【課題を解決するための手段】
【0020】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
【0021】
本発明の一態様によれば、本発明は、IGSF1(Immunoglobulin Superfamily member 1、NM_001555.2)遺伝子を含む、MET阻害剤に対する感受性予測用バイオマーカーを提供する。
【0022】
本発明の最っとも大きな特徴は、IGSF1遺伝子及びその産物であるタンパク質をバイオマーカーとして用いて、MET阻害剤に対する感受性を予測することにある。
【0023】
本発明のバイオマーカーは、MET阻害剤である抗ガン剤に対する感受性の指標になり得、抗ガン剤に対する感受性マーカーとしての正確性及び信頼度も卓越しているので、ガンの発生、発展及び/又は転移の治療に利用され得る。
【0024】
本明細書中で使用されている用語“感受性”は、個々の患者のガンに対して特定の薬物が効果を現わすか否かを意味している。
【0025】
例えば、前記特定の薬物は主として抗ガン剤であり、これらの抗ガン剤には、ガンの種類に応じて効果を現わす場合と、効果を現わさない場合とがある。また、有効なものと認められている種類のガンであっても、個々の患者に応じて効果を現わす場合と、効果を現わさない場合とがあることが知られている。このような個々の患者のガンに対して抗ガン剤が効果を現わすか否かを、抗ガン剤感受性であると言う。よって、本発明に従って、治療の開始前に効果を期待し得る患者(反応者)と、効果を期待し得ない患者(無反応者)とを予測し得ると、有効性及び安全性の高い化学療法を実現することができる。
【0026】
本明細書中で使用されている用語“予測”は、本願において対象患者が薬物又は薬物セットに対して有利に又は不利に反応する可能性を称するのに使用される。一実施の態様において、予測はこのような反応の程度に関するものである。例えば、予測は、患者が処置後、例えば特定の治療剤の処置及び/又は原発性腫瘍の手術的除去及び/又は特定期間の間の化学療法後に、ガンが再発することなく生存するか否か、及び/又は生存確率に関するものである。本発明の予測は、大腸ガン患者に対する一番適切な治療方式を選択することで、治療を決める上で臨床的に使用され得る。本発明の予測は、患者が治療処置、例えば与えられた治療的な処置、例えば与えられた治療剤又は組合物の投与、手術的介入、化学療法などに有利に反応するか否か、又は、治療的処置後に患者の長期生存が可能であるかどうかを予測する上で有用な道具である。
【0027】
また、本発明の望ましい具現例によれば、前記METは、HGF(Hepatocyte Growth Factor)-非依存的(independent)に活性化されたものである。
【0028】
MET活性化は、そのリガンドである肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor; HGF)と結合して、細胞内シグナル伝逹を促進するHGF-依存的メカニズム; 或いは、MET遺伝子の増幅又はMET遺伝子の突然変異のようなHGF-非依存的メカニズムによって媒介される。本発明のMETは、HGF-非依存的メカニズムによって活性化されたものであって、HGF遺伝子及び/又はその産物であるタンパク質が非発現(発現されない)又は低発現される。
【0029】
また、本発明の望ましい具現例によれば、前記活性化は、IGSF1(Immunoglobulin Superfamily member 1)及びMET(Mesenchymal-Epithelial Transition factor、NM_0011275000.1)遺伝子の同時発現によりMETリン酸化が誘導されたものである。
【0030】
したがって、本発明によれば、本発明のマーカーは、METがHGF-非依存的メカニズムにより活性化される場合、MET阻害剤に対する感受性を予測するものであって、HGFが高発現されるガン細胞に対しては所望の効果が得られない場合に適用することができる。
【0031】
即ち、本発明のバイオマーカーは、HGF遺伝子及び/又はその産物であるタンパク質が非発現又は低発現されるガン細胞又はガンを持つ客体を対象にして、細胞内における前記遺伝子の発現水準を確認する。
【0032】
本発明の他の態様によれば、本発明は、IGSF1(Immunoglobulin Superfamily member 1、NM_001555.2)遺伝子の発現水準; 又は、そのタンパク質の発現水準を測定する製剤を含む、MET阻害剤に対する感受性予測用組成物を提供する。
【0033】
本発明の望ましい具現例によれば、本発明のMETは、HGF-非依存的メカニズムによって活性化されたものであって、HGF遺伝子及び/又はその産物であるタンパク質が非発現又は低発現される。
