特許第6668048号(P6668048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6668048
(24)【登録日】2020年2月28日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/23 20060101AFI20200309BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20200309BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   E06B7/23 A
   E06B7/22 A
   E06B3/46
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-227639(P2015-227639)
(22)【出願日】2015年11月20日
(65)【公開番号】特開2017-95928(P2017-95928A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】白浜 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】鎌野 裕介
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−028189(JP,U)
【文献】 実開昭57−002996(JP,U)
【文献】 実開平03−025783(JP,U)
【文献】 実開昭47−011715(JP,U)
【文献】 実開昭58−186084(JP,U)
【文献】 実開昭60−015581(JP,U)
【文献】 実開昭60−184990(JP,U)
【文献】 米国特許第06679005(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、前記枠体に対して移動可能に設けられた可動障子と、気密材とを備える建具であって、
前記枠体には、前記気密材を装着する装着溝が形成され、
前記装着溝の開口は、前記可動障子で閉鎖される開口に面し、かつ、見込み方向に沿った内周面に形成され、
前記気密材は、硬質樹脂で構成された本体部と、軟質樹脂で構成されたタイト部とを備え、
前記本体部は、表面と、前記表面に対向する裏面と、側面と、前記側面に対向する連結面とを備えて中実の板状に形成されたベース部と、前記ベース部の前記裏面から前記見込み方向に直交する方向に突出されて前記装着溝に取り付けられる取付部とを備えて構成され、
前記タイト部は、ホローを有する中空チューブ状に形成され、かつ、前記ベース部の前記連結面に連結され、
前記ベース部および前記タイト部は、前記見込み方向に沿って配置され、
前記気密材は、前記装着溝に前記取付部が装着され、前記枠体のコーナー部に位置する前記取付部は切断され、前記ベース部および前記タイト部は切断されずに連続して設けられて前記コーナー部に沿って折曲され
前記可動障子は、閉鎖時に前記見込み方向に移動して前記タイト部に圧接する
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具において、
前記タイト部は、前記連結面に接合された基端部と、前記基端部の表面側の端部から延出された上片部と、前記基端部の裏面側の端部から延出された下片部と、前記上片部および前記下片部の端縁間に配置された半円部とを備えて構成され、
前記半円部の中心点は、前記表面および前記裏面から等距離にある前記ベース部の中立線よりも前記下片部の端縁側に配置されている
ことを特徴とする建具
【請求項3】
請求項1に記載の建具において、
前記タイト部は、前記連結面に接合された基端部と、前記基端部の表面側の端部および裏面側の端部間に配置された円弧部とを備えて構成され、
前記円弧部の中心点は、前記表面および前記裏面から等距離にある前記ベース部の中立線上に配置されている
ことを特徴とする建具
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の建具において、
前記裏面の前記側面側の端部には第1当接部が前記裏面から突出して形成され、
前記裏面の前記連結面側の端部には第2当接部が前記裏面から突出して形成され、
前記取付部および前記第1当接部の間と、前記取付部および前記第2当接部の間とには凹部が形成されている
