出された前記第1因果関係に対応する前記事象をトップダウン的に連結して事象群を生成する連結部と、
生成された事象群を前記FT図に組み入れる組入部と、
前記FT図中の事象と前記抽出された事象との類似度を算出する類似度算出部と、
前記類似度算出部によって所定以上の類似度が算出された事象同士を統合し、前記FT図の事象群と連結部によって生成された事象群とを連結する統合部と、を備える
ことを特徴とするFT図更新装置。
【請求項2】
前記第1因果関係抽出部は、前記トラブル事例が入力されると、前記トラブル事例ごとの前記事象同士の前記第1因果関係を抽出するように第1教師データを用いて機械学習された学習済み第1ニューラルネットワークを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のFT図更新装置。
【請求項3】
前記事象抽出部は、前記トラブル事例が入力されると、当該トラブル事例に含まれている前記事象を抽出するように第2教師データを用いて機械学習された学習済み第3ニューラルネットワークを有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のFT図更新装置。
【請求項4】
過去の複数のトラブル事例を学習用データとしてニューラルネットワークを用いて教師なし学習され、単語が入力されると、前記入力された単語の意味に対応する分散表現ベクトルを出力する学習済み第2ニューラルネットワークと、
前記トラブル事例が入力されると、前記入力されたトラブル事例を単語ごとに分割する形態素解析部と、
前記単語ごとに分割されたトラブル事例を、前記学習済み第2ニューラルネットワークによって単語ごとに分散表現ベクトル化する単語ベクトル化部と、
前記抽出された事象を、当該事象に含まれている単語ごとの分散表現ベクトルに基づいて、事象単位で分散表現ベクトルに変換する文章ベクトル化部と、
前記FT図中の事象を分散表現ベクトル化して記憶している記憶部と、をさらに備え、
前記類似度算出部は、前記文章ベクトル化部によって分散表現ベクトル化された前記事象と前記記憶部に記憶されている前記事象とのコサイン類似度に基づいて、類似度を算出する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のFT図更新装置。
【請求項5】
前記入力された単語の意味に対応する分散表現ベクトルは、前記入力された単語がN−gram分割されて抽出されたサブワードの分散表現ベクトルに基づく
ことを特徴とする請求項4に記載のFT図更新装置。
【請求項6】
前記作業機械に関するトラブルシューティング用フロー図更新装置であって、
前記トラブルシューティング用フロー図は、図中の基本事象に対応する処置が連結された前記FT図によって構成されており、
請求項4または5に記載のFT図更新装置と、
前記トラブル事例に含まれている前記事象に対して行われた処置を抽出する処置抽出部と、
前記トラブル事例の前記処置と当該処置に対応する前記事象との第2因果関係を抽出する第2因果関係抽出部と、を備え、
前記連結部は、さらに、前記第2因果関係に基づいて、前記事象群中の前記事象に前記処置をトップダウン的に連結し、
前記類似度算出部は、さらに、前記フロー図中の前記処置と前記抽出された処置との類似度を算出し、
前記統合部は、さらに、前記類似度算出部によって所定以上の類似度が算出された処置同士を統合する
ことを特徴とするフロー図更新装置。
【請求項7】
前記第2因果関係抽出部は、前記トラブル事例が入力されると、前記第2因果関係を抽出するように第3教師データを用いて機械学習された学習済み第4ニューラルネットワークを有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のフロー図更新装置。
【請求項8】
前記処置抽出部は、前記トラブル事例が入力されると、当該トラブル事例に含まれている前記処置を抽出するように第4教師データを用いて機械学習された学習済み第5ニューラルネットワークを有する
ことを特徴とする請求項6または7に記載のフロー図更新装置。
【請求項9】
前記記憶部は、さらに、前記フロー図中の前記処置を分散表現ベクトル化して記憶しており、
前記文章ベクトル化部は、さらに、前記抽出された処置を当該処置に含まれている単語ごとの分散表現ベクトルに基づいて、前記処置単位で分散表現ベクトルに変換し、
前記類似度算出部は、さらに、前記文章ベクトル化部によって分散表現ベクトル化された前記処置と前記記憶部に記憶されている前記処置とのコサイン類似度に基づいて、類似度を算出する
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のフロー図更新装置。
