(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような伸縮性を持たせた吸収性物品は、吸収性物品の全体を伸縮性とした場合には、製造コストが高くなるとともに、伸縮による応力で下着との固定が外れやすいなどの問題があった。また、部分的に伸縮性を持たせたものでは、製造コストは抑えられるが、伸縮が制限され、シワやヨレの原因となる場合があった。更に、歩行時や立ち座りの動作時など着用者の身体の動きに対して適切な方向に伸縮性を有するものは少ない。
【0007】
一方、上記特許文献1に記載されるものでは、伸長可能なウェブ材料が全長に亘って設けられているため、装着時にシワやヨレが発生しやすく装着感が悪くなる場合があった。また、上記特許文献2に記載される吸収性物品では、幅方向に伸長可能なフラップ部の場合には、着用者の動きに追従してフィットさせる効果が低く、着用者の動きに対する追従性やフィット性が低下する問題があった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、着用者の動きに追従してフィット性に富み、シワやヨレの発生が少なく装着感に優れた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記裏面シートは、吸収性物品の長手方向に伸縮可能な伸縮性シートによって構成されるとともに、少なくとも前記吸収体が介在する本体部分に、前記伸縮性シートの伸縮力が作用した伸縮部と、前記伸縮性シートに非伸縮化加工を施すことにより前記伸縮性シートの伸縮力をなくした非伸縮部とが吸収性物品の長手方向に交互に配置されている
とともに、前記本体部分の両側に前記吸収体が介在しないフラップ部が設けられ、少なくとも前記フラップ部の前側領域及び後側領域にそれぞれ、前記伸縮部と非伸縮部とが吸収性物品の長手方向に交互に配置され、
前記本体部分の伸縮部及び非伸縮部と前記フラップ部の伸縮部及び非伸縮部とは、吸収性物品の幅方向に対して、伸縮部同士及び非伸縮部同士が隣り合わないように配置されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、前記伸縮部と非伸縮部とを吸収性物品の長手方向に交互に配置することによって、各伸縮部による伸縮力が独立的に作用し、各部に応じた伸縮力を発揮するので、歩行時や立ち座りの動作時等において着用者の身体の動きに追従しやすくなり、フィット性に富むようになる。また、伸縮部によって生じたシワやヨレが前記非伸縮部で吸収されるため、シワやヨレの発生が少なく装着感に優れた吸収性物品が得られるようになる。
【0011】
また、前記本体部分に加え、少なくとも前記フラップ部の前側領域及び後側領域にもそれぞれ、前記伸縮部と非伸縮部とを吸収性物品の長手方向に交互に配置することにより、このフラップ部が脚周りの動きに追従してより一層フィットしやすくなるとともに、シワやヨレを生じにくくして更に装着感に優れるようになる。
【0012】
そして、前記本体部分の伸縮部及び非伸縮部と前記フラップ部の伸縮部及び非伸縮部とは、吸収性物品の幅方向に対して、伸縮部同士及び非伸縮部同士が隣り合わないように配置されていることにより、前記本体部分と前記フラップ部に作用する伸縮力が互いに干渉しにくくなり、各領域に作用する伸縮力によって各領域が身体にフィットしやすくなる。
【0013】
請求項
2に係る本発明として、前記本体部分の両側部に、装着時に下着のクロッチ部分を巻き込むようにして固定される側方に突出したウイング状フラップが形成され、
前記ウイング状フラップの前後の基端部を結ぶ仮想線より内側のフラップ部には前記非伸縮部が設けられていない請求項
1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項
2記載の発明では、前記ウイング状フラップの前後の基端部を結ぶ仮想線より内側のフラップ部には前記非伸縮部を設けていないため、装着時にウイング状フラップを下着のクロッチ部分を巻き込むようにして固定した際の脚周りのフィット性が高められるようになる。
【0015】
請求項
3に係る本発明として、前記本体部分において、前記伸縮部と非伸縮部とが吸収性物品の長手方向及び幅方向に交互に配置された千鳥状配置領域を有している請求項1
、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項
3記載の発明では、前記本体部分に前記伸縮部と非伸縮部との千鳥状配置領域を設けることにより、身体の動きに対してより細かく追従でき、シワやヨレの発生が更に抑えられるようになる。
【0017】
請求項
4に係る本発明として、前記裏面シートの下着当接面側に形成されるズレ止め用粘着剤層は、前記非伸縮部に設けられ、前記伸縮部には設けられていない請求項1〜
3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項