ことを特徴とする建具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体および障子を有する建具において、前記枠体および障子間に配置される気密材と、この気密材を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、窓枠などの枠体と、枠体内に配置された障子とを有する建具において、枠体および障子間に配置される気密材が知られている。この気密材は、例えば窓枠側に取り付けられ、障子に当接することで気密性を確保している。
【0003】
ところで、気密材を窓枠に取り付ける場合、上枠、下枠、左右の縦枠の4本の各枠に合わせて4本の気密材を用意し、各気密材を各枠に取り付けるものが知られている。この場合、各気密材を当接させて気密ラインを連続させているが、継ぎ目が生じるため、気密性を向上することが難しいという課題がある。
【0004】
このため、上枠、下枠、左右の縦枠の4本の各枠に対して、連続する1本の気密材を引き回して取り付けたものが知られている(特許文献1参照)。
特許文献1では、サッシ面に平行に設けられたベースにリップを結合したシール部と、サッシの溝に差し込む断面矢印状の取付部とを一体に結合したプラサッシ用シール材を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2557595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1では、ベースに対して断面矢印状の取付部とは反対側にシール部が設けられており、その反対側に配置される枠や框などにシール部を接触させて気密性を確保するものである。このため、プラサッシ用シール材を窓枠に取り付けて、障子に対して室外側あるいは室内側から当接させて気密性を確保する場合、ベースおよび取付部の幅方向の中心線Y−Yが窓枠の見込み方向に沿うように配置する必要がある。
このため、プラサッシ用シール材を窓枠のコーナー部で折曲させる場合、ベースおよび取付部の幅方向の中心線Y−Yが曲げの中立線となる。したがって、前記折り曲げによって、前記中心線Y−Yからベースの幅方向の一方の端面側までが圧縮され、中心線Y−Yからベースの幅方向の他方の端面側までが伸長されることになり、中立線からベースの幅方向の各端面までの長さが大きいために、ベースを硬質樹脂等で形成した場合には、シールの折り曲げに大きな力が必要という課題があった。
【0007】
本発明の目的は、容易に折り曲げることができて建具に四周連続して配置することができ、気密性を向上できる気密材および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、枠体と、前記枠体に対して移動可能に設けられた可動障子と、気密材とを備える建具であって、前記枠体には、前記気密材を装着する装着溝が形成され、前記装着溝の開口は、前記可動障子で閉鎖される開口に面し、かつ、見込み方向に沿った内周面に形成され、前記気密材は、硬質樹脂で構成された本体部と、軟質樹脂で構成されたタイト部とを備え、前記本体部は、表面と、前記表面に対向する裏面と、側面と、前記側面に対向する連結面とを備えて中実の板状に形成されたベース部と、前記ベース部の前記裏面から前記見込み方向に直交する方向に突出されて前記装着溝に取り付けられる取付部とを備えて構成され、前記タイト部は、ホローを有する中空チューブ状に形成され、かつ、前記ベース部の前記連結面に連結され、前記ベース部および前記タイト部は、前記見込み方向に沿って配置され、前記気密材は、前記装着溝に前記取付部が装着され、前記枠体のコーナー部に位置する前記取付部は切断され、前記ベース部および前記タイト部は切断されずに連続して設けられて前記コーナー部に沿って折曲され、前記可動障子は、閉鎖時に前記見込み方向に移動して前記タイト部に圧接することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、気密材を硬質樹脂製の本体部と、軟質樹脂製のタイト部とで構成し、タイト部を本体部のベース部における連結面に連結して設けたので、ベース部の側方にタイト部が配置されることになる。このため、気密材を、窓枠や障子の一方に取り付け、他方に対して室内外方向からタイト部を接触させて気密性を確保する場合、ベース部およびタイト部が建具の見込み方向に沿って配置され、取付部はベース部から見込み方向に直交する方向、例えば見付け方向に突出するように配置される。