【請求項10】
前記トラブル事例は、前記作業機械に係る報告書の記載またはユーザ同士の通信ログからなる
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の更新装置。
【請求項11】
コンピュータを請求項1〜10のいずれか1項に記載の更新装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
作業機械の新たなトラブル事例に基づいて、FT図を更新するFT図更新装置およびそれを備えたトラブルシューティング用フロー図更新装置ならびにコンピュータをFT図更新装置もしくはトラブルシューティング用フロー図更新装置またはその両方として機能させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械等に生じた事故や故障を解析する手法としてFTA(Fault Tree Analysis)が知られている。FTAは、故障木解析とも言われている。FTAは、トップ事象に関連する事象をトップダウン的にツリー構造に表現するFT図を用いる。トップ事象には、例えば、作業機械に生じた事故や故障が相当する。FT図では、トップ事象に関連する事象のうち1番下位の事象が基本事象とされ、トップ事象でも基本事象でもない事象が中間事象とされる。FT図では、1つの事象に対して直接的に関連する事象が複数存在する場合、すわなち、1次事象、2次事象…n次事象が並列的に複数存在する場合がある。
【0003】
このようなFT図を作成するための装置として、例えば、特許文献1および特許文献2に開示の装置がある。特許文献1に開示の装置では、技術分野別に用語群が予め記憶されており、FT図作成者は、用語群のリストから該当する事象をトップダウン的に次々と選択していくことによりFT図を作成することができる。
【0004】
ところで、作業機械に生じた事故や故障に対して、未熟なサービスマンは、通常どのような処置をすればよいか容易に判断できない。また、このような未熟なサービスマンに対して、熟練のサービスマンが指導をすることは、時間および労力を要する。そこで、上記FT図を発展させて、作業機械に生じた事象に対して行うべき処置を参照可能なトラブルシューティング用フロー図が作成されることがあった。
【0005】
このようなFT図またはトラブルシューティング用フロー図が作成されている作業機械に新たな事象が生じた場合には、FT図またはトラブルシューティング用フロー図を更新する必要がある。しかしながら、その都度、FT図またはフロー図を更新することは、時間を要するし面倒である。そこで、例えば、新しい事象、その原因および処置の記録(以下、「トラブル事例」という)から簡易にFT図またはフロー図が更新されることが好ましい。しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示の装置には、そのような点が考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−195433号公報
【特許文献2】特開2013−073384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、作業機械に新たな事象が生じた場合に、FT図またはトラブルシューティング用フロー図を簡易に更新することができる装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係るFT図更新装置は、
作業機械に関するFT図を更新するFT図更新装置であって、
トラブル事例から事象を抽出する事象抽出部と、
前記トラブル事例の前記事象同士の第1因果関係を抽出する第1因果関係抽出部と、
抽出された前記第1因果関係に対応する前記事象をトップダウン的に連結して事象群を生成する連結部と、
生成された事象群を前記FT図に組み入れる組入部と、
前記FT図中の事象と前記抽出された事象との類似度を算出する類似度算出部と、
前記類似度算出部によって所定以上の類似度が算出された事象同士を統合し、前記FT図の事象群と連結部によって生成された事象群とを連結する統合部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記FT図更新装置は、好ましくは、
前記第1因果関係抽出部が、前記トラブル事例が入力されると、前記トラブル事例ごとの前記事象同士の前記第1因果関係を抽出するように第1教師データを用いて機械学習された学習済み第1ニューラルネットワークを有する。
【0010】
上記FT図更新装置は、例えば、
