(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667900
(24)【登録日】2020年2月28日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】樹脂封止電気部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 2/10 20060101AFI20200309BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20200309BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20200309BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20200309BHJP
【FI】
H01G2/10 600
H05K5/00 D
H01G2/10 C
H01G4/32 540
H01G13/00 391Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-147131(P2016-147131)
(22)【出願日】2016年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-18922(P2018-18922A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】塩見 裕二
(72)【発明者】
【氏名】野上 栄一
【審査官】
山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−165154(JP,A)
【文献】
特開2000−195748(JP,A)
【文献】
特開2015−103777(JP,A)
【文献】
特開2014−116444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/10
H01G 4/32
H01G 13/00
H05K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに電子部品を収納し樹脂を充填するとともに外部接続端子をケースの側壁に設けられた貫通孔から導出した樹脂封止電気部品であって、
貫通孔からの樹脂を受け止める受け皿を有し、
受け皿の側壁の上端が貫通孔よりも高い位置にあり、
外部接続端子が、貫通孔よりも高い位置に設けられた受け皿の開口部から外部に導出されていることを特徴とする樹脂封止電気部品。
【請求項2】
互いに異極性な外部接続端子同士を重ね合わせ、同一の貫通孔から導出させている請求項1記載の樹脂封止電気部品。
【請求項3】
樹脂を貫通孔よりも高く、且つ受け皿の側壁の上端よりも低い位置まで充填して硬化させる工程を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂封止電気部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケースに電子部品を収納し樹脂を充填してなる樹脂封止電気部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、ケースにコンデンサ素子などの電子部品を収納し樹脂を充填した樹脂封止電気部品において、ケース側壁に外部接続端子と略同形状の貫通孔を設け、この貫通孔から外部接続端子を外部に導出させるといったことは、従来から行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平3−67332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただ、樹脂充填時に、貫通孔と外部接続端子との間の隙間から樹脂が漏れ出す虞がある。そのため、例えば外部接続端子を貫通孔よりも僅かに大きくしたり、隙間をシール材で塞いだりといった対策が採られる。
【0005】
ところが、外部接続端子の数が多い場合や複雑な形状の場合には、製造、組み立てに多くの手間がかかる上、樹脂漏れを確実に防ぐことが困難なこともある。例えば低インダクタンス化を図るために、異極性の外部接続端子同士を絶縁紙を介して重ね合わせている場合は、外部接続端子や絶縁紙の形状に沿った貫通孔を設けること自体が煩雑であり、隙間も生じ易く、樹脂漏れを完全に防ぐことは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂漏れを確実に防止することのできる樹脂封止電気部品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂封止電気部品は、ケース10に電子部品2を収納し樹脂12、13を充填するとともに外部接続端子3b、4b、5b、6bをケース7の側壁8bに設けられた貫通孔10から導出した樹脂封止電気部品1であって、貫通孔10からの樹脂12を受け止める受け皿11を有し、受け皿11の側壁11bの上端が貫通孔10よりも高い位置にあり、外部接続端子3b、4b、5b、6bが、貫通孔10よりも高い位置に設けられた受け皿11の開口部11cから外部に導出されていることを特徴とする。
【0008】
