(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6667949
(24)【登録日】2020年2月28日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 8/00 20060101AFI20200309BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20200309BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20200309BHJP
B65F 3/00 20060101ALI20200309BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20200309BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20200309BHJP
【FI】
B60K8/00
B60K1/04 Z
B60P3/00 Q
B65F3/00 L
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
H01M8/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-8411(P2016-8411)
(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公開番号】特開2017-128202(P2017-128202A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年10月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社日刊工業新聞社が日刊工業新聞の平成27年11月4日付第27面にて,また経済産業省が平成27年11月11日に第5回水素・燃料電池戦略協議会事務局提出資料において,山浦卓也等が発明した燃料電池ゴミ収集車の概要について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山浦 卓也
(72)【発明者】
【氏名】植村 武仁
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/123040(WO,A1)
【文献】
特開2014−154430(JP,A)
【文献】
特開2015−30331(JP,A)
【文献】
特開2004−168151(JP,A)
【文献】
特開2013−230725(JP,A)
【文献】
特開2014−122096(JP,A)
【文献】
特開2009−286252(JP,A)
【文献】
磯部良治,井原雄人,山浦卓也,染谷正義,紙屋雄史,水素循環型社会実現に向けた燃料電池ゴミ収集車の開発に関する研究(第1報),第37回 全国都市清掃研究・事例発表会 講演論文集,日本,全国都市清掃会議,2015年12月22日,pp.117-119
【文献】
フラットフィールド、燃料電池ゴミ収集車開発へ,日刊工業新聞,日本,2015年11月 4日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 8/00, 1/04,
B60P 3/00,
B65F 3/00,
H01M 8/00, 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台と、前記車台上に設けられた運転室と、前記車台に設けられた作業装置と、前記作業装置を駆動させる電動モータと、前記電動モータの駆動用の電力を発電する燃料電池ユニットと、を備え、
前記燃料電池ユニットは、水素と空気の供給により発電する燃料電池と、前記燃料電池へ供給する水素を貯留する水素タンクと、前記水素タンクと前記燃料電池とをつなぐ水素供給管と、前記燃料電池と前記水素タンクと前記水素供給管とを内部に収納すると共に車外に露出した収納ケースと、を有し、
前記収納ケースの天井壁には、前記収納ケースの内側で漏れた水素を前記収納ケースの外側へ逃がすベント部が設けられ、
前記水素供給管には、非常時に前記燃料電池へ供給する水素の量を調整する開放弁が介設され、
前記開放弁の操作部は収納ケースの側壁に露出する一方、前記開放弁を開いた際には、水素は前記収納ケースの内部空間に逃がされるように構成されている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記燃料電池ユニットは、前記運転室の後方かつ車両前後方向中央部の前記車台上に設けられている請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記燃料電池で発電された電力にて蓄電されると共に前記電動モータに電力を供給する蓄電装置を備え、
前記蓄電装置は、前記収納ケースの外部に配設されている請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記収納ケースの壁面には、前記水素タンクに水素を充填するための充填口が設けられ、