【0034】
また、本発明の望ましい具現例によれば、前記活性化は、IGSF1(Immunoglobulin Superfamily member 1)及びMET(Mesenchymal-Epithelial Transition factor、NM_001127500.1)遺伝子の同時発現によって METリン酸化が誘導されたものである。
【0035】
したがって、本発明によれば、本発明の組成物は、METがHGF-非依存的メカニズムにより活性化される場合、MET阻害剤に対する感受性を予測するものであって、HGFが高発現されるガン細胞には所望の効果が得られない場合に適用することができる。
【0036】
また、本発明の望ましい具現例によれば、前記MET阻害剤は、ACTH(adrenocorticotropic hormone)生成腫瘍、急性リンパ球性又はリンパ芽球性白血病、急性又は慢性のリンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、膀胱ガン、脳腫瘍、乳ガン、子宮頸ガン、慢性骨髓性白血病、リンパ腫、 子宮内膜症、食道ガン、 膀胱ガン、ユーイング肉腫(Ewing's sarcoma)、舌ガン、ホプキンスリンパ腫、カポジ肉腫、腎ガン、肝(肝臓)ガン、肺ガン、中皮腫、多発性骨髓腫、神経芽細胞腫、非ホプキンスリンパ腫、骨肉腫、卵巣ガン、乳腺ガン、前立腺ガン、膵臓ガン、大腸ガン、ペニスガン、 網膜芽細胞腫(retinoblastoma)、皮膚ガン、胃ガン、甲状腺ガン、子宮ガン、精巣ガン、ウィルムス腫瘍及び栄養膜腫瘍(Trophoblastoma)からなる群より選択された1種以上のガンに対する治療剤である。より望ましくは、ACTH生成腫瘍、急性リンパ球性又はリンパ芽球性白血病、急性又は慢性のリンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、膀胱ガン、脳腫瘍、乳ガン、子宮頸ガン、慢性骨髓性白血病、腸ガン、Tゾーンリンパ腫、子宮内膜症、食道ガン、胆汁膀胱ガン、ユーイング肉腫(Ewing's sarcoma)、舌ガン、ホプキンスリンパ腫、カポジ肉腫、腎ガン、肝(肝臓)ガン、肺ガン、中皮腫、多発性骨髓腫、神経芽細胞腫、 非ホプキンスリンパ腫、骨肉腫、卵巣ガン、神経芽細胞腫、 乳腺ガン、子宮頸ガン、前立腺ガン、膵腸ガン、大腸ガン、ペニスガン、網膜芽細胞腫、皮膚ガン、胃ガン、甲状腺ガン、子宮ガン、精巣ガン、ウィルムス腫瘍、又は栄養膜腫瘍(Trophoblastoma)であり、最も望ましくは、肺ガン又は胃ガンである。
【0037】
本発明において、前記MET阻害剤は抗ガン剤を意味しており、抗ガン効果を現わす限り、如何なるMET阻害剤も適用することができ、望ましくは、抗-MET抗体、誘引 MET受容体、METペプチド拮抗剤、優性(dominant)ネガティブMET突然変異、MET特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイム、及び選択的小分子METキナーゼ抑制剤からなる群より選択された1種以上である。
【0038】
本明細書中において特別な断りがない限り、本明細書中で使用される表現“遺伝子の発現水準; 又はそのタンパク質の発現水準の測定”は、当該試料内で検出しようとする対象を検出することを意味している。本発明においては、その検出しようとする対象は、試料内の当該遺伝子のmRNA及び/又はタンパク質である。つまり、遺伝子の転写産物であるRNA又は遺伝子産物であるタンパク質を検出することで、前記遺伝子の発現有無を確認することができる。
【0039】
RNA又はタンパク質の検出は、通常的には、試料からRNA又はタンパク質を抽出し、その抽出物中のRNA又はタンパク質を検出することで実施することができる。このようなRNA又はタンパク質の検出は、免疫分析学的方法、ハイブリッド化反応及び増幅反応により測定され得るが、それに限定されることなく、当業界において公知になった多様な技術を用いて容易に実施することができる。
【0040】
また、本発明の望ましい具現例によれば、前記遺伝子の発現水準を測定する製剤は、前記遺伝子のmRNAに特異的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド、プライマー対又はプロブを含む。
【0041】
前記mRNAの発現有無を測定する製剤は、前記遺伝子に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、プライマー対、プロブ及びそれらの組合せからなる群より選択される。つまり、核酸の検出は、遺伝子を暗号化する核酸分子、又は前記核酸分子の相補物にハイブリッド化される一つ以上のオリゴヌクレオチドプライマーを使用する増幅反応によリ行われ得る。