前記事象抽出部が、前記トラブル事例が入力されると、当該トラブル事例に含まれている前記事象を抽出するように第2教師データを用いて機械学習された学習済み第3ニューラルネットワークを有する。
【0011】
上記FT図更新装置は、好ましくは、
過去の複数のトラブル事例を学習用データとしてニューラルネットワークを用いて教師なし学習され、単語が入力されると、前記入力された単語の意味に対応する分散表現ベクトルを出力する学習済み第2ニューラルネットワークと、
前記トラブル事例が入力されると、前記入力されたトラブル事例を単語ごとに分割する形態素解析部と、
前記単語ごとに分割されたトラブル事例を、前記学習済み第2ニューラルネットワークによって単語ごとに分散表現ベクトル化する単語ベクトル化部と、
前記抽出された事象を、当該事象に含まれている単語ごとの分散表現ベクトルに基づいて、事象単位で分散表現ベクトルに変換する文章ベクトル化部と、
前記FT図中の事象を分散表現ベクトル化して記憶している記憶部と、をさらに備え、
前記類似度算出部は、前記文章ベクトル化部によって分散表現ベクトル化された前記事象と前記記憶部に記憶されている前記事象とのコサイン類似度に基づいて、類似度を算出する。
【0012】
上記FT図更新装置は、好ましくは、
前記入力された単語の意味に対応する分散表現ベクトルが、前記入力された単語がN−gram分割されて抽出されたサブワードの分散表現ベクトルに基づく。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る前記作業機械に関するトラブルシューティング用フロー図更新装置は
前記トラブルシューティング用フロー図が、図中の基本事象に対応する処置が連結された前記FT図によって構成されており、
上記FT図更新装置と、
前記トラブル事例に含まれている前記事象に対して行われた処置を抽出する処置抽出部と、
前記トラブル事例の前記処置と当該処置に対応する前記事象との第2因果関係を抽出する第2因果関係抽出部と、を備え、
前記連結部は、さらに、前記第2因果関係に基づいて、前記事象群中の前記事象に前記処置をトップダウン的に連結し、
前記類似度算出部は、さらに、前記フロー図中の前記処置と前記抽出された処置との類似度を算出し、
前記統合部は、さらに、前記類似度算出部によって所定以上の類似度が算出された処置同士を統合することを特徴とする。
【0014】
上記フロー図更新装置は、好ましくは、
前記第2因果関係抽出部が、前記トラブル事例が入力されると、前記第2因果関係を抽出するように第3教師データを用いて機械学習された学習済み第4ニューラルネットワークを有する。
【0015】
上記フロー図更新装置は、例えば、
前記処置抽出部が、前記トラブル事例が入力されると、当該トラブル事例に含まれている前記処置を抽出するように第4教師データを用いて機械学習された学習済み第5ニューラルネットワークを有する。
【0016】
上記フロー図更新装置は、好ましくは、
前記記憶部が、さらに、前記フロー図中の前記処置を分散表現ベクトル化して記憶しており、
前記文章ベクトル化部は、さらに、前記抽出された処置を当該処置に含まれている単語ごとの分散表現ベクトルに基づいて、前記処置単位で分散表現ベクトルに変換し、
前記類似度算出部は、さらに、前記文章ベクトル化部によって分散表現ベクトル化された前記処置と前記記憶部に記憶されている前記処置とのコサイン類似度に基づいて、類似度を算出する。
【0017】
上記フロー図更新装置は、例えば、
前記トラブル事例が、前記作業機械に係る報告書の記載またはユーザ同士の通信ログからなる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明に係るプログラムは、コンピュータを上記FT図更新装置または上記フロー図更新装置として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るFT図更新装置およびプログラムは、トラブル事例から簡易にFT図を生成することができる。また、本発明に係るFT図更新装置を備えたトラブルシューティング用フロー更新装置およびプログラムは、トラブル事例から簡易にトラブルシューティング用フロー図を更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のFT図更新装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
図2】報告書の一例を示す図である。
図3図1のFT図の一例を示す図である。
図4図1のFT図更新装置の機能ブロック図である。
図5】Aは生成された事象群の一例を示し、BはFT図中の事象群の一例を示し、CはAの事象群がBの事象群に統合されツリー状に形成された一例を示す図である。