互いに異極性な外部接続端子3b、4b、5b、6b同士を重ね合わせ、同一の貫通孔10から導出させていることが好ましい。
【0009】
本発明の樹脂封止電気部品の製造方法は、樹脂12を貫通孔10よりも高く、且つ受け皿11の側壁11bの上端よりも低い位置まで充填して硬化させる工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂封止電気部品は、貫通孔からの樹脂を受け止める受け皿を有し、受け皿の側壁の上端が貫通孔よりも高い位置にあり、貫通孔が受け皿の側壁で囲まれており、外部接続端子が、貫通孔よりも高い位置に設けられた受け皿の開口部から外部に導出されているため、貫通孔からの樹脂を受け皿で受け止めつつ、樹脂によって貫通孔を閉塞することができる。そのため、側壁に貫通孔を設けていても樹脂漏れを確実に防止することができる。また、外部接続端子の形状に沿って貫通孔を設ける必要も無いため、製造や組み立ても簡単である。
【0011】
また、互いに異極性な外部接続端子同士を重ね合わせ、同一の貫通孔から導出させる場合であっても、受け皿によって樹脂が受け止められるため、樹脂漏れを確実に防止することができる。
【0012】
本発明の樹脂封止電気部品の製造方法は、樹脂を貫通孔よりも高く、且つ受け皿の側壁の上端よりも低い位置まで充填して硬化させる工程を備えているため、貫通孔を確実に塞ぐことができ、貫通孔からの樹脂漏れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の一実施形態に係る樹脂封止電気部品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明の樹脂封止電気部品の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明の樹脂封止電気部品1は、
図1〜
図3に示すように、電子部品2と、電子部品2を外部機器に接続するための電極板3、4、5、6と、電子部品2と電極板3、4、5、6とを収納するケース7と、ケース7に充填され電子部品2や電極板3、4、5、6をモールドする樹脂12、13とを備えている。以下、各構成部品について説明する。なお、説明において「上下」の概念は、製造時、より具体的には樹脂充填時におけるものであって、必ずしも使用時の上下を規定するものではない。
【0015】
電子部品2は、例えば絶縁性のフィルム上に金属を蒸着した金属化フィルムを巻回することでなるフィルムコンデンサであって、軸方向両端面に金属を溶射してなる電極部2a、2bがそれぞれ形成されている。なお、電子部品2としてはフィルムコンデンサに限らず、種々のコンデンサを用いても良いし、また、コンデンサに限るものでもなく、抵抗やコイルなど種々の電子部品を用いても良い。
【0016】
電極板3は、例えば銅やアルミ等の導電性の金属板をプレス成形することでなる。具体的には、電子部品2の電極部2aとの接続に供する基部3aと、外部機器との接続に供される外部接続端子部3bとを備えている。基部3aは、
図2に示すように、電子部品2の電極部2aと対向する水平部3cと、水平部3cの一辺から電子部品2の側面に沿って延出された垂直部3dとを備えており、側面視略L字状となっている。なお、基部3aには電子部品2との接続に供する舌状の接続片3e(
図3参照)が設けられている。外部接続端子部3bは、基部3aの垂直部3dの端部から水平方向に延設された水平部3fと、水平部3fの先端から上方に延びる垂直部3gとからなり、側面視形状は略L字状とされている。
【0017】
本実施形態では、上記構成の電極板を4枚使用している。具体的には、
図3に示すように、5つの電子部品2を1つと4つにグループ分けし、グループ毎に陽極用の電極板と陰極用の電極板とを使用している。なお、いずれの電極板3、4、5、6も基部と外部接続端子部とからなることから、同添え字を付し、詳細な説明は省略する。
【0018】
ケース7は、
図3に示すように、ケース本体8と、ケース本体8と一体に設けられた受け皿11とを備えている。
【0019】
ケース本体8は中空直方体状であって、平面視矩形状のケース底部8aと、このケース底部8aの四辺からそれぞれ立設されたケース側壁部8bとから構成されている。なお、ケース底部8aと対向する面(上面側)には開口部8cが設けられている。
【0020】
4つのケース側壁部8bのうち、1つのケース側壁部8bには、上端から下方に向かって側面視矩形状の切欠8dが設けられている。また、この切欠8dには平面視矩形状の仕切り板9が取り付けられる。この仕切り板9は、水平方向の長さが切欠8dと同じであるが、垂直方向の長さは切欠8dよりも短い。そのため、ケース側壁部8bの上端と仕切り板9の上端とを合わせるようにして、仕切り板9を切欠8dに取り付ければ、切欠8dの下端上面と仕切り板9の下端との間に、ケース本体8の内外を連通する貫通孔10が形成されるようになっている(
図2参照)。このように形成された貫通孔10は、側面視略矩形状であって、貫通孔10を通る外部接続端子部3b、4b、5b、6bの形状とは異なっており、貫通孔10を形成する内周面と外部接続端子部3b、4b、5b、6bとの間には、樹脂12がケース本体8外に自由に流れ出ることができる程度の比較的大きな隙間(流路)が形成される。
【0021】