4記載の発明では、ズレ止め粘着剤層を前記非伸縮部のみに設けているため、下着との固定部分にかかる応力が小さくなり、剥がれにくくなるとともに、前記伸縮部には設けていないため、伸縮部の伸縮性がよりフレキシブルに発揮されるようになる。
【0019】
請求項
5に係る本発明として、前記伸縮部と非伸縮部との境界に前記伸縮性シートの伸縮力を弱めた弱伸縮部が設けられている請求項1〜
4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項
5記載の発明では、前記伸縮部と非伸縮部との境界に弱伸縮部を設けることによって、これらの境界部分に伸び率の差によって発生するシワやヨレが防止できるようになる。
【0021】
請求項
6に係る本発明として、前記伸縮性シートは、JIS L1096の伸縮織物及び編物の伸縮性に関する伸び率のB法(織物の定荷重法)による伸び率が20%〜40%である請求項1〜
5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項
6記載の発明では、前記伸縮性シートの伸び率を20%〜40%にすることにより、一般的な下着とほぼ同等の伸び率で形成されるようになり、下着と同じように伸縮してフィット性が向上するとともに、更にズレが軽減できるようになる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、着用者の動きに追従してフィット性に富み、シワやヨレの発生が少なく装着感に優れた吸収性物品が提供できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
前記生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液という。)を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4とを含み、かつ前記吸収体4の周囲においては、前記不透液性裏面シート2と前記透液性表面シート3とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接合手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2と透液性表面シート3とによる積層シート部分によって外周に吸収体4の存在しない外周フラップ部が形成されるとともに、側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されている。また、必要に応じて、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙や不織布等からなる被包シートを設けてもよい。
【0027】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いるのが好ましい。本生理用ナプキン1では、前記不透液性裏面シート2として、生理用ナプキン1の長手方向に伸縮可能な伸縮性シートを用いている。この不透液性裏面シート2については、後段で更に詳細に説明する。
【0028】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。前記透液性表面シート3の上面側から各種のエンボスを付与し、体液の滞留を促進し吸収効率を高めることにより横漏れを防止するのが望ましい。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0029】
前記不透液性裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するために図示例のようにクレープ紙や不織布などからなる被包シートによって囲繞することができる。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体4として、嵩を小さくできるエアレイド吸収体を用いてもよい。
【0030】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0031】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。前記高吸水性樹脂の含有率は吸収体重量の10〜60%とするのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が10%未満の場合には、十分な吸収能を与えることができず、60%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなる。
【0032】
〔不透液性裏面シート2〕
以下、前記不透液性裏面シート2について更に詳細に説明する。前記不透液性裏面シート2は、生理用ナプキン1の長手方向に伸縮可能な伸縮性シートによって構成されるとともに、少なくとも前記吸収体4が介在する本体部分に、前記伸縮性シートの伸縮力が作用した伸縮部10と、前記伸縮性シートに非伸縮化加工を施すことにより前記伸縮性シートの伸縮力をなくした非伸縮部11とが生理用ナプキン1の長手方向に交互に配置されている。
【0033】
