(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態に係る感知センサを用いた感知装置について説明する。この感知装置は、マイクロ流体チップを利用し、例えば人間の鼻腔の拭い液から得られた試料液中のウイルスなどの抗原の有無を検出し、人間のウイルスの感染の有無を判定することができるように構成されている。
図1の外観斜視図に示すように、感知装置は本体部12と、感知センサ2と、を備えている。感知センサ2は、本体部12に設けられた感知センサ2を保持する保持部であるコネクタ10に着脱自在に接続されている。本体部12の上面には、例えば液晶表示画面により構成される表示部11が設けられており、表示部11は、例えば本体部12内に設けられた後述する発振回路の出力周波数あるいは、周波数の変化分等の測定結果もしくは、ウイルスの検出の有無等を表示する。
【0012】
続いて感知センサ2について説明する。
図2は
図1に示した感知センサ2における上側ケース21を外した状態の斜視図を示し、
図3及び
図4は夫々感知センサ2の各部材の表側(上面側)及び一部の部材の裏側(下面側)の斜視図を示す。
感知センサ2は、上方が開放された箱型の下側ケース22と、下方側が開放され、下側ケース22の外壁を外側から覆うように設けられる上側ケース21と、で構成されるケース体20を備えている。下側ケース22の一端側を後方側、他端側を前方側とすると、例えば下側ケース22の後方側の側壁は、その一部が切り取られており、さらに下側ケース22の底部には、後方側の端部から前方に向かって伸びる切り欠き24が形成されている。更に下側ケース22の左右の側壁の外側の面には、上側ケース21を係止する溝部86が形成されている。
【0013】
下側ケース22の内部には、平板状の配線基板3が設けられている。
図5(a)、(b)も参照して説明すると、配線基板3は略矩形の板状に構成されており、前方側の部分が後方側の部分よりも幅が広くなっている。配線基板3の略中心には、貫通孔32が形成され、配線基板3の前方寄りの位置には、配線基板3の水平位置を決めるための孔部33が幅方向に2か所並べて形成されている。配線基板3の表面側における貫通孔32の周囲には貫通孔32を中心として周方向等間隔に6か所の電極端子34a〜39aが形成されている。各電極端子34a〜39aには各々配線基板3の周縁に向けて伸びる導電路34〜39が接続され、各導電路34〜39は、スルーホール34b〜39bを介して、配線基板3の裏面側に引き回されている。また配線基板3の裏面側には、貫通孔32の前方側と後方側とに夫々左右に3つ並べて端子部34c〜39cが形成されており、配線基板3の裏面側にスルーホール34b〜39bを介して、引き回された導電路34〜39は、端子部34c〜39cに夫々接続されている。
【0014】
後述するように配線基板3の表面側における、
図5(a)中鎖線で示す位置には、水晶振動子4が固定されるが、端子部34c〜39cは、端子部34c及び端子部37c、端子部39c及び端子部36c、端子部35c及び端子部38cが夫々水晶振動子4の中心部から見て対称に配置されている。なお端子部34c〜39cの配置は、水晶振動子4の概ね中心部に対して対称に配置されていればよい。
配線基板3は、下側ケース体22に裏面側における端子部34c〜39cを含む領域が、切り欠き24から外部に臨むように設置される。従って切り欠き24は窓部に相当する。
【0015】
続いて圧電振動子、例えば水晶振動子4について説明する。
図6(a)、(b)に示すように水晶振動子4は、例えばATカットの円板状の水晶片41を備えている。
図6(b)に示すように水晶片41の裏面側には、前後方向に伸びる帯状の励振電極45、46、48及び49が設けられている。各励振電極45、46、48及び49は、励振電極45、49を左右に並べた電極対と、励振電極46、48を左右に並べた電極対とが前後に並べて配置され、4つの励振電極45、46、48及び49は、互いに隙間を介して離間するように配置されている。
【0016】
また