従って、気密材を窓枠等の枠体に沿って配置してコーナー部で折曲する場合に、建具の見込み方向に沿って、つまり、ベース部の表面、裏面に沿って曲げの中立線が設定される。このため、ベース部を高さ方向、つまり厚さ寸法が小さい方向に折り曲げることができる。したがって、取付部を幅方向に沿って切断すれば、ベース部およびタイト部を容易に折り曲げることができ、気密材を枠体のコーナー部に沿って配置できる。これにより、1本の気密材を枠体に沿って配置できるため、4本の気密材を配置する場合に比べて気密材間の継ぎ目が少なくなり、気密性能を容易に向上できる。すなわち、本発明によれば、1本の気密材で気密構造を構成できるので、4本の気密材を用いる場合に比べて建具の気密性を容易に向上できる。
また、タイト部をホロー形状としたので、タイト部をヒレ形状とした場合に比べて、気密材を曲げた際にタイト部が立ち上がってしまうことを防止できる。このため、タイト部を確実に可動障子に密着させることができ、タイト部分に隙間が生じることを防止できる。さらに、タイト部が立ち上がってしまうと、可動障子に常時圧接する場合もあり、その場合には可動障子の開閉時の操作力の増加の原因となるが、本発明では、タイト部が立ち上がらないため、可動障子の開閉時に気密材が可動障子に接触することも防止でき、操作力の増加を防止できる。
【0010】
本発明の建具において、前記タイト部は、前記連結面に接合された基端部と、前記基端部の表面側の端部から延出された上片部と、前記基端部の裏面側の端部から延出された下片部と、前記上片部および前記下片部の端縁間に配置された半円部とを備えて構成され、前記半円部の中心点は、前記表面および前記裏面から等距離にある前記ベース部の中立線よりも前記下片部の端縁側に配置されていることが好ましい。
このような構成によれば、タイト部における前記ベース部の表面から突出する寸法を、半円部の中心点が中立線と一致する場合や、中立線よりも上片部の端縁側に配置される場合と比較して、小さくできる。このため、前記気密材をテラス窓のように人が出入りする建具の下枠に取り付けた場合に、ベース部に対する段差を小さくでき、容易にバリアフリー対応の建具とすることができる。
また、タイト部において、気密材を曲げた際の中立線の圧縮側(コーナー内側)に位置する上片部側の体積が小さくなり、伸長側(コーナー外側)に位置する下片部側の体積が大きくなる。このため、気密材を曲げた際に、圧縮側や伸長側で皺等を発生し難くできる。このため、気密材の曲げ部分でピンホール(隙間)が生じて気密性が低下することを防止できる。
【0011】
本発明の建具において、前記タイト部は、前記連結面に接合された基端部と、前記基端部の表面側の端部および裏面側の端部間に配置された円弧部とを備えて構成され、前記円弧部の中心点は、前記表面および前記裏面から等距離にある前記ベース部の中立線上に配置されていることが好ましい。
このような構成によれば、タイト部を略円筒状に形成でき、タイト部として必要な寸法や体積を小さくできる。このため、気密材の製造コストを低減できる。
【0012】
本発明の建具において、前記裏面の前記側面側の端部には第1当接部が前記裏面から突出して形成され、前記裏面の前記連結面側の端部には第2当接部が前記裏面から突出して形成され、前記取付部および前記第1当接部の間と、前記取付部および前記第2当接部の間とには凹部が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、本体部に、第1当接部、第2当接部を形成し、これらの当接部が、枠体の表面に当接するように凹部を形成したので、気密材を枠体に取り付ける際に、ベース部を押し込むことで、取付部を装着溝内に容易に押し込むことができる。
また、装着溝の開口部に公差が生じても、開口部が凹部に面していて気密材に接触しないように構成できるので、取付部が確実に装着溝に係止される状態まで容易に押し込むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の気密材および建具によれば、気密材を容易に折り曲げることができて建具に四周連続して配置することができ、気密性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る建具である片引き窓を示す内観姿図。
図2】前記実施形態に係る片引き窓を示す斜視図。
図3】前記実施形態に係る片引き窓を示す縦断面図。
図4】前記実施形態に係る片引き窓を示す横断面図。
図5】前記実施形態に係る片引き窓の下枠を示す拡大断面図。