【0042】
例えば、プライマーを用いたmRNAの検出は、PCRのような増幅方法を使用して、遺伝子配列を増幅した後、当該分野にて公知の方法で遺伝子増幅の有無を確認することで行われ得る。
【0043】
また、本発明の望ましい具現例によれば、前記タンパク質の発現水準を測定する製剤は、前記タンパク質に特異的に結合する抗体、ペプチド又はヌクレオチドを含む。
【0044】
前記タンパク質の発現水準を測定する製剤は、前記タンパク質に対して特異的に結合する抗体を意味しており、多クロン抗体、単クロン抗体、再組合せ抗体及びそれらの組合せを全て含む。
【0045】
前記抗体は、多クロン抗体、単クロン抗体、再組合せ抗体、並びに、2個の全長軽鎖及び2個の全長重鎖を有する完全な形態だけではなく、さらに、抗体分子の機能的な断片、例えば、Fab、F(ab')、F(ab')2及びFvを全て含む。抗体生産は、本発明の属する分野にて広く公知になった技術を用いて容易に製造することができ、製造されて商業的に販売される抗体を用いることができる。
【0046】
本発明の組成物は、上述した遺伝子の発現有無を測定する製剤のみならず、抗原-抗体複合体の形成を定量的に又は定性的に測定可能にするラベル、免疫学的分析に使用される通常的な道具、試薬などをさらに含むことができる。
【0047】
抗原-抗体複合体の形成を定性的に又は定量的に測定可能にするラベルとしては、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、微小粒子(microparticle)、酸化還元分子及び放射性同位元素などがあり、必ずそれに限定されるものではない。検出ラベルとして利用可能な酵素としては、β-グルクロニダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソキナーゼとGDPase、RNase、グルコースオキシダーゼとルシフェラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ホスホエノールピルビン酸デカルボキシラーゼ、β-ラクタマーゼなどがあり、それに限定されない。蛍光物としては、 フルオレシン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒド、フルオレスカミンなどがあり、それに限定されない。リガンドとしては、ビオチン誘導体などがあり、それに限定されない。発光物としては、アクリジニウムエステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼなどがあり、それに限定されない。微小粒子としては、コロイド金、着色されたラテックスなどがあり、それに限定されない。酸化還元分子としては、フェロセン、ルテニウム錯化合物、ビオロゲン、キノン、Tiイオン、Csイオン、ジイミド、1,4-ベンゾキノン、ハイドロキノン、K
4W(CN)
8、[Os(bpy)
3]
2+、[RU(bpy)
3]
2+、 [MO(CN)
8]
4-などがあり、それに限定されない。放射性同位元素としては、
3H、
14C、
32P、
35S、
36Cl、
51Cr、
57Co、
58Co、
59Fe、
90Y、
125I、
131I、
186Reなどがあり、それに限定されない。
【0048】
前記道具又は試薬の一例として、適合する担体、溶解剤、洗浄剤、緩衝剤、安定化剤などが含まれるが、それに限定されない。標識物質が酵素の場合には、酵素活性を測定し得る基質及び反応停止剤を含むことができる。担体は、可溶性担体、不溶性担体があり、可溶性担体の一例として、当該分野にて公知の生理学的に許容される緩衝液、例えばPBSがあり、不溶性担体の一例として、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサカライド、その他紙、硝子、金属、アガロース及びそれらの組合せであり得る。
【0049】
本発明の組成物は、上述したバイオマーカーを有効成分として含むので、重複する内容は、本明細書があまり複雑になることを避けるために、その記載を省略する。
【0050】
本発明の他の態様によれば、本発明は、前記組成物を含む、MET阻害剤に対する感受性予測用キットを提供する。
【0051】
前記キットには、前記遺伝子の発現; 又は、前記遺伝子のタンパク質の発現水準を測定する製剤のみならず、免疫学的分析に使用される当該分野にて一般的に使用される道具、試薬などが含まれ得る。
【0052】
