(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
通常は閉止状態を保持し、内部が負圧になったときに弁体がボデー内を移動して通気可能とした通気弁において、前記弁体の弁軸とこの弁軸を保持するボデー側の保持体との間にオイル保持部を形成し、前記弁軸又は保持体の何れか一方側に挿入孔、他方側に前記挿入孔に対する拡径部を形成し、この拡径部の内方に形成した溝部にオイルを保持することにより、それぞれの挿入孔に対する弁軸又は保持体の縮径作用に抵抗を与えて前記弁体のチャタリングを抑制することを特徴とする通気弁。
前記弁体の低開度領域に制動機構を設け、この制動機構は、前記保持体の挿入孔の内周に縮径状の接触面を形成すると共に、前記弁軸には先端に形成した溝部を介して拡縮可能な拡径部を設け、この拡径部を前記接触面に接触させた状態で、この拡径部の縮径時に前記溝部のオイルで抵抗を加えた機構である請求項1に記載の通気弁。
前記弁体の低開度領域に制動機構を設け、この制動機構は、前記保持体の先端に形成した溝部を介して拡縮可能な拡径部を設けると共に、前記弁軸を前記保持体を挿入可能な略円筒状に形成し、前記拡径部を前記弁軸の内周面に接触させた状態で、この拡径部の縮径時に前記溝部のオイルで抵抗を加えた機構である請求項1に記載の通気弁。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明における通気弁の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明の通気弁の接続状態を示し、
図2においては、
図1の要部拡大断面図を示している。
【0018】
図において、本発明の通気弁(以下、弁本体1という)は、ボデー2、弁体3、弁軸収容部となる保持体4、シール部材5、遮蔽体7、環状部材8、蓋体9、コイルスプリング10を有し、例えば、排水設備の立て管である伸
頂通気管11の上部に取付けられる。弁本体1は、通常は閉止状態を維持し、排水等により内部が負圧になったときに、ボデー2内を弁体3が内方側へ移動して通気可能に設けられている。
【0019】
ボデー2は、外筒12と内筒13とを有する二重管構造に設けられ、外筒12の上部外周には、オネジ14が形成される。一方、外筒12の下部には、排水の出口側であり、伸頂通気管11に挿入接続される配管接続部15が設けられ、この配管接続部15は、下方向にアール面16を介して緩やかに縮径した漏斗状に形成される。配管接続部15のアール面16との境界付近外周には環状鍔部17が形成され、伸
頂通気管11への挿入時には、この環状鍔部17が伸頂通気管11の端面11aに当接して位置決めされる。
【0020】
内筒13は、上部の円筒部位から下部に向かって縮径する漏斗状の椀状部13aと、この椀状部13aから垂下形成される円筒部13bとを有している。内筒13の内側には、複数の板状のジスクガイド20が放射状に形成され、このジスクガイド20の内側に弁体3が上下動可能に収納されて、ジスクガイド20の内端面により上下動時の弁体3がガイド可能に設けられる。内筒13の上部外周には凹凸状の係合部21が形成され、一方、下部外周にはスナップ嵌合部22が設けられる。
【0021】
図3、
図4において、ボデー2内の弁体3は、例えば、ABS樹脂等の樹脂材料により形成され、円盤状のジスクホルダ25
と弁軸26とを有し、弁体3の低開度領域には、制動機構30が設けられる。
弁軸26は、ジスクホルダ25の中心から垂下形成され、この弁軸26のジスクホルダ25側には細径の小径部31が設けられ、この小径部31から先端側に向けてテーパ面32を介して拡径した拡径部33が形成される。これらテーパ面32と拡径部33との間には、四方が弁軸26の軸方向と平行に切欠き形成された平面部34が形成され、この平面部34により拡径部33の外形の一部が残されている。この残された一部の拡径部33は、保持体4に形成される接触面35の穴径よりもわずかに大きく形成されている。
【0022】
