(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6668025
(24)【登録日】2020年2月28日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】微細粒子吸着防止剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20200309BHJP
【FI】
C09K3/00 R
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-189098(P2015-189098)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-66031(P2017-66031A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591074231
【氏名又は名称】常盤薬品工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】村上 有美
(72)【発明者】
【氏名】道祖 友美子
(72)【発明者】
【氏名】松中 浩
【審査官】
吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−155902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09D
D06M
A61K 8/、35/
A61P
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水濃縮物を有効成分とする、微細粒子吸着防止剤(苦汁と稀土鉱石及び/又はトルマリン及び/又は長石とよりなる塗料を除く)。
【請求項2】
海水濃縮物が、ニガリである、請求項1に記載の微細粒子吸着防止剤(苦汁と稀土鉱石及び/又はトルマリン及び/又は長石とよりなる塗料を除く)。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の微細粒子吸着防止剤を、微細粒子吸着防止対象物に塗布又は噴霧して、微細粒子吸着防止対象物への微細粒子の吸着を防止する、微細粒子吸着防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細粒子吸着防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本人の約10人に1人、都会では5人に1人が花粉症にかかっているといわれ、いまや花粉症は国民病とまでいわれるほど患者が増えている。そのため花粉症治療剤等が数多く販売されているが、これといって画期的な効力を発揮するものはない。
【0003】
一方、予防方法として、できるだけ花粉を遠ざける環境を維持する方法が挙げられ、例えば、外出から帰ったら衣服を払って、衣服に付着した花粉を落としてから家に入る、ふとんを干した後は、掃除機でふとんを吸引して花粉を吸い取る、等の方法で対処する、などが行われている。また特開2003−213541号公報(特許文献1)では、衣服の織り方を工夫して、糸の総繊度、単糸繊度、隣接する糸同士の隙間、織物表面粗さ、摩擦帯電圧等を所定の範囲値にコントロールして、衣服への花粉の吸着を防止しようとする技術も提案されているが、この場合、上述した特定の織り方をした織物を使用しなければならならず、使用上での制限がある。
【0004】
また特開2006−2147号公報(特許文献2)には、特定の両性イオン基を有するモノマーユニット、および/または、特定のアニオン基を有するモノマーユニットを構成単位として含むポリマーが、花粉が毛髪や衣服等に吸着することを防止する作用・効果を有することが開示されている。しかしながら、両性イオン基を有するポリマーは皮膚に対する刺激が懸念され、より安全な微細粒子吸着防止剤が求められている。
【0005】
さらに、近年、大気汚染の指標としてPM2.5(微小粒子状物質)が着目されている。PM2.5は、大気中に浮遊している粒子径2.5μm以下の粒子である。PM2.5は、粒子径が非常に小さいため、肺の奥深くまで入りやすく、喘息や気管支炎などの呼吸器系疾患への影響、肺がんリスクの上昇、循環器系への影響等の健康への影響が懸念されている(非特許文献1)。
【0006】
そこで、特開2015−117451号公報(特許文献3)には、PM2.5の付着を抑制できるPM2.5付着防止用水性組成物、スプレー式PM2.5付着防止処理剤、およびPM2.5付着防止処理方法として、特定のカチオン化合物が有用であることが開示されている。しかしながら、カチオン化合物は皮膚に対する刺激が懸念され、より安全な微細粒子吸着防止剤が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】環境省、“微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報”、[online]、[平成27年9月15日検索]、インターネット<URL: http://www.env.go.jp/air/osen/pm/info.html>
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−213541号公報
【特許文献2】特開2006−2147号公報
【特許文献3】特開2015−117451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