前記道具又は試薬の一例として、適合する担体、検出可能なシグナルを生成し得る標識物質、発色団(chromophores)、溶解剤、洗浄剤、緩衝剤、安定化剤などが含まれるが、それに限定されない。標識物質が酵素の場合には、酵素活性を測定し得る基質及び反応停止剤を含むことができる。担体は、可溶性担体、不溶性担体があり、可溶性担体の一例として、当該分野にて公知の生理学的に許容される緩衝液、例えばPBSがあり、不溶性担体の一例として、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサカライド、ラテックスに金属をメッキした磁性微粒子のような高分子、その他紙、硝子、金属、アガロース及びそれらの組合せであり得る。
【0053】
本発明のキットは、上述したバイオマーカー及び組成物を構成として含むので、重複する内容は、本明細書があまり複雑になることを避けるために、その記載を省略する。
【0054】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、IGSF1(Immunoglobulin Super family member 1、NM_001555.2)遺伝子の発現; 又は、前記遺伝子のタンパク質の発現或いは活性を抑制する抑制剤を有効成分として含む、対象のMET(Mesenchymal-Epithelial Transition factor)阻害剤に対する感受性増進剤又は感受性増進用組成物を提供する。
【0055】
本発明の望ましい具現例によれば、前記増進剤又は増進用組成物は、MET(Mesenchymal-Epithelial Transition factor、NM_001127500.1)遺伝子の発現; 又は、前記遺伝子のタンパク質の発現或いは活性を抑制する抑制剤をさらに含む。
【0056】
本発明において、前記対象は、HGF(Hepatocyte Growth Factor)-非依存的(independent)にMETが活性化(リン酸化)された場合、MET阻害剤に対する感受性を増進させるものであって、HGF(Hepatocyte Growth Factor)-依存的(independent)にMETが活性化(リン酸化)されたガン細胞には所望の効果が得られない場合に適用することができる。
【0057】
即ち、本発明のIGSF1及び/又はMET遺伝子の発現; 又は、前記遺伝子のタンパク質の発現或いは活性を抑制する抑制剤は、METのリン酸化を減少させ、ガン細胞の移動性及び転移性を減少させて、卓越した抗ガン効果を現わすことができる。
【0058】
また、本発明の望ましい具現例によれば、前記抑制剤は、siRNA(small inter
ference RNA)、shRNA(short hairpin RNA)、miRNA(microRNA)、リボザイム(ribozyme)、DNAzyme、PNA(peptide nucleic acids)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体、アブタマー、天然抽出物及び化学物質からなる群より選択された1種以上である。より望ましくは、前記遺伝子のmRNAに特異的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド、アブタマー、siRNA(small interference RNA)、shRNA(short hairpin RNA)又はmiRNA(microRNA)であり、最も望ましくは、siRNA(small interference RNA)、shRNA(short hairpin RNA)又はmiRNA(microRNA)である。
【0059】
本明細書中で使用されている用語“miRNA(microRNA)”は、mRNAの3'非翻訳領域(UTR)部位との塩基結合を通じて、転写後に抑制者役目をするほぼ22 ntの非翻訳RNAを意味している。miRNAの製造方法としては、特に限定されなく、当業界にて公知の方法を使用することができる。
【0060】
本発明の望ましい具現例によれば、前記miRNA(microRNA)は、配列番号1の塩基配列を含むMiR34a; 又は配列番号2の塩基配列を含むmiR34cである。
【0061】
本明細書中で使用されている用語“siRNA”は、二本鎖のRNAがダイサー(Dicer)により切断されて生成される21~25ヌクレオチドサイズのRNA小片であって、相補的な配列を有するmRNAに特異的に結合して発現を抑制するものを言う。本発明の目的上、mRNAに特異的に結合して前記遺伝子の発現を抑制することを意味している。siRNAは、化学的に又は酵素学的に合成され得る。siRNAの製造方法としては特に限定されることなく、当業界にて公知の方法を使用することができる。
【0062】