弁軸26の先端側には、割り溝からなる溝部36が所定の長さで形成され、この溝部36を介して弁軸26先端側に前記拡径部33が設けられ、この拡径部33が弾性力を発揮して拡縮可能に設けられる。弁軸26の外周囲には、円筒状の案内筒38がジスクホルダ25から垂下形成され、この案内筒38の内径は、保持体4の上部側外周よりも大径に形成される。案内筒38と弁軸26との間には、例えばステンレス材料により形成されるコイルスプリング10が装着され、このコイルスプリング10の弾発力により弁体3が上方向に付勢される。
【0023】
図2において、ジスクホルダ25の外径付近には環状の装着溝39が設けられ、この装着溝39にシール部材5が装着される。シール部材5は、ゴム等の弾性材料により環状に形成され、その内径周縁側が装着溝39に嵌め込まれることで弁体3から脱落不能に設けられる。シール部材5は、環状部材8に形成された後述の開口部40底面周縁側の弁座面41に着座可能に、この開口部40よりもやや大径に形成される。
【0024】
弁体3を保持体4に装入したときには、弁軸26と保持体4との間に、オイルを保持可能なオイル保持部50が形成される。このオイル保持部50にオイル51を注入することで、オイル保持部50付近にオイル51が停滞し、このオイル51の粘性により弁軸26に抵抗が与えられて、弁体3のチャタリングが抑制される。
【0025】
本実施形態において、オイル保持部50は、保持体4の挿入孔52の内周の一部に縮径して環状に形成された接触面35の上方に形成されている。この縮径部位である接触面35に形成された段部4aにオイル51が溜まり、制動機構30を構成する接触面35と弁軸26の外周との間にも、オイル51が絶えず供給される。
【0026】
接触面35は、常に弁軸26の外周と摺接しており、その摺接部位に薄いオイル層が介在する状態となる。従って、接触面35と弁軸26の外周との間には、オイル51が垂れ落ちる隙間が無いので、オイル保持部50にオイル51が保持される。
【0027】
なお、オイル保持部50が形成される弁軸26と保持体4との間には、前述のコイルスプリング10が装着されており、このコイルスプリング10にもオイル51が付着することで、オイル保持部50におけるオイル51の保持機能が高められている。
本実施形態では、弁軸26と保持体4との間に形成される空間Aの約半分の高さまで、オイル51を注入している。
【0028】
保持体4は、ボデー2の内筒13の中心に前記ジスクガイド20を介して内筒13と一体に筒状に形成され、その内部には挿入孔52が形成される。この挿入孔52には弁軸26が上下動可能に収納されることで、保持体4により弁体3が保持される。
【0029】
本実施形態では、上記のように保持体4の挿入孔52に対して拡径可能である拡径部33が弁軸26に形成されることで、弁軸26と保持体4との間にオイル保持部50が設けられているが、このオイル保持部50は、保持体4又は弁軸26の何れか一方に挿入孔、他方側にこの挿入孔に対する拡径部が形成された構成により設けられていればよい。
【0030】
オイル51は、拡径部33内方に形成された溝部36にもオイル自身の粘性により保持され、これによって弁軸26又は保持体4の何れか一方に形成されたそれぞれの挿入孔に対して、弁軸26又は保持体4が縮径するときに、抵抗が与えられるようになっている。
【0031】
制動機構30は、弁体3の低開度領域、具体的には
図7に示す弁閉直前の状態から、
図2の弁開状態に至るまでの過程で機能するように設けられ、前述した保持体4の接触面35、弁軸26の拡径部33を有している。接触面35は、保持体4の挿入孔52の内周の一部に縮径して環状に形成され、この接触面35に拡径部33が接触される。拡径部33の縮径時には、溝部36に停滞するオイル51で抵抗が加えられる機構になっている。
【0032】
本実施形態で使用されるオイル51は、例えば、増ちょう剤を含まないシリコーンオイルからなり、動粘度3000mm
2/s以上30000mm
2/s未満のオイル51を所定量使用することが望ましい。シリコーンオイルは、グリースに比較して表面張力が小さく、増ちょう剤を含まないことにより低粘度で抵抗が小さいことで知られている。オイル51の動粘度、使用量は、配管接続部15の口径等に応じて適宜設定され、このオイル51を過度な注入量を避けて適度の隙間を設けつつ、保持体4に注入することが好ましい。
【0033】
図2、