前記充填口と前記水素タンクとをつなぐ水素充填管が、前記収納ケースの内部に収納されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記収納ケースの壁面には、水素検知センサが設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項6】
前記電動モータは、前記運転室の下方に配設されて、前記作業装置の駆動源と車両走行用の駆動源とを兼用している請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車台に設けられた作業装置と、作業装置を駆動させる電動モータとを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両エンジンと、車台に設けられた作業装置と、作業装置を駆動させる電動モータとを備えた作業車両であって、作業装置が油圧アクチュエータと油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプとを有し、この油圧ポンプを駆動する動力源を車両エンジン又は電動モータに切換可能にしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の作業車両は、車両エンジンと電動モータの何れも走行駆動源とし得るハイブリッド式の作業車両であり、車輪を車両エンジンで走行駆動しているときに電動モータがモータ軸の空回りに伴い起電力を発生し得るので、この起電力を車両搭載の蓄電装置に充電可能となっている。そして、蓄電装置に蓄えられた電力は、走行アシストに使用される他、車両を停止させ車両エンジンも停止させた状態で作業装置の油圧ポンプを電動モータにて駆動させる場合に使用される。
電動モータで作業装置の油圧ポンプを駆動させれば、車両エンジンで油圧ポンプを駆動させる場合と比較して騒音を低減し排気ガスを発生させないので環境に優しい。
【0003】
しかしながら、特許文献1のような従来の作業車両では、走行中に蓄電装置に蓄電するために車両エンジンを駆動させる必要があり、蓄電の際には騒音や排気ガスが発生してしまうので、環境に優しい作業車両という観点では改善の余地があった。
一方、乗用車の業界においては、近年、走行用電動モータと燃料電池と蓄電装置とを備える燃料電池搭載車両の開発が進んでいる(例えば、特許文献2参照)。
この燃料電池搭載車両では、燃料電池がフロントシート及びリアシートのいずれか一方の下方領域に集約して配置され、蓄電装置がその他方の下方領域に配置されている。特許文献2のような燃料電池搭載車両では、燃料電池で発電された電力に基づいて走行用電動モータを駆動するので、走行の際に排気ガスが発生しない。また、走行中に燃料電池で発電された電力を蓄電装置に蓄えることができ、蓄電装置への蓄電の際に排気ガスが発生しない。これにより、燃料電池搭載車両は環境に優しい車両だといえるので、作業車両に燃料電池を適用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−122096号公報
【特許文献2】特開2007−186200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業車両は乗用車と異なり、人の乗車のためのスペースは小さい一方、作業装置の搭載スペースは大きいので、燃料電池や水素タンク等の水素関連機器を安全に配置するためには乗用車と全く異なる配置の仕方が必要となる。例えば、一般に作業車両は、走行部分をシャシメーカーが製造する一方、作業装置の部分を架装メーカーが製造し、両方の部分を合わせて完成品となるので、取り扱いが難しい水素関連機器をどちらのメーカーにとっても容易に配置できるようにする必要がある。また、作業装置は積載物の積み込み、位置移動、下ろし等を行うために使用されるので、積載物が作業装置の各部に接触することもあるが、その際、水素関連機器に損傷を与えないようにする必要がある。
【0006】
そこで、本発明は燃料電池等の水素関連機器を容易かつ安全に搭載してより環境に優しい作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、車台と、前記車台上に設けられた運転室と、前記車台に設けられた作業装置と、前記作業装置を駆動させる電動モータと、前記電動モータの駆動用の電力を発電する燃料電池ユニットと、を備え、前記燃料電池ユニットは、水素と空気の供給により発電する燃料電池と、前記燃料電池へ供給する水素を貯留する水素タンクと、前記水素タンクと前記燃料電池とをつなぐ水素供給管と、前記燃料電池と前記水素タンクと前記水素供給管とを内部に収納する収納ケースと、を有する。
【0008】
第1の発明によれば、作業装置を駆動させる電動モータの電力を燃料電池により発電するので、従来の作業車両のように発電に車両エンジンを必要とすることがない。即ち、発電時には車両エンジンと比較して騒音が低減されると共に排気ガスが発生することがないので、環境に優しい作業車両にできる。