本明細書中で使用されている用語“shRNA”は、45〜70ヌクレオチドの長さを有する一本鎖のRNAであって、ターゲット遺伝子siRNAの塩基配列のsenseと相補的なnonsenseとの間に3〜10個の塩基リンカーを連結するオリゴDNAを合成した後、プラスミドベクターにクローニングするか、又はshRNAをレトロウイルスであるレンチウイルス(lentivirus)及びアデノウイルス (adenovirus)に挿入して発現させると、ルーフ(loop)のあるヘアピン(hairpin)構造のshRNA(short hairpin RNA)が作られ、細胞内のダイサーによリsiRNAに転換されて、RNAi効果を現わすことを意味している。shRNA(small hairpin RNA)を含む発現コンストラクト/ベクターは、当該分野にて公知の方法で製造することができる。
【0063】
本発明の望ましい具現例によれば、前記siRNA(small interference RNA)は、配列番号3の塩基配列を含むIGSF1 siRNA、配列番号4の塩基配列を含むIGSF1 siRNA、又は配列番号5の塩基配列を含むMET siRNAであり; 前記shRNA(short hairpin RNA)は、配列番号6の塩基配列を含むIGSF1 shRNA、又は配列番号7の塩基配列を含むMET shRNAである。
【0064】
本発明によれば、ガン細胞のIGSF1遺伝子又はその産物であるタンパク質の発現を、RNAi方法(siRNA、shRNA、microRNA)で抑制させた場合、siRNA濃度-依存的にMETのリン酸化が減少される。
【0065】
また、本発明において、IGSF1及び/又はMET遺伝子、又はその産物であるタンパク質の発現が抑制されたガン細胞は、そのようでないガン細胞に比べて、生存率、移動性及び転移性(浸潤)が顕著に劣れる結果を示す。
【0066】
したがって、これは、IGSF1及び/又はMET遺伝子の発現; 又は、前記遺伝子のタンパク質の発現或いは活性抑制が、MET阻害剤に対するガン細胞の感受性を増進させるということを提示しており、それを基にして本発明は、対象のMET阻害剤に対する卓越した感受性増進の効果を提供する。
【0067】
本発明の感受性増進剤又は増進用組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができる。本発明に使用され得る薬学的に許容可能な担体は、通常的な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、その他添加剤、例えば、安定剤、緩和剤、乳化剤などを選択して使用することができる。例えば、賦形剤として、微結晶セルロース、乳糖(ラクトース)、低置換度ヒドロキシセルロースなどが使用され得、崩壊剤として、デンプングリコール酸ナトリウム、無水リン酸一水素カルシウムなどが使用され得る。結合剤としては、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが使用され得、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、タルクなどより選択して使用することができる。
【0068】
本発明の組成物は、上述したバイオマーカーの発現水準を用いて、EGFR-標的製剤に対する感受性を増進させるので、重複する内容は、本明細書があまり複雑になることを避けるために、その記載を省略する。
【0069】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、上述したMET阻害剤に対する感受性増進剤及びMET阻害剤を有効成分として含む、METシグナル伝達経路の調節異常に関連した疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0070】
本発明において、前記METシグナル伝達経路の調節異常に関連した疾患は、ガン、アテローム性動脈硬化症、肺纎維症、腎纎維症及び再生、肝疾患、アレルギー疾患、炎症疾患、自己免疫疾患、脳血管疾患、心血管疾患、又は気管移植に関連した症状であり、望ましくはガンである。
【0071】
即ち、本発明のMET阻害剤に対する感受性増進剤であるIGSF1及び/又はMET遺伝子の発現; 又は、前記遺伝子のタンパク質の発現或いは活性を抑制する抑制剤は、抗ガン剤に対する感受性を増加させ、これらの抗ガン剤とともに投与される場合、抗ガン剤の抗ガン作用を増加させることで、ガンの治療をさらに容易にすることができる。
【0072】
本発明の組成物による改善、予防又は治療対象疾病である“ガン(cancer)”は、細胞が正常な成長限界を無視して分裂及び成長する攻撃的(aggressive)特性、周辺組織に侵透する浸透的(invasive)特性、及び体内の他の部位へ広がる転移的(metastatic)特性を有する細胞による疾病を総称する意味である。本明細書中において、前記ガンは、悪性腫瘍(malignant tumor)と同一の意味としても使用される。