図5において、遮蔽体7は、例えば、ポリエチレンによって形成され、円筒部13bの下部に保持体4の挿入孔52を遮蔽する遮蔽部60を有し、この遮蔽部60が内筒13の下部に一体或は別体に形成される。本実施形態では、遮蔽体7を設けることにより遮蔽部60が内筒13と別体に形成され、この遮蔽部60には、筒部61、円筒状の装着部62、支持部63が一体に形成されている。遮蔽部60を設けることにより、排水時等におけるコイルスプリング10への汚物等の付着が防がれる。
【0034】
筒部61は、遮蔽体7と一体に有底状に形成され、保持体4の外周側に嵌合或は遊嵌する内径で、遮蔽体7の内筒13の取付け後に弁体3の上昇限界の位置まで延伸されている。これにより、筒部61により、保持体4における弁軸26の下降位置から上昇位置までの可動領域が覆われている。筒部61は、板状に形成された複数の支持部63を介して装着部62に一体に接続される。
【0035】
支持部63は、筒部61と装着部62との間に放射状に設けられ、この支持部63を設けていることにより、これら各支持部63の間が通気空間Sとなり、この通気空間Sを介して内筒13内部と排水側である外側とが連通される。
装着部62は、内筒13下部の外周に装着可能な内径に形成され、その内周には内筒13のスナップ嵌合部22に嵌合可能なスナップ嵌合部64が形成されている。
【0036】
遮蔽体7は、筒部61が保持体4の外周側に装着されつつ、スナップ嵌合部22、64同士のスナップ嵌合により、円筒部13bの下部に着脱自在に装着される。
【0037】
図1において、環状部材8は、外筒12に装着可能な略環状に設けられ、その外周には外筒12の上端面に係止可能な鍔状部65が形成される。前述したように、環状部材8の中央には開口部40が設けられ、この開口部40の底面側周縁には弁座面41が設けられる。環状部材8の底面側には、外筒12の開口側に嵌入可能な環状突起部66が形成され、この環状突起部66の内周側には、内筒13の係合部21に係合可能な凹凸状の係合部67が形成されている。
【0038】
上記の係合部21、67同士を凹凸係合させることで、前記内筒13が環状部材8に一体に取付けられる。内筒13と環状部材8とは、この環状部材8の外周側下面に垂下された環状垂下部68が外筒12の内周に嵌め込まれつつ、鍔状部65が外筒12上端面に係止された状態で、蓋体9により外筒12に取付けられる。環状垂下部68の外周にはOリング69が装着され、このOリング69により、環状部材8と外筒12との間がシールされる。
【0039】
蓋体9は、略円盤状に形成され、下部内周側には外筒12のオネジ14に螺合可能なメネジ70が形成される。蓋体9の側部には、複数の開口窓71が等間隔に形成され、この開口窓71の間には板状の案内フィン72が求心方向に形成され、案内フィン72同士の間には通気路73が設けられている。蓋体9の上部にはカバー体74が一体に形成される。
【0040】
なお、上記実施形態において、弁体3の平面部3
4は、必ずしも対面する四方向に設ける必要はなく、例えば二方向に設けてもよい。この場合、接触面35に対する接触面積を大きくできる。さらに、平面部を六方向や八方向に設けてもよく、平面部の数を変えることで接触面35への接触面積を調節して弁体3摺動時の摺動抵抗を調節できる。
【0041】
また、遮蔽体7をスナップ嵌合部22、64のスナップ嵌合により円筒部13bに一体化しているが、この遮蔽体7の固定構造にこだわることはなく、例えば、これらを螺合して着脱可能に設けたり、或は接着により一体に固着してもよい。
【0042】
遮蔽部60は、遮蔽体7以外の態様に設けて内筒13に装着してもよい。一方、遮蔽部60を内筒13に一体に設ける場合には、保持体4の下端に一体成形したり、或は保持体4下端に接着剤で板状の遮蔽部を固着してもよく、何れの場合にも各種の態様で設けることが可能となる。
【0043】
続いて、本発明の通気弁の上記実施形態における動作並びに作用を説明する。
図2の弁閉時において、弁体3は、コイルスプリング