また、燃料電池ユニットは、収納ケース内に燃料電池と水素タンクとそれらをつなぐ水素供給管とをまとめて収納しているので、燃料電池や水素タンク、水素供給管から水素が漏れ出たとしても収納ケース内に漏れ出た水素の行く先を限定することができる。これにより、収納ケース内でどの水素関連機器から漏れが発生したとしても、その事態を検知しやすくできる。また、収納ケースの外部へ放出する水素の時間的・場所的な調整も容易に行うことができるので安全性に優れる。また、収納ケース内に漏れ出た水素の行く先が限定されるので、水素漏れによる影響を他の機器に及ぼすのを最小限にすることができる。
また、取り扱いが難しい燃料電池等の水素関連機器が収納ケース内にまとめられているので、燃料電池ユニットから外部へ出る配管、配線は少なくて済む。これにより、燃料電池や水素タンクを車台の様々なところに設ける場合と比較して、シャシメーカーや架装メーカーが車台に燃料電池ユニットを取り付ける製造工数を低減することができる。
また、収納ケース内に燃料電池等の水素関連機器がまとめて収納されているので、作業装置を使用する際に水素関連機器に積載物等が接触することがなく、水素関連機器に損傷を与えないようにできる。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、
前記燃料電池ユニットは、前記運転室の後方かつ車両前後方向中央部の前記車台上に設けられている。
【0010】
第2の発明によれば、燃料電池ユニットは、車両の重心近くに位置することができるので、従来と同様の作業装置を車台に設けたとしても前後左右、上下の重量バランスが大きくずれることがない。これにより、重量バランスのために特別な構造の作業装置を製造する必要がなく、製造容易な作業車両にできる。
【0011】
第3発明では、第1又は第2の発明において、前記燃料電池で発電された電力にて蓄電されると共に前記電動モータに電力を供給する蓄電装置を備え、前記蓄電装置は、前記収納ケースの外部に配設されている。
【0012】
第3の発明によれば、走行中に燃料電池で発電した電力を蓄電装置に蓄えることができ、その蓄電装置への蓄電の際に排気ガスが発生しない。これにより、環境に優しい作業車両とすることができる。
また、蓄電装置を燃料電池ユニットの収納ケースの外部に配設したので、水素が収納ケース内で漏れた等の燃料電池ユニットのトラブルが発生したとしてもその影響が蓄電装置に及ぶのを防ぐことができる。これにより、作業装置の電動モータによる駆動可能な時間をより多く確保することができる。
【0013】
第4の発明では、第1〜第3のいずれか一つの発明において、前記収納ケースの壁面には、前記水素タンクに水素を充填するための充填口が設けられ、前記充填口と前記水素タンクとをつなぐ水素充填管が、前記収納ケースの内部に収納されている。
【0014】
第4の発明によれば、充填口と水素タンクとをつなぐ水素充填管が収納ケースの外部に露出しないので、作業装置が積載物の積み込み、位置移動、下ろし等を行ったとしても、積載物が水素充填管に接触することがない。これにより、水素充填管の損傷を防ぐことができるので、安全性に優れる。また、水素充填管の一部から水素が漏れたとしても他の機器への影響を防ぐことができるので、安全性に優れる。
【0015】
第5の発明では、第1〜第4のいずれか一つの発明において、前記収納ケースの壁面には、水素検知センサが設けられている。
【0016】
第5の発明によれば、収納ケース内で水素が漏れた際に早期にそれを検知することができる。これにより、大量の水素漏れが発生する前に水素タンクの容器元弁を止める等の対策をとることができ、安全性に優れる。
【0017】
第6の発明では、第1〜第5のいずれか一つの発明において、前記燃料電池は、前記収納ケースの底部に配設されると共に、前記水素タンクは前記燃料電池の上方に配設され、前記収納ケースの天井壁には、前記収納ケースの内側で漏れた水素を前記収納ケースの外側へ逃がすベント部が設けられている。
【0018】
第6の発明によれば、収納ケース内において、燃料電池ユニットを底部に配設すると共にその上方に水素タンクを配設することによって、燃料電池で発生する熱により暖められた空気及び水素を自然対流で上方に移動させやくすることができる。これにより、収納ケース内で水素が漏れたとしてもその水素を迅速に収納ケースの天井壁の方へ移動させることができる。そして、天井壁にベント部を設けていることによって、収納ケース内で漏れた水素がスムーズに外部へ排出される。また、天井壁にベント部を設けることによって、作業車両の走行中に走行風がベント部の近傍を通過しやすくなる。これにより、走行中に水素が漏れた場合には、ベント部から外部に排出された水素を迅速に拡散させることができるので、安全性に優れる。
【0019】
第7の発明では、第1〜第6のいずれか一つの発明において、前記電動モータは、前記運転室の下方に配設されて、前記作業装置の駆動源と車両走行用の駆動源とを兼用している。
【0020】
第7の発明によれば、燃料電池で発電された電力を作業装置の駆動のためだけではなく、走行するためにも使用することができる。これにより、排気ガスを常時出すことがなく、環境に優しい作業車両とすることができる。また、電動モータは運転室の下方に配設されるので、従来の作業車両の車両エンジンのスペースを有効活用できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、燃料電池による発電時に排気ガスが発生することがないので、環境に優しい作業車両にできる。