図6(a)に示すように水晶片41の表面側には、例えばAuにより前後方向に伸びる楕円形の共通電極44が裏面側の4つの励振電極45、46、48及び49と水晶片41を介して対向する領域にまたがるように設けられている。共通電極44における裏面側の励振電極45、46、48及び49と対向する4つの領域の内、共通電極44を表面側から見て、前方側の右側の励振電極45と対向する領域には、抗原である感知対象物を吸着するための抗体からなる吸着層42が前後方向に伸びる帯状に形成されている。また共通電極44における後方側の左側の励振電極48と対向する領域にも同様に吸着層42が前後方向に伸びる帯状に形成されている。
【0017】
また共通電極44における前方側の左側の励振電極49と対向する領域と、後方側の右側の励振電極46と対向する領域と、の表面は吸着層42が形成されずに剥き出しの状態となっている。この水晶振動子4において、共通電極44と励振電極45とで挟まれた振動領域101と、共通電極44と励振電極48とで挟まれた振動領域103と、は共通電極44の表面に吸着層42が形成され、試料液中の感知対象物が吸着する吸着領域となる。また共通電極44と励振電極49とで挟まれた振動領域102と、共通電極44と励振電極46とで挟まれた振動領域104と、は共通電極44の表面に吸着層42が形成されておらず感知対象物が吸着しない。そのため振動領域102及び振動領域104は、夫々吸着領域である振動領域101、振動領域103に個別に対応した参照領域となる。
【0018】
共通電極44には水晶片41の前方側周縁に向けて配線の伸びる配線44aの一端が接続されており、配線44aの他端側は、水晶片41の前方側側面を介して裏面側に引き回され、水晶片41の裏面の前方側の周縁にて電極44bが形成されている。また水晶振動子4の裏面側に設けられた励振電極45、46、48及び49には、夫々水晶振動子4の周縁に伸びる配線45a、46a、48a及び49aの一端が接続され、各配線45a、46a、48a及び49aの他端側は水晶振動子4の下面側周縁引き回され、電極45b、46b、48b及び49bが形成されている。なお水晶片41の裏面側後方に形成されている電極47bは水晶振動子4を配線基板3に固定したときに水晶片41の前後の高さを揃えるためのダミー電極である。
【0019】
図7及び
図8も参照して説明すると、水晶振動子4は、
図6(b)に示すように裏面側の励振電極45、46、48及び49が配線基板3の貫通孔32に臨むように配置され、電極44b〜49bが夫々電極端子34a〜39aと導電性接着剤により接続される。
本実施の形態においては、貫通孔32は、配線基板3における水晶振動子4の裏面側の励振電極45、46、48及び49が臨む領域に隙間を形成する凹部に相当する。
【0020】
図3及び
図4に戻って、配線基板3の上面側には、流路形成部材5が設けられている。流路形成部材5は、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)で構成された例えば厚さ2.0mmの板状の部材で構成され、配線基板3の前方側の部位と同じ幅で構成されている。流路形成部材5の前方寄りの位置には、流路形成部材5の位置合わせをするための孔部58が、配線基板3に形成された孔部33と対応する位置に、流路形成部材5を厚さ方向に貫通するように設けられている。また流路形成部材5における前方寄りの位置であって、孔部33の後方の左右の縁には切欠き50が形成されている。
【0021】
流路形成部材5の下面側には、
図4に示すように水晶振動子4が収まるように概略円形の凹部54が形成されている。凹部54には、配線基板3が流路形成部材5側に押圧されたときに水晶振動子4の表面との間に試料液の流路57を区画形成する囲み部51が設けられている。この囲み部51は、感知センサ2の前後方向にその長さ方向が向くように、その外縁が小判型に形成された環状の突出部により構成されている。囲み部51は、凹部54から300μmの厚さに突出するように設けられ、囲み部51の内側の領域は、凹部54と同じ高さの平面になっている。また囲み部51の内側の領域の幅は後方側から前方向に向かうにつれて徐々に広がったのち、中流域で一定の幅となり、その後前方側に向けて徐々に狭くなるように構成されている。
【0022】
