特許第6668029号(P6668029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6668029
(24)【登録日】2020年2月28日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20200309BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20200309BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   A61F13/511 100
   A61F13/512 200
   A61F13/537 310
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-190737(P2015-190737)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-63919(P2017-63919A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽子
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−125918(JP,A)
【文献】 特開2014−100199(JP,A)
【文献】 特開2010−063649(JP,A)
【文献】 特開2012−192058(JP,A)
【文献】 特開2007−061418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/511
A61F 13/512
A61F 13/537
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの下面側に親水性繊維シートからなるセカンドシートを備えた吸収性物品において、
少なくとも着用者の体液排出部を含む領域において、表面側からの長手方向に沿うフィットエンボスの付与によって発生した引張力によって強制的に開けられた開孔が多数形成されているとともに、前記開孔は斜め方向に傾斜した略楕円形状の開孔とされ、前記透液性表面シートとセカンドシートとはホットメルト接着剤によって部分的に接合されているが、前記開孔の形成領域にはホットメルト接着剤が塗布されていないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記体液排出部を含む領域は、吸収体の中高部構造となっている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記開孔は、長さが0.1〜10mm、傾斜角度は吸収性物品の幅方向線に対して±20〜±70°の傾斜角度で形成されている請求項1,2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記セカンドシートは開孔を有しない請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記セカンドシートは前記体液排出部を含む領域において、折り畳んだ状態で配設されるとともに、該セカンドシートは開孔を有しない請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記開孔は、右上がり傾斜の開孔を長手方向に沿って配列するとともに、吸収性物品の幅方向に間隔を空けた隣接位置に右下がり傾斜の開孔を長手方向に沿って配列したパターンの繰り返しとする請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記開孔は、中心部から斜め4方向に開孔を有するとともに、前記中心部で各開孔が連結されていないパターンの規則的配置とする請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記体液排出部を含む領域において、中央領域とその両側に隣接する隣接領域とに区画され、前記中央領域における各開孔の面積よりも前記隣接領域における各開孔の面積の方が大きく設定されている請求項1〜7いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面シートとして開孔不織布を用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品の表面シートとして開孔不織布が使用されている。
【0003】
この開孔不織布を製造する際の開孔方法としては、大別すると加熱ピンによる方法と、高圧流体による方法とが用いられてきた。
【0004】
例えば、前者の加熱ピンによる方法としては、下記特許文献1に、立体穿孔を有する立体穿孔シートの製造方法に於いて、シートの搬送方向に沿って、角錐或いは円錐形状の多数の凸状ピンを列状に有し、且つ該列が多列に並設している第1の押し型と、該多列の間に嵌入する突条部を有する第2押し型との間に、該シートを介在させることにより、多数の立体穿孔を形成する立体穿孔シートの製造方法が開示されている。
【0005】
下記特許文献2に、植針ロールとブラシロールとからなる少なくとも一対以上のロールを設け、両ロール表面間には一定の間隔を設けて配置し、植針ロールは加熱ロールとし、前記一対のロール間であって、かつ植針ロールの表面に実質的に非接触の状態で乾式不織布を通過させ、該乾式不織布に熱セット又は部分的熱融着された多数の細孔を設ける多孔性乾式不織布の製造方法が開示されている。
【0006】
次いで、後者の高圧流体による方法としては、下記特許文献3に、5から40メッシュの支持網上にウェブを堆載し、ウェブの上方よりウェブの全幅に亘って水流を当てて、開孔を持つ不織布を製造するに当たり、該ウェブと水流源との間に、該支持網の網目間隔に等しい間隔の網目を有する遮蔽網を、該支持網の網目に対し網目を約2度から30度傾けて設置し、該水流を遮ることにより、規則的な格子縞状の干渉模様の開孔を発生させる開孔不織布の製造方法が開示されている。