また、燃料電池ユニットは、収納ケース内に燃料電池と水素タンクとそれらをつなぐ水素供給管とをまとめて収納しているので、収納ケース内に漏れ出た水素の行く先を限定することができ、収納ケースの外部へ放出する水素の時間的・場所的な調整を容易に行うことができるので安全性に優れる。
また、取り扱いが難しい燃料電池等の水素関連機器が収納ケース内にまとめられているので、燃料電池ユニットから外部へ出る配管、配線は少なくて済み、車台に燃料電池ユニットを取り付ける製造工数は少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る作業車両としての塵芥収集車の側面図である。
【
図2】本実施形態の塵芥収集車の動力伝達系統を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る作業車両としての塵芥収集車1の側面図を示し、
図2は、塵芥収集車1の動力伝達系統の一例を示す概略説明図を示している。本実施形態の塵芥収集車1は、
図1及び
図2に示すように、車台20と、車台20上の前部に設けられた運転室30と、車台20に設けられた作業装置としての塵芥収集装置40と、塵芥収集装置40を駆動させる電動モータ205と、燃料電池ユニット50と、を備えている。
【0025】
車台20は、前後方向に伸びて左右一対のシャシフレーム201を有する。
塵芥収集装置40は、シャシフレーム201の上面に取り付けられる左右一対のサブフレーム412と、サブフレーム412上に設けられると共にサブフレーム412の後端部を中心に上下回動自在な荷箱としての塵芥収容箱401と、塵芥収容箱401の後方開口部401aに上下回動自在に連設された塵芥投入箱402と、塵芥投入箱402の内部に設けられた塵芥積込機構403とを備えている。
【0026】
塵芥積込機構403は、塵芥投入箱402の塵芥投入口402aを通じて投入された塵芥(積載物)を圧縮して、塵芥収容箱401に積み込むためのものである。塵芥積込機構403は、回転板403aと押込板403bとを有している。回転板403aは、減速機構403cを介して油圧モータ403dにて駆動される。押込板403bは押込シリンダ403eにて駆動される。
塵芥収容箱401に積み込まれた塵芥を排出する場合には、図示省略の昇降シリンダにて塵芥投入箱402を上方回動させた後、ダンプシリンダ404にて塵芥収容箱401を上方回動させるようになっている。
油圧モータ403d、押込シリンダ403e、ダンプシリンダ404及び昇降シリンダは、油圧ポンプ405により作動油タンク406(
図1参照)の作動油がコントロールバルブ409を介して供給されることにより駆動される。
【0027】
油圧ポンプ405は、PTOシャフト209、PTO208(動力取出装置)、トランスミッション207を介して電動モータ205と接続されている。
電動モータ205は、運転室30の下方に配設されて、塵芥収集装置40の駆動源と車両走行用の駆動源とを兼用している。
電動モータ205は、車輪211にトランスミッション207とトルクシャフト210を介して駆動力を付与可能である。
【0028】
本発明の特徴部分である燃料電池ユニット50は、
図1〜3に示すように、電動モータ205の駆動用の電力を発電するものであり、運転室30の後方かつ車両前後方向中央部の車台20上に設けられている。より具体的には、燃料電池ユニット50は、運転室30と塵芥収容箱401との間のサブフレーム412上に設けられている。
燃料電池ユニット50は、収納ケース501と、収納ケース501の内部に配設されると共に水素と空気の供給により発電する燃料電池502と、燃料電池502に空気を供給する空気供給手段としてのブロワ503と、収納ケース501の内部に配設されると共に燃料電池502へ供給する水素を貯留する水素タンク504と、を有する。
燃料電池502は、収納ケース501の底部に配設されると共に、水素タンク504は燃料電池502の上方に配設されている。
【0029】
詳しく説明すると、収納ケース501は6面の壁面を有する直方体状であり、内部に強度を保つためのフレーム枠509が設けられている。フレーム枠509は、最も下に位置して前後一対の下段フレーム509aと、下段フレーム509aの上方に位置して前後一対の第1中段フレーム509bと、第1中段フレーム509bの上方に位置して前後一対の第2中段フレーム509cとを有している。
燃料電池502は、収納ケース501の内部において車幅方向中央に位置すると共に、前後の下段フレーム509aに架設された支持部材526に載置されている。燃料電池502の車幅方向に隣接する位置には、一方側にDCDCコンバータ506が配設され、他方側にブロワ503が配設されている。
【0030】
DCDCコンバータ506は、燃料電池502で発電された電力を、電動モータ205の駆動用電圧に適するように昇圧するものである。