流路形成部材5には、囲み部51の内側の領域の後端に開口し、厚さ方向に貫通する直径1.5mmの貫通孔52が穿設されている。また流路形成部材5には、囲み部51の内側の領域の前端に開口し、厚さ方向に貫通する直径1.5mmの廃液流路53が穿設されている。流路形成部材5の孔部58は、配線基板3に設けられた孔部33と揃うように配置される。この時囲み部51が水晶振動子4の上面に配置され、
図6(a)に示すように共通電極44が囲み部51の内側の領域の中心に収まり、囲み部51の内側の領域の下面側が水晶振動子4により塞がれる。この囲み部51と水晶振動子4とに囲まれた領域は、底面が水晶振動子4により構成され、天井面と底面が平行に伸びる高さ300μmの流路57を形成する。
【0023】
また
図3に示すように前記貫通孔52、53には、夫々多孔質の部材で構成された入口側毛細管部材55と出口側毛細管部材56が着脱自在に設けられている。
入口側毛細管部材55は、例えば円柱状の部材であり、例えばポリビニルアルコール(PVA)などの化学繊維束により構成されている。入口側毛細管部材55は、貫通孔52を塞ぐように配置され、その上端が後述する上側ケース21に形成された注入口23に露出し、下端が流路57内に進入するように設けられている。出口側毛細管部材56も同様にポリビニルアルコール(PVA)などの化学繊維束により構成され、上方に伸びた後、屈曲して水平に伸びるL字型に形成される。出口側毛細管部材56は、貫通孔53を塞ぎ、その下端が流路57内に進入するように配置されている。更に出口側毛細管部材56の下端は、後方側から前方側に向かって傾斜している。
【0024】
出口側毛細管部材56の他端側は、例えば親水性のガラス管で構成される廃液流路59の一端側に接続されている。廃液流路59の他端側には、例えば廃液流路59から流出する液体を吸引する毛細管シート71と、毛細管シート71で吸引された液体を吸収する吸収部材72が接続されており、吸収部材72の外側には、吸収部材72からの液漏れを防ぐためのケース体73が設けられている。なお図中75は廃液流路59を支持する支持部材である。
【0025】
上側ケース21は、配線基板3、流路形成部材5及び吸収部材72を上方側から覆うように設けられる。上側ケース21の上面側には、すり鉢状に傾斜した注入口23が形成されている。
図4に示すように上側ケース21の裏面側には、流路形成部材5の高さ位置を規制する押圧部80が設けられている。押圧部80は、例えば略箱形に構成され、上側ケース21を下側ケース22に嵌合して互いに係止した時に、その下面が流路形成部材5の上面全体に接する。押圧部80には、貫通孔52に対応する位置に注入口23に貫通する貫通孔81が設けられている。また貫通孔53に対応する位置から前方側に向かって、後述する出口側毛細管部材56の設置領域を確保するための切欠き82が形成されている。また押圧部80には、固定柱83が設けられている。また固定柱83の後方側における外寄りの位置には、各々配線基板3の高さ位置を規制する規制部84が設けられている。更に上側ケース21の左右の側壁の内面側には、下側ケース22に形成された溝部86に対応する位置に爪部85が設けられている。
【0026】
そして
図9に示すように配線基板3及び流路形成部材5を下側ケース22の上に積層すると流路形成部材5に形成された切欠き50から配線基板3の周縁部が臨む。更に上側ケース21を被せると、固定柱83が配線基板3及び流路形成部材5に形成された孔部33及び58に挿入され、配線基板3及び流路形成部材5が位置決めされる。また規制部84は流路形成部材5の切欠き50に嵌入されると共に、その先端が配線基板3の表面側周縁部に接するように位置する。更に爪部85が下側ケース22の溝部86に嵌合されて固定される。
【0027】
続いて本体部12について説明する。本体部12は筐体で構成され、上面における前方側の端部には、感知センサ2と接続するためのコネクタ10が設けられている。
図1及び
図10に示すようにコネクタ10は前方側が開口した概略箱型に構成され、コネクタ10は、開口部分に感知センサ2の後方側の部位が挿入されるように構成されている。またコネクタ10の天井部分の一部には、感知センサ2を挿入したときに注入口23が臨む、切欠き13が形成されている。またコネクタ10の天井部分の切欠き13の周囲の部分は、挿入された感知センサ2の後方側の周縁部の上方を覆うように構成されている。
