(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モータ出力軸を高速軸とし、しゃ断棹のしゃ断棹軸を低速軸とする複数軸で構成された減速機構部と、前記モータ出力軸を回転させて前記しゃ断棹を昇降動作させるブラシレスモータと、前記ブラシレスモータの駆動が停止されて前記しゃ断棹が所定の上昇位置または所定の下降位置に位置した際に作動して前記モータ出力軸或いは他の高速軸(以下包括して「制動用高速軸」という)の回転を制動させる非接触式の電磁ブレーキとを具備した踏切しゃ断機において、前記ブラシレスモータに駆動電圧を印加して前記しゃ断棹を昇降動作させるモータ駆動制御装置であって、
異常時に上昇位置にあった前記しゃ断棹が自重下降する際(以下「自重下降時」と略称する)に、(1)前記制動用高速軸の回転によって前記電磁ブレーキに発生する励磁電力を電源として動作可能に構成され、且つ、(2)当該電磁ブレーキに発生する周期的な励磁電圧の波形信号に基づいて、前記ブラシレスモータの回転速度を一定速度となるように抑制させる、ダイナミックブレーキ制御回路部、
を備えたモータ駆動制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、しゃ断棹の下降速度が大きくなり発電制動がかかると下降速度が遅くなって発電制動が解除され、再び下降速度が大きくなる、という事象が繰り返されてしまい、しゃ断棹がガクガクしながら下降する事象が生じ得た。
【0005】
本発明は、停電や故障等の異常が発生した際に、上昇位置にあったしゃ断棹を一定速度で自重下降させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、
モータ出力軸を高速軸とし、しゃ断棹のしゃ断棹軸を低速軸とする複数軸で構成された減速機構部(例えば、
図1のモータ出力軸331、しゃ断棹軸3、回転伝達機構20)と、前記モータ出力軸を回転させて前記しゃ断棹を昇降動作させるブラシレスモータ(例えば、
図1のブラシレスモータ30)と、前記ブラシレスモータの駆動が停止されて前記しゃ断棹が所定の上昇位置または所定の下降位置に位置した際に作動して前記モータ出力軸或いは他の高速軸(以下包括して「制動用高速軸」という)の回転を制動させる非接触式の電磁ブレーキ(例えば、
図1の電磁ブレーキ50)とを具備した踏切しゃ断機において、前記ブラシレスモータに駆動電圧を印加して前記しゃ断棹を昇降動作させるモータ駆動制御装置であって、
異常時に上昇位置にあった前記しゃ断棹が自重下降する際(以下「自重下降時」と略称する)に、前記制動用高速軸の回転によって前記電磁ブレーキに発生する周期的な励磁電圧の波形信号に基づいて、前記ブラシレスモータの回転速度を一定速度となるように抑制させるダイナミックブレーキ制御回路部(例えば、
図1のDブレーキ制御回路部66)、
を備えたモータ駆動制御装置である。
【0007】
第2の発明は、
前記ダイナミックブレーキ制御回路部は、前記自重下降時の前記制動用高速軸の回転によって前記電磁ブレーキに発生する励磁電力を電源として動作可能に構成された、
第1の発明のモータ駆動制御装置である。
【0008】
第3の発明は、
モータ出力軸を高速軸とし、しゃ断棹のしゃ断棹軸を低速軸とする複数軸で構成された減速機構部(例えば、
図1のモータ出力軸331、しゃ断棹軸3、回転伝達機構20)と、
前記モータ出力軸を回転させて前記しゃ断棹を昇降動作させるブラシレスモータ(例えば、
図1のブラシレスモータ30)と、
前記ブラシレスモータの駆動が停止されて前記しゃ断棹が所定の上昇位置または所定の下降位置に位置した際に作動して前記制動用高速軸の回転を制動させる非接触式の電磁ブレーキ(例えば、
図1の電磁ブレーキ50)と、
第1又は第2の発明のモータ駆動制御装置(例えば、
図1のモータドライバ60)と、
を具備した踏切しゃ断機である。
【0009】
第1又は第3の発明によれば、正常時は、しゃ断棹の昇降動作時にブラシレスモータに駆動電圧が印加されてモータ出力軸が回転する。また、昇降動作の停止時には非接触式の電磁ブレーキが作動され、制動用高速軸の回転が制動されることでしゃ断棹の昇降作動が制止・保持される。
【0010】