図6】前記実施形態に係る気密材の取付構造を示す斜視図。
図7】前記実施形態に係る気密材の取付構造を示す断面図。
図8】前記実施形態に係る気密材に障子が当接した状態を示す断面図。
図9】前記実施形態に係る気密材の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態に係る建具である片引き窓1は、図1〜4に示すように、建物躯体の開口部に設置されるものであり、窓枠2(枠体)と、窓枠2内に固定された固定面材3と、窓枠2内に左右方向にスライド移動可能に配置された内障子4(可動障子)とを備えた内動片引き窓である。
【0017】
窓枠2は、図2の室外側から見た斜視図にも示すように、上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24を四周枠組みし、縦枠23,24間に中骨25を設けて構成されている。上枠21、下枠22、左右の縦枠23,24および中骨25は、樹脂製の押出形材によって形成された樹脂枠材である。図1において右側(図2において左側)に示す縦枠23は、内障子4に対して戸先側に位置しており、後述する戸先側の縦框43が当接する戸先側の縦枠を構成している。図1において左側(図2において右側)に示す縦枠24は、内障子4に対して戸尻側に位置する戸尻側の縦枠を構成している。
【0018】
上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24は、図3,4に示すように、室外見付け片部210と、見込み片部220と、室内見付け片部230とをそれぞれ有している。上枠21、下枠22、縦枠23の各室外見付け片部210と中骨25とには、図3、4,5に示すように、閉鎖位置にある内障子4に対向して位置する気密材26が四周連続して取り付けられている。
縦枠24には、気密材26の代わりに目地ガスケット28が装着されている。また、上枠21および下枠22において、中骨25および縦枠24間にも、気密材26の代わりに目地ガスケット(図示略)が取り付けられている。目地ガスケット28の中骨25側の端部は、上枠21および下枠22に固定される図示しない風止板に当接されている。
上枠21には、内障子4を左右方向に案内する上レール241が形成されており、下枠22には、内障子4を左右方向に案内する下レール242が形成されている。
縦枠23、24には、内障子4の戸当り部243、244が形成されている。
【0019】
固定面材3は、図4に示すように、トリプルガラス等からなる面材31を備えている。面材31の室内面側周縁は、上枠21、下枠22、縦枠24の各室外見付け片部210と中骨25の室内見付け片部251とに当接している。面材31の室外側周縁は、上枠21、下枠22、縦枠24および中骨25に装着された押縁27に当接している。
このように面材31は、上枠21、下枠22、縦枠24および中骨25によって図1に示す片引き窓1の左半分の位置に固定されている。
【0020】
内障子4は、図1〜4に示すように、上框41、下框42、左右の縦框43,44およびトリプルガラス等からなる面材45を四周框組みして構成されている。上框41、下框42および左右の縦框43,44は、樹脂製の押出形材によって形成された樹脂框材である。図1において右側に示す縦框43は戸先側の縦框であり、図1に示す縦框44は戸尻側の縦框(召合せ框)である。
面材45は、上框41、下框42、縦框43,44と、これらの框に装着された押縁47とで挟持されている。
【0021】
内障子4を閉鎖位置に移動した際に、下枠22および縦枠23において、内障子4の室外側に露出する部分には、アルミニウムやステンレス等の金属製とされた下枠用カバー材50および縦枠用カバー材60が取り付けられている。
下枠用カバー材50は、図3,5にも示すように、表面板部材51および立ち上がり部材55の2部材で構成されて下枠22に取り付けられている。
縦枠用カバー材60は、図4に示すように、表面板部材61および立ち上がり部材65の2部材で構成されて縦枠23に取り付けられている。
【0022】
次に、上枠21、下枠22、縦枠23、中骨25に取り付けられる気密材26について説明する。
気密材26は、図3〜5に示すように、上枠21、下枠22、縦枠23の各室外見付け片部210に形成された装着溝211と、中骨25の召合せ部に形成された装着溝252とに装着されている。