【0007】
下記特許文献4には、繊維長Lと直径Dの比L/Dが0.5×103〜2.0×103である複数の短繊維から成る繊維シートを、複数の開孔又は凹凸を有する透水性の支持体上に置き、1.0mm以下のピッチで配置された複数のノズルから水圧30kg/cm2以上の高圧水流を前記繊維シートの上方から付与して多数の結節部を形成させると共に多数の開孔を設ける開孔不織布の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−330443号公報
【特許文献2】特開平2−216252号公報
【特許文献3】特開平2−68348号公報
【特許文献4】特開平4−119158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、吸収性物品の内、特に夜用ナプキンの場合は、長時間装着するために経血量が多く、表面に経血を残さず吸収させ、更に肌にも負担を掛けない仕様が求められる。そのため、表面シートとして吸収性に優れると共に、肌への負担が少ない開孔不織布を用いることが行われている。
【0010】
しかしながら、前述の加熱ピンによって開孔を形成した開孔不織布の場合は、加熱したピンを不織布に貫通させ開孔を形成する方法であるため、開孔の周囲に熱融着部分ができてしまうため、その部分が硬くなり肌への負担が大きいという問題や開孔の周囲の繊維密度が高くなり、その高繊維密度部分が液持ちしてしまうため体液の逆戻り量が大きくなるという問題があった。更に、開孔不織布はロールに巻かれた状態で資材管理されるため、開孔した孔が潰れたり(変形)、資材の巻始・巻終でバラツキが生じるという問題があった。
【0011】
一方、前述の高圧水流によって開孔を形成した開孔不織布の場合は、繊維同士を交絡させただけのものであり、繊維の自由度が大きいため開孔が塞がったり、開孔の周囲から開孔に繊維が飛び出したりして吸収性が低下するなどの問題があった。
【0012】
そこで本発明の主たる課題は、開孔の周囲に熱融着部分を作らないとともに、高繊維密度領域を作らず、しかも繊維によって塞がれることがなくしっかりと開孔が空いた状態の開孔不織布を表面シートとして用いた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、不織布からなる透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの下面側に親水性繊維シートからなるセカンドシートを備えた吸収性物品において、
少なくとも着用者の体液排出部を含む領域において、表面側からの長手方向に沿うフィットエンボスの付与によって発生した引張力によって強制的に開けられた開孔が多数形成されているとともに、前記開孔は斜め方向に傾斜した略楕円形状の開孔とされ、前記透液性表面シートとセカンドシートとはホットメルト接着剤によって部分的に接合されているが、前記開孔の形成領域にはホットメルト接着剤が塗布されていないことを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項1記載の発明では、透液性表面シートを不織布によって構成した吸収性物品において、前記不織布に開孔を形成するに当たって、少なくとも着用者の体液排出部を含む領域において、表面側からの長手方向に沿うフィットエンボスの付与によって発生した引張力によって強制的に開けられた開孔が多数形成されているとともに、前記開孔は斜め方向に傾斜した略楕円形状の開孔とされる。
【0015】
従って、本願発明に係る吸収性物品の開孔は、加熱ピンによって形成した場合のような開孔の周囲に熱融着部分を有しないため肌への負担が低減できるようになるとともに、開孔の周囲の繊維密度が高くなることがないため開孔周囲が液持ちすることが無く、体液の逆戻りの問題も解消できるようになる。更に、ロールに巻かれた状態時に潰れたりバラツキが生じたりする問題もなくなる。
【0016】
また、前記開孔は、切込みによって予め繊維が切断され、フィットエンボスの付与による引張力の力によって強制的に開けられた開孔であるため、開孔を繊維が塞ぐことがなくしっかりと開孔が空いた状態となる。従って、高圧水流によって形成した場合のように開孔の周囲から開孔に繊維が飛び出したりして吸収性が低下するなどの問題も解消することができる。
【0017】
一方、本願発明に係る吸収性物品の開孔は斜め方向に傾斜した略楕円形状の孔であるため、装着時に左右の足の動きによって吸収性物品に捻れが生じた際、開孔が立体的に口開きする。すなわち、左右の足の動きによって開孔の傾斜方向と反対側に捻れが加わると、開孔の一部が下層側のシート(通常はセカンドシート)から離間するように一部が立体的に口開きするようになり、口開きした部分から大量の体液が吸収できるため通常の円形開孔よりも吸収性に優れるようになる。
【0018】
請求項2に係る本発明として、前記体液排出部を含む領域は、吸収体の中高部構造となっている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項2記載の発明は、前記体液排出部を含む領域は、吸収体の中高部構造とするものである。表面側からの長手方向に沿うフィットエンボスの付与した際に、より大きな引張力を発生させたい場合、開孔を形成する体液排出部を含む領域は吸収体の中高部構造とするのが望ましい。
【0020】
請求項3に係る本発明として、前記開孔は、長さが0.1〜10mm、傾斜角度は吸収性物品の幅方向線に対して±20〜±70°の傾斜角度で形成されている請求項1,2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項3記載の発明は、開孔の形状を具体的に規定したものである。開孔は、長さが0.1〜10mm、傾斜角度は吸収性物品の幅方向線に対して±20〜±70°の傾斜角度で形成するのが望ましい。