そして、しゃ断棹が上昇位置にあるときに停電や故障等の異常が発生すると、しゃ断棹が自重下降するが、このとき、第1又は第3の発明によれば、自重下降により制動用回転軸が回転されることで電磁ブレーキに周期的な励磁電圧の信号が発生する。この信号に基づいて、ブラシレスモータにダイナミックブレーキをかけてその回転速度が一定となるように制御される。したがって、停電や故障等の異常が発生した際に、上昇位置にあったしゃ断棹の自重下降を一定速度にすることができる。
【0011】
第2の発明によれば、異常時のしゃ断棹の自重下降によって電磁ブレーキに発生する励磁電力でダイナミックブレーキ制御回路部を動作させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付する。
【0014】
図1および
図2は、本実施形態の踏切しゃ断機100の制御ブロックの一例を示す図であり、
図1では、踏切しゃ断機100の正常動作時であってしゃ断棹1の昇降動作時における電力及び信号の流れを、
図2では、停電が発生したことによるしゃ断棹1の自重下降時における電力及び信号の流れを示している。実線矢印でその流れを示しており、
図2における破線は、電力或いは信号が流れていないことを示している。また、
図1及び
図2においてハッチングを付したモータドライバ60の構成要素は、
図1,2に該当する動作状態(
図1では正常動作時、
図2では停電時)においては動作していないことを示している。
【0015】
本実施形態の踏切しゃ断機100は、電源部10と、モータ出力軸331を回転させてしゃ断棹1を昇降動作させる三相のブラシレスモータ30と、直流のブレーキ作動信号が入力されることで作動して、しゃ断棹1を所定の上昇位置(垂直状態)又は所定の下降位置(水平状態)で保持するための非接触式の電磁ブレーキ50と、ブラシレスモータ30の駆動を制御するモータ駆動制御装置であるモータドライバ60と、しゃ断棹1を上昇動作又は下降動作させるための制御入力を行うしゃ断機回路70とを備える。
【0016】
モータ出力軸331の回転は、回転伝達機構20を介してしゃ断棹1の支持軸(しゃ断棹軸)3に伝達される。具体的には、回転伝達機構20は、複数の歯車等を有する減速機構部を構成しており、少なくとも高速軸であるモータ出力軸331および低速軸であるしゃ断棹軸3を備える。そして、この減速機構部によってモータ出力軸331の回転速度が減じて伝達され、しゃ断棹軸3を回転させる。これにより、しゃ断棹1は、ブラシレスモータ30の回転方向に応じて下降又は上昇する。また、上昇位置にあったしゃ断棹1が停電等の異常時に自重下降する自重下降時は、減速機構部によってしゃ断棹軸3の回転力がモータ出力軸331に伝達され、モータ出力軸331を回転させる。なお、自重下降時にブラシレスモータ30に回生電力が生じ、モータ駆動部61を介して電源部10に電力が供給されるが、回生電力が一定電力に満たないとモータドライバ60を起動させることができない。
【0017】
また、回転伝達機構20の減速機構部が有する高速軸の1つが、電磁ブレーキ50の制動対象の軸(制動用高速軸)とされている。電磁ブレーキ50により制動用高速軸が制動されると、伝達機構の回転伝達が制止されるため、ブラシレスモータ30によるモータ出力軸331の回転やしゃ断棹軸3の回転も制止されてロック状態となる。ここで、高速軸とは、しゃ断棹軸3の回転に対して高速に回転する軸をいう。また、本実施形態では、電磁ブレーキ50の制動用高速軸と、モータ出力軸331とを同軸とする。すなわち、制動用高速軸は、モータ出力軸331である。なお、制動用高速軸は高速軸であればよく、モータ出力軸331とは別の高速軸としてもよい。
【0018】
電源部10は、しゃ断機回路70の制御のもと、不図示の外部電源から、モータドライバ60を介してブラシレスモータ30へ駆動電力を供給する。また、モータドライバ60の回路全体を動作させるための動作電源(
図1中の網掛け太矢印)を供給する。これによりモータドライバ60が起動し、しゃ断機回路70からのしゃ断棹軸3の上昇指令又は下降指令に基づいて、ブラシレスモータ30を駆動制御する。
【0019】
ブラシレスモータ30は、例えばインナーロータ型の構造を有した三相駆動の電動機であり、その構造の例を概略的に
図3に示す。回転子33は、回転軸であるモータ出力軸331の周方向にN極の永久磁石とS極の永久磁石とが交互に配置された4極の永久磁石333を備え、モータ出力軸331を軸中心として回転する。一方、固定子31には、120°毎の等角度間隔で3つのスロットが画成されており、各スロットに配置された三相(U相、V相、W相)のコイル311,313,315を備える。各相のコイル311,313,315は、中性点において相互に接続されている。