【0028】
またコネクタ10の底面には、幅方向に伸びる矩形の台部60が前後に2つ並べて配置されている。各台部60は、感知センサ2をコネクタ10に挿入したときに、感知センサ2の下側ケース22に形成した切り欠き24に進入し、その上面が配線基板3の下面とごく狭い隙間を介して対向するように設けられている。また各台部60の上面には各々3つの接続端子6が、台部60の伸びる方向に等間隔に並び、感知センサ2の6つの端子部34c〜39cに夫々対応するように設けられている。
【0029】
図11に示すように接続端子6は、台部60に形成された孔部61から先端側が上方に突出するように設けられ、台部60の上方にて後方側に屈曲された金属板で構成されている。接続端子6の先端は、当該孔部61に上方から挿入されて、台部60の天井部分の縁に係止されている。これにより接続端子6は先端側が常時上方に向けて付勢され、屈曲部分62を下方側に押したときに上方に向けた付勢力により押し返す。接続端子6の台部60から突出する部分の高さ寸法は、感知センサ2をコネクタ10に挿入したときの台部60の上面から配線基板3の下面までの隙間の高さ寸法より大きくなるように構成されている。また各接続端子6の基端側は、各々本体部12の内部に設けられた配線基板63に形成された導電路64に接続され、導電路64の後段側には、スイッチ部90及び発振回路9がこの順で接続されている。
【0030】
感知センサ2がコネクタ10に挿入されると、接続端子6が夫々対応する感知センサ2側の端子部34c〜39cに接触した状態で押し下げられて、電気的に接続される。これにより水晶振動子4は、スイッチ部90を介して発振回路9に接続される。
続いて感知センサ2を本体部12に接続したときの全体構成について説明する。
図12に示すようにスイッチ部90は、3つのスイッチ90a〜90cにより構成され、共通電極44と、励振電極49、45とに夫々挟まれた振動領域(詳しくは各領域における水晶片41)101、102及び共通電極44と、励振電極48及び46とに夫々挟まれた振動領域103、104のいずれか1つの領域を発振させると共に、当該1つの領域における発振出力(周波数信号)を発振回路9側に取り込むように構成されている。
【0031】
振動領域101、102と発振回路9との間には、第1のスイッチ90aと第2のスイッチ90bとが水晶振動子4側からこの順番で配置されており、第1のスイッチ90aは、発振回路9と、振動領域101、102のいずれか一方とを接続するように構成されている。第2のスイッチ90bは、これら振動領域101、102側の接続点と、振動領域103、104側の接続点との間で切り替え自在に配置されている。また、振動領域103、104と第2のスイッチ90bとの間には、発振回路9に対して振動領域103、104のいずれか一方を接続できるように構成された第3のスイッチ90cが配置されている。また発振回路9の後段には、周波数測定部91が設けられ、周波数測定部91にて測定された周波数は、データ処理部92に入力される。
【0032】
本発明の感知装置では、スイッチ部90を高速で切り替えられながら各振動領域101〜104における各周波数fm1、fr1、fm2及びfr2の時系列データを順次取得する。そしてデータ処理部92において、振動領域101及び102における発振周波数の差分Δf1(Δf1=fm1−fr1)と振動領域103及び104における発振周波数の差分Δf2(Δf2=fm2−fr2)とを夫々計算し、これら差分Δf1、Δf2の合計値Δfsum(Δfsum=Δf1+Δf2)を算出する。そして例えば得られた計算結果(合計値Δfsum)に基づいて感知対象物の有無を判断したり、あるいは前記計算結果に対応する濃度を検量線から読み取って感知対象物の濃度を表示部11に表示する機能を持っている。
【0033】
上述の実施の形態の作用について説明する。感知センサ2をコネクタ10に接続すると、コネクタ10側の接続端子6が、夫々対応する感知センサ2側の端子部34c〜39cの下方に位置する。各接続端子6は、感知センサ2をコネクタ10に挿入したときの台部60の上面と配線基板3の下面との間の隙間の寸法よりも大きな高さ寸法であるため、各接続端子6は感知センサ2側の端子部34c〜39cにより下方に押し下げられる。これにより