【0022】
請求項4に係る本発明として、前記セカンドシートは開孔を有しない請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項4記載の発明は、透液性表面シートの下層側に配置されるセカンドシートは、吸収体に混入されている高吸収性樹脂がもれ出してくるのを防止するため、開孔は形成しないことが望ましい。
【0024】
請求項5に係る本発明として、前記セカンドシートは前記体液排出部を含む領域において、折り畳んだ状態で配設されるとともに、該セカンドシートは開孔を有しない請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0025】
上記請求項5記載の発明は、表面側からの長手方向に沿うフィットエンボスの付与した際に、より大きな引張力を発生させるために、透液性表面シートの下面側に配置されるセカンドシートを、二重折り又は三重折り等で折り畳んだ状態で配置するようにしたものである。
【0026】
請求項6に係る本発明として、前記開孔は、右上がり傾斜の開孔を長手方向に沿って配列するとともに、吸収性物品の幅方向に間隔を空けた隣接位置に右下がり傾斜の開孔を長手方向に沿って配列したパターンの繰り返しとする請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0027】
上記請求項6記載の発明は、右上がり傾斜の開孔と右下がり傾斜の開孔とをバランス良く配置するものである。具体的には、前記体液排出部を含む領域において、前記開孔右上がり傾斜の開孔を長手方向に沿って配列するとともに、その幅方向隣接位置に右下がり傾斜の開孔を長手方向に沿って配列したパターンの繰り返しとするものである。
【0028】
請求項7に係る本発明として、前記開孔は、中心部から斜め4方向に開孔を有するとともに、前記中心部で各開孔が連結されていないパターンの規則的配置とする請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0029】
上記請求項7記載の発明は、右上がり傾斜の開孔と右下がり傾斜の開孔とをバランス良く配置するため、前記切込みのパターンの他例を規定したものである。具体的には、前記体液排出部を含む領域において、前記開孔中心部から斜め4方向に開孔を有するとともに、前記中心部で各開孔が連結されていないパターンの規則的配置とするものである。
【0030】
請求項8に係る本発明として、前記体液排出部を含む領域において、中央領域とその両側に隣接する隣接領域とに区画され、前記中央領域における各開孔の面積よりも前記隣接領域における各開孔の面積の方が大きく設定されている請求項1〜7いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0031】
上記請求項8記載の発明は、体液が排出される中央部とその隣接部とで開孔の大きさを変えてフィットエンボスの近接領域での吸収性能を相対的に上げるようにしたものである。具体的には、前記体液排出部を含む領域において、中央領域とその両側に隣接する隣接領域とに区画され、前記中央領域における各開孔の面積よりも前記隣接領域における各開孔の面積の方が大きく設定するようにするものである。
【発明の効果】
【0032】
以上詳説のとおり本発明によれば、開孔の周囲に熱融着部分を作らないとともに、高繊維密度領域を作らず、しかも繊維によって塞がれることがなくしっかりと開孔が空いた状態の開孔不織布を表面シートとして用いた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本願発明に係る生理用ナプキン1の一部破断平面図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3図1のIII−III線矢視図である。
図4】開孔形成手順を説明する、(A)はフィットエンボス付与前の要部平面図、(B)はフィットエンボス付与後の要部平面図である。
図5】切込み3bの他の形成例を示す要部平面図である。
図6】開孔形成領域の他例を示す要部平面図である。
図7】開孔形成要領の他例を示す要部平面図である。
図8】セカンドシート6の他の配置例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。なお、本発明における「長手方向」とは、吸収性物品1の前側と後側を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは長手方向と直交する方向(吸収性物品1の展開時の左右方向)を意味する。
【0035】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
前記生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液という。)を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、前記透液性表面シート3とクレープ紙5との間に配置された親水性繊維シートからなるセカンドシート6と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部Hを含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSと、両サイドに夫々配置されるとともに、前記立体ギャザーBS,BSを形成するためのサイド不織布7と、前記吸収体4の肌側面の幅方向中央部にナプキン長手方向に沿って設けられた肌側に高い吸収体の中高部8とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接合手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0036】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述する。