図6図1のFT図更新装置による更新後のFT図の一例である。
図7図1のFT図更新装置の処理動作を示すフロー図である。
図8】本発明のフロー図更新装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
図9】通信ログに係るチャットの一例を示す図である。
図10図8のフロー図の一例を示す図である。
図11図8のフロー図更新装置の機能ブロック図である。
図12図8のフロー図更新装置の処理動作を示すフロー図である。
図13図8のフロー図更新装置による更新後のフロー図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
<FT図更新装置>
以下、図を参照しつつ、本発明のFT図更新装置A1およびそのプログラムの一実施形態について説明する。なお、本実施形態における作業機械は、フォークリフトであるが、単なる一例であってこれに限定されない。
【0022】
図1は、本実施形態の概略を示す全体図である。コンピュータCは、FT図更新プログラムP1によって、報告書300の記載(図2参照)またはユーザ同士の通信ログの内容からなるトラブル事例が入力されるとFT図400aを更新するFT図更新装置A1として機能するように構成されている。本実施形態では、トラブル事例は、報告書300の記載に基づく。
【0023】
コンピュータCは、入力部C1と、制御部C2と、メモリC3と、記憶部C4と、出力部C5と、を備える。記憶部C4は、ハードディスクなどからなり、OSと、FT図400aと、分散ベクトル表現化されたFT図400a中の事象D1と、FT図更新プログラムP1を記憶している。入力部C1は、キーボード、スキャナなどからなり、報告書300に記載されたトラブル事例300bをコンピュータCに入力する。制御部C2は、FT図更新プログラムP1を動作させる。出力部C5は、モニタ、プリンタなどからなり、入力されたトラブル事例300bの内容、FT図更新装置A1の動作結果などを出力する。
【0024】
図2は、報告書300の一例を示す。報告書300には、日付、件名、顧客名、担当者名、機種/型式および不具合内容といった項目とともにその内容が記載されている。不具合内容欄には、フォークリフトに生じた各事象とともに、担当者300aによって行われた処置が記録されている。本明細書におけるトラブル事例300bとは、不具合内容欄に記載されている文章をいう。なお、トラブル事例300bは、各担当者によって各事象が箇条書きで書かれていたり、各事例が接続詞や句読点で連結されていたりする。
【0025】
図2の報告書300に記載されたトラブル事例300bにおける各事象および処置は、次のとおりである。
・トップ事象:エンジンが掛からなかった。
・中間事象1(1次事象):吸気系に異常があった。
・中間事象2(2次事象):吸気ホースが潰れていた。
・基本事象:エアクリーナが目詰まりしていた。
・処置:エアクリーナ清掃/フィルタ交換をした。
【0026】
図3に、FT図400aの一例を示す。FT図400aは、過去の複数のトラブル事例から作成された更新前のFT図400aである。FT図400aは、図2のトラブル事例300bに含まれている事象の一部を含んでおらず、図2のトラブル事例300bに含まれている事象の一部が新しいことを示している。
【0027】
図4は、FT図更新装置A1のブロック図である。FT図更新装置A1は、形態素解析部1と、単語ベクトル化部2と、事象抽出部3と、第1因果関係抽出部4と、連結部5と、組入部6と、文章ベクトル化部7と、類似度算出部8と、統合部9と、を備える。
【0028】
形態素解析部1は、トラブル事例300bが入力されると、形態素解析する。これにより、トラブル事例300bは、単語ごとにスペースを置いて分割され、分かち書き処理される。例えば、「エンジンが掛からなかった」という文章は、「エンジン」、「が」、「掛から」、「なかっ」、「た」と分割される。形態素解析するためのツールとして、例えば、「Mecab」を使用してもよい。また、予め作成されたフォークリフト用のコーパスを形態素解析ツールとして使用してもよい。これにより、トラブル事例300b中の各名詞が適切に抽出されるので好ましい。
【0029】