前記不透液性裏面シート2を構成する伸縮性シートとしては、不織布と伸縮性フィルムとを積層させた積層シートを用いるのが好ましく、特に、不織布/伸縮性フィルム/不織布の3層構造からなる積層シートとするのが好ましい。前記伸縮性フィルムは、伸縮性を有するプラスチックフィルムであり、具体的にはウレタン系フィルム、オレフィン系エラストマーなどのフィルムを使用することができる。前記伸縮性シートの伸縮方向は、主として生理用ナプキン1の長手方向に伸縮自在である一方、幅方向にほとんど伸縮しないものを用いることが好ましい。
【0034】
前記伸縮性シートは、JIS L1096の伸縮織物及び編物の伸縮性に関する伸び率のB法(織物の定荷重法)による伸び率が20%〜40%のものを使用するのが好ましい。下着の伸び率は種類によって様々であるが、一般的に約20%〜40%の伸び率のものが多いため、この一般的な下着の伸び率とほぼ同等の伸び率の前記伸縮性シートを用いることにより、下着と同じように伸縮してフィット性が向上するとともに、更にズレが軽減できるようになる。
【0035】
前記伸縮部10とは、前記伸縮性シートの伸縮力によって、前記非伸縮部11より生理用ナプキン1の長手方向に対して相対的に大きく伸縮変形可能とされた部分のことである。
【0036】
前記非伸縮部11とは、前記伸縮性シートの所定領域に後述する非伸縮化加工を施すことにより、伸縮性シートの伸縮力をなくした部分のことである。前述の「伸縮力をなくした」とは、前記非伸縮化加工によって伸縮性シートの伸縮力が全く作用しなくなった状態、又は前記伸縮部10と比較して極端に小さな伸縮力しか作用しなくなった状態のことをいう。具体的には、前記非伸縮部11の伸び率は、前記伸縮部10の伸び率に対して、1/10以下、特に1/20以下であるのが好ましい。
【0037】
前記伸縮部10と非伸縮部11とは、
図1に示されるように、少なくとも透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4が介在する本体部分において、生理用ナプキン1の長手方向に交互に配置されている。
図1に示される例では、前記伸縮部10及び非伸縮部11が前記本体部分のほぼ全幅に亘ってナプキン幅方向に細長いほぼ等幅の帯状に形成されるとともに、これら伸縮部10及び非伸縮部11がナプキン長手方向に隣接して交互に配置されている。
図1に示される生理用ナプキン1では、前記非伸縮部11は前記本体部分のみに設けられ前記本体部分より外側の外周フラップ部には設けられていない。このため、外周フラップ部が全周に亘って前記伸縮性シートの伸縮力が作用する伸縮部10となっている。
【0038】
以上の構成からなる本生理用ナプキン1では、前記伸縮部10と非伸縮部11とをナプキン長手方向に交互に配置することによって、各伸縮部10による伸縮力が独立的に作用し、各部に応じた伸縮力が発揮されるので、歩行時や立ち座りの動作時などにおいて、着用者の身体の動きに追従しやすくなり、フィット性に富むようになる。また、伸縮部10によって生じたシワやヨレが非伸縮部11で吸収されるため、シワやヨレの発生が少なく装着感に優れた生理用ナプキンが得られるようになる。
【0039】
図1において、長手方向に隣り合う前記伸縮部10、10同士の間隔(非伸縮部11の幅)及び隣り合う前記非伸縮部11、11同士の間隔(伸縮部10の幅)はそれぞれ、5〜50mm、好ましくは10〜20mmとするのがよい。前記伸縮部10と非伸縮部11とは図示例ではほぼ同じ幅で形成されているが、異なる幅で形成してもよい。また、前記伸縮部10及び非伸縮部11はそれぞれ、全ての領域で同じ幅で形成する必要はなく、両方の幅又はいずれか一方の幅をナプキンの長手方向の位置によって異なるように形成してもよい。例えば、長手方向中央部の股間部領域では脚周りのフィット性を高めるため、伸縮部10の幅を相対的に大きくし、長手方向両端部の前後領域では、伸縮部10による大きな縮こまりを防止するため、伸縮部10の幅を相対的に小さくすることができる。
【0040】
前記伸縮部10及び非伸縮部11は、生理用ナプキン1の幅方向線に対してほぼ平行に配置するのが好ましい。ナプキン幅方向線に対してほぼ平行とは、生理用ナプキン1の長手方向線に直交する幅方向線と、前記伸縮部10、10…及び非伸縮部11、11…の各部の生理用ナプキン1の略幅方向に延びる中心線との成す角が、±5°以下、好ましくは±3°以下としたものである。特に、後述するように、前記非伸縮部11の下着当接面側に下着との固定用のズレ止め粘着剤層14を設ける場合、接着剤を塗布する際の生産性を考慮して、前記伸縮部10及び非伸縮部11はナプキン幅方向線に対してほぼ平行に配置するのが望ましい。ただし、ズレ止め粘着剤層を設けない領域では、ナプキン幅方向線に平行に配置することに拘らず、任意の方向に配置することができる。
【0041】
図1に示される例では、非伸縮部11が本体部分にのみ設けられ、フラップ部には設けられないようにしていたが、前記フラップ部にも非伸縮部11を適宜配置することにより、脚周りに対するフィット性を高めることが可能である。ここで、