図13に示すように、各接続端子6の上方側に戻ろうとする付勢力により感知センサ2側の端子部34c〜39cが押し上げられ、配線基板3が押し上げられる。端子部34c〜39cは、水晶振動子4の中心部から見て対称に配置されているため、配線基板3が接続端子6により押し上げられたときに水晶振動子4が中心部から見て対称な位置を押し上げられて、流路形成部材の囲み部51に押し付けられる。
【0034】
水晶振動子4は中心部から見て対称な位置に力がかかることによって、より水平な姿勢で押し付けられるため、囲み部51と水晶振動子4はより密着しやすくなる。従って端子部34c〜39cが水晶振動子4の中心部から見て対称に配置されているとは、端子部34c〜39cの配置された位置の中心が水晶振動子4の概ね中心部に配置されることで、水晶振動子4と囲み部51との密着性が良くなるため権利範囲に含まれる。
【0035】
また
図13に示すように配線基板3が押し上げられると流路形成部材5が押し上げられ、さらに上側ケース21を押し上げるが、上側ケース21の後方側の周縁部は、コネクタ10の天井面により係止されている。従って配線基板3、流路形成部材5及び上側ケース21が互いに密着する。
また
図14に示すように上側ケース21には規制部84が設けられ、配線基板3の周縁部を押えている。そのため配線基板3が押し上げられたときに流路形成部材5に過度に押し付けられることがなく、流路57が押しつぶされることが避けられる。
【0036】
この感知装置による、試料液中の感知対象物の有無を判定方法について説明する。先ず感知センサを本体部12に接続し、図示しないインジェクタを用いて、注入口23に例えば生理食塩水からなり、感知対象物を含まない薄め液を滴下する。液体は毛細管現象により入口側毛細管部材に吸収され、当該入口側毛細管部材55内を流通し、流路57に流れ込んで水晶振動子4の後方側の表面に供給される。
【0037】
水晶振動子4を構成する水晶片41の表面は親水性であるため、流路57内を濡れ拡がり、流路57に広がった液体に続いて入口側毛細管部材55の液体は、表面張力により水晶片41の表面へ引きだされ、注入口23から流路57へ連続して液体が流れていく。振動領域101及び102と、振動領域103及び104は、供給流路の夫々中流部付近に並べて配置されているため、液体は振動領域101及び102の表面を一定の速度で、同時に流れ、振動領域103及び104の表面を一定の速度で、同時に流れることになる。
【0038】
そして水晶振動子4の表面の液体が出口側毛細管部材56に到達すると、液体は毛細管現象により出口側毛細管部材56に吸収され、当該出口側毛細管部材56内を流れて廃液流路59へ滲み出る。廃液流路59内の液体は当該廃液流路59内を下流側に通流し、毛細管シート71に到達する。
【0039】
緩衝液の供給に説明を戻すと、注入口23に滴下された緩衝液は、既述のように感知センサ2内を通流する。そして流路57を流れる緩衝液が、共通電極44の表面に供給されると、これら振動領域101及び102、振動領域103及び104は流路57の入り口側から出口側に向かってみて対称に形成されているため、等しく水圧の影響を受ける。これによって振動領域101及び102の発振周波数が共に等しく低下し、振動領域103及び104の発振周波数が共に等しく低下する。
【0040】
続いて緩衝液と同量の試料液を注入口23に供給する。これにより入口側毛細管部材55に吸収されている緩衝液に加わる圧力が高くなり、当該緩衝液は再び廃液流路59内を下流側に向かって流れ、試料液が入口側毛細管部材55に吸収される。吸収された試料液は、緩衝液と同様に入口側毛細管部材55から流路57に流入し、流路57内が緩衝液から試料液に置換される。
【0041】
この時にも、振動領域101、102及び振動領域103、104が流路57の前後方向に見て対称に形成されている。そのためこれら振動領域101、102及び振動領域103、104は流路57内の液の入れ替わりによる圧力変化を均等に受け、当該圧力変化により振動領域101及び102の発振周波数が互いに揃って変化し、振動領域103及び104の発振周波数が互いに揃って変化する。試料液中に感知対象物が含まれる場合には、共通電極44における振動領域101及び103上の吸着層42に当該感知対象物が吸着される。一方振動領域102及び104上には、感知対象物が吸着されない。このため吸着層42への感知対象物の吸着量に応じて周波数が下降し、Δfsumが変化する。このようにΔfsumの変化に基づいて感知対象物の有無を判定することができる。