単語ベクトル化部2は、学習済み第2ニューラルネットワーク(以下、単に「第2NN」という)20を有する。第2NN20は、過去の複数のトラブル事例を学習用データとしてニューラルネットワークを用いて事前に教師なし学習されており、単語ごとに分割された複数のトラブル事例300bが入力されると、複数のトラブル事例300bに含まれている各単語同士の関連性に基づいて、この各単語の意味に対応する分散表現ベクトルを出力する。第2NN20は、同一の事象に出現する可能性(共起性)が高い単語、または同一の事象において近い位置に出現する可能性が高い単語といった関連性の高い単語がそれぞれ入力された場合に、類似する分散表現ベクトルが出力されるように事前学習されている。これは、類似する文脈で出現する単語は、意味的にも類似しているという分布仮説(Harrs, 1954, Rubenstein & Goodenough,1965)に基づく。単語ベクトル化部2として、例えば、ニューラルネットワーク技術に基づく「Word2Vec」、「Glove」、「Fasttext」などの言語モデルが使用されてもよい。分散表現およびWord2Vecについては「MIKOLOV, Tomas, et al. Distributed representations of words and phrases and their compositionality. In: Advances in neural information processing systems. 2013. p. 3111-3119.」などを参照することができる。Gloveについては「PENNINGTON, Jeffrey; SOCHER, Richard; MANNING, Christopher D. Glove: Global Vectors for Word Representation. In: EMNLP. 2014. p. 1532-1543.」などを参照することができる。Fasttextについては「JOULIN, Armand, et al. Bag of tricks for efficient text classification. arXiv preprint arXiv:1607.01759, 2016.」などを参照することができる。
【0030】
学習済み第2NN20は、各単語の分散表現ベクトルを出力する方法として、各単語に含まれるサブワードを考慮して分散表現ベクトルを生成することが好ましい。具体的には、単語ベクトル化部2は、入力された単語をN−gram分割してサブワードを抽出し、入力された単語の意味に対応する分散表現ベクトルを、サブワードの分散表現ベクトルの和または平均とすることが好ましい。サブワードは、例えば、単語「吸気ホース」の場合、「吸」、「吸気」、「気ホ」、「ホー」、「ース」、「ス」が該当する。これにより、第2NN20は、例えば、「吸気ホース」、「吸ホース」および「ホース」には、類似する分散表現ベクトルを出力するので、入力されるトラブル事例300bの表記上のゆれおよび未知語にも対応することができる。サブワードを考慮して分散表現ベクトルを生成するツールとして、例えば、「Fasttext」を用いてもよい。
【0031】
事象抽出部3は、トラブル事例300bから事象を抽出する。事象抽出部3は、トラブル事例300bが入力されると、当該トラブル事例300bに含まれている事象を抽出するように教師データを用いて機械学習された学習済み第3ニューラルネットワーク(以下、単に「第3NN」という)30を有してもよい。この場合、教師データは、入力データが過去の複数のトラブル事例であり、正解データが過去のトラブル事例ごとに含まれている事象である。この教師データが、本発明の「第2教師データ」に相当する。また、この場合、機械学習に使用される教師データは、単語ベクトル化部2によって予め分散表現ベクトル化されていることが好ましい。教師データに含まれている単語が、分散表現ベクトル化されていることにより、文脈情報を有するので機械学習において特徴を学習しやすいからである。第3NN30は、ディープラーニングを利用し、かつ、畳み込みニューラルネットワークもしくは再帰型ニューラルネットワークまたはその両方を利用したものであってもよい。また、第3NN30は、複数のニューラルネットワークから構成されアンサンブル学習されたものであってもよい。
【0032】
第1因果関係抽出部4は、トラブル事例300bの事象同士の因果関係(以下、単に「第1因果関係」という)を抽出する。第1因果関係抽出部4は、トラブル事例300bが入力されると、第1因果関係を抽出するように教師データを用いて機械学習された学習済み第1ニューラルネットワーク(以下、単に「第1NN」という)40を有する。教師データは、入力データが過去の複数の各トラブル事例であり、正解データが入力データに含まれている事象同士の因果関係である。この教師データが、本発明の「第1教師データ」に相当する。なお、第1因果関係には、第1因果関係を有する事象同士のいずれが上位事象または下位事象であるかといった従属関係も含まれている。また、使用される教師データは、単語ベクトル化部2によって予め分散表現ベクトル化されている方が、機械学習の精度、効率の観点から好ましい。第1NN40は、ディープラーニングを利用し、かつ、畳み込みニューラルネットワークもしくは再帰型ニューラルネットワークまたはその両方を利用したものであってもよい。また、第1NN40は、複数のニューラルネットワークから構成されアンサンブル学習されたものであってもよい。