これらの装着溝211、252は、内障子4の室外側において、開口内周面(各枠の見込み面)に開口して形成されている。すなわち、上枠21の装着溝211は下方に開口され、下枠22の装着溝211は上方に開口され、縦枠23の装着溝211は中骨25側に開口され、中骨25の装着溝252は縦枠23側に開口されている。すなわち、装着溝211、装着溝252は、一般的な気密材が取り付けられる溝のように、気密材が当接する対象物、本実施形態では内障子4に向かう方向に開口するのではなく、内障子4に向かう方向(つまり見込み方向室内側)に対して直交する方向に開口している。
これらの装着溝211、装着溝252には、図6にも示すように、1本の気密材26が連続して取り付けられている。
【0023】
次に、気密材26について、下枠22の装着溝211に気密材26が取り付けられた状態を示す図7を参照して詳細に説明する。なお、上枠21、縦枠23、中骨25に対する気密材26の取り付け構造は、下枠22と同様であるため、説明を省略する。
気密材26は、硬質樹脂で構成された本体部260と、軟質樹脂で構成されたタイト部270とを備え、二種類の合成樹脂を用いたダブルモールドによって押出成型されたものであり、上枠21、下枠22、縦枠23、中骨25に渡って装着できる長さ寸法に切断された長尺部材である。
【0024】
本体部260は、ベース部261と、取付部265とを備えている。ベース部261は、板状に形成され、装着溝211、装着溝252に取り付けられた際に、上枠21、下枠22、縦枠23、中骨25の開口内周側に露出する表面261Aと、装着溝211,252側に面する裏面261Bと、室外側に面する側面261Cと、側面261Cに対向する連結面261Dとを備えている。したがって、連結面261Dは、室内側に面して配置され、この連結面261Dに連続して前記タイト部270が形成されている。
なお、以下の説明において、気密材26が連続する方向、つまり各枠21〜23、中骨25の長手方向を、気密材26においても長手方向と定義する。また、気密材26を装着溝211、装着溝252に装着した際に、窓枠2の見込み方向に沿った方向、つまり側面261Cおよび連結面261Dに直交する方向を幅方向と定義する。さらに、気密材26を装着溝211、装着溝252に装着した際に、各枠21〜23、中骨25の見付け方向、つまり表面261Aおよび裏面261Bに直交する方向を気密材26の高さ方向とし、高さ方向において装着溝211、252の底面に向かう方向を下方向とし、前記下方向の反対方向を上方向と定義する。
【0025】
ベース部261の裏面261Bにおいて、側面261C側の端部には第1当接部262Aが裏面261Bから前記下方向に突出して形成され、連結面261D側の端部近くには第2当接部262Bが裏面261Bから前記下方向に突出して形成されている。したがって、第1当接部262A、第2当接部262Bと、取付部265との間には、表面261A側(前記上方向)に向かって凹む凹部263が形成されている。
【0026】
取付部265は、ベース部261の裏面261Bから前記下方向に突出して形成され、ベース部261の長手方向に連続して形成されている。
取付部265は、裏面261Bから連続し、装着溝211、252内に挿入される挿入部266と、挿入部266から前記下方向に延出され、前記幅方向に沿った寸法である幅寸法が挿入部266よりも小さくされた突出部267と、突出部267の先端から第1当接部262A側、第2当接部262B側にそれぞれ延出された係止片部268とを備えている。係止片部268は、突出部267に対して30〜35度程度の角度方向に延出されている。
【0027】
挿入部266は、前記高さ方向において、第1当接部262A、第2当接部262Bよりも下方向まで延長されている。すなわち、挿入部266と突出部267との段差部266Aの高さ方向の位置は、第1当接部262A、第2当接部262Bよりも下側とされている。
各係止片部268の端縁部268Aの幅方向の位置は、挿入部266と第1当接部262Aとの間、挿入部266と第2当接部262Bとの間にそれぞれ位置している。また、各係止片部268の端縁部268Aの高さ方向の位置は、挿入部266よりも下側とされている。
【0028】
タイト部270は、ベース部261の連結面261D側に連続して形成されている。タイト部270は、ホローを有する中空チューブ状に形成されている。すなわち、タイト部270は、連結面261Dに接合された基端部271と、基端部271の上端部から斜め上向に延出された上片部272と、基端部271の下端部から斜め下方に延出された下片部273と、上片部272および下片部273の端縁間に配置された半円部274とを備えている。