10の弾発力により上方に付勢し、シール部材5が弁座面41に着座して弁本体1の内部が密閉された状態となる。このとき、弁体3の拡径部33が接触面35の穴径よりもわずかに大きいことから、弁軸26が溝部36により弾性変形して縮径しつつ、拡径部33が接触面35に接触した状態で弁体3が保持体4により保持されている。弁体3は、保持体4により調心されることでシール部材5の弁座面41へのシール面圧が略均一になり、密封性が高まった状態で配管(伸頂通気管11)からの臭気漏れを確実に防止する。
【0044】
排水時には、配管を通じて弁本体1の内部に負圧が発生し、この負圧と大気圧との圧力差により、
図6に示すように弁体3が保持体4に沿って調心されながらコイルスプリング10を圧縮して弁本体1の内方側に駆動し、開口部40が開放して弁本体1に大気を取り込むことで、排水設備内の負圧を軽減しつつ排水可能となる。
【0045】
このとき、弁体3の拡径部33が接触面35を通過し、小径部31が接触面35を通過する際に、その外径が接触面35の穴径よりも小さいことで接触しにくくなり、これらの間に接触抵抗が発生しにくくなる。しかも、保持体4と、遮蔽部60の筒部61との間は当接しているものの完全なシール状態ではないため、弁体3の下降時には、この当接部位61aから空気が逃げるため、この弁軸26と遮蔽部60との間の空間Bに空気の内封による余計な抵抗が生じることがない。これらにより、弁体3がスムーズに開動作して負圧を解消できる。
【0046】
さらに、弁体3の下降に伴って、弁軸26と遮蔽部60との間の空間Bは容積が小さくなるため、その内圧が若干上昇する。これにより、接触面35と弁軸26の外周との間に介在したオイル51が垂れ落ちる現象が一層抑制される。
【0047】
一方、弁体3の上昇の際には、空間Bの内圧は若干負圧となるが、保持体4と筒部61との間からわずかに空気が入ることで直ちに負圧は解消され、接触面35と弁軸26の外周との間に介在したオイル層は確実に維持される。
なお、仮に、保持体4と筒部61との間をシール状態としても、弁体3の上下動の円滑性や、接触面35と弁軸26の外周との間に介在したオイル層は維持される。
【0048】
排水後には、コイルスプリング10の弾発力で弁体3が保持体4に対して閉方向に摺動し、拡径部33が接触面35に接触するときには、溝部36を介して弁軸26が縮径方向に弾性変形して、適度の摺動抵抗が生じる。
【0049】
ここで、実際には、弁本体1が
図6に示した全開状態に至る頻度は多くなく、
図2の全閉状態と
図7の弁閉直前の状態とを繰り返すことが多い。
これに対して、弁軸26と保持体4との間の制動機構30のオイル保持部50にオイル51を所定量注入により塗付し、オイル51の粘性により弁軸26に抵抗を与えていることで、この弁軸26の摺動時に保持体4との間に塗付されたオイル51の抵抗も付加された摺動抵抗が生じ、特に、拡径部33の縮径時には、この接触抵抗に加えて、溝部36に保持されたオイル51の粘性で弁軸26の縮径作用に抵抗を与えている。これにより、弁軸26に一層の抵抗が加わって弁体3の着座時にはブレーキ機能を発揮するため、弁軸26を滑らかに摺動させ、振動を抑えつつ弁体3を着座できるチャタリングを防止可能となり、着座時の振動音や作動音を確実に抑制することが可能になる。
【0050】
しかも、保持体4には、挿入孔52を遮蔽する遮蔽体7を装着していることで、この遮蔽体7の筒部61内の空間Bをオイル溜まりとして利用し、弁軸26の外周にオイル51を絶えず供給して、制動機構30によるブレーキ機能を維持し、オイル51の垂れ落ちも防止することができる。このため、頻繁にオイル51を補充する必要がなく、また、オイル保持部50への排水や汚物などの浸入も防ぐ。
【0051】
次に、本発明の上記実施形態における弁本体1について、呼び径75Aの通気一体型継手(通気弁の口径φ60mm)を供試品とし、シリコーンオイルの評価試験を実施した。試験に用いたシリコーンオイルとしては、動粘度(25℃)20mm
2/s、5000mm
2/s、10000mm
2/s、12500mm
2/s、30000mm
2/sとした。これらは動粘度が異なり、その値が大きくなるほど動粘度が大きくなる。オイルの塗付量については、前述のように、弁軸26と保持体4との間に形成される空間Aの約半分の高さ(容量にして、約0.2mL)とする。
【0052】
シリコーンオイルの評価の対象事項としては、1.シリコーンオイルの動粘度の違いによる弁閉作動時間の比較、2.内筒13と遮蔽体7を接着した場合の弁閉作動時間の影響から評価するものとした。