【0033】
連結部5は、事象抽出部3によって抽出された第1因果関係に対応する事象同士をトップダウン的に連結して事象群Eaを生成する。
【0034】
図5Aに示すように、連結部5は、例えば、図2の報告書300に係るトラブル事例300bの場合、各事象を連結線によって連結して事象群Eaを生成する。
【0035】
組入部6は、連結部5によって生成された事象群EaをFT図400aに組み入れる。
【0036】
文章ベクトル化部7は、類似度算出部8が類似度を算出することができるように、事象抽出部3が抽出した事象を、当該事象に含まれている単語ごとの分散表現ベクトルに基づいて、事象単位の分散表現ベクトルに変換する。文章ベクトル化部7は、事象を分散表現ベクトル化する手法として、事象に含まれている単語の分散表現ベクトルの平均を事象自体の特徴ベクトルとしてもよい。または、文章ベクトル化部7は、より精度よく事象を分散表現ベクトル化する手法として、SCDV(Sparse Composite Document Vectors)を用いた特徴ベクトル平均を用いてもよい。SCDVについては、「Dheeraj Mekala et al.: SCDV : Sparse Composite Document Vectors using soft clustering over distributional representations, Proc of EMNLP, 2017」を参照することができる。
【0037】
類似度算出部8は、文章ベクトル化部7によって分散表現ベクトル化されたトラブル事例300b中の事象と、FT図400a中の事象との類似度を算出する。FT図400a中の事象は、予め形態素解析部1によって形態素解析され、単語ベクトル化部2によって単語ごとに分散化表現ベクトル化され、文章ベクトル化部7によって事象単位で分散化表現ベクトル化されている。分散表現ベクトル化された当該事象は、FT図400a中の各事象と関連付けて記憶部C4に複数の事象D1として記憶されている。類似度算出部8は、分散表現ベクトル化されたトラブル事例300b中の事象と、事象D1とのコサイン類似度に基づいて、トラブル事例300b中の事象と、FT図400a中の事象との類似度を算出する。コサイン類似度とは、ベクトル空間モデルにおいて、文書同士を比較する際に用いられる類似度計算手法である。コサイン類似度がベクトル同士の成す角度の近さを表現するので、事象同士は、コサイン類似度が1に近ければより類似しており、0に近ければより類似していないことになる。
【0038】
統合部9は、類似度算出部8によって所定以上の類似度が算出された事象同士を同様の事象と判定して統合し、当該事象が含まれているFT図400a中の事象群Ebと連結部5によって生成された事象群Eaとを連結する。これにより、例えば、統合部9は、図5Bに示されているFT図400a中の事象群Eb中の事象および図5Aに示されている事象「エンジンが掛からない」を統合することにより、事象群Eaを図5Cに示すようにツリー状の事象群Ecに形成する。
【0039】
図6に示すように、FT図400aは、以上の工程によってFT図400bに更新される。
【0040】
次に、図7のフロー図を参照して、FT図更新装置A1の処理動作について説明する。
【0041】
まず、形態素解析部1が、入力されたトラブル事例300bを形態素解析し、単語ごとに分割する(S700)。
【0042】
次いで、単語ベクトル化部2が、トラブル事例300bに含まれている単語を分散表現ベクトル化する(S701)。
【0043】
次いで、事象抽出部3が、単語ごとに分散表現ベクトル化されたトラブル事例300bから事象を抽出する(S702)。
【0044】
次いで、第1因果関係抽出部4が単語ごとに分散表現ベクトル化されたトラブル事例300bから第1因果関係を抽出する(S703)。
【0045】
次いで、連結部5が第1因果関係に基づいて、抽出された事象同士を連結し、事象群Eaを生成する(S704)。
【0046】
次いで、組入部6が生成された事象群EaをFT図400aに組み入れる(S705)。
【0047】
次いで、文章ベクトル化部7が、抽出された事象を、その含まれている単語ごとの分散表現ベクトルに基づいて、事象単位の分散表現ベクトルに変換する(S706)。