【0020】
電磁ブレーキ50は、構造的にはブラシレスモータ30と同様の回転電気機械であり、その構造の例を概略的に
図4に示す。電磁ブレーキ50において、回転子53は、モータ出力軸331と同軸となる回転軸531と一体に構成され、4極の永久磁石533が回転軸531とともに回転するように構成されている。一方、固定子51は、三相(U相、V相、W相)のスロットのうちの2相にコイル(電磁石用コイル)511,513を配置して備え、各コイル511,513を直列接続して構成される。
【0021】
この電磁ブレーキ50の作動時は、しゃ断機回路70からのブレーキ作動信号(DC)の入力によってコイル511,513が通電されることで固定子51と回転子53との間に制動力が生じ、モータ出力軸331の回転を非接触に制動する。一方で、電磁ブレーキ50の解除時(OFF)は、モータ出力軸331の回転に伴って回転子53が回転することから、電磁ブレーキ50に励磁電圧が発生する。すなわち、電磁ブレーキ50の励磁電圧の信号は、モータ出力軸331の回転に相応する信号と言える。但し、発生した励磁電圧そのものは振幅が大きい交流信号であるため、本実施形態では種々の信号処理を施した上で、ブラシレスモータ30の駆動制御に用いることとする。まず、発生した励磁電圧信号(AC)は、モータドライバ60を構成するブレーキ励磁波形変換部65の降圧回路部651に出力される。
【0022】
なお、ブラシレスモータ30の極・相・スロットの構成は
図3に例示した構成に限らない。また、電磁ブレーキ50についても同様に、
図4に例示した極・相・スロットの構成に限定されない。ブラシレスモータ30および電磁ブレーキ50のいずれも、極数、相数、およびスロット数を適宜選択して構成してよい。
【0023】
図1,2に戻り、モータドライバ60は、ブラシレスモータ30を駆動するモータ駆動部61と、モータ駆動部61を制御するモータ制御部63と、昇降動作中に電磁ブレーキ50に発生する励磁電圧波形の変化周期を検出するブレーキ励磁波形変換部65と、励磁電圧波形の変化周期に基づきブラシレスモータ30にダイナミックブレーキ(以下「Dブレーキ」と略称する)をかけるDブレーキ制御回路部66と、励磁電圧波形の変化周期に基づきブラシレスモータ30の回転角(制御用回転角)を検出する回転角検出部67とを備える。
【0024】
モータ駆動部61は、FET(Field Effect Transistor)等を用いて構成されるいわゆるインバータ回路を有する。正常動作時であれば、電源部10から供給される電力をモータ制御部63の制御信号に応じた三相交流電力の駆動電力に変換してブラシレスモータ30に供給する。また、異常時にしゃ断棹1が自重下降する際には、ブラシレスモータ30が回生電力を発生させるが、その回生電力を、インバータ動作とは逆方向の変換動作を行って電源部10に出力する。なお、回生電力が一定電力に満たない間は、モータドライバ60を起動させるほどの十分な電力とはならない。そのため、
図2では、モータ駆動部61から電源部10への矢印を破線で示し、電源部10からモータドライバ60への太矢印を白抜きの破線で示した。
【0025】
モータ制御部63は、しゃ断機回路70からの上昇指令又は下降指令を受けてブラシレスモータ30をしゃ断棹1の上昇方向又は下降方向に駆動させ、しゃ断棹1を昇降動作させる。その際、モータ制御部63は、回転角検出部67が随時検出しているブラシレスモータ30の制御用回転角を用いてブラシレスモータ30の駆動を制御するとともに、上昇動作時であればしゃ断棹1が上昇基準位置に達したこと、下降動作時であればしゃ断棹1が下降基準位置に達したことを検知してブラシレスモータ30の駆動を停止させる。例えば、モータ制御部63は、検出された制御用回転角を用いてブラシレスモータ30の回転速度制御を行う。また、制御用回転角を用い、昇降動作開始時からのブラシレスモータ30の回転数を計数する等して上昇基準位置/下降基準位置に達したことを検知する。昇降動作を開始してから上昇基準位置/下降基準位置に達するまでのブラシレスモータ30の回転数は既知であるため、予め設定しておくことが可能である。
【0026】