【0053】
1.シリコーンオイルの動粘度及び塗布量の違いによる弁閉作動時間の比較を評価するために、「正常設置」、「逆向き設置」の2種類の設置を比較した。ここで、「正常設置」とは、弁本体の上下を正常な向きにしたものであり、「逆向き設置」とは、弁本体の上下を「正常設置」から逆向き(逆さま)にしたものである。逆向きに設置する理由として、例えば、保管時や工事現場などでは、製品を逆さまに置く可能性があるためであり、そのためにシリコーンオイルが弁体3の開閉作動に与える影響を確認するものである。
【0054】
評価試験時の確認ポイントとしては、シリコーンオイルの動粘度の違いによる弁閉作動時間、製品を逆さまにしたときのシリコーンオイルの影響とした。
【0055】
2.内筒13と遮蔽体7を接着した場合の弁閉作動時間の影響を評価するために、これらを接着して密閉状態にした時の影響を確認する。なお、この場合の評価ポイントとしては、弁閉作動時間とする。内筒13と遮蔽体7との接着剤としては、市販の強力瞬間接着剤を用いた。
【0056】
評価時の実施手順としては、
図6に示すように弁体3を限界まで手で押し下げて弁開状態にし、この状態から手を離して
図2の弁閉状態に弁体3が戻るまでの作動時間を測定した。各開閉速度(測定時間)は、ストップウォッチを用いて行った。
【0057】
弁閉作動時間が1秒以上の場合、弁作動が重くなり通気抵抗に支障をきたす(弁作動時間が長いと、配管内の臭気や湿気が室内に侵入し、室内環境に悪影響を与える)。弁閉作動時間が0.3〜1.0秒よりも短い領域であれば、作動は良好といえるので、全開から全閉までの作動時間が0.3〜1.0秒の範囲となる供試品を合格とした。
【0058】
20mm
2/sでは、直ちに弁閉状態となり、オイルによるブレーキ機能は得られなかった。
次に、5000mm
2/sでは、約0.3秒で弁閉状態となり、合格であった。
また、10000mm
2/sと12500mm
2/sは約0.6秒で弁閉状態となり、合格であった。
これに対して、30000mm
2/sは、弁閉状態に至るまで約1.1秒かかり、不合格となった。
これらの結果より、動粘度10000mm
2/sと12500mm
2/sの条件でシリコーンオイルを使用したときに、弁体3の良好な開閉作動が得られたことが確認された。
【0059】
次に、工事現場での仮置きを想定し、前記各シリコーンオイルを塗付した通気弁を逆向き設置にして弁体作動時間の測定を実施した。評価期間は1日間とした。
【0060】
正常設置から逆向きに設置すると、オイル51がオイル保持部50付近に移動するまでに一時的に溜まるため、弁閉作動時間はやや遅くなるものの、0.3〜1.0秒の作動時間で弁閉状態となることが確認された。また、逆向き設置にしたときに、シリコーンオイルは、オイル保持部50に保持され、弁体3側に移動していないことが確認された。
【0061】
次に、2.内筒13と遮蔽体7を接着した場合の弁閉作動時間の影響を評価した。
接着前の供試品の作動時間は0.90秒のところ、接着後の供試品の作動時間は0.95秒であり、作動開閉時間が若干遅くなる傾向がみられた。
【0062】
このことから、内筒13と遮蔽体7とを接着して密閉したとしても、弁体3の開閉作動に大きな影響はみられないことが確認された。
この場合、弁軸26の溝部36の隙間にシリコーンオイルが停滞することで、弁体3がゆっくり上方して緩やかに着座することが確認された。詳しくは、
図7の着座の直前の状態において、弁軸26が接触面35を通過しようとするときにこの接触面35の位置の溝部36で弁軸26が縮径され、この弁軸26の溝部36にオイル51が全体的に停滞していることで、間隔の狭まっている接触面35付近では弁軸26の狭まりが遅くなり、ゆっくりと弁体3が上昇することになる。これにより、チャタリングを確実に防止でき、この場合、溝部36へのシリコーンオイルの停滞量が多いほど作動時間が長くなり、シリコーンオイルの動粘度が高いほど作動時間が長くなる。
【0063】