【0037】
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0038】
前記透液性表面シート3は、本生理用ナプキン1では開孔を有する不織布が用いられている。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。この開孔不織布については詳しく後述する。
【0039】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと高吸収性樹脂とにより構成されている。前記高吸収性樹脂は吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0040】
前記透液性表面シート3とクレープ紙5との間に介在された親水性不織布からなるセカンドシート6は、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。親水性を付与するには、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えることができる。
【0041】
前記吸収体4の肌側面の幅方向中央部には、長手方向に沿って、肌側に高い吸収体の中高部8が形成されている。前記中高部8としては、機能的に透液性表面シート3の上面に排出された体液を速やかに吸収するけれども、吸収した体液を内部に保留せずに吸収体4に浸透させる機能を備えていることが好ましい。浸透性を向上させるためにパルプ繊維中に化学繊維を混合したもの、エアスルー吸収体やエアレイド吸収体又はトウ繊維からなるものが好適に使用される。前記中高部8に化学繊維を混合することにより体液吸収状態時でも萎むことなく嵩を保持しクッション性を維持できるようになる。前記中高部8には、嵩高となり身体へのフィット性を向上させるため、トウ繊維(繊維束)やポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維を混合することが好ましい。この中高部8の厚みは、厚くし過ぎると吸収体4の剛性が上がり身体への密着性が低下するため3〜20mm、好ましくは5〜15mmとするのが好ましい。
【0042】
前記吸収体4及び中高部8は、それぞれ別個に製造した後、組立工程で積層してもよいし、吸収体を立体的に積繊することによって一体的に形成してもよい。また、吸収体4の上段に中高部8を積繊する二段積繊構造としてもよい。
【0043】
本生理用ナプキン1では、前記中高部8を囲むように、透液性表面シート3の外面側から生理用ナプキン1の略長手方向に沿って左右一対の中央圧搾溝16(本願発明の「長手方向の沿うフィットエンボス」)を形成するのが好ましい。前記中央圧搾溝16は、少なくとも長手方向中心線の両側にそれぞれナプキンの略長手方向に沿う部分を含むものであればよく、図示例では、この左右の前端部及び後端部がそれぞれ接続され、全体としてナプキン長手方向に細長く、かつ周方向に閉合する形状で形成されている。
【0044】
また、前記中央圧搾溝16より前側に離間して、平面視で略Ω形状の前側圧搾溝16aが形成されるとともに、前記中央圧搾溝16より後側に離間して、平面視で略逆Ω形状の後側圧搾溝16bが形成されている。前記前側圧搾溝16a及び後側圧搾溝16bは、それぞれ生理用ナプキン1の表面を前側及び後側に伝う体液を捕捉し、体液の伝い漏れを確実に防止するためのものである。
【0045】
一方、前記透液性トップシート3の幅寸法は、図示例では、図2および図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、前記立体ギャザーBSは前記透液性トップシート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を18〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0046】
前記サイド不織布7は、図2および図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性バックシート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性バックシート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップW、Wを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層12,13を備え、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wが折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着されるようになっている。
【0047】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材26が配設されるとともに、前記糸状弾性伸縮部材26の上側部位に複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材27,27が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、前記糸状弾性伸縮部材26配設部位を屈曲点として、断面く字状に内側に開口を向けたポケットP、Pを形成しながら表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0048】
〔透液性表面シート(開孔不織布)〕
本生理用ナプキン1では、前記透液性表面シート3として不織布が用いられ、少なくとも着用者の体液排出部Hを含む領域において、多数の開孔3a、3a…が形成されている。
【0049】