また、モータ制御部63は、Dブレーキ制御回路部66に制御信号を出力して、Dブレーキ制御回路部66を動作させるか停止させるかを制御する。この制御信号は、Hレベル或いはLレベルの信号であり、Hレベルの場合にDブレーキ制御回路部66を停止させる信号(以下「動作停止信号」という)となる。すなわち、正常動作時には動作停止信号が出力され、停電や故障等で信号レベルがLレベルとなったときにDブレーキ制御回路部66を動作させる指示信号(以下「動作許容信号」という)が出力されることとなる。
【0027】
ブレーキ励磁波形変換部65は、降圧回路部651と、整流回路部653と、電圧検出部655とを有して構成される。
降圧回路部651は、しゃ断棹1の昇降動作中又は自重下降時に電磁ブレーキ50から入力される励磁電圧信号を降圧し、整流回路部653に出力する。また、降圧した励磁電圧信号を、Dブレーキ制御回路部66の電源として出力する。
【0028】
整流回路部653は、降圧回路部651からの入力電圧信号を全波整流し、電圧検出部655に出力する。電圧検出部655は、整流回路部653からの入力電圧信号から後述するパルス信号を生成してDブレーキ制御回路部66に出力する一方、後述する論理信号を生成して回転角検出部67に出力する。この電圧検出部655がDブレーキ制御回路部66に出力したパルス信号は自重下降時におけるブラシレスモータ30のDブレーキ制御に用いられ、回転角検出部67に出力した論理信号は正常動作時におけるブラシレスモータ30の駆動制御に用いられる。
【0029】
図5(a)に、励磁電圧波形の概略例を示す。また、(a)に示す励磁電圧波形の励磁電圧信号を降圧回路部651で降圧し、整流回路部653で整流した電圧波形を(b)に、電圧検出部655で生成されたパルス信号を(c)に、電圧検出部655で生成された論理信号を(d)に示す。
【0030】
電磁ブレーキ50の回転子53はモータ出力軸331の回転に伴って回転することから、電磁ブレーキ50が解除(OFF)され、モータ出力軸331が回転し始めると発生する励磁電圧は、
図5(a)に示すように、電磁ブレーキ50の回転に合わせて周期的に変化する。したがって、励磁電圧波形を
図5(b)に示すように降圧・整流し、(c)に示すようなパルス信号を生成することで、電磁ブレーキ50の回転周期すなわちブラシレスモータ30の回転周期を検出できる。なお、(c)のパルス信号は、(b)の電圧波形の立ち上がりを検出して所定時間幅のパルス波を発生させることで生成される。また、(d)の論理信号は、(b)の電圧波形を所定の閾値Dthを境に2値の論理信号に変換することで生成される。
【0031】
図1,2に戻り、Dブレーキ制御回路部66は、励磁電圧波形の変化周期から得たブラシレスモータ30の回転周期を用いてモータ駆動部61を制御することで、自重下降時におけるブラシレスモータ30の回転速度を一定速度となるように抑制させるダイナミックブレーキ制御を実行する回路部である。正常動作時には、モータ制御部63から動作停止信号が入力されるため、Dブレーキ制御回路部66は動作を停止するが(
図1で網掛けで示している)、停電や故障等の際は動作許容信号が入力されるため、起動することとなる(
図2)。
【0032】
また、Dブレーキ制御回路部66は、モータドライバ60の動作電力より低い電力で動作可能であり、しゃ断棹1の自重降下時に降圧回路部651から入力される励磁電力で動作可能である。Dブレーキ制御回路部66は、降圧回路部651から入力される励磁電圧波形を定電圧電源に変換するための定電圧回路661を備えている。
【0033】
Dブレーキ制御回路部66の動作は、電圧検出部655から入力されるパルス信号をDブレーキ制御信号としてモータ駆動部61に出力し、ブラシレスモータ30にDブレーキをかける制御動作である。より具体的には、モータ駆動部61の回路動作(スイッチング動作)を制御して、回生動作中のブラシレスモータ30にダイナミックブレーキをかける。これにより、ブラシレスモータ30に回転速度に比例したブレーキ力を発生させて、ブラシレスモータ30の回転速度を一定速度となるように抑制する。なお、しゃ断棹1の自重下降に要する下降時間が希望する時間となり、目標とする回転速度となるようなデューティ比やブレーキ力を発生させるDブレーキの制御パラメータを予め設定しておくと好適である。
【0034】
また、