以上により、1.シリコーンオイルの動粘度の違いによる弁閉作動時間の比較、2.内筒13と遮蔽体7を接着した場合の弁閉作動時間の影響の2つの評価試験の結果から、本発明の通気弁で採用するシリコーンオイルとして、その注入量も考慮すると、動粘度3000mm
2/s以上30000mm
2/s未満、より好ましくは5000〜12500mm
2/sであるときに弁体3の弁体作動時間が良好であり、チャタリングの発生を防止しながら配管内の負圧を確実に軽減して流体をスムーズに流すことができるものと判断できる。
【0064】
この場合、長期間逆向きにしても弁体3側にシリコーンオイルが移動しにくくなり、オイル保持部50や弁軸26の溝部36の隙間、コイルスプリング10等に停滞して弁体3側への移動を防止でき、効果的にチャタリングを防止できる。
しかも、溝部36にシリコーンオイルが停滞することにより、弁体3にブレーキ機能が作用してチャタリング防止機能がより向上する。
【0065】
図8においては、本発明の通気弁の他の実施形態を示している。なお、これ以降の実施形態において、前記実施形態と同一部分は同一符号によってあらわし、その説明を省略する。
この通気弁(弁本体80)では、弁体81の弁軸82が円筒状に形成され、この弁軸82の内部にボデー2側の弁軸82保持用の保持体83がコイルスプリング10を介して挿入されている。この構造により、弁軸82の内周面82aが保持体83の外周面83aに摺動可能な状態で弁体81が保持体83によりガイドされ、弁体81の外周に突設形成された円盤部84上面に装着されたシール部材85が弁座86に着座可能に設けられている。弁体81がコイルスプリング10の弾発力により上方に移動したときには、シール部材85が着座して弁閉状態となり、一方、排水時には、弁体81がコイルスプリング10の弾発力に抗して下方に移動して弁開状態となることで、配管内の負圧を解消しながら排水できるものである。
【0066】
この場合、保持体83の外周面83aと弁軸82の内周面82aとの間にオイル保持部87が構成され、保持体83の付け根の外周付近には、環状突部88が上方に一体に突出形成されてこの環状突部88と保持体83との間にオイルの溜まり部89が形成される。
オイル保持部87にシリコーンオイル51を塗付することで、前記実施形態と同様に、弁体81の着座時にはブレーキ機能を発揮してチャタリングの発生を防止する。オイル保持部87からオイル51が垂れた場合でも、溜まり部89に溜まることで外部への漏れを防止し、弁開時には、弁軸82下端が環状突部88に当接することで排水をガードし、オイル保持部87への排水の浸入を防止できる。なお、オイル保持部は、弁軸82の内周面82aと保持体83とにより囲まれる空間にも設けることができ、この空間に内蔵されているコイルスプリングにもオイルが保持されることにより、オイルの垂れを防止しつつ、ブレーキ機能を発揮することができる。
【0067】
図示しないが、環状突部88は、保持体83に一体に形成する以外にも、例えば、下部の一部に突出部を形成し、この突出部を保持体側に設けた穴部に嵌合したり、保持体側に円周凹状の嵌め込み部を設け、この嵌め込み部に嵌合突部の下部を嵌め込んで一体化するようにしてもよく、これら以外にも、各種の態様により環状突部を保持体に設けることができる。
【0068】
さらに、図示しないが、円盤部84をシール部材85よりも小径に設け、シール部材85の外径付近の背後を円盤部84で支えないようにしてシール部材85の着座部分にクッション性を発揮させることもでき、この場合にも、オイル51によって弁閉時の弁体81の戻りを遅くして、シール部材85の変形を防ぎながらそのクッション性によりチャタリングの防止性能を向上することもできる。
【0069】
図9においては、本発明の通気弁の更に他の実施形態を示している。
この実施形態では、
図8の保持体83に割り溝からなる溝部90を形成することで保持体83上部に拡径部91を形成し、この拡径部91内方の溝部90にオイル51を注入したものである。この場合、
図1の弁軸26の場合と同様に、弁軸82の溝部90に停滞したオイル51の動粘度により保持体83の縮径作用に抵抗を加えて、ブレーキ機能により急激な弁体93の上下動を防止して弁閉時のチャタリングをより確実に防止できるようになる。
【0070】