前記開孔3a、3a…は、図4(A)に示されるように、前記透液性表面シート3にナプキンに組み立てられる前の状態で斜め方向の切込み3b、3b…が多数形成されており、ナプキンの組立時に前記体液排出部Hに隣接する両側部に、表面側からの長手方向に沿うフィットエンボス(中央圧搾溝16)の付与によって発生した引張力によって前記切込み3bが開孔することによって形成されているものである。
【0050】
前記切込み3bは、長さLが0.1〜10mm、好ましくは0.1〜5mm、傾斜角度θは吸収性物品の幅方向線に対して±20〜±70°、好ましくは±30〜±60°の傾斜角度で形成されていることが望ましい。
【0051】
図4に示された切込み3bのパターン(第1パターン例)は、右上がり傾斜の切込みを長手方向に沿って配列するとともに、その幅方向隣接位置に右下がり傾斜の切込みを長手方向に沿って配列したパターンの繰り返しとしたものである。このようなパターン構成とすることにより、右上がり傾斜の開孔と右下がり傾斜の開孔とをバランス良く配置することができる。
【0052】
また、前記切込み3bの第2のパターン例としては、図5に示されるように、中心部から斜め4方向に切込み3b、3b…を有するとともに、前記中心部で各切込み3b、3b…が連結されていないパターンの規則的配置とするものであってもよい。
【0053】
本願発明に係る生理用ナプキン1の開孔3aは、開孔の周囲に熱融着部分を有しないため肌への負担が低減できるようになるとともに、開孔の周囲の繊維密度が高くなることがないため開孔周囲部が液持ちすることが無く、体液の逆戻りの問題も解消できるようになる。更に、ロールに巻かれた状態時に潰れたり、巻始・巻終でバラツキが生じたりすることもなくなる。また、切込み3bによって予め繊維が切断されており、フィットエンボス16の付与による引張力の力によって強制的に開けられた開孔であるため、開孔3aを繊維が塞ぐことがなくしっかりと開孔3aが空いた状態となる。
【0054】
このような効果に加えて、前記第1及び第2のパターン例に従って、右上がり傾斜の開孔と右下がり傾斜の開孔とが交互に隣接配置された開孔パターンとした場合には、下記の効果を奏するようになる。
【0055】
装着時に左右の足の動きによってナプキンに捻れが生じた際、開孔が立体的に口開きする。すなわち、左右の足の動きによって開孔の傾斜方向と反対側に捻れが加わると、開孔の一部が下層側のセカンドシート6から離間するように一部が立体的に口開きするようになり、口開きした部分から大量の体液が吸収できるため通常の円形開孔よりも吸収性に優れるようになる。前記捻れは左右の足の動きに合わせて右回りの捻れと左回りの捻れとが交互に作用するようになるが、この交互に発生する捻れに合わせて、右上がり傾斜の開孔と右下がり傾斜の開孔とが交互に隣接配置されることにより、平面的に吸収性能の偏りを生じさせることがなく、開孔の形成領域において均等に効率よく体液を吸収できるようになる。
【0056】
なお、前記透液性表面シート3とセカンドシート6とは、ホットメルト接着剤によって部分的に接合されるが、前記開孔3aの形成領域にはホットメルト接着剤を塗布しないようにする。また、前記セカンドシート6は、吸収体4に混入されている高吸収性樹脂が飛び出してくるのを防止するため、開孔は形成しないようにするのが望ましい。
【0057】
図4の例では、開孔3aは中高部8の配設領域のみに形成したが、それ以外の領域に形成してもよい。例えば、図6に示されるように、フィットエンボス(中央圧搾溝16)の外側に長手方向に沿って形成するようにしてもよい。なお、前記開孔3aはフィットエンボス16の付与による引張力の力によって切込み3bが強制的に開けられた開孔であるため、フィットエンボス(中央圧搾溝16)に近接した領域に限定されることになる。
【0058】
また、前記開孔3aのパターンは、領域毎に大きさを変化させるようにしてもよい。例えば、図7に示されるように、開孔形成領域において、中央領域9Aとその両側に隣接する隣接領域9B、9Cとに区画し、前記中央領域9Aにおける各開孔3aの面積よりも前記隣接領域9B、9Cにおける各開孔3aの面積の方が大きく設定するようにしてもよい。フィットエンボス(中央圧搾溝16)に近い方がフィットエンボス付与時に引張力が大きく作用するため、この近接領域の開孔3aを大きくして吸収性能を高めるようにしたものである。
【0059】
前記セカンドシート6は、透液性表面シート3の下面側に配置されるものであるが、このセカンドシート6を利用してフィットエンボス付与時に引張力が大きく作用させるようにもできる。すなわち、前記セカンドシート6として、二重折り又は三重折り等の複数折りで折り畳んだ状態で配置することにより、中高部8が高くなりフィットエンボス付与時に大きな引張力を作用させることが可能となる。具体的に図8に示される例は、吸収体4の上面にほぼその全体を覆うように第1セカンドシート6Aを敷設するとともに、前記中高部8の上面に折り畳んだ状態の第2セカンドシート6Bを配設した例である。
【0060】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、夜用ナプキンに本発明を適用した場合について述べたが、昼用ナプキンなどに対しても同様に適用が可能である。
(2)上記形態では、前記中央圧搾溝16によって囲まれた領域の内、中高部8が配設された領域に開孔3aを形成するようにしたが、前記中央圧搾溝16によって囲まれた領域全体に開孔3aを形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、3a…開孔、3b…切込み、4…吸収体、5…クレープ紙、6…セカンドシート、7…サイド不織布、8…中高部、16…中央圧搾溝(フィットエンボス)、W…ウイング状フラップ、W…第2ウイング状フラップ、BS…立体ギャザー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8