図5の説明に戻ると、本実施形態では、電磁ブレーキ50において回転子53の永久磁石533が4極であり、固定子51が二相・2スロットであることから、励磁電圧波形の1回の変化周期で回転軸531(本実施形態ではモータ出力軸331)が半回転していることを示す。したがって、正常動作時におけるブラシレスモータ30の駆動制御にあたっては、
図5(b)に示すように励磁電圧波形を降圧・整流した後、所定の閾値Dthを境に(d)に示すように2値の論理信号に変換することで回転軸531の回転を180°単位で検出でき、その変化周期から、回転軸531の回転角すなわちモータ出力軸331の回転角を知ることができる。
【0035】
モータ出力軸331(および制動対象軸である回転軸531)は高速軸であり、低速軸であるしゃ断棹軸3に比べて十分に高い回転比(例えば10倍以上)である。そのため、励磁電圧波形の変化周期から判別されるモータ出力軸331の回転角に誤差が生じたとしても、しゃ断棹1の昇降位置が大きくずれることはなく、制御上、問題とはならない。
【0036】
また、ブラシレスモータ30と電磁ブレーキ50とでは、極・相・スロットの構成が異なる。そこで、正常動作時に動作する回転角検出部67は、このブラシレスモータ30の極・相・スロットの構成と電磁ブレーキ50の極・相・スロットの構成との関係を用いて励磁電圧波形の変化周期を、ブラシレスモータ30の極・相・スロットの構成に応じた変化周期に変換し、ブラシレスモータ30の回転角を制御用回転角として検出する。
【0037】
次に、踏切しゃ断機100の動作を説明する。先ず、停電時を例に異常時における踏切しゃ断機100の動作を説明する。停電時においてしゃ断棹1が上昇位置にある場合、
図2に示すようにしゃ断棹1を上昇位置で保持するために作動していた電磁ブレーキ50が解除(しゃ断機回路70から電磁ブレーキ50への駆動電源がOFF)されることから、しゃ断棹1が自重で下降し始める。また、停電のため、モータドライバ60への供給電力が停止されることから、モータ制御部63は回路動作を停止し、Dブレーキ制御回路部66への信号が動作許容信号(Lレベル信号)となる。
【0038】
しゃ断棹1が自重下降を始めると、ブレーキ励磁波形変換部65が電磁ブレーキ50に発生した励磁電圧を降圧してDブレーキ制御回路部66の電源電力をDブレーキ制御回路部66へ供給し始める。すると、動作許容信号が入力されているDブレーキ制御回路部66は回路動作を開始する。
【0039】
自重下降中、ブレーキ励磁波形変換部65は、電磁ブレーキ50に発生した励磁電圧波形の変化周期を随時検出し、ブラシレスモータ30の回転周期に同期したパルス信号をDブレーキ制御回路部66に出力する。そのため、Dブレーキ制御回路部66は、入力されたパルス信号をDブレーキ制御信号としてモータ駆動部61に出力して、ブラシレスモータ30にダイナミックブレーキをかける。これにより、ブラシレスモータ30の回転速度が一定速度となるように抑制され、しゃ断棹1は一定速度で自重下降する。
【0040】
次に、正常動作時は、踏切しゃ断機100において設置先の踏切に列車が接近した旨の通知を外部から受けると、
図1に示すように、しゃ断機回路70の制御のもと、電源部10がモータ電源を供給してモータドライバ60を起動(ON)し、しゃ断棹1の下降動作を指示する下降指令を出力する。また、電磁ブレーキ50を解除(OFF)する。そして、モータドライバ60においてモータ制御部63が、下降指令に応答してブラシレスモータ30をしゃ断棹1の下降方向に駆動させ、しゃ断棹1を下降動作させる。
【0041】
下降動作中は、ブレーキ励磁波形変換部65が、電磁ブレーキ50に発生した励磁電圧波形の変化周期を随時検出する。そして、回転角検出部67が、励磁電圧波形の変化周期からブラシレスモータ30の制御用回転角を随時検出する。モータ制御部63は、この制御用回転角を用いてモータ駆動部61の駆動を制御するとともに、しゃ断棹1が下降基準位置に達したことを検知してモータ駆動部61によるブラシレスモータ30の駆動を停止させる。その後は、しゃ断機回路70が、モータ電源のモータドライバ60への供給を停止するとともに、電磁ブレーキ50を作動させてしゃ断棹1を下降位置で保持させる。
【0042】
この間、モータ制御部63からDブレーキ制御回路部66へは動作停止信号(Hレベル)が出力されているため、Dブレーキ制御回路部66は停止した状態である。
【0043】