また、図示しないが、保持体83の外周に環状溝を形成し、これをオイル保持用の溝部として作用させることもでき、これら以外にも、各種態様によってオイル保持部やオイル停滞用の溝部を設けることが可能である。
弁体の閉止時に弁軸に抵抗を与える場合には、シリコーンオイル以外の各種のオイルを用いることもできる。
【0071】
なお、各実施形態においては、弁体を上昇させて弁座に着座させる手段として、コイルスプリングの弾発力を用いているが、弁体とボデーにそれぞれ磁石を配置し、これら磁石による反発力を用いても良い。
【0072】
図10においては、本発明の通気弁の内部構造を利用した通気一体型継手を示している。この継手100は、例えば、排水設備101における階間の床面102の下の空間に敷設される排水立て配管103と横配管104との間に設けられる。排水設備101の上流側には排水器具105が接続され、この排水器具105は、例えば、大便器、浴室、洗面器、台所流しなどからなり、床面102付近或は床面102よりも上方側に設けられる。排水器具105は、比較的流量の大きい大便器などからなり、この大便器105から横配管104、継手100を介して立て配管103から二次側に排水される。立て配管103の直近の上流側には、エルボ106が設けられる。
【0073】
継手100は、前述した弁本体1と同様に、ボデー2、弁体3、保持体4、シール部材5、遮蔽体7、環状部材8、蓋体9、コイルスプリング10を有し、これらにより通気弁部107が構成される。継手100は、通常は閉止状態を維持し、排水等により内部が負圧になったときに、ボデー2内を弁体3が内方側へ移動して通気可能に設けられている。
そして、弁閉時には臭気漏れを防止し、排水時等に配管内が負圧になったときには、
図6に示すように、弁体3がボデー2内を移動して通気し、弁閉時には、オイル保持部50や溝部36のオイル51の粘性によりチャタリングを確実に防止して騒音の発生を抑制できる。
【0074】
このように、継手100の内部に弁本体1と同様の構造の通気弁部107を設けた場合、この通気弁部107を、微小負圧の発生状況や排水管の入り組み度合、排水速度
の差により圧力変動が異なる場合などの複雑な配管状況の排水設備101に利用できる。
【0075】
ここで、従来技術として、特開2013−24010号公報に記載の通気弁では、通気弁の下部に内部と連通して垂下形成された筒体を有し、継手本体と筒体との間に排水流路を形成して、スムーズな排水や通気を行うようにしている。この通気弁では、排水が逆流した場合には、排水によって筒体の入口側が塞がれて筒体内に空気層による密閉状態を保持することにより、外部への排水の飛散や流出などの漏れを防止している。
【0076】
しかし、この従来技術の通気弁における空気層は、通気弁が組み込まれた通気一体継手における横配管接続部の中心よりも下方にまで形成されるので、空気層の容量が大きく、排水逆流時における空気層の圧縮量が大きいことから、水頭圧を高く設定できず、排水器具の設置高さを高めることが困難となっていた。
【0077】
これに対し、本実施形態における継手100では、排水の逆流時に通気弁部107内に空気層108が形成され、この空気層108を、継手100の横配管接続部109の上方で、且つ、上部側方から大気を取り入れる通気弁部107の弁体3の昇降領域に形成することにより、継手100内部における排水の詰まりを防止しつつ空気層108を最小限に形成し、水頭圧を高くして排水器具105の設置高さを高めることが可能になっている。
【0078】
この場合、空気層108は、少なくとも横配管接続部109の中心の上方であって、横配管104の上方約1/3にかかる領域となることが望ましい。
具体的には、
図2などに示す遮蔽部60の筒部61の上端が排水の浸入上限であり、この部位から弁閉状態の弁座面41までの空間に空気層が形成される。
従って、従来技術に比して、空気層を小さい容量としているので、排水逆流時における空気層の圧縮量が小さいことから、排水器具の設置高さの設定に必要な水頭圧を高いものとすることができる。
【0079】
このような構造に継手100を設けることにより、空気層108を通気弁部107の上下に限られたスペース内にコンパクトに配置し、排水の詰まりを防止しつつ床下設置を可能とした上で、水頭圧を確保することが可能になる。