ブロワ503は、収納ケース501の外部に設けられた図示しない車両エアクリーナから空気導入管524を通じて空気を収納ケース501の内部に導入する。また、ブロワ503は空気中の酸素を燃料電池502に空気供給管522を通じて供給し、水素との反応を促進させる。さらに、ブロワ503は収納ケース501内に存在するガスの対流を促進させる効果も有している。
【0031】
水素タンク504は、本実施形態において2個設けられ、その長手方向が車幅方向を向くように収納ケース501内部に配設されている。より具体的には、水素タンク504のうち1個は前後の第1中段フレーム509bに架設された支持部材526に載置され、帯部材525で固定されている。また残りの1個は前後の第2中段フレーム509cに架設された支持部材526に載置され、帯部材525で固定されている。
水素タンク504は、水素供給管521にて燃料電池502に接続されている。
【0032】
水素タンク504と燃料電池502とをつなぐ水素供給管521は、収納ケース501の内部に収納され、この水素供給管521には、
図4に示すように、水素タンク504に近い順に、容器元弁511、高圧側圧力センサ512、高圧側フィルタ513、レギュレータ514、低圧側圧力センサ515、リリーフ弁516、手動開放弁517、低圧側ストップ弁518、低圧側フィルタ520、流量計519が介設されている。
収納ケース501内に燃料電池502と水素タンク504とそれらをつなぐ水素供給管521とをまとめて収納しているので、燃料電池502や水素タンク504、水素供給管521から水素が漏れ出たとしても収納ケース501内に留めることができる。
【0033】
容器元弁511は電磁弁であり、2個の水素タンク504のそれぞれに対応して設けられている。そして水素タンク504いずれか又は両方に異常が生じたときに、異常が生じた方を閉じて水素の供給を停止する。また、容器元弁511は、水素を外部から水素タンク504に充填する際にも閉じられる。
【0034】
レギュレータ514は、70MPaの高圧で水素タンク504に充填されている水素を燃料電池502に供給するのに適した低圧に調整するものである。燃料電池502の前後で適切に圧力が調整されているかどうかの判断は、高圧側圧力センサ512と低圧側圧力センサ515の検知結果が利用される。
【0035】
リリーフ弁516は、トラブルが生じて水素供給管521の管内圧力が異常に高まった際に、収納ケース501の内部空間に水素を逃がして管内圧力を下げることにより、水素供給管521が内部から破壊されるのを防ぐ。
【0036】
手動開放弁517は、作業員が非常時に燃料電池502へ供給する水素の量を手動で調整可能にするためのものである。手動開放弁517の操作部517aは収納ケース501の側壁501aに露出しており(
図1参照)、この操作部517aにより、作業員は収納ケース501の外部から手動開放弁517を操作可能となっている。手動開放弁517を開いた際には、水素は収納ケース501の内部空間に逃がされるようになっている。
低圧側ストップ弁518は、燃料電池502への水素の供給と停止とを任意に行って、燃料電池502による発電の調整を行うために設けられている。
【0037】
また、収納ケース501の車幅方向一方側の側壁501aの壁面には、水素タンク504に水素を充填するための充填口505が設けられている。充填口505は、収納ケース501の内部の水素充填管523を介して水素供給管521と接続されている。その接続箇所は、各水素タンク504に対応する2箇所であり、水素供給管521上に設けられた容器元弁511よりも水素タンク504に近い位置である。また、水素充填管523には、逆止弁510が介設されており、水素が充填口505から漏れ出るのを防いでいる。充填口505と水素タンク504とをつなぐ水素充填管523は、全て収納ケース501の内部に収納されている。
【0038】
また、
図3及び
図4に示すように、収納ケース501の天井壁501bの車幅方向中央部壁面には、水素検知センサ507が設けられている。この水素検知センサ507は、燃料電池502や水素タンク504や水素供給管521等から水素が漏れた場合に、なるべく早い段階で水素の漏れを検知して、容器元弁511や低圧側ストップ弁518の開閉を行ったりするために設けられている。
【0039】
また、収納ケース501の天井壁501bの車幅方向両端部には、収納ケース501の内側で漏れた水素を収納ケース501の外側へ逃がすベント部508が設けられている。
収納ケース501は、このベント部508以外は密閉状に形成されているが、収納ケース501内で漏れた水素はスムーズに外部へ排出される。また、天井壁501bにベント部508を設けることによって、作業車両の走行中に走行風がベント部508の近傍を通過しやすくなっている。これにより、走行中に水素が漏れた場合には、ベント部から外部に排出された水素が迅速に拡散される。
【0040】
次に、本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、燃料電池502で発電された電力にて蓄電されると共に電動モータ205に電力を供給する蓄電装置203を備えている。この蓄電装置203は、リチウムイオンバッテリから成り、燃料電池ユニット50の外部に配設されている。より具体的には、蓄電装置203は、塵芥収集車1の側面視において燃料電池ユニット50の直下に位置するように、サブフレーム412の側面に設けられた図示しないブラケットにより支持されている。車両重心近くに燃料電池ユニット50と蓄電装置203とをまとめていることにより重量バランスがよい。