【0048】
次いで、類似度算出部8が、事象D1と抽出され分散表現ベクトル化された事象同士のコサイン類似度に基づいて、当該事象同士の類似度を算出する(S707)。
【0049】
次いで、統合部9が、所定以上の類似度が算出された事象同士を統合する(S708)。
【0050】
以上のように、FT図更新装置A1は、新たなトラブル事象が発生した場合に、トラブル事例から直接的に新たな事象をFT図400aに組み入れることにより、FT図400aを更新する。
【0051】
<第2実施形態>
<トラブルシューティング用フロー図更新装置>
次に、本発明に係るFT図更新装置A1を備えたトラブルシューティング用フロー図更新装置(以下、単に「フロー図更新装置」という)A2の一実施形態について、図8図13を参照して説明する。なお、コンピュータCおよびフロー図更新装置A2が備えているFT図更新装置A1の各構成のうち既に説明したものについては、同様の参照符号を付してそれらの詳細な説明を省略する。また、トラブルシューティング用フロー図(以下、単に「フロー図」という)500a(図10参照)は、FT図400aの基本事象に処置を連結させた図のことである。したがって、フロー図500aは、FT図400aを含んでおり、フロー図500a中の事象とFT図400a中の事象とは同義である。
【0052】
図8に示すように、本実施形態に係るコンピュータCは、フロー図更新プログラムP2によって、作業機械に係る通信ログ301が入力されるとフロー図500aを更新するフロー図更新装置A2として機能するように構成されている。
【0053】
記憶部C4は、OSと、フロー図500aと、フロー図更新プログラムP2と、分散ベクトル表現化されたフロー図500a中の事象D1および処置D2と、を記憶している。
【0054】
フロー図500a中の処置D2は、予め形態素解析部1によって形態素解析され、単語ベクトル化部2によって単語単位で分散化表現ベクトル化され、文章ベクトル化部7によって処置単位で分散化表現ベクトル化されている。分散表現ベクトル化された当該処置は、フロー図500a中の各事象と関連付けて記憶部C4に複数の処置D2として記憶されている。
【0055】
図9に示すように、本実施形態における通信ログ301は、ユーザ同士のチャットのログであるが単なる一例であって、例えば、電子メールのログや、通話における音声を文字に変換したデータログであってもよい。通信ログ301の内容である301aが本実施形態におけるトラブル事例に相当する。トラブル事例301aにおける各事象および処置は、第1実施形態と同様である。
【0056】
図10に、フロー図500aの一例を示す。フロー図500aは、過去の複数のトラブル事例から作成された更新前のフロー図500aである。フロー図500aは、図9のトラブル事例301aに含まれている事象の一部および処置を含んでおらず、図9のトラブル事例301aに含まれている事象の一部および処置が新しいことを示している。
【0057】
図11に示すように、フロー図更新装置A2は、FT図更新装置A1と、処置抽出部11と、第2因果関係抽出部13と、を備える。
【0058】
まず、第1実施形態と同様の手法で、形態素解析部1が、トラブル事例301aを形態素解析して単語ごとに分割し(S1200)、単語ベクトル化部2が、それら単語をそれぞれ分散表現ベクトル化する(S1201)。次いで、第1実施形態と同様の手法で、単語ごとに分散表現ベクトル化されたトラブル事例301aから、事象抽出部3が事象を抽出し(S1202)、第1因果関係抽出部4が第1因果関係を抽出する(S1203)。
【0059】
次いで、処置抽出部11は、単語ごとに分散表現ベクトル化されたトラブル事例301aから処置を抽出する(S1204)。処置抽出部11は、トラブル事例301aが入力されると、当該トラブル事例301aに含まれている処置を抽出するように教師データを用いて機械学習された学習済み第5ニューラルネットワーク(以下、単に「第5NN」という)110を有してもよい。この場合、教師データは、入力データが過去の複数のトラブル事例であり、正解データが過去のトラブル事例ごとに含まれている処置である。この教師データが、本発明の「第4教師データ」に相当する。また、この場合、機械学習に使用される教師データは、単語ベクトル化部2によって予め分散表現ベクトル化されていることが好ましい。第5NN110は、ディープラーニングを利用し、かつ、畳み込みニューラルネットワークもしくは再帰型ニューラルネットワークまたはその両方を利用したものであってもよい。また、第5NN110は、複数のニューラルネットワークから構成されアンサンブル学習されたものであってもよい。