続いて、列車が踏切を通過し終えた旨の通知を受けると、しゃ断機回路70は、再び電源部10からモータ電源を供給させてモータドライバ60を起動し、しゃ断棹1の上昇動作を指示する上昇指令を出力するとともに、電磁ブレーキ50を解除(OFF)する。そして、モータドライバ60においてモータ制御部63が、上昇指令に応答してブラシレスモータ30をしゃ断棹1の上昇方向に駆動させ、しゃ断棹1を上昇動作させる。
【0044】
上昇動作中は、ブレーキ励磁波形変換部65が電磁ブレーキ50に発生した励磁電圧波形の変化周期を随時検出し、回転角検出部67が励磁電圧波形の変化周期からブラシレスモータ30の制御用回転角を随時検出する。そして、モータ制御部63は、制御用回転角を用いてモータ駆動部61の駆動を制御するとともに、しゃ断棹1が上昇基準位置に達したことを検知してモータ駆動部61によるブラシレスモータ30の駆動を停止させる。その後は、しゃ断機回路70が、モータ電源のモータドライバ60への供給を停止するとともに、電磁ブレーキ50を作動させてしゃ断棹1を上昇位置で保持させる。この間、モータ制御部63からDブレーキ制御回路部66へは動作停止信号(Hレベル)が出力されているため、Dブレーキ制御回路部66は停止した状態である。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、しゃ断棹1の自重下降時は、電磁ブレーキ50に発生する励磁電力によってDブレーキ制御回路部66が動作可能となる。また、しゃ断棹1が自重下降を始めると、ブレーキ励磁波形変換部65が、電磁ブレーキ50に発生した励磁電圧波形の変化周期からブラシレスモータ30の回転周期に同期したパルス信号を生成してDブレーキ制御回路部66に出力する。Dブレーキ制御回路部66は、このパルス信号を用いてブラシレスモータ30にダイナミックブレーキをかけることができる。これによれば、停電や故障等の異常が発生した際に、上昇位置にあったしゃ断棹1を一定速度で自重下降させることができる。
【0046】
なお、上記した実施形態では、異常時として停電が発生した場合を例示したが、踏切しゃ断機100には、停電の他にも、故障等の何らかの異常が発生し得る。例えば、モータ制御部63の回路に不具合が生じた場合が考えられる。踏切しゃ断機100は、このモータ制御異常が発生した場合にも、上記した実施形態と同様にDブレーキ制御回路部66によるDブレーキ制御を行う。すなわち、モータ制御異常の発生時には、Dブレーキ制御回路部66へ入力される制御信号が動作許容信号(Lレベル信号)となるように構成されているため、停電時と同様に、故障でしゃ断棹1が自重下降する際も、ブラシレスモータ30にダイナミックブレーキをかけることができる。
【0047】
また、しゃ断棹1が上昇位置で保持されているときに装置異常となり、電磁ブレーキ50が解除(OFF)される異常もある。この場合も停電時と同様に、しゃ断棹1の自重下降に対して、ダイナミックブレーキをかけることができる。
【0048】
また、しゃ断棹1の自重下降時におけるブラシレスモータ30のダイナミックブレーキの制御方式は上述した実施形態の回路構成に限らない。
図6に、ダイナミックブレーキの制御方式の例を、回路構成とともに示す。例えば、上記した実施形態で説明したような、Dブレーキ制御回路部66がモータ駆動部61を介してブラシレスモータ30にダイナミックブレーキをかける制御方式は、
図6(a)のFET制御といえる。別の例として、発電制御回路を用いた発電制御方式を採用して、
図6(b)のように回路構成を変更してもよい。また、相関短絡制御回路を用いた短絡制御方式を採用して、
図6(c)のように回路構成を変更してもよい。
【0049】
また、上記した実施形態では、電磁ブレーキ50に発生した励磁電圧波形に基づいてブラシレスモータ30の駆動制御を行うこととして説明したが、
図7に示すように、モータ出力軸331の回転を検出するセンサ400を設けて、このセンサ400の検出信号に基づいてブラシレスモータ30の駆動制御を行うこととしてもよい。
図7は、
図1に対応する、変形例となる踏切しゃ断機200の構成例を示す図である。ブラシレスモータ30のモータ出力軸331の回転を検出するセンサ400を設け、回転角検出部67が、センサ400の検出信号から制御用回転角を検出することとした他は、上記の実施形態の踏切しゃ断機100の構成と同じである。