本実施形態の気密材26では、上片部272の表面と、連結面261Dに沿った見付け方向との角度θ1は75度、つまり表面261Aに沿った見込み方向に対する角度は90度−θ1=15度とされている。また、下片部273の表面と、連結面261Dに沿った見付け方向との角度θ2は45度とされている。
このため、タイト部270において、ベース部261の表面261Aの高さ位置よりも上方には、上片部272と半円部274の一部が配置される。また、半円部274の中心点Oは、ベース部261の高さ方向の中心を通る中立線L1よりも下方に位置する。このため、タイト部270において、中立線L1よりも上側(窓枠2の開口側)に位置する部分は、中立線L1よりも下側に位置する部分よりも体積が小さい。
【0029】
次に、気密材26を装着溝211、252に取り付ける取付構造について、下枠22の装着溝211に取り付ける例に基づいて説明する。
図5に示すように、下枠22において装着溝211は室外見付け片部210の上面に開口するように形成されている。すなわち、装着溝211は、室外見付け片部210の室内側に面する立ち上がり片部215と、この立ち上がり片部215の高さ方向の中間部から室外側に延出された底面部216と、底面部216から上方に延出された側面部217とで区画されている。側面部217の上端は、段部を介して室外見付け片部210の上面部212に連続している。このため、気密材26のベース部261が載置される立ち上がり片部215および側面部217の上面は、上面部212よりも一段低い位置に形成されている。この状態で、ベース部261の表面261Aと、上面部212上に載置される下枠用カバー材50の表面とがほぼ同一高さレベルとされている。
【0030】
立ち上がり片部215および側面部217の上端部には、互いに近づく方向に突出する係止突起213が形成されている。このため、装着溝211の開口の幅寸法は、装着溝211の内部の幅寸法よりも小さく設定されている。係止突起213間の幅寸法は、気密材26の装着時に、取付部265を押し込み可能な寸法に設定されている。
係止突起213の高さ寸法は、第1当接部262A、第2当接部262Bと、端縁部268Aとの高さ方向の寸法と同一または僅かに小さくされている。また、係止突起213の上面側の角部213Aは、円弧状に形成されている。
なお、上枠21、縦枠23の装着溝211も同じ構成とされ、中骨25の装着溝252も装着溝252の開口部に互いに近接する係止突起が形成されている点で同様の構成とされている。
【0031】
このような装着溝211、252には、次のような手順で気密材26が取り付けられる。
気密材26は、図6に示すように、窓枠2において、各枠21〜23、中骨25が接合されるコーナー部で折曲される。気密材26の取付部265において、前記折曲部の位置に対応する部分は、取付部265の幅方向に沿って予め切断されている。したがって、窓枠2のコーナー部分では、気密材26は、ベース部261およびタイト部270のみが連続している。
【0032】
次に、気密材26を、各枠21〜23、中骨25の装着溝211、装着溝252に順次取り付ける。具体的には、気密材26の取付部265を装着溝211、装着溝252の係止突起213間に押し込む。すると、突出部267の先端部から傾斜された係止片部268が角部213Aにガイドされて突出部267側に押し付けられ、係止突起213間を通過可能な状態となる。
この状態で、ベース部261をさらに装着溝211、252側に押し込むと、第1当接部262A、第2当接部262Bが、立ち上がり片部215および側面部217の上面に当接する。この際、凹部263が形成されているため、立ち上がり片部215および側面部217の上面に当接するのは、第1当接部262A、第2当接部262Bだけである。このため、ベース部261を更に押し込むと、ベース部261の幅方向中心部が下方に撓み、取付部265も下方に移動する。したがって、係止片部268も係止突起213間を通過し、元の状態に広がる。
【0033】
そして、ベース部261の押し込みを解除すると、撓んでいたベース部261が元の状態に戻り、係止片部268の端縁部268Aが係止突起213の下面に当接し、気密材26が装着溝211、252に係止される。
また、タイト部270は、下片部273と連結面261Dに沿った鉛直面との角度θ2が45度と比較的大きくされているので、下片部273が立ち上がり片部215とぶつかることなく配置できる。