【0073】
本発明の組成物が適用され得るガンは、乳ガン(breast cancer)、肺ガン(lung cancer)、胃ガン(stomach cancer)、肝(肝臓)ガン(liver cancer)、血液ガン(blood cancer)、骨ガン(bone cancer)、膵腸ガン(pancreatic cancer)、皮膚ガン(skin cancer)、頭部又は頚部ガン(head or neck cancer)、皮膚又は眼球の黒色腫(cutane ous or intraocular melanoma)、子宮肉腫(uterine sarcoma)、卵巣ガン(ovarian cancer)、直腸ガン(rectal cancer)、肛門ガン(anal cancer)、大腸ガン(colon cancer)、卵管ガン(fallopian tube carcinoma)、子宮内膜ガン(endometrial
carcinoma)、子宮頸ガン(cervical cancer)、小腸ガン(small intestine cancer)、
内分泌ガン(endocrine cancer)、甲状腺ガン(thyroid cancer)、副甲状線ガン
(parathyroid cancer)、腎ガン(adrenal cancer)、軟組織腫瘍(soft tissue tumor)、尿道ガン(urethral cancer)、前立腺ガン(prostate cancer)、気管支ガン(bronchogenic cancer)、骨髓ガン(bone marrow tumor)などを含むが、それに限定されるものではない。
【0074】
望ましくは、本発明の組成物は、胃ガン又は肺ガンの予防又は治療に適用することができる。
【0075】
本明細書中における用語“予防” は、疾患又は疾病を保有していると診断されたことはないが、このような疾患又は疾病にかかりやすい傾向のある動物において、疾患又は疾病の発生を抑制することを意味している。本明細書における用語“治療”は、(i)疾患又は疾病の発展の抑制; (ii)疾患又は疾病の軽減; 及び、(iii)疾患又は疾病の除去を意味している。
【0076】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。
【0077】
本発明の薬学的組成物に含まれる薬学的に許容される担体は、製剤時に通常的に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、それに限定されるものではない。本発明の薬学的組成物は、前記成分の他にも、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適合する薬学的に許容される担体及び製剤は、 Remington's Pharmaceutical Sciences(19th ed.、1995)に詳細に記載されている。
【0078】
本発明の薬学的組成物の適合する投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因により多様に処方され得る。
【0079】
一方、本発明の薬学的組成物の投与量は、望ましくは、一日当りに0.0001〜100mg/kg(体重)である。
【0080】
本発明の薬学的組成物は、経口又は非経口で投与することができ、非経口で投与される場合、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与などで投与することができる。本発明の薬剤学的組成物は、適用される疾患の種類に応じて投与経路が決定されることが望ましい。
【0081】
本発明の組成物に含まれる有効成分である増進剤内の当該遺伝子又はそのタンパク質の発現抑制剤の濃度は、治療の目的、患者の状態、必要期間、疾患の危重度などを考慮して決定し、特定範囲の濃度に限定されない。
【0082】
本発明の薬学的組成物は、当該発明の属する技術の分野にて通常の知識を有する者が容易に実施することができる方法に従って、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することで、単位容量形態で製造するか、又は多容量容器内に入れて製造することができる。そのとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態でもあり得、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0083】