図3を参照して、生理用ナプキン1を各領域に区分けすると、第1領域A1は、透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4が介在された本体部分と、この本体部分の前後に延在するフラップ部とからなる生理用ナプキン1の長手方向の全長に亘る領域である。第2領域A2は、本体部分の側方に延在するフラップ部のうち、前記ウイング状フラップWより前側及び後側の領域である。第3領域A3は、本体部分の側方に延在するフラップ部のうち、前記ウイング状フラップWが形成された領域である。
【0042】
前記第1領域A1においては、前述の通り、伸縮部10と非伸縮部11とをナプキン長手方向に交互に配置することができる(
図1)。また、前記伸縮部10と非伸縮部11は種々のパターンで配置できる。この配置パターンの変形例については後述する。
【0043】
前記第2領域A2は、
図1では非伸縮部11を設けない伸縮部10のみによって構成された領域としていたが、
図4に示されるように、前記伸縮性シートの伸縮力が作用した伸縮部10と、前記伸縮性シートに非伸縮化加工を施すことにより伸縮性シートの伸縮力をなくした非伸縮部11とをナプキン長手方向に交互に配置することも可能である。これによって、第2領域A2のフラップ部が脚周りの動きに追従してより一層フィットしやすくなるとともに、この第2領域A2にシワやヨレが生じにくく更に装着感に優れるようになる。この第2領域A2の伸縮部10及び非伸縮部11は、フラップ部のほぼ全幅に亘って配置するのが好ましい。また、この第2領域A2の伸縮部10及び非伸縮部11と第1領域A1の伸縮部10及び非伸縮部11とは、ナプキン幅方向に対して、伸縮部10、10同士及び非伸縮部11、11同士が隣り合わないように配置するのが好ましい。つまり、ナプキン幅方向に対して、第1領域A1の伸縮部10に隣接して第2領域A2の非伸縮部11が配置され、第1領域A1の非伸縮部11に隣接して第2領域A2の伸縮部10が配置されている。これによって、第1領域A1と第2領域A2に作用する伸縮力が互いに干渉しにくくなり、各領域に作用する伸縮力によって各領域が身体にフィットしやすくなる。
【0044】
前記ウイング状フラップWを設けずに本体部分の両側にそれぞれ、全長に亘って略等幅の側部フラップ部が設けられる場合、この側部フラップ部の全長に亘って、前記伸縮部10と非伸縮部11とがナプキン長手方向に交互に配置されるようにしてもよい。これにより、側部フラップ部が全長に亘って脚周りにフィットしやすくなる。
【0045】
前記第3領域A3においては、
図4に示されるように、前記ウイング状フラップWの前後の基端部12、12を結ぶ仮想線13より内側のフラップ部(領域A3’)には前記非伸縮部11を設けないようにするのが好ましい。これによって、装着時にウイング状フラップWを下着のクロッチ部分を巻き込むようにして固定した際、下着のクロッチ部分の両側縁に沿う折り返し部分が全体に亘って伸縮性を有するようになり、脚周りのフィット性を高めることができる。
【0046】
また、前記第3領域A3においては、同
図4に示されるように、ウイング状フラップWを下着に固定するため不透液性裏面シート2の下着当接面側にウイング用のズレ止め粘着剤層を設ける場合、このズレ止め粘着剤層を配設する領域に前記非伸縮部11を設けるのが好ましい。これにより、下着との固定部分にかかる応力が小さくなり、剥がれにくくなる。ウイング状フラップWのズレ止め粘着剤層は、伸縮部10を含まない非伸縮部11のみに設けるのが望ましいが、一部が伸縮部10を含むように設けても構わない。
図4に示される例では、ウイング状フラップWのナプキン幅方向の中間部において、前記伸縮部10と非伸縮部11とがナプキン長手方向に交互に配置されている。このとき、ウイング状フラップWのズレ止め粘着剤層は、非伸縮部11のみに離散的に設けてもよいし、隣り合う非伸縮部11、11間の伸縮部10を含むように連続して設けてもよい。
【0047】
次に、前記第1領域A1における伸縮部10及び非伸縮部11の配置パターンの変形例について説明すると、
図5に示されるように、生理用ナプキン1の前後端部のフラップ部に前記非伸縮部11を設けてもよい。これにより、前後端部のフラップ部に伸縮力が作用しなくなり、フラップ部の縮こまりによるシワやヨレの発生が抑えられるようになる。
【0048】
また、他の変形例として、
図1では前記伸縮部10及び非伸縮部11がそれぞれ本体部分のほぼ全幅に亘って設けられていたが、
図6及び
図7に示されるように、前記第1領域A1のうち吸収体4が介在する本体部分において、前記伸縮部10と非伸縮部11とが生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向に交互に配置された千鳥状配置領域を有するように配置してもよい。前記千鳥状配置領域とは、本体部分を生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向に沿って格子状に区画した各格子にそれぞれ伸縮部10と非伸縮部11とを配置したとき、前後左右の格子で同じ伸縮部10又は非伸縮部11が隣り合わないように配置した領域のことである。