【0034】
また、図6に示すように、気密材26において、窓枠2のコーナー部に対応する部分は、前述のとおり、取付部265が幅方向に沿って切断された切断部265Aとされており、ベース部261およびタイト部270のみが連続している。このため、図6に示すように、薄板状のベース部261をその幅方向に沿って、つまり厚さ寸法が小さくなる向きで折り曲げることができ、容易に折曲できる。また、タイト部270はチューブ状に形成されており、チューブの断面方向で折り曲げるため、容易に折曲できる。したがって、気密材26を窓枠2のコーナー部に沿って、容易にかつ確実に折曲できる。
そして、各枠21〜23、中骨25のすべての装着溝211、252に気密材26を取り付けることで、気密材26の装着作業が終了する。なお、1本の気密材26の長手方向の端面同士は、例えば上枠21の左右方向の中央部など、気密性に影響し難い場所で突き合わされている。
【0035】
片引き窓1は、内障子4が開閉時に移動している場合には、図5に示すように、内障子4が室外側に位置して気密材26から離れるため、内障子4の移動時に気密材26が内障子4に圧接することがなく、内障子4を軽い操作力で移動できる。
一方で、内障子4を閉鎖位置に移動し、ハンドルの操作で内障子4を室外側に引き寄せる操作を行うと、図8に示すように、内障子4が気密材26のタイト部270に圧接してタイト部270を押しつぶす。これにより、気密材26が内障子4に密着して気密性を向上できる。
【0036】
[本実施形態の効果]
(1)本実施形態では、気密材26を硬質樹脂製の本体部260と、軟質樹脂製のタイト部270とで構成し、タイト部270を本体部260のベース部261における側面側に連続して設けたので、窓枠2に沿って配置してコーナー部で折曲する場合に、ベース部261の表面261A、裏面261Bに沿って中立線が設定され、ベース部261を高さ方向、つまり厚さ寸法が小さい方向に折り曲げることができる。したがって、取付部265を幅方向に沿って切断すれば、ベース部261およびタイト部270を容易に折り曲げることができ、気密材26を窓枠2のコーナー部に沿って容易に配置できる。これにより、1本の気密材26を窓枠2に沿って配置できるため、4本の気密材を配置する場合に比べて気密材間の継ぎ目が少なくなり、気密性を向上できる。
【0037】
(2)タイト部270において、気密材26を曲げた際の中立線の圧縮側(コーナー内側)に位置する上片部272側の体積を小さくし、伸長側(コーナー外側)に位置する下片部273側の体積を大きくしたので、気密材26を曲げた際に、圧縮側や伸長側で皺等が発生することを抑制できる。このため、気密材26の曲げ部分で隙間(ピンホール)が生じて気密性が低下することを防止できる。
【0038】
(3)タイト部270をホロー形状としたので、タイト部270をヒレ形状とした場合に比べて、気密材26を曲げた際にタイト部270が立ち上がってしまうことを防止できる。このため、タイト部270が確実に内障子4に密着し、タイト部分に隙間が生じることを防止できる。さらに、タイト部270が立ち上がってしまうと、内障子4に常時圧接する場合もあり、その場合には内障子4を開閉するのに必要な操作力の増加の原因となるが、本実施形態では、タイト部270が立ち上がらないため、内障子4の開閉時に気密材26が接触することも防止でき、必要な操作力の増加を防止できる。
【0039】
(4)気密材26のタイト部270は、上片部272の表面261Aに対する傾斜角度(90度−θ1)を小さくし、表面261Aの延長線からタイト部270の上端高さを例えば1mm程度と、バリアフリー基準で段差無しとして取り扱われる寸法内に収めることができる。このため、下枠22の上面をバリアフリー基準で段差無しとすることができ、窓枠2をテラス窓とした場合に、人や車椅子での移動をスムーズに行うことができる。
さらに、本実施形態では、下枠22に下枠用カバー材50を装着しているが、下枠用カバー材50の表面と、気密材26のベース部261の表面もほぼ同じ高さレベルとしていて段差を無くしているので、バリアフリー対応とすることができる。
さらに、タイト部270において、ベース部261の表面よりも突出する部分の突出寸法が小さいので、下枠22上を出入りする人や車椅子がタイト部270を踏みつけても、タイト部270が損傷することを防止できる。
【0040】