受け皿11は、貫通孔10からケース本体8の外に流れ出ようとする樹脂12を受け止めるためのものであって、貫通孔10の下端から水平方向に延出された平面視矩形状の底部11aと、底部11aの四辺のうち、ケース側壁部8b側の一辺を除く三辺から、その上端が貫通孔10よりも高い位置に位置するようにして立設された側壁部11bとから構成されている。底部11aと側壁部11bには、外部と連通する孔は一切設けられてはいない。また、この受け皿11は、底部11aと対向する面(上面側)に、外部接続端子部3b、4b、5b、6bを外部に導出するための開口部11cが設けられている。なお、この状態は、上面と側面の1つにそれぞれ開口を有する中空直方体状の受け皿11を、貫通孔10の周りを囲うようにしてケース本体8に取り付けたともいえる。
【0022】
このようなケース7は、例えば合成樹脂を一体成型することで製造される。ただ、金属板を加工して製造しても良い。また、ケース本体8と受け皿11とを別体で構成し、接着又は溶接などによって一体化するようにしても良い。ケース7内に充填される樹脂12、13は、例えばエポキシ樹脂である。ただ、これに限らず、ウレタン樹脂等、公知の種々の樹脂を使用可能である。
【0023】
次に、樹脂封止電気部品1の製造方法について説明する。まず、電子部品2に電極板3、4、5、6を接続する。この際、互いに異極性となる外部接続端子部(3bと4b、5bと6b)同士を、絶縁紙などの絶縁体14を介して重ね合わせておく。このように構成することで、外部接続端子部(3bと4b、5bと6b)間で磁束を打ち消し合わせることができ、低インダクタンス化を図ることができる。
【0024】
次いで、これら一体となった電子部品2と電極板3、4、5、6とをケース7内に収納する。この際、外部接続端子部3b、4b、5b、6bと絶縁体14とを切欠8dから受け皿11側に位置させるとともに、外部接続端子部の垂直部3g、4g、5g、6gの先端を、受け皿11の上面の開口部11cから外方に導出させる。
【0025】
次いで、切欠8dに仕切り板9を接着剤等で取り付ける。これにより貫通孔10が形成され、絶縁体14を介して重なり合った外部接続端子部3b、4b、5b、6bが貫通孔10からケース7の外部に導出されるといった状態が作り出される。なお、ケース7と仕切り板9とを予め接合し、あるいは一体成形したものに電子部品2や電極板3、4、5、6を収容しても良い。
【0026】
次いで、ケース本体8内に樹脂12、13を充填する。樹脂は1度に充填するのではなく、少なくとも2回に分けて充填する。具体的には、先行樹脂12を貫通孔10よりも高く、且つ受け皿11の側壁部11bの上端よりも低い位置まで充填して硬化させる工程(先行樹脂12による貫通孔閉塞工程)を設ける(
図2参照)。このような工程を経れば、先行樹脂12がケース7外に漏れ出すことは無い。また、樹脂硬化後は、先行樹脂12によって貫通孔10が塞がれているため、以後、後続樹脂13をケース本体8内に、受け皿11の側壁部11bの上端よりも高い位置まで充填しても、受け皿11から後続樹脂13が溢れることもない。本実施形態では、電極板の基部3a、4a、5a、6aや電子部品2が樹脂面下に位置するまで後続樹脂13を充填(樹脂モールド)し、製造を完了する。
【0027】
このように本発明の樹脂封止電気部品では、低インダクタンス化を図りながら、樹脂漏れを確実に防止することができる。また、外部接続端子部3b、4b、5b、6bや絶縁体14の形状に合わせて貫通孔10を設ける必要が無いため、製造も簡単である。
【0028】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施形態では電極板3、4、5、6を用いていたが、電子部品2自体が外部接続端子部を有する場合は電極板を省略しても良い。また、仕切り板9に頼らず、ケース側壁部8bに直接、貫通孔10を設けるようにしても良い。また、貫通孔10は1つに限らず複数設けても良い。また、受け皿11についても複数設けても良い。また、外部接続端子部の垂直部3g、4g、5g、6gの先端は、少なくとも貫通孔10よりも上方に位置していれば、受け皿11の側壁部11bの上端よりも下方に位置していても良い。この場合であっても、樹脂12から外部に導出されることになるため、外部機器との接続は可能である。また、貫通孔10よりも上方であって、先行樹脂12よりも上方に位置するのであれば、受け皿11の側壁11bに貫通孔を設けても良い。この場合、外部接続端子部を横方向に延出することができる。受け皿11の側壁11bの上端は、ケース側壁部8bの上端よりも下方に位置していたが、同じ高さとしても良い。
【符号の説明】
【0029】
1・・樹脂封止電気部品
2・・電子部品
2a、2b・・電極部
3、4、5、6・・電極板
3a、4a、5a、6a・・基部
3b、4b、5b、6b・・外部接続端子部
3c、4c、5c、6c・・基部の水平部
3d、4d、5d、6d・・基部の垂直部
3e、4e、5e、6e・・接続片
3f、4f、5f、6f・・外部接続端子部の水平部
3g、4g、5g、6g・・外部接続端子部の垂直部
7・・ケース
8・・ケース本体
8a・・ケース底部
8b・・ケース側壁部
8c・・開口部
8d・・切欠
9・・仕切り板
10・・貫通孔
11・・受け皿
11a・・底部
11b・・側壁部
11c・・開口部
12・・先行樹脂
13・・後続樹脂
14・・絶縁体