両性イオン基を有するポリマーやカチオン化合物が、微粒子吸着防止効果を有することが知られている。しかしながら、両性イオン基を有するポリマーやカチオン化合物は、皮膚に対する刺激が懸念され、より安全な微細粒子吸着防止剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、海水濃縮物、特にニガリが、高い微細粒子吸着防止効果を発揮することを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は海水濃縮物、特にニガリを有効成分とする、微細粒子吸着防止剤に関する。
【0012】
また本発明は、海水濃縮物、特にニガリを有効成分とする、微細粒子吸着防止剤を、微細粒子吸着防止対象物に塗布・噴霧して、微細粒子吸着防止対象物への微細粒子の吸着を防止する、微細粒子吸着防止方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、毛髪や皮膚、衣類等に塗布・噴霧することによって、これら毛髪や衣類等に対し、花粉やPM2.5等の空中に浮遊する微細粒子の吸着を、簡便かつ安全に防止する微細粒子吸着防止剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
海水濃縮物は、海水を濃縮して得られる。海水を濃縮する方法としては、特に制限されず、逆浸透圧膜を用いて濃縮する方法、加熱により濃縮する方法などが例示される。本発明の海水濃縮物は海水を濃縮したものをそのまま用いてもよいが、好ましくは海水濃縮物から塩化ナトリウムの濃度を低減したニガリを用いる。
【0016】
本発明の微細粒子吸着防止剤の剤型は、スプレー、ローション等、任意の剤型とすることができ、特に限定されるものではないが、使用性等の点からスプレーとして用いることが好ましい。
【0017】
また、エアゾールタイプのスプレーとして用いる場合、海水濃縮物を配合した原液を噴射剤とともにエアゾール容器に加圧封入する。噴射剤としてはプロパン、ブタン、及びイソブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG)、時メチルエーテル(DME)及び炭酸ガス、窒素ガス等の圧縮ガス等を単独で若しくは2種以上を併用して使用することができる。
【0018】
本発明の微細粒子吸着防止剤において、海水濃縮物の配合量は0.001〜20質量%が好ましくより好ましくは0.001〜15質量%である。0.001質量%未満の配合では微細粒子吸着防止効果が得られない場合がある。20質量%を超えて配合しても、さらなる微細粒子吸着防止効果の向上が認められない場合があり、非効率的である。
【0019】
本発明の微細粒子吸着防止剤には、本発明の効果を損なわない質的、量的範囲内で、必要に応じて、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、防腐剤、界面活性剤、消臭剤、固着剤等を配合してもよい。
【0020】
本発明の微細粒子吸着防止剤の使用方法としては、微細粒子の吸着を防止したい対象物(衣類、毛髪、皮膚)にあらかじめ噴霧しておくことにより、これら対象物への微細粒子の吸着を積極的に防止することができる。
【0021】
また本発明の微細粒子吸着防止剤による微細粒子吸着防止効果は、洗浄時に容易に除去することができる。また、本発明の微細粒子吸着防止剤は、外用、経口での刺激や毒性が無く、安全性に優れる。
【0022】
吸着を防止する微細粒子は、スギ、ヒノキ、ブタクサ等の花粉や、PM10、浮遊粒子状物質、PM2.5、超微小粒子等の粒子状物質が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に指定しない限り質量%で記載した。
【0024】
表1に示す処方にて、微細粒子吸着防止剤を調製し、微細粒子吸着防止効果を検証した。結果も合わせて示す。
【0025】
【表1】
【0026】
[微細粒子吸着防止効果評価方法]
微細粒子の付きにくさと、落ちやすさの2項目で評価を行った
(1)前処理
実施例1、比較例1、2に、それぞれ人工皮革を60秒間浸漬した後取り出し、これを室温で一晩静置して乾燥させたものを試料とした。
(2)付きにくさ試験
円柱型容器に疑似花粉(石松子)、試料片5枚を封入し、撹拌した。試料片を取り出し、判定標準写真により等級判定を行い、5枚の平均値を測定結果とした。
(3)落ちやすさ試験
付きにくさの試験後の試料片のうちで擬似花粉の付き方が平均的な3枚を選別し、20cmの高さから5回落下させ衝撃を与えた後、判定標準写真により等級判定を行い、3枚の平均値を測定結果とした。
(4)判定方法
1:非常に多くの付着が認められる(500個以上)
2:非常に多くの付着が認められる(250〜500個)
3:付着が認められる(150〜250個)
4:少し付着が認められる(50〜150個)
5:わずかに付着が認められる(0〜50個)
【0027】
表1に示した通り、本発明の実施例は高い微細粒子付着防止効果並びに微細粒子除去効果を示していた。その効果は、従来より微細粒子付着防止効果が知られていたポリクオタニウム−51を凌駕するものであった。
【0028】
以下に本発明花粉吸着防止剤の処方例として実施例2、3を示す。
【0029】
実施例2 ミストスプレー
海水濃縮物 1.0
エタノール 10.0
精製水 残 部
【0030】
実施例3 ローション
海水濃縮物 0.5
エタノール 20.0
精製水 残 部