【0042】
このように感知センサ2の内部に形成された流路57に試料液を通流させて、感知対象物を感知するが、感知センサ2の流路57は、配線基板3の上面に水晶振動子4を固定し、上方側から上側ケース21を被せて上側ケース21内の押圧部により流路形成部材5を配線基板3に押し当てて構成されている。そのため配線基板3、流路形成部材5、上側ケース21及び下側ケース22の設計寸法の個体誤差により、配線基板3と、流路形成部材5との間に隙間が生じ流路を流れる液体が漏出するおそれがある。
【0043】
上述の実施の形態においては、本体部12のコネクタ10内に形成された接続端子6に上方に向けて付勢力を持たせている。そのためコネクタ10に感知センサ2を接続して、接続端子6に端子部34c〜39cを押し当てたときに端子部34c〜39cは上方に向けて押され、これにより水晶振動子4と、流路形成部材5に設けた囲み部51とがより密着している。そのため設計寸法の個体誤差による水晶振動子4と囲み部51との間の隙間ができにくくなり流路57を流れる液体の漏出が抑制される。
さらに端子部34c〜39cを水晶振動子4の中心部にから見て対称に設けているため、水晶振動子4が周方向に均等な力で押し上げられる。従って水晶振動子4がより水平な姿勢で囲み部51に押し付けられ、より密着性が良くなる。
【0044】
また流路57の高さ寸法が小さいため、接続端子6により配線基板3が押し上げられたときに流路57の底面となる水晶振動子4が流路57の天井部に接触し、流路57が潰れてしまうおそれがあるが、上側ケース21に規制部84を設け、配線基板3の縁部を抑えているため、流路57が潰れることを防いでいる。
さらに上述の感知センサ2においては、感知センサ2の下面に配線基板3が露出しており、衝撃により配線基板3が押されて、配線基板3の表面に固定された水晶振動子4が流路57の天井面に衝突し破損するおそれがある。その場合にも上側ケース21の規制部84により配線基板3を押えることで、配線基板3上の水晶振動子4の流路形成部材5への衝突を防いでいる。
【0045】
また上述の実施の形態においては、水晶振動子4の共通電極44及び励振電極45〜49と接続された配線44a〜49aを配線基板3の下面側にスルーホール44b〜49bにより引き回し、配線基板3の下面側において端子部44c〜49cを形成している。配線基板3の表面側に端子部34c〜39cを形成した場合には、配線基板3の一面側に水晶振動子4を配置する領域と端子部44c〜49cを形成する領域とが必要となる。そして配線基板3の一面側には、水晶振動子4を配置する領域を覆うように流路形成部材5が設けられるため、流路形成部材5の投影領域の外側の領域に端子部44c〜49cを形成する領域を設ける必要がある。
【0046】
配線基板3の裏面側に端子部44c〜49cを形成し、水晶振動子4を端子部44c〜49cと異なる面に形成する場合には、端子部44c〜49cを流路形成部材5の投影領域に設けることができる。そのため配線基板3における流路形成部材5に覆われていない領域を狭くできるため、配線基板3を小型化することができ、感知センサ2を小型化することができる。
【0047】
また本発明は水晶振動子4に吸着領域と参照領域とを一対設けた感知センサ2においても同様に効果が得られるが、上述の実施の形態に示したように水晶振動子4に吸着領域と参照領域との対を複数設けた場合には、共通電極44及び励振電極45〜49と発振回路9とを接続するための端子部44c〜49cの数が多くなるため端子部44c〜49cを形成する領域をより広くする必要がある。そのため配線基板3の一面側に水晶振動子4を配置する領域と端子部44c〜49cを形成する領域を設けると配線基板3が大型化する傾向があるが、本発明によれば配線基板3の大型化を抑制することができるため感知センサ2の大型化を抑制することができる。