【0060】
次いで、第2因果関係抽出部13は、単語ごとに分散表現ベクトル化されたトラブル事例301aから、トラブル事例301aの処置と当該処置に対応する事象との因果関係(以下、「第2因果関係」という)を抽出する(S1205)。第2因果関係抽出部13は、トラブル事例301aが入力されると、第2因果関係を抽出するように教師データを用いて機械学習された学習済み第4ニューラルネットワーク(以下、単に「第4NN」という)130を有する。教師データは、入力データが過去の複数の各トラブル事例であり、正解データが入力データに含まれている処置と当該処置に対応する事象との因果関係である。この教師データが、本発明の「第3教師データ」に相当する。また、使用される教師データは、単語ベクトル化部2によって予め分散表現ベクトル化されている方が、機械学習の精度、効率の観点から好ましい。第4NN130は、ディープラーニングを利用し、かつ、畳み込みニューラルネットワークもしくは再帰型ニューラルネットワークまたはその両方を利用したものであってもよい。また、第4NN130は、複数のニューラルネットワークから構成されアンサンブル学習されたものであってもよい。
【0061】
次いで、連結部5は、第1因果関係に基づいて、抽出された事象同士を連結して事象群Eを生成するとともに(S1206)、第2因果関係に基づいて、事象群E中の事象に処置をトップダウン的に連結し(S1207)、処置が連結された事象群Eaを生成する。
【0062】
次いで、組入部6は、生成された事象群Eaをフロー図500aに組み入れる(S1208)。
【0063】
次いで、文章ベクトル化部7が、抽出された事象および処置を、その含まれている単語ごとの分散表現ベクトルに基づいて、事象単位または処置単位の分散表現ベクトルに変換する(S1209)。
【0064】
次いで、類似度算出部8は、事象D1と抽出され分散表現ベクトル化された事象とのコサイン類似度に基づいて、当該事象同士の類似度を算出するとともに、処置D2と抽出され処置単位で分散表現ベクトル化された処置とのコサイン類似度に基づいて、当該処置同士の類似度を算出する(S1210)。
【0065】
統合部9は、所定以上の類似度が算出された事象同士および処置同士を同様の事象または同様の処置と判定し統合して、関連する事象群Eをツリー状に形成する(S1211)。
【0066】
図13は、フロー図更新装置A2によって更新されたフロー図500bを示す。以上のように、フロー図更新装置A2は、トラブル事例301aから直接的にフロー図500aを更新することができる。
【0067】
以上、本発明に係るFT図更新装置A1およびフロー図更新装置A2の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
1 形態素解析部
2 単語ベクトル化部
20 学習済み第2ニューラルネットワーク
3 事象抽出部
30 学習済み第3ニューラルネットワーク
4 第1因果関係抽出部
40 学習済み第1ニューラルネットワーク
5 連結部
6 組入部
7 文章ベクトル化部
8 類似度算出部
9 統合部
11 処置抽出部
110 学習済み第5ニューラルネットワーク
13 第2因果関係抽出部
130 学習済み第4ニューラルネットワーク
300 報告書
300b トラブル事例
301 通信ログ
301a トラブル事例
400a FT図
400b 更新されたFT図
500a トラブルシューティング用フロー図
500b 更新されたトラブルシューティング用フロー図
C コンピュータ
A1 FT図更新装置
A2 トラブルシューティング用フロー図更新装置
【要約】
【課題】作業機械に新たな事象が生じた場合に、FT図またはトラブルシューティング用フロー図を簡易に更新することができる装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】FT図更新装置A1は、作業機械に関するFT図を更新する。FT図更新装置A1は、トラブル事例300bから事象を抽出する事象抽出部3と、トラブル事例300bの事象同士の第1因果関係を抽出する第1因果関係抽出部4と、抽出された第1因果関係に対応する事象をトップダウン的に連結して事象群を生成する連結部5と、生成された事象群をFT図に組み入れる組入部6と、FT図中の事象と抽出された事象との類似度を算出する類似度算出部8と、類似度算出部8によって所定以上の類似度が算出された事象同士を統合し、FT図の事象群と連結部5によって生成された事象群とを連結する統合部9と、を備える。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13