図6では、本体部分のほぼ全面が前記千鳥状配置領域とされ、
図7では、本体部分のウイング状フラップWを含む領域及びこれより前側の領域が前記千鳥状配置領域とされ、ウイング状フラップWより後側の領域は幅方向中央部に長手方向に沿って前記非伸縮部11が設けられるとともに、それ以外の部分が前記伸縮部10とされている。
【0049】
前記伸縮部10と非伸縮部11の千鳥状配置領域を設けることにより、身体の動きに対してより細かく追従できるようになり、更にシワやヨレの発生が抑えられるようになる。前記本体部分における伸縮部10の面積は、40〜70%、好ましくは45〜65%とするのがよい。
【0050】
図7に示されるように、千鳥状配置領域をウイング状フラップWを含む領域及びこれより前側の領域にのみ設け、ウイング状フラップWより後側の領域を主として伸縮部10としたパターンは、主に、着用者の臀部を後方まで広く覆うためナプキン後方が長く形成された夜用生理用ナプキンに好適である。このように臀部に対応する後方部分で伸縮部10の面積を多くとることによって、後方部分が身体の動きに追従しやすくなり、フィット性が向上するようになる。このように、伸縮部10及び非伸縮部11の配置パターンは、必ずしも前後対象でなくてよい(
図7参照)。
【0051】
前記不透液性裏面シート2の下着当接面側には、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するため、ズレ止め粘着剤層14を設けるのが好ましい。前記ズレ止め粘着剤層14は、任意のパターンで設けることが可能であるが、
図1に示されるように、前記不透液性裏面シート2に配置される非伸縮部11のみに設け、前記伸縮部10には設けないようにするのが好ましい。前記ズレ止め粘着剤層14を前記非伸縮部11のみに設けることにより、不透液性裏面シート2の伸縮力が作用しなくなるので、下着との固定部分にかかる応力が小さくなり、剥がれにくくなるとともに、前記伸縮部10には設けないことにより、伸縮部10の伸縮性がよりフレキシブルに発揮されるようになる。
【0052】
ところで、前記伸縮部10の伸縮力が作用したときでも生理用ナプキン1の外形の形状を保持するため、生理用ナプキン1の周縁部を周方向に沿って、前記非伸縮部11と同様の方法によって形成した全周シール部を設けてもよい。前記全周シール部は、生理用ナプキン1の外縁から内側に2〜10mm程度の幅で全周に亘って形成するのが好ましい。
【0053】
次いで、前記伸縮性シートに前記非伸縮部11を形成する非伸縮化加工について説明する。
図8に示されるように、伸縮性シートの原反ロール20から繰り出した伸縮性シートを送り方向に伸長させた状態で、前記非伸縮部11に対応する多数の凸部21a、21a…が形成されたエンボスロール21と、このエンボスロール21に対向して配置されるとともに表面が平坦なアンビルロール22との間を通過させることにより、前記伸縮性シートにエンボスを施すと同時に、熱や超音波を付与することで該伸縮性シートを構成する前記伸縮性フィルムを伸長させた状態に熱変形させ前記エンボス部の伸縮性を失わせる非伸縮化加工を施す。これによって、前記伸縮性シートの所定位置に前記非伸縮部11を設けることができる。また、それ以外のエンボスを施さない部分は、当初の伸縮性が維持された伸縮部10となる。
【0054】
また、伸縮部10と非伸縮部11との境界に前記伸縮性シートの伸縮力を弱めた弱伸縮部を設けることもできる。前記弱伸縮部を形成するには、
図9に示されるように、前記非伸縮部11に対応する凸部21aの周囲に、前記凸部21aより圧搾力を弱めるため突出高さが低い第2凸部21bが設けられたエンボスロール21’を用い、この第2凸部21bにおいても前記伸縮性シートにエンボスを施すと同時に、熱や超音波を付与することにより、このエンボス部の伸縮性を弱めるようにする。前記弱伸縮部を設けることにより、前記伸縮部10と非伸縮部11との境界部分に、これらの伸び率の差によって発生するシワやヨレが防止できるようになる。
【0055】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、前記本体部分に設けられる伸縮部10及び非伸縮部11の外形線が生理用ナプキン1の長手方向線及び幅方向線にほぼ平行な直線で形成されていたが、
図10に示されるように、円弧状線や波線、折れ線などで形成してもよい。
(2)本生理用ナプキン1では、肌側の両側部に前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部を含むように長手方向に所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーを形成するサイド不織布を設けてもよい。前記立体ギャザーを肌側に起立させるための前記サイド不織布に配設される糸状弾性伸縮部材は、前記不透液性裏面シート2と同様に、伸び率が20%〜40%であるのが好ましい。