本発明の組成物は、上述した感受性増進剤及び抗ガン剤であるMET阻害剤を用いて、ガン細胞の細胞死を向上させるので、重複する内容は、本明細書があまり複雑になることを避けるために、その記載を省略する。
【0084】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、次の段階を含むMET阻害剤に対する感受性予測方法を提供する: (a)対象から生物学的試料を用意する段階と; (b)前記生物学的試料内のIGSF1(Immunoglobulin Superfamily member 1、NM_001555.2)遺伝子の発現水準; 又はそのタンパク質の発現水準を測定する段階であって、
前記(b)段階において、IGSF1遺伝子の発現水準又はそのタンパク質の発現水準が対照群に比べて高発現の場合、対象のMET阻害剤に対する感受性があると判定する。
【0085】
本明細書中において特別な断りがない限り、本明細書中で使用されている用語“対照群”は、正常の健康な人の当該遺伝子又はそのタンパク質の発現水準; 或いは、比較対象である患者の当該遺伝子又はそのタンパク質の発現水準を意味している。
【0086】
本発明の予測方法は、対象患者から生物学的試料を獲得して、前記試料内でIGSF1の発現有無を測定した後、対照群試料と比べて、記載された遺伝子又はタンパク質の発現が増加した場合に、当該試料がMET阻害剤に対して感受性があると判定する工程を含んでなる。
【0087】
また、本発明の望ましい具現例によれば、前記対象は、HGF遺伝子又はそのタンパク質の発現水準が、対照群と比べて低発現又は非発現されたものである。
【0088】
また、本発明の望ましい具現例によれば、前記対象は、MET遺伝子又はそのタンパク質の発現水準が、対照群に比べて高発現されたのである。
【0089】
より詳細には、HGF遺伝子又はそのタンパク質の発現水準が、対照群と比べて低発現又は非発現され; IGSF1及びMET遺伝子又はこれらのタンパク質の発現水準が、対照群の値に比べて増加したと確認された場合、対象患者より獲得された当該腫瘍細胞が、抗ガン剤であるMET阻害剤に対して感受性があると判定するものである。
【0090】
即ち、HGF-非発現又は低発現患者からIGSF1遺伝子又はそのタンパク質の水準が高発現された場合、IGSF1遺伝子がMETの活性化を誘導するので、MET阻害剤に対する感受性を呈すると判断する。
【0091】
本明細書中において前記遺伝子の発現水準を言及中に使用されている用語“低発現”は、バイオマーカーが異常プロセス、疾患或いは個体内のその他病態を示すかその兆候である場合、健康な又は正常な個体或いは比較対象の個体より獲得された生物学的試料から検出されるバイオマーカーの値、もしくは、水準範囲よりも低い生物学的試料内のバイオマーカーの値或いは水準のことを称する。
【0092】
本明細書中において前記遺伝子の発現水準を言及中に使用されている用語“高発現”は、バイオマーカーが異常プロセス、疾患或いは個体内のその他病態を示すかその兆候である場合、健康な又は正常な個体或いは比較対象の個体より獲得された生物学的試料から検出されるバイオマーカーの値、若しくは、水準範囲よりも高い生物学的試料内のバイオマーカーの値或いは水準のことを称する。
【0093】
また、前記遺伝子の発現水準を言及中に使用される用語らは、バイオマーカーの“正常” 発現水準或いは値と比較して、“差動(differential)水準”或いは“差動値”を有するか、“異なって発現された”ものとして称され得、発現において定量的差異だけではなく定性的差異の両方を含む。
【0094】
本明細書中で使用されている用語“生物学的試料”は、本発明のバイオマーカーの発現が検出され得る個体から得られる全試料を意味している。
【0095】
本発明の望ましい具現例によれば、前記生物学的試料は、唾液(saliva)、生検(biopsy)、血液、皮膚組織、液体培養物、糞便及び小便からなる群より選択されたいずれか一つであり、特にそれに限定されることなく、本発明の技術の分野にて通常的に使用される方法で処理して用意することができる。
【0096】
本発明の方法は、上述したバイオマーカーを用いて感受性があると判定するので、重複する内容は、本明細書があまり複雑になることを避けるために、その記載を省略する。
【0097】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、上述したMET阻害剤に対する感受性増進剤及びMET阻害剤を、対象に共同投与する段階を含む、MET阻害剤に対する感受性の増進方法を提供する。
【0098】
本発明の方法は、上述した感受性増進剤及び抗ガン剤であるMET阻害剤を用いて感受性を増進させるので、重複する内容は、本明細書があまり複雑になることを避けるために、その記載を省略する。