(5)本体部260に、第1当接部262A、第2当接部262Bを形成し、これらの当接部262A,262Bのみが、各枠21〜23、中骨25の表面に当接するように、凹部263を形成したので、気密材26を取り付ける際に、ベース部261を押し込むことで、取付部265を装着溝211、252の内部に容易に押し込むことができる。
また、装着溝211、252の開口部分の係止突起213の角部213Aに公差が生じても、角部213Aは凹部263に面していて気密材26に接触しないので、端縁部268Aが係止突起213の下面に当接して係止される状態まで確実に押し込むことができる。
【0041】
(6)窓枠2におけるタイト部270の見込み方向の位置は、装着溝211、252の形成位置によって設定でき、気密材26の溝内への押し込み量は影響しない。このため、タイト部270の位置を精度よく安定して設定でき、引き寄せられた内障子4との密着状態や、スライド移動される内障子4との離間寸法を、気密材26の全周に渡って精度良く設定できる。
【0042】
(7)気密材26のタイト部270は、中空形状とされているので、ヒレ形状の気密材に比べて、内障子4で潰された際の反発力を大きくできる。したがって、内障子4に対するタイト部270の密着力も高まり、この点でも気密性を向上できる。
特に、本実施形態では、上片部272および下片部273の直線状の部分を備えているので、タイト部270の反発力をより高めることができる。
【0043】
(8)気密材26の取付部265は、硬質樹脂製の中実状態で形成しているので、取付部265に中空部分が形成されている場合に比べて、装着溝211、252に対する取付部265の取付強度を向上できる。このため、装着溝211、252に装着した気密材26が外れることも防止できる。
【0044】
[変形例]
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、図9に示すように、タイト部として、ホロー部の断面形状がほぼ円形とされたタイト部270Aを有する気密材26Aを用いてもよい。すなわち、タイト部270Aは、ベース部261の連結面261Dに接合された基端部271Aと、基端部271Aの表面側の端部および裏面側の端部間に配置された円弧部274Aとを備えて構成されている。また、円弧部274Aの中心点Oは、ベース部261の中立線L1上に位置している。
この場合、上片部272、下片部273を設ける必要が無いため、タイト部270Aの設計が容易となり、タイト部270Aの寸法や体積も小さくできる。このため、気密材26Aの製造コストを低減できる。ただし、タイト部270Aのベース部261表面からの突出寸法は前記実施形態の気密材26よりも大きくなるため、気密材26Aはバリアフリー対応が必要なテラス窓以外の窓に用いることが好ましい。
【0045】
気密材26におけるタイト部の形状は、前記実施形態のタイト部270や、変形例のタイト部270Aに限らない。例えば、上片部272、下片部273の端縁間に、半円よりも長い円弧部を配置してもよい。また、タイト部を曲率の異なる複数の円弧部で構成してもよい。すなわち、タイト部としては、ホロー部を有する中空チューブ状に形成されていればよい。
【0046】
また、取付部265の構成は、取付対象となる窓枠2の溝部形状などに応じて適宜設定すればよい。
本発明の気密材および建具は、前記実施形態の片引き窓1に限定されず、上げ下げ窓などの各種のスライディング系の窓や、内開き窓や縦すべり出し窓等のスイング系の窓など、各種の窓に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…建具である片引き窓、2…窓枠(枠体)、3…固定面材、4…内障子(可動障子)、21…上枠、22…下枠、23…縦枠、24…縦枠、25…中骨、26、26A…気密材、50…下枠用カバー材、60…縦枠用カバー材、210…室外見付け片部、211…装着溝、212…上面部、213…係止突起、213A…角部、215…立ち上がり片部、217…側面部、260…本体部、261…ベース部、261A…表面、261B…裏面、261C…側面、261D…連結面、262A…第1当接部、262B…第2当接部、263…凹部、265…取付部、266…挿入部、267…突出部、268…係止片部、268A…端縁部、270、270A…タイト部、271…基端部、272…上片部、273…下片部、274…半円部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9