【0041】
蓄電装置203には、燃料電池502の発電電力がDCDCコンバータ506(
図3参照)により昇圧されて蓄電されるようになっている。
また、蓄電装置203は、電動モータ205に付設されたインバータ204と電気的に接続されており、インバータ204は、電動モータ205と電気的に接続されている。これにより、蓄電装置203に蓄えられた電力がインバータ204を介して電動モータ205に供給され、電動モータ205が駆動される。
【0042】
インバータ204や燃料電池ユニット50の制御はシャシ側制御装置206により行われる。シャシ側制御装置206は箱に収納されて、運転室30内の後部に設置されている。
シャシ側制御装置206は、
図2及び
図4に示すように、燃料電池ユニット50に設けられた高圧側圧力センサ512、低圧側圧力センサ515、流量計519、水素検知センサ507等から圧力や流量や水素漏れ等などの情報を受け取り、容器元弁511、低圧側ストップ弁518等の制御を行う。
また、シャシ側制御装置206は、作業装置側制御装置410と制御信号を送受信する。
【0043】
作業装置側制御装置410は、塵芥収集装置40の動作制御を行うものであり、コントロールバルブ409に制御信号を送る。
作業装置側制御装置410の電源はシャシフレーム201にブラケットを介して取り付けられた補機用バッテリ411である。この補機用バッテリ411は、図示しないエアーコンディショナや各種ランプの電源にもなるが、作業装置側制御装置410自身は燃料電池ユニット50から電力を供給されるようになっている。
また、作業装置側制御装置410は、運転室30内に設けられた前部操作盤407や塵芥投入箱402に設けられた後部操作盤408からの操作信号を受け付けるようになっている。
【0044】
前部操作盤407には、図示省略の動力切換スイッチが設けられており、この動力切換スイッチを操作することにより、塵芥収集車1を走行させるか、塵芥収集装置40を駆動させるかが選択される。塵芥収集車1を走行させる場合には、PTO208は切断状態となり、電動モータ205が蓄電装置203の電力により駆動されると、その駆動力はトランスミッション207、トルクシャフト210を介して車輪211に伝達される。一方、塵芥収集装置40を駆動させる場合には、PTO208が接合状態となると共にトランスミッション207からトルクシャフト210への動力伝達が切断状態となる。これにより、電動モータ205が蓄電装置203の電力により駆動されると、その駆動力はトランスミッション207、PTOシャフト209を介して油圧ポンプ405に伝達される。
【0045】
また、前部操作盤407及び後部操作盤408には、塵芥積込機構403の操作スイッチが設けられている。作業員がこの操作スイッチを操作することにより、塵芥積込機構403が動作し、塵芥の積み込みが行われる。
【0046】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態では、作業車両として塵芥収集車1を例示したが、本発明はこれに限らず、脱着車、高所作業車、車両運搬車等の他の作業車両に適用することができる。
また、上記実施形態では、燃料電池ユニット50の燃料電池502で発電された電力を走行と塵芥収集装置40の駆動との両方に利用したが、本発明はこれに限らず、燃料電池ユニットの燃料電池で発電された電力を作業装置の駆動のみに利用してもよい。
また、上記実施形態では、電動モータ205は、運転室30の下方に配設されて、塵芥収集装置40の駆動源と車両走行用の駆動源とを兼用していたが、本発明はこれに限らず、走行用と作業装置の駆動用とに別個の電動モータを設けてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、充填口505を収納ケース501の車幅方向一方側の側壁501aの壁面に設けたが、本発明はこれに限らず、充填口を収納ケースの底面側や前面側や後面側の壁面に設けてもよい。
また、上記実施形態では、水素検知センサ507を収納ケース501の天井壁501bに設けたが、本発明はこれに限らず、水素検知センサを収納ケースの側面に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明は、車台上に設けられた運転室と、車台に設けられた作業装置と、作業装置を駆動させる電動モータとを備えた塵芥収集車その他の作業車両に対し燃料電池を搭載する場合について有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 塵芥収集車(作業車両)
20 車台
203 蓄電装置
30 運転室
40 塵芥収集装置(作業装置)
401 塵芥収容箱
402 塵芥投入箱
50 燃料電池ユニット
501 収納ケース
501b 天井壁
502 燃料電池
504 水素タンク
505 充填口
507 水素検知センサ
508 ベント部
521 水素供給管
523 水素充填管